JP6395293B2 - 近赤外線吸収色素を含む熱硬化性樹脂組成物及び近赤外線カットフィルタ - Google Patents

近赤外線吸収色素を含む熱硬化性樹脂組成物及び近赤外線カットフィルタ Download PDF

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Description

本発明は近赤外線吸収色素を含有する熱硬化性樹脂組成物、及びこれらを用いた成形可能な近赤外線吸収フィルタ(光学フィルタ)に関する。
デジタルカメラなどに使用されているCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子は、可視域〜1100nm付近の近赤外域に渡る分光感度を有している。これに対して人間の目は400〜700nm付近の波長の光を感じることができる。よって撮像素子と人間の目では分光感度に大きな差があるため、撮像素子の前面に近赤外域を吸収する近赤外線カットフィルタを備えて、人間の目の視感度に補正することが必要であることが知られている。
撮像素子に用いられる近赤外線カットフィルタには、特許文献1に記載のリン酸塩系ガラスにCuOを添加したガラスフィルタが知られている。しかしながら、この近赤外線吸収能を有するガラスは、非常に高価である。また、ガラスであるために加工性に問題があり、光学特性の設計の自由度も狭く、球面への対応も煩雑である。さらにガラスの厚みを薄くするには限界があり、撮像光学系に組み込む際にはスペースの確保や軽量化に問題がある。それゆえ、薄膜化や球面等への成形が可能な新たな近赤外線カットフィルタのための近赤外線吸収性能を組み込んだ樹脂の開発が望まれていた。
そこで、近赤外線吸収色素を含有する樹脂組成物を撮像素子表面あるいはフィルタ基材表面にコートすることで、近赤外線カットフィルタを作製する研究が行われており、特許文献2ではバインダー樹脂としてポリエステル系フルオレン樹脂を含有する樹脂組成物を用いて近赤外線カットフィルタを作製している。
しかし、この近赤外線カットフィルタは未硬化の樹脂膜であるため、熱や酸素の影響を強く受け、耐熱性が不十分であり、有機溶剤に対する安定性も低い可能性がある。そこで、さらに加工性、耐熱性や耐溶剤性等に優れた近赤外線カットフィルタの開発が強く望まれており、それを作製するための樹脂組成物の開発が強く求められている。
特開1987−128943号公報 特開2014−063144号公報
本発明は樹脂組成物、特に熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いて作製される加工性や耐熱性等に優れた近赤外線カットフィルタの提供を目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するべく、鋭意検討の結果、熱硬化性樹脂と特定の近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物及びそれを用いた近赤外線カットフィルタが前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
[1]一般式(1)又は式(2)で表されるシアニン化合物の少なくともいずれか1種の近赤外線吸収色素と熱硬化性樹脂、並びに必要により熱硬化性樹脂硬化剤を含有することを特徴とする樹脂組成物
Figure 0006395293
Figure 0006395293
(式中、Rはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基又はニトロ基、pは0又は1の整数を示し、Dは下記式(3)又は式(4)、Yは水素原子又は塩素原子、のいずれかであり、*は結合部位を示し、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)、
Figure 0006395293
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[2]熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物、
[3]熱硬化性樹脂硬化剤がエポキシ樹脂と反応可能な官能基を1分子中に2つ以上有するエポキシ樹脂硬化剤であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物、
[4]エポキシ樹脂がフルオレン骨格を有するエポキシ化合物であることを特徴とする[2]又は[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物、
[5]エポキシ樹脂のエポキシ当量が150〜600g/eq.であることを特徴とする[2]乃至[4]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[6]エポキシ樹脂の5%重量減少温度が200℃以上であることを特徴とする[2]乃至[5]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[7]エポキシ樹脂の溶解度が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはシクロヘキサノンに対して、25℃で15質量%以上であることを特徴とする[2]乃至[6]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[8]近赤外線吸収色素が下記式(5)又は式(6)で表されるシアニン化合物の少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物
Figure 0006395293
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(式中、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、メトキシエチル基又はn−ブトキシエチル基、Yは水素原子又は塩素原子、のいずれかであり、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)、
[9]エポキシ樹脂が下記式(7)で表される化学構造を有することを特徴とする[2]乃至[8]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物
Figure 0006395293
(式中、環Zはそれぞれ独立したベンゼン環を含む縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRはそれぞれ独立にシアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基から選ばれる一種であり、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、nは0〜1の整数、xは0〜4の整数、yは0以上の整数、zは1以上の整数である。)、
[10]式(7)で表されるエポキシ樹脂において2つの環Zが共にベンゼン環であることを特徴とする[9]に記載の熱硬化性樹脂組成物、
[11]エポキシ樹脂硬化剤がカルボキシ基、カルボン酸無水物基、アミノ基、フェノール基から選ばれる官能基を有することを特徴とする[3]乃至[10]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[12]エポキシ樹脂硬化剤がカルボン酸基又はカルボン酸無水物基から選ばれる官能基を有することを特徴とする[3]乃至[10]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[13]エポキシ樹脂硬化剤を構成する炭素数が4〜40であることを特徴とする[3]乃至[12]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[14]エポキシ樹脂硬化剤が一般式(8)で表される化合物であることを特徴とする[3]乃至[13]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物
Figure 0006395293
(式中、複数存在するR及びRはそれぞれ独立して、Rは水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基又はカルボキシ基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。Aは式(a)〜式(d)で表され、*はメチレン基との結合部位を表す。)、
[15][1]乃至[14]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物、
[16][1]乃至[14]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形した近赤外線カットフィルタ、
[17][16]に記載の近赤外線カットフィルタを具備した撮像素子、
に関する。
本発明により、加工性及び耐熱性に優れた近赤外線カットフィルタを作成できる熱硬化性樹脂組成物を提供することができた。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、近赤外線吸収色素であるシアニン化合物とエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、並びに熱硬化性樹脂硬化剤を含有することを特徴とする。
本発明に用いられる近赤外線吸収色素は、下記の一般式(1)又は式(2)で表されるカチオン部位を有するシアニン化合物である。
Figure 0006395293
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上記一般式(1)及び式(2)中、置換基Rはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Rはハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基又はニトロ基、pは0又は1の整数を示す。
置換基Rにおいて、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、具体例としては、例えばメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ノルマルブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、等が挙げられ、好ましくはノルマルブチル基、イソブチル基であり、さらに好ましくはイソブチル基ある。セカンダリーブチル基の光学異性体については特に制限されない。
置換基Rが有しても良い置換基としては、例えば、無置換のアルキル基の水素がアルコキシ基に置換されたアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基に置換されたアルコキシアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルコキシ基に置換されたアルコキシアルコキシアルコキシアルキル基等が挙げられ、無置換のアルキル基の水素がハロンゲンに置換されたハロゲン化アルキル基(例えば、クロロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ2−プロピル基等)、無置換のアルキル基の水素がシアノ基に置換されたシアノアルキル基(例えば、シアノプロピル基等)、アミノ基に置換されたアミノアルキル基、アルキルアミノ基に置換されたアルキルアミノアルキル基やジアルキルアミノアルキル基、その他アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルアミノカルボニルアルキル基、アルコキシスルホニルアルキル基等が挙げられる。
前記の置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基としては、上記の無置換のアルコキシ基の水素がアルコキシ基に置換されたアルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基に置換されたアルコキシアルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシ基に置換されたアルコキシアルコキシアルコキシアルコキシ基等が挙げられ、無置換のアルキル基の水素がハロンゲンに置換されたハロゲン化アルコキシ基、アミノ基に置換されたアミノアルコキシ基、アルキルアミノ基に置換されたアルキルアミノアルコキシ基やジアルキルアミノアルコキシ基、その他アルコキシカルボニルアルコキシ基、アルキルアミノカルボニルアルコキシ基、アルコキシスルホニルアルコキシ基等が挙げられる。
上記一般式(1)及び式(2)中の結合基Dは下記式(3)又は式(4)のいずれかであり、式中の置換基Yは水素原子又は塩素原子のいずれかである。下記式(3)及び式(4)における*は結合部位を表す。
Figure 0006395293
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本発明の熱硬化性樹脂組成物において用いられる近赤外線吸収色素は、一般式(1)で表されるカチオン部位を有するシアニン化合物がより好ましく、式(3)及び式(4)を結合基Dとする下記式(5)又は式(6)で表されるカチオン部位を有するシアニン化合物が特に好ましい。両式中のRはそれぞれ独立に、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、メトキシエチル基又はn−ブトキシエチル基、のいずれかであり、Yは水素原子又は塩素原子のいずれかであり、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。
Figure 0006395293
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本発明に用いられる、一般式(1)又は式(2)、式(5)又は式(6)で表されるシアニン化合物の対アニオンXは特に制限されないが、硬化物(光学フィルタ)の耐熱性や透明性等の観点から、以下の式(9)で表されるトリス(パーハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン、又は以下の式(10)で表されるトリス(パーハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましく、トリス(パーハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオンより好ましい。中でも、以下の式(10)においてnが1、Qがフッ素であるトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオンが特に好ましい。
Figure 0006395293
(式中、nは1〜5、Qはフッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子を示す。)
Figure 0006395293
(式中、nは1〜5、Qはフッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子を示す。)
本発明の近赤外線カットフィルタに含まれる上記の近赤外線吸収色素が、本発明の熱硬化性樹脂組成物中で溶解しない場合は、不溶性色素を微粒子化し、他の成分と混合分散して使用することができる。
混合分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて撹拌混合する公知の方法等を挙げることができる。これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)における色素粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用し、ビーズの充填率を大きくすること等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで分散化に用いたビーズや粗粒子を除去することが好ましい。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、アミド樹脂等が挙げられ、これらは本発明においていずれも使用することができ、これらは通常合成により製造されるが、一般に市場より入手可能なものも含まれる。
本発明に用いられるウレタン樹脂は、ウレタン基を分子中に含有する化合物であればいずれを用いてもよい。以下に本発明において用いられるウレタン樹脂について説明する。
例えば、ウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートと2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物との縮合反応により得られる。用いられるポリイソシアネートと2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物は以下の通りであるが、これらのものに限定されない。
用いられるポリイソシアネートとしては、従来公知の各種ポリイソシアネートを使用でき、特定の化合物に限定されない。ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、(o,m又はp)−キシレンジイソシアネート、(o,m又はp)−水添キシレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等のジイソシアネート等が挙げられる。
用いられる2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデンジオール、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデニルジメタノール等の多価アルコール類が挙げられる。
本発明に用いられるシアネート樹脂とは、シアネート基を分子中に含有する化合物であればいずれを用いてもよく、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂およびこれらが一部トリアジン化したプレポリマー等が挙げられる。
本発明において用いられるフェノール樹脂は、熱硬化性樹脂であって、フェノール性水酸基を有する化合物とアルデヒド化合物の縮合反応によって容易に得られる。従来公知の各種フェノール性水酸基を有する化合物とアルデヒド化合物が使用でき、特定の化合物に限定されるものではない。
前記のフェノール性水酸基を有する化合物としては、具体的には例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソエチルフェノール、メタエチルフェノール、パラエチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,6−キシレノール、オルソブチルフェノール、メタブチルフェノール、パラブチルフェノール、オルソオクチルフェノール、メタオクチルフェノール、パラオクチルフェノール、オルソノニルフェノール、メタノニルフェノール、パラノニルフェノール、オルソフェニルフェノール、メタフェニルフェノール、パラフェニルフェノール、オルソシクロヘキシルフェノール、メタシクロヘキシルフェノール、パラシクロヘキシルフェノール、カテコール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、ハイドロキノン等が挙げられ、前記のアルデヒド化合物としては、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド等が挙げられる。
本発明において用いられるアミド樹脂とは、カルボン酸化合物とアミン化合物とを重縮合させることで得られる熱硬化性樹脂であればよい。従来公知の各種カルボン酸とアミン化合物が使用でき、特定の化合物に限定されない。
用いられるカルボン酸化合物としては、例えばマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、クエン酸、イソクエン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸等が挙げられる。
用いられるアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,4−ベンゼントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては、硬化性及び耐熱性等の特性を考慮すると、エポキシ樹脂やアミド樹脂がより好ましく、透明性をも考慮するとエポキシ樹脂単独が特に好ましい。以降では、本発明に好適に用いられるエポキシ樹脂について詳細に説明する。また、本発明に用いられる熱硬化性樹脂は、硬化を促進させる為に必要により熱硬化性樹脂硬化剤を併用することができ、本発明に用いられる熱硬化性樹脂硬化剤は、主にエポキシ樹脂硬化剤とすることができる。
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、メタクリルグリシジル骨格を有する化合物の共重合体を除き、エポキシ基を分子中に含有する化合物であればいずれを用いてもよい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂のエポキシ当量としては、150〜1000g/eq.が好ましく、150〜800g/eq.がより好ましく、150〜600g/eq.がさらに好ましく、150〜350g/eq.が特に好ましい。
また、本発明に用いられるエポキシ樹脂は、熱重量分析における5%重量減少温度が、150℃以上であることが好ましく、耐熱性を考慮すると200℃以上であることが特に好ましい。
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物の加工性を考慮するとエポキシ樹脂の溶解度は、25℃下で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはシクロヘキサノン等の有機溶剤に対して、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが特に好ましい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、主に脂肪族型エポキシ樹脂と芳香族型エポキシ樹脂に分類される。これらについて以下に詳細に説明する。
脂肪族型エポキシ樹脂としては、一分子中に一つ以上の脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂と脂肪族環状構造を全く有さないエポキシ樹脂が挙げられる。例えばテルペンジフェノールや、フェノール類(例えば、フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と脂肪族環構造ジエン(例えば、ジシクロペンタジエンやノルボルナジエン、ヘキサヒドロキシインデン等)との重縮合物及びこれらの変性物から誘導されるグリシジルエーテル化合物、水添ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF)型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、分子内にシクロヘキシル構造、ジシクロペンタジエン構造をもつ化合物や、トリグリジジルイソシアヌレート構造をもつエポキシ樹脂等が挙げられる。
脂肪族環状構造を持たないエポキシ樹脂としては、例えば、ヘキサンジグリシジルエーテル等の直鎖または分岐アルコールから誘導されるグリシジルエーテル類が挙げられる。
芳香族型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、等が挙げられる。これらのうち本発明においては、耐熱性を考慮して上記式(7)のフルオレン骨格(以降、フルオレンと略記)を有するエポキシ樹脂が好適に用いられる。
式(7)において、環Zで表される縮合多環式芳香族炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環等のC8〜C20縮合二環式炭化水素環が挙げられ、C10〜C16縮合二環式炭化水素環が好ましい)、及び縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環等)、等の縮合二乃至四環式炭化水素環等が挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Zは同一又は異なってもよいが、通常は同一の環である事が好ましい。
フルオレンの9位に結合する環Zは、特に限定されないが、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環がナフタレン環の場合は、1−ナフチル基や2−ナフチル基等であってもよく、特に2−ナフチル基が好ましい。
式(7)の置換基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等のC6〜C10アリール基)等]等の非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基である場合が多い。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC1〜C6アルキル基(例えば、C1〜C4アルキル基であり、メチル基が特に好ましい)等が挙げられる。なお、置換基Rの置換基数xが2つ以上である場合、それぞれの置換基Rは互いに異なっていても、同一であってもよい。また、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に結合する置換基Rは同一でも、異なってもよい。フルオレンを構成するベンゼン環に対するRの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。置換基数xは、0又は1が好ましく、0が特に好ましい。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換基数xは、互いに同一又は異なっていてもよい。
環Zに結合する置換基Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1〜C12アルキル基であり、C1〜C8アルキル基が好ましく、C1〜C6アルキル基がさらに好ましい)、シクロアルキル基(シクロへキシル基等のC5〜C8シクロアルキル基であり、C5〜C6シクロアルキル基が好ましい)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等のC6〜C14アリール基であり、C6〜C10アリール基が好ましく、C6〜C8アリール基がさらに好ましい)、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC1〜C4アルキル置換C6〜C10アリール基)等の炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基等のC1〜C8アルコキシ基であり、C1〜C6アルコキシ基が好ましい)、シクロアルコキシ基(C5〜C10シクロアルキルオキシ基等)、アリールオキシ基(C6〜C10アリールオキシ基等)等の−OR10(式中、R10は前記の炭化水素基に同義である。);アルキルチオ基(メチルチオ基等のC1〜C8アルキルチオ基であり、C1〜C6アルキルチオ基が好ましい。)等の基−SR10(式中、R10は前記の炭化水素基に同義である。);アシル基(例えばアセチル基等のC1〜C6アシル基);アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基等のC1〜C4アルコキシ置換カルボニル基等);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等);ヒドロキシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基等のジアルキルアミノ基)、等が挙げられる。
これらのうち、置換基Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基等が好ましく、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1〜C6アルキル基等)]、アルコキシ基(C1〜C4アルコキシ基等)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が特に好ましい。
2つの環Zの置換基Rは同一でも、異なっていてもよい。また、同一の環Zにおいて置換基Rの置換基数yが2以上である場合、それぞれは互いに同一でも、異なっていてもよい。置換基数yは通常0〜8であり、0〜6が好ましく、0〜4がさらに好ましく、0〜2が特に好ましい。なお、2つの環Zにおいて、置換基数yは、互いに同一又は異なっていてもよい。
式(7)の置換基Rは、水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。
式(7)のエポキシ基を有する置換基(以降、グリシジルオキシ基と言う)の置換基数zは、1以上であればよく、通常は1〜4であり、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、1が特に好ましい。なお、置換基数zは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常は同一である場合が多い。なお、グリシジルオキシ基の環Z上の置換位置は特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。
式(7)のグリシジルオキシ基中のエチレンオキシ鎖数nは0〜1の整数であり、好ましくは0である。なお、nは、それぞれの環Zにおいて同一又は異なっていてもよいが、同一の整数が好ましい。
環Z上の単一又は複数のグリシジルオキシ基の置換位置は、環Zのフルオレンの9位に結合している位置に対して特に限定されず、例えば、環Zがベンゼン環の場合はオルト位、メタ位、パラ位などであってもよく、特にパラ位が好ましい。フルオレンの9位に置換する縮合多環式芳香族炭化水素環がナフタレン環の場合は、オルト位、メタ位、パラ位、アナ位、エピ位、カタ位、ペリ位、プロス位、アンフィ位、2,7位であってもよく、特にアンフィ位が好ましい。
式(7)で表される具体的な化合物としては、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−グリシジルオキシフェニル)フルオレン等]、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレン等]等、上記式(7)の置換基数zが1であり、nが0である化合物が挙げられる。
式(7)で表されるフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量としては、150〜1000g/eq.が好ましく、150〜800g/eq.がより好ましく、150〜400g/eq.がさらに好ましく、150〜350g/eq.が特に好ましい。これらは市場から入手容易であるが、例えば大阪ガスケミカル株式会社製のオグソールPG−100やオグソールCG−500等が挙げられる。
本発明で用いられる式(7)で表されるエポキシ樹脂は1種又は2種以上を混合して用いても良い。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記式(7)で表されるエポキシ樹脂である場合が最も好ましいが、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられ、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール(又はクレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2,7−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)アルカンなどのナフタレン環含有エポキシ樹脂等)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有する他のエポキシ樹脂等が挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
他のエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂成分全体に対する上記式(7)で表される化合物の割合は、例えば50〜99.5質量%であり、70〜97質量%が好ましく、90〜98質量%がさらに好ましい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化促進効果を発現するものであれば、特に制限されないが、エポキシ樹脂と反応可能な官能基を1分子中に2つ以上有するものであり、エポキシ樹脂硬化剤を構成する炭素数は通常2〜100であり、炭素数2〜80が好ましく、炭素数3〜60がより好ましく、炭素数4〜40が特に好ましい。また、エポキシ樹脂硬化剤は公知のものが使用でき、例えば、カルボキシル基、又はカルボン酸無水物基を有するカルボン酸系硬化剤、アミノ基、アミド基、ケトイミン基、イミダゾール基、ジシアンジアミド基等を有するアミン系硬化剤、フェノールノボラック等のフェノール基を有するフェノール系硬化剤等が挙げられ、硬化物の耐熱性及び透明性の観点からカルボン酸系硬化剤が好ましい。
カルボン酸系硬化剤は、分子内にカルボキシル基を1つ以上、好ましくは2つ以上、又はカルボン酸無水物基を1つ以上有するものであれば、特に限定されず、公知のものが使用できる。本発明ではカルボン酸無水物及び多価カルボン酸等を用いることができる。
カルボン酸無水物としては具体的には無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、3,3−ジメチル無水グルタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、等の酸無水物が挙げられる。中でもメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、等が、耐光性及び透明性、作業性の観点から特に好ましい。
多価カルボン酸は少なくとも2つのカルボキシル基を有することを特徴とする化合物である。なお、以下の化合物に幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は特に制限されない。多価カルボン酸としては、2官能以上のカルボン酸が好ましく、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、クエン酸等のアルキルトリカルボン酸類;フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ナジック酸、メチルナジック酸等の脂肪族環状多価カルボン酸類;リノレン酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸の多量体およびそれらの還元物であるダイマー酸類;リンゴ酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸の直鎖アルキル二酸類;ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデン―2,5―ジカルボン酸等のビシクロ構造を有する多価カルボン酸類、等を使用することができる。
また、市販されている2官能以上の多価アルコール類を多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸と反応させて得られる多価カルボン酸を使用することもできる。酸無水物又は多価カルボン酸の具体例としては、上記の化合物が挙げられ、多価アルコール類としては、幾何異性体又は光学異性体は特に限定されず、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物のほか、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデンジオール、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデニルジメタノール等の炭素数2〜30の有機脂肪族アルコール類が挙げられる。中でも下記一般式で表されるトリシクロデカン構造(11)、ペンタシクロペンタデカン構造(12)及び(13)、ペンタンジオール(14)を主骨格とするジオール類と前記カルボン酸無水物を反応させて得られる下記一般式(8)で表されるカルボン酸誘導体が好ましい。
Figure 0006395293
Figure 0006395293
(Aは式(a)〜式(d)で表され、*はメチレン基との結合部位を表す。)
上記の一般式(11)〜式(14)の置換基Rは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。メチル基の場合はRは1つ又は2つが好ましく、1つが特に好ましい。入手が容易である点を考慮すると、上記式(11)〜式(13)のRは水素原子が好ましく、式(14)のRはメチル基が好ましい。
式(8)で表されるエポキシ樹脂硬化剤に複数存在する置換基R及びRはそれぞれ独立して、Rは水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基又はカルボキシ基を表し、水素原子又はメチル基、カルボキシ基が好ましく、カルボキシ基がさらに好ましい。置換基Rの数は、各環に1又は2つが好ましく、メチル基の場合は1つが特に好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂硬化剤は単独又は2種以上を用いてもよい。エポキシ樹脂硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂に対し、0.01〜150質量%が好ましく、1〜100質量%がより好ましく、30〜80質量%がさらに好ましく、40〜70質量%が特に好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤として、前述の酸無水物および/または多価カルボン酸以外のエポキシ樹脂硬化剤を併用する場合、全硬化剤中に占める酸無水物および/または多価カルボン酸の割合は30質量%以上が好ましく、40質量%以上が特に好ましい。
併用できるエポキシ樹脂硬化剤としては、例えばアミン系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、アミン類(例えば1,4−ブタンジアミン)やポリアミド化合物(例えばジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂等)、多価フェノール類(例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等)、フェノール類(例えばフェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)、及びホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物およびこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物、さらにイミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独又は2種以上を用いてもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じてカップリング剤を使用することで、硬化物の硬度を補完することが可能である。使用できるカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤;Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらのカップリング剤は1種又は2種以上を混合して用いても良い。カップリング剤は必要に応じて用いられるが、本発明の熱硬化性樹脂組成物の総量に対して通常0.05〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%を添加する。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じてナノオーダーレベルの無機充填材を使用することで、透明性を阻害せずに機械強度等を補完することが可能である。ナノオーダーレベルとしての目安は、平均粒径が500nm以下であるが、平均粒径が200nm以下の充填材を使用することが透明性の観点では特に好ましい。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの充填材は、単独又は2種以上を用いてもよい。これらの無機充填剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物中において0〜95質量%の含有量が好適に用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には着色防止目的のため、光安定剤としてのアミン化合物又は、酸化防止材としてのリン系化合物およびフェノール系化合物を添加することができる。
前記のアミン化合物としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(2,2,6,6−トトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル,1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、N,N’,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5・1・11・2〕ヘネイコサン−21−オン、β−アラニン,N,−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン−21−オン、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−〔5,1,11,2〕−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド,〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3−ベンゼンジカルボキシアミド,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等のヒンダートアミン系、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられるが、ヒンダートアミン系化合物が特に好ましい。
光安定材としてのアミン化合物としては市販品を使用することができる。使用できるアミン系化合物としては特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ製品として、TINUVIN765、TINUVIN770DF、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN622LD、TINUVIN152、CHIMASSORB944;ADEKA製品として、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63P、LA−77Y、LA−81、LA−82、LA−87、等が挙げられる。
酸化防止材としてのリン系化合物としては特に限定されず、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3'−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
上記のリン系化合物は、市販品を用いることもでき、特に限定されるものではないが、市販のリン系化合物としては例えば、ADEKA製品として、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP等が挙げられる。
一方のフェノール化合物としては特に限定されるものではないが、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェノール、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス−〔2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'−ブチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノールアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3'−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3'−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル等が挙げられる。
上記のフェノール系化合物は、市販品を用いることもでき、特に限定されるものではないが、例えば、チバスペシャリティケミカルズ製品としてIRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX295、IRGANOX3114、IRGANOX1098、IRGANOX1520L;アデカ製品として、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−90、アデカスタブAO−330;住友化学工業製品として、SumilizerGA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、Sumilizer GP、等が挙げられる。
このほか、エポキシ樹脂の着色防止剤として市販されている添加剤を使用することができる。例えば、チバスペシャリティケミカルズ製品として、THINUVIN328、THINUVIN234、THINUVIN326、THINUVIN120、THINUVIN477、THINUVIN479、CHIMASSORB2020FDL、CHIMASSORB119FL等が挙げられる。
必要により併用できる添加剤としては、上記のリン系化合物、アミン化合物又はフェノール系化合物の中から少なくとも1種以上を含有することが好ましく、その添加率は特に限定されないが、本発明の熱硬化性樹脂組成物の全重量に対して、通常0.005〜5.0質量%の範囲が好ましい。
本発明の熱硬化性硬化性樹脂組成物に硬化速度向上のため、硬化促進剤を併用することができる。硬化促進剤としては、硬化剤の種類等に応じて選択でき、例えば、アミン類[例えば、第3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−1等)、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾール等のアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾール等のアリールイミダゾール等)およびその誘導体(例えば、フェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩の塩)等]、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシド、ホスフィン類(トリフェニルホスフィン等)、アミド化合物(ダイマー酸ポリアミド等)、ルイス酸錯体化合物(3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体等)、硫黄化合物[ポリサルファイド、メルカプタン化合物(チオール化合物)等]、ホウ素化合物(フェニルジクロロボラン等)、縮合性有機金属化合物(有機チタン化合物や有機アルミニウム化合物等)等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
硬化促進剤の添加率は、上記の式(7)で表されるエポキシ樹脂(又はエポキシ樹脂成分)100質量部に対して、通常、0.001〜30質量部であり、0.05〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、単官能性エポキシ化合物等の反応性希釈剤や溶媒等の希釈剤、又は、着色剤や安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等)の添加剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等を併用してもよい。中でも希釈剤や添加剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いた近赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)は、基材上に設けたものでも、又、基材自体であってもよい。基材としては、一般に光学フィルタに使用できるものであれば特に制限はされないが、通常、ガラス若しくは樹脂製の基材が使用される。近赤外線カット層の厚さは通常0.05μm〜10mm程度であるが、近赤外線カット率等の目的に応じて適宜、決定される。また、CCDやCMOS等の撮像素子自体を基材とすることもできる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いる近赤外線吸収色素の含有率は目的とする近赤外線カット率に応じて適宜、決定される。用いる樹脂製の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリシクロアルカン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物、又はそれらのビニル化合物の付加重合体;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ テトラフルオロエチレン共重合体、シアン化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物;フッ素系化合物の共重合体、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素を含む樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリペプチド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のポリエーテル類;エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール類、ポリビニルブチラール類等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用した赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)を作製する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、下記の公知の方法が利用できる。1)熱硬化性樹脂と硬化剤に近赤外線吸収色素を溶解し、本発明の熱硬化性樹脂組成物とし、成型後、加熱硬化して樹脂板又はフィルムを作製する方法、2)近赤外線吸収色素を含有する塗料を作製し、本発明の熱硬化性樹脂組成物とし、透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス板、又は撮像素子にコーティングする方法、3)近赤外線吸収色素及び樹脂(接着剤)を含有させた熱硬化性樹脂組成物を作製し、本発明の熱硬化性樹脂組成物とし、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、又は合わせガラス板を作製する方法、等である。
1)の方法は、熱硬化性樹脂と硬化剤に近赤外線吸収色素を溶解し、型内に注入し、本発明の熱硬化性樹脂組成物とし、加熱反応させて硬化させるか、又は、金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで加熱反応させて成形する方法が挙げられる。用いる組成によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、100〜200℃で30分〜5時間程度の硬化条件が適用される。近赤外線吸収色素添加量は、作製する樹脂板又はフィルムの厚み、吸収強度、可視光透過率等によって異なるが、通常、基材樹脂の質量に対して0.01〜30質量%程度、好ましくは0.01〜15質量%程度使用される。
2)の方法は、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂に溶解し塗料(本発明の熱硬化性樹脂組成物)化する方法であり、塗料(本発明の熱硬化性樹脂組成物)化する際に溶媒を用いることもできる。溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系の溶媒、又は、それらの混合溶媒を用いることができる。近赤外線吸収色素の濃度は、作製するコーティングの厚み、吸収強度、可視光透過率によって異なるが、バインダー樹脂に対して一般的に0.01〜30質量%程度である。このようにして得られた塗料を透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス板、又は撮像素子等の上にスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、オフセットコーター、スプレー等でコーティングして近赤外線吸収フィルタ、またはそれを具備した撮像素子を得ることができる。
近赤外線吸収用の本発明の光学フィルタは、撮像素子用途やディスプレイの前面板に限らず、近赤外線をカットする必要があるフィルタフィルム、例えば、断熱フィルム、光学製品、サングラス等にも使用することが出来る。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。ここで、部は特に断りのない限り質量部を表す。
[合成例1] エポキシ樹脂硬化剤1の合成(特開2014−80857の合成例を参照)
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらメチルエチルケトン(以下、MEK)を204g、トリシクロデカンジメタノールを294g、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドMH)を423g、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物(三菱ガス化学製 H−TMAn)を99g加え、50℃で2時間反応後、70℃で4時間加熱撹拌を行なった。得られた溶液にMEK145gをさらに加えることでエポキシ樹脂硬化剤のMEK溶液1166gが得られた。得られた溶液は無色であり、濃度は70質量%であった。
[実施例1]
撹拌装置、温度計を設置したガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂としてフルオレン樹脂OGSOL PG−100、(大阪ガスケミカル(株)製、エポキシ当量260g/eq.)100部、シクロヘキサノン135部を入れ、30〜50℃で2時間撹拌し溶解し、次に近赤外線吸収色素として、特開2008−88426号公報より得られた下記式(15)(メタノール中のλmax:781nm)、5.1部を添加し、30〜50℃で均一になるまで撹拌した。さらにエポキシ樹脂硬化剤として合成例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤1を96部添加し、20〜35℃で10分間均一になるまで撹拌することで本発明の熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物をスピンコーター上に配置したガラス基板上に滴下し、その基板を1000rpmで30秒間回転させることで基板表面をコーティングし、その後80℃で10分間乾燥させて溶媒を除去し、190℃で40分間熱硬化し、光学フィルタを得た。得られた光学フィルタは、分光光度計(島津製作所社製、紫外可視分光光度計UV−3150)を用い、光学フィルタの吸光度を300〜1100nmの範囲を1nmのサンプリングピッチで測定した。光学フィルタを80℃で10分間乾燥後、190℃で40分間熱硬化後、210℃で10分間放置後にそれぞれ分光波形を測定した。光学フィルタの分光波形の最大吸収波長における吸光度を下表1に示す。
Figure 0006395293
[表1]
Figure 0006395293
[実施例2]
エポキシ樹脂を実施例1に記載のOGSOL PG−100、(大阪ガスケミカル(株)製、エポキシ当量260g/eq.)100部からOGSOL CG−500、(大阪ガスケミカル(株)製、エポキシ当量260g/eq.)80部に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作成した。光学フィルタの分光波形の最大吸収波長における吸光度を下表2に示す。
[表2]
Figure 0006395293
[比較例1] ジアリルフタレート樹脂の使用
撹拌装置、温度計を設置したガラス製セパラブルフラスコにジアリルフタレート樹脂(ダイソー株式会社製、商品名「ダイソーダップS」)を、クロロホルムに30質量%になるように溶解して、主剤溶液を得た。この主剤溶液の全質量に対して、近赤外線吸収色素として、上記式(10)を1.5質量%となるように主剤溶液に添加し、20〜35℃で10分間均一になるまで撹拌することで比較用の熱硬化性樹脂組成物を得た。この比較用熱硬化性樹脂組成物をスピンコーター上に配置したガラス基板上に滴下し、その基板を1000rpmで30秒間回転させることで基板表面をコーティングし、その後80℃で10分間乾燥させて溶媒を除去し、光学フィルタを得た。得られた光学フィルタは、分光光度計(島津製作所社製、紫外可視分光光度計UV−3150)を用い、光学フィルタの吸光度を300〜1100nmの範囲を1nmのサンプリングピッチで測定した。光学フィルタを80℃で10分間乾燥後、190℃で40分間放置後、210℃で10分間放置後にそれぞれ分光波形を測定した。光学フィルタの分光波形の最大吸収波長における吸光度を下表3に示す。
[表3]
Figure 0006395293
[短期耐熱性の比較]
実施例1及び2、比較例1で得られた光学フィルタにおいて、80℃で10分間乾燥後、190℃で40分間放置後、210℃で10分間放置後の分光波形を比較することで、短期耐熱性の比較を行った。実施例1と同様の分光光度計を用い、実施例1及び2、比較例1の各光学フィルタの80℃で10分間乾燥後、190℃で40分間放置後、210℃で10分間放置後の分光波形を測定した。耐熱性の比較は、実施例1及び2、比較例1の光学フィルタの最大吸収波長における吸光度を用いて、80℃で10分間乾燥後の吸光度に対する加熱後(190℃、40分)の吸光度の残存率、加熱後(190℃、40分)の吸光度に対する短期耐熱試験後(210℃、10分)の吸光度の残存率を算出し、それぞれを比較した。この評価では色素残存率が高い方が、優れた短期耐熱性を有することを意味する。色素残存率は以下の式(I)及び式(II)により算出した。結果を下表4に示す。
(加熱後(190℃、40分)の残存率)=(加熱後(190℃、40分)の吸光度)/(80℃で10分間乾燥後の吸光度) (I)
(短期耐熱試験後(210℃、10分)の残存率)=(短期耐熱試験後(210℃、10分)の吸光度)/(加熱後(190℃、40分)の吸光度) (II)
[表4]
Figure 0006395293
表4の結果より、比較例1に対して実施例1及び2は熱硬化後と耐熱試験後も残存率が高い結果となった。この結果から、一般式(1)又は式(2)のいずれかで表される近赤外線吸収色素と熱硬化性樹脂を含む本発明の熱硬化性樹脂組成物は、近赤外線カットフィルタの製造において優れた短期耐熱性を有している結果を示した。特に熱硬化性樹脂として式(7)で表わされるフルオレン骨格を有するエポキシ化合物を含む場合により優れた短期耐熱性が得られた。
[長期耐熱性の比較]
実施例1及び2、比較例1で得られた光学フィルタにおいて、190℃で40分間加熱を行うことで得られた光学フィルタを125℃の温度下で放置した際の分光波形の変化を比較することで長期耐熱性の比較を行った。実施例1に同じく分光光度計を用い、実施例1及び2、比較例1の各光学フィルタの80℃で10分間乾燥後、190℃で40分間加熱後の分光波形を測定し、これを分光波形の初期波形とした。長期耐熱性の比較は、実施例1及び2、比較例1の光学フィルタの最大吸収波長における吸光度を用いて、125℃下に放置して低下する吸光度の残存率が190℃で40分間加熱後の吸光度に対して0.80倍となった時間を長期耐熱寿命とし、それぞれ比較を行った。この比較により長期耐熱寿命が長い組成条件ほど、優れた長期耐熱性を有することを意味する。その結果を下表5に示す。
[表5]
Figure 0006395293
表5の結果より、比較例1に対して実施例1及び2は熱硬化後と耐熱試験後も近赤外線吸収色素の残存率が高い結果となったことから、一般式(1)又は式(2)のいずれか1種の近赤外線吸収色素と熱硬化性樹脂を含む本発明の熱硬化性樹脂組成物は、近赤外線カットフィルタの製造において優れた長期耐熱性を示唆する結果を示した。特に熱硬化性樹脂として式(7)で表されるフルオレン骨格を有するエポキシ化合物を含む場合により優れた長期耐熱性を示した。
以上の2つの評価結果より、本発明の組成で構成される近赤外線吸収色素を含む熱硬化性樹脂組成物は、近赤外線カットフィルタの製造において優れた短期耐熱性と長期耐熱性を有している事は明白であると言える。
本発明の熱硬化性樹脂組成物及びこれによって得られる近赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)は、熱の負荷による近赤外線吸収性能の低下が抑えられる事から耐候性に優れており、熱硬化性樹脂組成物の溶液である事からスピンコート法等の簡便な製膜方法が適用可能であり高い加工性も有する事から、幅広い用途の光学フィルタに適用できるが、特にCCDやCMOS等の撮像素子用の近赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)として非常に有用である。

Claims (14)

  1. 一般式(1)又は式(2)で表されるシアニン化合物の少なくともいずれか1種の近赤外線吸収色素とフルオレン骨格を有するエポキシ化合物、並びに一般式(8)で表されるエポキシ樹脂硬化剤を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0006395293
    Figure 0006395293
    (式中、Rはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Rはハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基又はニトロ基、pは0又は1の整数を示し、Dは下記の式(3)又は式(4)、Yは水素原子又は塩素原子、のいずれかであり、*は結合部位を示し、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
    Figure 0006395293
    Figure 0006395293
    Figure 0006395293
    (式(8)中、複数存在するR 及びR はそれぞれ独立して、R は水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基又はカルボキシ基を表し、R は水素原子又はメチル基を表す。Aは式(a)〜式(d)で表され、*はメチレン基との結合部位を表す。)
  2. 一般式(8)で表されるエポキシ樹脂硬化剤フルオレン骨格を有するエポキシ化合物と反応可能な官能基を1分子中に少なくとも2つ以上有することを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. フルオレン骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ量が150〜600g/eq.であることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. フルオレン骨格を有するエポキシ化合物の5%重量減少温度が200℃以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. フルオレン骨格を有するエポキシ化合物の溶解度が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはシクロヘキサノンに対して、25℃で15質量%以上であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 近赤外線吸収色素が下記式(5)又は式(6)で表されるシアニン化合物の少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0006395293
    Figure 0006395293
    (式中、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、n−ブトキシエチル基、Yは水素原子又は塩素原子のいずれかであり、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
  7. フルオレン骨格を有するエポキシ化合物が下記式(7)で表される化学構造を有することを特徴とする請求項2乃至のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 0006395293
    (式中、環Zはそれぞれ独立したベンゼン環を含む縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRはそれぞれ独立にシアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基から選ばれ、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、nは0〜1の整数、xは0〜4の整数、yは0以上の整数、zは1以上の整数である。)
  8. 式(7)で表されるフルオレン骨格を有するエポキシ化合物において2つの環Zが共にベンゼン環であることを特徴とする請求項に記載の樹脂組成物。
  9. 一般式(8)で表されるエポキシ樹脂硬化剤がカルボキシ基又はカルボン酸無水物基、アミノ基、フェノール基から選ばれる官能基であることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. 一般式(8)で表されるエポキシ樹脂硬化剤がカルボキシ基又はカルボン酸無水物基から選ばれる官能基であることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. 一般式(8)で表されるエポキシ樹脂硬化剤を構成する炭素数が4〜40であることを特徴とする請求項乃至10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. 請求項1乃至11いずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  13. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形した近赤外線カットフィルタ。
  14. 請求項13に記載の近赤外線カットフィルタを具備した撮像素子。
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