以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
本実施形態では、電気光学装置として画素ごとに薄膜トランジスター(Thin Film Transistor;以降TFTと称す)を備えたアクティブ駆動型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば後述する投写型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
(第1実施形態)
<電気光学装置>
まず、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1(a)は液晶装置の構成を示す概略平面図、図1(b)は図1(a)に示す液晶装置のH−H’線に沿った概略断面図である。図2は液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の液晶装置100は、互いに対向配置された素子基板10及び対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層50とを有する。素子基板10の基材10s及び対向基板20の基材20sは、透光性を有する例えば石英基板やガラス基板などが用いられている。なお、本明細書における透光性とは、可視光領域の波長の光を少なくとも85%以上透過可能な性質を言う。
素子基板10は、対向基板20よりも一回り大きい。素子基板10と対向基板20とは、対向基板20の外縁部に沿って額縁状に配置されたシール材40を介して貼り合わされ、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて、液晶層50が構成されている。シール材40は、例えば熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材40には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのスペーサー(図示省略)が混入されている。
シール材40の内側には、複数の画素Pがマトリックス状に配列した表示領域Eが設けられている。また、対向基板20には、シール材40と表示領域Eとの間に表示領域Eを取り囲む見切り部21が設けられている。見切り部21は、例えば遮光性の金属あるいは金属酸化物などで構成されている。なお、表示領域Eは、表示に寄与する複数の画素Pに加えて、複数の画素Pを囲むように配置されたダミー画素を含むとしてもよい。
素子基板10には、複数の外部接続端子104が配列した端子部が設けられている。素子基板10の上記端子部に沿った第1の辺部とシール材40との間にデータ線駆動回路101が設けられている。また、第1の辺部に対向する第2の辺部に沿ったシール材40と表示領域Eとの間に検査回路103が設けられている。さらに、第1の辺部と直交し互いに対向する第3の辺部及び第4の辺部に沿ったシール材40と表示領域Eとの間に走査線駆動回路102が設けられている。第2の辺部のシール材40と検査回路103との間には、2つの走査線駆動回路102を繋ぐ複数の配線105が設けられている。
これらデータ線駆動回路101、走査線駆動回路102に繋がる配線は、第1の辺部に沿って配置された複数の外部接続端子104に接続されている。以降、第1の辺部に沿った方向をX方向とし、第3の辺部及び第4の辺部に沿った方向をY方向として説明する。また、本明細書では、X方向およびY方向と直交し、対向基板20の法線方向から見ることを「平面視」あるいは「平面的」という。
図1(b)に示すように、素子基板10は、基材10s、並びに基材10sの液晶層50側の面に形成されたTFT30や画素電極15、及び画素電極15を覆う配向膜18などを有している。TFT30や画素電極15は、画素Pの構成要素である。画素Pの詳細は後述する。
対向基板20は、基材20s、並びに基材20sの液晶層50側の面に順に積層された見切り部21、平坦化層22、対向電極23、及び配向膜24などを有している。
見切り部21は、図1(a)に示すように表示領域Eを取り囲むと共に、平面的に走査線駆動回路102、検査回路103と重なる位置に設けられている。これにより対向基板20側からこれらの駆動回路を含む周辺回路に入射する光を遮り、周辺回路が光によって誤動作することを防止する役割を有している。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮光して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
平坦化層22は、例えばシリコン酸化物などの無機材料からなり、透光性を有して見切り部21を覆うように設けられている。このような平坦化層22は、例えばプラズマCVD法などを用いて形成されたシリコン酸化膜であり、平坦化層22上に形成される対向電極23の表面凹凸を緩和可能な程度の膜厚を有している。
対向電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなり、平坦化層22を覆うと共に、図1(a)に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部106により素子基板10側の配線に電気的に接続されている。
画素電極15を覆う配向膜18及び対向電極23を覆う配向膜24は、液晶装置100の光学設計に基づいて設定されており、シリコン酸化物などの無機材料の斜め蒸着膜(無機配向膜)が採用されている。配向膜18,24は、無機配向膜の他にポリイミドなどの有機配向膜を採用してもよい。
このような液晶装置100は透過型であって、画素Pが非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードや、非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードの光学設計が採用される。光の入射側と射出側とにそれぞれ偏光素子が光学設計に応じて配置されて用いられる。
次に、図2を参照して、液晶装置100の電気的な構成について説明する。液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する信号線としての複数の走査線3及び複数のデータ線6aと、容量線7とを有する。なお、図2では、データ線6aに沿って並行するように容量線7を示したが、本実施形態では、後述する保持容量16の一対の容量電極のうちの一方の容量電極が容量線7の機能を果たすように構成されている。
走査線3とデータ線6aとで区分された領域には、画素電極15と、TFT30と、保持容量16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
走査線3はTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30の第1ソース・ドレイン領域に電気的に接続され、画素電極15はTFT30の第2ソース・ドレイン領域に電気的に接続されている。
データ線6aは、データ線駆動回路101(図1参照)に接続されている。画像信号D1,D2,…,Dnは、データ線駆動回路101からデータ線6aを経由して各画素Pに供給される。走査線3は、走査線駆動回路102(図1参照)に接続されている。走査信号SC1,SC2,…,SCmは、走査線駆動回路102から走査線3を経由して各画素Pに供給される。
データ線駆動回路101から供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次でデータ線6aに供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路102は、走査線3に対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極15に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極15を介して液晶層50に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極15と対向電極23との間で一定期間保持される。
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極15と対向電極23との間に形成される液晶容量と並列に保持容量16が接続されている。保持容量16は、TFT30の第2ソース・ドレイン領域と容量線7との間に設けられている。
なお、図1(a)に示した検査回路103には、データ線6aが接続されており、液晶装置100の製造過程において、上記画像信号を検出することで液晶装置100の動作欠陥などを確認できる構成となっているが、図2の等価回路では省略している。
また、検査回路103は、上記画像信号をサンプリングしてデータ線6aに供給するサンプリング回路、データ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して供給するプリチャージ回路を含むものとしてもよい。
次に、液晶装置100における画素Pの構成について、図3を参照して説明する。図3は画素の配置を示す概略平面図である。
図3に示すように、液晶装置100における画素Pは、例えば平面視で略四角形(略正方形)の開口領域を有する。開口領域は、X方向とY方向とに延在し格子状に設けられた遮光性の非開口領域により囲まれている。
X方向に延在する非開口領域には、図2に示した走査線3が設けられている。走査線3は遮光性の導電部材が用いられており、走査線3によって非開口領域の一部が構成されている。
同じく、Y方向に延在する非開口領域には、図2に示したデータ線6aが設けられている。データ線6aも遮光性の導電部材が用いられており、これらによって非開口領域の一部が構成されている。
非開口領域は、素子基板10側に設けられた上記信号線類によって構成されるだけでなく、対向基板20側において見切り部21と同層に設けられ格子状にパターニングされた遮光膜によっても構成されている。
非開口領域の交差部付近には、図2に示したTFT30が設けられている。遮光性を有する非開口領域の交差部付近にTFT30を設けることにより、開口領域における開口率を確保している。詳しい画素Pの構造については後述するが、交差部付近にTFT30を設ける関係上、交差部付近の非開口領域の幅は、他の部分に比べて広くなっている。
画素Pごとに画素電極15が設けられている。画素電極15は平面視で略正方形であり、画素電極15の外縁が非開口領域と重なるようにして開口領域に設けられている。なお、図3には図示していないが、開口領域には透光性を有する保持容量16が配置されている。
本実施形態の液晶装置100は、透過型であって、対向基板20側から光が入射することを前提として、素子基板10には、TFT30に直接に入射する光を遮光するだけでなく、入射した光が非開口領域の縁部(言い換えれば、開口領域の縁部)で回折して生ずる回折光をも遮光して、TFT30の光リーク電流の発生を抑制可能な遮光構造が取り入れられている。以降、素子基板10の遮光構造について説明する。
<素子基板の遮光構造>
素子基板10における遮光構造について、図4〜図7を参照して説明する。図4は画素における薄膜トランジスター、薄膜トランジスターに関連する電極や走査線などの配置を示す概略平面図、図5は画素におけるデータ線、保持容量などの配置を示す概略平面図である。図6は図5のA−A’線で切った素子基板の構造を示す概略断面図、図7は図4のB−B’線で切った素子基板の構造を示す概略断面図である。
図4に示すように、走査線3は、複数の画素Pに跨ってX方向に延在する第1の部分3aと、画素Pごとに設けられ、第1の部分3aからY方向に突出する第2の部分3b及び第3の部分3cとを有する。また、走査線3は、第1の部分3aや第2の部分3b(第3の部分3c)よりもX方向及びY方向に幅が拡張された第4の部分3dを有する。Y方向に突出する第2の部分3b及び第3の部分3cは、後述するデータ線6a(図5参照)と平面的に重なるように配置されている。
走査線3上において、第4の部分3dを挟んだ第2の部分3bと第3の部分3cとに亘る領域にTFT30の半導体層30aが配置されている。半導体層30aは例えば高温ポリシリコンからなり、チャネル領域30cと、第1ソース・ドレイン領域30sと、第2ソース・ドレイン領域30dとを有している。第1ソース・ドレイン領域30sは、走査線3の第3の部分3cに重なる位置に配置され、第2ソース・ドレイン領域30dは、走査線3の第2の部分3bに重なる位置に配置されている。第1ソース・ドレイン領域30sと第2ソース・ドレイン領域30dに挟まれたチャネル領域30cは、主に走査線3の第4の部分3dに重なる位置に配置されている。
第1ソース・ドレイン領域30sの端部には、データ線6a(図5参照)との電気的な接続を図るコンタクトホールCNT1が設けられている。詳しくは、平面視で第1ソース・ドレイン領域30sと重なる位置にデータ線6aとの電気的な接続を図る中継層5が設けられ、コンタクトホールCNT1は中継層5に接続している。中継層5とデータ線6aとの間にはコンタクトホールCNT3が設けられている。第2ソース・ドレイン領域30dの端部には、保持容量16や画素電極15との電気的な接続を図るコンタクトホールCNT2が設けられている。つまり、本実施形態において、コンタクトホールCNT1はTFT30のソース電極31として機能し、コンタクトホールCNT2はTFT30のドレイン電極32として機能するものである。
半導体層30aのチャネル領域30cに重なる位置にゲート電極30gが配置されている。ゲート電極30gは、走査線3の第4の部分3dに重なる位置において、チャネル領域30cと重なる部分と、X方向においてチャネル領域30cを挟んで対向し、Y方向に延在する部分とを有している。このY方向に延在する部分には、下層の走査線3に至るコンタクトホール33及びコンタクトホール34が設けられている。つまり、ゲート電極30gは、チャネル領域30cを挟んで設けられた2つのコンタクトホール33,34を介して走査線3に電気的に接続している。
TFT30は、上述した半導体層30aとゲート電極30gとを含むものである。TFT30が配置された走査線3とデータ線6aとの交差部分には、TFT30のドレイン電極32と保持容量16や画素電極15との電気的な接続を図るための中継層4が設けられている。中継層4は、上記交差部分からX方向に突出する第1の部分4a及び第4の部分4cと、上記交差部分からY方向に突出する第2の部分4b及び第3の部分4dとを有している。
中継層4のY方向に突出する第2の部分4bはドレイン電極32として機能するコンタクトホールCNT2と重なるように配置され電気的に接続されている。中継層4のY方向に突出するもう一方の第3の部分4dは、平面視で中継層5と重ならないように配置されている。詳しくは後述するが、中継層4と中継層5は、基材10s上において同一の配線層に設けられている。
中継層4のX方向に突出する第1の部分4aの端部に近い位置に、後述する中継層6b(図5参照)との電気的な接続を図るためのコンタクトホールCNT4が設けられている。図4ではコンタクトホールCNT1,CNT2,CNT3,CNT4の形状を平面視で正方形としたが、これに限定されず、円形や楕円形であってもよい。
図4に示した、走査線3、中継層4、中継層5のそれぞれは、図3に示した非開口領域を構成する要素の1つである。
図5に示すように、TFT30のコンタクトホールCNT1(ソース電極31),CNT2(ドレイン電極32)及びコンタクトホールCNT3と重なる位置においてY方向に延在するようにデータ線6aが設けられている。X方向において隣り合うデータ線6aの間に、画素Pごとに独立した中継層6bが設けられている。中継層6bは、平面視で略長方形であり、X方向に延びる長手方向の中間にコンタクトホールCNT4が設けられている。中継層6bは、前述したようにコンタクトホールCNT4によって下層の中継層4と電気的に接続されている。
詳しくは後述するが、データ線6aと中継層6bとは、基材10s上において同じ配線層に設けられている。基材10s上において、データ線6aや中継層6bが設けられた配線層の上層に、複数の画素Pに跨るようにして保持容量16の一対の容量電極のうちの下側電極16aが設けられている。下側電極16aは複数の画素Pに共通する容量線7として機能するものである。保持容量16の一対の容量電極のうちの上側電極16bは、隣り合うデータ線6aの間において、画素Pごとに独立して設けられている。上側電極16bは、平面視で略正方形であり、X方向に対向する2辺部のそれぞれの外縁は、平面視でデータ線6aと重なっている。また、上側電極16bのY方向に対向する2辺部のうちの一方の辺部が平面視で中継層6bと重なっている。下側電極16aと上側電極16bとは、それぞれ例えばITOやIZOなどの透明導電膜を用いて形成されている。
中継層6bには、コンタクトホールCNT4を挟んだX方向の両側にコンタクトホールCNT5とコンタクトホールCNT6とが配置されている。コンタクトホールCNT5及びコンタクトホールCNT6は、それぞれ下側電極16aに接触しないように下側電極16aを貫通して設けられている。コンタクトホールCNT5は、平面視で中継層6bと上側電極16bとが重なる位置に設けられ、中継層6bと上側電極16bとを電気的に接続している。上側電極16bはコンタクトホールCNT6と接触しないように切り欠かれている。コンタクトホールCNT6は、中継層6bと画素電極15との電気的な接続を図るために設けられている(図6参照)。平面視におけるコンタクトホールCNT5,CNT6の形状は、長手方向がX方向に沿った略長方形である。略長方形とは、角部が円弧状となったものを含むものである。
図5に示した、データ線6a、中継層6bのそれぞれは、図3に示した非開口領域を構成する要素の1つである。
次に、図6を参照して画素電極15とTFT30との電気的な接続における断面構造を説明する。図6に示すように、素子基板10の基材10s上には、順に、走査線3を含む第1層、TFT30などを含む第2層、中継層4,5を含む第3層、データ線6aなどを含む第4層、保持容量16などを含む第5層、画素電極15などを含む第6層(最上層)が形成されている。また、第1層と第2層との間には第1層間絶縁膜11aが形成され、第2層と第3層との間には第2層間絶縁膜11cが形成されている。第3層と第4層との間には第3層間絶縁膜12が形成され、第4層と第5層との間には第4層間絶縁膜13が形成され、第5層と第6層との間には第5層間絶縁膜14が形成されている。これにより、前述の各要素間が短絡することを防止している。また、これらの層間絶縁膜には、前述の各要素間の電気的な接続を図るコンタクトホールなどが形成されている。以下、これらの各要素について、順に説明を行う。なお、第1層から第3層までの各要素の平面的な配置が図4に図示され、第4層から第5層までの各要素の平面的な配置が図5に図示されている。
まず、第1層には、例えば、Ti、Cr、Mo、Ta、W、などの高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの、あるいは導電性ポリシリコンなどからなる走査線3が形成される。特に、走査線3は、基材10s側から入射する戻り光を遮光すると共に、対向基板20側から入射する入射光を反射させないという観点から、金属シリサイドを用いて形成することが好ましく、本実施形態では走査線3はWSi(タングステンシリサイド)を用いて形成されている。走査線3の膜厚は例えばおよそ200nmである。
次に、走査線3を覆う第1層間絶縁膜11aが形成される。第1層間絶縁膜11aは、例えば酸化シリコンを用いて形成される。第1層間絶縁膜11aの膜厚は例えばおよそ400nmである。
続いて、第2層として、第1層間絶縁膜11a上に半導体層30aが形成される。半導体層30aは例えばポリシリコンからなり、不純物イオンが選択的に注入されて、第1ソース・ドレイン領域30s、接合領域30e、チャネル領域30c、接合領域30f、第2ソース・ドレイン領域30dを含むLDD(Lightly Doped Drain)構造が構築されている。半導体層30aの膜厚は例えばおよそ40nmである。
次に、半導体層30aを覆うゲート絶縁膜11bが形成される。ゲート絶縁膜11bは例えば酸化シリコンを用いて形成される。ゲート絶縁膜11bの膜厚は例えばおよそ50nmである。
次に、第1層間絶縁膜11a及びゲート絶縁膜11bに、溝状の貫通孔が形成される。この貫通孔を埋めるように導電膜を成膜してパターニングすることにより、ゲート電極30gと一対のコンタクトホール33,34とが形成されている。なお、図6では、一対のコンタクトホール33,34のうち、コンタクトホール34を図示し、コンタクトホール33の図示を省略している。これにより、TFT30の半導体層30aの一部は、図4に示されているように、平面視で側方からコンタクトホール33,34によって覆われておる。コンタクトホール33,34は、図4に示したように、平面視でY方向に延在する半導体層30aのうちチャネル領域30cから第2ソース・ドレイン領域30dに掛けて並行して設けられている。したがって、半導体層30aを挟む一対のコンタクトホール33,34側から入射する光を遮光することができるものの、半導体層30aのすべての側方に対して遮光する機能を有するものではない。
コンタクトホール33,34は、その下端が走査線3と接するように形成されている。したがって、ある行(X方向)に存在するゲート電極30g及び走査線3は、当該行に着目する限り、常に同電位となる。
ゲート電極30gに用いられる導電膜としては、例えば導電性ポリシリコン膜が挙げられる。ゲート電極30gの膜厚は例えばおよそ100nmである。
そして、TFT30のゲート電極30g、ゲート絶縁膜11bを覆う第2層間絶縁膜11cが形成される。第2層間絶縁膜11cは例えば酸化シリコンを用いて形成され、膜厚は例えばおよそ300nmである。
ゲート絶縁膜11b及び第2層間絶縁膜11cには、半導体層30aの第1ソース・ドレイン領域30s及び第2ソース・ドレイン領域30dと重なる位置において貫通孔が形成され、該貫通孔の内部を埋めるように、第2層間絶縁膜11c上に導電膜を成膜してパターニングすることにより、中継層5及びコンタクトホールCNT1、中継層4及びコンタクトホールCNT2とが形成されている。第3層である中継層4は平面視でゲート電極30gと重なるように形成されている(図4参照)。第3層である中継層4及び中継層5に用いられる導電膜としては、低抵抗配線材料である例えば、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)などの金属やその金属化合物が挙げられる。本実施形態では、中継層4,5は、Ti(チタン)層/TiN(窒化チタン)層/Al(アルミニウム)層/TiN(窒化チタン)層の4層構造となっている。中継層4,5は、金属層であるTi層とAl層とを含む。Ti層の膜厚は例えばおよそ20nm、先のTiN層の膜厚は例えば50nm、Al層の膜厚は例えば350nm、後のTiN層の膜厚は例えば150nmである。
ゲート絶縁膜11b及び第2層間絶縁膜11cのうち、平面的に第3層(配線層)である中継層4や中継層5と重なる領域には、半導体層30aに向かって窪み、逆テーパー状の側壁11dを有する凹部11eが設けられている。側壁11dと中継層4(中継層5)との間に遮光層41が設けられている。遮光層41は、金属であるTi(チタン)の窒化物であるTiN(窒化チタン)が用いられている。つまり、凹部11eの側壁11dを覆う遮光層41と、中継層4,5のTi層とが接している。凹部11eは、中継層4や中継層5が設けられた領域に亘って設けられていることから、平面的に半導体層30aが設けられた領域は、凹部11eが設けられた領域に含まれる。凹部11eの側壁11dは、半導体層30aが設けられた領域の外側に位置している。側壁11dを覆うように設けられた遮光層41は、TiN(窒化チタン)が用いられているので、金属であるTi(チタン)を用いる場合に比べて、可視光波長領域の光を吸収し易いという性質を有している。なお、本実施形態における「逆テーパー状」とは、凹部11eの底面に対する側壁11dの角度が90度以上であることを言う。言い換えれば、凹部11eの底面に対する側壁11dの角度が90度であるものも含む。
次に、中継層4,5を覆う第3層間絶縁膜12が形成される。第3層間絶縁膜12は例えば酸化シリコンを用いて形成され、膜厚は例えばおよそ400nmである。第3層間絶縁膜12の中継層5と重なる位置に、第3層間絶縁膜12を貫通する貫通孔が形成される。また、第3層間絶縁膜12の中継層4における第1の部分4aと重なる位置に、第3層間絶縁膜12を貫通する貫通孔が形成される。これらの貫通孔の内部を埋めるように、第3層間絶縁膜12上に導電膜を成膜してパターニングすることにより、第4層であるデータ線6a及び中継層6bと、コンタクトホールCNT3及びコンタクトホールCNT4が形成される。第4層に用いられる導電膜としては、上記第3層と同様な金属または金属化合物を用いることができる。本実施形態では、第4層は、Al(アルミニウム)/TiN(窒化チタン)の2層構造となっている。
次に、第4層であるデータ線6a及び中継層6bを覆う第4層間絶縁膜13が形成される。第4層間絶縁膜13は例えば酸化シリコンを用いて形成される。第4層間絶縁膜13の膜厚は例えばおよそ400nmである。第4層間絶縁膜13は、成膜後の表面が下層の配線構造により凹凸を生ずるので、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理などの平坦化処理が施される。
次に、平坦化処理が施された第4層間絶縁膜13上に第5層である保持容量16が形成される。具体的には、まず、第4層間絶縁膜13上に例えばITOやIZOなどの透明導電膜を成膜してパターニングすることにより保持容量16の下側電極16aが形成される。下側電極16aの膜厚は例えばおよそ140nmである。下側電極16aは、図5に示したように、複数の画素Pにおける共通の容量線7として少なくとも表示領域Eに亘って形成される。また、下側電極16aは、保持容量16の上側電極16bと中継層6bとの電気的な接続を図るコンタクトホールCNT5や、画素電極15と中継層6bとの電気的な接続を図るコンタクトホールCNT6に接触しないように、コンタクトホールCNT5,CNT6と重なる部分に開口を有するようにパターニングされる。
次に、下側電極16aを覆う誘電体層16cが形成される。誘電体層16cは、誘電率が異なる誘電体材料を用いて形成された複数の層からなる。誘電体層16cの膜厚は例えばおよそ30nmである。誘電体材料としては、例えば、酸化ハフニウムや酸化アルミニウム、酸化シリコン膜や窒化シリコン膜、酸化タンタル(Ta2O5)などを挙げることができる。これらの誘電率が異なる層を組み合わせることで、透光性を確保しながらより大きな電気容量を実現することができる。
次に、平面視で中継層6bと重なる位置において、第4層間絶縁膜13及び誘電体層16cを貫通する貫通孔が形成される。そして、この貫通孔の内部を被覆するように、誘電体層16cを覆う例えばITOやIZOなどの透明導電膜を成膜してパターニングすることにより保持容量16の上側電極16bとコンタクトホールCNT5とが形成される。上側電極16bの膜厚は例えばおよそ140nmである。
次に、上側電極16b及びコンタクトホールCNT5を覆う第5層間絶縁膜14が形成される。第5層間絶縁膜14は、第1絶縁膜14aと、第1絶縁膜14aに積層された第2絶縁膜14bとを含むものである。より具体的には、まず、上側電極16b及びコンタクトホールCNT5を覆うNSG(Non doped Silicate Glass)膜を例えばプラズマCVD法で膜厚が400nm程度となるように形成する。そして、コンタクトホールCNT5などを覆うことで生じたNSG膜の表面の凹凸を緩和する目的で、例えばCMP処理などの平坦化処理が施される。平坦化処理後の上側電極16b上のNSG膜つまり第1絶縁膜14aの膜厚は例えばおよそ100nmである。そして、第1絶縁膜14aを覆う第2絶縁膜14bが形成される。第2絶縁膜14bは、第1絶縁膜14aと異なる材料を用いて第1絶縁膜14aよりも膜厚が薄くなるように形成される。第2絶縁膜14bは、例えばBSG(Boron doped Silicate Glass)膜であって、例えばプラズマCVD法を用いて形成される。第2絶縁膜14bの膜厚は例えばおよそ75nmである。
次に、平面視で中継層6bと重なる位置において、第4層間絶縁膜13及び誘電体層16c並びに第5層間絶縁膜14を貫通する貫通孔が形成される。そして、この貫通孔の内部を被覆するように、第5層間絶縁膜14を覆うITOなどの透明導電膜を成膜してパターニングすることにより、画素電極15とコンタクトホールCNT6とが形成される。画素電極15は、図3に示したように、画素Pの開口領域において保持容量16と重なり、画素電極15の外縁部が非開口領域と重なるように形成される。本実施形態では、対向基板20側から入射した光は、対向基板20や液晶層50を透過すると共に、画素Pの開口領域に配置された画素電極15及び保持容量16を透過して素子基板10側から射出される。本実施形態では、透明導電膜からなる画素電極15、下側電極16a、上側電極16bのそれぞれの膜厚をおよそ140nmとしている。これにより、入射光が画素電極15及び保持容量16を透過することで光学的に減衰することを抑制している。また、画素電極15の膜厚をおよそ140nmとすることで、コンタクトホールCNT5よりも深いコンタクトホールCNT6の被覆性を向上させて、画素電極15と中継層6bとの電気的な接続を安定化している。
本実施形態において、基材10sが本発明の「基板」に相当するものであり、第2層間絶縁膜11cが本発明の「層間絶縁膜」に相当するものである。また、中継層4,5が本発明の「配線層」に相当するものである。
図7に示すように、基材10s上には、走査線3、半導体層30a、ゲート電極30g、中継層4、データ線6a、保持容量16、画素電極15がこの順に配置されている。ゲート電極30gは、半導体層30aのチャネル領域と対向するように設けられ、ゲート絶縁膜11bと第1層間絶縁膜11aとを貫通するコンタクトホール33,34によって走査線3と電気的に接続されている。このようなゲート電極30gと半導体層30aとを含むTFT30は、基材10s上において、それぞれ遮光性を有する走査線3と中継層4との間に配置されている。
ゲート電極30gと中継層4との間に設けられた第2層間絶縁膜11cには、ゲート電極30gの直上に凹部11eが設けられている。X方向における凹部11eの幅は、同じくX方向におけるゲート電極30gの幅とほぼ等しい。半導体層30a側に窪んだ凹部11eの深さは、およそ100nmである。第2層間絶縁膜11cの膜厚がおよそ300nmであることから、凹部11eの底部とゲート電極30gとの間の距離は、およそ200nmである。遮光層41は、凹部11eの逆テーパー状の側壁11dを覆うように設けられている。中継層4は、遮光層41が設けられた凹部11eを埋めるように設けられている。X方向における中継層4の幅は、X方向における凹部11eの幅よりも広く、同じくX方向におけるゲート電極30gや走査線3の幅よりも広い。遮光層41が設けられた凹部11eの側壁11dは、X方向において半導体層30aが設けられた領域の外側に位置している。言い換えれば、遮光層41は、X方向において半導体層30aが設けられた領域の外側に位置している。
このような素子基板10において、対向基板20側から光軸に沿って画素Pの中央部に入射した光L1は、透光性の画素電極15や保持容量16を透過し、走査線3や中継層4などにより構成される非開口領域で囲まれた開口領域を通過して、基材10sから射出される。
素子基板10の非開口領域の縁部、言い換えれば開口領域の縁部に入射した光L2は、中継層4の端部で回折して回折光となる。中継層4の直下に位置する第2層間絶縁膜11cの部分は掘り下げられており、掘り下げられた凹部11eの側壁11dには遮光層41が設けられている。凹部11eは平面視で半導体層30aが設けられた領域を含む領域に亘って設けられ、遮光層41は半導体層30aが設けられた領域の外側に配置されていることから、中継層4の端部で生じた上記回折光は遮光層41によって遮光され、半導体層30aに入射しなくなる。
上記回折光が半導体層30aに入射するとTFT30において光リーク電流が生ずるおそれがあることから、上記回折光を遮光することは有効である。特に、画素Pの開口率、すなわち単位面積当たりの開口領域の面積の割合を高めて明るい表示を実現するために、非開口領域の幅(本実施形態では、中継層4,5のX方向の幅)を狭くすると、上記回折光が半導体層30aに入射し易くなる。したがって、中継層4,5のX方向に幅を狭くするほど、上記回折光を遮光する遮光層41を中継層4,5の直下に配置することは有効である。以降、TFT30の半導体層30aに入射する光を確実に遮光可能な遮光構造の具体的な形成方法について説明する。
<電気光学装置の製造方法>
本実施形態の電気光学装置の製造方法として、液晶装置100の素子基板10の製造方法について、図8〜図10を参照して説明する。図8(a)〜(c)及び図9(d)〜(f)は素子基板の製造方法を示す概略断面図である。図10(a)〜(c)は変形例の素子基板の製造方法を示す概略断面図である。なお、図8〜図10は、図7の概略断面図における要部に対応した素子基板の構造を示す断面図である。
本実施形態の素子基板10の製造方法は、トランジスター形成工程(ステップS1)と、層間絶縁膜形成工程(ステップS2)と、凹部形成工程(ステップS3)と、遮光層形成工程(ステップS4)と、配線層形成工程(ステップS5)と、を少なくとも備えている。なお、素子基板10における、走査線3、第1層間絶縁膜11a、TFT30(半導体層30a、ゲート電極30gなど)のそれぞれの形成方法は前述したように、公知の形成方法を用いることができる。したがって、ここでは、特徴部分を含むステップS2以降の工程について説明する。
ステップS2では、図8(a)に示すように、基材10s上においてTFT30(実質的には、半導体層30aやゲート電極30gが形成された領域を含む)を覆う第2層間絶縁膜11cを形成する。第2層間絶縁膜11cの形成方法としては、例えば処理ガスとして水(H2O)とTEOS(テトラエトキシシラン)とを用いたプラズマCVD法により酸化シリコン膜を形成する方法が挙げられる。酸化シリコン膜の膜厚は例えばおよそ300nmである。
ステップS3では、図8(b)に示すように、第2層間絶縁膜11cにおけるゲート電極30gの直上部分に凹部11eを形成する。凹部11eの形成方法としては、第2層間絶縁膜11cに例えばフッソ系の処理ガスを用いたドライエッチングを施す方法が挙げられる。凹部11eが形成される領域は、後に配線層である中継層4や中継層5が形成される領域に亘るものである。図8(b)では図示を省略したが、凹部11eが形成される領域以外の第2層間絶縁膜11cの表面はエッチングレジストによって覆われる。第2層間絶縁膜11cにおいてドライエッチングが進行することによって、平坦な底面と底面に対して逆テーパー状の側壁11dとを有する凹部11eが形成される。
ステップS4では、まず、図8(c)に示すように、少なくとも凹部11eを覆う窒化チタン膜(TiN膜)41aを形成する。TiN膜41aの形成方法としては、例えば窒化チタン(TiN)をターゲットとしてスパッタリングする方法、金属Tiをターゲットとして窒素雰囲気中でスパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングする方法などが挙げられる。本実施形態では、窒化チタン(TiN)をターゲットとしてスパッタリングし、膜厚が100nmのTiN膜41aを形成した。次に、このTiN膜41aをフォトリソグラフィ法により、図9(d)に示すように、凹部11eの側壁11dに対応する部分だけ残すようにパターニングして遮光層41を形成する。
ステップS5では、まず、図9(e)に示すように、少なくとも遮光層41が形成された凹部11eを覆う複数の導電膜を積層形成する。具体的には、チタン膜(Ti膜)42a、TiN膜43a、アルミニウム膜(Al膜)44a、TiN膜45aの順に、例えばそれぞれの材料をターゲットとしてスパッタリングする方法が挙げられる。Ti膜42aの膜厚は例えば20nm、TiN膜43aの膜厚は例えば50nm、Al膜44aの膜厚は例えば350nm、TiN膜45aの膜厚は例えば150nmである。これらの積層膜をフォトリソグラフィ法により例えばドライエッチングすることで一括パターニングして、図9(f)に示すように積層膜からなる中継層4を形成する。なお、中継層4と同層である中継層5も同様にパターニングされる。中継層4及び中継層5の平面的な配置は、図4に示したように、半導体層30aが配置された領域、ゲート電極30gが配置された領域を含むものである。また、コンタクトホールCNT1,CNT2,CNT3,CNT4が形成される領域を含むものである。つまり、半導体層30aとその電気的な接続に係る部位を含む領域に中継層4,5が形成される。また、中継層4,5の直下の第2層間絶縁膜11cに凹部11eが形成される。
<素子基板の製造方法における変形例>
次に、図10を参照して、変形例の素子基板10Bの製造方法について説明する。なお、先の素子基板10の製造方法と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。変形例の素子基板10Bの製造方法は、配線層形成工程において、遮光層を含めて配線層を形成するものである。
具体的には、図10(a)に示すように、第2層間絶縁膜11cに逆テーパー状の側壁11dを有する凹部11eを形成する(ステップS3)。その後に、図10(b)に示すように、少なくとも凹部11eを覆って、TiN膜41a、Ti膜42a、TiN膜43a、Al膜44a、TiN膜45aを順に積層して形成する。これらの積層膜をフォトリソグラフィ法により例えばウェットエッチングすることで一括パターニングして、図10(c)に示すように積層膜からなる中継層4を形成する。なお、中継層4と同層である中継層5も同様にパターニングされる。変形例の中継層4は、凹部11eの底面と側壁11dとを覆う遮光層41を含む。また、遮光層41に接して積層された金属層であるTi層42を含む。
このような変形例の素子基板10Bの製造方法によれば、遮光層41を個別に形成する必要がないので、遮光層41と中継層4とを効率的に形成できる。
上記第1実施形態の液晶装置100と素子基板10の製造方法における効果は、以下の通りである。
(1)素子基板10において画素Pのスイッチング素子であるTFT30は、基材10s上において遮光性の走査線3と中継層4との間に形成されている。TFT30を覆う第2層間絶縁膜11cには、TFT30の直上に凹部11eが形成されている。凹部11eは、TFT30の半導体層30aが設けられた領域の外側に逆テーパー状の側壁11dを有するように形成され、側壁11dは遮光層41によって覆われている。凹部11eには遮光性の中継層4,5が積層して形成される。言い換えれば、凹部11eは中継層4,5が形成された領域に亘って形成される。このような素子基板10の遮光構造によれば、TFT30の直上から入射する光は、中継層4,5によって遮光される。また、中継層4,5の端部に光が入射することで生じた回折光は、中継層4,5の直下に設けられた凹部11eの側壁11dを覆う遮光層41によって遮光される。すなわち、TFT30の直上から入射する光だけでなく、TFT30の直上に形成された配線層の端部で生じた回折光も遮光されるので、TFT30における光リーク電流の発生を確実に抑制可能な電気光学装置としての液晶装置100を提供あるいは製造することができる。
(2)遮光層41は、TiN(窒化チタン)を用いて形成されているので、金属であるTi(チタン)を用いて形成される場合に比べて、可視光波長領域の光を吸収し易い。したがって、遮光層41に入射した光の再反射を抑えることができる。つまり、再反射によって発生した迷光によりTFT30の光リーク電流が生ずることを抑制できる。
(3)配線層である中継層4,5は、遮光層41と同種の金属層であるTi層42を含んで構成され、遮光層41とTi層42とは接している。したがって、中継層4,5は低抵抗配線であると共に、遮光層41に対して優れた密着性を有する。
(第2実施形態)
<電気光学装置とその製造方法>
次に、第2実施形態の電気光学装置としての液晶装置について、図11及び図12を参照して説明する。図11は、第2実施形態の素子基板における中継層と凹部との配置を示す概略平面図、図12は図11のC−C’線で切った素子基板の構造を示す概略断面図である。第2実施形態の電気光学装置としての液晶装置は、上記第1実施形態の液晶装置100の素子基板10に対して凹部の配置を異ならせたものである。したがって、素子基板10と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
図11に示すように、本実施形態における液晶装置の素子基板10Cは、画素Pの非開口領域を構成する中継層4,5と、中継層4,5の直下の第2層間絶縁膜11cにおいて、平面的に中継層4,5が設けられた領域の外縁に沿った部分に凹部11gを有する。この場合、凹部11gは中継層4,5のそれぞれにおいて外縁を一周するように設けられている。凹部11gの幅は、例えば0.5μmである。
図12に示すように、素子基板10Cは、基材10s上に順に設けられた、走査線3、TFT30、中継層4(中継層5)、データ線6a、保持容量16、画素電極15を有する。TFT30と中継層4,5との間の第2層間絶縁膜11cには、中継層4,5の外縁に沿った部分に凹部11gが設けられている。凹部11gは断面が略V字の溝状であって、逆テーパー状の側壁11dを有する。中継層4,5は、凹部11gを埋めるように形成されており、第2層間絶縁膜11cの表面側から順に積層されたTiN層41、Ti層42、TiN層43、Al層44、TiN層45を含む。凹部11gの側壁11dを覆うTiN層41は遮光層として機能するものである。
第2層間絶縁膜11cにおける凹部11gの形成方法は、上記第1実施形態における凹部形成工程(ステップS3)と同様な方法を用いることができる。つまり第2層間絶縁膜11cをドライエッチングして凹部11gを形成する。凹部11gを埋める中継層4,5の形成方法としては、上記第1実施形態の変形例において採用した方法を用いる。つまり、遮光層として機能するTiN層41を中継層4,5の一部として形成する方法である。
第2実施形態の素子基板10Cとその製造方法によれば、上記第1実施形態の素子基板10と同様に、直接に入射する光だけでなく、TFT30の上方に形成された配線層である中継層4,5の端部に入射した光L2により生じた回折光もTiN層41によって遮光される。したがって、TFT30における光リーク電流の発生を確実に抑制可能な電気光学装置としての液晶装置を提供あるいは製造することができる。
また、凹部11gは、平面的に中継層4,5が形成される領域の外縁に沿って一周するように形成される。したがって、X方向において隣り合う凹部11gの間の第2層間絶縁膜11cにおける表面11fは、半導体層30aに向かって窪んでいない。ゆえに、上記第1実施形態の凹部11eと比較して、ゲート電極30gと中継層4,5との間の距離が広くなった部分が増えることになる。すなわち、第2層間絶縁膜11cを介したゲート電極30gと中継層4との間の寄生容量が上記第1実施形態に比べて小さくなり、上記寄生容量に起因するTFT30の特性変化を抑制できる。
なお、凹部11gは、平面的に中継層4,5の外縁に沿って一周するように配置されることが好ましいが、これに限定されない。TFT30の半導体層30aに回折光が入射し難くなればよく、凹部11gは中継層4,5の外縁のうち少なくとも半導体層30aの延在方向(本実施形態ではY方向)に沿った部分に配置されていればよい。
(第3実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電気光学装置としての液晶装置100が適用された電子機器としての投写型表示装置について、図13を参照して説明する。図13は投写型表示装置の構成を示す概略図である。
図13に示すように、本実施形態の電子機器としての投写型表示装置1000は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、光分離素子としての2つのダイクロイックミラー1104,1105と、を備えている。また、3つの反射ミラー1106,1107,1108と、5つのリレーレンズ1201,1202,1203,1204,1205と、を備えている。さらに、3つの光変調手段としての透過型の液晶ライトバルブ1210,1220,1230と、光合成素子としてのクロスダイクロイックプリズム1206と、投写レンズ1207と、を備えている。
偏光照明装置1100は、超高圧水銀灯やハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
ダイクロイックミラー1104は、偏光照明装置1100から射出された偏光光束のうち、赤色光(R)を反射させ、緑色光(G)と青色光(B)とを透過させる。もう1つのダイクロイックミラー1105は、ダイクロイックミラー1104を透過した緑色光(G)を反射させ、青色光(B)を透過させる。
ダイクロイックミラー1104で反射した赤色光(R)は、反射ミラー1106で反射した後にリレーレンズ1205を経由して液晶ライトバルブ1210に入射する。
ダイクロイックミラー1105で反射した緑色光(G)は、リレーレンズ1204を経由して液晶ライトバルブ1220に入射する。
ダイクロイックミラー1105を透過した青色光(B)は、3つのリレーレンズ1201,1202,1203と2つの反射ミラー1107,1108とからなる導光系を経由して液晶ライトバルブ1230に入射する。
液晶ライトバルブ1210,1220,1230は、クロスダイクロイックプリズム1206の色光ごとの入射面に対してそれぞれ対向配置されている。液晶ライトバルブ1210,1220,1230に入射した色光は、映像情報(映像信号)に基づいて変調されクロスダイクロイックプリズム1206に向けて射出される。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が合成される。合成された光は、投写光学系である投写レンズ1207によってスクリーン1300上に投写され、画像が拡大されて表示される。
液晶ライトバルブ1210は、上記第1実施形態の液晶装置100(図1参照)が適用されたものである。液晶装置100の色光の入射側と射出側とにクロスニコルに配置された一対の偏光素子が隙間を置いて配置されている。他の液晶ライトバルブ1220,1230も同様である。
このような投写型表示装置1000によれば、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、上記第1実施形態の液晶装置100が用いられているので、TFT30における光リーク電流の発生が抑制され、安定した駆動状態が得られる。つまり、安定した駆動状態が実現された投写型表示装置1000を提供することができる。なお、液晶ライトバルブ1210,1220,1230として、上記第2実施形態の素子基板10Cを有する液晶装置を採用しても同様な効果が得られる。
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置および該電気光学装置の製造方法ならびに該電気光学装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)上記第1実施形態の液晶装置100における素子基板10の構成はこれに限定されない。例えば、上記第1実施形態では、TFT30の半導体層30aをデータ線6aの延在方向(Y方向)に配置したが、走査線3の延在方向に配置した構成としてもよい。また、透光性の保持容量16を画素Pの開口領域に配置した構成としたが、保持容量16を非開口領域に配置してもよい。
(変形例2)画素Pのスイッチング素子であるトランジスターを備えた素子基板に本発明の遮光構造が適用される電気光学装置は、受光型の液晶装置100に限定されない。画素Pに有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの発光素子を備えたアクティブ駆動型の電気光学装置にも適用可能である。
(変形例3)上記第1実施形態の液晶装置100が適用される電子機器は、上記第3実施形態の投写型表示装置1000に限定されない。例えば、液晶装置100の対向基板20において、少なくとも赤(R)、緑(G)、青(B)に対応するカラーフィルターを有し、投写型表示装置を単板構成としてもよい。また、例えば、投写型のHUD(ヘッドアップディスプレイ)や、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、電子ブック、パーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型あるいはモニター直視型のビデオレコーダー、カーナビゲーションシステム、電子手帳、POSなどの情報端末機器の表示部として液晶装置100を好適に用いることができる。