本開示のオーブントースターは、加熱室と、前記加熱室の前面を覆う開閉可能な扉と、前記加熱室内に配置された被調理物が載置される調理網と、前記加熱室内の前記調理網の上方に配置された上側ヒータと、前記加熱室内の前記調理網の下方に配置された下側ヒータと、前記加熱室の壁面の外側に配置され、前記加熱室の壁面に形成された吸入口から吸入した前記加熱室内の空気を前記加熱室の壁面に形成された吹き出し口から前記加熱室内に吹き出す送風ユニットとを備え、前記吹き出し口として、前記加熱室の壁面における前記調理網の配置位置よりも上方部分に形成された上部吹き出し口と、前記加熱室の壁面における前記調理網の配置位置よりも下方部分に形成された下部吹き出し口とを備えている。
本開示のオーブントースターは、上記構成を備えることで、加熱室内において、調理網の配置位置よりも上側の部分と調理網の配置位置よりも下側の部分との両方の部分で、それぞれ空気の循環を生じさせることができる。このため、調理網上に載置された被調理物の上側面と下側面との両面における焼きムラを低減することができるとともに、調理網上に多くの被調理物が載置されて、加熱室内が調理網の上側の空間と下側の空間とに分離されてしまった場合でも空気の循環を確保でき、焼きムラの低減や効率のよい加熱調理を実現することができる。
上記本開示にかかるオーブントースターにおいて、前記吸入口が、前記加熱室の壁面において、前記調理網の配置位置に相当する高さ部分に形成されていることが好ましい。このようにすることで、上部吹き出し口と下部吹き出し口とから吹き出された空気が、調理網上を通って吸入口から吸入されるため、加熱室内における、調理網の配置位置の上側の空間と下側の空間とにおいてより良好に空気を循環させることができる。
また、前記送風ユニットが前記扉と対向する前記加熱室の背面壁の背面側に配置され、前記吸入口、前記上部吹き出し口、および、前記下部吹き出し口がいずれも前記背面壁に形成されていることが好ましい。このようにすることで、通常加熱室内で左右方向に配置されている加熱ヒータによって効果的に循環する空気を暖めることができ、さらに、暖められた空気を比較的低温となりやすい扉の内面に到達させて加熱室内の温度の均一性を向上させることができる。
さらに、前記上部吹き出し口は、前記加熱室の上方側を向いた面に形成されていることが、また、前記下部吹き出し口は、前記加熱室の下方側を向いた面に形成されていることが好ましい。このようにすることで、加熱室の上側の空間と下側の空間において、より大きな空気の循環を行わせることができるので、それぞれの空間における温度の均一化を図ることができる。
さらにまた、前記送風ユニットは、送風ファンとしてのシロッコファンを備え、前記加熱室の壁面の外側に形成された閉鎖空間内に前記シロッコファンが配置されるとともに、前記吸入口、前記上部吹き出し口、前記下部吹き出し口は、いずれも前記加熱室内の空間と前記閉鎖空間とを空間的に接続していることが好ましい。このようにすることで、送風ファンの回転翼の回転軸近傍から吸い込まれた空気を回転翼の回転方向外側に吹き出すシロッコファンの特長を活かして、一つのファンで、加熱室内の上下の空間での空気の循環を実現することができる。
(実施の形態)
以下、本願で開示するオーブントースターについて、具体的な実施形態を用いて説明する。なお、以下では、加熱室内の温度を均一化して被調理物の焼きムラを低減させるために、加熱室内で空気を循環させるコンベクション方式のオーブントースターであって、なおかつ、蒸気発生ユニットを備えて加熱室内に蒸気を送り込んで被調理物に適度な湿り気を与えながら加熱調理を行うことができるスチーム調理機能が付いたオーブントースターを例示する。
図1は、本実施形態にかかるオーブントースターの外観を示す斜視図である。
本実施形態のオーブントースターは、図1に示すように、オーブントースターの外殻を構成し内部に加熱室を有する筐体10と、筐体10の前方側に配置されて筐体10内に配置された加熱室の前面を覆う開閉可能な扉20と、筐体10の前面における扉20の下方位置に配置された操作部30とを備えている。
なお、以下本明細書では、オーブントースターを通常の使用状態としてテーブルなどの載置台に載置して扉に正対したユーザから見た方向に基づいて、オーブントースターの前後、左右、上下それぞれの方向を定め、適宜これらの各方向を用いてオーブントースターを構成する各部材の配置について説明するものとする。具体的には、図1に示す斜視図において、図の左手前側がオーブントースターの前方、右奥側がオーブントースターの後方となる。また、図1の左右方向がオーブントースターの左右方向、図1の上下方向がオーブントースターの上下方向となる。
本実施形態のオーブントースターにおいて、筐体10の下方には加熱室内でこぼれたパン屑などを受け止めるとともに、蒸気を用いた調理時に発生した水蒸気が加熱室の壁面などに結露した後に液体となって底面へ集まった排水を受け止めるためのトレー11が配置されている。トレー11は、手前側に引き出して取り外すことが可能である。また、筐体10の下面には、オーブントースターをテーブルなどの載置台に載置する際の脚部12が形成されている。
扉20は、本実施形態のオーブントースターでは、上端部分に配置された把手21を手前下側に倒すことで開けることができる。
扉20下方の左右両端部分は下方に延在する接続部22となっていて、接続部22の下端側先端部分には、筐体10と扉20とを接続するヒンジ機構24(図2参照)が設けられている。また、扉20の一対の接続部22に挟まれた中央部分は切り欠かれたようになっていて、図1に示すように扉20を閉めた状態で、筐体10の前面下部に配置された操作部30が前方側に露出するようになっている。
扉20には、加熱室内部の被調理物の状態が把握できるように、ガラス製の窓部23が形成されていて、扉20を閉じた状態でも加熱室内の調理網41や、被調理物などの様子を見ることができる。なお、図1と図2では、調理網41は骨格部分である枠体のみを図示し、実際にパンなどの被調理物が載置される編み目部分の図示は省略している。
操作部30には、加熱時間や加熱温度を設定、調節するための複数個の操作つまみ31、ヒータの加熱状態を切り替える切り替えボタンや、各種の調理メニューに対応可能とするメニューボタンなどの複数個の操作ボタン32が配置されている。
なお、操作部30の操作つまみ31や操作ボタン32の配置個数や配置場所などは、図1に示したものに限られず、オーブントースターで調理可能な調理メニューに対応させて、適宜必要なものを必要な個数、デザイン面も考慮して配置されるべきものである。また、操作部30には、調理メニューの設定状況やオーブントースターの各種状態を表示するための液晶パネルなどを用いた表示パネルや、LEDランプをはじめとする各種の報知ランプ類を配置することができる。
操作部30の左側端部には、蒸気を用いた調理を行う際に用いられる水を供給するための貯水タンク33が配置されている。貯水タンク33は、ユーザが手前側に引き出して取り外すことができ、その内部に所定量の水を容易に供給できるようになっている。貯水タンク33は、操作部30の左側端部の所定位置に挿入された際に図示しない給水管に接続される。貯水タンク33内の水は、給水ポンプ63(図4参照)によって蒸気を生成する後述の蒸気ユニット64(図4参照)へと供給される。
図1に示すオーブントースターの構成では、扉20下方の左右両端部分の先端部にヒンジ機構が設けられ、扉20が手前側に倒れるように開く構成のものを図示した。しかし、本実施形態にかかるオーブントースターの扉の開閉方向はこの限りではなく、扉の右側端部もしくは左側端部にヒンジ機構が形成されていて、扉を右または左方向に回動して開閉可能とする構成を採用することができる。
また、本実施形態のオーブントースターとして、操作部30を筐体10の前面下方に設けて扉20が閉じられたときに操作部30が前面に露出する構成のものを例示したが、操作部の配置場所は例示したものには限られない。例えば、扉が加熱室の前面側全体を覆う形状として、操作部を扉に形成された窓部の上下左右いずれかの周辺部分に配置することができる。また、筐体の左右方向中心に対して、加熱室の左右方向中心を左右いずれかの方向に偏心させて配置し、加熱室の位置が左右方向にずれたことによって生じる筐体と加熱室との間隙部分の前面に操作部を配置する構成とすることができる。さらに、操作部の配置位置に関係なく、操作部に配置される一部の操作ボタンなどを、筐体の上面や側面などオーブントースターの前面側以外の部分に配置することも可能である。
図2は、本実施形態にかかるオーブントースターの扉20を開いた状態を示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態のオーブントースターは、扉20下側の左右両端部分に形成された接続部22の先端部分と筐体10前面の左右両端部の下端部とが、ヒンジ機構24で接続されていて、ユーザが把手21を手前側下方に引き下ろすようにすることで、扉20が図2中矢印Aとして示す方向に回動して開く構成となっている。
本実施形態のオーブントースターは、筐体10内に形成された加熱室50内部に配置される調理網41が、加熱室50の両側面の壁部に形成された支持部材42(図3および図4参照)上を前後方向にスライドすることができる。扉20の内面には、窓部23の両側部分に一対のフック部材25が形成されている。フック部材25の先端部は環状に形成されていて、この環状部分の中に調理網41の前方に配置された横方向に伸延する枠体41aの左右両端部分が挿通されているため、扉20を開く動作に連動して、フック部材25は調理網41に対する姿勢を変えながら調理網41を前方側へと引き出すように作用する。
このため、調理網41は、扉20の開閉動作に連動して加熱室50の両側面に形成された支持部材42上を前方へとスライドして、扉20を完全に開けた状態では扉20の内面側の上方の位置まで引き出され、被調理物である食パンなどの調理網41上への載置と調理網41上からの取り出しとを容易に行うことができる。また、扉20を閉じる動作に連動して調理網41は後方側へと移動し、扉20が完全に閉じられた状態で、調理網41とその上に載置される被調理物とが加熱室50内の所定の調理位置に収容される。
なお、調理網41は、本実施形態で用いているように骨格部分である枠体と被調理物が載置される編み目部分とが一体に形成されたものに限られず、例えば、枠状の調理網載置部材と、この調理網載置部材の上に載置される調理網との2つの部材で形成することができる。
図3は、本実施形態のオーブントースターの内部の構成を示すための断面図である。図3は、本実施形態にかかるオーブントースターの左右方向における中央位置での断面を右側方から見た状態を図示している。
また、図4は、本実施形態のオーブントースターの内部の構成を示すための別方向からの断面図であって、本実施形態にかかるオーブントースターの前後方向における中央位置での断面を前方から見た状態を図示している。
図3に示すように、扉20が閉じている状態で、調理網41は、加熱室50内部において前後方向の略中央部分に位置している。
本実施形態にかかるオーブントースターは、加熱室50内部に収容された状態の調理網41の前後方向における中央部分の上方に、上側ヒータ51が配置されている。また、加熱室50の調理網41の下側に、加熱室50の前方側に位置する第1の下側ヒータ52と、加熱室50の後方側に位置する第2の下側ヒータ53との2本の下側ヒータを備えた構成となっている。
オーブントースターに用いられている上側ヒータ51としては、一例として、外径が12mm、長さが320mm、定格610Wの石英管ヒータを用いることができる。また、第1の下側ヒータ52および第2の下側ヒータ53としては、一例として、外径が12mm、長さが320mm、定格345Wの石英管ヒータを用いることができる。なお、本実施形態のオーブントースターとして用いられるヒータとしては、上記の他に600Wから700W程度のシーズヒータなど、各種のヒータを用いることができる。
図4にも示すように、本実施形態のオーブントースターでは、3つのヒータ51、52、53は、加熱室50内でいずれもオーブントースターの左右方向に延在するように配置されている。ここで、3つのヒータ51、52、53は、それぞれのヒータの両端部が、オーブントースターの加熱室50内での前後位置および上下位置が略等しくなるように、すなわち、製造上の誤差などを除いて正確に水平状態を保ってかつ正確に左右方向に向くように配置されている。また、調理網41上に載置される被調理物をなるべく均一に加熱するために、図3の断面図に現れる3つのヒータ51、52、53が頂点を形成する三角形の中心部分に、調理網41の前後方向における中央部分が位置するように配置される。
加熱室50は、上面を構成する上面壁54、扉20と対向して背面を構成する背面壁55、上面壁54と対向して下面を構成する底面壁56と、上面壁54、背面壁55、底面壁56に連続して左右の側面を形成する互いに対向した一対の側面壁57(左側57a、右側57b)とでその周囲を囲まれて形成されている。なお、図3では、加熱室50の左側の側面壁57aのみが見えている。また、加熱室50の前面の開口部分の上側は、扉20の内面で覆われている。
本実施形態のオーブントースターでは、背面壁55、底面壁56、側面壁57がいずれも鉛直方向または水平方向に配置された略平坦面で構成されているのに対し、上面壁54は、上側ヒータ51が配置されている前後方向における中央部分から後方の部分が、下側へと傾斜する傾斜面54aを形成している。傾斜面54aにおける最も下側に位置する部分である背面壁55と接続されている部分54bの高さは、加熱室50内での上側ヒータ51の配置高さよりも低くなるように形成されている。このように、上面壁54の後側部分を大きな傾斜を有する傾斜面54aとすることで、上側ヒータ51から後方側(背面壁55側)へと放射される輻射熱を下方に位置する調理網41上の被調理物の方向へと反射させることができる。
さらに、本実施形態のオーブントースターでは、上面壁54における上側ヒータ51の配置位置よりも前方側の部分に、略三角柱状の断面を有して左右方向に延在する上面突起58が形成されている。上面突起58は、前方の扉20の窓部23を介して上側ヒータ51が見えないようにする目的を有するため、正面側から見た際に上側ヒータ51を覆い隠せる程度の高さを持って上面壁54の表面から下方側に突出して形成されている。また、上側ヒータ51の前方に、上側ヒータ51と対向する傾斜面部分58aを備えた上面突起58を設けることにより、上側ヒータ51から前方側へと放射される輻射熱を反射して調理網41上に載置される被調理物側に向かわせることができる。
さらに、本実施形態のオーブントースターでは、上面壁54の後方部分の傾斜面54aが、後述する送風ユニット70から吹き出された空気を上側ヒータ51の方向に向けるとともに、上面壁54の前方側に形成された上面突起58が、上側ヒータ51によって暖められた空気を調理網41の前方部分へと向かわせる、気流ガイド部材としての役割を果たすことができる。また、上面壁54に形成された傾斜面54aや上面突起58は、調理網41よりも上側に位置する加熱室50の容積を低減する効果を有し、上側ヒータ51と調理網41との間に一定以上の間隔を確保して焼きムラをなくすことと、加熱室50の容積を低減して被調理物を効率よく加熱することとを両立させている。
なお、本実施形態のオーブントースターにおいて、上面壁54の後方側部分に図3に示した形状の傾斜面54aを形成すること、また、上面壁54の前方側に断面が略三角柱状の上面突起58を形成することは必須の要件ではない。例えば、上面壁54の後方側部分に傾斜面を形成する場合でも、図3に示したような一枚板状に形成された傾斜面54aを設ける構成には限られず、二段もしくはそれ以上の段数の複数段の傾斜面を形成することができる。さらに、上面壁54の後方側部分に後方上側に凸の湾曲面を形成することができる。さらにまた、上面壁54の前方側に略三角柱状の上面突起58を形成する替わりに、後方側と同じような前方側への傾斜面を配置することができる。また、上面壁54を底面壁56や側面壁57などと同様に平坦な面で構成することも可能である。
本実施形態のオーブントースターでは、加熱室50の周囲を形成する上面壁54、背面壁55、底面壁56、側面壁57を、高い熱反射特性を有するガルバリウム鋼板で構成しているため、上側ヒータ51、下側ヒータ52、53の熱によって被調理物を効率よく加熱することができる。なお、加熱室50の各壁面を構成する材料としては、ガルバリウム鋼板の他にも熱反射特性が高い各種の鋼板、例えばアルミめっきが施されたアルスター鋼板や剛性が高い鋼板である亜鉛メッキ鋼板などを用いることができる。
加熱室50の下側かつ前方側の部分には、筐体10の下側に配置された操作部30を加熱室50から分離する操作部隔離板59が配置されている。本実施形態のオーブントースターでは、操作部30の操作ダイアル31などに接続されたスイッチ回路や、ヒータのオン/オフ制御などのオーブントースター全体を制御するための制御回路などが搭載された回路基板34を、操作部30の背面側の回路基板配置領域に配置している。操作部隔離板59は、加熱室50内の熱、特に最も近い位置に配置されている第1の下側ヒータ52からの熱が、回路基板配置領域に配置された回路基板34上のマイコンなどの電気回路部品に悪影響を与えることを回避できるように、ガルバリウム鋼板、アルスター鋼板などの熱反射特性が高い部材で形成されることが好ましい。
また、本実施形態のオーブントースターでは、扉20の下方背面側に、湾曲した反射板26が配置されている。図3に示すように、反射板26は、扉20が閉じられた調理時において第1の下側ヒータ52からの輻射熱を調理網41上に載置される被調理物の方向に反射して、扉20に近い部分の被調理物の裏側面(下側に配置されている面)に十分な輻射熱が放射されるように機能する。また、反射板26は、図2に示したように扉20が開かれた状態では扉20の回転に伴って前方側に引き出されて、操作部30の上方および前方を覆う。このように、扉20が開かれた状態において、反射板26は調理網41上に載置された被調理物などがこぼれて操作部30を汚すことを防止するカバー部材としての機能を果たすことができる。
底面壁56の下側には、底面壁56に形成された開口部分を覆う大きさの平面を有するトレー11が配置されている。トレー11の前方側の扉20の下部に配置される取っ手部11aに指をかけることで、ユーザはトレー11を前方側へと引き出し、引き抜くことができる。
また、本実施形態のオーブントースターでは、左側の側壁面57の上側ヒータ51よりもやや下側の部分に、スチームを用いた調理を行う際に蒸気を吹き出す蒸気吹出部60が形成されている。蒸気吹出部60は、側面壁57の外側に配置された蒸気ユニット64で生成された蒸気を加熱室50の内部空間へと噴出する蒸気吹出口61と、蒸気吹出口61の前方を遮って蒸気を加熱室50内に拡散させるための蒸気誘導部材62とで構成されている。
本実施形態のオーブントースターにおいて、蒸気誘導部材62は、蒸気吹出口61の前方と側方側を覆うとともに上下方向が開放されているため、蒸気ユニット64で生成された蒸気は、蒸気誘導部材62によって蒸気吹出口61から真っ直ぐ加熱室50内へと侵入することが遮られ、左側の側面壁57aに沿って上下方向へと向かって加熱室50内に拡散される。
なお、前述したとおり、操作部30に配置された貯水タンク33内部の水は、図示しない吸水管によって給水ポンプ63へと供給され、給水ポンプ63によって、蒸気を噴出するタイミングに合わせて図示しない吸水管を介して蒸気ユニット64へ送られる。蒸気ユニット64は、内部に加熱ヒータを備えていて、給水ポンプ63から送られた水を加熱して蒸気を生成するとともに、回路基板配置領域に配置された制御回路で制御されて、所定のタイミングで蒸気吹出口61から蒸気を噴出する。
背面壁55の中央部分における背面側、すなわち、加熱室50の後方の外側には、背面壁55によって加熱室50と隔てられて送風ユニット70が配置されている。
以下、図4に加えて、図5および図6を用いて、本実施形態にかかるオーブントースターの背面壁と背面壁の外側に配置された送風ユニットについて説明する。
図5は、背面壁を斜め下側方向から見た要部が拡大された分解斜視図である。
図6は、加熱室の背面壁部分の要部拡大断面図である。
なお、図5は、加熱室を前後方向の切断面で切断した状態で加熱室の外側から背面壁を見た状態を示しているが、図5における切断面は、加熱室の左右方向の中央部分である図3の切断面よりは少し右よりの位置にある。なお、図5において、調理網41の図示は省略している。また、図6は、図3と同じく加熱室の左右中央部分の断面を側方から見た断面図である。
本実施形態のオーブントースターでは、背面壁55に横長略矩形状の凹部55aが形成されている。凹部55aの底面55bは、背面壁55の表面から後方側に後退した位置に背面壁55と略平行に形成された面であり、平面視したときに底面55bの外側と内側はともに角部がR形状で形成された横長長方形状をしている。底面55bで囲まれた中央部分55cは、平面視したときに凹部55aの底面55bとほぼ相似形状の角部がR形状で形成された横長長方形状となっていて、加熱室50の前後方向において、中央部分55cは凹部55aの周辺部分の背面壁55と同じ位置にある平面となっている。
凹部55aの側面を構成する、中央部分55cと底面55bとを接続する内側側面55d、および、底面55bと周辺の背面壁55とを接続する外側側面55eは、いずれも平面視したときに、角部がR形状で形成された横長の環状矩形形状となる傾斜面として形成されている。
中央部分55cと底面55bとを繋ぐ内側側面55dの内、中央部分55cの上方側に位置する上方傾斜面55d1には、傾斜方向に延在する複数の上方スリット55fが、また、中央部分55cの下方側に位置する下方傾斜面55d2には、傾斜方向に延在する複数の下方スリット55gが、それぞれ形成されている。
また、中央部分55cの中央には、円形の凹面部分55hが形成されていて凹面部分55hには複数の円形開口55iが形成されている。なお、図6に示すように、中央部分55cの凹面部分55hは、その中心が加熱室50内に配置された調理網41の配置位置の後方となるように、言い換えると、調理網41の左右方向中心線を後方に延長した際に背面壁55と交わる部分が凹面部分55hの中心と略一致するように構成されている。
背面壁55に形成された凹部55aの底面55bと、底面55bで囲まれる中央部分55cとを含む領域の裏側面、すなわち、加熱室50側とは反対側の面には、カバー部材71と送風ファン72とで構成された送風ユニット70が配置されている。
カバー部材71は、底面とその底面の周囲から前方に延在する側壁面とを備えた有底枠状の部材であり、平面視したときに略矩形状となっている。カバー部材71は、側壁面の先端部分に外側に延在するように形成された鍔状の固着面を有していて、この固着面が背面壁55に形成された凹部55aの底面55bの背面側にネジ留め等によって固着されている。このため、背面壁55の、中央部分55cと内側側面55d、さらに中央部分55c寄りに位置する底面55bの背面側の部分と、カバー部材71とで囲まれた部分とが、一つの閉鎖空間73を形成している。なお、この閉鎖空間73は、カバー部材71と底面55bとの間の固着部分において大きな隙間が形成されていなければよく、例えば、カバー部材71の内側の閉鎖空間73が、カバー部材71の外側の空間に対して厳密に気密もしくは水密の状態にまで保たれている必要はない。
送風ファン72は、カバー部材71の内側の閉鎖空間73内に配置された回転翼72aと、カバー部材71のさらに後方側に配置されたモータ72bと、カバー部材71の底面を貫通して配置された回転軸72cとで構成されている。
本実施形態のオーブントースターでは、送風ファン72として多数枚の回転翼72aを備えたシロッコファンを用いているため、モータ72bによって回転軸72cが回転すると、回転翼72aの中心部分に吸い込まれた空気が回転翼72aの回転方向外側に向かって吹き出されることとなる。このため、本実施形態のオーブントースターにおいて、背面壁55の中央に位置する中央部分55cに形成された円形開口55iが吸気口となり、背面壁55に形成された凹部55aの内側側面55dである上方傾斜面55d1に形成された上方スリット55fと、下方傾斜面55d2に形成された下方スリット55gとが吹き出し口となる。
なお、中央部分55cに形成された凹面部分55hの裏側面には、カバー部材71の前端側に位置する開口部分に到達する、平面視したときに円形である円筒状の筒状部材74が配置されている。このように、閉鎖空間73内に円筒形の筒状部材74が形成されていることで、円形開口55iから回転翼72aの中心部分へと吸い込まれる加熱室50から吸入された空気と、回転翼72aの周辺側に吹き出されて上方スリット55fおよび下方スリット55gから加熱室50内へと吹き出す空気とが閉鎖空間73内でぶつかり合わないようになっていて、モータ72による吸排気効率が高められている。
カバー部材71の背面側には、送風ファン72のモータ72b(回転子部分)、さらに、モータ72bを回転させるためのコイル部75が配置されている。また、本実施形態のオーブントースターでは、送風ファン72のモータ72b部分とコイル部75とを覆う後方カバー13が、筐体10の背面10aから後方側に突出するように形成されている。
このように構成された本実施形態にかかるオーブントースターにおける、加熱室50内の空気の流れについて図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態のオーブントースターにおいて、送風ファンを動作させた場合の過熱室内の空気の動きを説明するモデル図である。
なお、図7は、図3と同じく加熱室50の左右方向中央部の側方断面図である。
図7に示すように、調理網41の配置位置よりも上側に位置する加熱室50内の上側空間50aにおいては、送風ファン72が動作すると、調理網41上に載置された図示しない被調理物近傍の比較的温度の低い空気が矢印81に示すように背面壁55側へと引き寄せられる。調理網41の上面側を背面壁55に引き寄せられた空気は、背面壁55の中央部分55cの凹面部分55hに形成された吸入口である円形開口55i(いずれも図5参照)を通って、閉鎖空間73内に進入し、矢印82として示すように、閉鎖空間73に形成された筒状部材74内を通って送風ファン72の回転翼72aの中心部分へと移動する。
モータ72bによって回転する送風ファン72の回転翼72aによって上方側の周辺部分側へと吹き出された空気は、閉鎖空間73内の背面壁55の中央部分55cの裏側部分を経て、矢印83として示すように、上方傾斜面55d1に形成された上部吹き出し口である上方スリット55f(図5参照)から加熱室50内へと吹き出される。
本実施形態のオーブントースターでは、上部吹き出し口である上方スリット55fが、その表面の垂線が加熱室50の上方側へと向かって傾斜する上方傾斜面55d1に形成されているため、加熱室50内に吹き出された空気は、図中の矢印84に示すように加熱室50内を前方側へと、すなわち、上方に配置された上側ヒータ51へと向かうこととなる。このとき、前述のとおり、加熱室50の上面壁54の後方部分が、上側ヒータ51の配置位置と吹き出し口が形成された背面壁の55の凹部55a部分の近傍とを繋ぐように傾斜する傾斜面54aとして形成されているため、上方スリット55fから吹き出された空気が上側ヒータ51に吹き付けられる空気の流れ84を形成することができる。
上側ヒータ51に吹き付けられて温度が上昇した空気は、上面壁54の前方に配置された上面突起58によって、矢印85のように下側に曲げられる。その後、矢印86として示すように、加熱室50の前面部分を覆う扉20の内面に沿って調理網41の前端部分位置へと移動して、調理網41の上面側を背面壁55へと移動する空気の流れ81となる。
このようにして、調理網41の配置位置よりも上方部分の加熱室50の上側空間50aにおいて、背面壁55に形成された上部吹き出し口(上方スリット55f)から吹き出された空気が、上方ヒータ51によって加熱された後、調理網41上に載置された被調理物の上面側を通って背面壁の中央部分に形成された吸入口(円形開口55i)から吸入されるという、空気の循環が形成される。
次に、調理網41の配置位置よりも下側に位置する加熱室50内の下側空間50bでの空気の流れを説明する。
本実施形態のオーブントースターでは、加熱室内の空気を送風ユニットへと吸入する吸入口である円形開口55iが、背面壁55の調理網41の配置位置の後方に配置されているため、調理網41の下面側に位置する温度の低い空気は、矢印91として示すように背面壁55側へと引き寄せられる。
調理網41の下面側を背面壁55に引き寄せられた空気は、背面壁55の中央部分55cの凹面部分55hに形成された吸入口である円形開口55i(いずれも図5参照)を通って、閉鎖空間73内に進入し、矢印92として示すように、閉鎖空間73に形成された筒状部材74内を通って送風ファン72の回転翼72aの中心部分へと移動する。
回転する送風ファン72の回転翼72aによって下方側の周辺部分側へと吹き出された空気は、閉鎖空間73内の背面壁55の中央部分55cの裏側部分を経て、矢印93として示すように、下方傾斜面55d2に形成された下部吹き出し口である下方スリット55g(図5参照)から、加熱室50内へと吹き出される。
下部吹き出し口である下方スリット55gは、その表面の垂線が加熱室50の下方側へと向かって傾斜する下方傾斜面55d2に形成されているため、加熱室50内に吹き出された空気は、矢印94として示すように下方スリット55gの正面に位置する第2の下方ヒータ53へと到達し、さらに、矢印95として示すように前方側に位置する第1の下方ヒータ52の配置位置に到達する。
その後、矢印96として示すように、反射板26の湾曲形状に沿って上方へと向かって、調理網41の前端部分下側位置へと移動して、調理網41の下面側を背面壁55へと移動する空気の流れ91となる。このように、2つの下方ヒータ52、53で過熱された空気が、調理網41上の前方側端部に下方側から吹き付けられることで、調理網41の前方側に載置された被調理物の裏面を良好に加熱することができる。このため、例えば被調理物としての食パンに対して、調理網41側に向けられた裏側面にも良好な焼き目を付けることができる。
このようにして、調理網41の配置位置よりも下方部分の加熱室50の下側空間50bにおいても、背面壁55に形成された下部吹き出し口(下方スリット55g)から吹き出された空気が、2つの下方ヒータ52、53によって加熱された後、調理網41上に載置された被調理物の下面側を通って背面壁55の中央部分に形成された吸入口(円形開口55i)から吸入されるという、空気の循環が形成される。
なお、図7にも示すように、本実施形態のオーブントースターでは、調理網41の上側の上側空間50aよりも下側の下側空間50bの方が、高さが低い分容積の小さな空間となっている。このため、上側空間50aにおける空気の循環速度と比較して下側空間50bにおける空気の循環速度が速くなる。この結果、被調理物の裏側面における焼きムラの低減に対する大きな効果を得ることができる。
上述の通り、本実施形態にかかるオーブントースターでは、加熱室の背面壁の調理網の配置位置よりも上方部分に形成された上部吹き出し口と、調理網の配置位置よりも下方部分に形成された下部吹き出し口との2つの吹き出し口を備えることで、加熱室の上側の空間と下側の空間とのそれぞれにおいて、送風ユニットから吹き出された空気を循環させることができる。このため、調理網の上に多数の食パンが隙間無く並べられた場合など、調理網上に載置された被調理物が加熱室を上下の空間に分断するような状態となった場合でも、被調理物の両面に対してヒータからの輻射熱を良好に伝達することができ、焼きムラの少ない調理を行うことができる。また、加熱室の調理網の上方部分と下方部分とに、それぞれ良好な空気の循環が形成されることで、加熱ヒータの熱を効果的に被調理物に加えることができ、調理網上に載置された被調理物を回転させるなどの手間が省けるとともに、調理時間の短縮化を図ることができる。さらに、発熱源である上側ヒータと2つの下側ヒータに送風ユニットから低い温度の空気を吹き付けることで、これらヒータからの輻射熱を低減させる効果があり、被調理物においてヒータとの直線距離に応じて生じる加熱ムラを低減させる効果が得られる。
なお、上記実施形態では、吸気口と、上部吹き出し口、および、下部吹き出し口をいずれも加熱室の背面壁に設けた構成を説明した。このように、吸気口と上下の吹き出し口とを背面壁に設けることで、ヒータによって暖められた空気が加熱室内において低温となりやすい前方側へと吹き付けられるため、加熱室内の温度を良好に均一化することができる。また、特に左右方向に上下のヒータが配置されている場合には、吸気口と上下の吹き出し口とを背面壁に設けることで、上下の吹き出し口から吹き出された空気をヒータの側面から吹き付けることができるため、ヒータからの輻射熱を効果的に奪うとともに、効果的に空気の温度を上昇させることができる。
しかし、本開示にかかるオーブントースターにおいて、吸気口と上下の吹き出し口とを背面壁に形成することは必須の要件ではなく、吸気口と上下の吹き出し口とを左右いずれかの側面壁に設けることができる。また、吸気口と上下の吹き出し口を全て同じ壁面に形成せずに、吸気口と2つの吹き出し口の少なくとも一つを、異なる壁面に形成することもできる。
さらに、上記実施形態では、吸気口が調理網の配置位置と略同じ高さの壁面に形成されている例を示したが、吸気口の配置高さを調理網と異なる高さに形成することも可能である。特に、加熱室の調理網の上側の空間と下側の空間とに、それぞれ吸気口を設けることで、調理網の上下の空間での良好な空気の循環を形成することができる。なお、この場合には、送風ユニットの送風ファンを2つ配置することで良好な空気の循環を起こすことが可能となる。一方、上記実施形態で示したように、上部吹き出し口から吹き出された空気を吸気する吸気口と下部吹き出し口から吹き出された空気を吸気する吸気口を共通化して、吸気口の背面に1つの閉鎖空間を設けることにより、調理網の上側の空間内を循環した空気と調理網の下側の空間内を循環した空気とが閉鎖空間内で混じり合うため、両者に温度差があった場合にこれを均一化する効果が期待できる。
また、上記の実施形態において、調理網の下側に2つの下方ヒータが配置されたものを例示したが、調理網の下側に配置される下方ヒータの数は、2つのものに限られず、一つまたは三つ以上であってもよい。さらに、上方ヒータも二つ以上設けられている構成とすることができる。また、上方ヒータ、下方ヒータは、直線状のヒータが加熱室の左右方向に配置されているものに限らず、例えばU字形状のヒータを用いることができ、加熱室内の後方側から前方側に向かってU字形状のヒータを配置することも可能である。
なお、本実施形態の説明では、送風ファンの動作タイミングなどの動作制御についての説明は割愛したが、送風ファンの動作タイミングと送風ファンにより循環される空気の量(風量)は、調理網上に載置される被調理物の種類や量、ユーザの好みに対応した調理メニューなどに応じて適宜設定されるべきものである。また、送風ファンを複数個設けること、または、上部吹き出し口と下部吹き出し口の大きさや個数を変更することで、加熱室内部の上側空間と下側空間での空気循環のタイミングや循環風量を変更することができる。
この点において、上記実施形態では、上部吹き出し口である上方スリットと、下部吹き出し口である下方スリットとを、同じ形状で同じ個数、上下対称に設けたものを例示したが、これら吹き出し口の形状や配置数は適宜設定すべき事項である。また、上記実施形態では、上部吹き出し口を斜め上方側を向いた上方傾斜面に、下部吹き出し口を斜め下方側を向いた下方傾斜面に、それぞれ形成した例を示したが、上下の吹き出し口を鉛直に形成された加熱室の壁面に形成することができる。さらに、上下の吹き出し口を上方および下方へと向いた傾斜面に形成するために、上記の実施形態では、背面壁に矩形状の凹部を形成してこの凹部の側面を上方と下方とを向いた傾斜面としたが、上方と下方とを向いた傾斜面を加熱室の壁面から突出するように形成することができる。
また、加熱室の壁面の裏側に形成される送風ユニットの形状や構成、特に、送風ファンの種類や、閉鎖空間の形状とその形成方法は上記実施形態で例示したものに限られない。吸入口から吸入した加熱室内の空気を、送風ファンの回転によって上下の吹き出し口から効率よく加熱室内に吹き出すことできる構成として、用いられる送風ファンの形状や大きさ、吸入口から吹き出し口までの送風経路の形状、送風経路や吹き出し口近傍に形成される気流ガイド部材などを、適宜より好ましい形態とするべきである。
なお上記の実施形態では、加熱室内で空気を循環させるコンベクション方式のオーブントースターであって、なおかつ、蒸気発生ユニットを備えて加熱室内に送り込まれた蒸気を用いた調理を行うことができるスチーム調理機能が付いたオーブントースターを例示して説明した。しかし、本開示にかかるオーブントースターにおいて、スチーム調理機能を有していることは必須ではない。ただし、スチーム調理機能を備えたオーブントースターにおいて、蒸気を加熱室内に吹き出す蒸気吹き出し部を加熱室の左右いずれかの側面壁に配置することで、蒸気吹き出し部から吹き出された蒸気を左右方向に配置されたヒータに沿って流すことができるため、加熱室内の結露を起こりにくくすることができる。この場合、上記実施形態として例示したように、コンベクション機能を果たすための送風ユニットを加熱室の背面壁に配置することで、加熱室内における蒸気が流れる方向に対して空気が循環する方向を直交させることができ、加熱室内の蒸気の分散をより効率よく行うことができる。また、背面壁から前方側へと向かう空気の循環を生じさせることで、蒸気が扉のガラス窓に付着して曇らせてしまう事態を回避でき、スチームを用いた調理を行う場合でも、ユーザが加熱室内部の様子を確認することができる状態を維持できる。