本開示のオーブントースターは、加熱室と、前記加熱室の前面を覆う開閉可能な扉と、前記加熱室内に配置された被調理物が載置される調理網と、前記加熱室内の前記調理網の上方に左右方向に延在して配置された上側ヒータと、前記加熱室の前記扉と対向する背面壁の背面側に配置され、前記背面壁に形成された吸入口から吸入した前記加熱室内の空気を前記背面壁に形成された吹き出し口から前記加熱室内に吹き出す送風ユニットとを備え、前記吹き出し口は前記吸入口よりも上方に位置し、前記吸入口から吸入された空気が前記吹き出し口から前記上側ヒータの中央部分に向かって吹き出される。
本開示のオーブントースターは、上記構成を備えることで、送風ユニットによって、加熱室内の吸入口より吸入された比較的温度の低い空気が被調理物の上方に配置された上側ヒータの中央部分に向かって吹き出される。このため、比較的低い温度の空気が上側ヒータの中央部分に当たってその熱を奪い、上側ヒータから被調理物の中央部分に直接放射される熱量を低減することができる。さらに、上側ヒータの熱によって暖められた空気が加熱室内を循環することによって、加熱室内全体の温度を高くすることができる。この結果、被調理物が厚く被調理物の中央部分と上側ヒータとの直線距離が短くて、被調理物表面の各部分と上側ヒータとの距離の差が大きい場合であっても、被調理物の上側ヒータの直下に位置する部分が他の部分と比較して過度に加熱されることを防止し、被調理物の焼きムラを低減することができる。
上記本開示にかかるオーブントースターにおいて、前記吸入口が形成された部分から前記吹き出し口が形成された部分までを少なくとも含む前記背面壁が、上方がより前方側に位置するように前記加熱室の前後方向に傾斜した傾斜面を形成し、前記送風ユニットを形成する送風ファンと通風経路とが前記傾斜面に対して平行に配置されていることが好ましい。このようにすることで、被調理物の上方に配置された上側ヒータからの放射熱を背面壁で反射させる構成においても、送風ユニットの配置部分が加熱室の後方側に大きく突出することを回避でき、コンパクトなオーブントースターを実現することができる。
また、前記吹き出し口が、前記上側ヒータと略同じ高さに形成されていることが好ましい。また、この場合において、前記通風経路の前記吹き出し口に接続された部分の上面が、略水平に形成されていることが好ましい。このようにすることで、簡単な構成でありながら、吸入口から吸入された空気を上側ヒータの中央部分に向けて正確に吹き出すことができる。
以下、本願で開示するオーブントースターについて、具体的な実施形態を用いて説明する。
図1は、本実施形態にかかるオーブントースターの外観を示す斜視図である。
本実施形態のオーブントースターは、図1に示すように、オーブントースターの外殻を構成し内部に加熱室を有する筐体10と、筐体10の前方側に配置されて筐体10内に配置された加熱室の前面を覆う開閉可能な扉20と、扉20の下方に位置する筐体10の前面に配置された操作部30とを備えている。
なお、以下本明細書では、オーブントースターを通常の使用状態としてテーブルなどの載置台に載置し、扉に正対したユーザから見た方向に基づいてオーブントースターの前後、左右、上下それぞれの方向を定め、適宜これらの各方向を用いてオーブントースターを構成する各部材の配置について説明するものとする。具体的には、図1に示す斜視図において、図の左手前側がオーブントースターの前方、右奥側がオーブントースターの後方となる。また、図1の左右方向がオーブントースターの左右方向、図1の上方向がオーブントースターの上方向、図1の下方向がオーブントースターの下方向となる。
本実施形態のオーブントースターにおいて、筐体10の下方には加熱室内でこぼれたパン屑などを受け止めるトレー11が配置され、トレー11は、手前側に引き出して取り外すことが可能である。また、筐体10の下面には、オーブントースターをテーブルなどの載置台に載置する際の脚部12が形成されている。
扉20は、本実施形態のオーブントースターでは、上端部分に固着された把手21を手前下側に倒すことで開けることができる。扉20下方の左右両端部分は下方に延在する接続部22となっていて、接続部22の先端部分は、筐体10と扉20とを接続する図1では図示しないヒンジ機構に接続されている。また、扉20の一対の接続部分22の間の部分は切り欠かれたようになっていて、図1に示すように扉20を閉めた状態で、筐体10の前面下部に配置された操作部30が露出するようになっている。
また、扉20には、加熱室内部の被調理物の状態が把握できるように、ガラス製の窓部23が形成されている。図1では、加熱室内部の調理網40上に、トースト以外の調理メニューで用いられる深皿41が載置されている状態を観察することができる。
操作部30には、加熱時間や加熱温度を設定、調節するための複数個の操作つまみ31、並びに、ヒータの加熱状態を切り替える切り替えボタンや、各種の調理メニューに対応可能とするメニューボタンなどの複数個の操作ボタン32が配置されている。
なお、操作部30の操作つまみ31や操作ボタン32の配置個数や配置場所などは、図1に示したものに限られず、オーブントースターで調理可能な調理メニューに対応させて、適宜必要なものを必要な個数、デザインを考慮して配置されるべきものである。また、操作部30には、設定状況やオーブントースターの各種状態を表示する、液晶パネルなどの表示パネルやLEDをはじめとする各種ランプ類を配置することができる。
また、図1に示すオーブントースターの構成では、扉20下方の左右両端部分の先端部にヒンジ機構が設けられ、扉20が手前側に倒れるように開く構成のものを図示した。しかし、本実施形態にかかるオーブントースターの扉の開閉方向はこの限りではなく、扉の右側端部若しくは左側端部にヒンジ機構が形成されていて、扉20を右または左方向に回動して開閉可能とする構成を採用することができる。
さらに、本実施形態のオーブントースターとして、操作部30を筐体10の前面下方に設けて扉20が閉じられたときに前面に露出する構成を例示したが、操作部30は、扉20の下方部分や左右いずれか端部に配置することができる。また、筐体10の、正面下部以外の部分に、操作部30を設けることも可能である。
図2は、本実施形態にかかるオーブントースターの扉20を開いた状態を示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態のオーブントースターは、扉20下側の左右両端部分に形成された接続部22の先端部分と筐体10の前面下部とが、ヒンジ機構24(適宜図3を参照)で接続されている。このため、扉20は、ユーザが把手21を手前側下方に引き下ろすようにすることで、図2中矢印Aとして示す方向に回動して開く構成となっている。
本実施形態のオーブントースターは、筐体10内の加熱室50内部に配置された調理網40が、前後方向に可動式の網枠42に対して取り外し可能に載置される構成となっている。そして、オーブントースターにおける一般的な構成として、扉20の内面に形成されたフック部材25の先端部が網枠42に接続されているため、扉20を開く動作に連動して被調理物60を搭載できる調理網40が、加熱室50内部から開いた状態の扉20上側に引き出される。また、扉20を閉じる動作に連動して、被調理物60を搭載できる調理網40が、加熱室50内の所定の調理位置に収容される。
なお、図2では、被調理物60としての食パンが直接調理網40上に載置されている状態を示したが、被調理物の種類によっては、図1に示した深皿41などの部材、容器を介して調理網40上に載置されることとなる。
図3は、本実施形態のオーブントースターの内部の構成を示すための断面図である。図3は、本実施形態にかかるオーブントースターの左右方向の中央部分における断面構成を図示している。
図3に示すように、扉20が閉じている状態で、調理網40は、調理網40を載置する網枠42とともに、加熱室50内部の略中央部分に位置している。図3に示すように、調理網40上に深皿41が載置されている場合には、深皿41も加熱室50の略中央部分に位置する。
加熱室50内部に収容された状態で、調理網40の前後方向の略中央部分の上方には、上側ヒータ51が配置されている。また、本実施形態のオーブントースターは、加熱室50の調理網40の下側に第1の下側ヒータ52と第2の下側ヒータ53との2本の下側ヒータを備えた構成となっている。本実施形態のオーブントースターの上側ヒータ51としては、一例として、外径が12mm、長さが306mm、定格610Wの石英管ヒータを用いることができる。また、第1の下側ヒータ52および第2の下側ヒータ53としては、一例として、外径が12mm、長さが306mm、定格345Wの石英管ヒータを用いることができる。なお、本実施形態のオーブントースターとして用いられるヒータとしては、上記の他に600Wから700W程度のシーズヒータなど、各種のヒータを用いることができる。
本実施形態のオーブントースターでは、3つのヒータ51、52、53は、いずれもオーブントースターの左右方向に延在するように配置されている。ここで、3つのヒータ51、52、53は、それぞれのヒータの両端部が、オーブントースターの加熱室内での前後位置と上下位置とが略等しいように、すなわち、製造上の誤差などを除いて正確に水平状態を保ってかつ正確に左右方向に向くように配置されている。また、調理網40上に載置される被調理物をなるべく均一に加熱するために、図3の断面図に現れる3つのヒータ51、52、53が頂点を形成する三角形の中心部分近傍に、調理網40の前後方向の中心部分が位置するように配置されている。
加熱室50は、上面を構成する上面壁54、扉20と対向して背面を構成する背面壁55、上面壁54と対向して下面を構成する底面壁56と、上面壁54、背面壁55、底面壁56に連続して左右の側面を形成する、互いに対向した一対の側面壁57とでその周囲を囲まれて形成されている。なお、図3では、加熱室50の左側の側面壁57のみが見えている。また、加熱室50の前面の開口部分の上側は、扉20の内面で覆われている。
本実施形態のオーブントースターでは、背面壁55は、その上方側が前方側、すなわち、扉20の側に位置するように傾斜した上側背面壁55aと、その下方側が前方側である扉20の側に位置するように傾斜した下側背面壁55cと、上側背面壁55aと下側背面壁55cとの間にほぼ垂直に設けられた中央背面壁55bとで構成されている。このように、上側背面壁55aと下側背面壁55cとを傾斜させた傾斜面とすることで、上側ヒータ51、および、第1の下側ヒータ52と第2の下側ヒータ53から放射された熱を反射して、加熱室50内部のより広い領域に放射熱が行き渡るようにしている。
なお、本実施形態のオーブントースターでは、加熱室50の背面壁55の上下方向中央部分の調理網40の後方部分に、略垂直に形成した中央背面壁55bを設けることで、上側背面壁55aと下側背面壁55cとの傾斜角度の裕度を広げ、加熱室50内部での熱の反射をより良好に行わせる角度にそれぞれ設定可能としている。また、中央背面壁55bを設けることで、図3に示すように調理網40が加熱室50内に完全に収容された状態で、調理網40後方のクリアランスを確保して、調理網40上に載置される被調理物が上側背面壁55aに当たり難くすることができる。なお、本実施形態のオーブントースターにおいて、背面壁55として略垂直に配置された中央背面壁55bを設けることは必須の要件ではない。また、上側背面壁55aと下側背面壁55cとを図3に示すように傾斜させることも必須の事項ではない。このため、上側が前方に位置するように傾斜させた上側背面壁55aの下方に、略垂直な下側背面壁を配置することもでき、また、より簡易な構成としては、背面壁55を、一定傾斜を有する一つの平面、若しくは、略垂直に配置された一つの平面として形成することも可能である。
また、本実施形態のオーブントースターでは、上記のように背面壁55が上側背面壁55a、中央背面壁55b、下側背面壁55cとで構成され、特に、上側背面壁55aと下側背面壁55cとは傾斜しているために、上側背面壁55aと下側背面壁55cとは加熱室50の前方を覆う扉20の内面と面同士が互いに平行な位置関係にはない。しかし、上側背面壁55aと下側背面壁55cの主面は、いずれもオーブントースターの前方側に向かう面であることから、本明細書においては、このように異なる角度で傾斜している上側背面壁55aと下側背面壁55cとを、略垂直に設けられた中央背面壁55bと同様に、扉20に対向する面を形成していると把握することとする。
本実施形態のオーブントースターでは、加熱室50の周囲を形成する上面壁54、背面壁55、底面壁56、側面壁57を、高い熱反射特性を有するガルバリウム鋼板で構成している。なお、ガルバリウム鋼板の他にも、熱反射特性が高い各種の鋼板、例えばアルミめっきが施されたアルスター鋼板など、また、剛性が高い鋼板である亜鉛メッキ鋼板などの各種鋼板を加熱室の周囲を形成する各壁面の構成部材として用いることができる。
本実施形態のオーブントースターでは、上面壁54の上側ヒータ51の前側部分に、略三角柱状の断面を有して左右方向に延在する上面突起58が形成されている。上面突起58は、前方の扉20の窓部23を介して上側ヒータ51が見えないようにする目的を有するため、上側ヒータ51を覆い隠せる程度の高さを持って上面壁54の表面から下方側に突出して形成されている。また、上側ヒータ51の前方に、傾斜面を備えた上面突起58を設けることにより、上側ヒータ51から放射される熱を反射して調理網上に載置される被調理物側に向かわせることができる。また、上面突起58は、後述する上側ヒータ51に向けて吹き出された空気の流れを、調理網40の前方部分に向かわせる気流ガイド部材としての役割を果たすことができる。
加熱室50の下側かつ前方側の部分には、筐体10の下側に配置された操作部30を加熱室50から分離する操作部隔離板59が形成されている。本実施形態のオーブントースターでは、操作部30の操作ダイアル31などに接続されたスイッチ回路や、ヒータのオン/オフ制御などのオーブントースター全体を制御するための制御回路などが搭載された回路基板33を、操作部30の背面側の回路基板配置領域に配置している。操作部隔離板59は、加熱室50内の熱、特に最も近い位置に配置されている第1の下側ヒータ52からの熱が、回路基板配置領域に配置された回路基板33上のマイコンなどの電気回路部品に悪影響を与えることを回避できるように、ガルバリウム鋼板、アルスター鋼板などの熱反射特性が高い部材で形成されることが好ましい。
また、本実施形態のオーブントースターでは、扉20の背面に湾曲したカバー部材26が配置されている。カバー部材26は、図2に示したように扉20が開かれた状態では、扉の回転に伴って前方側に引き出されて操作部30の上方をカバーし、調理網40上に載置された被調理物などがこぼれて操作部30を汚すことを防止する構成とされている。
背面壁55を構成する上側背面壁55aの背面側、すなわち、扉20の側である加熱室50内側とは反対側の面には、上側背面壁55aによって加熱室50の内部と隔てられて配置された送風ユニット70が配置されている。送風ユニット70は、その両端部が加熱室の内部と空間的に繋がる通風経路71と、通風経路71内に配置された回転翼74および回転翼74を回転させる駆動部75とからなる送風ファン76とによって構成されている。
通風経路71は、上側背面壁55aに形成された開口である吸入口72と、同じく上側背面壁55aに形成された開口である吹き出し口73とを両端として、吸入口72と吹き出し口73とで加熱室50の内部空間と接続された経路である。通風経路71は、上側背面壁55aの背面側に、上側背面壁55aの傾斜に沿った方向に延在するように配置されている。
通風経路71には、送風ファン76の回転翼74が配置されていて、駆動部75が回転翼74を回転動作させることで、加熱室50内部の空気が吸入口72から通風経路71内に吸い込まれ、通風経路71内に吸い込まれた空気が吹き出し口73から加熱室50内部に吹き出される。送風ファン76の回転翼74は、図3に示すように、通風経路71内で上側背面壁55aの傾斜方向に沿うように傾斜して配置されている。このため、回転翼74の回転軸74aが上側背面壁55aの傾斜方向に垂直に配置され、回転翼74を回転動作させる駆動部75も上側背面壁55aの傾斜方向に平行に配置されている。
次に、図4および図5を用いて、本実施形態のオーブントースターの送風ユニットの構成について説明する。
図4は、背面側に送風ユニット70が配置された背面壁55の構成を示す、本実施形態にかかるオーブントースターの構成を示す要部分解斜視図である。図4は、背面ユニット70がその背面に配置された上側背面壁55aの、加熱室50内部側の構成がわかりやすいように、本実施形態のオーブントースターを前後方向に延在する切断面で切断した状態を、加熱室50の前方斜め右側下方から見た状態を示している。なお、図4に示した断面構成は、図3に示したオーブントースターの断面図における断面構成と同じ部分の断面ではなく、図3に示した断面構成の切断位置よりも少し右側、つまり、図1、図2における右手前側に位置する切断面で切断した状態を示している。
また、図5は、上側背面壁55aの背面に配置された送風ユニット70の通風経路71と送風ファン76の構成を示す、本実施形態にかかるオーブントースターの要部分解斜視図である。図5は、通風経路71と送風ファン76の形状がわかりやすいように、本実施形態のオーブントースターを前後方向に延在する切断面で切断した状態を、加熱室50の後方斜め右側上方から見た状態を示している。なお、図5に示した断面構成は、図3と同様に、オーブントースターの左右方向中央部分における切断面で切断した状態を示している。
図4および図5に示すように、本実施形態のオーブントースターは、加熱室50の後方側に扉20と対向して位置する背面壁55のうちの、上方がより前方側に位置するように傾斜した傾斜面を構成する上側背面壁55a部分に、吸入口72と吹き出し口73とが形成されていて、加熱室50内部の空間と背面壁55の背面側に配置された送風ユニット70の通風通路71とが空間的に接続されている。
本実施形態のオーブントースターでは、取り扱いが容易な構成で、かつ、より大きな風量が得られるように、多翼回転体である回転翼74と、回転翼74を回転動作させる駆動部75とにより構成される送風ファン76が、通風経路71とともに一体となってユニット化されたシロッコファンを用いている。このシロッコファンでは、多翼回転体である回転翼74の中心軸74a部分に形成される吸入位置と、多翼回転体である回転翼74の外周を結んで形成される円の接線方向に配置される吹き出し位置とが通風経路71の延在方向に平行な直線上には位置せずに、左右方向にずれている。
また、本実施形態のオーブントースターでは、吸入口72から通風経路71へ吸い込まれた、加熱室50内部の被調理物近傍の比較的温度の低い空気が、吹き出し口73から上側ヒータ51の中央部分に向かって吹き出されるように構成される。このため、吸入口72を上側背面壁55aの下側端部近傍部分に形成し、吹き出し口73を上側背面壁55aの吸入口72よりも上側に形成している。なお、上記の通り、本実施形態のオーブントースターで用いられるシロッコファンは、吸入位置と吹き出し位置とが左右方向にずれているため、上側ヒータ51の中央部分に正対するように上側背面壁75aの左右方向略中央部分に配置された吹き出し口73に対して、吸入口72は、上側背面壁55aにおいて加熱室50の内面側から見て少し左側にずれた位置に形成されている。
本実施形態のオーブントースターでは、通風経路71の上端部近傍部分である吹き出し口73の背面側部分に、通風経路71の厚みを低減する規制部材77が配置され、また、通風経路71の最上端部分に、上側ヒータ51が配置されている方向に向かう水平面78が形成されている。通風経路71の上端部近傍に形成される吹き出し口73を上側ヒータ51と略同じ高さに配置し、通風経路71の最上端部を上側ヒータ51に向かって形成された水平面78とすることで、通風経路71から吹き出された空気が上側ヒータ51に向かうように規制することができる。また、通風経路71内の上端部近傍部分にその厚さを低減する規制部材77を形成して、吹き出し口73近傍での通風経路71内の空気の流れを制御することで、送風ファン76によって通風経路71の上方に向かって送り出された空気がその進行方向を遮るように形成された水平面78にぶつかって不所望な渦が生じ、通風経路71を通過する空気の抵抗が大きくなって吹き出し口73から吹き出す風量が低下することを防止している。さらに、図示は省略するが、通風経路71の内部、特に吹き出し口73の近傍部分に風向を制御可能な整流用部材を配置することにより、吹き出し口73から吹き出される空気の向きを調整することも可能である。
なお、本実施形態にかかるオーブントースターでは、上側背面壁55aに形成された吸入口72と吹き出し口73とを、いずれも小さな円形開口の集合体として構成した例を示したが、吸入口72と吹き出し口73の開口形状は、例示した小さな円形開口の集合体に限られるものではない。例えば、垂直方向または水平方向に細長く形成された複数のスリットを配置して吸入口72、吹き出し口73を形成することができる。また、送風ファン76の空気吸入部の平面形状や、通風通路71の吹き出し口73近傍の平面形状に合わせた大きな開口を設け、必要に応じてこの開口を所定の間隔の桟で覆う形状とすることもできる。
ここで、吸入口72と吹き出し口73の開口形状は、空気抵抗が小さくなるような形状となるように工夫して、吸入口72と吹き出し口73とを通過する空気の流れを遮らないように配慮することが重要となる。特に、吹き出し口73は、吹き出された空気が遮られる部分をなるべく減らすことで、上側ヒータ51に当たる空気の流れを形成できる形状に工夫することが好ましい。
図6は、送風ユニット70の、特に送風ファン76の配置方向による、オーブントースターの筐体10の後方への突出度合いの違いを説明する図である。
本実施形態のオーブントースターでは、上方がより前方側に位置するように傾斜した傾斜面を構成する上側背面壁55aに吸入口72と吹き出し口73とが形成されている。そして、上述のように、上側背面壁55aの背面側に配置された送風ユニット70は、通風経路71とその内部に配置される送風ファン76の回転翼74,さらに、回転軸74aによって回転翼74を回転駆動させる駆動部75が、いずれも上側背面壁55aの傾斜に対して平行に、すなわち、斜めに配置されている。このように構成することで、図6(a)に示す本実施形態における送風ユニット70を覆う筐体10のカバー部材13は、筐体10の上面後端部からの後方への突出量D1を約75mmとすることができる。
一方、図6(b)に示すように、通風経路71’に配置される送風ファン76’を、回転翼74’がプロペラ状の、従来のコンベクションタイプのオーブントースターで用いられていたようなプロペラファンとすると、プロペラの前方に向かって風が送られるプロペラファンの特性上、回転翼74’を略垂直となるように配置する必要がある。この場合には、通風経路71’の形状が不所望に大きくなるとともに、駆動部75’を含めた送風ファンユニット70’全体の後方への突出量が大きくなる。図6(b)に示した構成において、例えば図6(a)として示したシロッコファンと同じ径である直径65mmのプロペラファンを用いた場合には、送風ユニット70’を覆う筐体10のカバー部材13’の、筐体10の上面後端部からの後方への突出量D2が約95mmとなる。
このように、本実施形態にかかるオーブントースターでは、吸入口と吹き出し口とを、上方が前方に位置するように傾斜した傾斜面である背面壁に形成し、かつ、通風経路と送風ファンとをこの傾斜面に対して平行に配置することで、筐体の上面後端部からの後方への突出量を約20mm(D2−D1)短くすることができる。この結果、オーブントースターの筐体が後方側に大きく突出することを効果的に回避し、コンパクトなオーブントースターを実現することができる。さらに、高温に曝されると故障しやすくなる送風ファン76を回転駆動させる駆動部75のモータ巻線部を、加熱室内部の温度の影響を受けにくい筐体奥側かつ下方側の比較的温度が低い位置に配置することが可能となり、安全性を低下させずにオーブントースターのコンパクト化を図ることができる。
次に、本実施形態のオーブントースターにおける、被調理物の焼きムラ低減の作用効果について図7から図9を用いて説明する。
図7は、本実施形態のオーブントースターにおいて、送風ファンを動作させた場合とさせていない場合との、加熱室内部の空気の流れと上側ヒータからの放射熱の状態を説明する模式図である。図7(a)が送風ファンを動作させている状態を、図7(b)が送風ファンを動作させていない状態を示す。なお、図7(a)および図7(b)は、本実施形態のオーブントースターの断面構成を説明した図3に相当する部分を模式的に表した図面である。
図7(a)に示すように、送風ファン76が動作している状態では、加熱室50内における被調理物60近傍の比較的温度の低い空気が矢印81に示すように吸入口72から通風経路71内に吸入され、通風経路71内を矢印82のように通過して、吹き出し口73から上側ヒータ51に向かって矢印83のように吹き出される。
矢印83として図示した、通風経路71から吹き出された空気の温度は比較的低いものであるため、この吹き出された空気が当たることで上側ヒータ51の放射熱が奪われる。同時に、上側ヒータ51に当たった後の矢印84で示す空気は、上側ヒータ51の放射熱の影響を受けて温度が上昇している。図7(a)に示すように、上側ヒータ51からの放射熱が奪われたため、上側ヒータ51から被調理物60に直接放射される矢印85に示す熱量は小さくなる。さらに、上側ヒータに51に当たった後の温度の高い空気は、矢印84に示すように上面壁54の上側ヒータ51の前側部分に設けられた上面突起58によって下方向に向きが変えられ、扉20の内側を経て加熱室50内部に広がることで、加熱室50内部全体の温度が上昇する。
一方、図7(b)に示す、送風ファン76が動作していない場合では、上側ヒータ51に吹き付けられる温度の低い空気の流れが存在しないため、上側ヒータ51本来の大きな放射熱が矢印85として示すようにそのまま被調理物60に放射される。また、図7(a)に示したような、加熱室50内を循環する温度の高い空気の流れ84が存在しないため、加熱室50の全体を暖める熱は、加熱室を構成する壁部材の表面で反射された熱のみとなる。このため、被調理物60の特に上面においては、上側ヒータ51との直線距離の差がほとんどそのまま放射される熱量の差となる。
図8は、本実施形態のオーブントースターにおいて、送風ファンを動作させた場合と送風ファンを動作させない場合とにおける、被調理物の焼きムラの状態を示す図である。
図8(a)が、図7(a)に示したように、送風ファンを動作させた場合、図8(b)が図7(b)に示すように、送風ファンを動作させなかった場合での、それぞれ実際に調理したスポンジケーキの表面の状態を示している。
実験は、厚さ5〜8cm、直径20cmのスポンジケーキを用いて、610Wの上側ヒータと345Wの2つの下側ヒータとを用いて、約30分間焼くことで行った。
この結果、送風ファンを動作させなかった図8(b)の場合には、上側ヒータの配置位置に対向するケーキの中央部分が、左右方向に直線状に黒く焦げているのに対し、上側ヒータから遠い位置にあるケーキ表面の図中上下端の部分はまだ十分に焼けておらず、被調理物であるケーキの上面に大きな焼きムラが生じた。一方、送風ファンを動作させた図8(a)の場合には、ケーキ上面の全体が好ましい状態に焼き上がっており、目立った焼きムラは確認されなかった。
このように、本実施形態のオーブントースターを用いることで、被調理物の焼きムラを効果的に低減できることが確認できた。
また、本実施形態のオーブントースターでは、上側ヒータ51からの直接の放射熱を低減し、かつ、加熱室内部全体の温度を上昇させることができる。このため、従来のオーブントースターでは、120℃であったヒータの設定温度を180℃と高く設定できた。また、従来は40分必要としていた調理時間も約30分と短縮することができた。さらに、従来のオーブントースターでは、加熱途中でスポンジケーキの前後を回転させる必要があったが、本実施形態のオーブントースターでは、このような調理途中でスポンジケーキを回転させる必要が無くなった。
図9は、本実施形態のオーブントースターにおいて、送風ファンを動作させた場合と送風ファンを動作させない場合とにおける、被調理物の上面位置と下面位置とに相当する部分の温度変化を示す図である。
図9では、調理網上に実際に被調理物を載置する代わりに、直径約20cm、厚さ約7cmのロックウール化粧吸音板を載置し、これを模擬ケーキとしてスポンジケーキに見立てて、上面の中心部と下面の中心部との加熱開始からの温度変化を測定したデータである。
図9(a)が、図7(a)に示したように、送風ファンを動作させた場合、図9(b)が図7(b)に示すように、送風ファンを動作させなかった場合での、それぞれの測定点での温度変化を示している。なお、それぞれの図面において、実線が被調理物に見立てた模擬ケーキの上面中心部の温度、点線が被調理物に見立てた模擬ケーキの下面中心部の温度を示している。
送風ファンを動作させた図9(a)の場合には、加熱開始から約5分後までの立ち上がりの温度にこそ若干の差異が生じているものの、その後は図中実線aで示す被調理物の上面中心部の温度と、図中点線bで示す被調理物の下面中心部の温度とがほぼ同じ温度となっている。一方、送風ファンを動作させていない図9(b)の場合には、加熱開始から約10分が経過してそれぞれの温度がほぼ安定した状態においても、図中実線cで示す被調理物の上面中心部の温度と、図中点線dで示す被調理物の下面中心部の温度との間には約100℃の温度差が生じている。
なお図示は省略するが、送風ファンを動作させた場合には、被調理物の左右方向の側端部における上下面での温度差、すなわち上側ヒータの左右両端の部分に対向する上面側の部分と、その部分に対応する下面側の部分との被調理物の温度差が、送風ファンを動作させない場合の温度差よりも低減されることが確認できた。
このように、本実施形態のオーブントースターでは、加熱室内の比較的温度の低い空気を上側ヒータに吹き付けることで上側ヒータからの放射熱を奪い、上側ヒータから直接被調理物に放射される熱量を低減することができる。この結果、上側ヒータと対向する被調理物の上面における、上側ヒータとの距離の差により生じる放射熱量の差異を低減することができる。また同時に、本実施形態のオーブントースターでは、上側ヒータから奪った熱により高い温度となった空気を加熱室内で循環させることができる。このため、被調理物の上面のみならず、加熱室内部の全体の温度分布をより均一な状態に近づける方向に作用して、被調理物に生じる焼きムラを効果的に低減することができる。
なお、背面壁に形成される吹き出し口の横幅、すなわち、左右方向の長さは、背面壁の背面に配置される通風ユニットの形状や送風可能な風量などにより、好ましい範囲が自ずと定まり、吹き出し口から吹き出される空気の流れの幅が制限を受ける。一方、オーブントースターに用いられるヒータは、一般的にその中心部分の温度が端部の温度よりも高くなる。このため、本実施形態のオーブントースターでは、上側ヒータの左右方向の長さ全体に空気を吹き付けることができる場合を含め、吹き出し口から吹き出される空気の流れを少なくとも上側ヒータの中央部分には当たるようにすることで、焼きムラ低減の効果が高くなるようにすることができる。
次に、上側ヒータの熱を奪って温度が上昇した空気の流れを加熱室内部のより広い領域に拡散できる構成について説明する。
図7(a)を用いて説明したように、本実施形態のオーブントースターでは、上側ヒータ51に吹き付けられた空気は、上側ヒータ51の熱を奪って温度が高い状態となる。この温度が高い空気を、加熱室50内のより広い領域に拡散させることができれば、加熱室50内部の温度をより均一な状態で上昇させることができ、被調理物60の焼きムラをさらに低減できることが期待できる。図10は、そのような本実施形態のオーブントースターの変形例における、加熱室内部の空気の流れを説明する模式図である。
図10は、変形例のオーブントースターの加熱室内部において、下方から上面壁54を見上げた状態を模式的に示している。図10において、図中下側が、扉20が配置されている加熱室の前方側である。図10に示す変形例は、加熱室50の上面壁54において上側ヒータ51の前側部分に設けられた上面突起58の、上側ヒータ51と対向する側の傾斜面に、略「ハ」の字状の誘導リブ86を設けたものである。
吹き出し口73から吹き出された矢印83として示す空気は、上側ヒータ51の中央部分に吹き付けられて、その温度が上昇する。温度が上昇した空気は、図7(a)に示したように、上面突起58の傾斜面に沿って扉20の内側に沿うように加熱室50の下方へと回り込むが、これだけでは、加熱室50内部での左右方向における空気の拡散はあまり生じていない。そこで、図10に示すように、上側ヒータ51側が狭く、上側ヒータ51から離れるにつれてその間隔が広くなる形状の誘導リブ86を、上面突起58の上側ヒータ51に面した側の傾斜面に形成することで、図10において矢印87として示すような加熱室50内で左右方向に広がる空気の流れが形成することができ、温度の高い空気を加熱室内部のより広い領域に拡散させることができる。この結果、加熱室内部の温度を、より均一な状態に近づける作用が生じる。
図10に示した模式図のように、上面突起58の傾斜面に誘導リブ86を設ける構成の他にも、例えば、上面突起58の形状自体を工夫することで、上側ヒータ51から熱を奪った温度の高い空気を加熱室内の全体に行き渡らせることができる。ただし、この場合には、上面突起86が備える、上面ヒータか51から前方側に放射された熱を被調理物側に反射させる反射面としての効果がなるべく損なわれない構成とすることが重要となる。
上記本実施形態では、通風経路71からの空気の吹き出し口73を、上側ヒータ51と略同じ高さに配置し、かつ、通風経路71の上端部近傍に通風経路71の厚みを低減する規制部材77を配置し、さらに通風経路71の最上端部分に水平面78を形成することで、通風経路71から吹き出される空気が効果的に上側ヒータ51に吹き付けられるようにした構成を説明した。しかし、通風経路71から吹き出される空気を、上側ヒータ51に吹き付ける構成は、上記実施形態で説明したものに限られない。
図11は、通風経路から加熱室内に吹き出された空気を、効果的に上側ヒータに吹き付ける構成の変形例を示す要部拡大断面図である。なお、図11では、通風経路から吹き出した空気の流れを説明するために十分な構成のみを図示し、他の構成は適宜省略して示している。
図11(a)は、通風経路から加熱室内に吹き出された空気を、上側ヒータに吹き付ける第1の変形例の構成を示している。図11(a)に示す構成では、通風経路91の厚みを、吹き出し口92に近づくにつれて漸次減少させることで、通風経路91内における空気の流れを、矢印93として示すように上側背面壁55aの裏面に近づくように制御する。同時に、吹き出し口92の開口も上側背面壁55aの厚さ方向に対して斜めに形成することで、通風経路91内から吹き出し口93を通って出てくる空気の流れを斜め上方へと向けている。通風経路91と吹き出し口92とをこのような構成とすることで、吹き出し口92から吹き出された空気を、矢印94として示すように上側ヒータ51の方向に向けることができる。
図11(b)は、通風経路から加熱室内に吹き出された空気を上側ヒータに吹き付ける第2の変形例の構成を示している。図11(b)に示す構成では、通風経路95の全体形状と吹き出し口96の形状は、上記実施形態に示した通風経路71および吹き出し口73の形状と略同じとしているが、吹き出し口96から吹き出された空気を上方へ向けるガイドフィン97を吹き出し口96の加熱室50側に配置している。このようにすることで、通風経路95内部での空気の移動方向98にかかわらず、吹き出し口96から吹き出された空気を、矢印99として示すように斜め上方に位置する上側ヒータ51へと向かわせることができる。
このように、通風経路から吹き出し口を通過するまでの空気の流れの向きを制御する構成や、吹き出し口の加熱室内部側に吹き出された空気の流れを規制する部材を配置する構成によって、吹き出し口の高さが上側ヒータの高さに一致していない場合でも、吹き出し口から吹き出された空気を上側ヒータに当てることができる。このため、背面壁の背面側に形成される通風経路や送風ファンの配置位置についての設計裕度がひろがり、背面壁背面側のスペースに他の部材を配置する必要がある場合には容易に配置することができるようになり、オーブントースター全体の更なるコンパクト化を行う場合などに有用である。
また、図11(b)で開示したような、吹き出し口に空気の流れを規制するガイドフィンを配置する構成を、図3に示した本実施形態のオーブントースターの構成と組み合わせ、例えば、吹き出し口53から上側ヒータ51へと向かう水平方向のガイドフィンを配置することで、吹き出し口53から吹き出された空気を、一層無駄なく上側ヒータ51に当てることができる。
なお、本開示のオーブントースターにおいて、吹き出し口から吹き出された空気を上側ヒータの中央部分に当てるとは、吹き出し口から吹き出された空気の流れの中心部分が上側ヒータの中央部分に向かっていること、言い換えると、中心的な空気の流れの延在方向に上側ヒータの中央部分が配置されている状態を意味する。したがって、吹き出し口から吹き出された空気を上側ヒータの中央部分に当てるという表現は、吹き出された空気の全てが上側ヒータに当たることを意味するものではない。
図12は、本実施形態のオーブントースターにおいて、ヒータのオン/オフ制御と、送風ファンの動作制御とのタイミングの一例を示すタイミングチャートである。図12は、特に被調理物を十分に焼きたい場合、または、被調理物の表面に積極的に焼き色を付けたい場合の制御例を示すものである。
図12において、上段がオーブンヒーターの加熱室内に配置されたサーミスタなどの温度センサにより検出された加熱室内温度を示す。また、中段が送風ファンのオン/オフのタイミングを示し、下段がヒータのオン/オフのタイミングを示している。
図12に示すように、時間t0からヒータをオンにして加熱を開始する。このとき同時に送風ファンを動作させる。このようにすることで、被調理物の全体がまんべんなく加熱される。
次に、時間t1において、加熱室内の温度センサが所定の設定温度H2に到達したことを検出すると、送風ファンの動作を止める。このとき、ヒータはオンのままとする。
その後、加熱室内の温度が、温度H2よりも高い所定の設定温度H3に達したことを温度センサが検出した時間t2に、ヒータをオフとする。このように、加熱室内の温度が所定の温度範囲(H2からH3)である間に限り、ヒータはオンのまま送風ファンをオフとすることで、上側ヒータの放射熱を積極的に被調理物に当てて、十分な焼きを行ったり被調理物の表面に焼き目を付けたりすることができる。
時間t2でヒータをオフした後も、オーバーシュートによって、加熱室内の温度は一旦温度H3よりも高い温度まで上昇した後に低下する。加熱室内の温度が、温度H2よりも低い所定の設定温度H1となった時間t3から、再びヒータをオンし、同時に送風ファンも動作させる。
加熱室内の温度が、再び所定の温度H2まで上昇した時間t4から、温度H3に到達する時間t5の間まで、再びヒータはオンであるが送風ファンは動作していない状態とする。この時間t4からt5までの間にも、上側ヒータの放射熱が積極的に被調理物に当たる時間となるため、被調理物の十分な焼きを行ったり表面に焼き目を付けたりすることができる。
以降、加熱室内の温度がヒータオフの温度であるH3に到達すると、ヒータをオフし(t5)、加熱室内の温度が十分に下がりH1となるとヒータと送風ファンとをオンし(t6)、加熱室内の温度がH2からH3の間にある状態(時間刻t7からt8の間)では、ヒータはオンの状態で送風ファンをオフとする制御を繰り返す。
本実施形態のオーブントースターでは、上側ヒータがオンであって送風ファンが動作している状態では、上側ヒータから被調理物に放射される熱を低減し加熱室内部全体をより均一な温度とすることができる。一方、上側ヒータがオンであって送風ファンが動作していない状態では、被調理物の上面、特に上側ヒータの直下部分が他の部分よりも強く加熱される。したがって、このように被調理物の全体をより均一に加熱する状態と、被調理物の一部のみを積極的に加熱する状態とを制御することで、被調理物に焼きムラを生じさせずに加熱する場合と、十分な焼きを行ったり積極的に表面に焼き目を入れたりする場合を選択でき、調理方法のバリエーションを広げることができる。
なお、図12に示す制御例において、上側ヒータと送風ファンとの動作を制御する温度センサの設定温度としては、一例としてH1を92℃、H2を95℃、H3を96℃とすることができる。また、図12に示す制御例において、送風ファンの動作を制御する方法として送風ファンのオン/オフを切り替えて制御する例を示したが、送風ファンの回転数を調整できる場合には、送風ファンを用いて強い空気の流れを作る場合と、弱い空気の流れを作る場合とを組み合わせて、被調理物の加熱状態を制御することもできる。
以上説明したように、本開示にかかるオーブントースターは、扉と対向する加熱室の背面壁に設けられた吸入口から吸入された加熱室内の空気を、背面壁の吸入口よりも上方に位置する吹き出し口から吹き出し、吹き出された空気を上側ヒータの中央部分に当てることで、被調理部の焼きムラを低減することができる。
なお、図3を用いて説明した上記実施形態にかかるオーブントースターは、加熱室内に1本の上側ヒータと2本の下側ヒータとを備えた構成であるが、下側ヒータは、2本に限らず、1本若しくは3本以上配置する構成も可能である。また、下側ヒータを備えていないオーブントースターであっても、上記本開示の技術を適用することができる。
また、上側ヒータが2本以上ある構成も考えられるが、この場合、加熱室の背面壁に形成された吹き出し口から吹き出される空気が、少なくとも被調理物に上方からより多い熱を放射するメインとなる上側ヒータに吹き付けられることが好ましい。また、例えば上側ヒータが2本配置されていて、いずれも被調理物に対して同じ熱量を放射するものである場合には、通風経路の吹き出し口近傍の形状や、吹き出し口自身の形状、さらには、吹き出し口にガイドフィンを付ける構成などを用いることで、両方のヒータそれぞれの中央部分に吹き出し口から吹き出された空気が当たるような構成を考えることが好ましい。なお、吹き出し口から吹き出された空気は、少しずつ拡散しながら加熱室内を進んでいくため、2本の上側ヒータの配置位置の中間に位置する加熱室の上面壁部分にむけて吹き出し口から空気を吹き出すようにすることで、2本の上側ヒータに同時に一定量の空気が吹き付けられることを期待することもできる。なお、上側ヒータが3本以上の構成である場合も、上記説明した上側ヒータが2本の構成と同じ考え方に準じて、吹き出し口からの空気の吹き出しを設計することができる。
また、上記実施形態では、背面壁に形成された吹き出し口が一つの場合のみを例示したが、背面壁に2つの吹き出し口を形成することもできる。この場合、2つの吹き出し口を背面壁の横方向に並べて配置することができ、結果として、上方ヒータの中央部分を含むより広い範囲に比較的温度の低い空気を吹き付けることができる。
吹き出し口を左右方向に2つ配置する場合には、吹き出し口から吹き出される空気の流れが、いずれも上側ヒータの中央に向かって集まるように吹き出される構成とすることができる。また、2つの吹き出し口から吹き出される空気の流れを平行なまま上側ヒータに向かわせることができ、この場合には、特に上側ヒータの中央部分を含む広い範囲の温度を下げて、被調理物に直接放射される熱量を広い範囲で低減することができる。また、2つの吹き出し口から吹き出された空気が、吹き出し口と上側ヒータとの間の部分で互いにぶつかるような方向で吹き出されることで、やはり上側ヒータの中央部分を含む比較的広い範囲の温度を低下させ、被調理物に直接放射される熱量を広い範囲で低減することができる。
なお、吹き出し口を横方向に3つ以上設ける場合も、上述した2つの場合と同様に、吹き出される空気の流れの方向を適宜選択することができる。また、複数の吹き出し口を横方向に並べる以外に、少なくとも一部の吹き出し口を背面壁の上下方向にずらして配置することもできる。
これらの吹き出し口を複数設ける場合において、通風経路と送風ファンとが一つの構成まま吹き出し口のみを複数設けることができ、通風経路と送風ファンとをいずれも複数個設けた構成とすることもできる。さらに、吸入口の個数も、加熱室内の温度分布と吹き出し口から吹き出される空気の量に応じて、適宜2個以上とすることができる。
このように、本開示にかかるオーブントースターは、上側ヒータの中央部分に比較的低い温度の空気を吹き付けて、上側ヒータの熱を奪って、被調理物に直接放射される熱量を低減すると同時に加熱室内全体の温度上昇に振り向けるという、新しい技術的思想に基づくものである。このため、本開示にかかるオーブントースターは、上側ヒータと被調理物との間の空気に対して加熱室内で循環する流れを生じさせることで、加熱室内の空気における温度分布を均一化しようとする従来のコンベクションタイプのオーブントースターと比較して、被調理物の焼きムラを低減する高い効果を得ることができる。
なお、上記実施形態では、送風ファンは上側ヒータがオンになっている時間内で動作する例のみを示したが、例えば、調理終了直後に上側ヒータがオフされ扉が開放された状態において、送風ファンを動作するように制御することができる。このようにすることで、調理が行われたために高温となっている加熱室内の空気を扉から加熱室外に押し出すことができ、加熱室内部の温度を迅速に低くすることができる。この結果、例えば連続して調理を行う場合に、初期状態の加熱室内の温度が高いために調理が開始できないなどの不都合を回避することができる。
このような場合に対応できるように、扉が開いているか閉じているかをセンサによって検出して、自動的に送風ファンのオン/オフを制御することもできる。また、ユーザが制御ボタンを操作することで、強制的に送風ファンが動作する状態に移行できるようにすることも好ましい。
さらに、扉が開いていない場合でも加熱室内の高い温度の空気を外に放出することができるように、筐体の外側に別の吹き出し口を設け、通風経路に切替弁を配置して空気の吹き出し口を選択可能として、加熱調理時と冷却時との空気の流れを別々に制御することができる。
また、加熱室内の温度を検出する温度センサは、調理の邪魔にならないように加熱室の後方側奥の上端部に配置されることが多いが、この温度センサが配置されている領域は加熱室内部での空気の流れが生じにくく、いわゆる熱がこもりやすい部分である。このため、調理終了時や加熱室内の温度を低下させるように制御した場合において、温度センサが配置されている部分に熱がこもり正確な加熱室内温度が検出できない場合には、温度センサの配置部分に向けて空気が吹き出されるような構成としてもよい。
このように温度センサの配置位置に空気を吹き出させる場合には、上側ヒータの中央部分に向かう通常の空気の流れを変更する必要がある場合が生じる。このような場合には、吹き出された空気が温度センサに向かう位置に更なる吹き出し口を形成するとともに、通風経路内に、上側ヒータに向かう空気を吹き出す吹き出し口と温度センサに向かう空気を吹き出す吹き出し口とを切り替える、切替弁を配置すればよい。
また上記実施形態では、加熱室内部の空気を吸入する吸入口が、被調理物が配置されている位置に近い上側背面壁に設けられる例を説明した。吸入口の配置位置としては、上記例示した背面壁に限られず、例えば、オーブントースターの動作全体を制御する制御基板などが配置された回路基板配置領域近傍に吸入口を設け、さらに、その近傍に外部の空気を取り入れることができる外気取り入れ口を設けることができる。この場合には、吸入口から通風経路内に空気を取り入れることで、同時により低温の外気が取り込まれるため、回路基板配置領域の温度を下げることができる。
図3に示したように、本実施形態のオーブントースターは下側ヒータを2本備えた構成であるために、操作部の背面に形成された回路基板配置領域と第1の下側ヒータ52との距離が十分に確保できない。回路基板配置領域の温度が不所望に上昇して電子回路部品に誤動作などの悪影響が生じることを回避するため、第1の下側ヒータ52と制御部との距離を少しでも確保することができるように、本実施形態のオーブントースターでは、図3に示したように第1の下側ヒータ52を加熱室50内の後方側に寄せて配置している。このため、第1の下側ヒータ52と第2の下側ヒータ53との間隔が狭くなるとともに、被調理物の配置位置の中心に対して、下方からのヒータが対称な位置に配置されていないという不都合が生じる。したがって、上述のように通風経路の入口である吸入口を回路基板配置領域に設けて回路基板の不所望な温度上昇を抑える構成とすることは、オーブントースターの安定的な動作を確保するという観点で好ましい。
なお、加熱室の背面壁に設けられた通風経路の入り口である吸入口を、加熱室の前面に位置する回路基板配置領域に設けると、吸入口から吹き出し口までの通風経路の長さがとても長くなってしまい、送風ファンに加わる負荷抵抗が大きくなるおそれがある。このため、回路基板配置領域の近傍のみに吸入口を設ける構成とするよりは、主たる吸入口を背面壁に設けるとともに、回路基板配置領域の近傍に第2の吸入口を設け、これらをダクトで接続する構成を採用することが好ましい。この場合、第2の吸入口からの空気の吸入量は小さくなるが、吸入量の小さな第2の吸入口を設けただけでも回路基板配置領域に空気の流れが形成できることが期待できるため、上記した空気取り入れ口などの回路基板配置領域の温度をより低く保つ構成とも組み合わせて、回路基板配置領域の温度を低く保つことが可能となる。また、この場合において、通風経路の一部を分岐して、吹き出し口を回路基板配置領域の近傍にも設けて、回路基板配置領域での空気の流れを確実に引き起こして温度上昇を抑える構成とすることも可能である。
以上説明したように、本開示のオーブントースターでは、加熱室内の空気を吸入して上側ヒータの中央部分に吹き出す通風経路と送風ファンとからなる通風ユニットを、加熱室内部の温度分布を均一化する以外の目的にも兼用、または、選択的に転用することができる。この結果、本開示のオーブントースターでは、被調理物の焼きムラ低減という課題の解決に加えて、オーブントースターが備えるさまざまな他の課題の解決をも合わせて実現することが可能となる。