以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「シート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「パターンシート」は、「パターン板(基板)」や「パターンフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1〜図20は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、合わせガラスを備えた自動車を概略的に示す図であり、図2は、合わせガラスをその板面の法線方向から見た図であり、図3は、図2の合わせガラスの横断面図であり、図4は、図3の合わせガラスを構成する各部材の積層前の状態を示す図である。
図1に示されているように、乗り物の一例としての自動車1は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウ5が合わせガラス10で構成されている例を説明する。また、自動車1はバッテリー等の電源7を有している。
この合わせガラス10をその板面の法線方向から見たものを図2に示す。また、図2の合わせガラス10のIII−III線に対応する横断面図を図3に示す。合わせガラス10は、一対の湾曲したガラス板11,12と、一対の湾曲したガラス板11,12の間に配置されたパターンシート20と、ガラス板11,12とパターンシート20とを接合する接合層13,14とを有している。なお、本実施の形態のガラス板11,12は、台形状に形成されている。
パターンシート20は、透明の基材30と、基材30上に設けられた導電性パターン部材40と、導電性パターン部材40に通電するための配線部15と、導電性パターン部材40と配線部15とを接続する接続部16とを有している。
図2及び図3に示した例では、バッテリー等の電源7から、配線部15及び接続部16を介して導電性パターン部材40に通電し、導電性パターン部材40を抵抗加熱により発熱させる。導電性パターン部材40で発生した熱は接合層13,14を介してガラス板11,12に伝わり、ガラス板11,12が温められる。これにより、ガラス板11,12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、ガラス板11,12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。
この合わせガラス10を作成するには、図4に示すように、湾曲したガラス板11、接合層13、パターンシート20、接合層14、湾曲したガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱および加圧(例えば、真空ラミネート)することで、湾曲したガラス板11、パターンシート20及び湾曲したガラス板12が、接合層13,14により接合される。
ガラス板11,12は、特にフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このようなガラス板11,12の材質としては、ソーダライムガラス、青板ガラス等が例示できる。ガラス板11,12は、可視光領域における透過率が90%以上であることが好ましい。ここで、ガラス板11,12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、ガラス板11,12の一部または全体に着色するなどして、可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、ガラス板11,12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れたガラス板11,12を得ることができる。
ガラス板11,12とパターンシート20とは、それぞれ接合層13,14を介して接合されている。このような接合層13,14としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層13,14は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層13,14の厚みは、それぞれ0.15mm以上0.7mm以下であることが好ましい。
なお、合わせガラス10には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、一つの機能層が二以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、合わせガラス10のガラス板11,12、接合層13,14や、後述するパターンシート20の基材30の少なくとも1つに機能を付与するようにしてもよい。合わせガラス10に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、偏光機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、パターンシート20について説明する。パターンシート20は、基材30と、基材30上に設けられた導電性パターン部材40と、導電性パターン部材40に通電するための配線部15と、導電性パターン部材40と配線部15とを接続する接続部16とを有している。本実施の形態のパターンシート20は、ガラス板11,12よりも大きい平面寸法を有して、合わせガラス10の全体にわたって配置される。ここで、パターンシート20は、加熱および加圧の前に一対のガラス板11,12の間で一対のガラス板11,12の各々の面に沿って展開された状態で、その周縁部20C(図19参照)の内側に、一対のガラス板11,12の各々の全体を包含可能な形状に形成されている。なお、パターンシート20の形状についての詳細は、後述するものとする。
基材30は、導電性パターン部材40を支持する基材として機能する。基材30は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板であって、熱可塑性樹脂を含んでいる。
基材30に主成分として含まれる熱可塑性樹脂としては、可視光を透過する熱可塑性樹脂であればいかなる樹脂でもよいが、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂、AS樹脂等を挙げることができる。とりわけ、アクリル樹脂やポリプロピレンは、光学特性に優れ、成形性が良いので好ましい。また、基材30は、延伸樹脂材料および無延伸樹脂材料のうちのいずれから形成されていてもよいが、加熱時の変形を抑制するために、無延伸樹脂材料から形成されることが好ましい。
また、基材30は、製造中の導電性パターン部材40の保持性や、光透過性等を考慮すると、0.03mm以上0.15mm以下の厚みを有していることが好ましい。
図5〜図7を参照して、導電性パターン部材40について説明する。図5は、パターンシート20をそのシート面の法線方向から見た平面図であって、導電性パターン部材40の配置パターンの一例を示す図である。
導電性パターン部材40は、バッテリー等の電源7から、配線部15及び接続部16を介して通電され、抵抗加熱により発熱する。そして、この熱が接合層13,14を介してガラス板11,12に伝わることで、ガラス板11,12が温められる。
図5に示される導電性パターン部材40は、多数の開口43を画成するメッシュパターンにて配置された導電細線41からなる部材であり、導電性メッシュとも呼ばれる部材である。導電性パターン部材40は、2つの分岐点42の間を延びて、開口43を画成する複数の接続要素44を含んで構成されている。すなわち、導電細線41は、両端において分岐点42を形成する多数の接続要素44の集まりとして構成されている。とりわけ図示された例では、分岐点42において、3つの接続要素44が等角度で接続されることにより、6つの接続要素44で囲まれた同一形状のハニカム状(六角形状)の開口43が多数画成されている。
図示された例では、導電性パターン部材40は、同一形状のハニカム状の開口43が規則的に配置されたメッシュパターンを有しているが、このようなメッシュパターンに限られず、三角形、矩形等の同一形状の開口43が規則的に配置されたメッシュパターン(格子状のパターン)、異形状の開口43が規則的に配置されたメッシュパターン、ボロノイメッシュのような、異形状の開口43が不規則的に配置されたメッシュパターン等、種々のメッシュパターンを用いることができる。また、導電性パターン部材40は、一方向に複数並んだ導電細線41により形成されるラインアンドスペースパターンを有していてもよい。
このような導電性パターン部材40を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの合金の一以上を例示することができる。
図6は、図5のA−A線に対応する断面図であって、導電細線の断面形状の一例を示す図である。基材30上に、導電性パターン部材40をなす導電細線41(接続要素44)が形成されている。図示された例では、導電細線41は、基材30側の面41a、基材30の反対側の面41b及び側面41c,41dを有し、全体として略長方形の断面を有している。導電細線41の幅W、すなわち、基材30のシート面に沿った幅Wは、2μm以上20μm以下とし、高さ(厚さ)H、すなわち、基材30のシート面への法線方向に沿った高さ(厚さ)Hは1μm以上12μm以下とすることが好ましい。このような寸法の導電細線41によれば、その導電細線41が十分に細線化されているので、導電性パターン部材40を効果的に不可視化することができる。
また、導電細線41は、基材30上に設けられた第1の暗色層46、第1の暗色層46上に設けられた導電性金属層45、及び、導電性金属層45上に設けられた第2の暗色層47を含んでいる。言い換えると、導電性金属層45の表面のうち、基材30側の面を第1の暗色層46が覆っており、導電性金属層45の表面のうち、基材30と反対側の面及び両側面を第2の暗色層47が覆っている。
金属材料からなる導電性金属層45は、比較的高い反射率を呈する。そして、導電性パターン部材40の導電細線41をなす導電性金属層45によって光が反射されると、その反射した光が視認されるようになり、乗員の視界を妨げる場合がある。また、外部から導電性金属層45が視認されると、意匠性が低下する場合がある。そこで、暗色層46,47が、導電性金属層45の表面の少なくとも一部分に配置されている。暗色層46,47は、導電性金属層45よりも可視光の反射率が低い層であればよく、例えば黒色等の暗色の層である。この暗色層46,47によって、導電性金属層45が視認されづらくなり、乗員の視界を良好に確保することができる。また、外部から見たときの意匠性の低下を防ぐことができる。なお、このような暗色層46,47は、無くても構わない。
図7は、図5のA−A線に対応する断面図であって、導電細線の断面形状の他の例を示す図である。図示された例では、導電細線41は、基材30側の面41a、基材30の反対側の面41b及び側面41c,41dを有している。基材30側の面41aと基材30の反対側の面41bは平行をなしている。側面41cは、パターンシート20のシート面の法線方向に沿って基材30から離間するにつれて側面41dに近づくようなテーパ面をなしている。側面41dも、パターンシート20のシート面の法線方向に沿って基材30から離間するにつれて側面41cに近づくようなテーパ面をなしている。導電細線41は、全体として略台形の断面を有している。すなわち、導電細線41の幅は、パターンシート20の法線方向に沿って基材30から離間するにつれて狭くなるように変化している。また、図6に示した例と同様、導電性金属層45の表面のうち、基材30側の面を第1の暗色層46が覆っており、導電性金属層45の表面のうち、基材30と反対側の面及び両側面を第2の暗色層47が覆っている。
なお、図7には、導電細線41が全体として略台形の断面を有して、導電細線41の幅が、パターンシート20の法線方向に沿って基材30から離間するにつれて狭くなるように変化しているものを示したが、これに限らず、側面41c,41dが曲線で構成されていたり、多段状となっていたりしてもよい。また、パターンシート20の法線方向に沿って基材30から離間するにつれて、部分的に導電細線41の幅が広くなる箇所があってもよい。すなわち、導電細線41の断面を全体的かつ大局的に見た場合において、導電細線41の幅が、パターンシート20の法線方向に沿って基材30から離間するにつれて狭くなるように変化しているものであればよい。
図7に示した例では、導電細線41の幅が、パターンシート20の法線方向に沿って基材30から離間するにつれて狭くなるように変化するように構成されているので、ガラス板11,12、接合層13,14及びパターンシート20を積層する際に、導電性パターン部材40を確実に接合層13に埋め込むことができ、導電性パターン部材40と接合層13との界面に気泡が残留することを抑制することができる。
次に、図8〜図20を参照して、合わせガラス10の製造方法の一例について説明する。図8〜図15は、合わせガラス10の製造方法の一例を順に示す断面図であり、特に、パターンシート20の製造について詳しく説明する図である。また、図16〜図20は、パターンシート20が製造された後にパターンシート20をガラス板11,12で挟み込んで製造される合わせガラス10の製造工程について詳しく説明する図である。
パターンシート20を製造する際には、まず、図8に示すように、基材30を準備する。基材30は、可視光線波長帯域の波長(380nm〜780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性の基板であって、熱可塑性樹脂を含むものである。
次に、図9に示すように、基材30上に第1の暗色層46を設ける。例えば、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法により、基材30上に第1の暗色層46を設けることができる。なお、第1の暗色層46の材料としては、種々の公知のものを用いることができる。例えば窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル等が例示できる。
次に、図10に示すように、第1の暗色層46上に導電性金属層45を設ける。導電性金属層45は、上述したように、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの合金の一以上からなる層である。導電性金属層45は、公知の方法で形成され得る。例えば、銅箔等の金属箔を耐候性接着剤(2液混合型ウレタンエステル系接着剤等)等を用いて貼着する方法、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。
次に、図11に示すように、導電性金属層45上に、レジスト層48を設ける。レジスト層48は、例えば特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有する樹脂層である。この樹脂層は、樹脂フィルムを貼着して形成してもよいし、流動性の樹脂をコーティングすることにより形成してもよい。また、レジスト層48の具体的な感光特性は特に限られない。例えば、レジスト層48として、光硬化型の感光材が用いられてもよく、若しくは、光溶解型の感光材が用いられてもよい。
その後、図12に示すように、レジスト層48をパターニングして、レジストパターン49を形成(積層)する。レジスト層48をパターニングする方法としては、公知の種々の方法を採用することができるが、この例では、レジスト層48として、特定波長域の光、例えば紫外線に対する感光性を有する樹脂層を用い、公知のフォトリソグラフィー技術を用いてパターニングしている。まず、レジスト層48上に、パターン化したい部分を開口したマスク、又は、パターン化したい部分を遮蔽したマスクを配置し、このマスクを介してレジスト層48に紫外線を照射する。その後、紫外線がマスクにより遮蔽された部分、又は、紫外線が照射された部分を現像等の手段により除去する。これにより、パターニングされたレジストパターン49を形成することができる。
次に、図13に示すように、レジストパターン49をマスクとして、導電性金属層45及び第1の暗色層46をエッチングする。このエッチングにより、導電性金属層45及び第1の暗色層46がレジストパターン49と略同一のパターンにパターニングされる。エッチング方法は特に限られることはなく、公知の方法が採用できる。公知の方法としては、例えば、エッチング液を用いるウェットエッチングや、プラズマエッチングなどが挙げられる。その後、図14に示すように、レジストパターン49を除去する。
最後に、導電性金属層45の基材30の反対側の面41b及び側面41c,41dに第2の暗色層47を形成する。第2の暗色層47は、例えば導電性金属層45をなす材料の一部分に暗色化処理(黒化処理)を施して、導電性金属層45をなしていた一部分から、金属酸化物や金属硫化物からなる第2の暗色層47を形成することができる。また、暗色材料の塗膜や、ニッケルやクロム等のめっき層等のように、導電性金属層45の表面に第2の暗色層47を設けるようにしてもよい。また、導電性金属層45の表面を粗化して第2の暗色層47を設けるようにしてもよい。
この例では、導電性金属層45の基材30の反対側の面41b及び側面41c,41dに第2の暗色層47を形成したが、これに限られず、導電性金属層45の基材30の反対側の面41bのみ、又は、導電性金属層45の側面41c,41dのみに第2の暗色層47を形成してもよい。
導電性金属層45の基材30の反対側の面41bのみに第2の暗色層47を形成する場合は、例えば、図10に示した工程の後に、導電性金属層45上に第2の暗色層47及びレジスト層48をこの順に設け、レジスト層48をパターニングしてレジストパターン49を形成する。その後、レジストパターン49をマスクとして、第2の暗色層47、導電性金属層45及び第1の暗色層46をエッチングすればよい。
また、導電性金属層45の側面41c,41dのみに第2の暗色層47を形成する場合は、例えば、図13に示した工程の後に、レジストパターン49を除去せずに第2の暗色層47を形成し、その後、レジストパターン49を除去すればよい。
なお、第1の暗色層46が必要ない場合には、図9に示した、基材30上に第1の暗色層46を設ける工程を省略すればよい。
そして、以上のようなパターンシート20が製造された後、湾曲したガラス板11、接合層13、パターンシート20、接合層14、湾曲したガラス板12をこの順に重ね合わせ、加熱および加圧することで、合わせガラス10が製造される。このような合わせガラス10は、一対の湾曲したガラス板11,12と、一対の湾曲したガラス板11,12の間に配置されたパターンシート20と、各ガラス板11,12とパターンシート20との間に配置され且つガラス板11,12と前記パターンシート20とを接合する接合層13,14と、を備えている。前記パターンシート20は、基材30と、前記基材30上に形成された導電性パターン部材40と、を有している。導電性パターン部材40は、上述したパターニング方法によって、所望のパターンが高精度に付与される。したがって、例えば優れた光学特性を有する合わせガラス10を作製することが可能となる。
次に、合わせガラス10の製造工程について、図16〜図20を用いて詳述する。
合わせガラス10をガラス板11,12の間に配置する際には、まず、パターンシート20が切り出される。図16には、パターンシート20が切り出された状態が示されている。図示の例において、パターンシート20は、ガラス板11,12の形状に対応して台形状に切り出されている。切り出されたパターンシート20は、同図の矢印に示すように、ガラス板11,12の間に配置される。
図19には、パターンシート20が、ガラス板11,12の間に配置された状態が示されている。ここで、図19に示すように、本実施の形態のパターンシート20は、加熱および加圧の前に一対のガラス板11,12の間で一対のガラス板11,12の各々の面に沿って展開された状態で、その周縁部20Cの内側に、一対のガラス板11,12の各々の全体を包含可能な形状に形成されている。
なお、ガラス板11,12の各々の面に沿って展開された状態とは、本実施の形態ではガラス板11,12が湾曲していることから、パターンシート20が湾曲変形されてガラス板11またはガラス板12の湾曲した面に全体的に当接するように沿わされた状態を意味する。
本実施の形態では、パターンシート20の形状を上記のように規定することにより、後述するようにガラス板11,12の間にパターンシート20を配置した状態でこれらを加熱および加圧する工程の際に、パターンシート20が熱変形してガラス板11,12の周縁部11C,12Cの内側に入り込むことが防止される。これにより、外観が良好なで透視性にも優れた合わせガラス10を提供することができる。
なお、パターンシート20の形状は、ガラス板11,12の間に配置された状態における加熱および加圧後に、パターンシート20の周縁部20Cが周縁部11C,12Cの内側に熱変形して入り込まない程度に規定することが好ましい。ここで、熱変形は基材30の材質及びパターンシート20の外形形状等によって変化するため、パターンシート20の形状は、基材30の材質及びパターンシート20の外形形状等を考慮して適宜決定することが好ましい。また、パターンシート20をガラス板11,12に対して過剰に大きくすることは、製造コストの点で好ましくない。したがって、パターンシート20の形状は、加熱および加圧後に、パターンシート20の周縁部20Cが周縁部11C,12Cの内側に熱変形して入り込まない程度であって、製造コストを可及的に抑制し得る程度に設定されることが好ましい。
図19において、パターンシート20及びガラス板11,12の各々は、台形状に形成されており、パターンシート20がガラス板11,12の上底からはみ出した長さである上底側余剰長さT1と、ガラス板11,12の下底からはみ出した長さである下底側余剰長さT2と、上底の端部と下底の端部とを接続するガラス板11,12の一対の側辺からはみ出した長さである側辺側余剰長さT3と、が示されている。なお、図示の例では、ガラス板11,12の上底と下底とが平行である。本実施の形態では、一例として、ガラス板11,12の上底と下底との間の板面に沿う長さ(高さ)をL1とする場合に、(L1/2)×0.025≦T1≦(L1/2)×0.1、および、(L1/2)×0.025≦T2≦(L1/2)×0.1となっている。また、ガラス板11,12の上底と下底との中間位置上におけるガラス板11,12の対向する側辺の間の板面に沿う長さをL2とする場合に、(L2/2)×0.025≦T3≦(L2/2)×0.1となっている。本件発明者は、上記のように余剰長さT1,T2,T3が規定されることで、基材30の材料の種別及び延伸・無延伸に関わらず、高い確率で、加熱および加圧後に、パターンシート20の周縁部20Cが周縁部11C,12Cの内側に熱変形して入り込まないことを知見した。
なお、ここでは、パターンシート20及びガラス板11,12の各々が、台形状に形成された場合について説明したが、この台形状の場合の余剰長さにかかる上述した寸法範囲は、パターンシート20及びガラス板11,12の各々が、矩形状に形成された場合においても有効であることを確認した。
また、図16には、パターンシート20における導電性パターン部材40が配置された領域のうちの接続線16が延びる方向における一方側(紙面上側)の領域AR2と、他方側(紙面下側)の領域AR3と、これら領域AR2及び領域AR3の間の中央側の領域AR1と、が示されている。領域AR2は、パターンシート20の周縁部20Cにおける紙面上側の部分の近傍に位置し、領域AR3は、パターンシート20の周縁部20Cにおける紙面下側の部分の近傍に位置している。
また、図16には、パターンシート20における導電性パターン部材40が配置された領域のうちの一方の接続線16から他方の接続線16に向けて延びる方向における一方側(紙面左側)の領域AR5と、他方側(紙面右側)の領域AR6と、これら領域AR5及び領域AR6の間の中央側の領域AR4とが示されている。領域AR5は、パターンシート20の周縁部20Cにおける紙面左側の部分の近傍に位置し、領域AR6は、パターンシート20の周縁部20Cにおける紙面右側の部分の近傍に位置している。
そして、図17は、図16のB−B線に対応する断面図であり、図18は、図16のC−C線に対応する断面図であり、これら各図には、加熱および加圧される前の導電細線41の断面形状が示されている。そして、図17には、上述した領域AR1、領域AR2及び領域AR3の各々に位置する導電細線41の断面形状および幅が示されている。また、図18には、上述した領域AR4、領域AR5及び領域AR6の各々に位置する導電細線41の断面形状および幅が示されている。なお、図16のC−C線に沿って導電細線41の断面を厳密に見た場合、導電細線41の断面は、導電細線41が延びる方向に対して直交する方向の断面で表れないが、図18においては、説明の便宜上、導電細線41の断面を、導電細線41が延びる方向に対して直交する方向の断面で表している。
ここで、図17に示すように、領域AR2及び領域AR3に位置する導電細線41の幅W2は、領域AR1に位置する導電細線41の幅W1よりも大きく形成されている。また、図18に示すように、領域AR5及び領域AR6に位置する導電細線41の幅W3も、領域AR4に位置する導電細線41の幅W1よりも大きく形成されている。
すなわち、本実施の形態では、パターンシート20が加熱および加圧の前にガラス板11,12の間に配置された際に、導電細線41のうちのガラス板11,12の周縁部11C,12Cの近傍に位置する導電細線41の線幅W2,W3がガラス板11,12の中央側に位置する導電細線41の線幅W1よりも大きくなるように、形成されている。
ガラス板11,12の間にパターンシート20を配置した状態でこれらを加熱および加圧する工程の際には、パターンシート20の周縁部20Cが大きく変形する傾向にあり、周縁部20Cが大きく変形した際には、周縁部20Cの近傍の導電細線41が収縮されて細くなってしまう場合がある。したがって、本実施の形態では、導電細線41のうちのガラス板11,12の周縁部11C,12Cの近傍に位置する導電細線41の線幅W2,W3を、ガラス板11,12の中央側に位置する導電細線41の線幅W1よりも大きくしている。これにより、加熱および加圧する工程の際にパターンシート20の周縁部20Cが大きく変形した場合であっても、周縁部20C側の導電細線41が収縮されて細くなってしまうことを防止することができる。
そして、図19に戻り、上述したような形状のパターンシート20がガラス板11,12の間に配置された後には、加熱および加圧の工程がなされる。加熱および加圧の工程は、例えば、公知の真空ラミネート装置を用いた真空ラミネートによって行われる。すなわち、真空状態で加熱および加圧が行われる。
図20は、加熱および加圧の工程の後のガラス板11,12及びパターンシート20が示されている。同図に示すように、パターンシート20は、二点鎖線で示す加熱および加圧前の状態から、熱変形によりガラス板11,12の周縁部11C,12C側に収縮している。しかしながら、本実施の形態では、パターンシート20が上述したようにガラス板11,12よりも大きく形成されていることにより、パターンシート20の周縁部20Cが、ガラス板11,12の周縁部11C,12Cよりも内側に至っていない。したがって、パターンシート20の周縁部20Cがガラス板11,12の周縁部11C,12Cの内側に入り込むことが防止されている。このようにして、本実施の形態では、パターンシート20の周縁部20Cが、ガラス板11,12の周縁部11C,12Cの内側に弧状に突出するようにして大きく入り込んでしまったり、周縁部11C,12Cの内側において歪んだ状態で入り込んでしまったりすることが防止される。これにより、外観が良好で透視性に優れた合わせガラス10を提供することができる。
なお、図20では、加熱および加圧の工程の後のパターンシート20の周縁部20Cがガラス板11,12の周縁部11C,12Cのわずかに外側に位置している。このような場合には、周縁部20Cがトリミングされる。以上により、合わせガラス10が製造される。
以上のように本実施の形態では、パターンシート20は、加熱および加圧の前に一対のガラス板11,12の間でこれら一対のガラス板11,12の各々の面に沿って展開された状態で、その周縁部20Cの内側に、一対のガラス板11,12の各々の全体を包含可能な形状に形成されている。このようなパターンシート20を一対のガラス板11,12の間に配置して、加熱および加圧することで、合わせガラス10が製造される。これにより、パターンシート20の周縁部20Cがガラス板11,12の周縁部11C,12Cの内側に入り込むことが抑制されることにより、外観が良好で透視性に優れた合わせガラス10を提供することができる。
また、本実施の形態のパターンシート20は、加熱および加圧の前に一対のガラス板11,12の間に配置された際に、導電細線41のうちのガラス板11,12の周縁部11C,12Cの近傍に位置する導電細線41の線幅がガラス板11,12の中央側に位置する導電細線41の線幅よりも大きくなるように、形成されている。これにより、加熱および加圧する工程の際にパターンシート20の周縁部20Cが大きく変形した場合であっても、周縁部20C側の導電細線41が収縮されて細くなってしまうことを防止することができる。これにより、導電細線41の外観が損なわれることを防止すること及び透視性が悪化することを防止することができると共に、導電細線41が細くなることにより通電時に異常が生じることも防止することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
例えば、パターンシート20の導電性パターン部材40は、基材30のガラス板11側の面上ではなく、ガラス板12側の面上に設けてもよい。また、基材30のガラス板11側及びガラス板12側の両面に設けてもよい。
合わせガラス10は、自動車1のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。また、自動車以外の、鉄道、航空機、船舶、宇宙船等の乗り物の窓に用いてもよい。
さらに、合わせガラス10は、乗り物以外にも、特に室内と室外とを区画する箇所、例えばビルや店舗、住宅の窓等に使用することもできる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。