次に、本発明について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るフレキソ印刷版原版の断面図である。図1に示すように、一実施形態に係るフレキソ印刷版原版10は、支持体12と、接着剤層14と、感光性樹脂層16と、を備える。支持体12の面上に、接着剤層14と感光性樹脂層16とがこの順で積層されている。接着剤層14は、支持体12に接して設けられ、感光性樹脂層16は、接着剤層14に接して設けられている。
支持体12は、その上に積層される感光性樹脂層16などの層を支持する。支持体12としては、樹脂製フィルムを挙げることができる。樹脂製フィルムとしては、寸法安定性に優れることから、PETフィルムなどのポリエステルフィルムが好ましい。支持体12の厚さとしては、その上に積層される感光性樹脂層16などの層を支持するのに十分な強度が得られるなどの観点から、50〜300μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは50〜200μmの範囲内である。
接着剤層14は、支持体12と感光性樹脂層16の密着性を高める。密着性に優れるなどの観点から、接着剤層14の厚みは、1〜100μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは5〜50μmの範囲内である。
接着剤層14は、接着剤成分および金属酸化物を含有する。接着剤成分としては、特に限定されるものではないが、支持体12および感光性樹脂層16との密着性に優れるなどの観点から、ポリエステル系接着剤が好ましい。ポリエステル系接着剤のバインダー樹脂は、ポリエステル樹脂からなる。
金属酸化物は、接着剤層14において紫外線を吸収・反射することで透過光を減衰する。つまり、接着剤層14の紫外線透過率を低下させる。このため、支持体12側から紫外線を照射(裏露光)した場合には、感光性樹脂層16に入射される紫外線の光量が低減する。これにより、裏露光時の硬化速度を低下させる。したがって、金属酸化物の含有量などを調整することにより、裏露光時の硬化速度を調整することができる。一方、感光性樹脂層16側から紫外線を照射(主露光)した場合には、接着剤層14を介さないで直接紫外線が感光性樹脂層16に入射される。よって、金属酸化物は、主露光を妨げるものではない。
裏露光時の硬化速度の観点から、接着剤層14の紫外線透過率は、UVA(320〜400nm)において0.5〜80%の範囲であることが好ましい。紫外線透過率は、市販の紫外線照度計を用いて測定することができる。
金属酸化物の含有量は、裏露光時の硬化速度を低下する効果に優れるなどの観点から、5.0質量%以上であることが好ましい。また、支持体12および感光性樹脂層16との密着性に優れるなどの観点から、50質量%以下であることが好ましい。
金属酸化物は、上述するように、接着剤層14の紫外線透過率を低下できるが、時間の経過とともにレリーフ像の微細な凸部が形成されにくくなる現象を生じさせない。このため、経時でも画像再現性に優れるものとなる。これは、金属酸化物は配合される接着剤層14に留まり、感光性樹脂層16に移行しないためと推察される。
金属酸化物は、有機系の紫外線吸収剤と比較して、感光性樹脂層16に移行しにくい性質を有するが、また、紫外線反射性に優れる点も異なる。
金属酸化物としては、可視光透過性(透明性)に優れる、照射される紫外線を反射しやすいなどの観点から、特に、酸化チタン、酸化アルミニウムが好ましい。紫外線反射性に優れる金属酸化物であると、主露光時に感光性樹脂層16側から照射された紫外線を接着剤層14と感光性樹脂層16の界面でよく反射させることができる。
従来の感光性樹脂組成物を用いた凸版印刷版においては、ハレーションを嫌う傾向があり、主露光時に感光性樹脂層16側から照射された紫外線に対し接着剤層14と感光性樹脂層16の界面からの反射を避ける設計がとられてきた。しかし今回我々の層構成は、ハレーションを活用する設計となっている。その理由は、印刷物の高画質化と製版の生産性向上を実現するためである。まず高画質化への対応に関しては、凸版形状として各種の微細な凸形状形成が必要である。従来の設計では、ネガの微細な隙間から透過される紫外線量が少量いため、微細でない一般部と同じ速度で理想の微細凸形状を形成することができない。しかし、本開発品であれば、ハレーション効果による接着剤層14と感光性樹脂層16の界面からの紫外線を利用することで、紫外線量の少ない微細凸部に対し、特に厚み方向において接着剤層14側から中心部付近へかけての硬化性を向上させることができ一般凸部と同じ速度で形成することができる。更に、先述の通り、微細凸部と一般凸部の形成時間に差がなく、全面同時に凸形状形成が可能である為、形成時間を短くすることが出来る。以上の観点より、有機系の紫外線吸収剤よりも紫外線反射性に優れた金属酸化物が有効であると言える。
金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化コバルト、酸化鉛、酸化セリウムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、紫外線の透過率低減などの観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウムがより好ましい。
金属酸化物は、可視光透過性(透明性)に優れるなどの観点から、微粒子であることが好ましい。微粒子としては、例えば1〜数百nmの大きさの粒子からなるナノ粒子などが挙げられる。金属酸化物の平均粒子径は、可視光透過性(透明性)に優れるなどの観点から、1〜500nmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは10〜100nmの範囲内である。金属酸化物の平均粒子径は、レーザー回折法により測定することができる。
金属酸化物は、接着剤成分への分散性などの観点から、脂肪族カルボン酸、アルキルシラン、シリコーンオイル、シリカ、ジルコニア、アルミナなどの表面処理剤により表面処理をしてもよい。また、接着剤成分への分散性を良くする為に分散剤を用いても良い。
感光性樹脂層16は、バインダーポリマーと、光重合性不飽和化合物と、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物で構成される。光重合性不飽和化合物を含有していることから、感光性樹脂層16は光(紫外光)により硬化される。
感光性樹脂層16のバインダーポリマーは、水現像可能にするなどの観点から、疎水性ゴムとともに親水性の水分散ラテックスを含有することが好ましい。水分散ラテックスとは、重合体粒子を分散質として水中に分散したものである。この水分散ラテックスから水を除去することにより、重合体が得られる。水分散ラテックスは、感光性樹脂層16に水現像性を付与することができる。
水分散ラテックスの含有量は、疎水性ゴムと水分散ラテックスの合計質量に対する割合で20〜90質量%の範囲内にあることが好ましい。より好ましくは30〜80%の範囲内、さらに好ましくは50〜70%の範囲内である。水分散ラテックスが20質量%以上であると、感光性樹脂層16への水系現像液の浸透性が高くなるため、水現像速度に優れる。一方、水分散ラテックスが90質量%以下であると、画像再現性に優れる。
水分散ラテックスとしては、具体的には、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ビニルピリジン重合体ラテックス、ブチル重合体ラテックス、チオコール重合体ラテックス、アクリレート重合体ラテックスなどの水分散ラテックス重合体やこれら重合体にアクリル酸やメタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いても良い。
このうち、硬度の点などから、分子鎖中にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含有する水分散ラテックス重合体が好ましい。具体的には、ポリブタジエンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリイソプレンラテックスが好ましい。
疎水性ゴムは、感光性樹脂層16のゴム弾性を増加させることができる。これにより、例えば、種々の被刷体に印刷しやすくできるなどの効果が期待できる。
疎水性ゴムとしては、具体的には、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体、塩素化ポリエチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)などを挙げることができる。また、これらのゴムのうち、不飽和結合を有するものについての部分あるいは完全水素添加物などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いても良い。このうち、水分散ラテックスと併せて用いたときに感光性樹脂層16の水現像性および乾燥性のバランスに優れるなどの観点から、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)が好ましい。
光重合性不飽和化合物は、光(紫外光)により感光性樹脂層16を硬化できるものである。光重合性不飽和化合物の含有量としては、好ましくは10〜80質量%の範囲内、より好ましくは20〜50質量%の範囲内である。光重合性不飽和化合物の含有量が10質量%以上であれば、架橋密度の不足がなく、良好な画像再現性とインク耐性が得られる。一方、光重合性不飽和化合物の含有量が80質量%以下であれば、レリーフが脆くなく、かつ、フレキソ印刷版の特徴である柔軟性を確保することができる。
光重合性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリルオリゴマー、(メタ)アクリル変性重合体などを挙げることができる。(メタ)アクリル変性重合体としては、例えば(メタ)アクリル変性ブタジエンゴム、(メタ)アクリル変性ニトリルゴムなどを挙げることができる。
エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和結合を1個だけ有する化合物であっても良いし、エチレン性不飽和結合を2つ以上有する化合物であっても良い。
エチレン性不飽和結合を1個だけ有するエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート・β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート・プロピル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート・イソアミル(メタ)アクリレート・2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート・ラウリル(メタ)アクリレート・ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、クロロエチル(メタ)アクリレート・クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート・エトキシエチル(メタ)アクリレート・ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート・ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート・メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート・3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
エチレン性不飽和結合を2つ以上有するエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルキルジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコール等のエチレン性不飽和結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン等の多価ビニル化合物等を挙げることができる。
光重合開始剤は、光重合性不飽和化合物の光重合を開始させるものであれば特に限定されず、例えば、アルキルフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、アントラキノン類、ベンジル類、ビアセチル類等の光重合開始剤を挙げることができる。具体的には、例えば、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、メチル−O−ベンゾイルベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
光重合開始剤の含有量は、好ましくは0.3〜10質量%の範囲内、より好ましくは0.5〜8質量%の範囲内である。光重合開始剤の含有量が0.3質量%以上であれば、光重合性不飽和化合物の光重合反応が十分に起こり、良好な画像が形成できる。一方、光重合開始剤の含有量が5質量%以下であれば、感度が高すぎないため、露光時間の調節が容易になる。
感光性樹脂層16は、これらの成分の他に、各種の添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、界面活性剤、可塑剤、熱重合禁止剤(安定剤)、紫外線吸収剤、染料、顔料、消泡剤、香料などを挙げることができる。
界面活性剤は、感光性樹脂層16の水現像性を向上させることができる。界面活性剤の含有量としては、水分散ラテックスと疎水性ゴムと界面活性剤の合計質量に対する割合で、0.1〜20質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは0.1〜15%の範囲内、さらに好ましくは0.1〜10%の範囲内である。界面活性剤の含有量が0.1%以上であると、水系現像液の感光性樹脂層16への浸透性が高くなり、水現像速度に優れる。一方、界面活性剤の含有量が20質量%以下であると、乾燥性にも優れる。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤のうち、アニオン性界面活性剤が特に好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、ラウリン酸ナトリウム・オレイン酸ナトリウム等の脂肪族カルボン酸塩、ラウリル硫酸エステルナトリウム・セチル硫酸エステルナトリウム・オレイル硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩・ドデシルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、アルキルジスルホン酸塩・ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム・ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム・トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリルスルホン酸塩、ラウリルリン酸モノエステルジナトリウム・ラウリルリン酸ジエステルナトリウム等の高級アルコールリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸モノエステルジナトリウム・ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ジエステルナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いても良い。なお、具体例としてナトリウム塩を挙げたが、特にナトリウム塩に限定されるものではなく、カルシウム塩、アンモニア塩などでも同様の効果を得ることができる。このうち、より一層、感光性樹脂組成物の水現像性に優れるなどの観点から、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのスルホン酸系界面活性剤が好ましい。
可塑剤は、感光性樹脂層16に柔軟性を付与できる。また、感光性樹脂層16に柔軟性を付与してこれを低硬度にできる結果、光重合性不飽和化合物の含有量を増やすことができるため、インク耐性も向上できる効果を奏する。可塑剤の含有量としては、0.1〜30質量%の範囲内が好ましい。より好ましくは5〜20質量%の範囲内である。可塑剤の含有量が0.1質量%以上であれば、感光性樹脂層16に柔軟性を付与する効果に優れる。これにより、感光性樹脂層16の溶剤インクに対する耐性(耐溶剤インク膨潤性)が向上する。一方、可塑剤の含有量が30質量%以下であれば、感光性樹脂層16の強度を確保できる。
可塑剤としては、液状ゴム、オイル、ポリエステル、リン酸系化合物などを挙げることができる。特に、水分散ラテックスあるいは疎水性ゴムと相溶性が良好なものが好ましい。液状ゴムとしては、例えば液状のポリブタジエン、液状のポリイソプレン、あるいは、これらをマレイン酸やエポキシ基により変性したものなどを挙げることができる。オイルとしては、パラフィン、ナフテン、アロマなどを挙げることができる。ポリエステルとしては、アジピン酸系ポリエステルなどを挙げることができる。リン酸系化合物としては、リン酸エステルなどを挙げることができる。
熱重合禁止剤(安定剤)は、混練時の熱安定性を高める、あるいは、貯蔵安定性を高めることができる。熱重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類のものなどを挙げることができる。熱重合禁止剤の含有量は、0.001〜5質量%の範囲内が一般的である。
感光性樹脂層16は、より柔軟な材料で構成されることが好ましい。この観点から、水分散ラテックス、疎水性ゴム、界面活性剤、光重合性不飽和化合物、および、光重合開始剤を含有することが好ましい。また、さらに、可塑剤を含有することが好ましい。
感光性樹脂層16の厚みは、0.01〜10mmの範囲内であることが好ましい。感光性樹脂層16の厚みが0.01mm以上であれば、レリーフ深度を十分に確保できる。一方、感光性樹脂層16の厚みが10mm以下であれば、フレキソ印刷版原版10の重さを抑えることができ、実用上、印刷版として使用することができる。感光性樹脂層16の厚みは、より好ましくは0.1〜5mmの範囲内、さらに好ましくは0.6〜4mmの範囲内である。
本発明に係るフレキソ印刷版原版は、使用時に、感光性樹脂層16の上にネガフィルム(すでに画像が形成されているもの)を密着させる、いわゆるアナログ方式のフレキソ印刷版原版であっても良いし、予め感光性樹脂層16の上に赤外線アブレーション層が密着している、いわゆるCTP(Computer to plate)方式に含まれるLAM(Laser ablation mask)方式のフレキソ印刷版原版であっても良い。
アナログ方式のフレキソ印刷版原版は、図1に示すように、支持体12と、接着剤層14と、感光性樹脂層16と、を備える。感光性樹脂層16の上には、保護層が設けられていてもよい。保護層は、使用前において感光性樹脂層16の傷を防止する。アナログ方式のフレキソ印刷版原版は、使用時には、保護層を剥がし、感光性樹脂層16の上に、予め画像が形成されているネガフィルムが密着される。
LAM方式のフレキソ印刷版原版は、アナログ方式のフレキソ印刷版原版と比較して、感光性樹脂層16の上にさらに赤外線アブレーション層を有する点が異なる。つまり、LAM方式のフレキソ印刷版原版は、支持体12と、接着剤層14と、感光性樹脂層16と、赤外線アブレーション層と、を備える。赤外線アブレーション層の上には、保護層が設けられていてもよい。保護層は、使用前において赤外線アブレーション層の傷を防止する。LAM方式のフレキソ印刷版原版は、使用時には、保護層を剥がし、赤外線アブレーション層が露出される。
アナログ方式のフレキソ印刷版原版およびLAM方式のフレキソ印刷版原版のいずれにおいても、保護層は、使用時には剥離されることから、剥離性に優れることが好ましい。この観点から、保護層は樹脂製フィルムが好ましい。具体的には、PETフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム,ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルムなどが挙げられる。
保護層の厚みは、取り扱い性に優れる、傷などから保護する機能に優れるなどの観点から、25〜200μmの範囲内が好ましい。より好ましくは50〜150μmの範囲内である。保護層には、シリコーン樹脂などの剥離剤が塗布されていても良い。
赤外線アブレーション層は、感光性樹脂層16の表面を覆うマスクとなる部分である。赤外線アブレーション層は、赤外線レーザにより除去され得る部分であるとともに、除去されなかった部分が紫外光を遮蔽(吸収)してその下の感光性樹脂層16に紫外光が照射されないようにマスクする部分である。赤外線アブレーション層は、感光性樹脂層16を挟んで支持体12の反対側に、感光性樹脂層16に接して配置され、感光性樹脂層16に密着される。紫外光を遮蔽するなどの観点から、赤外線アブレーション層の厚さは、0.1〜5μmの範囲内であることが好ましい。
赤外線アブレーション層は、バインダーポリマーおよび赤外線吸収物質を含有する樹脂組成物で構成される。赤外線アブレーション層のバインダーポリマーは、感光性樹脂層16との密着性の観点から、(A)感光性樹脂層16のバインダーポリマーと同じ構造を有するポリマーと、(B)アクリル樹脂と、を含有するものからなることが好ましい。
(A)成分のポリマーは、感光性樹脂層16のバインダーポリマーの分子構造中における単位構造あるいは繰り返し構造と同じ単位構造あるいは同じ繰り返し構造を有するものである。
例えば、NBR、SBR、BR、SBSなどは、同じ単位構造としてブタジエンに由来する構造を有している。また、NBR、SBR、SBSがブロック共重合体であれば、同じ繰り返し構造としてポリブタジエンに由来する構造を有している。したがって、感光性樹脂層16がバインダーポリマーとしてNBR、SBR、BR、SBSのいずれかを含有する場合には、密着性の観点から、赤外線アブレーション層は、バインダーポリマーとして、単位構造としてブタジエンに由来する構造を有するものか、繰り返し構造としてポリブタジエンに由来する構造を有しているものを含有することが好ましい。このようなポリマーとしては、NBR、SBR、BR、SBSなどを挙げることができる。
また、NBRは、ブタジエンに由来する構造に加えてアクリロニトリルに由来する構造を有している。NBRがブロック共重合体であれば、ポリアクリロニトリルに由来する構造を有している。したがって、感光性樹脂層16がバインダーポリマーとしてNBRを含有する場合には、密着性の観点から、赤外線アブレーション層は、バインダーポリマーとして、単位構造としてアクリロニトリルに由来する構造を有するものか、繰り返し構造としてポリアクリロニトリルに由来する構造を有するものを含有することが好ましい。このようなポリマーとしては、NBR、アクリロニトリル−イソプレン共重合体などを挙げることができる。
また、SBR、SBSは、ブタジエンに由来する構造に加えてスチレンに由来する構造を有している。さらに、SBR、SBSがブロック共重合体であれば、ポリスチレンに由来する構造を有している。したがって、感光性樹脂層16がバインダーポリマーとしてSBRあるいはSBSを含有する場合には、密着性の観点から、赤外線アブレーション層は、バインダーポリマーとして、単位構造としてスチレンに由来する構造を有するものか、繰り返し構造としてポリスチレンに由来する構造を有するものを含有することが好ましい。このようなポリマーとしては、SBR、SBS、SISなどを挙げることができる。
(B)アクリル樹脂は、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルから選択される1種以上のモノマーの重合体あるいは共重合体からなるものである。
(B)アクリル樹脂に対する(A)成分の質量比(A/B)は、1/3〜3/1の範囲内にある。A/B質量比がこの範囲内にあることで、赤外線アブレーション層のひび割れ、シワの発生防止と、耐傷性との両立が可能となる。A/B質量比が1/3未満((A)成分が少ない)では、赤外線アブレーション層に曲げの力が加わったときに、ひび割れ、シワが発生する。一方、A/Bが3/1超((A)成分が多い)では、赤外線アブレーション層に物理的な接触が生じたときにその表面に傷が付きやすく、耐傷性が悪化する。A/B質量比としては、好ましくは1/2〜2/1の範囲内である。
(B)アクリル樹脂の貯蔵弾性率としては、1.0×109〜4.1×109Paの範囲内にあることが好ましい。貯蔵弾性率が1.0×109Pa未満では、柔らかすぎるため、赤外線アブレーション層の耐傷性が低下しやすい。一方、貯蔵弾性率が4.1×109Pa超では、硬すぎるため、赤外線アブレーション層にひび割れ、シワが発生しやすい。(B)アクリル樹脂の貯蔵弾性率としては、より好ましくは1.0×109〜3.5×109Paの範囲内、さらに好ましくは1.0×109〜2.5×109Paの範囲内である。なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて測定した25℃における値である。動的粘弾性測定装置としては、ユービーエム社製「Rheogel−E4000F」を挙げることができる。
また、(B)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、48〜85℃の範囲内にあることが好ましい。Tgが48℃未満では、柔らかすぎるため、赤外線アブレーション層の耐傷性が低下しやすい。一方、Tgが85℃超では、硬すぎるため、赤外線アブレーション層にひび割れ、シワが発生しやすい。(B)アクリル樹脂のTgとしては、より好ましくは48〜70℃の範囲内、さらに好ましくは50〜65℃の範囲内である。なお、Tgは、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して測定される値である。
赤外線アブレーション層のバインダーポリマーは、さらに、感光性樹脂層16に含まれている低分子量成分と相溶することが好ましい。感光性樹脂層16に含まれている低分子量成分としては、必須成分としての光重合性不飽和化合物や、任意成分としての可塑剤、界面活性剤を挙げることができる。赤外線アブレーション層のバインダーポリマーは、低分子量成分の全てと相溶するものであっても良いし、低分子量成分の一部と相溶するものであっても良い。
赤外線アブレーション層のバインダーポリマーのうちの(A)成分のみが感光性樹脂層16に含まれている低分子量成分と相溶するものであっても良いし、(B)成分のみが感光性樹脂層16に含まれている低分子量成分と相溶するものであっても良いし、(A)成分と(B)成分の両方が感光性樹脂層16に含まれている低分子量成分と相溶するものであっても良い。
赤外線アブレーション層のバインダーポリマーと感光性樹脂層16に含まれている低分子量成分とが相溶するには、バインダーポリマーの分子構造中に低分子量成分の構造と同一の構造を有するか、あるいは、近い構造を有する場合を挙げることができる。また、バインダーポリマーの分子構造中に低分子量成分の極性に近い極性を持つ構造を有する場合を挙げることができる。また、バインダーポリマーの分子構造中に低分子量成分に対して親和性が高い構造を有する場合を挙げることができる。
例えば、感光性樹脂層16の光重合性不飽和化合物が(メタ)アクリルモノマーを含む場合には、赤外線アブレーション層のバインダーポリマーとして(B)アクリル樹脂を含むので、赤外線アブレーション層のバインダーポリマーと感光性樹脂層16に含まれている低分子量成分は相溶することができる。
また、感光性樹脂層16の低分子量成分として、液状BR、液状NBR、液状SBRなどが含まれる場合には、赤外線アブレーション層のバインダーポリマーがBR、NBR、SBRなどのブタジエン系重合体あるいはブタジエン系共重合体であれば、これらは同じ構造を有するため、相溶することができる。
また、赤外線アブレーション層のバインダーポリマーがBR、NBR、SBRなどのブタジエン系重合体あるいはブタジエン系共重合体の場合には、これらに共通したブタジエン構造に対して極性の似ている脂肪族炭化水素系の可塑剤は、相溶することができる。このような可塑剤としては、パラフィンやナフテンオイルなどを挙げることができる。
赤外線吸収物質としては、赤外線を吸収して熱に変換し得る物質であれば、特に限定されるものではない。赤外線吸収物質としては、具体的には、カーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、ローダミン色素、ナフトキノン系色素、ポリメチン染料、ジイモニウム塩、アゾイモニウム系色素、カルコゲン系色素、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、アリールアルミニウム金属塩類、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、酸化コバルトや酸化タングステンなどの金属酸化物、これらの金属の水酸化物、硫酸塩、ビスマス,スズ,テルル,アルミニウムの金属粉などを挙げることができる。このうち、紫外線吸収機能を有するなどの観点から、カーボンブラック、カーボングラファイトなどが好ましい。
赤外線吸収物質の含有量は、使用する赤外線レーザ光線で赤外線アブレーション層が除去されるような感度を有する範囲となる量であれば良い。赤外線吸収物質の含有量としては、好ましくは0.1〜75質量%の範囲内、より好ましくは1〜50質量%の範囲内である。
赤外線アブレーション層は、これらの成分の他に、各種の添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収物質、離型剤、染料、顔料、消泡剤、香料などを挙げることができる。界面活性剤としては、上記するものを挙げることができる。また、可塑剤としては、上記するものを挙げることができる。
紫外線吸収物質としては、300〜400nmの領域に吸収を有する物質が好ましい。このような物質としては、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、カーボンブラック、上記赤外線吸収物質で示される金属あるいは金属酸化物などを挙げることができる。
接着剤層14は、接着剤成分、金属酸化物、溶剤を含有する接着剤層用塗工液を調製し、これを支持体12に塗工した後、乾燥させて溶剤を除去することにより形成することができる。溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤や、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤や、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤や、酢酸メチルなどのエステル系溶剤や、グリコール系溶剤や、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性の極性溶剤などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
感光性樹脂層16の感光性樹脂組成物は、各成分を混練しながら脱水することにより調製できる。あるいは、予め水分散ラテックスを脱水した後、水分散ラテックスから得られた重合体と、これ以外の成分とを混練することにより調製できる。混練時に用いる混練機としては、2軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。
赤外線アブレーション層は、赤外線アブレーション層を形成する樹脂組成物の各成分を溶剤に溶解させて塗工液を調製し、これを基材となる保護層に塗工した後、乾燥させて溶剤を除去することにより形成することができる。溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤や、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤や、メタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤や、酢酸メチルなどのエステル系溶剤や、グリコール系溶剤や、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性の極性溶剤などを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
アナログ方式のフレキソ印刷版原版は、支持体12および接着剤層14からなる積層体の接着剤層14と、保護層と、の間に感光性樹脂組成物を挟み、感光性樹脂組成物が所定の厚みになるようにプレスすることにより製造できる。
LAM方式のフレキソ印刷版原版は、支持体12および接着剤層14からなる積層体の接着剤層14と、保護層および赤外線アブレーション層からなる積層体の赤外線アブレーション層と、の間に感光性樹脂組成物を挟み、感光性樹脂組成物が所定の厚みになるようにプレスすることにより製造できる。
次に、フレキソ印刷版原版を用いてフレキソ印刷版を製造する方法について説明する。図2は、フレキソ印刷版原版からフレキソ印刷版を製造する工程を説明する図である。図2に示すフレキソ印刷版原版20は、LAM方式のフレキソ印刷版原版であり、図1に示すフレキソ印刷版原版10から、赤外線アブレーション層18をさらに備える。フレキソ印刷版30は、フレキソ印刷版原版20の感光性樹脂層16にレリーフ像を形成したものである。
フレキソ印刷版30を製造する工程は、裏露光工程、描画工程、主露光工程、現像工程を有する。各工程は、基本的にはこの順で実施されるが、裏露光工程と描画工程は、順序を前後しても良い。
裏露光工程では、図2(a)に示すように、フレキソ印刷版原版20の支持体12側から紫外線を照射する。これにより、図2(b)に示すように、感光性樹脂層16の下側16aが硬化され、いわゆるレリーフ像のためのフロアが形成される。
描画工程では、図2(c)に示すように、フレキソ印刷版原版20の赤外線アブレーション層18側から赤外線レーザを照射して、赤外線アブレーション層18の所定の部分18aを除去することにより、感光性樹脂層16の上に所望のネガパターンを作製する。これにより、感光性樹脂層16の上に所望の画像マスクが形成される。
主露光工程では、図2(d)に示すように、画像マスクの上から感光性樹脂層16に紫外線を照射する。これにより、感光性樹脂層16の上側16bで画像マスクに覆われていない部分16cが硬化される。感光性樹脂層16には、硬化部分16a,16cと未硬化部分(16bのうち16cを除いた部分)とが生じている。
現像工程では、現像液中で画像マスクおよび感光性樹脂層16の未硬化部分(16bのうち16cを除いた部分)を除去する。これにより、図2(e)に示すように、レリーフ像が形成されたフレキソ印刷版30が得られる。その後、必要に応じて、フレキソ印刷版30を乾燥させる乾燥工程や、乾燥させたフレキソ印刷版30全体に再度紫外線を照射する後露光工程を実施しても良い。
紫外線照射は、300〜400nmの波長の光を照射できる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などを用いて実施することができる。
赤外線レーザとしては、ルビーレーザ,アレキサンドライトレーザ,ペロブスカイトレーザ,Nd−YAGレーザ,エメラルドガラスレーザなどの固体レーザ、InGaAsP,InGaAs,GaAsAlなどの半導体を用いた半導体レーザ、ローダミン色素などの色素レーザなどが挙げられる。
現像液としては、水系の現像液を用いると良い。水系の現像液は、水に、必要に応じて界面活性剤やpH調整剤などを添加したもので構成される。感光性樹脂層16の未硬化部分(16bのうち16cを除いた部分)の除去は、例えばスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機などを用いて未硬化部分(16bのうち16cを除いた部分)を洗い出すことにより行うことができる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)
<接着剤層の形成>
ポリエステル樹脂溶解液(東洋紡製「バイロン30SS」、固形分30質量%)100質量部と、金属酸化物として酸化チタン(テイカ製「MT−700B」、平均一次粒子径80nm)1.6質量部と、溶剤(質量比でトルエン:メチルエチルケトン=4:1の混合溶剤)53質量部と、をマヨネーズ瓶に入れ、略同量のガラスビーズ(φ1mm)を媒体にペイントシェーカーで1時間攪拌し、固形分20質量%の接着剤層用塗工液を調製した。
得られた接着剤層用塗工液を、125μm厚のPETフィルム(支持体)に、乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコートで塗工し、120℃で10分間乾燥させることにより、支持体上に接着剤層を形成した。
<感光性樹脂組成物の調製>
水分散ラテックス45.5質量部(固形分としての重合体は25質量部)と、アクリル変性液状BR15質量部と、アクリルモノマー5質量部とを混合し、120℃に加熱した乾燥機で2時間水分を蒸発させて、水分散ラテックスから得られた重合体と光重合性不飽和化合物との混合物を得た。この混合物と、BR30質量部と、界面活性剤4質量部(固形分としての重合体は2質量部)と、可塑剤15質量部とをニーダー中で45分間混練した。その後、ニーダー中に、熱重合禁止剤0.2質量部と、光重合開始剤を1質量部とを投入し、5分間混練して、感光性樹脂組成物を調製した。
<赤外線アブレーション層の形成>
アクリル樹脂(根上工業製「プレコート200」、E’=4.1×109Pa、Tg=85℃)50質量部およびNBR(日本ゼオン製「ニポールDN101」)50質量部からなるバインダーポリマー100質量部に対し、カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA8」)100質量部および可塑剤(O−アセチルクエン酸トリブチル)3質量部を加え、さらに溶剤としてメチルイソブチルケトン812質量部を加え、羽攪拌にて混合した。得られた混合液を三本ロールミルを用いて分散させた後、固形分が15質量%となるようにさらにメチルイソブチルケトンを加えることにより、赤外線アブレーション層用組成物を調製した。
得られた赤外線アブレーション層用組成物を、シリコーン系離型剤が塗布されている厚さ125μmのPETフィルム(保護層)に、乾燥後の厚さが1μmとなるようにバーコータで塗工し、120℃で5分乾燥させることにより、赤外線アブレーション層を形成した。
<フレキソ印刷版原版の作製>
支持体に形成された接着剤層と、保護層に形成された赤外線アブレーション層と、の間に、得られた感光性樹脂組成物を挟み、感光性樹脂層の厚さが1.5mmになるように120℃に加熱したプレス機でプレスすることにより、支持体、接着剤層、感光性樹脂層、赤外線アブレーション層、保護層がこの順で積層されたフレキソ印刷版原版を作製した。
(実施例2〜3)
金属酸化物(酸化チタン)の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして、フレキソ印刷版原版を作製した。
(実施例4)
金属酸化物を酸化亜鉛(テイカ製「MZ−150」、平均一次粒子径70nm)に変更し、接着剤層の厚みを3μmとした以外は実施例2と同様にして、フレキソ印刷版原版を作製した。
(実施例5)
金属酸化物を酸化アルミニウム(住友化学製「AMS−12」、中心粒径0.43μm)に変更した以外は実施例2と同様にして、フレキソ印刷版原版を作製した。
(実施例6)
金属酸化物(酸化アルミニウム)の配合量を変更した以外は実施例5と同様にして、フレキソ印刷版原版を作製した。
(比較例1)
金属酸化物を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、フレキソ印刷版原版を作製した。
(比較例2)
金属酸化物に代えて有機系の紫外線吸収剤(チバ・ジャパン株式会社製「チヌビン326」)1.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、フレキソ印刷版原版を作製した。
以下に、感光性樹脂組成物の成分を具体的に示す。
・水分散ラテックス:[(日本ゼオン株式会社製「ニポールLX111NF」)から得られた重合体]
・BR:[日本ゼオン株式会社製、ニポールBR1220]
・アクリル変性液状BR:[大阪有機化学株式会社製、BAC−45]
・アクリルモノマー:[日油株式会社製、1,9−ノナンジオールジメタクリレート]
・界面活性剤:[日油株式会社製、ニューレックスR]
・熱重合禁止剤:[精工化学株式会社製、MEHQ(ハイドロキノンモノメチルエーテル)]
・光重合開始剤:[チバ・ジャパン株式会社製、イルガキュア651]
・可塑剤:[エッソ石油株式会社製、クリストール70]
作製したフレキソ印刷版原版を用いて、一定の硬化時間に対するレリーフ厚み、画像再現性を評価した。さらに、フレキソ印刷版原版からベタのフレキソ印刷版を作製し、接着剤層と感光性樹脂層の密着性を評価した。評価方法は以下の通りである。これらの結果を表1にまとめた。
(土台厚み)
80Wのケミカル灯を15本並べた露光装置を用い、フレキソ印刷版原版の支持体側から10秒間裏露光をした。これにより、感光性樹脂層の下側を硬化して硬化層を形成した。次いで、界面活性剤の入った水系現像液を用いて8分間洗い出しを行い、感光性樹脂層の未硬化部分を除去した。次いで、50℃の熱風で十分に乾燥させた後、支持体と接着剤層と硬化層を合わせた厚みを測定し、土台厚みとした。
(画像再現性)
ESKO社製「CDI Spark2120」を用いて赤外線アブレーション層にφ130〜200μmの独立点ネガパターンを形成した。次いで、支持体側から、80Wのケミカル灯を15本並べた露光装置で、15cmの距離から、レリーフ厚みが500〜550μmとなるように裏露光した。その後、赤外線アブレーション層側から、上記露光装置で15cmの距離から6分間露光(主露光)した。次いで、界面活性剤の入った水系現像液中で50℃で8分間洗い出しを行った後、60℃の熱風で5分間乾燥させた。独立点部分を顕微鏡(キーエンス社製「VH8000」)で観察し、φ130〜200μmの独立点が再現されているものを「○」、再現されていないものを「×」とした。これを、フレキソ印刷版原版を作製した日の翌日(初期)と1週間静置後に行った。なお、表1における「○ φ130μm」は、φ130μmの独立点まで再現できているものであり、「○ φ150μm」は、φ150μmの独立点まで再現できているものであり、「× φ200μm」は、φ200μmの独立点も再現できていないものである。
(密着性)
土台厚みの評価において作製したベタのフレキソ印刷版を用い、接着剤層と硬化層との間にカッターナイフを差し込み、接着剤層と支持体を含む支持体側と硬化層側とを摘んで剥離させたときの剥離界面を観察した。この際、硬化層が破壊することにより剥離するか、接着剤層と硬化層の界面できれいに剥離するか、調べた。硬化層の破壊であったものを「A」、界面剥離で比較的密着性が高いものを「B」、界面剥離で比較的密着性が低いものを「C」とした。
比較例1および実施例から、接着剤層が金属酸化物を含有することにより、一定の硬化時間に対する土台厚みを薄くできることがわかる。そして、金属酸化物の含有量や種類、接着剤層の厚みを変更することにより、一定の硬化時間に対する土台厚みを調整できることがわかる。
また、比較例2および実施例から、接着剤層が有機系の紫外線吸収剤を含有すると経時で画像再現性が悪くなるのに対し、接着剤層が金属酸化物を含有すると経時でも画像再現性に優れることがわかる。
接着剤層に金属酸化物を含有させた実施例は、接着剤層に有機系の紫外線吸収剤を含有させた比較例2と同様、接着剤層に何も添加していない比較例1よりも硬化速度が低下しているにも関わらず、比較例2と異なり、φ130〜150μmの独立点が再現され、画像再現性に優れている。
そこで、この違いの要因を調べるため、実施例の接着剤層と比較例2の接着剤層の紫外線反射率を測定した。なお、実施例からは実施例2および実施例5の接着剤層を例に挙げた。試験体は、支持体上に接着剤層を形成したものを用いた。紫外線は、試験体の接着剤層側から照射した。UVAの代表的な波長である365nmの反射率を島津製作所製分光光度計「UV−3100」によって測定した。
この結果、実施例2の接着剤層は反射率13%、実施例5の接着剤層は反射率18%、比較例2の接着剤層は反射率7%であった。よって金属酸化物はUVAを反射する能力が比較的高く、主露光を接着剤面で反射させその反射光を硬化に利用することで微細な形状の再現に寄与したことが示唆された。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。