JP6398198B2 - 食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤 - Google Patents

食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤 Download PDF

Info

Publication number
JP6398198B2
JP6398198B2 JP2014008646A JP2014008646A JP6398198B2 JP 6398198 B2 JP6398198 B2 JP 6398198B2 JP 2014008646 A JP2014008646 A JP 2014008646A JP 2014008646 A JP2014008646 A JP 2014008646A JP 6398198 B2 JP6398198 B2 JP 6398198B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
meat
protease
hamburger
feeling
protin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014008646A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014158463A (ja
Inventor
幸一郎 渡部
幸一郎 渡部
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ajinomoto Co Inc filed Critical Ajinomoto Co Inc
Priority to JP2014008646A priority Critical patent/JP6398198B2/ja
Publication of JP2014158463A publication Critical patent/JP2014158463A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6398198B2 publication Critical patent/JP6398198B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Meat, Egg Or Seafood Products (AREA)

Description

本発明は、プロテアーゼを用いる食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤に関する。
従来の技術
牛、豚などの畜肉、鶏、鴨などの鳥肉を使用した食肉加工品において、その調理方法に関わらず、肉本来の繊維感を有し、適度に柔らかく、肉汁に富むものが好まれる。特に、ハンバーグ、ハンバーガーパティ、つくね、メンチカツ、ソーセージなどの挽き肉を主原料とする挽き肉加工食品では、ジューシーであることはおいしく食べるための重要な要素である。
しかし、これら挽き肉加工食品は、焼く、揚げる、蒸すといった加熱調理中に肉汁が流出し、ジューシーさが損なわれてしまう。また、品質の低い肉は保水性が低いため肉汁の流出が激しく、ジューシーさの低下も著しくなってしまう。
このような課題を解決するために、従来から挽き肉加工食品のジューシーさを維持するいくつかの方法が知られている。例えば、大豆タンパク質や卵白タンパク質を使用する方法、アルギン酸エステルを使用する方法(特許文献1)、可逆的熱応答性ガラクトキシログルカン(特許文献2)を使用する方法などがある。これらの手法は保水性の高い素材を挽き肉加工食品に使用することで肉汁流出を防いでいる。そのため、これらの方法を用いるとタンパク質特有の異味や、増粘多糖類特有のぬめりが生じてしまうなど、挽き肉加工食品に対して好ましくない効果がある。
また、特許文献3〜5には、プロテアーゼを用いた挽き肉加工食品の製造方法が開示されている。しかし、一般のプロテアーゼは基質特異性が低いため、肉の食感に関与する筋原線維タンパク質をも過剰に分解してしまい、肉粒感が低下し、レバー様の食感になり、べとつき感が生じて挽き肉本来の食感がそこなわれてしまうという問題点も指摘されている。例えば、特許文献4には麹菌から得られるプロテアーゼをハンバーグに使用した際にジューシー感が向上されることが開示されているが、当該酵素を作用させたハンバーグはレバー様の食感となり必ずしも好ましいものではなかった。
特開2002−281942号公報 特開2004−180549号公報 特開平7−111881号公報 特開平9−262068号公報 特開平9−140352号公報
本発明の目的は、加熱時の肉汁流出を防ぎ、加熱歩留りが高く、ジューシー感と食感に優れた挽き肉加工食品の製造方法及び挽き肉加工食品用改質剤を提供することである。
本発明者らはこれらの課題を解決すべく鋭意研究した結果、原料肉に特定のバチルス属細菌由来のプロテアーゼを添加することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下のとおりである。
(1)Bacillus amyloliquefaciens由来であって下記の特性を有するプロテアーゼを作用させた挽き肉加工食品の製造方法。
(a) 作用および基質特異性:ペプチド結合を有する基質を加水分解し、ペプチドを遊離する。
(b) 至適pH:7.0
(c) 安定pH:5.0〜7.0
(d) 至適温度:50〜55℃
(e) 阻害剤:金属プロテアーゼであり、EDTAによって阻害を受ける。
(2)原料肉100gあたりのプロテアーゼ添加量が1〜5000Uであることを特徴とする請求項1記載の方法。
(3)さらに、原料肉100gあたり0.01〜2gのアルカリ素材を原料肉に添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
(4)アルカリ素材がクエン酸三ナトリウム又はアルギニンである(3)記載の方法。
(5)Bacillus amyloliquefaciens由来であって下記の特性を有するプロテアーゼを含有する挽き肉加工食品用改質剤。
(a) 作用および基質特異性:ペプチド結合を有する基質を加水分解し、ペプチドを遊離する。
(b) 至適pH:7.0
(c) 安定pH:5.0〜7.0
(d) 至適温度:50〜55℃
(e) 阻害剤:金属プロテアーゼであり、EDTAによって阻害を受ける。
(6)さらに アルカリ素材を含有する(5)記載の改質剤。
(7)アルカリ素材の含有量がプロテアーゼ1Uあたり0.000002〜2gである(6)記載の改質剤。
(8)アルカリ素材がクエン酸三ナトリウム又はアルギニンである(6)又は(7)記載の改質剤。
本発明により、加熱歩留りが大きく、ジューシー感と食感に優れた挽き肉加工食品を得ることができる。
ミオシン重鎖残存率についての結果である。(実施例5)
本発明の挽き肉加工食品の製造方法では、Bacillus amyloliquefaciens由来の下記の特性を有するプロテアーゼを用いる。
(a) 作用および基質特異性:ペプチド結合を有する基質を加水分解し、ペプチドを遊離する。
(b) 至適pH:7.0
(c) 安定pH:5.0〜7.0
(d) 至適温度:50〜55℃
(e) 阻害剤:金属プロテアーゼであり、EDTAによって阻害を受ける。
本プロテアーゼは、Bacillus amyloliquefaciensを培養し、イオン交換カラムクロマトグラフィーやゲル濾過カラムクロマトグラフィー等を用いて精製することが可能である。あるいは、市販酵素を用いてもよい。市販酵素の例としては、天野エンザイム株式会社より市販されている「プロチンSD−NY10」、「プロチンNY100」が挙げられる。
本発明の挽き肉加工食品の製造方法では、上記プロテアーゼに加えて、アルカリ素材を用いることが好ましい。アルカリ素材としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸一ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、重合リン酸塩等のアルカリ塩や、アルギニン、リジン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸といった、その水溶液がアルカリ性を示す素材を用いることができ、これらは単独又は混合して用いることができる。中でも、クエン酸三ナトリウムやアルギニンを用いることが好ましい。
本発明により製造される挽き肉加工食品は、挽き肉を加工して製造される食品であり、例えば、ハンバーグ、ハンバーガーパティ、ソーセージ、焼売、餃子、つくね、ミートボール、ミートローフなどが挙げられる。また、これらの冷凍品も含まれる。挽き肉加工食品の原料肉は、いかなる種類の鳥獣肉でもよく、また、いかなる部位の肉でもよい。さらに、いかなる状態(生、乾燥、加熱済み)でも構わない。
本発明の挽き肉加工食品の製造方法において、プロテアーゼ及びアルカリ素材を原料肉に添加する時期及び順序は特に限定されず、挽き肉加工食品の製造時のどの段階で添加しても構わない。例えばハンバーグの場合、原料挽き肉に練り込んでもよいし、原料肉とパン粉や玉ねぎ、卵といった副材とを混合する際に添加してもよい。本発明の挽き肉加工食品の製造方法において、プロテアーゼ及びアルカリ素材、原料肉の他に、必要に応じて他の成分をさらに添加することができる。「他の成分」としては、澱粉、加工澱粉、デキストリン等の賦形剤、食肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンやジェランガム等の多糖類、コショウやナツメグ等のスパイス類、かんすい、色素、酸味料、香料等その他食品添加物等、パン粉、卵、玉ねぎ、人参等の野菜の小片等食品を添加してもよい。「他の成分」としては、1種の成分を用いてもよく、2種又はそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
本発明の挽き肉加工食品の製造方法において、プロテアーゼの添加量は、原料肉100gに対して、酵素活性が1〜5000Uが好ましく、10〜5000Uがより好ましく、10〜1000Uがさらに好ましい。上記範囲において、特に加熱歩留りが高く、ジューシー感や肉粒感が高い挽き肉加工食品を製造することができる。なお、プロテアーゼの酵素活性はカゼインを基質として、1分間にチロシン1μgに相当するフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1U(ユニット)とした。
プロテアーゼの反応時間は酵素が基質に作用することが可能な時間であれば特に限定されず、実用的な反応時間としては5分間から72時間程度が好ましい。また、反応温度についても酵素が反応できる温度であれば構わないが、実用的な反応温度としては−5℃から80℃で作用させることが好ましい。すなわち、通常の挽き肉加工食品の製造工程を経ることで十分な酵素反応が得られる。
本発明の挽き肉加工食品の製造方法において、アルカリ素材の添加量は、原料肉100gに対して、0.001〜2gが好ましく、0.01〜1gがより好ましい。また、アルカリ素材の添加量は、プロテアーゼ1Uあたり0.000002〜2gが好ましく、0.00001〜0.1gがより好ましい。
さらに、本発明は、挽き肉加工食品用改質剤(以下、本発明の改質剤ともいう。)を提供する。本発明の改質剤を原料肉に添加することにより、加熱時の肉汁流出を防ぎ、加熱歩留りが高く、ジューシー感と食感に優れた挽き肉加工食品を製造することが可能である。本発明の改質剤は、Bacillus amyloliquefaciens由来の上記プロテアーゼを含み、さらに効果を向上させる観点から、前記したアルカリ素材を加えるとより好ましい。改質剤にアルカリ素材を含有せしめる場合、アルカリ素材の含有量は、プロテアーゼ1Uあたり0.000002〜2gが好ましく、0.00001〜0.1gがより好ましい。さらに、本発明の目的を損なわない限り、澱粉、加工澱粉、デキストリン等の賦形剤、食肉エキス等の調味料、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、蛋白加水分解物、乳化剤、クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤、グルタチオン、システイン等の還元剤、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ジェランガム等の多糖類、コショウ、ナツメグ等のスパイス類、かんすい、色素、酸味料、香料等その他食品添加物等または食品を適宜配合してもよい。尚、本発明の改質剤は、液体状、ペースト状、顆粒状、粉末状のいずれの形態でも構わない。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明は、これらの実施例により何ら限定されない。
表1に示した配合の各原料に、表2に示した各種プロテアーゼを原料肉100gあたり160U添加し、キッチンエイドミキサー(FMI製)を用い、設定速度1にて3分間混合し、ハンバーグ生地を調製した。生地を150gに計量し、空気抜きした後に小判形(長径130mm、短径90mm、厚さ12mm)に成型した。成型後に−20℃の冷凍庫にて一昼夜凍結した後、5℃にて18時間解凍を行った。解凍したハンバーグ生地を230℃のグリドル(FGFT60601TC、フジマック社製)にて両面1分間ずつ焼成し、表面に焼き目を付けた後、インピンジャー(Lincon Foodservice ProdUcts製)にて250℃で4分間焼成した。焼成前の重量と焼成後の重量を測定することで加熱歩留りを測定した。加熱歩留りは、(焼成後の重量)÷(焼成前の重量)×100にて求めた。一般的に、挽き肉加工食品においては、加熱歩留りが高いと、肉汁が内部に閉じ込められており、好ましい品質であると考えられる。出来上がったハンバーグは焼成後15分以内に官能評価を実施した。官能評価は畜肉製品の評価に対して訓練されたパネル5名にて実施し、ジューシー感と肉粒感を評価した。ジューシー感は、噛みしめた際に感じる肉汁の多さを示しており、評点は、1点:非常にパサついている、5点:ジューシー感がある、10点:非常にジューシー感があるとして、各試験区を1点から10点までで評価した。肉粒感は、挽き肉製品に特有に見られるミンチ肉の粒状食感の強さを示しており、ミンチの粒っぽさを強く感じられる場合は高い点数、ペースト様の食感になると低い点数となる。評点は、1点:肉粒感が全くなくペースト様の食感、5点:肉粒感がある、10点:肉粒感が非常に強いとし各試験区を1点から10点まで評価した。一般的には肉粒感が高いほど、品質の良い挽き肉加工品であると言える。
結果を表3に示した。加熱歩留りについては、試験区No.2〜9のプロテアーゼ添加区は無添加区(試験区No.1)とほぼ同等であったが、プロチンSD−NY10添加区(試験区No.10)のみは89.0%と高い加熱歩留りを示した。また、ジューシー感に関しては、プロテアーゼ添加区ではいずれも無添加区よりも向上した。特にプロチンSD−NY10添加区(試験区No.10)では他のプロテアーゼと比較しても高いジューシー感を示した。
また、プロチンSD−NY10添加区を除いたプロテアーゼ添加区(試験区No.2〜9)では肉粒感が無添加区より低下した。このように、一般的にはプロテアーゼを添加することでハンバーグの肉粒感が低下し、食感が損なわれてしまうという大きな欠点がある。しかしながら、その中にあって、プロチンSD−NY10添加区(試験区No.10)では、肉粒感は無添加と同等以上であった。
以上のように、プロチンSD−NY10をハンバーグに添加することによって、他のプロテアーゼとは異なり、加熱歩留りが大きく向上し、ジューシー感も高く、肉粒感も低下しないハンバーグが得られた。
表1に示した配合の各原料に、プロチンSD−NY10、プロチンSD−AY10、スミチームLP、プロテアーゼA「アマノ」SDをそれぞれ原料肉100gに対して10〜5000U添加し、実施例1記載の方法にてハンバーグを調製した。プロチンSD−NY10に関してはさらに、原料肉100gに対して1U、10000U添加したハンバーグも調製した。得られたハンバーグの加熱歩留りと官能評価のジューシー感の結果について表4に示した。尚、加熱歩留りの算出や官能評価の方法については実施例1記載の方法に従った。
プロチンSD−NY10をハンバーグに用いた場合、原料肉100gに対して1〜5000Uの添加量では無添加区と比較して加熱歩留りが増加し、ジューシー感は大きく向上した。10000Uの添加ではジューシー感は向上したが、加熱歩留りが無添加よりも減少した。また、特に10U〜5000Uの添加量ではジューシー感が特に高く、非常に好ましい品質のハンバーグとなった。さらに、肉粒感に関してはいずれも無添加区と同等以上であり、ジューシー感と肉粒感を併せ持った好ましいハンバーグが得られた。
一方で、プロチンSD−AY10をハンバーグに用いた場合、原料肉100gに対して10U〜1000Uの添加量で、ジューシー感がやや向上したものの、10U以上の添加で肉粒感が低下し、いずれの添加量においても、ジューシー感と肉粒感が両立する好ましい品質のハンバーグを得ることは出来なかった。
スミチームLPについては、原料肉100gあたり100U程度までの添加ではジューシー感がやや向上したものの、1000U以上の添加によって逆にジューシー感は低下した。また、10U以上の添加によって肉粒感は無添加区と比較して低下してしまい、いずれの添加量においても、ジューシー感と肉粒感が両立する好ましい品質のハンバーグを得ることは出来なかった。
また、プロテアーゼA「アマノ」SDに関しても、上記スミチームLP同様に、いずれの添加量においても、ジューシー感と肉粒感が両立する好ましい品質のハンバーグを得ることは出来なかった。
以上のように、プロチンSD−NY10以外のプロテアーゼでは、挽き肉加工食品のジューシー感向上効果は不十分であり、また、肉粒感が低下するために総合的には必ずしも品質向上に至らず、プロチンSD−NY10のみがハンバーグの肉粒感を損ねることなく、加熱歩留りやジューシー感を大きく向上させた。
実施例1の方法及び表5の酵素添加区に従い、ハンバーグを調製した。調製したハンバーグは焼成後5分以内にTA-XTplus(英弘精機製)を用いて元の厚さの40%に圧縮した。圧縮の際に、ハンバーグの下にペーパータオルを敷き、圧縮に伴い流出する肉汁をペーパータオルに吸収させた。圧縮前後のペーパータオルの重量差をハンバーグから出た肉汁量とした。本圧縮試験はハンバーグを口内で噛みしめることを再現したものであり、本試験で計測された肉汁量が多いほど、咀嚼時に口内で感じる肉汁が多い、すなわちジューシーで好ましいハンバーグであると考えられる。
圧縮試験条件
圧縮歪率:40%
圧縮速度:1mm/sec
使用プランジャー:直径75mm円形圧縮プレート
結果を表5に示した。プロチンSD−NY10をハンバーグに添加することで無添加の対照区と比べて、いずれの添加量においても肉汁量が増加した。一方で、プロチンSD−NY10以外のプロテアーゼでは、添加量が100U以下では肉汁量がやや増加するものの、添加量が1000U以上だと肉汁量が減少した。
以上から、プロチンSD−NY10をハンバーグに添加することで、官能評価上のジューシー感が向上するだけでなく、実際の肉汁量も増加することが明らかとなった。この結果は実施例1および実施例2で示した官能評価結果と合致するものである。
表1に示した配合の各原料に、プロチンSD−NY10とアルカリ素材の一種であるクエン酸三ナトリウムまたはアルギニンを添加し、実施例1記載の製造方法にてハンバーグを調製した。得られたハンバーグは官能評価によりジューシー感の点数付けを行った。結果について表6及び表7に示す。なお、官能評価の方法については実施例1に従った。
表6には、プロチンSD−NY10とクエン酸三ナトリウムをハンバーグに併用した際のジューシー感について示した。クエン酸三ナトリウムのみの添加でハンバーグのジューシー感はやや向上した(試験区2〜6)。プロチンSD−NY10とクエン酸三ナトリウムを併用した場合、ジューシー感はそれぞれ単独添加と比較しても飛躍的に向上した。例えば、プロチンSD−NY10を100U、クエン酸三ナトリウムを0.1gそれぞれ単独で添加した場合(試験区7、試験区3)のジューシー感は4.8点と2.6点である。しかし、両者を併用した試験区9のジューシー感は8.7点となり、併用することで相乗的にジューシー感が向上した。
表7には、プロチンSD−NY10とアルギニンをハンバーグに併用した際のジューシー感について示した。アルギニンのみの単独添加においてもジューシー感は向上した。プロチンSD−NY10とアルギニンを併用した場合、上記クエン酸三ナトリウムと同様に併用による相乗効果が確認された。以上のことから、アルカリ素材の種類によらずプロチンSD−NY10とアルカリ素材とを併用することによって、相乗的に挽き肉加工食品のジューシー感が向上することが見いだされた。
食肉から抽出した畜肉タンパク質に対するプロテアーゼの作用について確認した。牛赤身ミンチ100g肉に対して、0.1MNaCl、20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を300ml添加し、2分間ホモジナイズを行った後、ガーゼにてろ過した。ろ液を遠心分離後、同緩衝液にて洗浄と遠心分離を3回繰り返し、ペレット状の粗筋原線維タンパク質を得た。
粗筋原線維タンパク質をタンパク質濃度で2mg/mlになるように1M NaCl溶液に溶解させ、粗筋原線維タンパク質1gあたり各酵素を1.6Uになるように添加し、37℃にて1時間および3時間反応させた。反応液を以下の条件にてSDSゲル電気泳動に供し、粗筋原線維タンパク質の分解状態を確認した。
ゲル:PAGEL SPG‐520(ATTO製)
試料緩衝液:電気泳動用特性試薬Sample buffer solution(ナカライテスク製)
泳動緩衝液:0.3%トリス、1.44%グリシン、0.1%SDS
染色:CBB染色
泳動層:PAGERUN(ATTO製)
分子量マーカー:Prestained SDS−PAGE Standards, broad range(BIO−RAD製)
上記方法によって得られた電気泳動ゲルをGS−800 Calibrated Densitometer(BIO−RAD製)にて画像取り込みを行った。得られた画像のタンパク質バンドの中から、分子量マーカーを参考にミオシン重鎖に相当するバンドを特定し、バンドの強度を測定した。プロテアーゼを添加していない粗筋原線維タンパク質のミオシン重鎖のバンド強度を100%とし、各プロテアーゼで処理した際のミオシン重鎖のバンド強度をミオシン残存率とした。すなわち、ミオシン残存率が高いほどミオシン重鎖が分解されずに残存していることを示す。
抽出した粗筋原線維タンパク質からはミオシン重鎖(分子量約200KDa)と同分子量にバンドが確認された。ミオシン重鎖は畜肉タンパク質の主要成分であり、加熱によりゲル化する性質があることから、畜肉加工品の食感に最も関与するタンパク質であることが知られている。プロテアーゼはこのミオシン重鎖を分解する。ミオシン重鎖が適度に分解された場合、畜肉製品のジューシー感が向上するが、過度に分解が進むと肉特有の食感が損なわれ、保水性が低下し、畜肉加工品の品質は低下してしまう。
本実施例にて用いた4つのプロテアーゼ全てでミオシン重鎖の分解が確認されたが、ミオシン重鎖分解と反応速度は酵素により異なっていた。結果を図1及び表8に示した。プロチンSD−NY10は他酵素と比較して、ミオシン重鎖の分解が緩やかであった。実施例1から4にてプロチンSD−NY10を添加した場合は、他のプロテアーゼを添加した場合に対してジューシー感が向上し、肉粒感が損なわれないという特徴があった。これはプロチンSD−NY10がミオシン重鎖に対して緩やかに反応することによって生じるものと考えられる。これらのミオシン重鎖に対する反応性の違いのためにプロチンSD−NY10が他の酵素と比較して顕著に挽き肉加工品の品質を向上させるものと考えられる。
本発明によると、挽き肉加工食品の品質を向上できるので、食品分野において極めて有用である。

Claims (4)

  1. Bacillus amyloliquefaciens由来であって下記の特性を有するプロテアーゼと、原料肉100gあたり0.01〜2gのクエン酸三ナトリウム又はアルギニンとを作用させた挽き肉加工食品の製造方法。
    (a) 作用および基質特異性:ペプチド結合を有する基質を加水分解し、ペプチドを遊
    離する。
    (b) 至適pH:7.0
    (c) 安定pH:5.0〜7.0
    (d) 至適温度:50〜55℃
    (e) 阻害剤:金属プロテアーゼであり、EDTAによって阻害を受ける。
  2. 原料肉100gあたりのプロテアーゼ添加量が1〜5000Uであることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. Bacillus amyloliquefaciens由来であって下記の特性を有するプロテアーゼと、クエン酸三ナトリウム又はアルギニンとを含有する挽き肉加工食品用改質剤。
    (a) 作用および基質特異性:ペプチド結合を有する基質を加水分解し、ペプチドを遊離する。
    (b) 至適pH:7.0
    (c) 安定pH:5.0〜7.0
    (d) 至適温度:50〜55℃
    (e) 阻害剤:金属プロテアーゼであり、EDTAによって阻害を受ける。
  4. クエン酸三ナトリウム又はアルギニンの含有量がプロテアーゼ1Uあたり0.000002〜2gである請求項記載の改質剤。
JP2014008646A 2013-01-28 2014-01-21 食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤 Active JP6398198B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014008646A JP6398198B2 (ja) 2013-01-28 2014-01-21 食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013012987 2013-01-28
JP2013012987 2013-01-28
JP2014008646A JP6398198B2 (ja) 2013-01-28 2014-01-21 食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014158463A JP2014158463A (ja) 2014-09-04
JP6398198B2 true JP6398198B2 (ja) 2018-10-03

Family

ID=51610757

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014008646A Active JP6398198B2 (ja) 2013-01-28 2014-01-21 食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6398198B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6756333B2 (ja) * 2015-07-29 2020-09-16 味の素株式会社 食肉改質剤
JP6821950B2 (ja) * 2016-05-25 2021-01-27 味の素株式会社 挽肉加工食品の製造方法
WO2021167062A1 (ja) * 2020-02-21 2021-08-26 味の素株式会社 食肉の改質方法及び改質用組成物ならびに改質された食肉を含有する食品

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007319166A (ja) * 2001-10-15 2007-12-13 Katayama Hiroshi 動物性蛋白質からなる食品及び同動物性蛋白質の軟化方法及び動物性蛋白質の軟化処理に用いる軟化剤
US20080293610A1 (en) * 2005-10-12 2008-11-27 Andrew Shaw Use and production of storage-stable neutral metalloprotease
JP4850943B2 (ja) * 2008-12-26 2012-01-11 イーエヌ大塚製薬株式会社 酵素処理液、軟質化方法および軟質化動物性食材

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014158463A (ja) 2014-09-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0572987B1 (en) Process for producing bound-formed food
CA1308603C (en) Method for reducing the salt content in a foodstuff
KR100971010B1 (ko) 멸치액젓 농축물을 이용한 msg 대체용 조미료 조성물 및그 제조방법
RU2473246C2 (ru) Способ получения обработанного мясопродукта или морепродукта и ферментный препарат для улучшения обработанного мясопродукта или морепродукта
JP5811098B2 (ja) 畜肉加工食品の製造方法及び畜肉加工食品改質用酵素製剤
JP2005348731A (ja) 惣菜食品用組成物及び惣菜食品またはその製造方法もしくはその品質改良方法
JP6398198B2 (ja) 食肉加工品の製造方法及び食肉加工品用改質剤
KR20210004542A (ko) 닭 가슴살 육포제조용 소스 및 이를 이용한 닭 가슴살 육포 제조방법
JP5802214B2 (ja) 畜肉加工食品の製造方法及び畜肉加工食品改質用の酵素製剤
JP4138889B2 (ja) 食肉改質剤
JPH02119763A (ja) コンニャク添加食品の製造法
JP2019140944A (ja) 食品タンパク質結着剤、これを含む食品組成物及びこれを用いた食品の製造方法
JP5386292B2 (ja) 食肉加工品の製造方法
JP2023066140A (ja) 食品製造用粉末組成物
JPH06113793A (ja) 畜肉加工製品用酵素製剤
CN111513296A (zh) 一种牛排用复合调味料及其制备方法
KR100488160B1 (ko) 고기질감을 갖는 곤약가공품과 이를 이용한 저칼로리육가공품
WO2020004419A1 (ja) 食肉加工食品の製造方法、食肉加工食品用改質剤および食肉加工食品
JP6048413B2 (ja) 畜肉練り製品およびその製造方法
JPH0465668B2 (ja)
JP2014090710A (ja) 塩化ナトリウム添加量を低減した食肉加工食品及びその製造方法
JP2002101845A (ja) 酸味成分由来の酸味、刺激臭の改善方法及び酸味成分含有組成物
JPH09121814A (ja) 畜肉、魚肉含有食品の製造方法
JPH0279960A (ja) 魚畜肉練製品および魚畜肉練製品用組成物
JP6190107B2 (ja) 家畜の肝臓酵素分解物を含有する食肉加工食品及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161111

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170926

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170929

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20180403

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180608

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20180615

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180807

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180820

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6398198

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250