(A)第1の実施形態
以下、本発明による電気的接触子及び電気的接続装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
まず、第1の実施形態の電気的接触子が適用されている第1の実施形態の電気的接続装置11について、図2〜図6を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態の電気的接続装置11は、被検査体が四角形であるものであるが、被検査体が他の形状のものであっても、本発明を適用可能である。
図2は、第1の実施形態の電気的接続装置を示す平面図であり、図3は、図2のIII−III線矢視断面図であり、図4は、図2のIV−IV線矢視断面図である。また、図5及び図6はそれぞれ、第1の実施形態の電気的接続装置における電気的接触子の装着部分を示す要部拡大断面図であり、図5は、電気的接触子が被検査体の電極に接触していない状態を示し、図6は、電気的接触子が被検査体の電極に接触している状態を示している。ここで、図5(A)及び図6(A)はそれぞれ、電気的接触子の正面側を目視し得るように描いた断面図であり、図5(B)及び図6(B)はそれぞれ、電気的接触子の側面側を目視し得るように描いた断面図である。なお、以下では、図2〜図6での上下方向に従って、「上下」に言及することとする。
電気的接続装置11は、被検査体12の通電試験等に用いる装置である。被検査体12は、例えば、集積回路等の半導体デバイスである。被検査体12は、その下面に複数のバンプ電極13(図5、図6参照)が設けられている。バンプ電極13は、被検査体12の下面に設けられた電極である。複数のバンプ電極13は、被検査体12の下面に、一列、複数列、マトリクス状又は他の配列で備えられている。
電気的接続装置11は、主に、配線基板15と、下側ハウジング16と、上側ハウジング17と、フレーム18と、ガイド板19と、電気的接触子とを有する。
第1の実施形態の電気的接続装置11は、2種類の電気的接触子を適用している。図5及び図6は、一方の電気的接触子20を装着している状態を示している。他方の電気的接触子200が第1の実施形態の電気的接触子であり、電気的接触子20とほぼ同様にして、電気的接続装置11における電気的接触子の装着部分に装着される。電気的接触子20は、後述するように、第1の実施形態の電気的接触子200より導電性が良好であり、主として、信号波形に重みがある部分での測定に利用される(以下、電気的接触子20を信号波形重視電気的接触子と呼ぶこともある)。
配線基板15は、下側ハウジング16、上側ハウジング17等を支持する板状の配線基板である。配線基板15の配線は、被検査体12を試験するテスタ本体(図示せず)の配線に接続されている。配線基板15は、テスタ本体側の電極を構成する部材であって、電気的接触子20、200の下端部が配線基板15の上面に設けられたコンタクトパット22に接触して電気的に導通される。
下側ハウジング16は、上側ハウジング17と重ね合わされた状態で電気的接触子20、200を支持するための部材である。下側ハウジング16には、電気的接触子20、200の下端部が挿入される第1支持孔16Aが、電気的接触子20、200の外径よりも少し大きい径を有して設けられている。複数の第1支持孔16Aは、被検査体12の下面の各バンプ電極13に対応した位置にそれぞれ設けられている。第1支持孔16A内には、電気的接触子20、200を受けて支持する下側受け部16Bが形成されている。下側受け部16Bは、第1支持孔16Aの下端部の内径を小さくして形成されている。下側受け部16Bに後述する信号波形重視電気的接触子20の下側支持肩部73若しくは第1の実施形態の電気的接触子200の下側支持肩部273が引っ掛かり、電気的接触子20、200の下端部が貫通するように下側受け部16Bの内径が設定されている。下側受け部16Bに電気的接触子20、200の下側支持肩部73、273が引っ掛かることにより、電気的接触子20、200が下側受け部16Bで支持されるようになっている。
下側ハウジング16は、配線基板15の上側に重ねられている。配線基板15の上面における各第1支持孔16Aに対応する位置に、テスタ本体に配線で接続されたコンタクトパッド22が設けられている。各コンタクトパッド22には、第1支持孔16Aに挿入された電気的接触子20、200の下端部が押圧されて接触されており、電気的な接触を実現している。
下側ハウジング16には、ピン頭部嵌合孔23(図3参照)が設けられている。このピン頭部嵌合孔23は、ガイドピン37の頭部39が嵌合するための孔である。ピン頭部嵌合孔23の内径は、このガイドピン37の頭部39の外径とほぼ同じ寸法に設定されて、ガイドピン37の頭部39が遊びなく嵌合するようになっている。
上側ハウジング17は、下側ハウジング16と協働して、電気的接触子20、200の全体を支持するための部材である。上側ハウジング17は、下側ハウジング16に重ねられて、これら下側ハウジング16と上側ハウジング17とで、電気的接触子20、200を、電気的接触子20、200が伸縮できる状態で支持するようになっている。上側ハウジング17には、下側ハウジング16の第1支持孔16Aに対応する位置に、第2支持孔17Aが設けられている。第2支持孔17Aは、第1支持孔16Aの上側開口と同じ内径(電気的接触子20、200の外径よりも少し大きい径)に形成されて、内部に電気的接触子20、200を上下動可能に収納して支持する。複数の第2支持孔17Aは、被検査体12の下面に備えられた各バンプ電極13に対応する位置にそれぞれ設けられて、収納している電気的接触子20、200の上端部をバンプ電極13に電気的に接触させるようになされている。
第2支持孔17A内には、電気的接触子20、200を上側から支持する上側受け部17Bが形成されている。上側受け部17Bは、第2支持孔17Aの上端部の内径を小さくして形成されている。上側受け部17Bに、後述する信号波形重視電気的接触子20の上側支持肩部79若しくは第1の実施形態の電気的接触子200の上側支持肩部279が引っ掛かり、電気的接触子20、200の上端部が貫通することにより、電気的接触子20、200が上側受け部17Bで支持されるように上側受け部17Bの内径が設定されている。
第1支持孔16Aと第2支持孔17Aとで、電気的接触子20、200全体を受け入れて支持する電気的接触子支持孔27が構成されている。電気的接触子20、200が、電気的接触子支持孔27に受け入れられた状態で、電気的接触子20、200は蓄勢状態(外力が加わって縮んだ状態)にあり、電気的接触子20、200の下端部は配線基板15の上面に設けられたコンタクトパット22を押圧した状態になる。
上側ハウジング17には、ピン軸部嵌合孔28(図3参照)が設けられている。ピン軸部嵌合孔28は、後述するガイドピン37の軸部40が嵌合される孔である。ピン軸部嵌合孔28の内径は、ガイドピン37の軸部40の外径とほぼ同じ寸法に設定されてガイドピン37の軸部40を遊びなく嵌合するようになっている。
フレーム18は、配線基板15、下側ハウジング16及び上側ハウジング17を一体的に固定して支持すると共に、ガイド板19を上下動可能に支持するための部材である。フレーム18は、主に、外枠部31と、固定用フランジ部32と、上下動支持用フランジ部33(図4参照)とを有する。
外枠部31は、下側ハウジング16、上側ハウジング17及びガイド板19の周縁部を囲うように、四角形の枠体状に形成されている。外枠部31の下面には、位置決め用ピン(又は位置決め用孔;いずれも図示せず)が設けられ、配線基板15の上面には、外枠部31側の位置決め用ピン(又は位置決め用孔)に対応して、位置決め用孔(又は位置決め用ピン;いずれも図示せず)が設けられている。これにより、外枠部31の下面の位置決め用ピン(又は位置決め用孔)と、配線基板15の上面の位置決め用孔(又は位置決め用ピン)とが嵌合して、外枠部31と配線基板15とが正確に位置決めされて支持されるようになっている。外枠部31の四隅には、固定ネジ35(図2参照)が取り付けられている。固定ネジ35は、外枠部31の四隅の貫通孔(図示せず)を介して配線基板15のネジ孔(図示せず)にねじ込まれて、これら外枠部31と配線基板15とを固定している。
固定用フランジ部32は、外枠部31の四角筒状の開口部の対向する内側面に、互いに対向するように2つ設けられている。各固定用フランジ部32は、互いに内側へ水平に伸びた、ほぼ半円板状に形成されている。各固定用フランジ部32の下面の高さ(配線基板15からの高さ)は、下側ハウジング16及び上側ハウジング17を重ねた高さとほぼ同じ値に設定されている。これにより、配線基板15上に重ねられた下側ハウジング16及び上側ハウジング17を、各固定用フランジ部32と配線基板15とで挟んで支持するようになっている。ここで、固定用フランジ部32の下に上側ハウジング17と下側ハウジング16を入れたときに、下側ハウジングの下面が外枠部31の下面と同じになるようになされている。
各固定用フランジ部32の中央には、ガイドピン37が嵌合するピン孔38が形成されている。ピン孔38の内径は、ガイドピン37の軸部40の外径とほぼ同じ寸法に設定されている。
ガイドピン37は、頭部39と軸部40とを有する。頭部39は、下側ハウジング16のピン頭部嵌合孔23の内径とほぼ同じ外径の円板状に形成されている。軸部40は、上側ハウジング17のピン軸部嵌合孔28及び固定用フランジ部32のピン孔38の内径とほぼ同じ外径の円棒状に形成されている。
下側ハウジング16のピン頭部嵌合孔23と、上側ハウジング17のピン軸部嵌合孔28と、各固定用フランジ部32のピン孔38とは、ガイドピン37が通されることにより、同一軸心上に軸が位置するように設けられている。
ガイドピン37の頭部39が下側ハウジング16のピン頭部嵌合孔23に嵌合し、軸部40が上側ハウジング17のピン軸部嵌合孔28及び固定用フランジ部32のピン孔38に嵌合し、下側ハウジング16、上側ハウジング17及びフレーム18の位置決めを行っている。下側ハウジング16及び上側ハウジング17を、フレーム18の各固定用フランジ部32の下面と配線基板15とで上下から挟んでフレーム18の開口内に支持することにより、これら配線基板15、下側ハウジング16、上側ハウジング17及びフレーム18が、互いに正確に位置決めされて一体的に固定されている。
上下動支持用フランジ部33は、ガイド板19を上下動可能にフレーム18の開口内に支持するための部分である。上下動支持用フランジ部33は、四角形の枠体状のフレーム18における開口部の四隅にそれぞれ形成されている。各上下動支持用フランジ部33は、図4に示すように、主に、板部42と、ガイドネジ孔43と、スプリング孔44とを備える。
板部42は、フレーム18の外枠部31の四隅のそれぞれに設けられたフレーム18と一体化している板材であり、隅を形成する2つの枠部分を連絡するように懸架されている。板部42の下面の高さは、固定用フランジ部32の下面と同じ高さになるように設定されている。板部42の上面の高さは、板部42の上面とガイド板19のフランジ部54の下面とが互いに当接することで、被検査体12のバンプ電極13と電気的接触子20、200の上端部とが最適に接触するように設定されている。具体的には、被検査体12のバンプ電極13と電気的接触子20、200の上端部とが接触して、電気的接触子20、200が押し縮められる状態(図6参照)になるように板部42の上面の高さが設定されている。
板部42には、ガイドネジ孔43とスプリング孔44とが設けられている。ガイドネジ孔43は、ガイドネジ46を螺合するためのネジ孔である。ガイドネジ孔43は、各板部42の中央部に1つだけ設けられている(図2参照)。スプリング孔44は、スプリング47を支持するための孔である。スプリング孔44は、各ガイドネジ孔43の両側に2つずつ設けられている。
ガイドネジ46は、フレーム18の開口内におけるガイド板19の位置を規定すると共に、ガイド板19の上下動を可能とするためのネジである。ガイドネジ46は、頭部48と、ガイド部49と、ネジ棒部50とから構成されている。
頭部48は、ガイド板19を抑えて抜け落ちを防止する部分である。頭部48の上面には、マイナスドライバーが係合するマイナス溝51が形成されている。
ガイド部49は、ガイド板19の上下動を案内する部分である。ガイド部49は、頭部48とネジ棒部50との間に設けられ、ガイド板19のガイド孔59に嵌合してガイド板19の上下動を案内する。ガイド部49の長さは、頭部48の下面がガイド板19と接触して支持された状態(ガイド板19が、スプリング47で押し上げられた状態)で、電気的接触子20、200の上端部がガイド板19の縮小部57に受け入れられるように設定されている。図5は、電気的接触子20、200の上端部がガイド板19の縮小部57に受け入れられる状態を示している。
ネジ棒部50は、板部42にガイドネジ46を固定するための部分である。ネジ棒部50は、板部42のガイドネジ孔43と螺合してガイドネジ46を板部42に固定している。
スプリング47は、ガイド板19を弾性的に支持するための部材である。スプリング47の上端は、板部42のスプリング孔44に装着されてガイド板19のフランジ部54の裏面に当接されている。計8本のスプリング47が、4本のガイドネジ46のガイド部49に上下動可能に支持されたガイド板19を下側から付勢している。これにより、ガイド板19のフランジ部54がガイドネジ46の頭部48の下面に接触するまで上方へ押し上げられ、コンタクト前の待機状態になっている。
ガイド板19は、被検査体12を電気的接続装置11に装着する際に、被検査体12を位置決めして支持すると共に、被検査体12の各バンプ電極13と対応する電気的接触子20、200とを整合させるための部材である。ガイド板19は、主に、受入凹部53と、フランジ部54とから構成されている。
受入凹部53は、被検査体12を受け入れて支持する部分である。受入凹部53は、ほぼ四角形の皿状に形成されている。受入凹部53の底部の内側は四角形に形成され、その寸法は被検査体12の外形よりも僅かに大きく設定されている。ここでは、被検査体12が四角形のために受入凹部53の底部の内側も四角形に形成されているが、被検査体12が他の形状の場合には、受入凹部53の底部の内側も被検査体12に合わせた形状になる。
被検査体12が受入凹部53の底部の内側に装着された状態で、被検査体12の位置決めがなされるようになっている。受入凹部53の底板部55には、多数のガイド孔56が設けられている。ガイド孔56は、被検査体12の各バンプ電極13を案内して受け入れるための開口である。各ガイド孔56は、バンプ電極13よりも僅かに大きく形成され、バンプ電極13を容易に受け入れられるようになっている。被検査体12が受入凹部53に受け入れられることにより、被検査体12の各バンプ電極13が、各ガイド孔56の内部の上側に位置できるようになっている。
ガイド孔56の下端部には、バンプ電極13を通さず、電気的接触子20、200の上端部を受け入れる縮小部57が形成されている。縮小部57は、電気的接触子20、200の上端部を貫通して受け入れることを許して、電気的接触子20、200がバンプ電極13と接触することを可能にする。
受入凹部53の上側開口53Aの下側には傾斜面53Bが形成されている。傾斜面53Bは、被検査体12を案内して受入凹部53の底部に導くためのものである。
フランジ部54は、フレーム18の上下動支持用フランジ部33に対応する受入凹部53の四隅の位置に形成されている。各フランジ部54には、ガイドネジ46の頭部48が当接するざぐり部58が設けられている。ざぐり部58には、ガイドネジ46のガイド部49に上下動可能に嵌合するガイド孔59が設けられている。フランジ部54のガイド孔59にガイドネジ46のガイド部49が嵌合して上下動可能に支持され、フランジ部54による支持によりスプリング47でガイド板19が上方へ付勢される。ガイドネジ46を回して、被検査体12が装着された受入凹部53を下方へ押すことにより、ガイド板19が押し下げられ、被検査体12のバンプ電極13と、電気的接触子20、200の上端部が接触して検査が行われるようになっている。
上述したように、第1の実施形態の電気的接続装置11は、2種類の電気的接触子20及び200を適用している。ガイド板19のガイド孔56の上面近傍や、上側ハウジング17の上側受け部17Bの上面近傍等に、その位置のバンプ電極13に接触している電気的接触子が電気的接触子20又は電気的接触子200のいずれであるかを表すマーカを設けるようにしても良い。例えば、マーカとしては、異なる着色や記号(「○」、「△」など)や突起形状等を挙げることができ、また、一方のみにマーカを付与し、他方にマーカを付与しないことで識別可能とするようにしても良い。
以下ではまず、信号波形重視電気的接触子20の構成を説明し、第1の実施形態の電気的接触子200については、信号波形重視電気的接触子20との相違を中心に説明する。
図7〜図13はそれぞれ、信号波形重視電気的接触子20の全体又は構成要素を示す投影図である。信号波形重視電気的接触子20は、1つの第1プランジャー62と、2つの第2プランジャー63と、1つのコイルスプリング64とを有する。
第1プランジャー62は、信号波形重視電気的接触子20が接触する2部材のうちの第1接触対象である電極等(第1の実施形態の電気的接続装置11に適用されている場合には配線基板15のコンタクトパッド22)に接触するための板状のプランジャーである。第1プランジャー62は、導電性を有するように形成されており、その形成方法は限定されるものではない。例えば、板材に対する切削加工や抜き打ち加工等により第1プランジャー62を形成しても良く、また、フォトリソグラフィー技術を用いて第1プランジャー62を形成しても良い。形成する元の材料が導電性材料でなければ、外形的には形成された第1プランジャー62になる前の状態にメッキや塗布により導電性材を付着して第1プランジャー62を完成させるようにしても良い。後述する第2プランジャー63の形成方法も、第1プランジャー62の形成方法と同様である。
第1プランジャー62は、図11に示すように、概ね、結合部66と、バネ受け部67と、接触片68とに分かれている。第1のプランジャー62の長さは、電気的接続装置11に組み付けられたときに、配線基板15のコンタクトパッド22から上側ハウジング17の上面の高さ寸法とほぼ等しくされている(図5(A)参照)。
結合部66は、第1プランジャー62と2つの第2プランジャー63とが互いに結合される際に直接重ね合わされて、第1プランジャー62と第2プランジャー63とを電気的に接触するための部分である。結合部66は、長い板状に形成されており、第2プランジャー63に広い面積で安定して接触させることができるようになされている。結合部66の部分は、結合棒部69と、先端挿入部70と、抜け止め部71とに分けることができる。
結合棒部69は、コイルスプリング64に支持されるための部分であり、コイルスプリング64よりも少し長い寸法に設定されている。結合棒部69の幅寸法は、コイルスプリング64の密着小径部84の内径とほぼ同じ寸法に設定されている。結合棒部69の断面形状の四隅部分がコイルスプリング64の密着小径部84の内径部に接する。コイルスプリング64の密着小径部84の内径部の円形状が結合棒部69の外接円と一致又は僅かに小さくなっており、結合棒部69をコイルスプリング64の密着小径部84が僅かに締め付ける状態に組み付けられる(図9、図10参照)。
先端挿入部70は、組立時に、結合棒部69のコイルスプリング64内への挿入を案内するための部分である。先端挿入部70は、結合棒部69の先端部(図11中の上端部)に形成されている。先端挿入部70は、差し入れる方向に対して障害になららないように、なだらかで湾曲した傾斜面を有し、コイルスプリング64内に容易に挿入できるようになっている。先端挿入部70は、組み付けられたときには、2つの第2プランジャー63の接触片77の間に位置して、接触片77の突起77Aの間隔を安定させるように機能する。接触片77の突起77Aの間隔は、先端挿入部70の厚さ、従って、結合部66の厚さで規定され、結合部66の厚さ寸法は、接触片77の突起77Aの間隔が考慮されて定められている。
抜け止め部71は、先端挿入部70がコイルスプリング64内に挿入されたとき、先端挿入部70がコイルスプリング64から抜けないようにするための部分である。抜け止め部71は、バネ受け部67と反対の端部に形成されている。抜け止め部71は、先端挿入部70の基端部を両側に突起させて形成されている。両側に突起した抜け止め部71の幅は、コイルスプリング64の端部の密着小径部84の内径よりも僅かに食み出すように設定されている(図9参照)。
バネ受け部67は、コイルスプリング64を受けるための部分である。バネ受け部67は、結合部66と接触片68との境界部分に設けられている段部である。結合部66の幅に比べて接触片68は幅を広く形成され、これらの境界の段部がバネ受け部67になっている。バネ受け部67にコイルスプリング64の端部の密着小径部84が当接する。コイルスプリング64の弾性力によって、第1プランジャー62が電気的接触子22の要素として多少の上下動を許容するように支持されている。
接触片68は、当該電気的接触子20の第1接触対象(配線基板15のコンタクトパッド22)に接触して電気的に接続するための部分である。接触片68は、結合部66の基端側(図11の下側)に続いて一体的に設けられている。接触片68は、下側ハウジング16の第1支持孔16A及び上側ハウジング17の第2支持孔17Aの内径よりも少し小さい幅寸法を有するほぼ矩形状の矩形板状部と、下側ハウジング16の下側受け部16Bを貫通する、矩形板状部に連続している矩形板状部より幅の小さい寸法の先端部で形成されている。接触片68の先端部は、平坦面状の配線基板15のコンタクトパッド22に安定して接触するように曲線状に形成されている。接触片68には、矩形板状部と先端部の境に下側支持肩部73が形成されている。下側支持肩部73は、下側ハウジング16の下側受け部16Bに引っ掛かって、接触片68が第1支持孔16Aから抜け落ちないようになっている。下側支持肩部73が下側ハウジング16の下側受け部16Bに引っ掛かった状態で、接触片68の端部(図5、図9の下端部)が第1支持孔16Aから下方へ突出するようになっている。
第2プランジャー63は、第1プランジャー62と協働して、2つの接触対象間を、すなわち、第1接触対象(配線基板15のコンタクトパッド22)と第2接触対象(バンプ電極13)との間を電気的に導通させるための板状のプランジャーである。第2プランジャー63は、第2接触対象(バンプ電極13)を直接の接触対象としている。
第2プランジャー63は、図12(A)に示すように、概ね、結合部75と、バネ受け部76と、接触片77とに分かることができる。ここで、図12(A)は第2プランジャー63自体を示しているが、図12(B)及び(C)は第2プランジャー63の変形例を示している。
2つの第2プランジャー63は第1プランジャー62を挟み、その状態でコイルスプリング64により組み付けられ、当該信号波形重視電気的接触子20が構成される。2つの第2プランジャー63の結合部75が対向する状態で、第1プランジャー62の結合部66を挟み込んでいる。1つの第1プランジャー62と2つの第2プランジャー63とが電気的に接続した状態で、各プランジャー62、63がコンタクトパッド22とバンプ電極13にそれぞれ接触して、コンタクトパッド22及びバンプ電極13間を電気的に導通させる。
2つの第2プランジャー63は同一形状を有する。同一形状の第2プランジャー63を対向させて当該信号波形重視電気的接触子20を構成することにより、第2接触対象(バンプ電極13)への良好な接触を行うことができる。2つの第2プランジャー63はそれぞれ、第1プランジャー62の挟持状態でも互いに独立してスライドできるようになっている。第2接触対象(バンプ電極13)の形状が、ボール状の形状など多少の位置ずれによって接触高さ等が変化するような形状でも、独立したスライドを可能としているため、その接触高さの変化などに、各第2プランジャー63の上下方向の位置が追従して電気的な接触の確実性を高めることができる。
結合部75は、第1プランジャー62と第2プランジャー63とが互いに結合される際に、第1プランジャー62の結合部66と重ね合わされて電気的に接触するための部分である。2つの第2プランジャー63の結合部75が第1プランジャー62の結合部66を両側から挟持して、第1プランジャー62と第2プランジャー63とを電気的に接触させる。結合部75は、第1プランジャー62の結合部66との接触をできるだけ広い面積で実現できるように、長い板状に形成されている。結合部75は、結合棒部80と、先端挿入部81と、抜け止め部82とから構成されている。
結合棒部80は、第1プランジャー62の結合部66を挟持したままコイルスプリング64に支持されるための部分であり、コイルスプリング64よりも少し長い寸法に設定されている。結合棒部80の断面寸法(幅、厚さ寸法)は、第1プランジャー62の結合棒部69とそれを挟む2つの結合棒部80でできる、横断面で見て計8つの隅部分(図9参照)が、コイルスプリング64の密着小径部84の内径部に内接す程度の寸法に選定されている。言い換えると、コイルスプリング64の密着小径部84の内径が、結合棒部80、69、80が結合された断面形状の外接円となる寸法に設定され、結合棒部80、69、80の結合体を僅かに締め付ける状態になされている(図9、図10参照)。このような締め付け状態となるように、結合棒部の80の幅寸法は、第1プランジャー62の結合棒部69の幅寸法よりも狭い寸法となっている。
先端挿入部81は、結合棒部80のコイルスプリング64内への挿入を案内するための部分である。先端挿入部81は、結合棒部80より先端側(図12中の下側)に形成されている。先端挿入部81は、差し入れる方向に対して障害になららないような外形を有し、コイルスプリング64内にスムーズに挿入できるようになっている。例えば、第1プランジャー62の結合棒部69と一方の第2プランジャー63の結合棒部80とがコイルスプリング64内に予め挿入された状態で、最後に他方の第2プランジャー63の結合棒部80がコイルスプリング64内に挿入され、この際、他方の結合棒部80の先端挿入部81がコイルスプリング64内にスムーズに挿入できるようになっている。
抜け止め部82は、先端挿入部81がコイルスプリング64内に挿入されたとき、この先端挿入部81がコイルスプリング64から抜けないようにするための部分である。抜け止め部82は、先端挿入部81の基端部(結合棒部80と先端挿入部81の境界部分)に設けられている。抜け止め部82は、先端挿入部81の基端部を両側に突起させて形成されている。この両側に突起した抜け止め部82の幅寸法は、組み上げたときに、コイルスプリング64の端部の密着小径部84の内径よりも僅かに食み出すように設定されている(図10参照)。すなわち、第1プランジャー62の結合棒部69の両側に2つの結合棒部80が重ねられた状態で、結合棒部69の両側に重ね合わされる2つの抜け止め部82の外側に位置する4つの隅部(図10に示す、抜け止め部82の外側に位置する各2つの隅部)が、コイルスプリング64の端部の密着小径部84の内径よりも僅かに食み出すように設定されている。
バネ受け部76は、コイルスプリング64の一端が当接してその付勢力を受けるための部分である。バネ受け部76は、結合部75と接触片77との境界部分に設けられた段部である。結合部75の幅に比べて接触片77は幅を広く形成され、境界にできる幅の差を有する部分(段部)がバネ受け部76になっている。バネ受け部76にコイルスプリング64の端部の密着小径部84が当接することで、第2プランジャー63が、電気的接触子22内において、コイルスプリング64によってスライド可能に支持されている。
接触片77は、第2接触対象(バンプ電極13)に接触して電気的に接続するための部材である。接触片77は、結合部75の基端側(図12の上側)に続いて一体的に設けられている。接触片77は、幅寸法が上側ハウジング17の第2支持孔17Aの内径よりも少し小さい寸法のほぼ矩形板状部と、上側ハウジング17の上側受け部17Bを貫通してガイド板19の縮小部57に入り込む、矩形板状部の幅寸法より小さい幅寸法の先端部とで形成されている。接触片77には、矩形板状部と先端部の境に上側支持肩部79が形成されている。上側支持肩部79は、上側ハウジング17の上側受け部17Bに引っ掛かって、接触片77が第2支持孔17Aから抜け出ないようになっている。上側支持肩部79が上側ハウジング17の上側受け部17Bに引っ掛かった状態で、接触片77の上端部(図12参照)が第2支持孔17Aから上方へ突出するようになっている。
各接触片77の上端部先端は、2つの突起状に形成されている。すなわち、接触片77の先端の中央がU字状に窪んで凹部が形成され、凹部の両側に2つの突起77Aが形成されている。さらに、突起77Aには、テーパ面77B(図8参照)が形成されている。これにより、2つの突起77Aはそれぞれ、2つの切っ先状に形成されている。上述した凹部を挟んで対向する2つのテーパ面77Bが作る空間は、バンプ電極13の頂部の膨らみを受入る空間として働く。これにより、バンプ電極13と、第2プランジャー63との接触時に、バンプ電極13の頂部側は、2つのテーパ面77Bが作る空間に受け入れられ、第2プランジャー63の先端に接触してもバンプ電極13が過度に押し潰されることを防止できる。2つの第2プランジャー63が第1プランジャー62を挟持したときに、テーパ面77Bが周囲から見える外側に配設される(図8参照)。計4つの突起77Aが、バンプ電極13に確実に接触し、その接触点でバンプ電極13に多少刺さって、電気的に確実に接触するようになっている。
第2プランジャー63は、図12(B)及び(C)に示すように、2つの突起77Aが第2プランジャー63の幅方向に拡がり易い構成上の工夫(スリット)を導入するようにしても良い。
コイルスプリング64は、図13に示すように、第1プランジャー62及び第2プランジャー63の結合棒部69、80の外周を覆い、各バネ受け部67、76にそれぞれ各端部が当接して各プランジャー62、63に対して上下動を許容するように支持し、第1プランジャー62及び第2プランジャー63間を電気的に導通させる部材である。コイルスプリング64の両端部間に、第1プランジャー62及び第2プランジャー63の結合部66、75が重ね合わさって状態で支持される。
コイルスプリング64は、中間部が大径で両端部が小径に形成されている。中間部の径は、第1プランジャー62の結合棒部69と、それを挟み込む2つの第2プランジャー63の結合棒部80の作る断面形状が当接しない大きさ(図9参照)に選定されており、中間部が伸縮するコイルスプリングとして機能する部分である。中間部の外径は、第1プランジャー62及び第2プランジャー63の最大幅寸法より少し大きく設定されている。コイルスプリング64における小径の両端部は密着小径部84となっている。密着小径部84の内径は、第1プランジャー62の結合棒部69と、それを挟み込む2つの第2プランジャー63の結合棒部80の作る断面形状に外接する外接円の径よりも僅かに小さく設定されている。
信号波形重視電気的接触子20は、1つの第1のプランジャー62と2つの第2のプランジャー63とを、それぞれの接触片68、77を反対の向きにして結合部66、75を重ね合わせた状態でコイルスプリング64により一体とされ、各バネ受け部67、76の位置でコイルスプリング64を係止し、第1のプランジャー62及び第2のプランジャー63を離間不能にしかもスライド可能に組み立てられたものである。
次に、第1の実施形態の電気的接触子200の構成を説明する。図1、図14〜図19はそれぞれ、第1の実施形態の電気的接触子200の全体又は構成要素を示す斜視図又は投影図である。
第1の実施形態の電気的接触子200は、2つのプランジャー263と、1つのプランジャー兼用コイルスプリング201とを有する。
第1の実施形態の電気的接触子200における2つのプランジャー263は、信号波形重視電気的接触子20における2つの第2のプランジャー63と同一又は同様なものである。そのため、プランジャー263の詳細構成の説明は省略する(図12参照)。第1の実施形態の電気的接触子200におけるプランジャー263と、信号波形重視電気的接触子20における第2のプランジャー63とが同一の場合に、第1の実施形態の電気的接触子200と信号波形重視電気的接触子20とで部品を共通化でき、コスト削減に寄与できる。
以下の説明においては、プランジャー263の各部に対する符号として、第2のプランジャー63における対応する部分の符号より「200」だけ大きい符号を用い、プランジャー263の各部要素を特定することとする。
プランジャー兼用コイルスプリング201は、この1部材で、信号波形重視電気的接触子20における第1のプランジャー62とコイルスプリング64の機能を共に発揮するような部材である。
プランジャー兼用コイルスプリング201は、プランジャー部262とコイルスプリング部264とを有する。
プランジャー部262は、信号波形重視電気的接触子20における第1のプランジャー62と同様な機能を発揮する部分である。プランジャー部262は、第1の実施形態の電気的接触子200が接触する2部材のうちの第1接触対象(第1の実施形態の電気的接続装置11に適用されている場合には配線基板15のコンタクトパッド22)に接触するための部分であり、プランジャー部262を構成している線材部分は同一平面上に設けられている。この平面は、信号波形重視電気的接触子20における第1のプランジャー62の板材が設けられている平面に対応付けることができる。プランジャー部262は、結合部266と接触部268とを有する。
接触部268は、当該電気的接触子200の第1接触対象(配線基板15のコンタクトパッド22)に接触して電気的に接続する部分である。接触部268は、コイルスプリング部264から連続している線材を、第1のプランジャー62における接触片68の外形に沿って這わせたと同様な形状を有し、その形状が接触片68の外形にほぼ一致するようになされている。そのため、下側支持肩部273も備え、下側支持肩部273は、下側ハウジング16の下側受け部16Bに引っ掛かって、接触部268が不必要に第1支持孔16Aから突出しないようになっている。接触部268の先端部形状は、図18に示すものに限定されず、図20に例示するような他の形状を有していても良い。図20(A)は2点で接する先端部形状の例を示し、図20(B)は直線状に接する先端部形状の例を示し、図20(C1)及び図20(C2)は線材が延長している平面から一部が食み出し、接触長さを長くした先端部形状の例を示している。
結合部266は、コイルスプリング部264の内部空間内で、2つのプランジャー263に挟持され、プランジャー部262と2つのプランジャー263とを電気的に結合する線材部分である。結合部266を構成する線材は、接触部268を構成する線材から連続している。2つのプランジャー263に挟持されるように、上述した平面上に線材を直線状若しくは曲線状に延長させて結合部266を形成させれば良く、線材が描く軌跡は限定されない。図21は、結合部266の線材が描く軌跡の数例を示している。図21(A)は、接触部268から線材を僅かに引き出して結合部266とした例を示している。図21(B)は、接触部268から線材を上方に波状に引き出して結合部266とした例を示している。図21(C)は、接触部268から線材を上方に直線状に引き出して結合部266とした例を示している。図21(D)は、接触部268から線材を上方に直線状に引き出し、その後、下方に直線状に折り返して結合部266とした例を示している。図21(B)〜図21(D)に示すような、接触部268の上方にある程度の長さを確保した結合部266の長さは、結合部266を挟持するプランジャー263の結合棒部280の長さ以下となるように選定されている。
コイルスプリング部264は、2つのプランジャー263を支持すると共に、圧縮時には、プランジャー263を上方に、自己から連続するプランジャー部262の接触部268を下方に付勢するものである。コイルスプリング部264は、上端部及び中間部が大径で下端部が小径に形成されている。上端部及び中間部の径は、プランジャー部262の結合部266と、それを挟み込む2つのプランジャー263の結合棒部280の作る断面形状が当接しない大きさ(図16参照)に選定されている。コイルスプリング部264の上端の線材は、2つのプランジャー263の間に挟まれるように、上端部及び中間部を上方から見た場合の円形を2分する線(直径)上を延びている(図16参照)。中間部が、伸縮するコイルスプリングとして機能する部分である。コイルスプリング部264における小径の下端部は密着小径部284となっている。密着小径部284が、プランジャー部262とそれを挟持した2つのプランジャー263となる部分を小径により締め付けて(図17参照)、プランジャー部262及びプランジャー263を相互にスライド可能に支持する部分である。
第1の実施形態の電気的接触子200では、コイルスプリング部264の下端部にだけ密着小径部284を設けたものであったが、コイルスプリング部264の上端部や中間部の一部などにも密着小径部を設けて、プランジャー部262及びプランジャー263を相互にスライド可能に支持する部分を増やし、より安定な支持を行うことができるようにしても良い。
以上のように構成された信号波形重視電気的接触子20や第1の実施形態の電気的接触子は、次のようにして使用される。
まず、電気的接続装置11に被検査体12が装着される。このとき、被検査体12は、ガイド板19の受入凹部53に装着される。すなわち、被検査体12は、上側開口53Aの傾斜面53Bに沿って位置決めされながら底板部55に装着される。これにより、被検査体12のバンプ電極13が底板部55のガイド孔56に受け入れられる。また、信号波形重視電気的接触子20の接触片77の上端部や第1の実施形態の電気的接触子200の接触片277の上端部は、縮小部57に受け入れられている。
この状態で、被検査体12が押し下げられると、各バンプ電極13が、信号波形重視電気的接触子20における2つの第2プランジャー63の突起77Aや、第1の実施形態の電気的接触子200における2つのプランジャー263の突起277Aに接触して、各電気的接触子20、200が押し縮められる(例えば、図5の状態から図6の状態への変化参照)。
接触片77、277の先端の突起77A、277Aがバンプ電極13に接触しようとするとき、突起77A、277Aはバンプ電極13の球面上を円周方向に滑ろうとして、互いに相離れる方向へ移動する力が働いてバンプ電極13に確実に接触する。
信号波形重視電気的接触子20が押し縮められた状態で、スライド可能に挟持された第1プランジャー62及び第2プランジャー63間は電気的に確実に接触される。また、第1の実施形態の電気的接触子200が押し縮められた状態で、スライド可能に挟持されたプランジャー兼用コイルスプリング201のプランジャー部262と、プランジャー263との間は電気的に接触される。
ここで、2つの第2プランジャー63や2つのプランジャー263はそれぞれ、独立してスライドするようになっているため、バンプ電極13が変形している場合等、2つの第2プランジャー63の突起77Aや2つのプランジャー263の突起277Aへの接触部分の高さが違う場合でも、2つの第2プランジャー63や2つのプランジャー263がその形状に追随してずれながら接触する。
これにより、2つの接触対象(配線基板15のコンタクトパットとバンプ電極13)間が信号波形重視電気的接触子20や第1の実施形態の電気的接触子200で電気的に接続される。この状態で、信号波形重視電気的接触子20や第1の実施形態の電気的接触子200を介して2つの接触対象間に電気的信号が伝送される。
信号波形重視電気的接触子20においては、第1プランジャー62及び第2プランジャー63が共に平板状に形成され、面接触により電気的信号を授受する。一方、第1の実施形態の電気的接触子200においては、プランジャー兼用コイルスプリング201のプランジャー部262は線材で形成され、プランジャー263が平板状に形成され、線接触により電気的信号を授受する。そのため、電気的信号の授受の観点からは、信号波形重視電気的接触子20の方が第1の実施形態の電気的接触子200より性能が高いということができる。
第1の実施形態の電気的接続装置11が適用される検査装置において、被検査体12から取り込む信号は、信号波形の形状のウェイトが大きい信号もあれば、信号波形より任意時点での論理(「1」か「0」)や定電圧値や定電流値にウェイトが大きい信号(デジタル信号など)もある。すなわち、2つの接触対象間の伝送に要求される精度に厳しい信号があれば、それよりも精度の要求が緩い信号もある。第1の実施形態の電気的接続装置11では、前者の信号を伝送する箇所には信号波形重視電気的接触子20を適用し、後者の信号を伝送する箇所には第1の実施形態の電気的接触子200を適用している。
第1の実施形態の電気的接触子200によれば、以下の効果を奏することができる。
第1の実施形態の電気的接触子200によれば、プランジャー兼用コイルスプリングが1部材でプランジャーの機能とコイルスプリングの機能とを発揮するため、部品数を少なくできる。その結果、簡易な組立て工程や低廉化を期待できる。
また、プランジャー兼用コイルスプリングにおける第1接触対象と接触する部分は、プランジャーに近似した外形形状を有しているので、接触対象との接触を良好なものとすることができる。上述したように、特許文献2に記載のコイルスプリングで接触対象と接触する技術では、螺旋線材の端部で接触対象と接触しているため、接触が悪いものとなっていた。
さらに、第1の実施形態の電気的接触子200によれば、当該電気的接触子200におけるプランジャー263として、信号波形重視電気的接触子20における第2プランジャー63と同じ部材を適用することも可能であり、この点からも、安価にすることが可能である。
さらにまた、第1の実施形態の電気的接触子200によれば、長さが異なる第1の実施形態の電気的接触子200を実現する場合において、プランジャー兼用コイルスプリング201の長さ(例えば、接触部の長さ)を変えることで対応可能であり、プランジャー263を、異なる長さの電気的接触子で共用することができる。また、プランジャー兼用コイルスプリング201の線材の径の選定により、2つのプランジャー263間の間隔を容易に選定することができる。
また、第1の実施形態の電気的接触子200によれば、第1接触対象との接触部分として、コイル線材を折り曲げて形成した接触部を適用するようにしているので、先端形状の自由度が高く、接触対象の形状などに応じた先端形状を適用することができる。
第1の実施形態の電気的接続装置11によれば、信号波形重視電気的接触子20及び第1の実施形態の電気的接触子200を測定時に流れる信号の性質等に応じて使い分けるようにしたので、信号波形をさほど重視していない箇所の2部材の接触対象間に電気的接触子200を適用でき、各箇所に応じて、その箇所に適した品質な電気的接触子を適用することができる。その結果、第1の実施形態の電気的接続装置11を安価なものとすることができる。
(B)他の実施形態
上記第1の実施形態の説明においても種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
第1の実施形態の電気的接続装置11では、信号波形重視電気的接触子20及び第1の実施形態の電気的接触子200を混在したものであったが、搭載している電気的接触子が全て第1の実施形態の電気的接触子200であるように電気的接続装置を構成しても良いことは勿論である。
上記では、第2プランジャー63を2つ第1プランジャー62を1つ設けた信号波形重視電気的接触子20や、プランジャー263を2つプランジャー兼用コイルスプリング201におけるプランジャー部262が1つの第1の実施形態の電気的接触子200を示したが、第1接触対象や第2接触対象に接続するプランジャーやプランジャー部がそれぞれ1つずつ設けるようにしても良い。この場合、コイルスプリング64やプランジャー兼用コイルスプリング201の両端又は一端の密着小径部の径を、1つずつのプランジャーやプランジャー部を考慮して選定し、支持できるようにすれば良い。逆に、第1接触対象に接続するプランジャーが1つで第2接触対象に接続するプランジャー又はプランジャー部が2つであっても良い。コイル線材で2つのプランジャー部を構成する場合、接触部に相当する部分を上下方向に2重巻きするようにして構成すれば良い。
本発明の電気的接触子は、配線基板や半導体集積回路等に備えられた電極などに接触される装置全般に用いることができる。また、本発明の電気的接続装置は、本発明の電気的接触子を少なくとも一部に用いた装置であり、装置の用途は検査装置に限定されるものではない。