それゆえに本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされ、開封性を向上させることができるプレフィルドシリンジ及びそれに使用される熱収縮性ラベルを提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係るプレフィルドシリンジは、胴部よりも小径の口部を前端部に有する容器本体と、該容器本体の口部の外側に被せられ、容器本体の胴部よりも周長が短いゴム製のキャップと、容器本体の胴部からキャップにかけて覆う熱収縮性を有する筒状のラベルとを備え、キャップは、天面部と該天面部から後方に延びる筒状部とを有し、該筒状部の内周面は容器本体の口部の外周面に当接しており、ラベルの前端部は熱収縮によりキャップの前端面に周り込んでおり、キャップよりも後側に位置するラベルの部分には該ラベルを前後に分断するための破断線が形成され、ラベルの表面には、ラベルの熱収縮を阻害するための収縮阻害用印刷層が全周に亘って形成され、該収縮阻害用印刷層は、容器本体の口部の外周面の前端に対応した位置からキャップの外周面の前端に対応した位置までの間を前端位置とし且つキャップの外周面の後端に対応した位置から破断線までの間を後端位置とする所定領域の全体に形成されていることを特徴とする。尚、容器本体の胴部側を後側とし口部側を前側とする。尚、胴部の周長が一定ではない場合やキャップの周長が一定でない場合には、胴部の最大の周長とキャップの最大の周長とを比較して、キャップの最大の周長が胴部のそれよりも短ければよい。
該構成のプレフィルドシリンジにあっては、ラベルの所定領域の表面に収縮阻害用印刷層が形成されているので、ラベルが熱収縮する際にはその熱収縮が抑制されることになる。そのため、キャップの筒状部が内側に向けて締め付けられる力が弱まり、筒状部の内周面と口部の外周面との密着も弱くなってキャップは口部に対して回転しやすくなる。また、ラベルの表面に熱収縮阻害用印刷層が全周に亘って形成されているので、ラベルで被覆されたキャップを掴んで回転操作する際のグリップ力が高まり、指先が滑りにくくなって回転操作しやすくなる。
そして、かかる収縮阻害用印刷層は、容器本体の口部の外周面の前端に対応した位置からキャップの外周面の前端に対応した位置までの間を前端位置とし且つキャップの外周面の後端に対応した位置から破断線までの間を後端位置とする所定領域の全体に形成されている。即ち、収縮阻害用印刷層の前端の位置が口部の外周面の前端に対応した位置を含めてそれよりも前側にあり、且つ、収縮阻害用印刷層の後端の位置がキャップの外周面の後端に対応した位置を含めてそれよりも後側にあるので、キャップの筒状部の内周面と口部の外周面との密着を確実に抑制できる。また、収縮阻害用印刷層の前端の位置がキャップの外周面の前端に対応した位置を含めてそれよりも後側にあるので、ラベルの前端部の熱収縮は阻害されず、ラベルの前端部はキャップの前端面に確実に周り込むことになる。更に、収縮阻害用印刷層の後端の位置が破断線を後側に越えないので、ラベルの表面に形成される収縮阻害用印刷層によってラベルの破断線の破断が阻害されずに済む。
また、ラベルの所定領域の表面に収縮阻害用印刷層が形成されているので、ラベルの所定領域は裏面側よりも表面側の熱収縮が抑制されることになる。従って、ラベルの所定領域は熱収縮によって内側にカールしようとし、その影響を受けてラベルの前端部もスムーズにキャップの前端面に周り込む。
特に、キャップの外周面の前後方向中間部には、前側の部分と後側の部分に比して周長が短い括れ部が形成され、該括れ部は、容器本体の口部の外周面の外側に対応して位置し、収縮阻害用印刷層は、相対的に高密度で形成された高密度部と相対的に低密度で形成された低密度部とに区画され、該括れ部には高密度部が対応して位置し、括れ部以外の部分には低密度部が対応して位置していることが好ましい。キャップに括れ部が形成されているとキャップを掴む際に掴みやすくなるが、その括れ部に対応して収縮阻害用印刷層の高密度部が位置しているので、特に括れ部を掴んでキャップを回転操作する際に指先が滑りにくくなり、より一層容易に回転操作できる。また、括れ部はキャップの外周面における他の部分に比して周長が短いので、その括れ部においてラベルの収縮量が相対的に大きくなり、キャップが内側により一層強く締め付けられることになる。従って、その括れ部に対応して高密度部を形成することにより、キャップの括れ部における締め付けを効果的に緩和できてキャップが回転しやすくなる。
更に、高密度部はベタ印刷により形成されたベタ印刷層を備えていることが好ましく、容易に高密度部を形成できて収縮阻害効果を部分的に高めることができる。
また更に、低密度部は収縮阻害用印刷層が格子状に形成されたものであることが好ましく、収縮阻害用印刷層の密度を部分的に容易に低くすることができるうえに、二方向に沿ってライン状に連続した収縮阻害用印刷層によって高いグリップ力が得られる。
また、高密度部は、ベタ印刷層と、該ベタ印刷層の表側に積層され、周方向に間隔をあけつつ形成された多数本のラインからなるライン層とから構成されていることが好ましい。ベタ印刷層の表側に更にライン層が積層されていることにより、表側のライン層に指先が引っかかりやすくなってグリップ力が高まる。
更に、ライン層のラインは、前後方向に対して所定角度傾斜していることが好ましい。例えば、正面視においてラインの前端が左側に後端が右側に位置する傾斜態様では、キャップを前側から見た平面視において反時計回りに回転させつつ前方に引っ張り上げるようにして開封する際に、ライン層のラインが指先に引っかかって滑りにくくなり容易にキャップを回転操作して開封できる。逆に、正面視においてラインの前端が右側に後端が左側に位置する傾斜態様では、キャップを前側から見た平面視において時計回りに回転させつつ前方に引っ張り上げるようにして開封する際に、ライン層のラインが指先に引っかかって滑りにくくなり容易にキャップを回転操作して開封できる。従って、開封時におけるキャップの回転方向が定まっている場合には、その回転方向の上流側にラインの前端が位置し回転方向の下流側にラインの後端が位置するようにラインを傾斜させることが好ましい。
一方、ラベルの表面にデザイン印刷層が形成されている場合には、そのデザイン印刷層の表側に透明な収縮阻害用印刷層が形成されていることが好ましい。収縮阻害用印刷層は透明であるためその内側に位置するデザイン印刷層を収縮阻害用印刷層を介して表側から容易に視認できる。また、デザイン印刷層の外側に収縮阻害用印刷層が形成されているので、ラベルの熱収縮によるデザイン印刷層の剥がれ落ちを収縮阻害用印刷層によって抑制することができる。更に、収縮阻害用印刷層が透明であるため、仮にひび割れが僅かに生じたとしてもそれが目立ちにくい。尚、収縮阻害用印刷層は透明であればよく、無色透明の他、有色透明であってもよい。
また、本発明に係るプレフィルドシリンジ用の熱収縮性ラベルは、筒状に形成されてプレフィルドシリンジに装着される熱収縮性を有するラベルであって、プレフィルドシリンジは、胴部よりも小径の口部を前端部に有する容器本体と、該容器本体の口部の外側に被せられ、容器本体の胴部よりも周長が短いゴム製のキャップとを備えているものであり、該プレフィルドシリンジのキャップは、天面部と該天面部から後方に延びる筒状部とを有していて、該キャップの筒状部の内周面は容器本体の口部の外周面に当接しており、ラベルは、容器本体の胴部からキャップにかけて覆うと共にその前端部が熱収縮によりキャップの前端面に周り込むことができる寸法を有し、キャップよりも後側に位置することになるラベルの部分にはラベルを前後に分断するための破断線が形成され、ラベルの表面には、ラベルの熱収縮を阻害するための収縮阻害用印刷層が筒状の全周に対応して形成され、該収縮阻害用印刷層は、容器本体の口部の外周面の前端に対応した位置からキャップの外周面の前端に対応した位置までの間を前端位置とし且つキャップの外周面の後端に対応した位置から破断線までの間を後端位置とする所定領域の全体に形成されていることを特徴とする。
以上のように、ラベルの表面における所定領域の全体に収縮阻害用印刷層が形成されているので、開封時にキャップが回転しにくいという現象を緩和させることができ、ラベルの破断線が破断しやすくなって、開封性が向上する。
以下、本発明の一実施形態に係るプレフィルドシリンジについて図1〜図7を参酌しつつ説明する。図1にプレフィルドシリンジの全体構造を断面図で示している。該プレフィルドシリンジは、容器本体とキャップ1とを備えたプレフィルドシリンジに、熱収縮性を有する筒状のラベルとしてのタックラベル2が貼着されたものである。
容器本体は、図3にも示しているように、径略一定の胴部3と、該胴部3の前端から前方に向けて延設されて前側に向かう程、即ち、先端側に向かう程、細くなっていく先細り形状の肩部4と、該肩部4の前側に延設されて容器本体の前端部を構成すると共に胴部3よりも小径の口部5とを有している。尚、胴部3の径が一定ではない場合には、胴部3の最大径を基準としてそれよりも口部5の方が小径であればよい。容器本体は、その前端及び後端の何れもが開口した両端開口の構造であり、後端開口部は胴部3の後端に位置し、前端開口部は口部5の前端に位置する。胴部3の後部にはスライドプラグ6が嵌挿されていて、該スライドプラグ6よりも前側の部分に薬剤が充填されている。口部5にはキャップ1が装着されているので、充填された薬剤は、キャップ1とスライドプラグ6によって密封される容器本体の薬剤収容空間7に充填されている。尚、使用時においてスライドプラグ6は図示しないプランジャーによって前側に押圧されて移動する。
口部5は、肩部4から更に前側に延設されていて、キャップ1を外された状態の使用時において図示しない注射針が装着される部分である。即ち、口部5は注射針装着部である。口部5は、本実施形態では筒状の外筒部10及び内筒部11からなる二重構造となっている。内筒部11はその内側が胴部3及び肩部4の内側と連通していてその前端に容器本体の前端開口部が形成されている。外筒部10は内筒部11よりも大径であるが胴部3に対しては小径であり、内筒部11に対して径方向外側に所定の間隔をあけて同心円状(同軸状)に形成されている。該外筒部10の外周面が口部5の外周面であり、この外筒部10の外径が口部5の径(外径)である。尚、内筒部11は外筒部10よりも前側に突出しており、従って、内筒部11の前端は外筒部10の前端よりも前側に位置している。
かかる口部5の外側にゴム製のキャップ1が被せられている。キャップ1は、口部5を外側から覆うように口部5に装着されていて、該キャップ1によって容器本体の前端開口部が閉塞されて容器本体の薬剤収容空間7が密封される。キャップ1の周長は胴部3の周長よりも短い。尚、キャップ1の周長が一定ではない場合、あるいは、胴部3の周長が一定ではない場合(胴部3の径が一定ではない場合)には、キャップ1の最大の周長と胴部3の最大の周長とを比較すればよく、キャップ1の最大の周長が胴部2の最大の周長よりも短いことになる。キャップ1は、容器本体の口部5に対応した構造となっており、容器本体の口部5に対して左右両方向に回転可能である。上述したように、口部5は外筒部10と内筒部11とからなる二重構造であるため、それに対応してキャップ1も二重構造となっている。具体的には、キャップ1は、厚肉略円板状の天面部20と、該天面部20の周縁から後方に延びる筒状部21とを備え、更に、筒状部21の内側にはそれと同心円状(同軸状)に筒状の内壁部22が形成されており、筒状部21と内壁部22とからなる内外二重構造をとっている。内壁部22は天面部20の内面から後方に向けて延びているが、その後端は筒状部21の後端よりも前側にある。また、天面部20の内面の中央部は周縁部に比して一段前側に凹んでいて、従って、天面部20は中央部の肉厚が周縁部の肉厚よりも薄くなっており、その天面部20の内面の中央部には、後方に向けて小突起23が突設されている。該小突起23の形状は例えば半球状とされる。
そして、口部5に装着した状態では、キャップ1の筒状部21と内壁部22との間に口部5の外筒部10が嵌挿され、キャップ1の内壁部22の内側に口部5の内筒部11が嵌挿され、キャップ1の小突起23は口部5の内筒部11の内側に係入される。従って、キャップ1の筒状部21の内周面は口部5の外筒部10の外周面に当接して密着した状態にあり、キャップ1の内壁部22の外周面と内周面はそれぞれ口部5の外筒部10の内周面と内筒部11の外周面に密着した状態にある。このようにキャップ1は口部5を多重に密封する構成となっている。
また、キャップ1の外周面は、前後方向(軸線方向)に三つの部分に区分される。即ち、キャップ1の外周面の前後方向中間部には他の部分よりも小径、即ち周長が短い括れ部24bが形成されており、該括れ部24bが形成されることによってキャップ1の外周面は前後方向に三つの部分に区画されている。より詳細には、キャップ1の外周面は前側から順に、大径の前部24aと、小径の括れ部24bと、大径の後部24cとからなり、前部24aと後部24cの外径は互いに略同じであって括れ部24bの外径よりも大きい。但し、前部24aと後部24cの外径が互いに異なっていてもよい。キャップ1の外周面における括れ部24bと後部24cは、キャップ1の筒状部21に形成され、口部5への装着状態においては口部5の外筒部10(口部5の外周面)の径方向外側に対応して位置する。尚、キャップ1の装着状態において、括れ部24bの前端は、口部5の外筒部10の前端(口部5の外周面の前端)よりも若干前側に位置し、また、キャップ1の筒状部21の後端は容器本体の肩部4には当接せずに若干前側に離間した状態となる。
タックラベル2は、プレフィルドシリンジへの装着状態において筒状であって容器本体の胴部3からキャップ1にかけて一括的に覆っている。タックラベル2は熱収縮性を有しているので、胴部3に対してキャップ1が小径であっても熱収縮してキャップ1に密着しており、また、タックラベル2の前端部2aは熱収縮によってキャップ1の前端面1aに周り込んでいてその周縁部を覆っている。従って、キャップ1の外周面はその全体に亘ってタックラベル2によって覆われており、キャップ1は前端面1aの中央部のみがタックラベル2で覆われずに露出した状態にある。
また、図2のようにタックラベル2には該タックラベル2を前後二つの領域に分離するための破断線30が形成されている。該破断線30は周方向に沿って全周に亘って形成されていて、該破断線30を破断することによってタックラベル2を前側の部分と後側の部分とに分離できる。該破断線30は各種のミシン目であってよく、また、破断線30から上側にY字状等の各種形状の切り込み線が延設されていてもよい。破断線30は、胴部3の前部に対応した位置に形成されている。
タックラベル2は、図4のように熱収縮性を有するラベル基材31と、該ラベル基材31の裏面の全体に積層された粘着剤層32と、該粘着剤層32の裏面に積層されたマスキング層33と、ラベル基材31の表面に形成された文字や図形等のデザインからなるデザイン印刷層34と、該デザイン印刷層34の全体を覆うようにラベル基材31の表面に形成された収縮阻害用印刷層35とを備えている。尚、図4は、タックラベル2が熱収縮する前の状態であって、タックラベル2の層構造を示していると共に各層の前後方向の位置をプレフィルドシリンジとの関係において示したものである。但し、図4においてタックラベル2の厚さ等については誇張して図示している。
ラベル基材31には熱収縮性を有する各種のプラスチックフィルムが使用でき、特には限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリスチレンやスチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物等からなる熱収縮性フィルム等を用いることができる。また、熱収縮性を有する2種以上のフィルムが積層された積層フィルムでもよい。その中でも、比較的ガスバリア性及び透明性に優れていることから、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂の熱収縮性フィルムを用いることが好ましい。また、主として一方向に収縮する一軸延伸フィルムが好ましい。尚、一軸延伸フィルムとは、実質的に一軸延伸されているフィルムをいい、一方向と他方向(一方向と直交する方向)との収縮率が大きく異なるフィルムのことを意味し、何れかの方向に全く収縮しない(いわゆる収縮率がゼロである)フィルムのみを意味するものではない。具体的には、例えば、90℃、10秒(温水処理)における一方向の熱収縮率が20〜80%、他方向の熱収縮率が−5〜10%のフィルムが挙げられる。例えば、主として一方向に収縮する一軸延伸フィルムを使用する場合、主延伸方向を装着対象物への装着状態における周方向に一致させる。フィルムの厚みは、例えば20〜60μm程度のものが好ましい。
尚、後述するように、タックラベル2は装着状態では筒状であるが、装着前の状態では平坦な枚葉型であって、具体的には図5に示しているように長方形状である。図5は裏側から見た背面図である。二点鎖線は離型紙8であってタックラベル2よりも一回り大きなサイズを有している。タックラベル2の縦寸法と横寸法はそれぞれ貼着される対象物であるプレフィルドシリンジの軸線方向の長さと胴部3の外径に対応したものであって、図5において横方向Xが筒状になった際の周方向であり且つ縦方向Yが筒状となった際の軸線方向(前後方向)である。かかるタックラベル2はその横方向Xの他端部(周方向の他端部)が容器本体の胴部3に貼着されて周方向に巻き付けられてその他端部の上に一端部が貼着されて筒状となる。即ち、タックラベル2はプレフィルドシリンジに巻き付けられて筒状となる巻き付けラベルであり、巻き付けられた後に熱収縮してキャップ1等に密着する。但し、タックラベル2を予め筒状に形成して、その筒状のタックラベル2をプレフィルドシリンジに被せて熱収縮させてもよい。尚、内面に粘着剤層32を有しない熱収縮性ラベルであってもよく、従って、容器本体に貼着されていなくてもよい。
粘着剤層32は、各種の粘着剤により構成され、例えばアクリル系、ゴム系等の感圧型粘着剤を用いることができる。また、感熱性粘着剤を用いてもよい。粘着剤層32の厚さは、例えば10〜30μmである。粘着剤層32はラベル基材31の裏面の全体に形成されており、該粘着剤層32の裏面全体のうちの一部にいわゆる「糊殺し」や「糊抑え」とも称されるマスキング層33が形成されることによって、タックラベル2の裏面は、プレフィルドシリンジに強く接着している接着部(強接着部)と、プレフィルドシリンジに対して非接着状態にある非接着部あるいは剥離可能な程度に弱い力で接着した状態にある非接着部とに区画される。即ち、マスキング層33が形成された部分は、マスキング層33が形成されずに残った部分に比して接着力が小さくなる。従って、粘着剤層32の裏面のうちマスキング層33が形成された部分が非接着部又は弱接着部となり、粘着剤層32の裏面のうちマスキング層33が形成されずに残った部分が接着部となる。マスキング層33は、マスキング剤を用いて公知の印刷手法によって形成できる。マスキング剤としては、非粘着性であって紫外線により硬化する層を粘着剤層32の上に形成できるものが好ましく、紫外線硬化型インキ等が使用できる。また、マスキング層33に着色剤を混合してマスキング層33を着色してもよく、透明なラベル基材31を使用すればラベル基材31を介して裏側のマスキング層33を視認できる。尚、本実施形態ではラベル基材31の裏面全体に粘着剤層32を形成しているが、裏面全体に形成するのではなく、接着部に対応するラベル基材31の裏面のみに粘着剤層32を形成し、非接着部又は弱接着部に対応するラベル基材31の裏面には粘着剤層32を形成しないようにして、接着部と非接着部又は弱接着部とを区画形成してもよい。
図4のようにマスキング層33は、筒状の状態において少なくとも破断線30よりも前側の部分の全体に形成されており、好ましくは本実施形態のように、破断線30を若干(数mm程度)後側に越えたところまで形成される。このように破断線30よりも前側の部分の裏面全体を非接着部又は弱接着部とすることで、プレフィルドシリンジへの装着状態から開封されたときに、破断線30よりも前側のタックラベル2の部分がキャップ1と共に容器本体から分離できる。また、タックラベル2は装着前の状態において筒状ではなく平坦な状態にある。図5はタックラベル2を裏から見た図であり、マスキング層33にはクロスハッチングを施しているが、この図5のようにマスキング層33は横方向Xの全長に亘って形成されているのではなくタックラベル2の横方向Xの一端部には形成されていない。マスキング層33が形成されずに残ったタックラベル2の横方向Xの一端部は糊代部36となる。
デザイン印刷層34は任意であってそれを設ける場合でもその位置や配置態様、形状等も任意であるが、その一例を挙げると図4及び図6のようになる。図6にはタックラベル2のうちデザイン印刷層34と収縮阻害用印刷層35のみを示していてそれらとプレフィルドシリンジとの前後方向の位置関係を示している。この例示態様では、デザイン印刷層34として、キャップ1の外周面のうちの前部24aに対応した位置に周方向に沿って設けられた第一のデザイン印刷層34aと、キャップ1の外周面のうちの括れ部24bに対応した位置に周方向に沿って設けられた第二のデザイン印刷層34bと、キャップ1の外周面のうちの後部24cあるいは容器本体の肩部4に対応した位置に周方向に沿って設けられた第三のデザイン印刷層34cとを備えている。上述したようにデザイン印刷層34は文字であってもよいし図形であってもよいが、一例として図7には文字を丸で示し、図形として矢印を図示している。この矢印は推奨される開封方向を示すものであるが、本実施形態のキャップ1はネジタイプではないため、何れの方向に回転させても開封できる。従って、矢印とは反対側にキャップ1を回転させても開封できる。
デザイン印刷層34の表側に収縮阻害用印刷層35が全周に亘って形成されている。該収縮阻害用印刷層35は、破断線30よりも前側の部分に形成され、且つ、タックラベル2の前端部2aから所定距離後方に離間して形成されている。詳細には、図4に示しているように、収縮阻害用印刷層35は、容器本体の口部5の外周面の前端(外筒部10の前端)に対応した位置からキャップ1の外周面の前端に対応した位置までの間を前端位置とし且つキャップ1の外周面の後端に対応した位置から破断線30までの間を後端位置とする環状の領域の全体に亘って形成されている。図4において、容器本体の口部5の外周面の前端に対応した位置からキャップ1の外周面の前端に対応した位置までの範囲を符号Aで示しており、この範囲に収縮阻害用印刷層35の前端35aが位置する。また、キャップ1の外周面の後端に対応した位置から破断線30までの範囲を符号Bで示しており、この範囲に収縮阻害用印刷層35の後端35bが位置している。
かかる収縮阻害用印刷層35は、透明であって、無色透明であってもよいし有色透明であってもよい。収縮阻害用印刷層35が透明であるため、収縮阻害用印刷層35を介してデザイン印刷層34を視認でき、また、仮にひび割れが生じたとしてもそれが目立ちにくくなる。収縮阻害用印刷層35の厚さは任意であって種々調整できるが、デザイン印刷層34の厚さよりも厚いことが好ましい。また、収縮阻害用印刷層35は、デザイン印刷層34と同様に各種の印刷手法によって形成でき、ラベル基材31の熱収縮に対する追従性に優れた柔らかいものが好ましく、例えば柔軟性を有するアクリル系樹脂から構成されることが好ましい。但し、収縮阻害用印刷層35は透明でなくてもよい。
収縮阻害用印刷層35は、領域の全体に亘って均一且つ単一な構成であってもよいが、本実施形態では、全体として均一な構成ではなく、複数の領域に区分される。即ち、キャップ1がその外周面に括れ部24bを有する形状であるため、それに対応して前後複数の領域に区画されており、具体的には、図7に示しているように、括れ部24bに対応した周方向に延びる帯状の部分は、高密度で形成された高密度部37とされ、括れ部24b以外の部分に対応した周方向に延びる前後二つの帯状の部分は、低密度で形成された低密度部38とされている。収縮阻害用印刷層35は、図7のように前側から順に、低密度部38、高密度部37、低密度部38というように三つの領域に区画されて形成されている。低密度部38においては収縮阻害用印刷層35が縦横の格子状に形成されている。また、高密度部37においては収縮阻害用印刷層35は、ベタ印刷されたベタ印刷層と、該ベタ印刷層の表側に積層され、周方向に間隔をあけつつ形成された多数本のラインからなるライン層とから構成されている。更に、ライン層を構成しているラインは、軸線方向に対して所定角度傾斜しており、本実施形態では、上述したデザイン印刷層34における開封時の回転方向を示す矢印の向きに合わせて、正面視においてラインの前端が左側に後端が右側に位置する直線状の傾斜態様となっている。尚、このラインの傾斜角度は、軸腺方向に対して45度以下の鋭角であって好ましくは20〜30度である。
以上のように構成されたタックラベル2付きのプレフィルドシリンジにあっては、開封時にキャップ1を指で掴んで軸腺まわりに回転させることでタックラベル2の破断線30が破断する。そして、破断線30よりも前側のタックラベル2の部分をキャップ1と共に前方に引っ張ることでキャップ1が容器本体の口部5から前方に抜けて外れ、破断線30よりも前側のタックラベル2の部分が後側の部分から分離する。その一方、破断線30よりも後側のタックラベル2の部分は貼着状態のまま容器本体の胴部3に留まり、本体ラベルとして機能する。従って、破断線30よりも後側のタックラベル2の部分における裏面には本体ラベルとしてのデザイン印刷層(図示省略)を形成しておくことが好ましい。尚、本体ラベルとしてのデザイン印刷層としては、例えば、商品名や注意書き、目盛り等の表示印刷が挙げられる。
このようにキャップ1を掴んで開封する際、タックラベル2の表面には環状の領域の全体に亘って収縮阻害用印刷層35が形成されているので、タックラベル2の当該領域の熱収縮は抑制され、従って、キャップ1の筒状部21が内側に向けて過度に締め付けられるということがない。そのため、筒状部21の内周面と口部5の外周面との密着も弱くなってキャップ1を口部5に対して回転させやすい。また、タックラベル2の表面に熱収縮阻害用印刷層35が形成されているので、タックラベル2で被覆されたキャップ1を掴んで回転操作する際のグリップ力が高まり、指先が滑りにくくなって回転操作しやすくなる。従って、キャップ1を掴んで容易に回転させて開封することができる。
また、キャップ1の括れ部24bが口部5の外周面の径方向外側に対応していて、その括れ部24bに対応して収縮阻害用印刷層35の高密度部37が位置しているので、特に括れ部24bを掴んでキャップ1を回転操作する際に、指先が滑りにくくなってより一層容易にキャップ1を回転操作することができる。また、括れ部24bはキャップ1の外周面における他の部分に比して周長が短いので、その括れ部24bにおいてタックラベル2の収縮量が相対的に大きくなっている。そのため、キャップ1が括れ部24bにおいて内側により一層強く締め付けられることになるが、その括れ部24bに対応して高密度部37が位置しているので、キャップ1の括れ部24bにおける締め付けが効果的に緩和され、キャップ1をより一層回転させやすくなる。更に、低密度部38において収縮阻害用印刷層35が格子状に形成され、高密度部37においてもライン層が形成されているので、低密度部38における縦方向のラインや高密度部37におけるライン層に指先が引っかかりやすく、高いグリップ力が得られる。しかも、高密度部37におけるライン層のラインが傾斜しているので、容易にキャップ1を回転させることができる。
一方、収縮阻害用印刷層35の前端の位置がキャップ1の外周面の前端に対応した位置を含めてそれよりも後側にあってタックラベル2の前端部2aには収縮阻害用印刷層35が形成されていないので、タックラベル2の前端部2aの熱収縮は阻害されず、熱収縮によってタックラベル2の前端部2aがキャップ1の前端面1aに確実に周り込む。また、タックラベル2の表面に収縮阻害用印刷層35が形成されているので、タックラベル2は裏面側よりも表面側の熱収縮が抑制されることになる。従って、タックラベル2の前部は熱収縮によって内側にカールしようとするので、その影響を受けてタックラベル2の前端部2aもスムーズにキャップ1の前端面1aに周り込む。
また、収縮阻害用印刷層35は熱収縮してもひび割れが発生しない程度に柔らかいので、タックラベル2の熱収縮にスムーズに追従することができる。そのため、開封時にキャップ1を強く握って回転させても収縮阻害用印刷層35は剥離しにくく、医療現場における異物の発生を可及的に抑制することができる。更に、デザイン印刷層34の表側にそれを覆うように収縮阻害用印刷層35が形成されているので、デザイン印刷層34の剥がれ落ちも収縮阻害用印刷層35によって抑制できる。尚、収縮阻害用印刷層35は透明であるため、仮に収縮阻害用印刷層35に僅かにひび割れが発生したとしてもそれが目立ちにくいうえに、異物の発生を実質上防止できる。
尚、本実施形態では、高密度部37をベタ印刷層とライン層の二層構造としたが、ベタ印刷層のみの構成であってもよい。また、高密度部37と低密度部38とに分けて形成したが、例えば環状の領域の全体を区画することなく全体に亘って均一な密度で形成してもよい。従って、収縮阻害用印刷層35の全体が格子状であってもよいしベタ印刷層であってもよく、また、収縮阻害用印刷層35の全体がライン層であってもよい。
また更に、収縮阻害用印刷層35を多数本のラインから構成する場合、そのラインの形状についても種々変更可能であって、上述したような直線状のものの他、曲線状であってもよいし、図8に示すような波形であってもよい。また、格子状も上述したような縦横二方向、即ち、軸腺方向と周方向の二方向の格子ではなく斜めのラインが交差した格子状であってもよい。
尚、上記実施形態では、口部5を内外二重構造としそれに対応してキャップ1も二重構造としたが、一重であっても無論よい。また、口部5の外周面にネジ部を備えた構成であってもよい。また更に、キャップ1の括れ部24bは断面円形のみならず断面角形であってもよく、同様に、キャップ1の外周面も断面円形のみならず断面角形であってもよい。