JP6399892B2 - 単独運転検出用の制御装置、および単独運転検出装置 - Google Patents

単独運転検出用の制御装置、および単独運転検出装置 Download PDF

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Description

本発明は、分散型電源装置が電力系統から切り離され単独運転しているか否かを検出する単独運転検出用の制御装置、および単独運転検出装置に関する。
分散型電源装置における単独運転は、電力系統が停止しているとき、分散型電源装置が独立して運転され、局所的な系統負荷に電力が供給されている状態である。電力系統の停止は、工事または事故といった要因によって引き起こされる。
電力系統に接続される分散型電源には、太陽光発電装置、風力発電装置、エンジン発電機、電力貯蔵装置、燃料電池が代表的なものである。これらの分散型電源では、太陽電池、蓄電池、燃料電池といった特性または性質の異なる電力供給手段を電力系統に接続させて使用するため、周波数および電圧を電力系統に適合させるインバータ機能と、電力系統の異常を検出する保護装置とを内蔵したパワーコンディショナが数多く提案されている。
以上に説明した電力供給手段と、直流を交流に変換するパワーコンディショナとを備えた分散型電源装置を電力系統に連系させて、例えば家電製品に給電する分散型電源装置が実用化されている。
この種の分散型電源装置では、電力系統の停電時および作業停電時において、電力系統における工事作業の安全を確保するため、分散型電源装置側のインバータの動作を停止させるか、または、開閉器を作動させて連系を解除することにより、分散型電源装置を電力系統から解列させて、分散型電源装置の単独運転を防止する機能が不可欠である。なおこの機能は、単独運転検出機能と呼ばれ、日本電機工業会(JEMA)によりJEM1498(方式名:ステップ注入付周波数フィードバック方式)として標準化されている。
単独運転を検出する方式の1つとして、下記特許文献1では、電力系統に無効電力を注入する手法が既に提案されている。この手法を用いた単独運転検出装置では、注入した無効電力によって引き起こされる周波数変動を検知して、分散型電源装置の単独運転を検出することが行われる。
特開2009−136095号公報
JEM1498 ステップ注入付周波数フィードバック方式(太陽光発電用パワーコンディショナの標準型能動的単独運転検出方式)
JEM1498で定められる単独運転検出能動的方式では、パワーコンディショナの出力電力と系統負荷がバランスした状態にて、基本波電圧と2次から7次までの高調波電圧とが一定条件を満たしたときに無効電力を注入することが規定されている。しかしながら、パワーコンディショナは、インバータ機能を内蔵しており、インバータがスイッチングすることで発生するリップルまたはノイズの影響を受けて、基本波電圧と高調波電圧の演算結果に変動を生ずることがある。従来の単独運転検出装置では、基本波電圧と高調波電圧の値によって無効電力の注入の動作判定が行われるため、リップルまたはノイズの影響が大きい場合、基本波電圧と高調波電圧とが一定条件を満たさず、無効電力の注入が行われずにパワーコンディショナの運転が継続する場合があるという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、インバータのスイッチングにより発生するリップルまたはノイズに関わりなく、電力系統の停電時にはパワーコンディショナの運転を停止することができる単独運転検出用の制御装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電力系統と分散型電源装置との連系点での系統電圧の系統周波数偏差を演算する系統周波数偏差演算部と、前記系統電圧のフィルタ処理を行うフィルタ部と、前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる高調波電圧の高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部と、前記系統周波数偏差と前記高調波電圧偏差とが、前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転判定部と、を備え、前記フィルタ部は、複数の次数の前記高調波電圧の演算に用いる複数のフィルタ部に区分されることを特徴とする。
本発明によれば、インバータのスイッチングにより発生するリップルまたはノイズに関わりなく、電力系統の停電時にはパワーコンディショナの運転を停止することができるという効果を奏する。
本発明の実施の形態1に係る単独運転検出装置および単独運転検出用の制御装置を含む分散型電源装置の構成図 実施の形態1に係る制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図 高調波電圧の無効電力を注入する判定条件の説明図 基本波電圧の無効電力を注入する判定条件の説明図 従来の制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図 従来の制御装置における連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図 判定条件(a),(b)の判定閾値と同レベルの高調波電圧が印加された場合、従来の制御装置で連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図 実施の形態1の制御装置における連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図 判定条件(a),(b)の判定閾値と同レベルの高調波電圧が印加された場合、実施の形態1の制御装置で連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図 本発明の実施の形態2に係る制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図 本発明の実施の形態3に係る制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図
以下に、本発明の実施の形態にかかる単独運転検出用の制御装置、および単独運転検出装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る単独運転検出装置および単独運転検出用の制御装置を含む分散型電源装置1の構成図、図2は実施の形態1に係る制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図、図3は高調波電圧の無効電力を注入する判定条件の説明図、図4は基本波電圧の無効電力を注入する条件の説明図である。
図1に示す分散型電源装置1は、発電した直流電力を供給する電力供給部5と、電力供給部5が発電した直流電力を交流電力に変換する電力変換機能を有するパワーコンディショナ10とを有して構成される。
電力供給部5は、太陽電池またはガスエンジン発電機であり、パワーコンディショナ10を介して電力系統2と接続され、直流電力を発電して電力変換部であるパワーコンディショナ10に供給する。なお、電力供給部5は、太陽電池またはガスエンジン発電機に限定されず、太陽電池またはガスエンジン発電機以外の発電手段、例えば風力発電装置または燃料電池でもよい。
パワーコンディショナ10は、電力系統2と接続され、パワーコンディショナ10で変換された交流電力は、電力系統2に供給される他、一般家電機器である負荷3にも供給される。
パワーコンディショナ10は、電力変換機能を担うインバータ11と、単独運転検出装置16とを有して構成される。単独運転検出装置16は、インバータ制御部12と、単独運転検出用の制御装置13と、連系リレー14と、インバータ11と電力系統2との間に流れる電流を検出する電流検出器15とを有して構成される。インバータ制御部12は、電力系統2との連系点17に印加される電圧と、電流検出器15で検出された電流とに基づいて、インバータ11を制御する。
図2には、実施の形態1に係る制御装置13の機能の内、単独運転検出に係わる機能ブロックが示されている。制御装置13は、電力系統2が出力する電圧である連系点17での電圧を検出する系統電圧検出部100と、系統電圧検出部100で検出された電圧の波形をパルス状の電圧信号に変換する電圧波形変換部101と、電圧波形変換部101からの電圧信号に基づいて電力系統2が出力する電圧の周波数である系統周波数を計測する系統周波数計測部102と、系統周波数計測部102で計測された系統周波数より周波数偏差を演算する系統周波数偏差演算部103と、系統電圧検出部100で検出された電圧に対してソフトウェアでフィルタ処理を実行するフィルタ部104と、フィルタ部104でフィルタ処理された電圧に含まれる基本波成分である基本波電圧を演算する基本波電圧演算部105と、基本波電圧演算部105で演算された基本波電圧を用いて基本波電圧偏差を演算する基本波電圧偏差演算部106と、フィルタ部104でフィルタ処理された電圧に含まれる2次から7次までの高調波電圧を離散フーリエ解析により演算する高調波電圧演算部107と、高調波電圧演算部107で演算された2次から7次までの個々の高調波電圧の合計値を演算する総合高調波電圧演算部108と、総合高調波電圧演算部108で演算された高調波電圧を用いて高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部109と、単独運転判定部110とを有する。
高調波電圧演算部107は、系統電圧検出部100で検出された電圧の2次高調波電圧を演算する2次高調波電圧演算部107−2と、系統電圧検出部100で検出された電圧の3次高調波電圧を演算する3次高調波電圧演算部107−3と、系統電圧検出部100で検出された電圧の7次高調波電圧を演算する7次高調波電圧演算部107−7とを有する。図2では4次から6次までの高調波電圧演算部の図示を省略している。
単独運転判定部110には、JEM1498で定められる単独運転検出能動的方式に従い、以下に示すステップ注入条件が成立した場合に無効電力をステップ注入する機能が搭載されている。
(ステップ注入条件)
(1)系統周波数偏差が±0.01Hz以内である。
(2)高調波電圧偏差が図3(b)に示す条件を満たし、または基本波電圧偏差が図4(b)に示す条件を満たす。
なおJEM1498では、高調波電圧の算出に関して具体的な手段は規定されていないが、以下のように規定されている。
(1)高調波電圧の演算には2次から7次までの高調波を用いる。
(2)高調波電圧の演算には離散フーリエ解析を用いてもよい。
単独運転判定部110は、系統周波数偏差演算部103で演算された系統周波数偏差と、基本波電圧偏差演算部106で演算された基本波電圧の偏差と、高調波電圧偏差演算部109で演算された高調波電圧の偏差とに基づいて、図3および図4に示す条件が成立するか否かを判定する。条件が成立する場合、単独運転判定部110は、系統周期で3周期分の無効電力を注入するための指令をインバータ制御部12に出力する。
このとき、分散型電源装置1が単独運転状態であれば、注入した無効電力により系統周波数が変動する。系統周波数が変動した場合、単独運転判定部110は、分散型電源装置1が単独運転状態であると判定し、連系リレー14をオフ制御するためのリレー制御信号を生成し、生成した信号を連系リレー14に出力することでパワーコンディショナ10を系統から解列させる。また、分散型電源装置1が単独運転状態であると判定したとき、単独運転判定部110は、インバータ11を停止させるためのゲートブロック信号を生成してインバータ制御部12に出力する。
一方、分散型電源装置1が単独運転状態でなければ、注入した無効電力は電力系統2で吸収される。そのため、系統周波数が変動しない場合、単独運転判定部110は、分散型電源装置1が単独運転状態ではないと判定し、分散型電源装置1では運転が継続される。
図3(a)に示す0から15までの番号は、高調波電圧演算部107で順次計測される系統周期を表す。具体的には、0は現在の系統周期であり、1から15はi(iは1から15までの自然数)サイクル前に計測された系統周期である。N0は、現在の系統周期で演算された2次から7次までの高調波電圧を合計した高調波電圧実効値である。同様にN1からN5は、iサイクル前の系統周期で演算された2次から7次までの高調波電圧を合計した高調波電圧実効値である。Navrは、現在から3サイクル前の高調波電圧実効値N3と4サイクル前の高調波電圧実効値N4と5サイクル前の高調波電圧実効値N5との、3周期分の高調波電圧実効値の平均値である。高調波電圧実効値の平均値Navrは、高調波電圧偏差演算部109で演算される。
図3(b)には、JEM1498で定められる高調波電圧の無効電力を注入する上での6つの条件が示されている。条件(a)では、高調波電圧実効値N0と平均値Navrとの差分である高調波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば2ボルトよりも大きい場合には条件が成立する。条件(b)によれば、高調波電圧実効値N1と平均値Navrとの差分である高調波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば2ボルトよりも大きい場合には条件が成立する。条件(c)によれば、高調波電圧実効値N2と平均値Navrとの差分である高調波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きい場合には条件が成立する。条件(d)によれば、高調波電圧実効値N3と平均値Navrとの差分である高調波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きく、かつ、0.5ボルトよりも小さい場合には条件が成立する。条件(e)によれば、高調波電圧実効値N4と平均値Navrとの差分である高調波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きく、かつ、0.5ボルトよりも小さい場合には条件が成立する。条件(f)によれば、高調波電圧実効値N5と平均値Navrとの差分である高調波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きく、かつ、0.5ボルトよりも小さい場合には条件が成立する。
図4(a)に示す0から13までの番号は、基本波電圧演算部105で順次計測される系統周期を表す。具体的には、0は現在の系統周期であり、1から15はi(iは1から15までの自然数)サイクル前に計測された系統周期である。N0は、現在の系統周期で演算された基本波電圧実効値である。同様にN1からN5は、iサイクル前の系統周期で演算された基本波電圧実効値である。Navrは、現在から3サイクル前の基本波電圧実効値N3と4サイクル前の基本波電圧実効値N4と5サイクル前の基本波電圧実効値N5との、3周期分の基本波電圧実効値の平均値である。基本波電圧実効値の平均値Navrは、基本波電圧偏差演算部106で演算される。
図4(b)には、JEM1498で定められる基本波電圧の無効電力を注入する上での6つの条件が示されている。条件(a)では、基本波電圧実効値N0と平均値Navrとの差分である基本波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば2.5ボルトよりも大きい場合には条件が成立する。条件(b)によれば、基本波電圧実効値N1と平均値Navrとの差分である基本波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば2.5ボルトよりも大きい場合には条件が成立する。条件(c)によれば、基本波電圧実効値N2と平均値Navrとの差分である基本波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きい場合には条件が成立する。条件(d)によれば、基本波電圧実効値N3と平均値Navrとの差分である基本波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きく、かつ、0.5ボルトよりも小さい場合には条件が成立する。条件(e)によれば、基本波電圧実効値N4と平均値Navrとの差分である基本波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きく、かつ、0.5ボルトよりも小さい場合には条件が成立する。条件(f)によれば、基本波電圧実効値N5と平均値Navrとの差分である基本波電圧偏差が予め設定された判定閾値、例えば−0.5ボルトよりも大きく、かつ、0.5ボルトよりも小さい場合には条件が成立する。
図5は従来の制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図であり、図5に示す制御装置130では、図2のフィルタ部104が設けられていない点が実施の形態1の制御装置13と相違する。
図6は従来の制御装置における連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図である。図6には、系統電圧の波形と、高調波電圧偏差演算部109における高調波電圧の演算タイミングと、単独運転判定部110に設定される判定条件(d)から(f)の判定閾値と、高調波電圧偏差演算部109で演算される高調波電圧偏差とが示されている。図中の実線が高調波電圧偏差演算部109で演算される高調波電圧偏差の値を表し、網掛け部分は、判定条件(d)から(f)の判定閾値である点線の−0.5ボルトから0.5ボルトの範囲を表す。
図7は判定条件(a),(b)の判定閾値と同レベルの高調波電圧が印加された場合、従来の制御装置で連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図である。図7には、図6と同様に、系統電圧の波形と高調波電圧偏差演算部109における高調波電圧の演算タイミングとが示されている。図7に示す符号(a)から(e)は、図3(b)に示す判定条件(a)から(e)に対応する。図中の実線の内、(a)の上部に示す実線は、高調波電圧偏差演算部109で演算される高調波電圧実効値N0と高調波電圧の平均値Navrとの高調波電圧偏差を表す。同様に、(b)の上部に示す実線はN1とNavrとの高調波電圧偏差、(c)の上部に示す実線はN2とNavrとの高調波電圧偏差、(d)の上部に示す実線はN3とNavrとの高調波電圧偏差、(e)の上部に示す実線はN4と平均値Navrとの高調波電圧偏差を表す。(a)から(e)の上部に示す網掛け部分の内、(a),(b)に対応する部分は、判定条件(a),(b)の判定閾値である点線の2.0ボルト以上の範囲を表し、(c)に対応する部分は、判定条件(c)の判定閾値である点線の−0.5ボルト以上の範囲を表し、(d),(e)に対応する部分は、判定条件(d),(e)の判定閾値であるである点線の−0.5ボルトから0.5ボルトの範囲を表す。
図5に示す制御装置130では、実施の形態1の制御装置13と同様に、系統周波数偏差と基本波電圧偏差と高調波電圧偏差とが以下の条件を満たすか否かを判定する。
(ステップ注入条件)
(1)系統周波数偏差が±0.01Hz以内である。
(2)高調波電圧偏差が図3(b)に示す条件を満たし、または基本波電圧偏差が図4(b)に示す条件を満たす。
条件が成立する場合、制御装置130の単独運転判定部110は、無効電力を注入するための指令をインバータ制御部12に出力する。このとき分散型電源装置1が単独運転状態であれば、注入した無効電力により系統周波数が変動するため、分散型電源装置1では単独運転状態であることが検出される。一方、分散型電源装置1が単独運転状態でなければ、注入した無効電力は電力系統2で吸収されるため、系統周波数が変動しないため、分散型電源装置1では運転が継続される。
ここで、インバータ11の出力電圧には、スイッチングによるリップルまたはノイズが含まれているため、リップルまたはノイズが含まれた状態で高調波電圧が演算されると、分散型電源装置1が連系運転中であるにも関わらず、図6の実線のように高調波電圧偏差が変動することがある。このように分散型電源装置1が連系運転中に高調波電圧偏差が変動し、高調波電圧偏差が判定条件(d)から(f)の判定閾値を逸脱している場合、その後に分散型電源装置1が単独運転状態になることで高調波電圧が急増し、高調波電圧偏差が判定条件(a)から(c)を満たしても判定条件(d)から(f)を満たさない。そのため、分散型電源装置1が単独運転状態になったとしても無効電力が注入されず、単独運転検出ができない、または、単独運転検出までの時間が長くなることがあった。
また、スイッチングによるリップルまたはノイズの影響により高調波電圧が高めになると、図3(a)に示す平均値Navrも高めになる。分散型電源装置1が単独運転状態でないとき、図7の(d),(e)に示す高調波電圧偏差が図3(b)に示す判定条件(d),(e)を満たしたとしても、その後に分散型電源装置1が単独運転状態になることで判定条件(a),(b)の判定閾値2.0ボルトと同レベルの高調波電圧が印加された場合、図3(a)に示すN0とNavrとの高調波電圧偏差と、N1とNavrとの高調波電圧偏差とは、図7の(a),(b)に示す実線のように、判定条件(a),(b)の判定閾値以下となってしまうことがある。従って、分散型電源装置1が単独運転状態になっても、無効電力が注入されず、単独運転検出ができない、または、単独運転検出までの時間が長くなることがあった。
これに対して実施の形態1にかかる制御装置13は、インバータ11の駆動に起因したリップルまたはノイズによる高調波電圧の増加を防ぐため、測定された系統電圧を図2のフィルタ部104によりソフトウェアでフィルタ処理を実行し、その値を用いて基本波電圧および高調波電圧を演算する。ここで使用するフィルタの特性としてはJEM1498では、2次から7次までの高調波電圧を計測するように要求しており、系統周波数が60Hzのとき、7次の高調波成分は420Hzであるため、カットオフ周波数は420Hzよりも大きい値にするとよい。また系統周波数が50Hzのとき、7次の高調波成分は350Hzであるため、カットオフ周波数は350Hzよりも大きい値にするとよい。
図8は実施の形態1の制御装置における連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図である。図8には、図6と同様に、系統電圧の波形と、高調波電圧の演算タイミングと、判定条件(d)から(f)の判定閾値と、高調波電圧偏差とが示されている。図6との相違点は、フィルタ処理された電圧値で基本波電圧および高調波電圧が演算されることで、実線で示される高調波電圧偏差が判定条件(d)から(f)の判定閾値である−0.5ボルトから0.5ボルトまでの範囲に収まっている点である。実施の形態1の制御装置13では、フィルタ処理された電圧値で基本波電圧および高調波電圧が演算されるため、基本波電圧および高調波電圧の演算時にスイッチングによるリップルまたはノイズによる影響を軽減することができる。従って、連系運転中の高調波電圧偏差の変動が少なくなり、連系運転時の高調波電圧の実効値はほぼ0になる。結果として無効電力のステップ注入の判定精度を向上させることができる。
図9は判定条件(a),(b)の判定閾値と同レベルの高調波電圧が印加された場合、実施の形態1の制御装置で連系運転時に演算される高調波電圧偏差と判定閾値との関係を説明するための図である。図9には、図7と同様に、系統電圧の波形と、高調波電圧の演算タイミングと、判定条件(a)から(e)に対応する判定閾値と、高調波電圧偏差とが示されている。図7との相違点は、フィルタ処理された電圧値で基本波電圧および高調波電圧が演算されることで、実線で示される高調波電圧偏差が、判定条件(a),(b)の判定閾値である2.0ボルト以上となっている点である。実施の形態1の制御装置13では、フィルタ処理された電圧値で基本波電圧および高調波電圧が演算されるため、連系運転中の高調波電圧偏差の変動が少なくなり、平均値Navrの変動も抑制される。結果として無効電力のステップ注入の判定精度を向上させることができる。
なお、実施の形態1で説明した単独運転検出に係わる機能は、新しく回路を追加することなく、既存のパワーコンディショナ10に用いられる制御装置のソフトウェアを変更することにより実現することができる。
実施の形態2.
図10は本発明の実施の形態2に係る制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態1との相違点は、フィルタ部104が、基本波電圧演算部105に対応する第1のフィルタ部104−1と、2次高調波電圧演算部107−2に対応する第2のフィルタ部104−2と、3次高調波電圧演算部107−3に対応する第3のフィルタ部104−3と、7次高調波電圧演算部107−7に対応する第4のフィルタ部104−7とを備える点である。図10では4次から6次までの高調波電圧演算部の図示を省略している。また図10では4次から6次までの高調波電圧演算部に対応するフィルタ部の図示を省略している。このように実施の形態2の制御装置13−1は、基本波電圧と2次から7次までの高調波電圧との演算時に各々の周波数に適したフィルタを使用することを特徴とする。
例えば系統周波数が60Hzのとき、2次から7次までの高調波電圧演算時のカットオフ周波数を150Hz、210Hz、270Hz、330Hz、390Hz、450Hzとする。動作については実施の形態1と同様であるが、各々の周波数に適したフィルタを使用することで、効果的にリップル電圧およびノイズ成分による影響を低減することが可能となり、さらに判定精度の向上ができる。
実施の形態3.
図11は本発明の実施の形態3に係る制御装置を構成する機能の内、単独運転検出に係わる機能の一例を示す図である。以下、実施の形態1と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。実施の形態1との相違点は、高調波電圧演算部107の代わりに電圧演算部120が用いられ、基本波電圧演算部105の演算結果と電圧演算部120の演算結果とが総合高調波電圧演算部108に入力され、総合高調波電圧演算部108では、双方の演算結果の差を求めることで2次から7次までの個々の高調波電圧の合計値を演算する点である。
実施の形態3では、例えば2次から7次までの高調波電圧を演算する場合、フィルタ部104のカットオフ周波数の特性を7次と8次の中間の周波数、すなわち系統周波数が50Hzの場合には375Hz、系統周波数が60Hzの場合には450Hzに設定する。これにより電圧演算部120では8次以上の周波数の高調波電圧を除去した電圧が演算される。総合高調波電圧演算部108では、電圧演算部120で演算された電圧から基本波電圧演算部105で演算された基本波電圧が除去されることで、2次から7次までの総合高調波電圧が演算される。実施の形態3の制御装置13−2によれば、実施の形態1の高調波電圧演算部107において、ソフトウェアの処理時間を要する離散フーリエ解析を不要とすることができる。
なお、実施の形態3では、系統周波数が50Hzであるか60Hzであるかによってフィルタの特性を変化させる必要があるが、系統連系を行う場合、系統周波数の値は既知であり、ソフトウェアで実施する場合に特性を変更することは極めて容易である。
なお実施の形態1から3では、スイッチングによるリップルまたはノイズの影響により、高調波電圧が変動した場合または高調波電圧偏差が変動した場合でも、無効電力注入の判定精度を向上させることができるものとして説明したが、基本波電圧が変動した場合または基本波偏差が変動した場合でも、同様の効果を得ることができる。
以上に説明したように実施の形態1から3に係る単独運転検出用の制御装置は、系統周波数偏差演算部と、フィルタ部と、フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる高調波電圧の高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部と、系統周波数偏差と高調波電圧偏差とが、電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、電力系統に無効電力を出力して分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転判定部と、を備える。この構成により、フィルタ処理された電圧値で高調波電圧が演算されるため、インバータのスイッチングで発生するリップルまたはノイズによる基本波電圧または高調波電圧の演算結果の変動が軽減され、無効電力のステップ注入の判定精度を向上させることができ、確実に無効電力のステップ注入を行うことが可能となる。その結果、インバータのスイッチングにより発生するリップルまたはノイズに関わりなく、電力系統の停電時にはパワーコンディショナの運転を停止することができ、電力系統の停電時および作業停電時において、電力系統における工事作業の安全を確保することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 分散型電源装置、2 電力系統、3 負荷、5 電力供給部、10 パワーコンディショナ、11 インバータ、12 インバータ制御部、13,13−1,13−2 制御装置、14 連系リレー、15 電流検出器、16 単独運転検出装置、17 連系点、100 系統電圧検出部、101 電圧波形変換部、102 系統周波数計測部、103 系統周波数偏差演算部、104 フィルタ部、104−1 第1のフィルタ部、104−2 第2のフィルタ部、104−3 第3のフィルタ部、104−4 第4のフィルタ部、105 基本波電圧演算部、106 基本波電圧偏差演算部、107 高調波電圧演算部、107−2 2次高調波電圧演算部、107−3 3次高調波電圧演算部、107−7 7次高調波電圧演算部、108 総合高調波電圧演算部、109 高調波電圧偏差演算部、110 単独運転判定部、120 電圧演算部、130 制御装置。

Claims (8)

  1. 電力系統と分散型電源装置との連系点での系統電圧の系統周波数偏差を演算する系統周波数偏差演算部と、
    前記系統電圧のフィルタ処理を行うフィルタ部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる高調波電圧の高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部と、
    前記系統周波数偏差と前記高調波電圧偏差とが、前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転判定部と、
    を備え
    前記フィルタ部は、複数の次数の前記高調波電圧の演算に用いる複数のフィルタ部に区分されることを特徴とする単独運転検出用の制御装置。
  2. 電力系統と分散型電源装置との連系点での系統電圧の系統周波数偏差を演算する系統周波数偏差演算部と、
    前記系統電圧のフィルタ処理を行うフィルタ部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる高調波電圧の高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部と、
    前記系統周波数偏差と前記高調波電圧偏差とが、前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転判定部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる基本波電圧の基本波電圧偏差を演算する基本波電圧偏差演算部と、
    を備え、
    前記単独運転判定部は、前記系統周波数偏差と前記基本波電圧偏差とが前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定し、
    前記フィルタ部は、複数の次数の前記高調波電圧の演算に用いる複数のフィルタ部に区分されることを特徴とする単独運転検出用の制御装置。
  3. 電力系統と分散型電源装置との連系点での系統電圧の系統周波数偏差を演算する系統周波数偏差演算部と、
    前記系統電圧のフィルタ処理を行うフィルタ部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる高調波電圧の高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部と、
    前記系統周波数偏差と前記高調波電圧偏差とが、前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転判定部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる基本波電圧の基本波電圧偏差を演算する基本波電圧偏差演算部と、
    を備え、
    前記単独運転判定部は、前記系統周波数偏差と前記基本波電圧偏差とが前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定し、
    前記フィルタ部は、前記基本波電圧の演算部に用いるフィルタ部と、複数の次数の前記高調波電圧の演算に用いる複数のフィルタ部とに区分されることを特徴とする単独運転検出用の制御装置。
  4. 電力系統と分散型電源装置との連系点での系統電圧の系統周波数偏差を演算する系統周波数偏差演算部と、
    前記系統電圧のフィルタ処理を行うフィルタ部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる高調波電圧の高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部と、
    前記系統周波数偏差と前記高調波電圧偏差とが、前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転判定部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる複数の次数の前記高調波電圧を合計した総合高調波電圧を演算する総合高調波電圧演算部と、
    を備え、
    前記高調波電圧偏差演算部は、前記総合高調波電圧を用いて前記高調波電圧偏差を演算することを特徴とする単独運転検出用の制御装置。
  5. 電力系統と分散型電源装置との連系点での系統電圧の系統周波数偏差を演算する系統周波数偏差演算部と、
    前記系統電圧のフィルタ処理を行うフィルタ部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる高調波電圧の高調波電圧偏差を演算する高調波電圧偏差演算部と、
    前記系統周波数偏差と前記高調波電圧偏差とが、前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定する単独運転判定部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる基本波電圧の基本波電圧偏差を演算する基本波電圧偏差演算部と、
    前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる複数の次数の前記高調波電圧を合計した総合高調波電圧を演算する総合高調波電圧演算部と、
    を備え、
    前記単独運転判定部は、前記系統周波数偏差と前記基本波電圧偏差とが前記電力系統に無効電力を注入する条件を満たしたとき、前記電力系統に無効電力を出力して前記分散型電源装置が単独運転状態であるか否かを判定し、
    前記高調波電圧偏差演算部は、前記総合高調波電圧を用いて前記高調波電圧偏差を演算することを特徴とする単独運転検出用の制御装置。
  6. 前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる複数の次数の前記高調波電圧を合計した総合高調波電圧を演算する総合高調波電圧演算部を備え、
    前記高調波電圧偏差演算部は、前記総合高調波電圧を用いて前記高調波電圧偏差を演算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単独運転検出用の制御装置。
  7. 前記総合高調波電圧演算部は、前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧に含まれる基本波電圧と、前記フィルタ部でフィルタ処理された電圧との差より、前記総合高調波電圧を演算することを特徴とする請求項4から請求項6の何れか1項に記載の単独運転検出用の制御装置。
  8. 請求項1から請求項の何れか1項に記載の単独運転検出用の制御装置を備えることを特徴とする単独運転検出装置。
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