JP2016074753A - 近赤外線吸収色素を含む熱硬化性樹脂組成物及び近赤外線カットフィルタ - Google Patents

近赤外線吸収色素を含む熱硬化性樹脂組成物及び近赤外線カットフィルタ Download PDF

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Abstract

【課題】加工性と耐熱性の高い近赤外線カットフィルタを作製できる樹脂組成物、及びそれを用いた耐熱性の高い近赤外線カットフィルタ、特にはCCDやCMOSなどの撮像素子用の近赤外線カットフィルタの提供。【解決手段】近赤外線吸収色素、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤から成ることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物により、前記の課題を解決できた。【選択図】なし

Description

本発明は近赤外線吸収色素を含む熱硬化性樹脂組成物、及びこれらを用いた近赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)に関する。
デジタルカメラなどに使用されているCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子は、可視域〜1100nm付近の近赤外域に渡る分光感度を有しており、これに対して人間の目は400〜700nm付近の波長の光を感じることができる。よって撮像素子と人間の目では分光感度に大きな差があるため、撮像素子の前面に近赤外域を吸収する近赤外線カットフィルタを備えて、人間の目の視感度に補正することが必要であることが知られている。
撮像素子に用いられる近赤外線カットフィルタには、特許文献1に記載のとおりリン酸塩系ガラスにCuOを添加したガラスフィルタが知られている。しかしながら、この近赤外吸収能を有するガラスフィルタは、非常に高価である。また、ガラスであるために加工性に問題があり、光学特性の設計の自由度も狭く、球面への対応も煩雑である。さらにガラスの厚みを薄くするには限界があり、撮像光学系に組み込む際にはスペースの確保や軽量化に問題がある。それゆえ、薄膜化や球面等に成形が可能な新たな近赤外線カットフィルタを製造するための近赤外線吸収性能を組み込んだ樹脂の開発が望まれていた。
そこで、近赤外線吸収色素を含む樹脂組成物を撮像素子表面あるいはフィルタ基材表面にコートすることで、近赤外線カットフィルタを作製する開発が行われている。しかし、この方法で作製された光学フィルタは耐熱性が不十分であるため、さらに耐熱性の高いフィルタの開発が強く望まれていた。
特許文献2では、近赤外線吸収色素の耐熱性を向上させるために金属酸化物を添加している。しかしながら、この特許文献2ではガラス転移温度が−80〜0℃である熱可塑性樹脂を使用している為、熱や酸素の影響を強く受け、高い耐熱性が要求される撮像素子向けフィルタとしては、耐熱性が不十分であると考えられる。そのため、さらに耐熱性の高いフィルタの開発が強く望まれていた。
このような背景から、加工性と耐熱性に優れる近赤外線カットフィルタ、及びそれを作製するための樹脂組成物の開発が強く求められている。
特開昭62−128943号 特開2010−079142号
本発明は樹脂組成物、特に熱硬化性樹脂組成物、及びそれを用いて作製される加工性と耐熱性、さらには耐溶剤性に優れた近赤外線カットフィルタの提供を目的とする。
本発明者等は上記課題を解決するべく、鋭意検討の結果、近赤外線吸収色素及び有機塩、熱硬化性樹脂から成る熱硬化性樹脂組成物及び近赤外線カットフィルタが前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
[1]近赤外線吸収色素(A)、金属イオンとトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンからなる有機塩(B)、エポキシ樹脂(C)を含むことを特徴とする熱硬化性樹脂組成物、
[2]近赤外線吸収色素(A)がシアニン化合物又はジイモニウム化合物のいずれか1種を含むことを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物、
[3]近赤外線吸収色素(A)が下記式(1)又は式(2)で表されるシアニン化合物及び下記式(5)で表されるジイモニウム化合物のいずれかを少なくとも1種含むことを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物、
Figure 2016074753
Figure 2016074753
(式(1)及び式(2)において、Rはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Rはハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基又はニトロ基、pは0又は1の整数を示し、Dが下記式(3)または式(4)のいずれかであり、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
Figure 2016074753
(式(3)中、Yは水素原子、塩素原子、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルアミノ基のいずれかであり、*は結合部位を示す。)
Figure 2016074753
(式(4)中、Yは水素原子、塩素原子、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルアミノ基のいずれかであり、*は結合部位を示す。)
Figure 2016074753
(式(5)中、Rはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜7のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
[4]有機塩(B)の金属イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンより選ばれる1種であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[5]エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量が150〜600g/eq.である[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[6]エポキシ樹脂(C)がメタクリル酸グリシジル骨格のみで構成された重合体、あるいはメタクリル酸グリシジル骨格を主としてアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニル置換芳香族化合物のいずれかの組み合わせで構成される共重合体であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[7]エポキシ樹脂(C)がフルオレン骨格を有することを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
[8]近赤外線吸収色素(A)が、下記式(6)又は式(7)で表されるシアニン化合物の少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物、
Figure 2016074753
Figure 2016074753
(式(6)及び式(7)中、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、n−ブトキシエチル基、Yは水素原子又は塩素原子、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
[9][1]乃至[8]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物、
[10][1]乃至[8]のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形した、耐溶剤性を有する近赤外線カットフィルタ、
[11][10]に記載の近赤外線カットフィルタを具備した撮像素子、
に関する。
本発明により、耐熱性の高い近赤外線カットフィルタ、特にはCCDやCMOSなどの撮像素子用の近赤外線カットフィルタ、及びそれらを作製できる熱硬化性樹脂組成物を提供することができた。ただし、本発明の熱硬化性樹脂組成物の用途はこれらに限定されるものではない。
本発明は、近赤外線吸収色素(A)、有機塩(B)、エポキシ樹脂(C)を含む熱硬化性樹脂組成物に関する。
本発明に用いられる近赤外線吸収色素(A)は近赤外領域(700〜2000nm)に吸収ピークを有する色素であれば特に制限されない。本発明で用いられる色素化合物はシアニン化合物、フタロシアニン化合物、アゾ化合物、ジイモニウム化合物、スクアリリウム化合物、Niジチオール化合物、Cu錯体化合物、クロコニウム化合物、アントラキノン化合物、ピロメテン化合物等が挙げられ、中でもシアニン化合物またはジイモニウム化合物が好適に用いられる。
本発明に用いられる近赤外線吸収色素(A)は、下記式(1)または式(2)で表されるシアニン化合物、または下記式(5)で表されるジイモニウム化合物のいずれかより選択される。各色素化合物について以下に詳細に説明する。
Figure 2016074753
Figure 2016074753
Figure 2016074753
本発明に用いられるシアニン化合物は、上記の式(1)または式(2)で表され、両式のRはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Rはハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基又はニトロ基を表す。pは0又は1の整数であり、0が好ましい。
式(1)及び式(2)のR及びRにおいて、炭素数1〜5のアルキル基としては、特に制限されるものではないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチル−プロピル基等が挙げられる。
式(1)及び式(2)のR及びRにおいて、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基としては、特に制限されるものではないが、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、ジメトキシメチル基、ジエトチキシメチル基、ジメトキシエチル基、ジエトキシエチル基等が挙げられる。
式(1)及び式(2)のR及びRにおいて、炭素数1〜5のアルキル基が有しても良い置換基としては、特に制限されるものではないが、例えば、アルコキシ基、アルキル基の水素がアルコキシ基に置換されたアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基に置換されたアルコキシアルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシアルコキシ基に置換されたアルコキシアルコキシアルコキシアルキル基等;置換又は無置換のアミノ基(アルキルアミノアルキル基やジアルキルアミノアルキル基)、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、ハロンゲン原子、アミノ基、シアノ基等が挙げられる。アルキル基がハロゲン化された置換基としては、クロロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基等が挙げられる。R及びRとしてはメトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル、n−ブトキシエチル基が好ましく、メトキシエチル基が特に好ましい。
式(1)及び式(2)のR及びRにおいて、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基が有してもよい置換基としては、特に制限されるものではないが、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシ基等;ハロンゲン原子、置換又は無置換のアミノ基(ジアルキルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基等が挙げられる。
式(1)及び式(2)のRにおいて、ハロゲン原子としては、特に制限されるものではないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
式(1)及び式(2)の結合基Dは下記式(3)または式(4)で表され、*は結合部位を表す。式(3)及び式(4)のYは水素原子、塩素原子、フェニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルアミノ基のいずれかであり、塩素原子が好ましい。
Figure 2016074753
Figure 2016074753
上記式(3)及び式(4)のYがフェニル基の場合、フェニル基は置換基を有しても良く、置換基は特に制限されるものではないが、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、ジメトキシメチル基、ジエトチキシメチル基、ジメトキシエチル基、ジエトキシエチル基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記式(3)及び式(4)のYにおいて、炭素数1〜6のアルキルアミノ基としては、特に制限されるものではないが、炭素数1〜6の2級アルキルアミノ基が好適であり、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ピロリジン、ピペリジンが好ましい。
上記式(3)及び式(4)のYにおいて、炭素数1〜6のアルキルアミノ基が有しても良い置換基としては、特に制限されるものではないが、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシ基、ハロンゲン原子、置換又は無置換のアミノ基(ジアルキルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基等が挙げられる。
上記式(1)及び式(2)のうち、式(1)で表されるシアニン化合物が好ましく、式(1)はより具体的には下記式(6)または式(7)で表され、本発明の近赤外線カットフィルタには耐熱性及び透明性の観点から式(7)が好適に用いられる。
Figure 2016074753
Figure 2016074753
上記式(6)及び式(7)において、Rとしてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、n−ブトキシエチル基より選ばれ、メトキシエチル基が好ましい。
上記式(6)及び式(7)において、Yとしては水素原子又は塩素原子より選ばれ、塩素原子が好ましい。
上記式(5)のRにおいて、炭素数1〜7のアルキル基としては、特に制限されるもではないが、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、メトキシエチル基、シアノプロピル基のいずれかであり、より好ましくはノルマルブチル基、イソブチル基であり、さらに好ましくはイソブチル基ある。セカンダリーブチル基の光学異性体については特に制限されない。
上記式(5)のRにおいて、炭素数1〜5のアルコキシアルキル基としては、特に制限されるものではないが、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、ジメトキシメチル基、ジエトチキシメチル基、ジメトキシエチル基、ジエトキシエチル基等が挙げられ、好ましくはメトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル、n−ブトキシエチル基であり、特に好ましくはメトキシエチル基である。
上記式(5)のRにおいて、炭素数1〜7のアルキル基及び炭素数1〜5のアルコキシアルキル基が有しても良い置換基としては、特に制限されるものではないが、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アルコキシアルコキシアルコキシ基等;ハロンゲン原子、置換又は無置換のアミノ基(ジアルキルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基等が挙げられる。
近赤外線吸収色素(A)は、カチオン系色素である場合には対アニオンは特に制限されないが、硬化物(光学フィルタ)の耐熱性及び透明性の観点から、以下の式(8)で表されるトリス(パーハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。より好ましくはトリス(パーハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオンであり、さらに好ましくは、以下の式(8)においてnが1、Qがフッ素であるトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオンである。
Figure 2016074753
(式中、nは1〜5、Qはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。)
本発明の近赤外線カットフィルタに含まれる近赤外線吸収色素(A)が、本発明の熱硬化性樹脂組成物中に溶解しない場合は、不溶性色素を微粒子にしながら、他の成分と混合分散して使用することができる。
混合分散する方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いて撹拌混合するそれ自体公知の方法等が挙げることができる。これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)における色素粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用し、ビーズの充填率を大きくすること等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで分散化に用いたビーズや粗粒子を除去することが好ましい。
本発明に用いられる有機塩(B)のアニオンとしては、特に制限されないが、耐熱透明性の観点から、上記式(8)で表されるトリス(パーハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましく、上記式(8)においてnが1、Qがフッ素であるトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオンがより好ましい。
有機塩(B)のカチオンとしては、特に制限されないが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンのようなアルカリ金属イオンが好ましく使用でき、より好ましくはカリウムイオン又はセシウムイオン、さらに好ましくはカリウムイオンである。
有機塩(B)の添加量は特に制限されないが、通常、使用するエポキシ樹脂(C)に対して0.001重量%〜100重量%である。耐熱性の観点から有機塩(B)の添加量はエポキシ樹脂(C)に対して多い方が好ましいが、エポキシ樹脂(C)との相溶性の観点から添加量には限界がある。そのため、両者のバランスから、有機塩(B)のエポキシ樹脂(C)に対する添加量は0.01重量%〜50重量%が好ましく、0.1重量%〜30重量%がより好ましく、1.0重量%〜10重量%がさらに好ましく、3.0重量%〜10重量%が特に好ましい。
エポキシ樹脂(C)としては、例えばフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。また、9,9−ビスアリールフルオレン骨格のようなフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種又は2種以上を混合して用いても良い。
前記のフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂としては、例えば2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]−2−[4−[1,1−ビス[4−(2,3−ヒドロキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4'−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4'−ビフェノール、ジメチル−4,4'−ビフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2'−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログリシノール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂等が挙げられる。
前記の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂としては、例えばフェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等のビスフェノール類、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
前記の脂環式エポキシ樹脂としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等の脂肪族環骨格を有する脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
前記の脂肪族系エポキシ樹脂としては、例えば1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのグリシジルエーテル類が挙げられる。
複素環式エポキシ樹脂としては、例えばイソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。
前記のグリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸エステル類からなるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、例えばアニリン、トルイジン等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
前記のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、例えばブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体としては、市場から入手可能な製品ではマープルーフG−0115S、同G−0130S、同G-0250S、同G−1010S、同G−1005S、同G−0150M、同G−2050M (日油(株)製)等が挙げられ、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−エポキシド等が挙げられる。また他の重合性不飽和化合物の共重合体としては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニル置換芳香族化合物が挙げられ、例えばメチル(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられるが、特にメチル(メタ)アクリレート、エーテル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂(C)のエポキシ当量は、100〜2500g/eq.が好ましく、100〜1500g/eq.がより好ましく、150〜600g/eq.がさらに好ましく、280〜350g/eq.が特に好ましい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂(C)の重量平均分子量は5000〜250000であり、5000〜20000が好ましく、5000〜10000がさらに好ましい。
前記のフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば以下の式(9)が挙げられる。式(9)、環Zはそれぞれ独立したベンゼン環を含む縮合多環式芳香族炭化水素環、RおよびRはそれぞれ独立した置換基、Rはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、xは0〜4の整数、yは0以上の整数、zは1以上の整数である。
Figure 2016074753
上記の式(9)において、環Zで表される縮合多環式芳香族炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などの炭素数8〜20の縮合二環式炭化水素環、好ましくは炭素数10〜16の縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環などが挙げられる。好ましい縮合多環式芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。なお、フルオレン骨格の9位に置換する2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
フルオレン骨格の9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレン骨格の9位に置換する縮合多環式芳香族炭化水素環がナフタレン環の場合は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよく、2−ナフチル基が特に好ましい。
で表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などの炭素数6〜10のアリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基、メチル基が特に好ましい)などが例示できる。なお、xが複数(2以上)である場合、Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン骨格を構成する2つのベンゼン環に置換するRは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレン骨格を構成するベンゼン環に対するRの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数xは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数xは、互いに同一又は異なっていてもよい。
上記式(9)の環Zに置換する置換基Rとしては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの炭素数1〜12のアルキル基、好ましくは炭素数1〜8アルキル基、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などの炭素数5〜8のシクロアルキル基、好ましくは炭素数5〜6のシクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数6〜14のアリール基、好ましくは炭素数6〜10のアリール基、さらに好ましくは炭素数6〜8のアリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などの炭素数6〜10のアリール置換の炭素数1〜4のアルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基などの炭素数1〜8のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(炭素数5〜10のシクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(炭素数6〜10のアリールオキシ基など)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などの炭素数1〜8のアルキルチオ基、好ましくは炭素数1〜6のアルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などの炭素数1〜6のアシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などの炭素数1〜4のアルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ヒドロキシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
これらのうち、Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などであるのが好ましく、特に、好ましいRは、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、炭素数1〜6のアルキル基)]、アルコキシ基(炭素数1〜4のアルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などである。
同一の環Zにおいて、yが複数(2以上)である場合、Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数yは、0〜8、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2であってもよい。なお、2つの環Zにおいて、mは、互いに同一又は異なっていてもよい。
上記式(9)のRは、水素原子又はメチル基であり、水素原子が好ましい。
上記式(9)のzは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、より好ましくは1である。なお、zは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、エポキシ基含有基の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。
上記式(9)の環Z上の単一又は複数のグリシジルオキシ基の置換位置は、環Zのフルオレンの9位に結合している位置に対して特に限定されず、例えば、環Zがベンゼン環の場合はオルト位、メタ位、パラ位などであってもよく、特にパラ位が好ましい。フルオレンの9位に置換する縮合多環式芳香族炭化水素環がナフタレン環の場合は、オルト位、メタ位、パラ位、アナ位、エピ位、カタ位、ペリ位、プロス位、アンフィ位、2,7位であってもよく、特にアンフィ位が好ましい。
上記の式(9)で表される化合物としては、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]などの、上記の式(9)においてzが1であるエポキシ樹脂などが挙げられる。
フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量としては、150〜1000g/eq.が好ましく、150〜800g/eq.がより好ましく、150〜400g/eq.がさらに好ましく、150〜350g/eq.が特に好ましい。市場から入手可能な製品ではオグソールPG−100、同CG−500などのオグソールシリーズ(大阪ガスケミカル(株)製)などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種又は2種以上を混合して用いても良い。
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(C)を上記で表されるエポキシ樹脂(マープルーフシリーズに代表される、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体、及び/又はオグソールシリーズに代表されるフルオレン骨格を有するエポキシ化合物)のみで構成してもよく、本発明の効果を害しない範囲であれば、他のエポキシ樹脂を含んでもよい。他のエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂など)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール(又はクレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂など)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂(キサンテン単位を含むエポキシ樹脂を含む)、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂(1,6−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、ビス(2,7−ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン)アルカンなどのナフタレン環含有エポキシ樹脂など)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有する他のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの他のエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
他のエポキシ樹脂を使用する場合、エポキシ樹脂成分全体に対する、マープルーフシリーズに代表されるエポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体、及び/又はオグソールシリーズに代表されるフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂の割合は、例えば、50〜99.5重量%、好ましくは70〜97重量%、さらに好ましくは90〜98重量%程度であってもよい。
本発明においては、エポキシ樹脂(C)を硬化させるためのエポキシ樹脂硬化剤を必要に応じて加えることができる。用いられるエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、酸無水物系化合物や多価カルボン酸が挙げられ、さらに併用できる硬化剤としてアミン系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。これらの硬化剤を加える場合、硬化物(本発明の近赤外線カットフィルタ等)の耐熱性と透明性の観点から多価カルボン酸が好ましく、分子内に2つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物が最も好ましい。
酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、3,3−ジメチル無水グルタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などが挙げられる。中でも、耐光性、透明性、作業性の観点から、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などが好ましい。
2つ以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸としては、2官能以上のカルボン酸が好ましく、幾何異性体又は光学異性体が存在する場合は特に制限されず、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、クエン酸等のアルキルトリカルボン酸類;フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ナジック酸、メチルナジック酸等の脂肪族環状多価カルボン酸類;、リノレン酸やオレイン酸などの不飽和脂肪酸の多量体およびそれらの還元物であるダイマー酸類;リンゴ酸等;ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸の直鎖アルキル二酸類;ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデン―2,5―ジカルボン酸などのビシクロ構造を有する多価カルボン酸、などが挙げられる。
また、本発明において、市販されている2官能以上のアルコール類を多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸と反応させて得られる多価カルボン酸を使用することもできる。多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸としては、上記の化合物が挙げられ、アルコール類としては、幾何異性体又は光学異性体は特に限定されず、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物のほか、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカンジオール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデンジオール、オクタヒドロ―1H―4,7―メタノインデニルジメタノールなどの炭素数2〜30の脂肪族アルコール類が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。使用量としては、エポキシ樹脂(C)に対し、0.01〜150重量%の割合が好ましく、1〜100重量%の割合がより好ましく、30〜80重量%の割合がさらに好ましく、40〜70重量%の割合が特に好ましい。
エポキシ樹脂硬化剤として、前述の酸無水物および/または多価カルボン酸以外の硬化剤を併用する場合、酸無水物および/または多価カルボン酸の総量が、全硬化剤中に占める割合は30重量%以上が好ましく、40重量%以上が特に好ましい。
併用できる硬化剤としては、アミン系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。これらの併用できる硬化剤は特に限定されるものではないが、具体例としては、アミン類(1,4−ブタンジアミン)やポリアミド化合物(ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂など)、多価フェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物およびこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物、その他(イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、など)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じてカップリング剤を使用することで、硬化物の硬度を補完することが可能である。本発明に使用できるカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤;Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらカップリング剤は1種又は2種以上を混合して用いても良い。カップリング剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物に対して通常0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部を必要に応じて添加することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、ナノオーダーレベルの無機充填材を必要に応じて使用することで、透明性を阻害せずに機械強度などを補完することが可能である。用いられる無機充填剤の平均粒径は500nm以下であり、硬化物の透明性を考慮すると、200nmが好ましい。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら充填材は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤の含有量は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の総量に対して0〜95重量%の範囲で適宜用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に着色防止のため、光安定剤としてアミン系化合物または、酸化防止剤としてリン系化合物およびフェノール系化合物を添加することができる。
前記の光安定剤であるアミン系化合物としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(2,2,6,6−トトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル,1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、N,N’,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5・1・11・2〕ヘネイコサン−21−オン、β−アラニン,N,−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン−21−オン、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−〔5,1,11,2〕−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド,〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3−ベンゼンジカルボキシアミド,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等のヒンダートアミン系、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられ、ヒンダートアミン系化合物が特に好ましい。
前記の光安定剤であるアミン化合物は、市販品を使用することができる。市販されているアミン系化合物としては特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ製として、TINUVIN765、TINUVIN770DF、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN622LD、TINUVIN152、CHIMASSORB944、ADEKA製として、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63P、LA−77Y、LA−81、LA−82、LA−87などが挙げられる。
前記の酸化防止剤であるリン系化合物としては特に限定されず、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3'−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3'−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。
前記のリン系化合物は、市販品を用いることもできる。市販されているリン系化合物としては特に限定されず、例えば、ADEKA製として、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP等が挙げられる。
前記のフェノール系化合物としては特に限定はされず、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェノール、1,6−ヘキサンジオール−ビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス−〔2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2'−ブチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノールアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3'−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3'−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル等が挙げられる。
前記のフェノール系化合物は、市販品を用いることもできる。市販されているフェノール系化合物としては特に限定されず、例えば、チバスペシャリティケミカルズ製としてIRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX295、IRGANOX3114、IRGANOX1098、IRGANOX1520L、アデカ製としては、アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−90、アデカスタブAO−330、住友化学工業製として、Sumilizer GA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、Sumilizer GPなどが挙げられる。
このほか、エポキシ樹脂の着色防止剤として市販されている添加剤を使用することができる。例えば、チバスペシャリティケミカルズ製として、THINUVIN328、THINUVIN234、THINUVIN326、THINUVIN120、THINUVIN477、THINUVIN479、CHIMASSORB2020FDL、CHIMASSORB119FLなどが挙げられる。
本発明において、上記のアミン系化合物、リン系化合物、フェノール系化合物の中から少なくとも1種以上を含有することが好ましく、その配合量は特に限定されないが、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量に対して、0.005〜5.0重量%の範囲で好適に用いられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用した近赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)は、基材上に設けたものでも、又、基材自体であってもよい。基材としては、一般に光学フィルタに使用し得るものであれば特に制限されないが、通常、ガラス若しくは樹脂製の基材が使用される。層の厚みは通常0.05μm〜10mm程度であるが、近赤外線カット率等の目的に応じて適宜、決定され得る。又、CCDやCMOSなどの撮像素子自体を基材とすることもできる。
用いる樹脂製の基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリシクロアルカン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル等のビニル化合物、及びそれらのビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリシアン化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ テトラフルオロエチレン共重合体、シアン化ビニリデン/ 酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素を含む樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリペプチド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用した赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)を作製する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、下記の公知の方法が利用できる。1)エポキシ樹脂(C)と硬化剤に近赤外線吸収色素(A)を溶解し、本発明の熱硬化性樹脂組成物とし、成型後、加熱硬化して樹脂板又はフィルムを作製する方法、2)近赤外線吸収色素(A)と有機塩(B)、エポキシ樹脂(C)を含有する塗料を作製し、本発明の熱硬化性樹脂組成物とし、透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス板、又は撮像素子にコーティングする方法、3)本発明の熱硬化性樹脂組成物を基板で挟みこみ、合わせ樹脂板、合わせ樹脂フィルム、又は合わせガラス板を作製する方法、等である。
1)の方法は、エポキシ樹脂(C)と硬化剤に近赤外線吸収色素(A)と有機塩(B)を溶解し、型内に注入し、本発明の熱硬化性樹脂組成物とし、加熱反応させて硬化させるか、又は、金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで加熱反応させて成形する方法が挙げられる。用いる組成によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、100〜200℃で30分〜5時間程度の硬化条件が適用される。近赤外線吸収色素の添加量は、目的とする近赤外線カット率に応じて適宜決定され、作製する樹脂板又はフィルムの厚み、吸収強度、可視光透過率等によっても異なるが、通常、基材樹脂の質量に対して0.01〜30重量%程度、好ましくは0.01〜15重量%程度使用される。
2)の方法は、近赤外線吸収色素(A)と有機塩(B)をエポキシ樹脂に溶解し塗料(本発明の熱硬化性樹脂組成物)化する方法であり、塗料(本発明の熱硬化性樹脂組成物)化する際に溶媒を用いることもできる。溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系の溶媒、又は、それらの混合溶媒を用いることができる。近赤外線吸収色素(A)の濃度は、作製するコーティングの厚み、吸収強度、可視光透過率によって異なるが、エポキシ樹脂に対して一般的に0.01〜30重量%程度である。このようにして得られた塗料を透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス板、又は撮像素子等の上にスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーター、オフセットコーター、スプレー等でコーティングして本発明の近赤外線カットフィルタ、またはそれを具備した撮像素子を得ることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化して得られた硬化物、近赤外線カット樹脂板あるいは近赤外線カットフィルタ等は、有機溶媒(例えば、上記のハロゲン化物、アルコール類、ケトン類、カルボン酸エステル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類等)に浸漬しても分光波形の変化は無く、有機溶剤に対する安定性を有している。有機溶剤に対する安定性の評価法は、例えば、室温下で10秒〜10分間、有機溶剤に浸漬後、50℃〜200℃下に10秒〜10分間加熱し、残留溶剤を気化させた後に分光波形の変化を測定する事で容易に行える。
本発明の近赤外線カット(以降、光学フィルタと記載)は、撮像素子用途やディスプレイの前面板に限らず、近赤外線をカットする必要があるフィルタフィルム、例えば、断熱フィルム、光学製品、サングラス等にも使用することが出来る。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。ここで、部は特に断りのない限り重量部を表す。
[実施例1]
撹拌装置、温度計を設置したガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂(C)としてメタクリル酸グリシジル骨格ブロックコポリマー マープルーフG−0150M(日油(株)製、エポキシ当量310g/eq.)50.0部、シクロヘキサノン100部を入れ、20〜35℃で2時間撹拌し溶解し、次に近赤外線吸収色素(A)として、下記の式(10)の化合物(メタノール中のλmax:781nm、特開2008−88426号を参照)を0.5部添加し、20〜35℃で均一になるまで撹拌した。有機塩(B)としてトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムを0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)添加し、20〜35℃で1時間均一になるまで撹拌することで本発明の熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物をスピンコーター上に配置したガラス基板上に滴下し、その基板を1000rpmで30秒間回転させることで基板表面をコーティングし、その後80℃で10分間乾燥させて溶媒を除去し、190℃で40分間熱硬化し、光学フィルタを得た。
得られた光学フィルタを3枚用意し、1枚を210℃で10分間放置することで短期耐熱試験、1枚を125℃で放置することで長期耐熱試験、1枚をシクロヘキサノンに2分間浸漬後100℃で2分間乾燥することで耐溶剤試験を行った。
得られた光学フィルタの分光波形は、分光光度計(島津製作所社製、紫外可視分光光度計UV−3150)を用い、吸光度を300〜2000nmの範囲を1nmのサンプリングピッチで測定した。光学フィルタを80℃で10分間乾燥後、190℃で40分熱硬化後、210℃で10分間放置後、125℃で24時間放置ごと、シクロヘキサノンに2分間浸漬後100℃で2分間乾燥後にそれぞれ分光波形を測定した。
Figure 2016074753
[実施例2]
有機塩(B)の添加量を、実施例1に記載の0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)から1.5部(マープルーフG−0150Mに対して3.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[実施例3]
有機塩(B)の添加量を、実施例1に記載の0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)から5.0部(マープルーフG−0150Mに対して10.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[実施例4]
撹拌装置、温度計を設置したガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂(C)としてメタクリル酸グリシジル骨格ブロックコポリマー マープルーフG−0150M(日油(株)製、エポキシ当量310g/eq.)50.0部、シクロヘキサノン100部を入れ、20〜35℃で2時間撹拌し溶解し、次に近赤外線吸収色素(A)として、以下の式(11)の化合物(ジクロロメタン中のλmax:1108nm)を0.5部添加し、20〜35℃で均一になるまで撹拌した。有機塩(B)としてトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムを0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)添加し、20〜35℃で1時間均一になるまで撹拌することで本発明の熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
Figure 2016074753
[実施例5]
有機塩(B)の添加量を、実施例7に記載の0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)から1.5部(マープルーフG−0150Mに対して3.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[実施例6]
有機塩(B)の添加量を、実施例7に記載の0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)から5.0部(マープルーフG−0150Mに対して10.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[実施例7]
撹拌装置、温度計を設置したガラス製セパラブルフラスコに、エポキシ樹脂(C)としてフルオレン系エポキシ化合物(大阪ガスケミカル(株)製、OGSOL PG−100、エポキシ当量260g/eq.)50.0部、シクロヘキサノン67部を入れ、20−35℃で2時間撹拌し溶解し、次に近赤外線吸収色素(A)として、上記の式(11)の構造をもつ化合物を1.0部添加し、20〜35℃で均一になるまで撹拌した。有機塩としてトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムを0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)添加し、20〜35℃で1時間均一になるまで撹拌することで本発明の熱硬化性樹脂組成物を得た。この熱硬化性樹脂組成物にエポキシ樹脂硬化剤として特開2014−80587の合成例1−1に従って得られるカルボン酸化合物を48部添加し、1時間均一になるまで撹拌した樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[実施例8]
有機塩(B)の添加量を、実施例10に記載の0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)から1.5部(OGSOL PG−100に対して3.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[実施例9]
有機塩基の添加量を、実施例1に記載の0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)から5.0部(OGSOL PG−100に対して10.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[比較例1]
有機塩(B)としてトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[比較例2]
有機塩(B)としてトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムを添加しないこと以外は、実施例4と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[比較例3]
有機塩(B)としてトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムを添加しないこと以外は、実施例7と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[比較例4]
有機塩(B)を、実施例1に記載のトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)からビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[比較例5]
有機塩(B)を、実施例1に記載のトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)からビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム1.5部(マープルーフG−0150Mに対して3.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
[比較例6]
有機塩(B)を、実施例1に記載のトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム0.5部(マープルーフG−0150Mに対して1.0重量%)からビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム5.0部(マープルーフG−0150Mに対して10.0重量%)に変更する以外は実施例1と同様に光学フィルタを作製し、分光波形を測定した。
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られた光学フィルタの分光波形の最大吸収波長における吸光度を下表1に示す。
Figure 2016074753
[短期耐熱性比較]
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られた光学フィルタを80℃で10分間乾燥後、190℃で40分熱硬化後、210℃で10分間放置後の分光波形を比較することで、短期耐熱性の比較を行った。
まず実施例1と同様の分光光度計を用い、実施例1〜9及び比較例1〜6の各光学フィルタの80℃で10分間乾燥後、190℃で40分間熱硬化後、210℃で10分間放置後の分光波形を測定した。耐熱性の比較は、実施例1〜9及び比較例1〜6の光学フィルタの最大吸収波長における吸光度を用いて、80℃で10分間乾燥後の吸光度に対する熱硬化後(190℃、40分)の吸光度の残存率、熱硬化後(190℃、40分)の吸光度に対する短期耐熱試験後(210℃、10分)の吸光度の残存率を算出し、それぞれ比較を行った。
この比較により残存率が高い組成条件ほど、優れた短期耐熱性を有することを意味する。算出方法は以下の式(I)、(II)である。算出結果を下表2に示す。
(熱硬化後(190℃、40分)の残存率)=(熱硬化後(190℃、40分)の吸光度)/(80℃で10分間乾燥後の吸光度) (I)
(短期耐熱試験後(210℃、10分)の残存率)=(短期耐熱試験後(210℃、10分)の吸光度)/(熱硬化後(190℃、40分)の吸光度) (II)
[長期耐熱性比較]
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られた光学フィルタにおいて、190℃で40分間熱硬化を行うことで得られた光学フィルタを125℃の温度下で放置した際の分光波形の変化を比較することで長期耐熱性の比較を行った。
まず実施例1と同様の分光光度計を用い、実施例1〜9及び比較例1〜6の各光学フィルタの80℃で10分間乾燥し190℃で40分間熱硬化後の分光波形を測定し、これを分光波形の初期波形とした。長期耐熱性の比較は、実施例1〜9及び比較例1〜6の光学フィルタの最大吸収波長における吸光度を用いて、125℃の温度下で放置することで低下する吸光度の残存率が初期(190℃で40分間硬化後)の吸光度に対して0.8倍となった時間を長期耐熱寿命とし、それぞれ比較を行った。
この比較により長期耐熱寿命が長い組成条件ほど、優れた長期耐熱性を有することを意味する。結果は以下の表2に示す。
[耐溶剤性比較]
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られた光学フィルタを190℃で40分熱硬化後及び、シクロヘキサノンに2分間浸漬し100℃で2分間乾燥後の分光波形を比較することで、耐溶剤性の比較を行った。
まず実施例1と同様の分光光度計を用い、実施例1〜9及び比較例1〜6の各光学フィルタの190℃で40分熱硬化後及び、シクロヘキサノンに2分間浸漬し100℃で2分間乾燥後の分光波形を測定した。耐溶剤性の比較は、実施例1〜9及び比較例1〜6の光学フィルタの最大吸収波長における吸光度を用いて、熱硬化後(190℃、40分)の吸光度に対する耐溶剤試験後(シクロヘキサノンに2分間浸漬し100℃で2分間乾燥)の吸光度の残存率を算出し、それぞれ比較を行った。この比較により吸光度の残存率が高い組成条件ほど、優れた耐溶剤性を有することを意味する。算出方法は以下の式(III)である。算出結果を下表2に示す。
(耐溶剤試験後(シクロヘキサノンに2分間浸漬し100℃で2分間乾燥)の残存率)=(耐溶剤試験後(シクロヘキサノンに2分間浸漬し100℃で2分間乾燥)の吸光度)/((熱硬化後(190℃、40分)の吸光度) (III)
Figure 2016074753
表2の結果から、実施例1〜9は比較例1〜6に対し、耐溶剤性を保持しながら、短期耐熱性と長期耐熱性において優れている事が判った。以上のことから、近赤外線吸収色素(A)、有機塩(B)、エポキシ樹脂(C)から成る本発明の熱硬化性樹脂組成物は、近赤外線カットフィルタにおいて優れた性能を有していると言える。
本発明の熱硬化性樹脂組成物及びこれによって得られる近赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)は熱負荷がかかっても近赤外吸収の衰退が小さく耐候性が高いことに加え、樹脂溶液としてスピンコート等の方法で簡便に製膜することが可能であり加工性も高いため、各種用途の光学フィルタ、特にCCDやCMOSなどの撮像素子用の近赤外線カットフィルタ(光学フィルタ)として非常に有用である。

Claims (11)

  1. 近赤外線吸収色素(A)、金属イオンとトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンからなる有機塩(B)、エポキシ樹脂(C)を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 近赤外線吸収色素(A)がシアニン化合物またはジイモニウム化合物の少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 近赤外線吸収色素(A)が下記式(1)または式(2)で表されるシアニン化合物、及び下記式(5)で表されるジイモニウム化合物の少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2016074753
    Figure 2016074753
    (式中、Rがそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Rはハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシ基又はニトロ基、pは0又は1の整数を示し、Dが下記式(3)又は式(4)のいずれかであり、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
    Figure 2016074753
    (式(3)中、Yは水素原子、塩素原子、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルアミノ基のいずれかであり、*は結合部位を示す。)
    Figure 2016074753
    (式(4)中、Yは水素原子、塩素原子、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルアミノ基のいずれかであり、*は結合部位を示す。)
    Figure 2016074753
    (式(5)中、Rはそれぞれ独立に置換基を有してもよい炭素数1〜7のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルコキシアルキル基を示し、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
  4. 有機塩(B)の金属イオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンより選ばれる1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. エポキシ樹脂(C)のエポキシ当量が150〜600g/eq.である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. エポキシ樹脂(C)がメタクリル酸グリシジル骨格のみで構成された重合体、あるいはメタクリル酸グリシジル骨格を主としてアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、ビニル置換芳香族化合物のいずれかの組み合わせで構成される共重合体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. エポキシ樹脂(C)がフルオレン骨格を有するエポキシ化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項つに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 近赤外線吸収色素(A)が、下記式(6)又は式(7)で表されるシアニン化合物の少なくともいずれか1種を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
    Figure 2016074753
    Figure 2016074753
    (式中、Rはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、メトキシエチル基、n−ブトキシエチル基、Yは水素原子又は塩素原子、Xはトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドアニオンである。)
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
  10. 請求項1乃至8のいずれか一項1つに記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形した有機溶剤に対して安定な近赤外線カットフィルタ。
  11. 請求項10に記載の近赤外線カットフィルタを具備した撮像素子。
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WO2023176610A1 (ja) * 2022-03-17 2023-09-21 富士フイルム株式会社 硬化性組成物、膜、光学フィルタ、固体撮像素子および画像表示装置

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