以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、エンジンを搭載した油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図14に従って詳細に説明する。
図1において、油圧ショベル1は、クローラ式の建設機械を構成している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ土砂の掘削作業等を行うフロント装置4とにより構成されている。
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を形成するものである。図2、図3に示す如く、この旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cの左,右方向の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、前記底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持する複数本の張出しビーム5F(図6、図7中に1本のみ図示)とにより構成されている。
ここで、各縦板5B,5Cの前側には、フロント装置4の取付端部(基端部)となるフート部4Aが俯仰動可能に取付けられている。一方、各縦板5B,5Cの後部には、後述のカウンタウエイト6が取付けられている。
カウンタウエイト6は、旋回フレーム5を形成する左,右の縦板5B,5Cの後部に設けられている。このカウンタウエイト6は、フロント装置4との重量バランスをとるもので、後面側が円弧状をした重量物として形成されている。
エンジン7は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5の後部に左,右方向に延在する横置き状態で搭載されている。エンジン7の左,右方向の一側となる左側には、冷却ファン7A(図6、図7参照)が設けられている。この冷却ファン7Aは、エンジン7を動力源として回転駆動されることにより、外気を冷却風として吸込み、後述の熱交換装置11に供給するものである。なお、冷却ファンは、エンジンと分離し、電動モータによって回転駆動する構成としてもよい。
図2に示すように、エンジン7の後側(カウンタウエイト6側)には、例えばエンジン7の各シリンダ内に空気を吸込むための吸気マニホールド7Bが設けられている。一方、エンジン7の前側(フロント装置4側)には、各シリンダから排気ガスを排出するための排気マニホールド7Cが設けられている。排気マニホールド7Cには、排気ガスを利用してエンジン7の各シリンダ(図示せず)内に空気を強制的に送り込むための過給機7Dが設けられている。この過給機7Dの吸気側には、後述の吸気管31が接続され、排気側には、排気管8が接続されている。
図4に示すように、エンジン7の内部には、該エンジンを冷却するための冷却水が流通する水路からなるウォータジャケット7Eが設けられ、このウォータジャケット7Eは、熱交換装置11のラジエータ13に接続されている。また、エンジン7には、ウォータジャケット7Eの流入側に位置してエンジン冷却水を循環流通させるためのウォータポンプ7Fが設けられている。一方、ウォータジャケット7Eの流出側には、エンジン冷却水の温度に応じ、エンジン冷却水の流通方向をウォータポンプ7F側とラジエータ13側とに切換えるサーモスタット7Gが設けられている。
さらに、エンジン7には、排気ガス中の窒素酸化物(以下、NOxという)を低減するための排気ガス再循環装置9(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が設けられている。この排気ガス再循環装置9は、排気ガスの一部を吸気系統へ再循環させ、吸入空気に排気ガスを混入させることにより、燃焼時の最高温度を下げてNOxの生成を減少させるものである。排気ガス再循環装置9は、吸気マニホールド7Bと排気マニホールド7Cまたは排気管8とに接続され、エンジン7の運転状態に応じて吸気マニホールド7Bへの排気ガスの供給量を制御するバルブ(図示せず)を備えている。
なお、排気ガスは、高温になると密度が低下するから、温度を下げて排気ガスの密度を高めることにより、排気ガス再循環装置9の働きを高めることが望まれる。そこで、排気ガス再循環装置9には、排気ガスの温度を下げるためのクーラ(冷却装置)が設けられている。このクーラは、排気ガス再循環装置9を流通する排気ガスの熱をエンジン冷却水によって冷却するものである。この場合、排気ガス再循環装置9には、ウォータポンプ7Fからエンジン冷却水が供給される供給管路9Aと、排気ガスから熱を奪って温度上昇したエンジン冷却水をウォータジャケット7Eに戻す戻し管路9Bとが設けられている。
ここで、排気ガス再循環装置9は、エンジン7の吸気マニホールド7Bと、該吸気マニホールド7Bと前,後方向の反対側に位置する排気マニホールド7Cまたは排気管8との間に設けられるものであるから、エンジン7の上側を跨ぐように配置されるのが一般的である。従って、エンジン7側の冷却水回路、即ち、エンジン7のウォータジャケット7E、排気ガス再循環装置9の供給管路9A、戻し管路9Bのうち、供給管路9Aまたは戻し管路9Bが最も高い位置に配置されている。このために、例えば戻し管路9Bには、ウォータジャケット7E、各管路9A,9Bで発生した気泡(エア)を後述するエクスパンションタンク33に排出する後述のエンジン側エア抜きホース37が接続されている。
図3に示すように、油圧ポンプ10は、エンジン7の左,右方向の他側となる右側に設けられている。この油圧ポンプ10は、エンジン7によって駆動されることにより、後述の作動油タンク17から供給される作動油を昇圧(加圧)して吐出するものである。
熱交換装置11は、エンジン7に対して左,右方向の一側、即ち、冷却ファン7Aに対面する左側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。この熱交換装置11は、温度上昇した各種の流体を冷却風により冷却するものである。図3、図6、図7に示すように、熱交換装置11は、後述の支持枠体12、ラジエータ13、オイルクーラ14、インタクーラ15を含んで構成されている。
支持枠体12は、熱交換装置11の外枠を形成している。この支持枠体12は、エンジン7の冷却ファン7Aによる冷却風の流れ方向と直交する方向、即ち、本実施の形態のように左,右方向に延在する横置き状態に搭載されたエンジン7では、上部旋回体3の前,後方向が横幅方向となるように配置されている。この支持枠体12は、ラジエータ13とオイルクーラ14を取囲んで支持する角枠12Aと、該角枠12Aのエンジン7側に位置して冷却ファン7Aを取囲んで設けられたファンカバー12B(図6、図7参照)とにより構成されている。
ラジエータ13は、熱交換器の1つを構成するもので、支持枠体12の角枠12A内に設けられている。このラジエータ13は、角枠12A内のカウンタウエイト6側寄りに位置し、エンジン7の冷却ファン7Aによる冷却風の流れ方向に対し直交するように、旋回フレーム5の前,後方向を横幅方向として配置されている。
ラジエータ13は、エンジン7を冷却して温度上昇したエンジン冷却水を冷却するもので、図4に示すように、上部タンク13A、下部タンク13Bおよび放熱部13Cにより構成されている。ラジエータ13の上部タンク13Aには、エンジン冷却水が流通する流入側ホース13Dが接続され、下部タンク13Bには、流出側ホース13Eが接続されている。流入側ホース13Dは、サーモスタット7Gを介してエンジン7のウォータジャケット7Eの流出側に接続されている。一方、流出側ホース13Eは、ウォータポンプ7Fを介してエンジン7のウォータジャケット7Eの流入側に接続されている。
ここで、ラジエータ13の上部タンク13Aには、その最上部に位置して接続口13Fが設けられている。この接続口13Fは、ラジエータ13の冷却水路(上部タンク13A、下部タンク13Bおよび放熱部13Cでエンジン冷却水が流通する通路)内で発生した気泡(エア)を排出するための継手で、後述するラジエータ側エア抜きホース38が接続されている。
オイルクーラ14は、熱交換器の1つを構成するもので、支持枠体12の角枠12A内にラジエータ13と並列に設けられている。このオイルクーラ14は、角枠12A内のキャブ16側寄りに位置し、ラジエータ13とほぼ同一の平面をなすように配置されている。オイルクーラ14は、ラジエータ13とほぼ同様に、上部タンク、下部タンクおよび放熱部により構成されている。オイルクーラ14は、温度上昇した作動油を冷却するもので、制御弁装置(図示せず)、作動油タンク17等に接続されている。
インタクーラ15は、ラジエータ13、オイルクーラ14と同様に、熱交換器の1つを構成するもので、ラジエータ13、オイルクーラ14を挟んで冷却ファン7Aと反対側に設けられている。このインタクーラ15は、エンジン7の過給機7Dから流入する加圧された空気(吸気)を冷却してエンジン7の吸気マニホールド7Bに向け流出するものである。インタクーラ15は、前部タンク、後部タンクおよび放熱部からなり、流入側がエンジン7の過給機7Dに接続され、流出側が吸気マニホールド7Bに接続されている。
ここで、図2に示すように、熱交換装置11は、その支持枠体12が後述するキャブ16の後面16Bから後方に離れた位置に配置されている。これにより、後述の仕切板19とキャブ16の後面16Bとの間には、狭隘な空間21を形成することができる。
キャブ16は、エンジン7の前側で、かつフロント装置4のフート部4Aを挟んで左,右方向の一側となる左側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。このキャブ16は、オペレータが搭乗する居住空間を形成するもので、図示しないフロア部材の周囲を覆う前面16A、後面16B、左側面16C、右側面16Dと、これらの上側を覆う天面16Eとによりボックス状に形成されている。キャブ16の前面16Aには前窓16Fが設けられ、後面16Bには後窓16G(図5、図8参照)が設けられている。一方、左側面16Cには、乗降するときに開,閉するドア16Hが設けられている。
キャブ16の内部には、オペレータが着座する運転席16J(図1中に点線で図示)が設けられ、該運転席16Jの周囲には、作業用の操作レバー16K等が配設されている。これにより、オペレータは、運転席16Jに着座した状態で、前窓16F、後窓16Gから周囲を目視しつつ、走行操作、作業操作を行うことができる。
ここで、運転席16Jに着座したオペレータのアイポイント(Eye Point)EPは、キャブ16の左,右方向のほぼ中央で、運転席16Jのヘッドレストの前方に位置している。このアイポイントEPは、不変的なものではなく、例えば作業内容に応じて前方や側方に移動する。また、アイポイントEPは、オペレータの体格やオペレータが運転席16Jの位置を調整した場合でも、前,後方向や上,下方向に移動することになる。即ち、図1に示したアイポイントEPは、平均的な体格のオペレータが運転席16Jに着座した場合の参考例となっている。
作動油タンク17は、貯油タンクの1つを構成している。この作動油タンク17は、エンジン7の前側で、かつフロント装置4のフート部4Aを挟んで左,右方向の他側、即ち、左,右方向の右側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。この作動油タンク17は、内部に作動油を貯えるもので、上,下方向に延びる直方体状の耐圧タンクとして形成されている。
燃料タンク18は、作動油タンク17の前側に隣接するように設けられた貯油タンクを構成している。この燃料タンク18は、作動油タンク17と同様に、フロント装置4のフート部4Aを挟んで左,右方向の右側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。燃料タンク18は、内部に燃料を貯えるものである。
仕切板19は、熱交換装置11と作動油タンク17との間に位置してエンジン7の前側を左,右方向に延びて配置されている。この仕切板19は、左端部19Aが熱交換装置11の支持枠体12の前部に取付けられ、右端部19Bが作動油タンク17等に取付けられている。ここで、仕切板19は、例えば左,右方向に延びる1枚の板体からなり、エンジン7の前側を覆っている。また、仕切板19は、後述する建屋22の上面カバー25を構成する中央カバー部25C、狭隘空間カバー部25Dを支持する構造体としても利用されている。なお、仕切板19は、1枚の板体からなるものに限らず、複数枚の板体を組合せて構成することもできる。
ここで、仕切板19は、支持枠体12の角枠12Aの前面部位とほぼ同じ前,後位置に配置されている。従って、仕切板19と該仕切板19の前側に位置するキャブ16の後面16Bとの間には、空間が形成され、この空間を後述する狭隘な空間21として利用することができる。このように、仕切板19は、後述のエンジン室20と狭隘な空間21とを前,後方向で仕切ることができる。
さらに、仕切板19には、左,右方向の左寄り、例えばエンジン7と熱交換装置11との間に対応する位置には、図6に示すように、吸気管挿通孔19Cとホース挿通孔19Dとが接近して設けられている。吸気管挿通孔19Cには、後述の吸気管31が挿通され、ホース挿通孔19Dには、後述の冷却水ホース36、エンジン側エア抜きホース37、ラジエータ側エア抜きホース38、ドレンホース39が挿通される。このように、吸気管挿通孔19Cとホース挿通孔19Dとを接近して配置したことにより、配管作業を容易に行うことができる。しかも、1個のホース挿通孔19Dに複数本のホース36〜39を纏めて挿通しているから、エンジン室20側の熱気が漏れ出る虞のある開口を少なくすることができる。
エンジン室20は、カウンタウエイト6と仕切板19との間に形成されている。エンジン室20は、エンジン7、熱交換装置11を含む機器を収容するものである。エンジン室20の上側は、建屋22の上面カバー25およびエンジンカバー28によって覆われている。エンジン室20内は、エンジン7が発生する熱、熱交換装置11を通過した熱風等によって高温になる。
狭隘な空間21は、エンジン室20の前側で、かつ仕切板19とキャブ16の後面16Bとの間の狭い空間を利用して形成されている。狭隘な空間21には、後述するエアクリーナ30、吸気管31の一部、エクスパンションタンク33の下側部位等が収容されている。狭隘な空間21の上側は、建屋22の上面カバー25(狭隘空間カバー部25D)によって覆われている。
ここで、狭隘な空間21は、仕切板19によってエンジン室20と隔絶して形成されているから、エンジン室20内がエンジン7が発する熱等によって高温になった場合でも、低い温度(例えば外気温に近い温度)に保持することができる。
建屋22は、旋回フレーム5の上側に位置してエンジン室20、狭隘な空間21を取囲んで覆うものである。建屋22は、エンジン7、油圧ポンプ10、熱交換装置11等を覆うもので、左側面カバー23、右側面カバー24、上面カバー25、エンジンカバー28を含んで構成されている。
左側面カバー23は、カウンタウエイト6の左端縁位置から前側に延びるように旋回フレーム5の左サイドフレーム5D上に立設されている。この左側面カバー23は、熱交換装置11と対面し、例えば後端部を回動支点として前側を開,閉することができる。左側面カバー23には、熱交換装置11を冷却するための空気(外気)が流入する多数本のスリットからなる吸気口23Aが設けられている。
右側面カバー24は、カウンタウエイト6の右端縁位置から前側に延びるように旋回フレーム5の右サイドフレーム5E上に立設されている。この右側面カバー24は、油圧ポンプ10と対面し、例えば後端部を回動支点として前側を開,閉することができる。右側面カバー24には、各部を冷却した冷却風が流出する多数本のスリットからなる排気口24Aが設けられている。
上面カバー25は、左,右の側面カバー23,24の上部に設けられている。この上面カバー25は、カウンタウエイト6と仕切板19との間に位置してエンジン室20の上側を覆ったエンジン室カバー部25Aと、仕切板19の左,右方向の中間部に位置して該仕切板19の上部からキャブ16の右側近傍に向けて前側に延び、その先端部から下向きに屈曲した下部が旋回フレーム5の左縦板5Bに取付けられたL字状のカバー支持体25Bと、キャブ16の右側面16D、作動油タンク17、エンジン室カバー部25A等に囲まれて配置され、その周囲が作動油タンク17、仕切板19、カバー支持体25B等に取付けられた中央カバー部25Cと、キャブ16の後面16B、左側面カバー23、エンジン室カバー部25Aおよび中央カバー部25Cに囲まれて配置され、その周囲が仕切板19、カバー支持体25B、後述する他の仕切板26等に取付けられたカバー面としての狭隘空間カバー部25Dとを含んで構成されている。
エンジン室カバー部25Aには、キャブ16の後方となる左側に位置してエンジン7、熱交換装置11等をメンテナンスするためのメンテナンス用開口(図示せず)が設けられている。一方、エンジン室カバー部25Aの右側位置には、後述する排気ガス後処理装置32を配置するための後処理装置用開口(図示せず)が設けられている。
図10に示すように、狭隘空間カバー部25Dは、左,右方向に延びる長方形状の板体として形成され、狭隘な空間21の上側を覆っている。この狭隘空間カバー部25Dの右側部分には、後述のエクスパンションタンク33を取付けるために四角形状に開口した取付開口25D1が形成されている。さらに、狭隘空間カバー部25Dには、取付開口25D1を挟んだ左,右位置に、それぞれ2個のねじ座25D2が設けられている。各ねじ座25D2には、エクスパンションタンク33を取付けるためのボルト35が螺合される。
ここで、狭隘空間カバー部25Dの前側寄りには、取付開口25D1よりも左側に位置して、キャブ16の後面16Bと対面するように他の仕切板26が立設されている。この他の仕切板26は、仕切板19と間隔をもって配置されることにより、狭隘な空間21の左側部分にユーティリティ室27を形成している。このユーティリティ室27には、後述するエアクリーナ30の一部、吸気管31が収容され、その他にも消耗品や各種工具類を収容することができる。
エンジンカバー28は、上面カバー25のうちエンジン室20の上方に設けられている。具体的には、エンジンカバー28は、上面カバー25のエンジン室カバー部25Aに設けられたメンテナンス用開口を取囲んで覆うように設けられている。エンジンカバー28は、例えばエンジン室カバー部25Aに対し、後側(カウンタウエイト6側)を回動支点として開,閉可能に取付けられている。
後処理装置カバー29は、上面カバー25のエンジン室カバー部25Aの右側に設けられた後処理装置用開口を取囲んで覆うように設けられている。後処理装置カバー29には、後側に位置して尾管29Aが設けられ、該尾管29Aには、後述する排気ガス後処理装置32の流出管32Aが接続される。さらに、後処理装置カバー29の上面側には、尾管29Aの前側に位置して開,閉可能なメンテナンスカバー29Bが設けられている。
エアクリーナ30は、図3、図6に示すように、ユーティリティ室27から熱交換装置11の左側(冷却風の上流側)に亘って設けられている。このエアクリーナ30は、エンジン7に供給する空気を清浄化するもので、吸気管31を介してエンジン7に設けられた過給機7Dの吸気側に接続されている。吸気管31は、ユーティリティ室27を左,右方向に延び、このユーティリティ室27を出た狭隘な空間21で後側に屈曲し、仕切板19の吸気管挿通孔19Cを通ってエンジン室20に侵入している。
排気ガス後処理装置32は、エンジン7の右側となる油圧ポンプ10の上方に設けられ、その上側部位は、建屋22の上面カバー25に設けられた後処理装置カバー29内に収容されている。排気ガス後処理装置32は、例えば、エンジン7から排出される排気ガス中の有害物質を除去すると共に、排気ガスの騒音を低減するものである。
排気ガス後処理装置32は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して除去するために酸化触媒やフィルタから構成された粒子状物質除去装置、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を尿素水溶液を用いて浄化するNOx浄化装置、排気ガスの騒音を低減する消音装置(排気マフラ)等を備えている。排気ガス後処理装置32は、流入側が排気管8に接続され、流出側の流出管32Aが後処理装置カバー29の尾管29Aに接続されている。
次に、本実施の形態の特徴部分となるエクスパンションタンク33の構成について詳細に述べる。
エクスパンションタンク33は、建屋22の上面カバー25のうち狭隘な空間21を覆う位置に設けられている。図4に示す如く、エクスパンションタンク33は、内部にエンジン冷却水を貯えると共に、温度変化によるエンジン冷却水の体積変動(膨張、収縮)を吸収するための空間を備えている。エクスパンションタンク33は、エンジン7のウォータジャケット7E、排気ガス再循環装置9(供給管路9A、戻し管路9B)、ラジエータ13(流入側ホース13D、流出側ホース13E)等と共にエンジン冷却水を循環流通させる密閉式の循環回路を構成している。
図13、図14に示すように、エクスパンションタンク33は、前面部33A、後面部33B(図6、図7参照)、左面部33C、右面部33D、上面部33Eおよび下面部33Fからなる略直方体状の密閉容器として形成されている。図4に示すように、エクスパンションタンク33内には、指定の温度域で規定量のエンジン冷却水を充填することにより、所定の体積をもった空気室34が形成されている。この空気室34は、エンジン冷却水の体積変動を吸収する空気ばねとして機能するものである。そして、エクスパンションタンク33は、樹脂材料を用いて形成することにより、内圧の上昇に耐える剛性を有しつつ、軽量化、成形の容易性が図られている。
左面部33C、右面部33Dには、それぞれ2個の取付ブラケット33Gが設けられ、該各取付ブラケット33Gには、上面カバー25の狭隘空間カバー部25Dに設けられたねじ座25D2に対応する位置にボルト挿通孔33G1が設けられている。
また、上面部33Eには、エンジン冷却水の注水口33Hが設けられ、該注水口33Hには、加圧式のキャップ33Jが取付けられている。このキャップ33Jには、エクスパンションタンク33内の圧力が設定圧を超えたときに、内部の圧力(空気)を逃がすことができる安全弁(図示せず)が設けられている。さらに、注水口33Hの周面には、ドレンホース接続口33Kが設けられ、このドレンホース接続口33Kは、キャップ33Jの安全弁が開弁したときに、内部の圧力(空気)やエンジン冷却水を排出する排出口を構成している。ドレンホース接続口33Kには、後述するドレンホース39が接続されている。
上面部33Eには、エンジン側ホース接続口33Lとラジエータ側ホース接続口33Mとが設けられている。エンジン側ホース接続口33Lは、後述のエンジン側エア抜きホース37を介して排気ガス再循環装置9の戻し管路9Bまたは該戻し管路9Bに連通する部位に接続されている。ラジエータ側ホース接続口33Mは、後述のラジエータ側エア抜きホース38を介してラジエータ13の接続口13F(上部タンク13A)に接続されている。
一方、下面部33Fには、冷却水用ホース接続口33Nが設けられ、該冷却水用ホース接続口33Nは、後述の冷却水ホース36を介してラジエータ13の流出側ホース13Eまたは該流出側ホース13Eに連通する部位に接続されている。また、下面部33Fには、エンジン冷却水の液面位置(貯水量)を検出する液面センサ33Pが設けられている。
ここで、エクスパンションタンク33の上面カバー25(狭隘空間カバー部25D)に対する取付構造と取付位置について説明する。
まず、エクスパンションタンク33の取付構造について述べる。エクスパンションタンク33は、その下側部分を狭隘空間カバー部25Dの取付開口25D1挿入し、各ねじ座25D2上に各取付ブラケット33Gを載置する。この状態で各取付ブラケット33Gのボルト挿通孔33G1に挿通したボルト35をねじ座25D2に螺合することにより、エクスパンションタンク33を狭隘空間カバー部25Dに取付けることができる。
次に、エクスパンションタンク33の取付位置について述べる。上述のように狭隘空間カバー部25Dに取付けられたエクスパンションタンク33は、狭隘な空間21上に位置している。即ち、エクスパンションタンク33は、エンジン室20と隔絶された位置に配置されている。これにより、エクスパンションタンク33は、エンジン室20内で生じる熱から保護することができる。また、エクスパンションタンク33は、エンジン7と熱交換装置11(ラジエータ13)との両方に近い位置に配置しているから、後述のエンジン側エア抜きホース37、ラジエータ側エア抜きホース38を短い距離で容易に取回すことができる。
エクスパンションタンク33は、キャブ16に接近した前側位置に配置している。この上で、図12に示すように、エクスパンションタンク33は、下側部位を狭隘空間カバー部25Dの取付開口25D1挿入することにより、その下側部位を建屋22の上面カバー25を構成するカバー面としての狭隘空間カバー部25Dよりも下側に配置し、その上側部位を上面カバー25の狭隘空間カバー部25Dよりも上方に突出させる構成としている。
この場合、エクスパンションタンク33の高さ位置は、エンジン冷却水の循環回路で最も高い位置に配置された排気ガス再循環装置9の戻し管路9Bまたはラジエータ13の上部タンク13Aよりも、内部の空気室34が高い位置に配置されるように設定されている。これにより、エンジン冷却水の循環回路で発生した気泡(エア)は、エクスパンションタンク33内の空気室34に自動的に流入させることができる。
このように構成されたエクスパンションタンク33は、狭隘空間カバー部25Dから上側への突出寸法を低く抑えることができる。詳しく述べると、図1に示すように、エクスパンションタンク33の上,下方向の取付位置は、その上側部位となるキャップ33Jが、キャブ16の運転席16Jに着座したオペレータのアイポイントEPとカウンタウエイト6の上部6A(角部)との間を結ぶ後方視界の視線、即ち、直線Aの位置よりも低く設定されている。これにより、図8に示すように、運転席16Jに着座したオペレータが後方を目視したときに、エクスパンションタンク33がオペレータの後方視界の妨げにならないようにしている。
次に、エクスパンションタンク33に接続された冷却水ホース36、エンジン側エア抜きホース37、ラジエータ側エア抜きホース38およびドレンホース39の構成について述べる。
冷却水ホース36は、エクスパンションタンク33とエンジン冷却水の循環回路とを接続するものである。即ち、冷却水ホース36は、エクスパンションタンク33の冷却水用ホース接続口33Nとラジエータ13の流出側ホース13Eまたは該流出側ホース13Eに連通する部位とを接続している。この冷却水ホース36は、エクスパンションタンク33とエンジン冷却水の循環回路との間でエンジン冷却水を流通させるものである。
エンジン側エア抜きホース37は、エンジン7に設けられた排気ガス再循環装置9とエクスパンションタンク33とを接続するものである。即ち、エンジン側エア抜きホース37は、排気ガス再循環装置9の戻し管路9Bまたは該戻し管路9Bに連通する部位とエクスパンションタンク33のエンジン側ホース接続口33Lとを接続している。このエンジン側エア抜きホース37は、エンジン7側の冷却水の循環回路で発生した気泡(エア)をエクスパンションタンク33の空気室34に流通させるものである。
ラジエータ側エア抜きホース38は、ラジエータ13の上部タンク13Aとエクスパンションタンク33とを接続するものである。即ち、ラジエータ側エア抜きホース38は、ラジエータ13の接続口13Fとエクスパンションタンク33のラジエータ側ホース接続口33Mとを接続している。このラジエータ側エア抜きホース38は、ラジエータ13側の冷却水の循環回路で発生した気泡(エア)をエクスパンションタンク33の空気室34に流通させるものである。
ドレンホース39は、一端がエクスパンションタンク33のドレンホース接続口33Kに接続され、他端が上部旋回体3の外部に配置されている。このドレンホース39は、エクスパンションタンク33のキャップ33Jに設けられた安全弁が開弁したときに、内部の空気やこの空気に混ざったエンジン冷却水を外部に排出する排出するものである。
次に、上述のように構成された冷却水ホース36、エンジン側エア抜きホース37、ラジエータ側エア抜きホース38およびドレンホース39の取回し形態について述べる。
図7、図12に示すように、冷却水ホース36、エンジン側エア抜きホース37、ラジエータ側エア抜きホース38およびドレンホース39は、エクスパンションタンク33から下側に延びた後に前側に屈曲し、図6に示すように、4本のホース36〜39は、1つに纏められた状態で仕切板19のホース挿通孔19Dに挿通される。これにより、4本のホース36〜39は、狭隘な空間21からエンジン室20に侵入することができる。
エンジン室20に侵入した4本のホース36〜39のうち、冷却水ホース36は、ラジエータ13の流出側ホース13Eまたは該流出側ホース13Eに連通する部位に接続される。エンジン側エア抜きホース37は、排気ガス再循環装置9の戻し管路9Bまたは該戻し管路9Bに連通する部位に接続される。ラジエータ側エア抜きホース38は、ラジエータ13の接続口13Fに接続される。一方、ドレンホース39は、エンジン室20内を下側に延び、旋回フレーム5よりも下側で外部に開口している。
図9に示すように、エクスパンションカバー40は、エクスパンションタンク33を覆うものである。図11に示すように、エクスパンションカバー40は、カバー本体41と蓋板42とにより構成されている。
カバー本体41は、左,右方向で間隔をもって対面した左板41A,右板41Bと、該左板41A,右板41Bの後部に設けられた後板41Cと、前記左板41A,右板41Bおよび後板41Cの上部に設けられた上板41Dとにより、前側と下側が開放された箱状体として形成されている。これにより、カバー本体41内に収容されるエクスパンションタンク33を前方に露出させることができ、キャブ16内からエクスパンションタンク33を目視させることができる。
左板41A,右板41Bの下部には、左,右方向に延びて取付部41Eが設けられ、該各取付部41Eには、ボルト挿通孔41Fが複数個(左側の2個のみ図示)穿設されている。また、右板41Bには、例えば外部からエクスパンションタンク33内のエンジン冷却水の液面位置(貯水量)を点検するための開口部41B1が設けられている。さらに、上板41Dには、エンジン冷却水の給水作業、各種点検作業を行うための開口部41D1が設けられている。
蓋板42は、カバー本体41の右板41Bと上板41Dと対面する折曲げ板として形成されている。この蓋板42は、右板41Bの開口部41B1と上板41Dの開口部41D1を閉塞するもので、上板41Dに対して回動可能(開閉可能)に取付けられている。
エクスパンションカバー40の取付構造について述べる。蓋板42が取付けられたカバー本体41をエクスパンションタンク33を覆うように配置し、カバー本体41の各取付部41Eに設けたボルト挿通孔41Fにボルト43を挿通し、これらのボルト43を狭隘空間カバー部25Dに螺合させる。これにより、エクスパンションカバー40は、狭隘空間カバー部25Dに取付けることができる。
ここで、図1に示すように、エクスパンションカバー40の高さ寸法は、エクスパンションタンク33とほぼ同様に、キャブ16の運転席16Jに着座したオペレータのアイポイントEPとカウンタウエイト6の上部6A(角部)との間を結ぶ直線Aの位置よりも低く設定されている。これにより、エクスパンションタンク33をエクスパンションカバー40で覆った状態でも、運転席16Jに着座したオペレータに広い後方視界を提供することができる。
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
まず、オペレータは、キャブ16に搭乗して運転席16Jに着座する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を作業現場まで移動させることができる。また、運転席16Jに着座したオペレータは、作業用の操作レバー16Kを操作することにより、フロント装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
ここで、油圧ショベル1を後退させるときには、キャブ16内から後方を目視しながら走行用の操作レバーを操作する。このときに、エクスパンションタンク33およびエクスパンションカバー40は、キャブ16の近傍で狭隘な空間21上に位置する建屋22の上面カバー25に設けているため、後方視界の妨げになることはなく、オペレータは広い後方視界で走行することができる。
かくして、本実施の形態によれば、上部旋回体3には、エンジン7等を収容したエンジン室20の前側で、かつ該エンジン室20の前側を仕切る仕切板19とキャブ16の後面16Bとの間に狭隘な空間21を形成し、エクスパンションタンク33は、この狭隘な空間21を覆う位置に設ける構成としている。従って、エクスパンションタンク33は、エンジン7、熱交換装置11よりもキャブ16に近い位置に配置することができる。これにより、建屋22のエンジンカバー28は、エクスパンションタンク33を覆う必要がなく、エンジン7と熱交換装置11を覆うだけでよいから、その高さ寸法を低く抑えることができる。
この結果、キャブ16に搭乗したオペレータが後方を目視したときには、エンジンカバー28を低くした分だけ視野を広げることができる。これにより、オペレータの後方視界を良好にすることができ、作業性を向上することができる。
ここで、エクスパンションタンク33は、冷却水の循環回路で最も高い位置に配置する必要があるから、一般的に軽量な樹脂材料により形成されている。一方、エンジン室20内は、エンジン7が発生する熱、熱交換装置11を通過した熱風等によって高温になる。これに対し、エクスパンションタンク33は、エンジン室20と仕切板19によって隔絶された狭隘な空間21の上方に位置して建屋22の上面カバー25に設ける構成としている。これにより、エクスパンションタンク33は、エンジン室20の熱から保護することができ、熱劣化を防止して寿命を延ばすことができる。
エクスパンションタンク33をエンジン室20と異なる場所に配置した構成では、建屋22のエンジンカバー28を開いたときには、エンジン7、熱交換装置11および各種機器類(補機類)を露出させることができる。これにより、エンジン7、熱交換装置11等のメンテナンスを容易に、かつ効率よく行うことができる。
また、エクスパンションタンク33をエンジン室20と異なる場所に配置した構成では、エクスパンションタンク33にエンジン冷却水を補給するときに、このエンジン冷却水を誤ってこぼした場合でも、エンジン室20内に設けられた機器、電装品等に掛かる心配がない。これにより、エンジン室20内を清浄に保つことができる上に、エンジン室20内の機器、電装品等の寿命を延ばすことができる。
エクスパンションタンク33は、建屋22の上面カバー25(狭隘空間カバー部25D)から上方に突出して配置しているから、エンジン7、熱交換装置11を含むエンジン冷却水の循環回路で最も高い位置に配置することができる。また、建屋22の上面カバー25から上方に突出して配置したエクスパンションタンク33は、キャブ16の後窓16Gから後方を目視することにより、内部のエンジン冷却水の貯水量を容易に確認することができる。一方、エクスパンションタンク33は、その外周をエクスパンションカバー40によって覆っているから、雨水、土砂、いたずら等からエクスパンションタンク33を保護することができる。
しかも、エクスパンションタンク33の下側部位を建屋22の上面カバー25を構成する狭隘空間カバー部25Dよりも下側に配置し、その上側部位を前記狭隘空間カバー部25Dよりも上方に突出させている。従って、エクスパンションタンク33は、エンジン冷却水の循環回路で最も高い位置に配置しつつ、狭隘空間カバー部25Dからの突出寸法(高さ寸法)を低く抑えることができる。
さらに、エクスパンションタンク33の上側部位、即ち、上側に最も突出したキャップ33Jは、キャブ16内の運転席16Jに着座したオペレータのアイポイントEPとカウンタウエイト6の上部6Aとの間を結ぶ後方視界の視線(直線A)の位置よりも低く設定している。これにより、エクスパンションタンク33は、オペレータの後方視界の妨げになることがなく、この点においても、オペレータの後方視界を良好にすることができ、作業性を向上することができる。
なお、実施の形態では、エクスパンションタンク33は、直方体状の密閉容器として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、エクスパンションタンクは、密閉された空間にエンジン冷却水と空気とを収容できればよいもので、例えば、球体形状、円柱体形状等の形状としてもよい。
実施の形態では、熱交換装置11は、ラジエータ13とオイルクーラ14とを旋回フレーム5の前,後方向に並べ、このラジエータ13とオイルクーラ14の左側にインタクーラ15を配設した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばラジエータとオイルクーラとインタクーラとを旋回フレーム5の前,後方向に並べて配置する構成としてもよい。また、熱交換装置にラジエータとオイルクーラだけを設ける構成としてもよい。
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン等のエンジンを備えた他の建設機械にも広く適用できるものである。