JP6241127B2 - 色調補正フィルム及びこれを用いた透明導電性フィルム - Google Patents
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Description
本実施形態の色調補正フィルムは、透明基材フィルムの一方面に、当該透明基材フィルム側から順に、第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層が積層され、透明基材フィルムの他方面に、第二ハードコート層が積層された構成である。本実施形態の色調補正フィルムでは、これら各層の屈折率および膜厚を適切に設定したことで、良好な巻き取り性を維持しつつ、透過光の着色低減効果を発揮可能とすることができる。
以下に、この色調補正フィルムの構成要素について順に説明する。
透明基材フィルムはポリエステルフィルムからなり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を使用できる。透明基材フィルムの膜厚は通常25〜400μm程度、好ましくは25〜188μm程度である。なお、透明基材フィルムがPET樹脂で形成された場合、波長400nmの光に対する屈折率は1.72である。
透明基材フィルムの両面直上には、表面硬度を向上し、巻き取り性を良好とするために第一ハードコート層および第二ハードコート層がそれぞれ設けられている。第一ハードコート層および第二ハードコート層は、バインダーと、光重合開始剤と、有機微粒子とを混合してなるハードコート層用塗液を活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。硬化後の第一・第二ハードコート層の全量基準で(100wt%中)、バインダー、光重合開始剤、及び有機微粒子の和は99〜100wt%であり、必要に応じてその他の成分を1wt%未満の範囲で添加することが出来る。その他の成分としては、レベリング剤、屈折率調整の低屈折率材料または高屈折率材料等が配合される。また、第一ハードコート層用および第二ハードコート層用塗液中には、塗工性の観点から通常希釈溶剤が含まれる。
第一色調補正層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる第一色調補正層用塗液を、活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。金属酸化物微粒子は、第一色調補正層の屈折率を積極的に高くするために配合されるものであって、酸化チタン及び酸化ジルコニウムが好ましい。波長400nmの光に対する酸化チタン及び酸化ジルコニウムの屈折率は製法によって異なるが、1.9〜3.0であることが好ましい。また、バインダーとして用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂としては、第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する活性エネルギー線硬化型樹脂と同種のものを使用すればよい。
第二色調補正層は、シリカ微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを混合してなる第二色調補正層用塗液を、活性エネルギー線(例えば紫外線、電子線)により硬化させた硬化物からなる。シリカ微粒子は、第二色調補正層の屈折率を積極的に低くするために配合されるものであって、コロイダルシリカや中空シリカ微粒子が好ましい。波長400nmの光に対するコロイダルシリカ及び中空シリカ微粒子の屈折率は製法によって異なるが、1.25〜1.50であることが好ましい。また、バインダーとして用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂は、波長400nmの光に対する屈折率が1.4〜1.7であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂としては、第一ハードコート層及び第二ハードコート層で使用する活性エネルギー線硬化型樹脂と同種のものを使用すればよい。
第一ハードコート層は、透明基材フィルムに第一ハードコート層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。第二ハードコート層は、第一ハードコート層とは反対側の面に、第二ハードコート層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。一方、第一色調補正層は、形成された第一ハードコート層上に第一色調補正層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。更に、第二色調補正層は、形成された第一色調補正層上に第二色調補正層用塗液を塗布した後に、活性エネルギー線照射により硬化することで形成される。
透明導電性フィルムは、色調補正フィルムの第二色調補正層上に錫ドープ酸化インジウム層を積層した構成である。すなわち、透明導電性フィルムは、上から錫ドープ酸化インジウム層、第二色調補正層、第一色調補正層、第一ハードコート層、透明基材フィルム、第二ハードコート層が順に積層した構成である。
第二色調補正層の上に積層される錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)は透明導電層であり、波長400nmの光に対する屈折率が1.85〜2.35、膜厚が5〜50nmである。屈折率がこの範囲を外れると、第一色調補正層及び第二色調補正層との光学干渉が適切に作用しなくなるため、透明導電性フィルムの透過色が着色を呈し、全光線透過率も低下する。また、ITO層の屈折率は第二色調補正層の屈折率よりも大きいことが好ましい。膜厚が5nmより薄い場合は、均一に成膜することが難しく、安定した抵抗が得られないため好ましくない。また、膜厚が50nmより厚い場合は、ITO層自身による光の吸収が強くなり、透過色の着色低減効果が薄れると共に、全光線透過率が小さくなる傾向があるため好ましくない。
錫ドープ酸化インジウム層の製膜方法は特に限定されず、例えば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法を採用できる。これらの中では、層の厚み制御の観点より蒸着法及びスパッタリング法が特に好ましい。尚、錫ドープ酸化インジウム層を形成した後、必要に応じて、100℃〜200℃の範囲内でアニール処理を施して結晶化することができる。具体的には、高い温度で結晶化すると錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は小さくなる傾向を示す。従って、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率は、アニール処理の温度と時間を制御することで調整可能である。
(1)波長400nmの光に対する屈折率が1.72のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上に、ディップコーター(杉山元理化学機器株式会社製)により、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nm程度になるように層の厚さを調整して塗布した。
(2)乾燥後、紫外線照射装置(岩崎電気株式会社製)により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化した。硬化後のPETフィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ4+b/λ2+c (式1)
(N:屈折率、λ:波長、a、b、c:波長分散定数)
(1)波長400nmの光に対する屈折率が1.72のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、実膜厚20nmの透明導電層としての錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、下記実施例および比較例のそれぞれの条件でアニーリングを施し、透明導電性フィルムを作製した。
(2)上記透明導電性フィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、上記(式1)を用いて、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
なお、各表(後述)に記載の各層の屈折率は、上記屈折率測定用サンプルから求めた屈折率である。
色差計(「SQ−2000」、日本電色工業株式会社製)を用いて透明導電性フィルムの透過色、b*を測定した。このb*は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b表色系における値である。
JIS−K−7105や、JIS−K−7136に準拠して、ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業株式会社製)により透明導電性フィルムの全光線透過率(%)及びヘイズ値を測定した。
透明導電性フィルムを3インチコアに巻き取り、目視で観察することにより、フィルムの巻き取り性を下記に示す評価基準によって評価した。
◎ :巻きじわ及びへこみなどの凹凸状変化が全く無い。
○ :巻きじわ及びへこみなどの凹凸状変化がほとんど無い。
× :巻きじわ及びへこみなどの凹凸状変化が大きい。
第一ハードコート層及び第二ハードコート層用塗液として次の原料を使用し、各原料を下記表1及び表2に記載した組成で混合して第二ハードコート層用塗液HC1−1〜HC1−18、HC’1−1〜HC’1−7を調整した。尚、表1及び表2中の数値はwt%である。得られた第一ハードコート層及び第二ハードコート層用塗液HC1−1〜HC1−18、HC’1−1〜HC’1−7を用いて形成される第一ハードコート層及び第二ハードコート層の屈折率を測定した。その結果も表1及び表2に示す。
第一色調補正層用塗液として次の原料を使用し、各原料を下記表3に記載した組成で混合して、第一色調補正層用塗液C1−1〜C1−4を調製した。尚、表3中の数値はwt%である。得られた第一色調補正層用塗液C1−1〜C1−4を用いて形成される色調補正層の屈折率を測定した。その結果も表3に示す。
第二色調補正層用塗液として次の原料を使用し、各原料を下記表4に記載した組成で混合して、第二色調補正層用塗液C2−1〜C2−5を調製した。尚、表4中の数値はwt%である。得られた第二色調補正層用塗液C2−1〜C2−5を用いて形成される色調補正層の屈折率を測定した。その結果も表4に示す。
厚さ125μmのPETフィルムの一面に、第一ハードコート層用塗液(HC1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより第一ハードコート層を形成した。続いて、PETフィルムの他面に第二ハードコート層用塗液(HC1−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより第二ハードコート層を形成した。
第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層、第二ハードコート層を下記表5、表6及び表7に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S1−2〜S1−19、S2−1〜S2−12、S3−1〜S3−5)を作製した。
上記色調補正フィルム(S1−1)の第二色調補正層上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が20nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、150℃、30分のアニール処理を施し、透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて、巻き取り性、透過色b*、全光線透過率、ヘイズ値を前記方法で測定した。その結果も下記表8に示す。
錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を表8、表9及び表10に記載した膜厚とした以外は、実施例4−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。
第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層、第二ハードコート層を下記表11、表12及び表13に記載した材料及び膜厚とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S’1−1〜S’1−13、S’2−1〜S’2−3、S’3−1〜S’3−3)を作製した。
錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を表14、表15及び表16に記載した膜厚とした以外は、実施例4−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。
実施例4−1〜実施例4−21、実施例5−1〜実施例5−10、実施例6−1〜実施例6−5では、第一ハードコート層、第二ハードコート層、各色調補正層、及び錫ドープ酸化インジウム層の各屈折率と膜厚の関係が良好であることから、透過色b*の値が小さく、透明導電性フィルムの着色を十分に抑え、優れた全光線透過率を有していた。さらに、有機微粒子の平均粒子径が適切であることで、巻き取り性も優れていた。
Claims (3)
- 透明基材フィルムの一方面に、第一ハードコート層、第一色調補正層、第二色調補正層がこの順で積層され、
透明基材フィルムの他方面に、第二ハードコート層が積層されている巻き取り可能な可撓性を備える色調補正フィルムであって、
前記第一ハードコート層および前記第二ハードコート層は、波長400nmの光に対する屈折率が1.51〜1.61、膜厚が1.3〜3.5μmであり、硬化後の前記第一ハードコート層と前記第二ハードコート層の全量基準を100wt%とし、バインダーを80〜98wt%、光重合開始剤を1〜10wt%、有機微粒子を0.01〜19wt%含み(バインダー、光重合開始剤、及び有機微粒子の合計が99〜100wt%である)、
前記有機微粒子は、平均粒子径0.8〜5.5μmで、且つ前記第一ハードコート層および前記第二ハードコート層の膜厚の61〜350%であり、
前記第一色調補正層は、金属酸化物微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、波長400nmの光に対する屈折率が1.63〜1.86、膜厚が25〜90nmであり、
前記第二色調補正層は、平均粒子径が0.1μm以下のシリカ微粒子と活性エネルギー線硬化型樹脂とを含み、波長400nmの光に対する屈折率が1.33〜1.53、膜厚が10〜55nmである、色調補正フィルム。 - 前記バインダーは、前記第一ハードコート層および前記第二ハードコート層の前記全量基準で、29〜75wt%の活性エネルギー線硬化型樹脂と、12〜60wt%のシリカ微粒子とからなり(活性エネルギー線硬化型樹脂+シリカ微粒子の和は80〜98wt%である)、シリカ微粒子の平均粒子径が0.1μm以下である、請求項1に記載の色調補正フィルム。
- 請求項1又は請求項2に記載の色調補正フィルムの前記第二色調補正層上に、錫ドープ酸化インジウム層が積層されており、
前記錫ドープ酸化インジウム層は、波長400nmの光に対する屈折率が1.85〜2.35、膜厚が5〜50nmである、透明導電性フィルム。
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