本発明の水生生物付着防止粘着テープは、防汚層と粘着剤層を含む。
本発明の水生生物付着防止粘着テープの厚みは、それに含まれる各層の厚みによって、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みに設定される。本発明の水生生物付着防止粘着テープの厚みは、好ましくは10μm〜2000μmであり、より好ましくは50μm〜800μmであり、さらに好ましくは100μm〜500μmである。本発明の水生生物付着防止粘着テープの厚みを上記範囲内に調整することにより、十分な強度を有するとともに貼付施工性の良好な水生生物付着防止粘着テープを提供し得る。
本発明の水生生物付着防止粘着テープは、防汚層と粘着剤層を含んでいれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を有していても良い。
本発明の水生生物付着防止粘着テープは、好ましくは、防汚層と粘着剤層との間に基材層を有する。
図1に、本発明の水生生物付着防止粘着テープの一例の概略断面図を示す。図1において、本発明の水生生物付着防止粘着テープ100は、防汚層2と基材層3と粘着剤層4をこの順に含む。図1に示すように、防汚層2の表面や、粘着剤層4の表面には、剥離フィルム1が設けられていても良い。
図1に示す本発明の水生生物付着防止粘着テープの一例においては、本発明の水生生物付着防止粘着テープは、防汚層と基材層と粘着剤層をこの順に含み、好ましくは、防汚層と基材層と粘着剤層がこの順に直接に積層されてなる。
防汚層は、主鎖が架橋構造を有する架橋シリコーン樹脂を含む。このような架橋シリコーン樹脂は、ポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖を含み、該樹脂が有する複数のポリマー主鎖の少なくとも2本が、該少なくとも2本のポリマー主鎖のそれぞれが有する架橋点を介して、別のポリマー主鎖によって架橋された架橋構造を有しており、該樹脂がいわゆる網目構造を有していることが好ましい。このような架橋シリコーン樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
防汚層中の架橋シリコーン樹脂の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な含有割合を採用し得る。防汚層中の架橋シリコーン樹脂の含有割合は、好ましくは30重量%〜98重量%であり、より好ましくは35重量%〜97重量%であり、さらに好ましくは40重量%〜96重量%であり、特に好ましくは45重量%〜95重量%である防汚層中の架橋シリコーン樹脂の含有割合が上記範囲内に収まることにより、防汚層の防汚効果を十分に発現し得るとともに、防汚層の機械的特性を十分に発現し得る。
架橋シリコーン樹脂の主鎖は、ポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖を含む。このように、主鎖がポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖を含む架橋シリコーン樹脂を採用することにより、フジツボや藻類などの水生生物の付着を長期間にわたって十分に防止できる水生生物付着防止粘着テープを提供し得る。
ポリシロキサン鎖は、一般式(1)で表されるシロキサン結合を繰り返し単位として有する鎖状構造である。
一般式(1):−Si(R1)(R2)−O−
(一般式(1)中、R1、R2は、Siに結合した水素原子または有機基である。)
ポリオキシアルキレン鎖は、一般式(2)で表されるオキシアルキレン基を繰り返し単位として有する鎖状構造である。
一般式(2):−R3−O−
(一般式(2)中、R3はアルキレン基である。)
R3は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、炭素数1〜14の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、さらに好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、特に好ましくは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。
一般式(2)で表されるオキシアルキレン基の具体例としては、例えば、−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C2H5)O−、−CH2C(CH3)2O−、−CH2CH2CH2CH2O−などが挙げられる。これらの中でも、入手性、作業性の点から、−CH2CH(CH3)O−が好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖は、1種類のオキシアルキレン基を繰り返し単位として有する鎖状構造であっても良いし、2種類以上のオキシアルキレン基を繰り返し単位として有する鎖状構造であっても良い。
架橋シリコーン樹脂は、好ましくは、ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂と、(A成分)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、(B成分)1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物との架橋反応によって得られる。
ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂を採用し得る。このようなポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂としては、常温で液状のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂であっても良いし、常温で固体状のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂であっても良い。また、このようなポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂としては、縮合型のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂であっても良いし、付加型のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂であっても良い。また、このようなポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂としては、単独で乾燥させる1液型のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂であっても良いし、硬化剤を配合する2液型のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂であっても良い。
本発明においては、ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂としては、本発明の効果がより発現し得る点で、上記の中でも、2液型のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂が好ましく、2液型の加熱付加型のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂がより好ましい。このような2液型の加熱付加型のポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業(株)製のKE−1950−10(A/B)、KE−1950−20(A/B)、KE−1950−30(A/B)、KE−1950−35(A/B)、KE−1950−40(A/B)、KE−1950−50(A/B)、KE−1950−60(A/B)、KE−1950−70(A/B)、KE−1987(A/B)、KE−1988(A/B)、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のLR7665シリーズ、LR3033シリーズ、モメンティブ(株)製のTSE3032シリーズなどが挙げられる。
本発明の水生生物付着防止粘着テープにおける水生生物の易除去性を向上させるために、ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂としては、水洗除去時の水圧などによって樹脂表面が弾性変形することにより付着物の剥離が容易になるような物性を有するポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂が好ましい。このようなポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂は、該シリコーン樹脂の100%モジュラス(引張応力)が、好ましくは0.01MPa〜10MPaであり、より好ましくは0.1MPa〜6MPaである。また、このようなポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂は、有機溶剤に可溶であるものが好ましい。
A成分である「1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体」は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
A成分である「1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体」としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体を採用し得る。このようなポリオキシアルキレン系重合体としては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、主鎖が一般式(2)で表されるオキシアルキレン基を繰り返し単位として有するポリオキシアルキレン系重合体である。
一般式(2):−R3−O−
(一般式(2)中、R3はアルキレン基である。)
R3は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、炭素数1〜14の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、さらに好ましくは、炭素数2〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、特に好ましくは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。
一般式(2)で表される繰り返し単位の具体例としては、例えば、−CH2O−、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C2H5)O−、−CH2C(CH3)2O−、−CH2CH2CH2CH2O−などが挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖としては、入手性、作業性の点から、−CH2CH(CH3)O−を主たる繰り返し単位とする主鎖が好ましい。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、1種類だけの繰り返し単位からなっていても良いし、2種類以上の繰り返し単位からなっていても良い。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の主鎖には、一般式(2)で示されるオキシアルキレン基以外の繰り返し単位が含まれていても良い。この場合、ポリオキシアルキレン系重合体中のオキシアルキレン基(繰り返し単位)の総和は、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体は、直鎖状の重合体であっても良いし、分岐を有する重合体であっても良い。A成分であるポリオキシアルキレン系重合体は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、直鎖状の重合体を50重量%以上含有する。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量は、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは500〜50000であり、より好ましくは5000〜30000である。ここでいう数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体は、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは1.6以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.4以下である。なお、ここでいう、Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
GPC法による分子量(重量平均分子量、数平均分子量)の測定は、東ソー社製GPC装置(HLC−8120GPC)を用いて測定される、ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下の通りである。
サンプル濃度:0.2重量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μL
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:サンプルカラム TSKgel GMH−H(S)
検出器:示差屈折計
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体におけるアルケニル基としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なアルケニル基を採用し得る。このようなアルケニル基としては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、一般式(3)で表されるアルケニル基である。
一般式(3):H2C=C(R4)−
(一般式(3)中、R4は水素またはメチル基である。)
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体中におけるアルケニル基の結合様式としては、例えば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合などが挙げられる。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の具体例としては、例えば、一般式(4)で表される重合体が挙げられる。
一般式(4):{H2C=C(R3a)−R4a−O}a1R5a
(一般式(4)中、R3aは水素またはメチル基、R4aは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であって1個以上のエーテル基が含まれていても良い基、R5aはポリオキシアルキレン系重合体残基であり、a1は正の整数である。)
一般式(4)中、R4aとしては、具体的には、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH(CH3)CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2CH2−などを挙げることができる。これらの中でも、合成の容易さの点からは、−CH2−が好ましい。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の具体例としては、例えば、一般式(5)で表されるエステル結合を有する重合体も挙げられる。
一般式(5):{H2C=C(R3b)−R4b−OCO}a2R5b
(一般式(5)中、R3b、R4b、R5b、a2は、それぞれ、R3a、R4a、R5a、a1と同義である。)
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の具体例としては、例えば、一般式(6)で表される重合体も挙げられる。
一般式(6):{H2C=C(R3c)}a3R5c
(一般式(6)中、R3c、R5c、a3は、それぞれ、R3a、R5a、a1と同義である。)
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の具体例としては、例えば、一般式(7)で表されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
一般式(7):{H2C=C(R3d)−R4d−O(CO)O}a4R5d
(一般式(7)中、R3d、R4d、R5d、a4は、それぞれ、R3a、R4a、R5a、a1と同義である。)
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体は、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、好ましくは1個〜5個のアルケニル基を有し、より好ましくは1.5個〜3個のアルケニル基を有する。A成分であるポリオキシアルキレン系重合体が1分子中に有するアルケニル基の数が少なくとも1個であることによって、フジツボや藻類などの水生生物の付着を長期間にわたって十分に防止できる水生生物付着防止粘着テープを提供し得る。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体は、例えば、特開2003−292926号公報に記載の方法に従って合成することができる。また、A成分であるポリオキシアルキレン系重合体は市販品を使用しても良い。
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体の特に好ましい態様としては、ポリプロピレングリコールの両末端にアリル基が結合した末端アリル化ポリオキシプロピレンが挙げられる。
B成分である「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物」は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
B成分である「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物」としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)を有する化合物を採用し得る。このような化合物としては、原材料の入手の容易さの点、A成分への相溶性の点、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは、有機成分で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。このような有機成分で変性されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、1分子中に平均して2〜8個のヒドロシリル基を有するものがより好ましい。
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの構造を具体的に示すと、例えば、下記のようなものが挙げられる。
一般式(8)中、2≦m1+n1≦50、2≦m1、0≦n1であり、R6aは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であって1個以上のフェニル基を含有していても良い。
一般式(9)中、0≦m2+n2≦50、0≦m2、0≦n2であり、R6bは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であって1個以上のフェニル基を含有していても良い。
一般式(10)中、3≦m3+n3≦20、2≦m3≦19、0≦n3<18であり、R6cは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であって1個以上のフェニル基を含有していても良い。
一般式(11)中、1≦m4+n4≦50、1≦m4、0≦n4であり、R6dは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であって1個以上のフェニル基を含有していても良い。また、一般式(11)中、2≦b1であり、R8aは2価〜4価の有機基であり、R7aは2価の有機基または単結合である。
一般式(12)中、0≦m5+n5≦50、0≦m5、0≦n5であり、R6eは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であって1個以上のフェニル基を含有していても良い。また、一般式(12)中、2≦b2であり、R8bは2価〜4価の有機基であり、R7bは2価の有機基または単結合である。
一般式(13)中、3≦m6+n6≦50、1≦m6、0≦n6である。R6fは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基であって1個以上のフェニル基を含有していても良い。また、一般式(13)中、2≦b3であり、R8cは2価〜4価の有機基であり、R7cは2価の有機基または単結合である。
B成分である「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物」は、本発明の効果をより発現し得る点で、A成分との相溶性が良好なものが好ましい。このようなB成分としては、例えば、下記のようなものが挙げられる。
一般式(14)中、n7は4以上10以下の整数である。
一般式(15)中、2≦m8≦10、0≦n8≦5であり、R6gは炭素数8以上の炭化水素基である。
B成分の好ましい具体例としては、例えば、ポリメチルハイドロジェンシロキサンが挙げられる。また、A成分との相溶性確保とSi−H量の調整のために、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステルなどにより変性したポリメチルハイドロジェンシロキサンが例示され、一例として、以下の構造があげられる。
一般式(16)中、2≦m9≦20、1≦n9≦20である。
B成分は、公知の方法により合成することができる。B成分は市販品を使用してもよい。
ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂に対する、(A成分)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体および(B成分)1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物の合計の含有割合は、好ましくは0.1重量%〜50重量%であり、より好ましくは0.3重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%〜35重量%であり、特に好ましくは0.8重量%〜30重量%であり、最も好ましくは1重量%〜25重量%である。ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂に対する、(A成分)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体および(B成分)1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物の合計の含有割合を上記範囲内に調整することにより、フジツボや藻類などの水生生物の付着を長期間にわたって一層十分に防止できる水生生物付着防止粘着テープを提供し得る。
(A成分)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体および(B成分)1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物の含有比率は、重量比((A成分)/(B成分))で、好ましくは50/50〜99.9/0.1であり、より好ましくは60/40〜99.7/0.3であり、さらに好ましくは70/30〜99.5/0.5であり、特に好ましくは75/25〜99/1であり、最も好ましくは80/20〜98/2である。(A成分)1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体および(B成分)1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物の含有比率を上記範囲内に調整することにより、フジツボや藻類などの水生生物の付着を長期間にわたって一層十分に防止できる水生生物付着防止粘着テープを提供し得る。
架橋シリコーン樹脂は、好ましくは、ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂と、A成分と、B成分との架橋反応によって得られる。このような架橋反応は、好ましくは、加熱により進行する。すなわち、ポリシロキサン鎖を主鎖として1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するシリコーン樹脂中のアルケニル基、および、A成分(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)中のアルケニル基が、B成分の1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)でヒドロシリル化されて、架橋反応が進行することによって硬化が起こる。このようにして得られる硬化物は、活性が低く、水、金属、プラスチック材料などの種々の物質に接触しても反応しない。
A成分とB成分は、本発明の効果をより発現し得る点で、B成分のヒドロシリル基が、A成分のアルケニル基に対して、官能基比が、好ましくは0.3以上2未満となるように配合され、より好ましくは0.4以上1.8未満となるように配合され、さらに好ましくは0.5以上1.5未満となるように配合される。
架橋反応は、例えば、ヒドロシリル化触媒の存在下で行っても良い。
このようなヒドロシリル化触媒としては、例えば、塩化白金酸;白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)m、Pt〔(MeViSiO)4〕mなど);白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4など);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt〔P(OPh)3〕4、Pt〔P(OBu)3〕4など);Pt(acac)2など);Ashbyらの米国特許第3159601および米国特許第3159662号に記載された白金−炭化水素複合体;Lamoreauxらの米国特許第3220972号に記載された白金アルコラート触媒;などが挙げられる。なお、これらの式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトナトを表し、n、mは整数を表す。また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3)3、RhCl3、Rh/Al2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4などが挙げられる。
このようなヒドロシリル化触媒は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
このようなヒドロシリル化触媒としては、より具体的には、触媒活性の点から、好ましくは、塩化白金酸、白金−ホスフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2が挙げられる。
ヒドロシリル化触媒の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な配合量を採用し得る。このような配合量としては、例えば、A成分中のアルケニル基1molに対して、好ましくは1×10−1mol以下であり、より好ましくは5.3×10−2mol以下であり、さらに好ましくは3.5×10−2mol以下であり、特に好ましくは1.4×10−3mol以下である。なお、ヒドロシリル化触媒の配合量の下限は、好ましくは8.9×10−5mol以上であり、より好ましくは1.8×10−4mol以上である。
防汚層は防汚剤を含む。
防汚層中、架橋シリコーン樹脂に対する防汚剤の含有割合は、好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは2重量%〜200重量%であり、さらに好ましくは3重量%〜180重量%であり、特に好ましくは4重量%〜150重量%であり、最も好ましくは5重量%〜120重量%である。上記の含有割合を上記範囲内に調整することにより、防汚層の防汚効果を十分に発現し得るとともに、防汚層の外観特性や機械的特性を十分に発現し得る。
防汚剤は、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルを含む。ポリエーテル変性シリコーンオイルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。防汚剤が、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルを含むことにより、本発明の水生生物付着防止粘着テープは、フジツボや藻類などの水生生物の付着を効果的に防止し得る。
また、本発明において、防汚剤が、ポリエーテル変性シリコーンオイルと、ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルを含むことにより、これらオイルが防汚層表面へ効果的にしみ出すことができ、防汚効果が持続できるとともに、フジツボや藻類などの水生生物が付着した後にそれを除去した後もなお防汚効果が発現できる。さらに、この防汚効果の持続は、本発明において、防汚層が、主鎖が架橋構造を有する架橋シリコーン樹脂を含むことにより、非常に効果的に発現できる。
防汚剤中のポリエーテル変性シリコーンオイルの含有割合は、好ましくは0.1重量%〜90重量%であり、より好ましくは1重量%〜80重量%であり、さらに好ましくは3重量%〜70重量%であり、特に好ましくは5重量%〜50重量%である。防汚剤中のポリエーテル変性シリコーンオイルの含有割合を上記範囲内に調整することにより、防汚層の防汚効果をより十分に発現し得るとともに、防汚層の外観特性や機械的特性をより十分に発現し得、フジツボや藻類などの水生生物の付着をより効果的に防止し得る。
ポリエーテル変性シリコーンオイルは、そのHLBが、好ましくは4〜15である。ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLBを上記範囲内に調整することにより、防汚層の防汚効果をより十分に発現し得るとともに、防汚層の外観特性や機械的特性をより十分に発現し得、フジツボや藻類などの水生生物の付着をより効果的に防止し得る。なお、HLBとは、オイルの親水性と親油性とのバランスを数値的に示した親水性親油性バランスのことであり、Valau of Hydrophile and Liophile Balanceの略称である。ポリエーテル変性シリコーンオイルのHLBは、例えば、ポリエーテルポリオキシアルキレン鎖(基)とジメチルシロキサン鎖(基)との鎖長の選択、ポリエーテルポリオキシアルキレン鎖(基)のうち、親水性のポリエチレンオキサイドとこれよりも疎水性のポリプロピレンオキサイドのそれぞれの鎖長の選択、などにより制御し得る。
ポリエーテル変性シリコーンオイルは、主鎖がシロキサン結合を有するポリシロキサンであり、1個以上のポリオキシアルキレン基を置換基として有するものである。主鎖は環を形成していても良い。
ポリエーテル変性シリコーンオイルにおけるポリオキシアルキレン基の結合位置は、任意の適切な結合位置であり得る。例えば、ポリオキシアルキレン基が主鎖の両末端に結合されていても良いし、ポリオキシアルキレン基が主鎖の片末端に結合されていても良いし、ポリオキシアルキレン基が側鎖に結合されていても良い。
本発明の効果をより十分に発現させるためには、ポリエーテル変性シリコーンオイルとして、ポリオキシアルキレン基が側鎖に結合された、側鎖型(直鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイルを選択することが好ましい。
側鎖型(直鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイルは、好ましくは、一般式(16)で表される。
一般式(17)中、Rはそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基を表し、R1は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R2は水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表し、R3は−(C2H4O)a−(C3H6O)b−で表されるポリオキシアルキレン基であり、aは1〜50であり、bは0〜30であり、mは1〜7000であり、nは1〜50である。
一般式(17)中、Rは、好ましくはメチル基である。
ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、例えば、信越シリコーン(株)製の、商品名「KF−6011」(HLB:14.5)、「KF−6011P」(HLB:14.5)、「KF−6012」(HLB:7.0)、「KF−6013」(HLB:10.0)、「KF−6015」(HLB:4.5)、「KF−6016」(HLB:4.5)、「KF−6017」(HLB:4.5)、「KF−6017P」(HLB:4.5)、「KF−6043」(HLB:14.5)、「KF−6004」(HLB:9.0)等の側鎖型(直鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の、商品名「KF−6028」(HLB:4.0)、「KF−6028P」(HLB:4.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越シリコーン(株)製の、商品名「KF−6038」(HLB:3.0)等の側鎖型(分岐鎖タイプ、アルキル共変性タイプ)ポリエーテル変性シリコーンオイル;などが挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルとしては、主鎖がシロキサン結合からなるポリシロキサンであり、置換基を有していてもよい。主鎖は環を形成していても良い。ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイルを除く)が挙げられる。
ストレートシリコーンオイルにおける置換基は、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
ストレートシリコーンオイルにおける置換基の結合位置は、任意の適切な結合位置であり得る。例えば、置換基が主鎖の両末端に結合されていても良いし、置換基が主鎖の片末端に結合されていても良いし、置換基が側鎖に結合されていても良い。
ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルは、好ましくは、一般式(18)で表される。
一般式(18)中、R1は、同一または異なって、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、フルオロアルキル基、ポリエーテル基、または水酸基を表し、R2は、同一または異なって、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ポリエーテル基、フルオロアルキル基を表し、nは0〜150の整数を表す。一般式(18)中のR1としては、好ましくは、メチル基、フェニル基、水酸基である。一般式(18)中のR2としては、好ましくは、メチル基、フェニル基、4−トリフルオロブチル基である。
一般式(18)で表されるシリコーンオイルは、数平均分子量が、好ましくは180〜20000であり、より好ましくは1000〜10000である。
一般式(18)で表されるシリコーンオイルは、粘度が、好ましくは10センチストークス〜10000センチストークスであり、より好ましくは100センチストークス〜5000センチストークスである。
一般式(18)で表されるシリコーンオイルとしては、具体的には、例えば、両末端または片末端のR1が水酸基である末端水酸基含有ジメチルシリコーンオイル、R1およびR2の全てがメチル基であるジメチルシリコーンオイル、これらのジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部がフェニル基に置換されたフェニルメチルシリコーンオイルなどが挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルとしては、例えば、信越シリコーン(株)製の、商品名「KF96L」、「KF96」、「KF69」、「KF99」、「KF50」、「KF54」、「KF410」、「KF412」、「KF414」、「FL」、「KF−6104」、「KF−6100」;東レダウコーニング(株)製の、商品名「BY16−846」、「SF8416」、「SH200」、「SH203」、「SH230」、「SF8419」、「FS1265」、「SH510」、「SH550」、「SH710」、「FZ−2110」、「FZ−2203」;などが挙げられる。
防汚剤中のポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルの含有割合は、好ましくは10重量%〜99.9重量%であり、より好ましくは20重量%〜99重量%であり、さらに好ましくは30重量%〜97重量%であり、特に好ましくは50重量%〜95重量%である。防汚剤中のポリエーテル変性シリコーンオイル以外の非反応性シリコーンオイルの含有割合を上記範囲内に調整することにより、防汚層の防汚効果をより十分に発現し得るとともに、防汚層の外観特性や機械的特性をより十分に発現し得、フジツボや藻類などの水生生物の付着をより効果的に防止し得る。
防汚層は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の防汚剤を含んでいても良い。このような他の防汚剤としては、例えば、流動パラフィン、界面活性剤、液状炭化水素、フッ化オイル、抗菌剤、ワックス、ペトロラタム、動物脂類、脂肪酸、珪藻付着防止剤、農薬、医薬品(メデトミジンなど)、酵素活性阻害剤(アルキルフェノール、アルキルレゾルシノールなど)、生物忌避剤などが挙げられる。これらは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。防汚層が、このような他の防汚剤を含む場合、防汚層の防汚効果がより十分に発現できる場合があるとともに、防汚層の外観特性や機械的特性がより十分に発現できる場合があり、フジツボや藻類などの水生生物の付着をより一層効果的に防止できる場合がある。
流動パラフィンとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な流動パラフィンを採用し得る。流動パラフィンとしては、例えば、(株)MORESCO製のP−40、P−55、P−60、P−70、P−80、P−100、P−120、P−150、P−200、P−260、P−350、和光純薬工業(株)製の炭化水素系流動パラフィンなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、などが挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なアニオン界面活性剤を採用し得る。このようなアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩などが挙げられる。アニオン界面活性剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
ノニオン界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なノニオン界面活性剤を採用し得る。このようなノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイドなどが挙げられる。ノニオン界面活性剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
両性界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な両性界面活性剤を採用し得る。このような両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシ型またはスルホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。両性界面活性剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
カチオン界面活性剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なカチオン界面活性剤を採用し得る。このようなカチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
液状炭化水素としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な液状炭化水素を採用し得る。例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、1−テトラデセンなどが挙げられる。
フッ化オイルとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なフッ化オイルを採用し得る。このようなフッ化オイルとしては、例えば、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。化学的安定性の点でパーフルオロポリエーテルが好ましい。パーフルオロポリエーテルとしては、例えば、構造式:A−(C3F6O)x(CF2O)y(C2F4O)z―B(式中、末端基Aは、−F、−CF3、−C2F5、−C3F7、−CF(CF3)OCF3、−OF、−OCF3、−OC2F5、−OC3F7、−OCF(CF3)OCF3のいずれかであり、末端基Bは、−CF3、−C2F5、−C3F7、−CF(CF3)OCF3のいずれかであり、x、y、zは0または正の整数であり、x+y+z>1であって、25℃における粘度が50cs〜500000csである。)で表される化合物が挙げられる。パーフルオロポリエーテルの具体例としては、例えば、CF3O−(CF2CF(CF3)O)x(CF2O)y−CF3(式中、x、yは上記の通りである。)、CF3O−(CF2O)y(C2F4O)z−CF3(式中、y、zは上記の通りである)、CF3O−(CF2CF(CF3)O)x−CF3(式中、xは上記の通りである)、及び、F−(CF2CF2CF2O)x−C2F5(式中、xは上記の通りである)などが挙げられる。
抗菌剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な抗菌剤を採用し得る。このような抗菌剤としては、いわゆる抗菌剤、除草剤などが挙げられる。
いわゆる抗菌剤としては、例えば、アゾキシストロビン、ベナラキシル、ベノミル、ビテルタノール、ブロムコナゾール、キャプタホール、キャプタン、カルベンダジム、キノメチオネート、クロロタロニル、クロゾリナート、シプロジニル、ジクロフルアニド、ジクロフェン、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジメトモルフ、ジニコナゾール、ジチアノン、エポキシコナゾール、ファモキサドン、フェナリモル、フェンブコナゾール、フェンフラム、フェンピクロニル、フェンチン、フルアジナム、フルジオキソニル、フルオルイミド、フルキンコナゾール、フルスルファミド、フルトラニル、ホルペット、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサコナゾール、イミベンコナゾール、イポコナゾール、イプロジオン、クレソキシムメチル、マンゼブ、マンネブ、メパニピリム、メプロニル、メトコナゾール、メチラム、ニッケルビス(ジメチルジチオカルバメート)、ヌアリモル、オキシン銅、オキソリン酸、ペンシクロン、フタリド、プロシミドン、プロピネブ、キントゼン、硫黄、テブコナゾール、テクロフタラム、テクナゼン、チフルザミド、チオフェネートメチル、チラム、トルクロホスメチル、トリルフルアニド、トリアジメホン、トリアジメノール、トリアゾキシド、トリホリン、トリチコナゾール、ビンクロゾリン、ジネブ、ジラムなどが挙げられる。また、天然物の抗菌剤として、例えば、孟宗竹抽出物、ヒノキチオール、ニンニクエキス、カンゾウなどの漢方成分が挙げられる。また、銀、銅、亜鉛、錫、鉛、金などの無機抗菌剤が挙げられる。また、必要に応じて、これら無機抗菌剤の担体として、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、炭酸カルシウム、シリカゲル、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ポリシロキサン化合物、リン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、イオン交換体、酸化亜鉛などが使用できる。合成物の抗菌剤としては、例えば、2−ピリジンチオール−1−オキサイド、p−クロロ−m−クレゾール、ポリヘキサメチレンヒグアナイド、ハイドロクロライド、塩化ベンゼトニウム、アルキルポリアミノエチルグリシン、ベンズイソチアゾリン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2,2’−ジチオ−ビス−(ピリジン−1−オキサイド)などが挙げられる。
除草剤としては、例えば、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シクロスルファムロン、エトキシスルフロン、フルセトスルフロン、アジムスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、リムスルフロン、ハロスルフロンメチル、ニコスルフロン、チフェンスルフロンメチル、トリトスルフロン、ホラムスルフロン、アミドスルフロン、クロルスルフロン、ヨードスルフロン、メトスルフロンメチル、スルホスルフロン、フラザスルフロン、クロリムロンエチル、トリフルスルフロンメチル、オキサスルフロン、スルホメツロンメチル、トリフロキシスルフロンナトリウム、フルピルスルフロンエチルナトリウム、イマザモックス、イマゼタピル、イマザキン、イマザピル、イマザピック、フルカルバゾンナトリウム、プロポキシカルバゾンナトリウム、ビスピリバックナトリウム、ピリフタリド、ピリミノバックメチル、ピリミスルファン、ピリチオバックナトリウム、フルメツラム、ペノキススラム、メトスラム、メタゾスルフロン、プロピリスルフロン、ベンタゾン、アトラジン、シマジン、ジメタメトリン、ピリデート、ピリダホル、テルブチラジン、テルブトリン、ブロモキシニル、アイオキシニル、メトリブジン、レナシル、ブロマシル、デスメディファム、フェンメディファム、メタミトロン、シメトリン、プロメトリン、ジウロン、イソウロン、リニュロン、シデュロン、クロロトルロン、ベンゾフェナップ、ピラゾレート、ピラゾキシフェン、ベンゾビシクロン、イソキサフルトール、テフリルトリオン、テンボトリオン、イソキサクロルトール、メソトリオン、スルコトリオン、ベンゾイルヘキサジオン、プラチラクロール、ブタクロール、カフェンストロール、フェントラザミド、メフェナセット、エトベンザニド、テニルクロール、フルフェナセット、インダノファン、アニロホス、メトラクロール、メタザクロール、アラクロール、プロパクロール、ピペロホス、ジメテナミド、アセトクロール、ナプロパミド、チオベンカルブ、モリネート、ベンフレセート、ピリブチカルブ、エトフメセート、エスプロカルブ、プロスルホカルブ、ダラポン、ブチレート、ペントキサゾン、ピラクロニル、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ピラゾジル、オキシフルオルフェン、アシフルオルフェン、ビフェノックス、ピラフルフェンエチル、フルアゾレート、フルチアセットメチル、ブタフェナシル、ベンズフェンジゾン、カルフェントラゾンエチル、スルフェントラゾン、フルミオキサジン、アクトニフェン、フルミクロラック、プロフェキサジノン、セトキシジム、クレソジム、テプラロキシジム、アロキシジム、フェノキサプロップ−P−エチル、ジクロホップメチル、フルアジホップ−P−ブチル、キザロホップ−P−エチル、シハロホップブチル、グルホシネート、グルホシネートP、ビアラホス、グリホサート、グリホサートイソプロピルアミン、スルホサート、ピクロラム、トリクロピル、クロメプロップ、MCPB、2,4−D,MCPA、ジカンバ、キンクロラック、メコプロップ、ジクロルクロップ、ジフルフェニカン、フルルタモン、ピコリナフェン、フルリドン、ノルフルラゾン、ベンフルブタミド、フルロクロリドン、パラコート、ジクワット、ブタミホス、ペンディメタリン、トリフルラリン、ジチオピル、チアゾピル、アミプロホスメチル、ブロモブチド、クミルロン、ダイムロン、イソキサベン、ジクロベニル、フルポキサム、クロルチアミド、オキサジクロメホン、イプフェンカルバゾン、フェノキサスルホン、SW−065、ペラルゴン酸、クロマゾン、およびその塩などが挙げられる。
防汚層は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の添加剤を含んでいても良い。このような他の添加剤としては、例えば、耐候剤として紫外線吸収剤が挙げられる。このような紫外線吸収剤としては、具体的には、例えば、BASF製の、商品名「TINUVIN571」、「TINUVIN460」、「TINUVIN213」、「TINUVIN234」、「TINUVIN329」、「TINUVIN326」などが挙げられる。このような紫外線吸収剤の添加量は、シリコーン樹脂に対して、好ましくは0.5重量%以上10重量%未満である。シリコーン樹脂に対する紫外線吸収剤の添加量を上記範囲内に調整することにより、防汚層の形成を阻害することなく耐候剤としての効果を十分に発現し得る。
防汚層には、強度を向上させるために、フィラーなどを添加させることができる。フィラーとしては、例えば、シリカ粒子、珪藻土などが挙げられる。また、フィラーとしては、分散性の観点から、表面が疎水性処理された粒子が好ましい。このような表面処理方法としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチレンジシラザン、環状ジメチルシロキサンなどで表面処理する方法が挙げられる。このような表面が疎水性処理された粒子の大きさとしては、好ましくは、平均粒径が5nm〜300nmである。このような表面が疎水性処理された粒子の大きさを上記範囲内に調整することにより、防汚層に十分な強度を付与し得るとともに、防汚層中に該粒子が均一に分散し得、防汚層に衝撃が加わった際にクラックが生じにくくなり得る。このような表面が疎水性処理された粒子の添加量は、シリコーン樹脂に対して、好ましくは0.1重量%〜10重量%である。このような表面が疎水性処理された粒子の添加量を上記範囲内に調整することにより、防汚層に十分な強度を付与し得るとともに、防汚層形成材料の粘度を抑制し得、防汚剤など添加した材料を均一に分散し得、基材層上に塗工する場合、精密に塗工し得る。このような表面が疎水性処理された粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の疎水性フュームドシリカが挙げられ、具体的には、日本アエロジル社製の、商品名「AEROSIL(登録商標)RXシリーズ」(RX50、RX200、RX300など)、「AEROSIL(登録商標)RYシリーズ」(RY50、RY200、RY200Sなど)、「AEROSIL(登録商標)NY50シリーズ」、「AEROSIL(登録商標)NAXシリーズ」、「AEROSIL(登録商標)Rシリーズ」などが挙げられる。
本発明の水生生物付着防止粘着テープにおいて、防汚層と水生生物との付着力は、好ましくは0.10N/mm2以下であり、より好ましくは0.08N/mm2以下であり、さらに好ましくは0.05N/mm2以下であり、特に好ましくは0.04N/mm2以下である。防汚層と水生生物との付着力の下限値は、小さければ小さいほど良いが、材料等を考慮して、現実的には、好ましくは0.005N/mm2以上であり、より好ましくは0.001N/mm2以上である。防汚層と水生生物との付着力を上記範囲内に調整することにより、本発明の水生生物付着防止粘着テープは、フジツボや藻類などの水生生物の付着をきわめて効果的に防止し得る。
なお、防汚層と水生生物との付着力の測定方法としては、例えば、デジタルフォースゲージ(SHIMPO製、FGN−50B)本体に計測用アダプタ(延長棒に山形アダプタ)を取り付けて測定機とし、フジツボの付着した粘着テープを選び、フジツボの直径をノギスで測定し、測定機の測定値をリセットした後、粘着テープの表面に付着したフジツボの外殻下部に測定用アダプタを静かに接触させ、粘着テープの表面と平行になるように測定機をスライドさせ、フジツボを剥離したときに測定機に表示される最大負荷値(N)を記録し、先に測定しておいたフジツボの直径からフジツボの付着面積(mm2)を円の面積公式によって計算し、記録した最大負荷値を付着面積で除して、単位面積あたりの負荷(N/mm2)を計算で求め、これを、付着力とする。
防汚層の厚みは、本発明の水生生物付着防止粘着テープの用途や使用環境などによって、任意の適切な厚みを採用し得る。防汚層の厚みは、好ましくは5μm〜500μmである。防汚層の厚みを上記範囲内に調整することにより、防汚効果が十分に長く有効に働き得るとともに、ハンドリング性に優れ得、テープのつなぎ目部分の凹凸が小さくなり得、汚れが付き難くなり得る。
基材層は、1層のみであっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。基材層が2層以上の積層体である場合は、該積層体は、例えば、ラミネートで成形しても良いし、共押出しによって成形しても良い。
基材層の材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンアクリル樹脂、ゴム系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー類、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などが挙げられる。このような基材層の材料は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
基材層としては、特に、ポリウレタン樹脂が好ましい。このようなポリウレタン樹脂としては、例えば、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタンなどが挙げられ、耐久性や強度に優れる点、および、本発明の効果を十分に発現できる点から、カーボネート系ポリウレタンが特に好ましい。また、ポリウレタン樹脂のグレードとしては、難黄変グレードと無黄変グレードが好ましく、無黄変グレードがより好ましい。
基材層は、その23℃における弾性率が、好ましくは0.1MPa〜100MPaである。上記弾性率を上記範囲内に調整することによって、防汚層と基材層との密着性に優れた水生生物付着防止粘着テープを提供し得る。
基材層は、その23℃における伸長回復率が、好ましくは70%以上である。上記伸長回復率を上記範囲内に調整することによって、防汚層と基材層との密着性に優れた水生生物付着防止粘着テープを提供し得る。
基材層は、その破断伸びが、好ましくは100%〜1000%であり、より好ましくは150%〜900%であり、さらに好ましくは200%〜800%である。基材層の破断伸びを上記範囲内に調整することによって、本発明の水生生物付着防止粘着テープは、様々な被着体の形状に良好に追従でき得るとともに、平面に良好に貼付でき得るだけでなく、船体表面に存在するような曲面部分、90度角の部分、鋭角部分などにも良好に貼付でき得る。
基材層は、その破断点応力が、好ましくは20MPa以上であり、より好ましくは25MPa〜200MPaであり、さらに好ましくは30MPa〜150MPaであり、特に好ましくは35MPa〜100MPaである。基材層の破断点応力を上記範囲内に調整することによって、使用済みの本発明の水生生物付着防止粘着テープを被着体から剥がす際に基材層が切断されることを抑制し得る。
なお、上記破断伸びおよび破断点応力は、例えば、JIS7161、JIS7162、JIS7127に準じて、引っ張り試験機(AUTOGRAPH AGS−X、(株)島津製作所製)および解析ソフト(TRAPEZIUM X、(株)島津製作所製)を用いて測定することができる。
基材層の厚みは、本発明の水生生物付着防止粘着テープの用途や使用環境などによって、任意の適切な厚みを採用し得る。基材層の厚みは、好ましくは1μm〜1000μmであり、より好ましくは10μm〜800μmであり、さらに好ましくは20μm〜500μmである。基材層の厚みを上記範囲内に調整することにより、本発明の水生生物付着防止粘着テープは、曲面や鋭角面など、平面以外の部位にも容易に作業性良く貼着でき得るとともに、貼着後の表面にしわや浮きなどの外観不良を生じ難くし得る。
基材層は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を含んでいても良い。このような添加剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、シリコーン系ポリマー、液状アクリル系共重合体、粘着付与剤、老化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、ポリエチレンイミン、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、リン酸エステル、滑剤、界面活性剤、充填剤や顔料(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラックなど)などが挙げられる。
本発明の水生生物付着防止粘着テープの耐候性を向上させるためには、基材層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
基材層には、防汚層との密着性を向上させるために、プライマーをあらかじめ塗工しておいても良いし、シランカップリング剤をあらかじめ添加しておいても良い。
シランカップリング剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。具体的なシランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業(株)製の、商品名「KBM5103」、「KBM1003」、「KBM903」、「KBM403」、「KBM802」などが挙げられる。
基材層にシランカップリング剤が含まれる場合、基材層中のシランカップリング剤の含有割合は、好ましくは0.01重量%〜10重量%である。基材層中のシランカップリング剤の含有割合を上記範囲内に調整することにより、基材層が硬くなり過ぎることを抑制し得るとともに、基材層と防汚層との間に十分な密着性を発現し得る。
粘着剤層としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な粘着剤層を採用し得る。このような粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂系粘着剤、アミノ樹脂系粘着剤、ビニル樹脂(酢酸ビニル系重合体など)系粘着剤、硬化型アクリル樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤などが挙げられる。粘着剤層の材料は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
粘着剤層は、その23℃で引張速度300mm/minにおける180度ピール接着力が、好ましくは30N/20mm以下であり、より好ましくは20N/20mm以下であり、さらに好ましくは15N/20mm以下である。粘着剤層の23℃で引張速度300mm/minにおける180度ピール接着力を上記範囲内に調整することにより、本発明の水生生物付着防止粘着テープを被着体から剥がし易くし得る。
粘着剤層は、海水に接触させた際に、該粘着剤層における海水に接触させた部分の圧縮弾性率が、海水接触前の該粘着剤層における圧縮弾性率に対して、好ましくは1.1倍以上であり、より好ましくは1.2倍以上であり、さらに好ましくは1.5倍以上である。粘着剤層を海水に接触させた際に、該粘着剤層における海水に接触させた部分の圧縮弾性率を、海水接触前の該粘着剤層における圧縮弾性率に対して、上記範囲内に調整することにより、水中においても良好な接着性を発現し得る。粘着剤層を海水に接触させた際の、該粘着剤層における海水に接触させた部分の圧縮弾性率の、海水接触前の該粘着剤層における圧縮弾性率に対する倍率の上限は、取扱性の観点から、好ましくは100倍以下である。なお、ここにいう海水とは、市販されている模擬海水(人工海水)のことを意味する。
粘着剤層の厚みは、本発明の水生生物付着防止粘着テープの用途や使用環境などによって、任意の適切な厚みを採用し得る。粘着剤層の厚みは、好ましくは10μm以上である。粘着剤層の厚みを上記範囲内に調整することにより、被着体の形状に十分に追従し得るようになり、接着面積が確保し得、十分な粘着力を発現し得る。粘着剤層の厚みの上限は、取扱性の観点から、好ましくは100μm以下である。
本発明の水生生物付着防止粘着テープは、任意の適切な方法によって製造し得る。このような方法としては、例えば、別途準備した基材層と粘着剤層を貼付した後に防汚層形成材料を基材層上に塗布して防汚層を形成する方法、基材層の一方の面に粘着剤層形成材料を塗布して粘着剤層を形成し、基材層のもう一方の面に防汚層形成材料を塗布して防汚層を形成する方法、基材層形成材料と粘着剤層形成材料を共押出しして基材層/粘着剤層の積層体を形成させた後に防汚層形成材料を基材層上に塗布して防汚層を形成する方法、などが挙げられる。
防汚層形成材料を基材層上に塗布する方法としては、例えば、スプレー、ハケ塗り、ローラー、カーテンフロー、ロール、ディップ、コーターなどが挙げられる。これらの方法で防汚層形成材料を基材層上に塗布して、例えば、室温から250℃までの温度(好ましくは、室温から180℃の温度)で乾燥させることにより、防汚層を形成することができる。特に、本発明の水生生物付着防止粘着テープにおいては、コンマコーターなどの精密コーターを採用して防汚層形成材料を基材層上に塗布することは、好ましい実施形態の一つである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
<180度ピール接着力の測定>
試験対象の粘着テープの粘着剤層の粘着剤をポリエステルフィルム(商品名「S−10」、東レ(株)製、厚み38μm)にハンドローラーを使用して転写し、基材付きの粘着シートを得た。これを80mm×20mmの試験片サイズにカットした。被着体として30mm×100mm×厚さ2mmのエポキシ樹脂にガラスクロスを入れて強化したプラスチックFRP板を使用した。被着体に試験片を2kgローラーで1往復して貼り合わせ、23℃で30分放置後、初期の180度ピール接着力を測定した。引張速度は300mm/minとした。
<野外防汚試験>
評価を行う粘着テープの全てを大きさ10cm×10cmに切り出し塩化ビニル製プレートに固定した。このプレートを、浜名湖にあるマリーナにて、水深約1mとなるように設置した。1.5ヶ月間このまま放置し、その後、目視による評価を行った。評価基準は次の通りである。
◎:海水面下の表面に、フジツボや藻類などの水生生物の付着がほとんどない状態。
〇:海水面下の表面に20%程度、フジツボや藻類などの水生生物が付着している状態。
△:海水面下の表面に40%程度、フジツボや藻類などの水生生物が付着している状態。
×:海水面下の表面に80%程度、フジツボや藻類などの水生生物が付着している状態。
<ポリエーテル変性シリコーンオイル残存率試験>
粘着テープサンプルの防汚層のみをスパチュラで削り取って採取し、内部標準物質として1,1,2,2−テトラクロロエタン(TCEI)を添加した重ベンゼンを加えて一晩振とうした。その後、この重ベンゼン溶液について1H−NMR測定(AVANCE−III−600、Bruker Biospin製、観測周波数:600MHz、測定温度:300K、化学シフト基準:測定溶媒(1H:7.16ppm))を行った。TCEI(4.9ppm)のピークの積分強度基準としたときのポリエーテル変性シリコーン(3.5ppm付近)の積分強度比を求めた。粘着テープサンプルを40℃の人工海水(GEX(株)製のシーウォータードライタイプを純水1000gに対して36g溶解)に1か月間浸漬したものについても同様の方法にてポリエーテル変性シリコーンの積分強度比を求めた。
以下の式にてポリエーテル変性シリコーンオイル減少率を求めた。
ポリエーテル変性シリコーンオイル減少率(%)=(40℃人工海水浸漬前浸漬後のポリエーテル変性シリコーンオイルの積分強度比)/(40℃人工海水浸漬前浸漬前のポリエーテル変性シリコーンオイルの積分強度比)
評価基準は次の通りである。
◎:80%以上。
〇:70%以上80%未満。
△:60%以上70%未満。
×:60%未満。
〔実施例1〕
<防汚層/基材層の積層体の製造>
シリコーン樹脂(付加型液状シリコーン樹脂(LIMS)、商品名「KE−1950−50」、信越シリコーン(株)製):95重量部、平均分子量約28000のポリプロピレングリコールの両末端にアリル基を結合させてなる末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂(カネカ社製、商品名「ACX022」):4.65部、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤:0.35部、防汚剤としてシリコーンオイル(商品名「KF96−100cs」、非反応性シリコーンオイル、信越シリコーン(株)製):89重量部とポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名「KF6017」、信越シリコーン(株)製):1重量部、紫外線吸収剤(商品名「TINUVIN571」、BASF製):2重量部、ナノシリカ(商品名「アエロジルRX−300」、日本アエロジル(株)製):1重量部、流動パラフィン(キシダ化学(株)製):5重量部を配合し、ホモミキサーを用いて撹拌して、均一な液状とし、脱泡して、防汚層材料液を得た。
得られた防汚層材料液を、ポリカーボネート系ポリウレタン基材(商品名「DUS451」、シーダム(株)製、厚み100μm)の表面にアプリケーターを用いて塗布し、140℃で2分間硬化させ、厚み200μmの防汚層付基材層(防汚層(1B)(厚み100μm)/基材層(1A)(厚み100μm))を得た。
防汚層からオイル成分をトルエン浸漬により除去して得られた架橋シリコーン樹脂の固体NMRによる分析により、防汚層中には、シリコーン樹脂と、末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂と、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物との架橋反応によって得られる、主鎖が架橋構造を有して該主鎖がポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖を含む架橋シリコーン樹脂が含まれていることが判った。
<粘着剤層の作成>
冷却管、窒素導入管、温度計、および攪拌機を備えた反応容器に、(メタ)アクリル系モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA、東亜合成(株)製):94重量部、アクリル酸(AA):6重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、BASF製):0.1重量部を投入して分散させ、攪拌しながら窒素気流下にて上部よりUV照射することにより、一部のモノマーをポリマーに転化させて塗工可能な粘度に調整し、(メタ)アクリル系モノマー混合物を得た。この(メタ)アクリル系モノマー混合物に、アクリル系オリゴマー(ジシクロペンタニルメタクリレート/メチルメタクリレート=60重量%/40重量%):5重量部、架橋剤として1、6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA):0.16重量部を添加し、これをセパレーター(商品名「MRF50」、三菱樹脂(株)製、厚み50μm)の表面にアプリケーターを用いて塗布し、カバーセパレーター(商品名「MRF38」、三菱樹脂(株)製、厚み38μm)をハンドローラーにて貼り合わせ、さらに紫外線ランプ(BLタイプ)により紫外線を照射(紫外線照度:3.4mW/cm2、積算照射量:2000mJ/cm2)することにより、厚み50μmの粘着剤層(1C)を得た。
粘着剤層(1C)の180度ピール接着力を測定した結果、4.8N/20mmであった。
<粘着テープの作成>
厚み200μmの防汚層付基材層(防汚層(1B)(厚み100μm)/基材層(1A)(厚み100μm))の基材層(1A)側に、粘着剤層(1C)を、ハンドローラーを用いて貼り合わせ、「防汚層(1B)(厚み100μm)/基材層(1A)(厚み100μm)/粘着剤層(1C)(厚み50μm)」からなる粘着テープ(1)を得た。
粘着テープ(1)について、評価を行った。結果を表1に示した。
〔実施例2〕
シリコーン樹脂(付加型液状シリコーン樹脂(LIMS)、商品名「KE−1950−50」、信越シリコーン(株)製):99重量部、平均分子量約28000のポリプロピレングリコールの両末端にアリル基を結合させてなる末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂(カネカ社製、商品名「ACX022」):0.93重量部、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤:0.07重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、「防汚層(2B)(厚み100μm)/基材層(2A)(厚み100μm)/粘着剤層(2C)(厚み50μm)」からなる粘着テープ(2)を得た。
防汚層からオイル成分をトルエン浸漬により除去して得られた架橋シリコーン樹脂の固体NMRによる分析により、防汚層中には、シリコーン樹脂と、末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂と、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物との架橋反応によって得られる、主鎖が架橋構造を有して該主鎖がポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖を含む架橋シリコーン樹脂が含まれていることが判った。
粘着テープ(2)について、評価を行った。結果を表1に示した。
〔実施例3〕
防汚剤としてシリコーンオイル(商品名「KF96−100cs」、非反応性シリコーンオイル、信越シリコーン(株)製):85重量部とポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名「KF6017」、信越シリコーン(株)製):5重量部を用いた以外は、実施例1と同様に行い、「防汚層(3B)(厚み100μm)/基材層(3A)(厚み100μm)/粘着剤層(3C)(厚み50μm)」からなる粘着テープ(3)を得た。
防汚層からオイル成分をトルエン浸漬により除去して得られた架橋シリコーン樹脂の固体NMRによる分析により、防汚層中には、シリコーン樹脂と、末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂と、分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物との架橋反応によって得られる、主鎖が架橋構造を有して該主鎖がポリシロキサン鎖とポリオキシアルキレン鎖を含む架橋シリコーン樹脂が含まれていることが判った。
粘着テープ(3)について、評価を行った。結果を表1に示した。
〔比較例1〕
シリコーン樹脂としてシリコーン樹脂(付加型液状シリコーン樹脂(LIMS)、商品名「KE−1950−50」、信越シリコーン(株)製):100重量部を用い、平均分子量約28000のポリプロピレングリコールの両末端にアリル基を結合させてなる末端アリル化ポリオキシプロピレンよりなる熱硬化性常温液状樹脂(カネカ社製、商品名「ACX022」)および分子中に平均5個のヒドロシリル基を有するハイドロジェンシロキサン系化合物(カネカ社製、商品名「CR500」)よりなる硬化剤を用いない以外は、実施例1と同様に行い、「防汚層(C1B)(厚み100μm)/基材層(C1A)(厚み100μm)/粘着剤層(C1C)(厚み50μm)」からなる粘着テープ(C1)を得た。
粘着テープ(C1)について、評価を行った。結果を表1に示した。