本発明に係る樹脂凸版印刷版の製造技術の好ましい実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、樹脂凸版印刷版の製造に用いられる感光性樹脂版の版材10を示す。この版材10にはアナログ版とデジタル版がある。アナログ版やデジタル版には、特許第5225327号公報に記載の樹脂凸版印刷版に用いられる感光性樹脂版の版材がある。アナログ版には、製版フィルムとしてネガフィルムが使用され、デジタル版には製版フィルムを不要としたCTP(Computer to Plate)方式の版材が用いられる。CTP版材は感光性樹脂層表面に画像マスクとなる感熱層(アブレーションマスク)が一体化された版材を指す。
感光性樹脂版の版材10には具体例として東洋紡株式会社製の製品名コスモライトQS114U、QS170F、QS284F、コスモライトQH,コスモライトQZ等のCTPフレキソ版材や、富士フィルムグローバルグラフィックシステムズ(FFGS)株式会社製の製品名水現像フレキソ版材、FLENEX FWシリーズ(FW-L,FW-A,FW-U)等のフレキソ版材や、GL-L9T,GL-L9D,GL-L7S,WS95HTIV,WF58HTIV,WF95DTIV,WF95GIIJ,WF95SII,WF95IIJ,WF95BII,WF95BSII,WF70BSII,WF95SSIII等のレタープレス用の感光性樹脂版版材がある。フレキソ版材は、プラスチックフィルム等の軟包装フィルム、紙器、紙袋の印刷や段ボール紙の印刷、電子部品等の工業部品の印刷に用いられる。感光性樹脂版版材はレタープレス等の紙印刷用に汎用されている。
感光性樹脂版の版材10は、フレキソ版材でショアA硬度が例えば30度~82度、好ましくは68度~82度であり、レタープレス用の感光性樹脂版版材でショアD硬度が22度~65度(ショアA硬度で約68度~100度に相当)であり、フレキソ版材の方が感光性樹脂版材(レタープレス版材)より軟らかい。さらに例えば、フレキソ版材の天地方向(長手方向)が762mm~1540mm、幅方向が635mm~1067mmである。また、感光性樹脂版版材の天地方向(長手方向)が数m(例えば3m)~9mであり、両版材の版厚には0.70mm~2.84mmのアナログ版あるいはデジタル版が用いられる。感光性樹脂版の版材10の一例は、天地方向が1200mm、幅方向が900mmで全体の版厚が1.14mmのCTP方式のフレキソ版材がある。
感光性樹脂版の版材10では、図1に示すように基板としてのポリエチレンフィルムのベースフィルム(フィルム支持体)11に接着剤層12を介して感光性樹脂層13が一体に積層される。この感光性樹脂層13上に所要波長のレーザ光、例えば赤外線レーザ光に反応するアブレーションマスク14が一体に装着される。アブレーションマスク14は赤外線レーザ光と反応するブラックマスク層が形成され、ブラックマスク層はレーザ光と反応して製版パターンが構成されるようになっている。アブレーションマスク14上にはカバーフィルム15が被着される。なお、感光性樹脂層13は赤外線レーザ光の照射には感度を有さず、その照射により反応することは無い。
感光性樹脂版の版材10はフレキソ版材の場合、ゴム系の感光性樹脂層13に例えば重合性化合物と光重合開始剤とを含有して、活性光源の所要波長、例えば300nm~400nm波長のエネルギー光(UV光)に反応して光硬化する光硬化性樹脂が用いられる。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン系またはアセトフェノン系の光重合開始剤を使用することができる。この光硬化性樹脂には、溶剤および添加剤の少なくとも一方を添加して使用するものでもよい。
感光性樹脂版の版材10がコスモライトQS114Uのフレキソ版材である場合、感光性樹脂層13は、例えば合成ゴム、液状ゴム、ポリウレタンメタクリレート系化合物、アクリルレート系化合物および光重合開始剤等で構成される。また、感光性樹脂版の版材10がFLENEX FWシリーズ(FW-L、FW-A、FW-U)のフレキソ版材である場合は、感光性樹脂版層13は例えばポリマー、メタアクリル酸エステル系モノマー、添加剤および光重合開始剤等で構成される。版材10がレタープレス印刷(紙印刷)の感光性樹脂版版材の場合、感光性樹脂層13が例えば光重合ポリアミド、メタアクリル酸エステル系モノマー、添加剤および光重合開始剤等で構成される。
また、感光性樹脂版層13には不飽和ポリエステル樹脂やポリブラジアンあるいはアクリルやウレタン等の不飽和基を導入した不飽和樹脂層の光増感剤や熱安定性を添加した光硬化性樹脂を用いてもよい。
好ましいゴム系の感光性樹脂版の版材10の一例として、フレキソ版材では版厚が1140μmの場合、ベースフィルム11のフィルム厚は125(又は188)μm、ハレーション防止用の接着剤層12は20μm、感光性樹脂版層13の層厚は995(又は932)μmに構成される。フィルム支持体としてのフィルムベース16(ベースフィルム11+接着剤層12)は145(208)μmのベース厚(支持体フィルム厚)を有する。
ベースフィルム11にはポリエステルフィルムの他に、ポリエチレン-テレフタレート(PETフィルム)、ポリ塩化ビニール等のプラスチック樹脂フィルム、スチレン―ブタジエンゴム等の合成ゴムフィルム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム、フェノール樹脂フィルムが挙げられる。接着剤層12には、ゴム系、ポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系の接着剤でコーティング処理あるいはカップリング剤によるアンカー処理等の各種のコーティング材が用いられる。
次に、感光性樹脂版の版材10を用いて、樹脂凸版印刷版を製造する場合を説明する。
感光性樹脂版の版材10に、CPT(Computer to Plate)方式のフレキソ版材を用いて感光性樹脂凸版印刷版18を製造する例を説明する。
感光性樹脂版の版材10のうち、フレキソ版材には、例えばコスモライトQS、QH、QZ、等で版厚が700μm~数千(7000)μm、好ましくは1000μm~4000μm、より好ましくは1140μm~2840μmを有する版材がある。この中で感光性樹脂版の版材10は版厚1140μmのCTP方式のフレキソ版材を用いて感光性樹脂凸版印刷版18を製造する製版技術の例を示す。フレキソ版材は、レタープレス等の紙印刷用に汎用される感光性樹脂版の(レタープレス)版材に較べ、版材の版厚が等しい場合、ショアA硬度が小さく、軟らかい材料が使用される。
感光性樹脂凸版印刷版18の製作の際には、図2(A)に示す感光性樹脂版の版材10にフレキソ版材のCTP版材とポジフィルム19が用意される。初めに感光性樹脂版のCTP版材10からカバーフィルム15が取り除かれる。
続いて、版材10のアブレーションマスク14側に図2(B)に赤外線レーザ光Lをパターン照射し、アブレーションマスク14に製版パターンを形成させる。CTP版材10は製版フィルムであるネガフィルムを必要としない。
CTP版材10のアブレーションマスク14に製版パターンが形成された後、図示しない露光装置のランプハウスに送られる。
[露光工程]
露光装置を構成するランプハウスに搬送されたCTP版材10は、ランプハウス内を所定の速度で走行させつつ、図2(C)に示すように、ランプハウス内で活性光源20により所要波長のエネルギー光が照射される。活性光源としては、例えば紫外線源を用いて315nm~400nmの紫外線(UV光)が照射され、主露光であるレリーフ露光が行われる。レリーフ露光用の活性光源20には、紫外線源の他に300nm~400nmの波長域の高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯やキセノンランプ等がある。光源には点光源ではなく、面光源に近いものが好ましい。
レリーフ露光において、CTP版材10はアブレーションマスク14の製版パターンを通じて感光性樹脂層13に所定の光量、例えば13,000mj/cm2程度の光量の紫外線が入射される。感光性樹脂層13は強力な紫外線エネルギーの照射により、照射部の感光性樹脂層13が光反応して光硬化される。この光硬化によりCTP版材10は感光性樹脂層13の画線部(照射部)に硬化部を構成する文字・画像のレリーフ像22が形成される。レリーフ像22はベースフィルム11に向かって、末広がりのテーパ状に安定的に形成される。
レリーフ像の最大の高さは、感光性樹脂層13の厚さによって決定される。感光性樹脂層13は画像部に潜像のレリーフ像22を奥まで硬化させるために。普通は活性光源20に強力なエネルギー光、例えば紫外線源では5,000mj/cm2程度以上のエネルギー光量、好ましくは13,000mj/cm2程度の紫外線が照射されて焼付き露光される。13,000mj/cm2程度のエネルギー光量で紫外線が所要時間、例えば30分間照射されると、感光性樹脂層13は照射部が光反応して所要のレリーフ深度(高さ)のレリーフ像22が安定的に形成される。感光性樹脂層22の表層部付近のみにレリーフ像22を形成させる場合には、レリーフ露光のエネルギー光は5,000mj/cm2程度の光量でもよく、必ずしも13,000mj/cm2の光量を必要としない。
感光性樹脂層13にレリーフ像22が形成された後、CTP版材10はランプハウスから取り出されて反転され、CTP版材10の裏側から透明なフィルム19を通して活性光源が照射される。フィルム19はアブレーションマスク14に位置合わせされて真空密着され、バキューム固定されている。このバキューム固定によりCTP版材10とフィルム19との間に位置ずれや密着ムラが発生するのが防止される。
このように感光性樹脂版のCTP版材10にレリーフ露光を行った後、取り出されて反転され、CTP版材10のベースフィルム11側に固着されたフィルム19を通してレリーフ露光以下のエネルギー光量でバック露光が行われる。バック露光では活性光源からレリーフ露光の0.03倍~1倍(等しい)のエネルギー光量の活性光、例えば紫外線がフィルム19側から感光性樹脂層13にフィルムベース16を通して入射される。バック露光では例えば370mj/cm2~10,000mj/cm2の紫外線光量が入射され、感光性樹脂層13のフィルムベース16側に層状に凝固して(光硬化して)所要凝固域のフロアが形成され、バック折出層(バック固化層)23が全面に構成される。バック折出層23の高さはバック露光時間とバック露光のエネルギー光量の強さにより調整することができる。
露光工程では、レリーフ像22の後にバック析出層23が形成されるので、光源としては、点光源ではなく面光源に近い線光源や面光源がよい。レリーフ露光量が少ないと、レリーフ像22そのものが欠落したり、ショルダが立ちすぎて耐刷性を損なう原因となる。レリーフ露光量が多過ぎると、網点のシャドー部や文字が太り易くなり、非画線部の深度が浅くなって印刷時にインキが詰まり易くなり、印刷品質を損なう原因となる。
またレリーフ像22のレリーフ深度(レリーフ高さ)は、感光性樹脂層13に作用するレリーフ露光とバック露光との露光量の調整により決定されるが、レリーフ深度の浅いレリーフ像22、例えばレリーフ深度60μm程度以下では、印刷時に被印刷部材に地汚れが発生することがあり、好ましくない。反対にレリーフ深度(レリーフ高さ)が高いと印刷時にレリーフ像22が折れたり、破損したり変形する恐れがあり、好ましくない。したがって、レリーフ像22のレリーフ深度(レリーフ高さ)は、110μm以上、好ましくは350μm以下の範囲が好ましい。
CTP版材10は感光性樹脂層13のフィルムベース16側にバック折出層23を一体に形成することによりフロアが構成され、CTP版材10の機械的、物理的および化学的強度を向上させることができる。バック折出層23は、層厚が厚ければ厚いほどCTP版材10の強度を向上させることができる。レリーフ像22の高さ(レリーフ深度)は感光性樹脂層3の層厚からバック析出層23の高さを引くことで決定される。結果的にはレリーフ高さ(レリーフ深度)はキスタッチの印刷が好ましい(軟包装フィルム印刷用の)フレキソ版材で、110μm以上、好ましくは300μm~400μm程度のレリーフ像22が構成されることが好ましい。
また、図2(C)および(D)では感光性樹脂版のCTP版材10にレリーフ露光とバック露光を同時に行うようにしてもよく、バック露光をレリーフ露光に先立って行うようにしてもよい。
バック露光を行ってバック析出層23を形成し、レリーフ深度を130μm~400μm程度に浅くすることでレリーフ露光の光量を少なくし、例えば5,000mj/cm2程度でレリーフ像22を形成することができる。レリーフ露光の光量が少ない程印刷時にベタの白抜きをきれいにすっきりさせることができる。またレリーフ深度を浅くすることで水現像時に未硬化部の洗い出し量が少なくて済み、洗い出し時間も少なくてよいので、水洗浄効率を向上させることができる。さらに印刷時に版胴のバウンシング(踊り)の少ない印刷機に樹脂凸版印刷版18の組合せにより、小さな網点や細かい罫線をきれいに印刷することができる。
[水現像工程]
潜像のレリーフ露光およびバック露光を行う露光工程で、光硬化作用を受けたCTP版材10は、フィルム19等を剥がして取り除いた後に、後述する製版システム30の洗浄装置31に送られ、洗浄装置31の洗浄ゾーン37内で水現像工程(水洗浄工程)が実施される。水現像工程では、CTP版材10は後述する無端磁性体搬送ベルトにワンタッチで載置され、両面接着テープを介して帯状薄肉のマグネットプレートの磁力で安定的に固定されて、洗浄ゾーン37内を水平方向に搬送される。無端磁性体搬送ベルトは磁性を有する無端ステンレス製ベルトで構成される。
CTP版材10は、洗浄ゾーン37で洗浄液のスプレー噴射(洗浄)と、複数組、例えば二組の平型洗浄ブラシ25(以下洗浄ブラシという)が組ごとに回転角度差を保ってスライドし、旋回運動するブラシ洗浄とが行われる。この水洗浄により、CTP版材10は版材の感光性樹脂層13から未硬化の樹脂材料が光硬化した硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から分離して取り除かれる。
図2(E)には2個の洗浄ブラシ25を用いた例を示している。実際には複数組、例えば二組の平型洗浄ブラシ25が設けられる。洗浄ブラシユニットの複数個ずつの洗浄ブラシ25は、版材10の感光性樹脂層13表面を組ごとに回転角度差を保って旋回運動し、スライドしてブラシ洗浄している。しかし、各組の洗浄ブラシ25は、組ごとに所要の回転角度差(回転位相差)を一定に保って旋回運動されるので、各組の洗浄ブラシ25のブラシ圧力が版材10の樹脂表面に作用する方向を異にし分散させることができる。
各組の洗浄ブラシ25が他の組との間に回転角度差(回転位相差)を保って旋回運動されることで、各組の洗浄ブラシ25はCTP版材10の樹脂表面を擦りつつスライドしてブラシ洗浄させるときCTP版材10に作用するブラシ圧力が同じ方向に向くことは無い。洗浄ブラシ25がCTP版材10に作用するブラシ圧力が各組ごとに分散するので、磁性体搬送ベルトに両面接着テープを介してマグネットプレートの磁力で固定されたCTP版材10は水洗浄中に脱落したり、シフトして損傷を受けるのを有効に防止できる。その上、CTP版材10は回転フリーに保持された複数の水切りローラ(後述)により弾力的に押圧されて磁性体搬送ベルト上での横滑りが防止される。
また、各組の洗浄ブラシ25によりブラシ洗浄されるCTP版材10の感光性樹脂層13は温水の洗浄液のスプレー噴射を受けつつ、ブラッシングされる。洗浄液は例えば40℃~60℃に加熱された温水、好ましくは50℃程度の温水を用いて効率よく水洗い洗浄される。
また水洗浄工程では、CTP版材10は数十mm/分~数百mm/分、好ましくは70mm/分~250mm/分の搬送速度で自動的に連続搬送される。温水の洗浄液は版材の感光性樹脂版層13にスプレー噴射され、複数組の洗浄ブラシ25は、各組ごとに旋回運動の回転角度差(回転位相差)が保たれてスライドしブラシ洗浄される。各組の洗浄ブラシ25により、版材の感光性樹脂版層13は(活性光源のエネルギー光と光反応しない)未硬化の樹脂材料が光硬化した硬化部(レリーフ像22やバック析出層23)から分離して取り除かれ、洗い流される。この水洗浄時には温水の洗浄液を例えば3L/分~6L/分の流量を供給して水洗いしている。さらに、感光性樹脂版の版材10にレタープレス印刷用の版材を用いる場合には、本発明者の特許第5225237号公報に記載されているように、ネガフィルムとポジフィルムを用いて露光工程で形成されたレリーフ像22やバック析出層23は、水現像工程で常温、例えば20℃~25℃の洗浄液を用いて洗浄ブラシでブラッシングされる。この洗浄ブラシのブラッシング作用により、感光性樹脂版層13は未硬化の樹脂材料が硬化樹脂表面から分離して取り除かれ、洗い流される。
版材の感光性樹脂層13はレリーフ露光やバック露光で活性光源から所要波長のエネルギー光が照射されて凝固し、硬化されている。光硬化された硬化樹脂材料は、フィルムベース16上に固定されるバック析出層23でレリーフ像22がサポートされて残され、安定した感光性樹脂凸版印刷版18が製造される。
なお、洗浄液では露光時に未反応の未硬化樹脂の分離除去を促進させるため、pH調整剤及び界面活性剤を加えた洗浄液が水性現像液として使用される。感光性樹脂版層13は光反応により凝固されて光硬化する光硬化樹脂材料であり、硬化部の光硬化樹脂は水性現像液に対する溶解性あるいは潤滑性がなく、水性現像液に対する化学的耐性が与えられることを利用したものである。感光性樹脂凸版印刷版18は、フレームベース16上に機械的、物理的および化学的特性(強度)に優れたレリーフ像22がバック析出層23でサポートされて形成される。洗浄液に加えられる界面活性剤として、具体的にはアルカリ水溶液の界面活性剤、例えば食器洗い用洗剤、衣類洗濯用洗剤が用いられる。
また、洗浄液で洗浄された感光性樹脂版の版材10は、レタープレス用版材やフレキソ用版材の構造に応じて、温水あるいは常温で水洗浄して感光性樹脂凸版印刷版18が製作される。この樹脂凸版印刷版18は続いてリンス液で表面洗浄され、感光性樹脂凸版印刷版18の表面に付着したゴミや未硬化の残存樹脂材料等の異物が取り除かれる。このようにして感光性樹脂凸版印刷版18が製造される。
[樹脂凸版印刷版のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係]
東洋紡株式会社製の製品名コスモライトQS114U、QS170F、およびQS284Fの3種類の感光性樹脂版の版材10(10A,10B,10C)を用いてフレキソ印刷用の樹脂凸版印刷版18を製造した場合における樹脂凸版印刷版18のレリーフ深度とフロア層とバック析出層との厚み寸法関係の例を示す測定データを図3~図5にそれぞれ示す。ここにフロア層は樹脂凸版印刷版18のベースフィルム11からバック析出層23までの積層部を言い、フロア層の層厚は樹脂凸版印刷版18の物理的、機械的、化学的強度を保つ上で重要である。
(1)図3は、コスモライトQS114Uのゴム系の感光性樹脂版の版材10Aから製造される樹脂凸版印刷版10Aのレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図である。この版材10Aは版厚1.14mmのフレキソ印刷用のCTP版材であり、版材サイズが900mm×1200mmでショアA硬度が81度の物を用いた。このCTP版材の厚み寸法は、ベースフィルム11が125μmのベース厚、接着剤層12が20μmの層厚、感光性樹脂版層13が995μmの層厚、アブレーションマスク14が2μmの厚さ、カバーフィルム15が100μmのカバー厚を備えたフレキソ版材10Aである。
フレキソ版材10Aは、露光工程で活性光源から光量13,000mj/cm2のレリーフ露光(主露光)を照射し、バック露光では光量374mj/cm2~9781mj/cm2と種々変えて照射した。レリーフ露光およびバック露光には紫外線源からのUV光を使用した。露光工程で、レリーフ露光とバック露光が照射された感光性樹脂版の版材10Aは続いて洗浄工程で洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシユニットの旋回運動による洗浄ブラシ25のブラシ洗浄との水洗浄が行われる。この水洗浄により、版材10Aは感光性樹脂層13の未硬化の樹脂材料が硬化部(レリーフ像22、バック析出層23)から除去され、取り除かれる。未硬化の樹脂材料が除去されたフレキソ版材10Aから樹脂凸版印刷版18は所要のリンス洗浄で表面洗浄され、ごみなどの異物が取り除かれ、続いて乾燥処理により、樹脂凸版印刷版18が乾燥され、ネバネバ等が取り除かれて樹脂凸版印刷版18が製造される。
図3は感光性樹脂版の版材10Aから露光工程でバック露光の光量を種々変えることにより製造される樹脂凸版印刷版18のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係の例を示す一覧リストである。この一覧リストから、No.8~No.12の測定結果では、樹脂凸版印刷版18のレリーフ深度が42μm以下と浅い。レリーフ深度が42μm以下の樹脂凸版印刷版18をフレキソ印刷装置の版胴に装着して印刷すると、樹脂凸版印刷版18のレリーフ像22の高さ(レリーフ深度)が低いため、印刷により被印刷物に地汚れが発生し好ましくない。したがってレリーフ像22のレリーフ深度は、樹脂凸版印刷版18の版面の粗さや版胴および圧胴の精度を考慮すると、110μm以上、好ましくは300μm~400μm以上必要となる。この樹脂凸版印刷版18はプラスチックフィルム等の軟包装フィルムや封筒、カートン、タグ、ラベルに適した樹脂凸版印刷版18を提供することができる。
(2)図4はコスモライトQS170Fのゴム系の感光性樹脂版の版材10Bから製造される樹脂凸版印刷版10Bのレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図である。この版材10Bはフレキソ印刷用のCTP版材であり、版材サイズが900mm×1200mmでショアA硬度が77度の物を用いた。CTP版材の厚み寸法は、ベースフィルム11が125μmのベース厚、接着剤層12が20μmの層厚、感光性樹脂版層13が1555μmの層厚、アブレーションマスク14が2μmの厚さ、カバーフィルム15が100μmのカバー厚を備えたフレキソ版材10Bである。
感光性樹脂版の版材10Bは、露光工程で活性光源の紫外線源から光量13,000mj/cm2のレリーフ露光(主露光)を照射し、バック露光では光量374mj/cm2~9781mj/cm2と種々変えて照射した。露光工程でレリーフ露光とバック露光を行って露光された感光性樹脂版の版材10Bは、続いて洗浄工程に送られ、この洗浄工程で洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシユニットの洗浄ブラシの旋回運動によるブラシ洗浄とにより、水洗浄が行われる。この水洗浄により、版材10Bの感光性樹脂層13は、未硬化の樹脂材料が硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から除去され、取り除かれる。未硬化の樹脂材料が除去された感光性樹脂版の版材10Bから、フレキソ版材10Aと同様にして樹脂凸版印刷版18が製造される。
図4は、版厚1.70mmの感光性樹脂版の版材10Bから製造された樹脂凸版印刷版18のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係の例を示す測定データ図である。この一覧リストから樹脂凸版印刷版18はフレキソ印刷の版胴に装着してフレキソ印刷してもレリーフ像のレリーフ深度は109μm~714μmの高さを有するので、露光寛容度が大きく、品質が優れた樹脂凸版印刷版18を提供することができる。フロア層は、約1mm~1.6mm程度の層厚を有し、バック析出層は841μm~1446μmの層厚を備えるので、レリーフ像22を十分にサポートすることができ、物理的、機械的、化学的強度を備えたフレキシブルな樹脂凸版印刷版18を提供することができる。樹脂凸版印刷版18はプラスチックフィルムなどの包装フィルム、封筒、カートン、ラベルの印刷に適した印刷版を提供することができる。
(3)図5はコスモライトQS284Fのゴム系の感光性樹脂版の版材10Bから製造される樹脂凸版印刷版10Cのレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係を示す測定データ図である。この版材10Cはフレキソ印刷用のCTP版材であり、版材サイズが900mm×1200mmでショアA硬度が77度の物を用いた。CTP版材の厚み寸法は、ベースフィルム11が125mmのベース厚、接着剤層12が20μmの層厚、感光性樹脂版層13が2695μmの層厚、アブレーションマスク14が2μmの厚さ、カバーフィルム15が100μmのカバー厚を備えたフレキソ版材10Cである。
フレキソ版材10Cは、露光工程で活性光源の紫外線源から光量13,000mj/cm2のレリーフ露光(主露光)を照射し、バック露光ではUV光の光量374mj/cm2~9781mj/cm2と種々変えて照射した。露光工程でレリーフ露光とバック露光を行って露光された感光性樹脂版の版材10Cは、続いて洗浄工程に送られ、この洗浄工程で洗浄液のスプレー噴射と洗浄ブラシ25の旋回運動によるブラシ洗浄とにより、水洗浄が行われる。この水洗浄により、フレキソ版材10Cの感光性樹脂層13は、未硬化の樹脂材料が硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から除去され、取り除かれる。未硬化の樹脂材料が除去されたフレキソ版材10Cから、以下、フレキソ版材10A、10Bと同様にして樹脂凸版印刷版18が製造される。
図5は、版厚2.84mmのフレキソ版材は版材10Cから製造された樹脂凸版印刷版18のレリーフ深度―フロア層―バック析出層の厚み寸法関係の例を示す一覧リストである。この一覧リストから樹脂凸版印刷版18はフレキソ印刷装置の版胴に装着してフレキソ印刷してもレリーフ像22のレリーフ深度は668μm~929μmの高さを有し、1mm以下のレリーフ深度を有するので、耐刷性が良好で、露光寛容度が大きく、品質の優れた印刷版を提供することができる。フロア層の層厚も2mm程度を有し、バック析出層23も1766μm~2027μmの層厚を備えるので、レリーフ像22をバック析出層23で十分にサポートすることができ、物理的、機械的化学的強度を備えた樹脂凸版印刷版18を提供することができる。
ところで、感光性樹脂版の版材10は、ゴム系のフレキソ版材が特許第5225327号公報記載の感光性樹脂版の版材10(レタープレス版材)に較べ、露光工程で(主露光の)レリーフ露光やバック露光に活性光の大きなエネルギー光量が必要となることを知見した。例えば、版厚1.14mmのフレキソ版材では、レリーフ露光で13000mj/cm2、バック露光で374mj/cm2~4,559mj/cm2の活性光(UV光)のエネルギー光量が必要となる。ゴム系のフレキソ版材では、所要高さのレリーフ像22およびバック析出層23を得るために、レタープレス版材の10倍~30倍程度のレリーフ露光と10倍~70倍程度のバック露光のエネルギー光量が必要となることを知見した。
また、ゴム系のフレキソ版材の感光性樹脂層13は、合成ゴムおよび液状ゴムのゴム成分を備えるため、ゴム弾性を有する。このため、フレキソ版材では、水現像工程で未硬化の樹脂材料を硬化部(レリーフ像22やバック析出層23)から除去するのに、洗浄ブラシ25でレタープレス版材の場合より強く押圧して旋回運動させ、ブラシ洗浄させる必要がある。フレキソ版材の感光性樹脂版層13に洗浄ブラシ25を強く押圧し、旋回運動させてブラシ洗浄すると、フレキソ版材は上側磁性体搬送ベルト54aで横滑りする恐れがある。しかしフレキソ版材は、後述するように、複数の水切りローラが回転フリーで弾力的に上方から押圧接触しており、また、フレキソ版材は両面接着テープを介してマグネットプレートの磁力により磁性体搬送ベルトに固定されているので、フレキソ版材の横滑りは有効的にかつ確実に防止することができる。
さらに図3~図5には、版厚が1.14mm、1.70mmおよび2.84mmの3種類の感光性樹脂版の版材10A,10B,10Cから製造される樹脂凸版印刷版18の例を示したが、感光性樹脂版の版材10は、版厚が3.00mm以上であっても、版厚10mm程度までの版材から同様にして樹脂凸版印刷版18が製造できるものと思われる。
次に、樹脂凸版印刷版の製造システムの実施の形態について説明する。
図6は樹脂凸版印刷版の製版システム30を示す全体構成図であり、図7は樹脂凸版印刷版の製版システム30を一部省略して示す平面図である。
本発明に係る樹脂凸版印刷版の製版システム30は、感光性樹脂版の版材10から樹脂凸版印刷版18を製造するものである。製版システム30は洗浄装置31と乾燥装置32とが組み合わされて構成される。洗浄装置31と乾燥装置32はアングル溶接構造の洗浄架台33と乾燥架台34とがセパレート可能に独立して設置される。組み合わされた製版システム30は、例えば全長が5200mm、幅が1700mm、高さが1650mm程度の略長方体のボックス形状に構成される。
樹脂凸版印刷版の製版システム30は、図6および図7に示すように、洗浄架台33の上部に洗浄部35が設けられる。この洗浄部35は透明な仕切壁36により、洗浄液を用いる洗浄ゾーン37と隣接するリンス液を用いるリンスゾーン38とに区画される。
洗浄架台33の洗浄部35上には、長手方向の両側で観音開きされる一対の開閉蓋40が開放位置と閉鎖位置との間を開閉自在に設けられる。各開閉蓋40にブラシ駆動モータ41でそれぞれ駆動される洗浄ブラシユニット43が設けられる。洗浄ブラシユニット43は複数個、例えば各2つの洗浄ブラシ25が組をなして複数組、例えば2組設けられる。
一方、洗浄架台33は図6の右側と左側の両側に取付設置台50,51が一体に設けられる。右側取付設置台50上にドライブローラ52が回転自在に設けられ、左側取付設置台51上にドリブンローラ53が設けられる。ドライブローラ52とドリブンローラ53とに無端磁性体搬送ベルト54が巻き掛けられて掛け渡される。無端磁性体搬送ベルト54は例えば磁性を有するステンレス製ベルトが用いられる。無端磁性体搬送ベルト54がステンレス製ベルトであると、ドライブローラ52とドリブンローラ53は大径、例えば直径数百mm~1m程度、一例では直径700mmのドラムローラが用いられる。
ステンレス製ベルトのベルト幅は1000mm~1500mm程度、例えば1200mmの幅広に形成され、ベルト厚さは1mm程度以下、例えば0.8mmの薄肉のステンレス製プレートが用いられる。ステンレス製ベルトは大きな平面剛性を備えたベルト面を有する。無端磁性体搬送ベルト54はベルト幅が幅広であるため、ドライブローラ52とドリブンローラ53のローラ径を小さくすると、無端磁性体搬送ベルト54の曲率半径が小さくなって、スムーズなベルト搬送を行うことが困難となり、ベルト寿命が損なわれる。
また、右側取付設置台50内にベルト駆動モータ55が設けられる。ベルト駆動モータ55は動力伝達機構56を介してドライブローラ52のローラ軸と駆動連結される。動力伝達機構56はベルト駆動モータ55の出力軸に連結された二段の減速ギヤー機構と、スプロケット-チェーン機構との多段減速機構を経て、ドライブローラ52を駆動させるようになっている。ベルト駆動モータ55はインバータ制御によりモータ速度が調整され、ベルト駆動モータ55のモータ駆動により(動力伝達機構56を介して)ドライブローラ52が回転駆動される。このドライブローラ52にて駆動される無端磁性体搬送ベルト54は例えば70mm/分~250mm/分の搬送速度で搬送される。なお図6には右側取付設置台50にドライブローラ52を設けた例を説明したが、ドライブローラを左側取付設置台51に設け、右側取付設置台50にドリブンローラを設けてもよい。
無端磁性体搬送ベルト54、例えば磁性を有するステンレス製ベルトには、オーステナイトフェライト系(SUS329J1)、マルテンサイト系(SUS403,SUS420)、フェライト系(SUS430LX)およびマルテンサイト系析出硬化型の磁性体(強磁性体)のステンレス鋼が用いられる。無端磁性体搬送ベルト54のステンレス製ベルトには、フェライト系ステンレス鋼や、マルテンサイト系ステンレス鋼が好適に使用される。
無端磁性体搬送ベルト54は、上側磁性体搬送ベルト54aが洗浄部35内を搬入口IN側から搬出口OUT側に水平方向に延び、上側磁性体搬送ベルト54a上に搬送路が構成される。上側磁性体搬送ベルト54aには、感光性樹脂版の版材10が図8および図9に示すように、洗浄部35の搬入口IN側で載置される。版材10は帯状薄肉のマグネットプレート58および両面接着テープ48により、上側磁性体搬送ベルト54aに磁力で固定される。搬入口INを通る版材10は、反射シール49からの反射光を版検出センサ59で検出される。マグネットプレート58は、感光性樹脂版の版材CTP版材10の先端側と後端側とを幅方向に固定して版材10を上側磁性体搬送ベルト54a上に装着している。
マグネットプレート58は、薄肉、例えば0.3mm~1mmのプレート厚の帯状プレートで構成される。この帯状マグネットプレート58は、図9に示すように、上側磁性体搬送ベルト54aを構成するステンレス製ベルトに接して配置され、その上に両面接着テープ48を介して感光性樹脂版の版材10が載置される。したがって版材10の先端側と後端側は粘着力とマグネットプレート58、磁性体搬送ベルト54a間に働く磁力により固定される。版材10の先端側と後端側の下面は両面接着テープ48により、先行するマグネットプレート58aの後端部と後行するマグネットプレート58bの前端部との各上面に固着される。マグネットプレート58(58a,58b)は上側磁性体搬送ベルト54aのベルト幅全体とほぼ等しい長さを有し、その下面全面で搬送ベルト54aと面接触して磁力で固定される。マグネットプレート58(58a,58b)は磁性体搬送ベルト54aのベルト幅方向に延びて帯状に形成され、マグネットプレート58の帯幅は比較的幅広で、磁性体搬送ベルト54aとの接触面積が大きい。このため、マグネットプレート58は大きな磁力で磁性体搬送ベルト54a上に固定される。したがって版材10は両面接着テープ48を介してマグネットプレート58に固着され、マグネットプレート58の磁力により磁性体搬送ベルト54aに安定的に固定される。
版材10の先端側と後端側の両面接着テープ48は、20μm~100μmのテープ厚さを有する。両面接着テープ48は、マグネットプレート58の後端部あるいは先端部に固着され、版材10をステンレス製ベルトに直接接触させて固着することはない。版材10の先端側と後端側は、両面接着テープ48とを介してマグネットプレート58に固着され、マグネットプレート58の磁力でステンレス製ベルトにベルト幅方向に載置され固定される。さらにマグネットプレート58は版材10の先端あるいはその後端から前方あるいは後方にそれぞれ延びており、その延長部上に反射シール(反射板)49が設置される。反射シール49からの反射光が版検出センサ59で検出され、版検出センサ59は版材10の先端部と後端部を検出して、版材10の通過を検知している。
版材10は両面接着テープ48を介してマグネットプレート58の磁力により上側磁性体搬送ベルト54a上に大きな接触面積で強固に固着され、安定的に載置される。なお、マグネットプレート58は、版材10の前端部および後端部に幅方向に固定する代わりに、版材10の幅方向両端部をその長手方向に両面接着テープ48を介して同様に固定してもよい。マグネットプレート58は矩形で薄肉、帯状のプレート構造に構成され、プレート厚さが1mm以下、例えば0.3~1mm程度に形成される。帯状のマグネットプレート58の屈曲性は長手方向(ベルト幅方向)が柔軟性に富んで屈曲性が大きく、幅方向に大きな剛性を有して屈曲性が小さい。このためマグネットプレート58は、感光性樹脂版の版材10に密着(面接触)してワンタッチで安定的に装着され、版材10を(上側磁性体搬送ベルト54aの)平面剛性を有する大きなマグネット製ベルトに固定させることができる。
また、版材10を載置して固着させる無端磁性体搬送ベルト54は、洗浄部35内を蛇行走行したり、斜行走行しないように、蛇行防止機構60(図10)が備えられる。蛇行防止機構60はドライブローラ52およびドリブンローラ53に形成された周溝61と無端磁性体搬送ベルト54に沿うガイドロープ62とから構成される。ドライブローラ52とドリブンローラ53との各周溝61に無端磁性体搬送ベルト54のガイドロープ62が嵌合し、無端磁性体搬送ベルト54の走行が案内される。無端磁性体搬送ベルト54は、蛇行防止機構60によりジグザグ走行や蛇行走行が防止され、斜行走行を防ぐことができる。
無端磁性体搬送ベルト54はステンレス製ベルトであり、図11に示すようにベルト両端近くの内周面に全周にわたって可撓性のガイドロープ62が固着され、これが斜行防止ゴムクッション材(一種のOリング)として機能する。ガイドロープ62は、横断面がV字状、U字状あるいは円弧状に凸設されている。ロープ幅は15mm~25mm程度である。無端磁性体搬送ベルト54は、ベルト幅Wが1200mmの場合、左右一対のガイドロープ62間のベルト有効寸法Waは例えば1100mm~1160mm程度に構成される。
蛇行防止機構10はドライブローラ52およびドリブンローラ53の周溝61と無端磁性体搬送ベルト54の長手方向に沿うガイドロープ62とが嵌合して、無端磁性体搬送ベルト54の走行が案内される。したがって、蛇行防止機構60により、上側磁性体搬送ベルト54aは水平方向にスムーズに案内され、蛇行走行および斜行走行が防止される。図10および図11に示された蛇行防止機構60はドライブローラ52およびドリブンローラ53の周溝61と無端磁性体搬送ベルト54のガイドロープ62との係合により構成される例を示したが、代わりにドライブローラ52とドリブンローラ53の長手方向中央部を中高に構成したクラウン構造により。無端磁性体搬送ベルト54の蛇行走行を防止する蛇行防止機構としてもよい。
また無端磁性体搬送ベルト54の上側磁性体搬送ベルト54aは図6および図8に示すように、水平方向に配列された複数のキャリアローラ65上にサポートされて、走行が案内され、上側無端磁性体搬送ベルト54のベルト表面上に水平方向に延びる搬送路が構成される。各キャリアローラ65が洗浄ブラシユニット43の各洗浄ブラシ25の間、および最初の洗浄ブラシ25の上流側、最終の洗浄ブラシ25の下流側にそれぞれ所要の間隔、例えば等間隔を置いて設けられる。各キャリアローラ65は無端磁性体搬送ベルト54のガイドロープ62と係合する周溝をそれぞれ構成したり、或いは各キャリアローラ65は無端磁性体搬送ベルト54のガイドロープ62と接触しないようにローラ長手方向長さを無磁性体搬送ベルト54のベルト有効寸法幅Wa未満に構成してもよい。上側無端搬送ベルト54aはステンレス製ベルトで大きな平面剛性のベルト面を形成しており、このステンレス製ベルトは多数のキャリアローラ65に支持されて搬送されるので、ステンレス製ベルト上の搬送路は波打ち現象が生じない安定したベルト面が構成される。
さらに、上側磁性体搬送ベルト54a上には各キャリアローラ65の上側に水切りローラ66が対向してそれぞれ設けられ、各水切りローラ66はスポンジローラなどの弾力性を有する弾性ローラで構成される。最初の水切りローラ66の下流側に絞りローラ67がそれぞれ設けられる。これら絞りローラ67も水切りローラ66と同様、スポンジローラ等の弾力性に富む弾性ローラで構成される。これらの水切りローラ66および絞りローラ67は、キャリアローラ65に対向して、上側磁性体搬送ベルト54aにそれぞれ上下の対をなして配設される。その上、複数の水切りローラ66は、回転フリーにそれぞれ弾性支持され、上側磁性体搬送ベルト54aに載置された感光性樹脂版の版材10を上方から弾力的に押圧している。各水切りローラ66は版材10を回転フリーで上方から押圧して、弾力的な押圧力で版材(CTP版材)10の横滑りを防止している。また、水切りローラ66や絞りローラ67は弾性ローラの弾力性と上側磁性体搬送ベルト54a上に弾性スプリング等で弾力支持されることで感光性樹脂版の版材10端部と帯状マグネットプレート58の存在による凹凸を吸収することができる。
また、洗浄ゾーン37の搬入口IN側にも複数、例えば二つのニップローラであるガイドローラ68や絞りローラ67が配設される。ガイドローラ68はドリブンローラ53から送られる上側無端搬送ベルト54aを上方から押圧してガイドしている。しかして、上側無端搬送ベルト54a上の版材10は、弾力支持されたガイドローラ68、絞りローラ67および各水切ローラ66で上方から押圧して案内され搬送される。
一方、洗浄装置31は洗浄部35の上部に対をなす開閉蓋40が観音開き可能に設けられており、各開閉蓋40は両側端部に設置の流体シリンダ装置70により開放位置と閉鎖位置との間で開閉自在に設けられる。各開閉蓋40は底部の取付固定台71上にブラシ駆動モータ41が設けられる。取付固定台71の下方に洗浄ブラシユニット43が複数例えば6本ずつの弾性スプリングを介して支持される。また、取付固定台43上には公知のアクチュエータである旋回回転機構72が設置される。旋回回転機構72はブラシ駆動モータ41の駆動により、洗浄ブラシユニット43を旋回駆動させるようになっている。旋回回転機構72はブラシ駆動モータ41のモータ出力軸に設けられたウォームギアと、このギアに噛合する円周ギアと、円周ギアを回転自在に支持するベアリングとから構成されるウォームギア機構であったり、モータ出力軸に固定された偏心クランクとこの偏心クランクの他側を回転自在に支持ずる旋回クランク機構などで構成される。
また、図8に示すように、各開閉蓋40の取付固定台71に複数組、例えば二組の洗浄ブラシユニット43が複数の弾性スプリング等により弾性支持される。各組の洗浄ブラシユニット43には、複数個、例えば二個ずつの平型洗浄ブラシ25(以下洗浄ブラシという)が上側磁性体搬送ベルト54aの長手方向に対向して備えられる。洗浄ブラシユニット43は取付固定台71に水平方向に弾性支持された矩形のブラシ取付板73と、ブラシ取付板73の長手方向(上側磁性体搬送ベルト54aの長手方向)両側に固定のベース基部74と両ベース基部74に設けられた複数個、例えば二個ずつが組をなす洗浄ブラシ25とから構成される。各組の洗浄ブラシ25は開閉蓋40が開放位置をとるとき、ベース基部74の一側からスライドされて取り外し可能にベース基部74に装着される。
洗浄ゾーン37で洗浄液によるスプレー洗浄と洗浄ブラシ25によるブラシ洗浄を受ける版材10は、フレキソ版材と感光性樹脂凸版の版材(レタープレス版材)の種類に応じて、洗浄液の使用温度が異なる。版材10がフレキソ版材の場合、洗浄液は所定温度、例えば40℃~60℃、好ましくは50℃程度に加熱された温水が用いられる。レタープレス印刷用の感光性樹脂凸版版材の場合は、常温水、例えば20℃~25℃の水が用いられる。
洗浄ブラシ25は、図12および図13に示すように偏平ボックス状に構成される。洗浄ブラシ25は、矩形プレート状のブラシ基板75に多数の取付孔が千鳥状に配列され、各取付孔に多数、例えば10本から数10本のブラシ毛76がそれぞれ植設される。ブラシ毛76は図14に示すように、碁盤目状に配設した洗浄ブラシ25Aであってもよい。
洗浄ブラシ25のブラシ毛76には、樹脂ブラシ毛が用いられる。樹脂ブラシ毛には腰の強いナイロンブラシや、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のブラシ等がある。洗浄ブラシ25のブラシ毛76は毛先が揃えられ、版材10の樹脂表面を摩擦接触させて(擦って)ブラシ洗浄させると、ブラシ毛76の腰が強いため、版材10は樹脂表面の未硬化部の樹脂材料が光硬化した硬化部から擦られて削られ、硬化部の樹脂材料から分離除去される。
ところで、洗浄ブラシ25は、ブラシ毛76の直径(太さ)に応じて、複数種類、例えば3種類あるいは4種類のブラシ毛76が選択的に用いられる。3種類のブラシ毛76の例で説明すると、洗浄ブラシ25には粗ブラシ毛と中間ブラシ毛と仕上げブラシ毛が用いられる。例えば、粗ブラシ毛の場合、ブラシ毛76の直径(太さ)が160μmで有効長さ17mm程度のもの、中間ブラシ毛の場合は、ブラシ毛76の直径が130μmで有効長さ15mm程度のもの、仕上げブラシ毛の場合はブラシ毛76の直径が100μmで有効長さ13mm程度のものが、洗浄ブラシ25として使用される。ブラシ毛56の有効長さは、ブラシ基板75の表面からブラシ毛76の自由端までの長さをいう。
また、洗浄ブラシユニット43の各組の洗浄ブラシ25の配列は、上流側(図5の左側)の洗浄ブラシユニット43には粗ブラシと中間ブラシ毛の洗浄ブラシ25の組が配列される。下流側(図8の右側)の洗浄ブラシユニット43には、中間ブラシ毛と仕上げブラシ毛の洗浄ブラシ25の組が配設される。
このように、各組の洗浄ブラシ25の配列は、上側無端搬送ベルト54aの上流側から下流側に向かって、粗ブラシ毛と中間ブラシ毛の組あるいは粗ブラシ同士の組の洗浄ブラシ25から下流側に中間ブラシ毛と仕上げブラシ毛の組あるいは仕上げブラシ毛同士の組の洗浄ブラシ25が適宜組み合わされて順次配列される。
なお、洗浄ブラシ25に仕上げブラシ毛を用いたものは、ブラシ毛の太さ(直径)が洗浄ブラシ25の他のブラシ毛を用いたものに較べ、洗浄ブラシ25のブラシ洗浄作用による摩擦や損耗が早いため、ブラシ寿命が短い。このため、各組の洗浄ブラシ25は仕上げブラシ毛の細い順にブラシ寿命に到達する。ブラシ寿命に到達した洗浄ブラシ25は、順次新しい洗浄ブラシと交換させる必要がある。
洗浄ブラシ25の交換作業は、洗浄装置31の洗浄運転を停止させ、開閉蓋40を流体シリンダ装置70の作動により開放位置にセットさせることで行われる。開放位置で交換が必要な洗浄ブラシ25をスライドさせて洗浄ブラシユニット43のベース基部74から取り外し、新しい洗浄ブラシ25をスライドさせてベース基部74に取り付けることで交換作業が実施される。各組の洗浄ブラシ25は個々に洗浄ブラシユニット43着脱させることができ、着脱が容易である。洗浄ブラシユニット43に新しい洗浄ブラシ25を取り付けて開閉蓋40を閉塞させることにより、洗浄ブラシ25の交換作業が終了し洗浄装置31の洗浄運転を再び開始させることができる。
洗浄ブラシ25に4種類のブラシ毛、すなわち粗ブラシ毛と中太ブラシ毛および中細ブラシ毛と仕上げブラシ毛を用いる場合は、粗ブラシ毛と中太ブラシ毛の組の洗浄ブラシ25が上流側に、下流側に中細ブラシ毛と仕上げブラシ毛の組の洗浄ブラシ25を備えた洗浄ブラシユニット43が配列される。このように、各組の洗浄ブラシユニット43は洗浄ブラシ25のそれぞれブラシ毛の直径(太さ)が各組ごとに異なり、最上流の洗浄ブラシ25は粗ブラシが用いられ、最下流の洗浄ブラシ25には仕上げブラシ毛が用いられる。
そして、洗浄ブラシユニット43の上流側および下流側の各組の洗浄ブラシ25は、ブラシ毛76の先端(毛先)が下向きに揃えられて版材CTP版材10の樹脂表面に対峙して樹脂表面と摩擦接触してスライドする。各組の洗浄ブラシ25は樹脂表面を摺動する際に発生するブラシ圧力のトルクによって版材10がステンレス製ベルトから動かないように磁力などで固定してブラシ洗浄される。その際、複数の水切りローラ66は絞りローラ67とともに版材10を上方から弾力的に押圧し、版材10の横滑りを防止している。
一方、ブラシ駆動モータ41はその出力軸にトルク測定機構を備えたトルク駆動モータが用いられ、トルクの増減と回転速度の指定を行うことができるようになっている。この例では、ブラシ駆動モータ41にはサーボモータが使用され、上流側と下流側に各組の洗浄ブラシユニット43は旋回回転機構72を介して同じ回転数、例えば60rpmで旋回駆動される。
一方の(第一)ブラシ駆動モータ41は、旋回回転機構72が0度からスタートし、他方の(第二)ブラシ駆動モータ41は旋回回転が同じ(あるいは逆の)回転方向にずらされ(遅延し)てスタートするようになっている。両ブラシ駆動モータ41は、旋回回転機構72により両洗浄ブラシユニット43のずらし回転角度(回転角度差、回転位相差)が一定に保たれ、互いに同じ回転数で旋回運動するようにセットされる。旋回運動は互いに同方向の旋回運動であっても、逆方向の旋回運動であってもよい。例えば、一方のブラシ駆動モータ41と他方のブラシ駆動モータ41とは、旋回回転機構72により洗浄ブラシユニット43の各組の洗浄ブラシ25は回転角度差(回転位相差)が例えば、30度、45度、60度、90度または135度等の中からいずれかが選択され、一定の回転角度差を保って旋回運動される。このため各組の洗浄ブラシユニット43は組単位で洗浄ブラシ25の旋回角度差(旋回位相差)が一定に保たれて旋回運動され、各組の洗浄ブラシ25が同期して同じ回転角度で回転することはない。したがって、上側磁性体搬送ベルト54a(搬送路)上に固定された版材10(の感光性樹脂層13)は、洗浄ブラシユニット43の各組の洗浄ブラシ25と摩擦接触してブラシ洗浄されるが、各組の洗浄ブラシ25は変動するブラシ圧力の作用方向が一致する方向を向いて版材19の樹脂表面に同期的にトルク作用することはない。
各組内の洗浄ブラシ25が受ける旋回運動は多様であり得る。例えば、洗浄ブラシ25は回転速度が60サイクル/分の円旋回運動で、各組間におかれる回転角度(ブラシユニットの進行方向前端の位置よりも回転が進んでいる方向)を+、遅れている方向を-と定めた場合、例えば±30~330°、好ましくは±45~315°の範囲内で選択可能である。
また、図8に示すように、上側磁性体搬送ベルト54a上方の洗浄ゾーン37には、洗浄液を供給する洗浄ノズル77が複数設けられる。各洗浄ノズル77は洗浄ブラシユニット43の各組の洗浄ブラシ25の上流側およぶ下流側で20℃~60℃の洗浄液を下方にそれぞれスプレー噴射させるようになっている。具体的には、最初の洗浄ブラシ25の上流側と最後の洗浄ブラシ25の下流側との洗浄ノズル77は上側磁性体搬送ベルト54aの幅方向に沿って複数個、例えば3~5個ずつ設けられる。それ以外の洗浄ノズル77は、例えば、上側磁性体搬送ベルト54aの幅方向中央部上方にそれぞれ設けられる。
洗浄ゾーン37には洗浄ブラシユニット43の各洗浄ブラシ25の上流側および下流側で版材10の樹脂表面に洗浄液を所要の圧力でスプレーする洗浄ノズル77が多数備えられる。図15および図16に示された洗浄タンク78内の洗浄水は必要に応じてヒータ加熱され、pH調整用の界面活性剤が加えられて洗浄液となる。この洗浄液が供給ポンプ79により各洗浄ノズル77に供給され、各洗浄ノズル77から版材10の樹脂表面にスプレー噴射される。このとき最初の洗浄ブラシ25上流側の洗浄ノズル77および最後の洗浄ブラシ25下流側の洗浄ノズル77は、版材10の樹脂表面幅方向全面に洗浄液をスプレー噴射させている。また、洗浄ブラシユニット43の洗浄ブラシ25の間に位置する洗浄ノズル77は版材10の樹脂表面中央部に洗浄液をスプレー噴射させている。
一方、各組の洗浄ブラシユニット43は、組ごとの洗浄ブラシ25が相互に一定の回転角度差(回転角度差)を保って旋回運動される。各組の洗浄ブラシユニット43は全ての洗浄ブラシ25が同期して同じ回転角度で一体的に旋回運動されることはない。このため、版材10の樹脂表面は、各洗浄ノズル77からの洗浄液によるスプレー洗浄と洗浄ブラシユニット43の各組の洗浄ブラシ25によるブラシ洗浄とが組み合わされ、水洗浄が共同して実施される。感光性樹脂層13の未硬化部は擦られて光硬化した硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から剥ぎ取られ、分離除去される。未硬化の樹脂材料を除去した洗浄液は洗浄廃液となって。洗浄ゾーン37の洗浄パン81に回収され、底部の洗浄液排出口82から洗浄タンク78に還流される。
その際、各組の洗浄ブラシユニット43は、洗浄ブラシ25の旋回運動が同期して同じ回転角度で回転することがないので、各組の洗浄ブラシ25のブラシ力は作用方向が組ごとに異なり、全てが同じ方向にトルク作用することはない。しかも、搬送路のキャリアローラ65上を走行する上側磁性体搬送ベルト54aは、蛇行防止機構60により搬送が案内されるので、蛇行走行や斜行走行が確実に防止される。上側磁性体搬送ベルト54aは平面剛性の大きなステンレス製プレートで形成されるので、版材10が波打って搬送されることもない。その上感光性樹脂版の版材10は、上側磁性体搬送ベルト54aのステンレス製ベルト(プレート)に載置され、両面接着テープ48を介して帯状の薄肉マグネットプレート58の磁力により安定的に固定されて搬送される。
したがって、上側磁性体搬送ベルト54a上の感光性樹脂版の版材10は蛇行走行したり斜行走行したり波打ち走行したりすることなく、洗浄ゾーン37内を水平方向に安定的にスムーズに搬送される。版材10の樹脂表面は、各組の洗浄ブラシ25のスライド摺動に伴って、旋回方向に摩擦接触してブラシ圧力のトルクを受ける。しかし各組の洗浄ブラシ25の旋回運動は同期して同じ回転角度で一体に回転することがなく、組ごとにブラシ圧力が作用するトルク方向が異なり分散している。このため、洗浄ブラシ25が版材10の樹脂表面を摩擦接触してブラシ圧力を作用させるが、ブラシ圧力の作用方向は洗浄ブラシ25の組ごとに異なり、分散している。各組の洗浄ブラシ25は、版材10の感光性樹脂版層13のレリーフ像22を異なるブラシ接触角度で有効的にブラシ洗浄させることができる。
洗浄ゾーン37内でブラシ洗浄を受ける感光性樹脂版の版材10は各組の洗浄ブラシ25のブラシ圧力の作用方向が同じ方向に向くことはなく、各組の洗浄ブラシ25ごとに分散している。したがって、版材10は洗浄ゾーン37でブラシ圧力を受けてもマグネットプレートの磁力で上側磁性体搬送ベルト54aに安定的に保持され、洗浄ブラシユニット43から外れたりずれたり、するのを効果的に防止できる。マグネットプレート58は上側磁性体搬送ベルト54aにプレート全面が面接触し、大きな磁力で版材10を固着している。
また、洗浄ゾーン37で各洗浄ノズル77からの洗浄液のスプレー洗浄は、各組の洗浄ブラシユニット43の洗浄ブラシ25のブラシ洗浄と共同して行われる。版材10の樹脂表面は旋回運動する各組の洗浄ブラシ25のブラシ洗浄により、未硬化部の樹脂材料が光硬化した硬化部から擦られて剥ぎ取られ(掻き取られ)、取り除かれる。洗浄ゾーン37で除去された未硬化の樹脂材料は洗浄液廃液となって洗い流されて洗浄パン81に回収される。洗浄パン81の底部には洗浄液排出口82が形成されており、洗浄液排出口82に流下した洗浄廃液は回収配管(パイプ)に案内される。
洗浄廃液は、洗浄液に未硬化の樹脂材料が含まれる処理廃液である。この洗浄廃液は回収ポンプ83から回収配管(パイプ)を通る際にフィルタ装置84により未硬化の樹脂材料が回収される。未硬化の樹脂材料が除去された洗浄液は、再び洗浄タンク78に戻され、次の洗浄液によるスプレー洗浄に備えられる。フィルタ装置84は、例えば、200μmメッシュのカートリッジフィルタが二台直列に接続されて備えられる。洗浄タンク78は例えば300Lの洗浄液を貯留する装置を有する。
このようにして、洗浄装置31は洗浄ゾーン37と洗浄タンク78とにより、洗浄液の閉じた循環サイクルを構成している。この洗浄液の閉じた循環サイクルにより、洗浄液や未硬化の樹脂材料は循環サイクル内にキープされ、外部の環境に放出されることはない。したがって洗浄液や未硬化樹脂材料が外部の環境を汚染したり、外部環境に悪影響を及ぼすことがなく、環境保全が保たれる。水洗浄時には、洗浄水を洗浄タンク78から少量、例えば3L/分~6L/分ずつ連続供給することにより、版材10の樹脂表面が洗浄液のスプレー噴射で水洗いされる。したがって、水現像タイプならではの優れた環境性を保つことができる。
また、上側磁性体搬送ベルト54aに載置された感光性樹脂版の版材10は、洗浄ゾーン37内を水平方向に自動的に搬送される間に各組の洗浄ブラシ25の旋回運動によるブラシ洗浄と(多数の洗浄ノズル77からの)洗浄液のスプレー洗浄とを受ける。露光後の版材10は版材10が上側磁性体搬送ベルト54a上で自動搬送される間に洗浄ゾーン37で水洗浄作用を受ける。版材10の樹脂表面(感光性樹脂層13)は光硬化部(レリーフ像22およびバック析出層23)から未硬化の樹脂材料が分離除去されて取り除かれる。未硬化の樹脂材料が取り除かれることにより樹脂凸版印刷版18が製作される。
洗浄ゾーン37を案内された樹脂凸版印刷版18は続いて洗浄ゾーン37から透明なアクリル樹脂製の中仕切壁37を超えてリンスゾーン38に搬送される。リンスゾーン38は図6および図7に示すように構成されている。リンスゾーン38を通る上側磁性体搬送ベルト54aは、キャリアローラ65上に支持されて案内される一方、上側磁性体搬送ベルト54aにはリンス絞りローラ87、ロータリーブラシ88およびエアーナイフ89が順次この順に配設される。
リンス絞りローラ87、ロータリーブラシ88およびエアーナイフ89はキャリアローラ65とそれぞれ対をなして上下に配置される。リンスゾーン38にはロータリーブラシ88の上流側上方およびリンス絞りローラ87の下流側上方にリンスノズル90が配設される。リンスノズル90から常温のリンス液(例えば水道水)が下方に向けてスプレー噴射され、このリンス液で樹脂凸版印刷版18はリンス洗浄される。リンス液は図17および図18に示すリンスタンク92に所定容量、例えば100Lのリンス液が貯留されている。リンスタンク92内のリンス液は、供給ポンプ93により供給配管あるいはホースを通してリンスノズル90に供給される。リンスノズルからスプレーされたリンス液は、リンスゾーン38で樹脂凸版印刷版18の版表面に噴射されてリンス洗浄され、ごみや異物が除去される。リンスノズル90からスプレー噴射されたリンス液は、樹脂凸版印刷版18を洗浄して流下し、リンスパン94に回収される。
また、リンスパン94の底部にはリンス液排出口95が設けられる。リンス液排出口95は回収ポンプ(図示せず)により回収配管あるいはパイプ(図示せず)を通じてリンスタンク92に還流される。還流されたリンス液は次のリンス洗浄運転に備えられ、洗浄液と同様、閉じたリンス液の循環サイクルが構成される。リンス液の回収配管にはフィルタ装置97が設けられる一方、リンス液の供給配管にもフィルタ装置97が備えられる。これらのフィルタ装置97は、洗浄液のフィルタ装置84より細かいメッシュ、例えば100μmメッシュのカートリッジフィルタが備えられる。フィルタ装置97でリンス液に混入されたごみなや残留した未硬化樹脂材料などの異物が捕捉され、リンス液から除去される。
リンスタンク92には常温のリンス液が貯留される。リンスタンク92は洗浄タンク78より小型のタンクであるため、洗浄架台33内の下部に収納させるようにしてもよい。さらにリンスゾーン38のロータリーブラシ88は、上側磁性体搬送ベルト54aの走行方向と逆方向に回転駆動される。ロータリーブラシ88のブラシ圧力や回転速度は調節自在に支持されている。ロータリーブラシ88には、洗浄ブラシ25と同様、樹脂ブラシが用いられる。樹脂ブラシはロータリーブラシ88のローラ表面全面に放射状にブラシ毛が植え込まれている。ロータリーブラシ88は樹脂ブラシ毛が千鳥状に密に設けられている。
リンスゾーン38には、ロータリーブラシ88の下流側でリンス絞りローラ87の直後にエアーナイフ89が設けられる。エアーナイフ89はインバータ制御されるブロアから常温のエアーが斜め下方に噴出されるようになっている。エアーナイフ89には、上側磁性体搬送ベルト54aの幅方向に噴出されるスリット状の吹出し口が構成されており、この吹出し口から常温のエアーが所要の風量、例えば16m3/分のエアーが樹脂凸版印刷版18の版表面に向けて吹出され、樹脂凸版印刷版18の表面をエアー洗浄し、残留リンス液やごみなどの異物を除去している。
上側磁性体搬送ベルト54a上の樹脂凸版印刷版18は、リンスゾーン38でリンス洗浄、ブラシ洗浄およびエアー洗浄を順次受けて搬送され、洗浄装置31の搬出口OUTに搬出される。搬出口OUTに送られた樹脂凸版印刷版18は続いて上側磁性体搬送ベルト54aのドライブローラ52上で洗浄装置31から乾燥装置32に受け渡される。無端磁性体搬送ベルト54はドライブローラ52で反転されて下側磁性体搬送ベルト54bに案内される。この下側磁性体搬送ベルト54bはドリブンローラ53を経て再び上側磁性体搬送ベルト54aに導かれ、次の無端磁性体搬送ベルト54はドライブローラ52とドリブンローラ53との間を連続的走行され、搬送されるようになっている。
[乾燥装置]
洗浄装置31の搬出口OUTを出た樹脂凸版印刷版18は、図6および図7に示すように洗浄装置31から離脱機構99のアシストを受けて乾燥装置32に受け渡される。乾燥装置32は洗浄装置31から独立した別置きの乾燥架台34が備えられる。乾燥架台34は頂部に乾燥ボックス100が設置され、この乾燥ボックス100の入口側から出口側に至る乾燥ゾーン101に無端メッシュ状搬送ベルト102(以下メッシュ搬送ベルトという)が設けられる。メッシュ搬送ベルト102はスプロケット付きのドライブローラ103と、同じくスプロケット付きのドリブンローラ104の間に水平方向に掛け渡される。メッシュ搬送ベルト102に載置された樹脂凸版印刷版18は、乾燥ボックス100内の乾燥ゾーン101を水平方向に案内されて搬送される。なお、乾燥架台34はメッシュ搬送ベルト102の高さ位置を調節自在に設けられている。
ところで離脱機構99は、樹脂凸版印刷版18の洗浄装置31から乾燥装置32への受け渡しをスムーズに行うために構成される。離脱機構99は洗浄装置31からマグネットプレート58の磁力で載置された樹脂凸版印刷版18が繰り出される際、ドライブローラ52の曲面性とマグネットプレート58の平面性(平面剛性)のために樹脂凸版印刷版18を載置したマグネットプレート58の先端側がドライブローラ52のローラ面から離れて跳ね上がる一方、跳ね上がったマグネットプレート58の先端部がメッシュ搬送ベルト102に案内され、メッシュ搬送ベルト102上に導かれるようになっている。そして乾燥装置32を形成する上側搬送ベルト102aのベルト面は樹脂凸版印刷版18の受け渡しがスムーズに行われるように上側磁性体搬送ベルト54aのベルト面より数cm、例えば3cmの段差ができるように下方にセットされる。
なお、乾燥装置32のメッシュ搬送ベルト102やドリブンローラ104は、洗浄装置31のドライブローラ52側の無端磁性体搬送ベルト54に非接触状態であるが、出来るだけ近接するようにセットされる。また、離脱機構99は乾燥装置32の頂部あるいはドリブンローラ104の支持部からドライブローラ52側近くまで延びる非磁性体のガイドプレート(図示せず)を設置し、このガイドプレートにより、搬出口OUTに搬出された樹脂凸版印刷版18を載置してマグネットプレート58の先端側をメッシュ搬送ベルト102に案内させるようにしてもよい。
また、乾燥架台34内にインバータ駆動の駆動モータ105が設けられており、この駆動モータ105の出力側は動力伝達機106を介してドライブローラ103に連結され、ドライブローラ103を回転駆動させるようになっている。ドライブローラ103の回転駆動により、メッシュ搬送ベルト102はスプロケット駆動され、例えば150mm/分~350mm/分の搬送速度で搬送される。この搬送速度は、洗浄装置31の無端磁性体搬送ベルト54の搬送速度より速く、大きな速度で搬送される。
メッシュ搬送ベルト102は、図19に示すように、磁性体あるいは非磁性体のメッシュ搬送ベルトで構成される。メッシュ搬送ベルト102は、例えば非磁性体のステンレス製メッシュ搬送ベルトで構成される。メッシュ搬送ベルト102はメッシュ状に編み上げられた網目の縦寸法V(ロッドピッチ)と横寸法H(スパイラルピッチ)とを異にしている。メッシュ搬送ベルト102はハニカム状のメッシュ構造に構成してもよい。
メッシュ搬送ベルト102はドライブローラ103とドリブンローラ104とにより、メッシュ状網目に沿ってスプロケット駆動されて搬送される。メッシュ搬送ベルト102はドライブローラ103とドリブンローラ104とによりスプロケット駆動されるので蛇行走行や斜行走行が防止される。メッシュ搬送ベルト102のベルト幅は無端磁性体搬送ベルト54のベルト幅と等しいが、ベルト厚みが数mm、例えば5mm~6mm程度の厚さを有して無端磁性体搬送ベルト54より柔軟な可撓性を有する。
しかして、洗浄装置31の搬出口OUTに搬送された樹脂凸版印刷版18は、マグネットプレート58とともに両面接着テープ48で保持されて搬送される。マグネットプレート58は、プレート幅方向(ベルト長手方向)の平面剛性はプレート長手方向(ベルト幅方向)より大きい。マグネットプレート58はドライブローラ52の円弧面に案内されると、ドライブローラ52の円弧面の曲面性のために、マグネットプレート58のプレート先端側がドライブローラ52から離れて少し浮き上がる(跳ね上がる)。一方、乾燥装置32のメッシュ搬送ベルト102は、ベルト面が洗浄装置31の上側磁性体搬送ベルト54aのベルト面より下方にセットされ、しかもドリブンローラ104の曲率半径が数10mm、例えば30mm~50mm程度と小さい。その上メッシュ搬送ベルト102はドライブローラ52に非接触で近接し、かつドライブローラ52の回転方向と異なる反対方向に旋回される。このため、メッシュ搬送ベルト102には樹脂凸版印刷版18およびマグネットプレート58のプレート先端側がスムーズに受け渡されて案内され、樹脂凸版印刷版18はメッシュ搬送ベルト102上に受け渡されて搬送される。
また乾燥ボックス100にはメッシュ搬送ベルト102の上方で乾燥ゾーン101内にブロアとしての乾燥吹出し装置107が設けられる。乾燥吹出し装置107には、メッシュ搬送ベルト102上に吹出しスリット108がベルト幅方向に形成されており、この吹出しスリット108から数十度、例えば最大60度程度の熱風あるいは温風が樹脂凸版印刷版18に向けて下方に吹出される。
乾燥装置32には例えばSUS製ファンヒータの加熱器(図示せず)が設けられており、加熱器で加熱された熱風あるいは温風は、図7に示すように両サイドのダクト取入れ口109から吹出しスリット108に案内され、この吹出しスリット108から乾燥ゾーン101内に吹出される。吹出された熱風や温風は、樹脂凸版印刷版18の版面に直接噴出される一方、乾燥ゾーン101内で樹脂凸版印刷版18の裏面側に廻り込んで下方からメッシュ搬送ベルト102を通して下方から吹き付けられる。樹脂凸版印刷版18は、乾燥ゾーン01内でその表裏両面に熱風あるいは温風が吹き付けられて効率よく乾燥される。この乾燥作用により、樹脂凸版印刷版18は版面のべとつきが除去され、残留液の除去が行われる。
乾燥ゾーン01内を通ることにより、乾燥作用を受けた樹脂凸版印刷版18は乾燥処理後乾燥ボックス100の出口側から搬出される。このとき樹脂凸版印刷版18は版検出センサ110で検出され、この検出結果をタワーライト111によりブザー音や緑色や赤色の検出光で周囲に知らせるようになっている。具体例では、例えば樹脂凸版印刷版18の先端および後端に粘着した反射シール49による反射光を版検出センサ110で検出し、センサ検知後、タワーライト111で周囲に音や光で知らせるようになっている。
また乾燥装置32から搬出された樹脂凸版印刷版18は必要に応じて後露光装置(図示せず)に送られ、後露光処理により未硬化樹脂の硬化が行われる。フレキソ用樹脂8の場合には、後露光処理を必ずしも必要としない。
なお、本発明の実施の形態では、フレキソ印刷用の樹脂凸版印刷版の製造について主に説明したが、フレキソ印刷用の樹脂凸版印刷版に限定されるものではなく。レタープレス印刷用の樹脂凸版印刷版にも適用することができる。また、洗浄ブラシユニットは2組備えたものを示したが、洗浄装置は3組以上の洗浄ブラシユニットを備えたものでもよい。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更や改良を加えることができ、このような変更・改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれる。