JP7176384B2 - 蓄電システム及び、電流センサの異常判定方法 - Google Patents

蓄電システム及び、電流センサの異常判定方法 Download PDF

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Description

本発明は、蓄電システム及び、電流センサの異常判定方法に関する。
商用電力系統と系統連系し、かつ、蓄電池(例えばリチウムイオン電池)に電力を蓄える蓄電装置は、系統連系規定により定められている逆潮流の制限機能を備えている。逆潮流とは、蓄電装置から需要家の受電点を越えて商用電力系統へ潮流が生じることである。このような逆潮流が発生していないかどうかを常に監視すべく、電流センサとしてのCT(Current Transformer)が、蓄電装置と受電点との間に設けられている。単相3線式(U,O,W)の受電であれば、例えば、2個のクランプ型のCTが、2本の電圧線(U,W)に取り付けられる。CTが逆潮流を検出した場合、蓄電装置は迅速に、逆潮流が生じないように制御しなければならない。
上記のCTに関しては、取り付けた電圧線からCTが脱落する場合や、検出出力を送るリード線が断線する場合もあり得る。そのような場合には、CTの異常として迅速に検出し、蓄電装置の運転を停止する必要がある。そこで、CTの異常を検出するための技術も提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
特開2015-15845号公報 特開2015-122819号公報
「系統連系規定」、一般財団法人日本電気協会系統連系専門部会
図6は、蓄電装置101と2つのCT102u,102wとによって構成される蓄電システム100が、単相3線式の交流電路104に接続されている状態を示す回路図である。図において、需要家の交流電路104には、単相3線式の商用電力系統103から交流電力が供給される。交流電路104には、蓄電装置101及び負荷105u,105wが接続されている。
CT102u,102wは、単相3線のU線、O線、W線のうち、U線及びW線に設けられている。U相(U-O線間)には1000Wの負荷105u、W相(W-O線間)には500Wの負荷105wが、それぞれ接続され、合計の負荷は1500Wである。一方、蓄電装置101の最大出力は1000Wであり、U相及びW相に均等に電力を出力する。
従って、蓄電装置101は、U相及びW相にそれぞれ500Wの電力を供給するよう放電する。U相の負荷は1000Wなので、不足分の500Wを商用電力系統103から買電する。W相の負荷は500Wなので、蓄電装置101からの電力のみで賄えることになり、商用電力系統103からの買電は0Wになる。このとき、W線のCT102wは、負荷105wに流れる電流を検出しない。この状態が一定時間継続すると、CT102wが脱落又は断線したと判断され、CT102wの異常として検出(誤検出)される。
そこで、本発明は、蓄電システムにおける電流センサの異常判定の信頼性を高めることを目的とする。
本開示は、以下の発明を含む。但し、本発明は、特許請求の範囲によって定められるものである。
本発明の一表現に係る蓄電システムは、商用電力系統と繋がる交流電路に接続される蓄電システムであって、蓄電池と、前記蓄電池と前記交流電路との間にあって、前記蓄電池を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部と、前記電力変換部と前記交流電路との接続点よりも商用電力系統側に取り付けられ、前記接続点と前記商用電力系統との間に流れる電流を検出する電流センサと、前記電力変換部を制御するとともに、前記電流センサの検出出力に基づいて前記電流センサの異常の有無を検出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を前記電力変換部によって変化させ、当該無効電流の変化に反応して前記検出出力が変化するか否かに基づいて、前記電流センサの異常の有無を判定する。
また、本発明の一表現に係る電流センサの異常判定方法は、蓄電池を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部と交流電路との接続点よりも商用電力系統側に電流センサが設けられている場合の、当該電流センサの異常判定方法であって、前記蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させ、前記無効電流の変化に反応して前記電流センサの検出出力が変化するか否かに基づいて、前記電流センサの異常の有無を判定する。
本発明によれば、蓄電システムにおける電流センサの異常判定の信頼性を高めることができる。
図1は、蓄電システムが、単相3線式の交流電路に接続されている状態を示す回路図である。 図2は、図1における蓄電システムを拡大して、蓄電装置の内部の回路構成を示した回路図である。 図3は、CTの異常判定を行うフローチャートの一例である。 図4は、無効電流の注入がどのような結果となって現れるかを示す波形図の例であり、かつ、正常なCTについての波形図である。 図5は、無効電流の注入がどのような結果となって現れるかを示す波形図の例であり、かつ、異常なCTについての波形図である。 図6は、蓄電装置と2つのCTとによって構成される蓄電システムが、単相3線式の交流電路に接続されている状態を示す回路図である。
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
(1)これは、商用電力系統と繋がる交流電路に接続される蓄電システムであって、蓄電池と、前記蓄電池と前記交流電路との間にあって、前記蓄電池を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部と、前記電力変換部と前記交流電路との接続点よりも商用電力系統側に取り付けられ、前記接続点と前記商用電力系統との間に流れる電流を検出する電流センサと、前記電力変換部を制御するとともに、前記電流センサの検出出力に基づいて前記電流センサの異常の有無を検出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を前記電力変換部によって変化させ、当該無効電流の変化に反応して前記検出出力が変化するか否かに基づいて、前記電流センサの異常の有無を判定する、蓄電システムである。
上記のように構成された蓄電システムでは、電流センサの異常の有無を判定するに当たって、制御部は、蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させる。電流センサが正常であれば、無効電流の変化に反応して検出出力が変化する。電流センサが異常(脱落、断線等)であれば、無効電流の変化に反応した検出出力の変化が生じない。従って、無効電流を変化させることで電流センサの異常の有無を判定することができる。無効電流を変化させることは、交流電路の負荷の変動に対して有効電力の出力追従制御をしながら行うことができるので、蓄電システムから負荷への、本来の出力追従制御に影響を与えることを抑制しつつ、電流センサの異常の有無を判定することができる。なお、無効電流は進相、遅相のいずれでもよい。
(2)前記(1)の蓄電システムにおいて、前記無効電流の変化は、例えば、前記交流電路に接続されている負荷の変動とは関係なく、前記制御部の一方的な指令により生じさせるものである。
このように、いわば意図的に変化させた無効電流は、出力追従制御による出力変動に埋もれることがないので、電流センサが正常であれば、無効電流の変化を検出することができる。
(3)前記(1)又は(2)の蓄電システムにおいて、前記制御部は、前記無効電流の変化に同期して前記検出出力に変化が現れるか否かにより前記電流センサの異常の有無を判定してもよい。
この場合、変化の同期を見ることにより、正確かつ迅速に異常の有無を判定することができる。
(4)前記(1)~(3)のいずれかの蓄電システムにおいて、前記制御部は、前記検出出力と基準値とを比較して前記電流センサの異常可能性の有無を判定する第1の異常判定部と、前記第1の異常判定部による判定結果が異常可能性有りの場合、前記異常の有無の判定を行う第2の異常判定部と、を含むものであってもよい。
この場合、まず第1の異常判定部により異常可能性の有無を判定し、判定結果が異常可能性有りの場合にのみ、第2の異常判定部により異常の有無の判定を行うことができる。言い換えれば、第1の異常判定部による判定結果が異常可能性無しの場合は、行っても異常無しとなる蓋然性が高い第2の異常判定部による判定を省略することができる。
(5)前記(4)の蓄電システムにおいて、2以上の自然数をNとして、前記第2の異常判定部は、前記無効電流を変化させた場合と変化させない場合とでそれぞれ、前記交流電路の周波数のN周期分の期間で前記電流センサの検出出力に基づく平均の無効電力を求め、2つの無効電力の差に基づいて、前記電流センサの異常の有無を判定するようにしてもよい。
この場合、N周期分の期間における平均の無効電力を求めることで、より正確に無効電力を求めることができる。なお、Nの値は多いほど正確になると考えられるが、多すぎると判定に時間がかかるので、5周期分(N=5)程度が好ましいと考えられる。
(6)前記(1)~(5)のいずれかの蓄電システムにおいて、変化させた無効電流に基づく無効電力が、例えば、定格電力の5%以下になるようにすることが好ましい。
この場合、交流電路における電圧フリッカの発生を抑制することができる。
(7)また、方法の観点からは、蓄電池を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部と交流電路との接続点よりも商用電力系統側に電流センサが設けられている場合の、当該電流センサの異常判定方法であって、前記蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させ、前記無効電流の変化に反応して前記電流センサの検出出力が変化するか否かに基づいて、前記電流センサの異常の有無を判定する、電流センサの異常判定方法である。
上記の、電流センサの異常判定方法では、電流センサの異常の有無を判定するに当たって、蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させる。電流センサが正常であれば、無効電流の変化に反応して検出出力が変化する。電流センサが異常(脱落、断線等)であれば、無効電流の変化に反応した検出出力の変化が生じない。従って、無効電流を変化させることで電流センサの異常の有無を判定することができる。無効電流を変化させることは、交流電路の負荷の変動に対して有効電力の出力追従制御をしながら行うことができるので、本来の出力追従制御に影響を与えることを抑制しつつ、電流センサの異常の有無を判定することができる。なお、無効電流は進相、遅相のいずれでもよい。
[実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る蓄電装置及び電流センサの異常判定方法について、図面を参照して説明する。
《蓄電システムに関する回路構成例》
図1は、蓄電システム10が、単相3線式の交流電路4に接続されている状態を示す回路図である。図において、需要家の交流電路4には、単相3線式の商用電力系統3から交流電力が供給される。交流電路4の3線をU線,O線(中性線),W線とすると、U線及びW線には、蓄電装置1が接続されている。なお、O線の電位を蓄電装置1に取り込むため、実際にはO線と蓄電装置1も接続されるが、O線との接続は、蓄電装置1の入出力とは関係が無いので図示を省略している。需要家の負荷としては、U相(U-O線間)に接続された負荷5uと、W相(W-O線間)に接続された負荷5Wと、U-W線間に接続された負荷5uwとがある。
蓄電システム10は、蓄電装置1と、電流センサとしての例えばクランプ式のCT2u,2wにより構成されている。CT2uは交流電路4のU線に、CT2wはW線に、それぞれ取り付けられている。なお、CT2u,2wは、クランプ式に限定されないが、需要家の既存の配電盤や屋内配線に容易に取り付けることができるように、クランプ式が採用されることが多い。
商用電力系統3側を「上流」とし、需要家の負荷5u,5w,5uw側を「下流」とすると、CT2u,2wは、蓄電装置1よりも上流側にある。CT2u,2wは、商用電力系統3から需要家の蓄電装置1及び負荷5u,5w,5uwへの順潮流の他、蓄電装置1から商用電力系統3への逆潮流も検出する。
図2は、図1における蓄電システム10を拡大して、蓄電装置1の内部の回路構成を示した回路図である。図2において、蓄電装置1は、蓄電池11と、電力変換部12と、制御部13とを備えている。蓄電池11は、例えばリチウムイオン電池である。蓄電池11と接続されている電力変換部12は、双方向性のインバータ回路及び必要に応じてDC/DCコンバータを内蔵する(図示略)。電力変換部12は、蓄電池11を放電させるときは直流から交流への電力変換を行い、また、蓄電池11を充電するときは交流から直流への電力変換を行う。蓄電装置1の電力変換部12と交流電路4との接続点Pに対して、CT2u,2wは、上流側すなわち商用電力系統側にある。
電力変換部12は、自己の内部で検出した電圧、電流等の情報を制御部13に提供し、制御部13は提供された情報に基づいて電力変換部12を制御する。蓄電装置1の放電時は、需要家の負荷の増減に応じて、蓄電装置1が出力すべき電力が変化する。制御部13は、電力変換部12から提供された情報に基づいて、電力変換部12に出力追従制御を行わせる。
制御部13は、例えばコンピュータを含み、コンピュータがソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することで、必要な制御機能を実現する。ソフトウェアは、制御部の記憶装置(図示せず。)に格納される。制御部13は、電力変換部12を制御する機能とともに、CT2u,2wに関して、異常(または異常可能性)の有無を判定する第1の異常判定部13a及び第2の異常判定部13bの機能を有している。
なお、本開示における蓄電装置1は図2に示すように蓄電池11を含むが、電力変換部12及び制御部13を収容する装置とは別に外付けで蓄電池11を有する蓄電システム10であってもよい。
また、本開示では、蓄電システム10において逆潮流を検出するために設けられている電流センサの異常判定の点に主眼を置いて説明しているので、図1,図2では、蓄電システム10にのみ注目した回路図を示している。実際には、蓄電装置単独ではなく、太陽光発電装置等の他の分散型電源と併用されることが多い。
《異常判定の概要》
異常判定対象のCTは、図1,図2におけるCT2u,2wであるが、以下、単にCTという。図6について説明したように、CTに異常は無くても、検出する電流が基準値に満たない0に近い値になることがある。このような場合に、本当に異常なのか、正常なのかを判定するには別の判定手段が必要である。
そこで、本開示では、蓄電池11の充電又は放電の電流に注入(重畳)する無効電流を変化させることによってCTの異常の有無を判定する。無効電流は、進相、遅相のいずれでもよい。CTが正常であれば、無効電流の変化に反応して、CTの検出出力に変化が現れるはずである。「変化に反応」とは、例えば同期した変化である。無効電流を変化させたとき、CTの検出出力が同期して変化するか否かによって、誤判定を抑制しつつ、CTの異常の有無を検出することができる。
CTが正常であるときは、充電又は放電の電流に注入する無効電流の変化に同期した変化が、CTの検出出力に現れる。一方、CTが異常であるときには、充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させても、それに同期した変化が、CTの検出出力に現れない。
蓄電システム10は、CTで検出した電流値と電力変換部12内で検出した系統電圧に基づいて計算した有効電力が、目標値と一致するように、充電又は放電の電流を制御する。商用電力系統3から見てCTの下流側に接続されている負荷の電力消費が変化した場合には、蓄電システム10が出力する電流も変化するが、力率は負荷変動によらず一定値に維持される。よって、意図的に変化させた無効電流は、有効電流との関連性が無く、出力追従制御による出力変動に埋もれることなく検出することができる。従って、充電又は放電の電流に対する無効電力の注入を、CTの異常の有無の判定に利用することができる。
《フローチャートの例》
図3は、CTの異常判定を行うフローチャートの一例である。制御部13は、処理を開始すると、異常可能性の有無をチェックする(ステップS1)。具体的には、CTが検出した電流の実効値が一定値(例えば0.5A)以下であり、かつ、その電流の周波数を移動平均にて算出して求めた周波数と、電力変換部12内で検出した交流電圧の周波数と比べて偏差の絶対値が一定値(例えば3Hz)以上であった場合に、「異常可能性有り」となる。「異常可能性有り」ではない場合は、制御部13は、ステップS1,S2の処理を繰り返す。ステップS1,S2は、図2における第1の異常判定部13aの機能である。
ステップS2において「異常可能性あり」の場合は、制御部13は、まず、無効電流を注入せずに交流基本波周波数のN周期分の期間、CTの検出出力と、基準とする交流電路4の電圧検出値とを測定する(ステップS3)。Nは、2以上の自然数であり、例えば5とする。測定結果に基づいて、制御部13は、CTの検出出力に基づくN周期の平均の無効電力を求め、記憶する(ステップS4)。
ここで、N周期分の期間における平均の無効電力を求めることで、より正確に無効電力を求めることができる。Nの値は多いほど正確になると考えられるが、多すぎると判定に時間がかかるので、5周期分(N=5)程度が好ましいと考えられる。
次に、制御部13は、蓄電池11の充電又は放電の電流に、出力追従制御とは関係なく、いわば意図的に一定の無効電流を注入する(ステップS5)。そして、無効電流を注入しているN周期分の期間、CTの検出出力と、基準とする交流電路4の電圧検出値とを測定する(ステップS5)。Nは、ここでも例えば5とする。測定結果に基づいて、制御部13は、CTの検出出力に基づくN周期の平均の無効電力を求め、記憶する(ステップS6)。
続いてステップS7において制御部13は、ステップS4で求めた無効電力と、ステップS6で求めた無効電力とを互いに比較する。求めた2つの無効電力の差が、注入した無効電流に基づく無効電力と一致するか又は一定誤差範囲内で近似した値であれば、異常無し、と判定し(ステップS7のNO)、ステップS1に戻る。一方、求めた2つの無効電力の差が、上記の一定誤差範囲内にない場合は、制御部13は、異常有り、と判定し(ステップS7のYES)、異常時の処理を実行して終了となる(ステップS8)。異常時の処理とは、例えば、蓄電システム10の運転停止や、運転を充電のみに制限することである。
なお、上記のフローチャートでは、まずステップS1,S2(第1の異常判定部13a)により異常可能性の有無を判定し、判定結果が異常可能性有りの場合(ステップS2のYES)にのみ、ステップS3~S7(第2の異常判定部13b)により異常の有無の判定及びステップS8により異常時の処理を行うことができる。言い換えれば、第1の異常判定部13aによる判定結果が異常可能性無しの場合は、行っても異常無しとなる蓋然性が高い第2の異常判定部13bによる判定を省略することができる。
但し、異常可能性の有無を判定することが前提的に必須という訳ではない。例えば図3のステップS1,S2の処理を省略して、ステップS3~S8の処理を定期的に実行してもよい。
《検証例》
図4及び図5は、無効電流の注入がどのような結果となって現れるかを示す波形図の例である。図4は、正常なCTについての波形図、図5は異常なCTについての波形図である。図4(図5も同様)の上段の波形は、実線がU相の電圧、点線はW相の電圧をそれぞれ表している。単相3線式であるので、位相は互いに180度ずれている。中段は無効電流の注入信号である。Lレベルが注入無し、Hレベルが注入有り、である。下段は、図6に示したような状態におけるCTの検出出力(電流)である。実線はCT2uの検出する電流を表し、点線はCT2wの検出する電流を表している。
図4の下段において、CT2uの検出する電流は、時刻tからtまで終始、電圧波形と概ね同期した正弦波である。一方、CT2wの検出する電流は、無効電流を注入する前の時刻tからtまでの5周期において、約0である。時刻tにおいて無効電流の注入が開始されると、これと同期した反応が現れ、時刻tからtまでの5周期において、一定の電流を検出している。時刻tにおいて無効電流の注入を停止すると、これと同期して、CT2wの検出する電流は再び約0に戻る。
表1は、数値での検証結果である。左欄の記号の意味は以下の通りである。
:U相の有効電力[W]
:U線の有効電流[A]
:U相の電圧[V]
:U相の皮相電力[VA]
:U相の無効電力[var]
:W相の有効電力[W]
:W線の有効電流[A]
:W相の電圧[V]
:W相の皮相電力[VA]
:W相の無効電力[var]
(表1)
Figure 0007176384000001
表1において、無効電流注入無しのときにw線電流は約0Aで、「異常可能性有り」である。無効電力150var相当の無効電流が注入されると、w線に無効電流が現れているのがわかる。u線電流にも無効電流が注入されており、無効電流注入無しの5周期と無効電流注入有りの5周期を比較するとu相、w相共に無効電力が約150var変化しており、CTが正常に働いていることがわかる。なお、無効電力150varという数値は、変化を見やすくするためにあえて大きい値とした。実際は定格電力の5%以下が好ましい。
次に、図5の下段において、CT2uの検出する電流は、時刻tからtまで終始、電圧波形と概ね同期した正弦波である。一方、CT2wの検出する電流は、無効電流を注入する前の時刻tからtまでの5周期において、約0である。時刻tにおいて無効電流の注入が開始されても、これに対する反応はなく、約0のままである。時刻tにおいて無効電流の注入を停止しても、これに対する反応はなく、CT2wの検出する電流は約0である。
表2は、数値での検証結果である。左欄の記号の意味は表1と同じである。
(表2)
Figure 0007176384000002
表2において、無効電流を注入してもCTの検出する電流値には現れていない。無効電流注入無しの5周期と無効電流注入有りの5周期とを互いに比較するとu相は無効電力が約150var変化しているが、w相は無効電力の変化がない。従って、CT2wが異常であると判定できる。
なお、変化させた無効電流に基づく無効電力は、前述のように定格電力の5%以下になるようにすることが望ましい。5%を超えると交流電路4に電圧フリッカを発生させる場合があるからである。5%以下にすることにより、交流電路4における電圧フリッカの発生を抑制することができる。
《その他》
なお、上記開示において、電流センサはCTとして説明した。これは、交流電流の測定には安価なCTが使用されることが多いこと、しかも、クランプ型CTが使用されることが多いために取り付け後の脱落という可能性があること、が理由である。しかしながら、電流センサがCT以外(例えばホール素子を用いたもの)であっても故障や断線等の異常が発生する可能性はあるので、本開示の異常判定方法は、CT以外の電流センサであっても同様に適用することができる。
《開示のまとめ》
上述のように、本開示の蓄電システム10は、商用電力系統3と繋がる交流電路4に接続されるものであって、蓄電池11と、蓄電池11と交流電路4との間にあって、蓄電池11を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部12と、電力変換部12と交流電路4との接続点Pよりも商用電力系統側に取り付けられ、接続点Pと商用電力系統3との間に流れる電流を検出する電流センサ(CT2u,2w)と、電力変換部12を制御するとともに、電流センサの検出出力に基づいてそれらの異常の有無を検出する制御部13と、を備えている。そして、制御部13は、蓄電池11の充電又は放電の電流に注入する無効電流を電力変換部12によって変化させ、当該無効電流の変化に反応して電流センサの検出出力が変化するか否かに基づいて、電流センサの異常の有無を判定する。
上記のように構成された蓄電システム10では、電流センサ(CT2u,2w)の異常の有無を判定するに当たって、制御部13は、蓄電池11の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させる。電流センサが正常であれば、無効電流の変化に反応して検出出力が変化する。電流センサのいずれか又は双方が異常(脱落、断線等)であれば、無効電流の変化に反応した検出出力の変化が生じない。従って、無効電流を変化させることで電流センサの異常の有無を判定することができる。無効電流を変化させることは、交流電路4の負荷の変動に対して有効電力の出力追従制御をしながら行うことができるので、蓄電システム10から負荷への、本来の出力追従制御に影響を与えることを抑制しつつ、電流センサの異常の有無を判定することができる。なお、無効電流は進相、遅相のいずれでもよい。
また、無効電流の変化は、交流電路4に接続されている負荷の変動とは関係なく、前記制御部13の一方的な指令により生じさせる。このように、いわば意図的に変化させた無効電流は、出力追従制御による出力変動に埋もれることがないので、電流センサが正常であれば、無効電流の変化を検出することができる。
上記の「無効電流の変化に反応した」の典型例は、無効電流の変化に同期して電流センサの検出出力に変化が現れるか否かである。変化の同期を見ることにより、正確かつ迅速に異常の有無を判定することができる。
また、方法としての観点からは、蓄電池11を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部12と交流電路4との接続点Pよりも商用電力系統側に電流センサが設けられている場合の、電流センサの異常判定方法であって、蓄電池11の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させ、無効電流の変化に反応して電流センサの検出出力が変化するか否かに基づいて、電流センサの異常の有無を判定する電流センサの異常判定方法である。
上記の、電流センサの異常判定方法では、電流センサの異常の有無を判定するに当たって、蓄電池11の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させる。電流センサが正常であれば、無効電流の変化に反応して検出出力が変化する。電流センサが異常(脱落、断線等)であれば、無効電流の変化に反応した検出出力の変化が生じない。従って、無効電流を変化させることで電流センサの異常の有無を判定することができる。無効電流を変化させることは、交流電路4の負荷の変動に対して有効電力の出力追従制御をしながら行うことができるので、本来の出力追従制御に影響を与えることを抑制しつつ、電流センサの異常の有無を判定することができる。なお、無効電流は進相、遅相のいずれでもよい。
《補記》
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
1 蓄電装置
2u,2w CT(電流センサ)
3 商用電力系統
4 交流電路
5u,5w,5uw 負荷
10 蓄電システム
11 蓄電池
12 電力変換部
13 制御部
13a (第1の)異常判定部
13b (第2の)異常判定部
100 蓄電システム
101 蓄電装置
102u,102w CT
103 商用電力系統
104 交流電路
105u,105w 負荷
P 接続点

Claims (6)

  1. 商用電力系統と繋がる交流電路に接続される蓄電システムであって、
    蓄電池と、
    前記蓄電池と前記交流電路との間にあって、前記蓄電池を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部と、
    前記電力変換部と前記交流電路との接続点よりも商用電力系統側に取り付けられ、前記接続点と前記商用電力系統との間に流れる電流を検出する電流センサと、
    前記電力変換部を制御するとともに、前記電流センサの検出出力に基づいて前記電流センサの異常の有無を検出する制御部と、を備え、
    前記制御部は、2以上の自然数をNとして、前記蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を前記電力変換部によって変化させた場合と変化させない場合とでそれぞれ、前記交流電路の周波数のN周期分の期間で前記電流センサの検出出力に基づく平均の無効電力を求め、2つの無効電力の差に基づいて、前記電流センサの異常の有無を判定する、蓄電システム。
  2. 前記無効電流の変化は、前記交流電路に接続されている負荷の変動とは関係なく、前記制御部の一方的な指令により生じさせるものである請求項1に記載の蓄電システム。
  3. 前記制御部は、前記無効電流の変化に同期して前記検出出力に変化が現れるか否かにより前記電流センサの異常の有無を判定する請求項1又は請求項2に記載の蓄電システム。
  4. 前記制御部は、
    前記検出出力と基準値とを比較して前記電流センサの異常可能性の有無を判定する第1の異常判定部と、
    前記第1の異常判定部による判定結果が異常可能性有りの場合、前記異常の有無の判定を行う第2の異常判定部と、
    を含む請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の蓄電システム。
  5. 変化させた無効電流に基づく無効電力が、定格電力の5%以下になるようにする請求項1~請求項のいずれか1項に記載の蓄電システム。
  6. 蓄電池を充電し又は放電させるための電力変換を行う電力変換部と交流電路との接続点よりも商用電力系統側に電流センサが設けられている場合の、当該電流センサの異常判定方法であって、
    2以上の自然数をNとして、前記蓄電池の充電又は放電の電流に注入する無効電流を変化させた場合と変化させない場合とでそれぞれ、前記交流電路の周波数のN周期分の期間で前記電流センサの検出出力に基づく平均の無効電力を求め、2つの無効電力の差に基づいて、前記電流センサの異常の有無を判定する、電流センサの異常判定方法。
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