JP6391138B2 - 内面螺旋溝付管の製造方法 - Google Patents
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Description
熱交換器には省エネ化に向けた高効率化が要求されており、伝熱管には熱伝達特性の向上のために、管内面に断面形状を三角形あるいは台形としたフィンが溝間に形成されている。最近では、更なる熱特性の改善のために、溝を螺旋状に形成した伝熱管(内面螺旋溝付管)が使用されている。また、冷暖房機能のあるヒートポンプ式エアコンの普及により同一の伝熱管で蒸発性能と凝縮性能の両性能をともに高めた伝熱管が必要とされており、このような要求に応えるべく、フィン高さ、溝のリード角、フィン形状、フィン頂角等を規定した伝熱管が提案されている。
現状において広く用いられている熱交換器用の銅の伝熱管は、一般に前述の溝転造法により製造されている。溝転造法は、加工対象の管内に保持プラグで溝付きプラグを保持し、管の外周側に設けた転造ボールが管を溝付きプラグに押し付けながら高速で自転および遊星回転し、溝付きプラグの形状を管の内面に転写しながら螺旋溝付管を製造する方法である。
その結果、伝熱管の内容積の一部を占めるように収容されている液体の冷媒において、冷媒の液面から突出するフィントップ部の面積が減少する。冷媒から突出したフィントップ部は、溶媒の薄い液膜が表層に形成された状態であり、相変化が容易で熱伝達に寄与する効果が大きく、その部位の面積が大きい方が好ましい。また、伝熱管の内面において液体の冷媒に浸されずに伝熱管の内面に冷媒の環状流が生成する領域が存在する。この領域では、フィンの根元部コーナーRが大きいと、コーナーRの大きい部位において環状流化した冷媒により生成される液膜の厚さが厚くなり、冷媒が液体から気体へ相変化を生じ難くなり、熱特性が低下する。このことも含めてフィン根元のコーナーRをできるだけ小さくすることは伝熱管において重要な技術課題である。
本発明者は様々な製法について検討した結果、予め、ストレートの溝を有した素管に、直接捻じり加工を付与する方法がアルミニウムおよびアルミニウム合金による伝熱管の製造に適していると考えている。ストレート溝を有する素管の製造には押出が適しており、フィン頂角が狭くフィン高さの高いハイスリムフィンタイプの溝形状も容易で、フィンの根元部コーナーRを小さくすることができる。
しかしながら、素管の結晶粒組織について結晶粒サイズがある範囲以上では、製造した内面螺旋溝付管の結晶粒サイズが粗大化し、拡管時にその外周面にオレンジの皮のような肌荒れのオレンジピールを生じ、表面に凹凸が発生する。このため、オレンジピールを生じていると、表面の肌荒れでフィンの根部コーナーRが変形し、精度が得られない。
更に、製造した伝熱管は加工のままでは加工硬化しており、そのままでは拡管により溝のみが潰れやすい状態であるため、O材化のための焼鈍しによる熱処理が必要であり、その熱処理で結晶粒が成長することから、伝熱管に関しては、最終熱処理後の結晶粒サイズに制限を設ける必要がある。
本発明において、前記内面螺旋溝付管を製造するに際し、前記素管に予め形成されたフィンの根元部コーナーRが0.1mm以下、且つ、金属組織が全て管の長さ方向に沿う繊維状組織あるいは表層のみ外内周それぞれ肉厚の5%以下が再結晶組織であってそれ以外は全て繊維状組織または全面平均結晶粒サイズ80μm以下の結晶粒とされた押出素管を用いることができる。
本発明において、内面の螺旋溝に沿って形成されているフィンのフィン倒れ角が1゜以下の内面螺旋溝付管を得ることができる。
また、平均結晶粒径を120μm以下とすることでオレンジピールのような肌荒れを生じることが無く、表面性状に優れ、内面側の溝形状もフィンの根元部においてコーナーRが0.1mm以下であり、目的の形状にできる内面螺旋溝付管を製造できる。また、表面性状に優れるので、フィンとともに熱交換器に組む場合、フィンの接合不良やフィン倒れなどを生じ難い内面螺旋溝付管を製造できる。
また、上述の優れた特性の内面螺旋溝付管を備えた熱交換器を提供できる。
第1実施形態の内面螺旋溝付管の製造装置100は、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝11aが周方向に間隔をおいて形成された押出素管11(図2参照)に、一定の捻りを生じさせ、内面に螺旋溝11dを有する内面螺旋溝付管11R(図3参照)を製造する装置である。
内面螺旋溝付管11Rの形状について、外径10mm以下、例えば、3〜10mm、凸型の螺旋フィン11cを複数、例えば、30〜60個、凹型の螺旋溝11dを複数、例えば、30〜60個有する。また、内面螺旋溝付管11Rにおいて、螺旋フィン11cの高さ0.1〜0.4mm、フィン頂角10〜30゜、底肉厚(螺旋溝底の位置における管の肉厚)0.3〜0.6mm、捻れ角θ15〜40゜などである。なお、捻れ角θとは、図3に示すように内面螺旋溝付管11Rの縦断面を描いた場合、管の内側に表示される螺旋溝あるいは螺旋フィンの直線状に描かれる部分の延長線Sと管の外面とのなす角度を示す。
このような押出素管11を押出により製造するには、材料投入時の押出装置のビレット温度を540〜560℃として、595℃×10時間程度の均質化処理、換言するとビレットホモ処理を行う。上述よりも材料投入温度を高くするか、押出速度を上げて加工発熱を増加させると、結晶粒が粗大化するので、望ましくない。
なお、図1は製造装置100の1つの巻き取り手段20と引張り手段30の構成を主体として示すが、製造装置100は詳細には図4に示すように巻き取り手段20と引張り手段30が複数直列(図4の例では3つ直列)に配置され、終段に引抜き手段40と熱処理手段50が配置されている。
一対のガイド板23は、巻き取りロール21の外周面に対峙する円弧板状に形成され、その内面に巻き取りロール21の外周面に沿う溝23aが一定間隔で形成されており、これらガイド板23は、巻き取りロール21の両側に少なくとも2個以上配置されていることが好ましい。巻き取りロール21の表面とガイド板23の溝23aとの間に押出管材11を通すことにより、押出管材11を巻き取りロール21の外周に沿ってコイル状に巻き取り、且つ、その巻き取られたコイル状管材11Cを、巻き取りロール21の端部から螺旋の延長方向に送り出すことができる。
また、引抜き手段40は、中空孔を有する引抜ダイスに管材を通して引抜くことにより、管材の断面形状を矯正する構成とされている。熱処理手段50は、真円度を矯正後の管材の中間焼鈍を行う。なお、本実施形態の加熱手段としては、巻き取りロール21および押さえロール24の表面を加熱するシーズヒーターや、引き伸ばし途中の管材を加熱する加熱炉33が相当する。
第1実施形態の製造装置100は、図4に詳細に示すように巻き取り手段20と引張り手段30とが3組直列に設けられ、その後段側に引き抜き手段40と熱処理手段50が設けられている。以下、第1実施形態の製造装置100において、便宜的に1組目の巻き取りロール21を巻き取りロール21aと表記し、2組目の巻き取りロール21を巻き取りロール21bと表記し、3組目の巻き取りロール21を巻き取りロール21cと表記することがある。
製造装置100を用いて内面螺旋溝付管を製造するには、押出成形法により内面に直線溝を形成した押出素管11を製造する。
本実施形態で用いる押出素管11は、押出素管に予め形成されたフィンの根元部コーナーRが0.1mm以下、且つ、金属組織が全て管の長さ方向に沿う繊維状組織あるいは表層のみ外内周それぞれ肉厚の5%以下が再結晶組織であってそれ以外は全て繊維状組織または全面平均結晶粒サイズ80μm以下の結晶粒とされたことを特徴とする。この金属組織と溝形状を有する押出素管11は、押出速度の制御と押出装置のビレット中の温度制御により実現できる。押出速度の制御は、通常材料において、40m/min程度の押出速度に制御した生産条件において、ビレット内へのアルミニウム材料の投入温度を540〜560℃に制御し、ビレット内の温度を580〜595℃程度の温度で数時間〜10時間程度加熱することを意味する。
上述の条件で押出加工することにより、押出素管11を構成するアルミニウム合金の金属の組織及び形状をフィンの根元部コーナーRが0.1mm以下、且つ、金属組織が全て管の長さ方向に沿う繊維状組織あるいは表層のみ外内周それぞれ肉厚の5%以下が再結晶組織であってそれ以外は全て繊維状組織または全面平均結晶粒径80μm以下の結晶粒組織に制御することができる。
ストレッチャー31はコイル状管材11Cに予備矯正を加えた後、図1に二点鎖線で示すように元の位置に移動し、順次送り出されてくるコイル状管材11Cの端部をチャッキングし、予備矯正を繰り返し行う。ピンチロール32で直管状に矯正された管材11Lは、巻き取りロール21bにコイル状に巻き取られる。
図5のフローチャートでは、S101〜S103に示すように、巻き取り工程と引張り工程との組合せからなる工程を3回繰り返した後、引抜き工程(S104)と熱処理工程(S105)を挟み、合計8回の巻き取り工程と引張り工程とが行われる(S101〜S112)。そして、巻き取り工程と引張り工程とを繰り返す毎に、管材11には一定の捻りが加算され、捻れ角θを徐々に大きくしていくことができる。
このように、巻き取り工程と引張り工程とを繰り返して、管材の扁平率が大きくなった場合には、引抜き工程により真円度を回復させ、座屈が生じることを防止することができる。引張り工程後に、管材の断面形状を矯正する少なくとも1回の引抜き工程を設けることで、管材の潰れを抑制し、巻き取り工程と引張り工程とを複数回工程を繰り返すことが可能となり、管材の捻れ角を大きくすることができる。
なお、扁平率とは、図6に示す管材11の最小径Yに対する最大径Xの比率をいう。
例えば、捻り加工と内面螺旋溝付管11Rとして、フィンの根元部コーナーRが0.1mm以下であり、かつ、オレンジピールの発生がなく、コーナーRの精度の高いものを提供できる。
なお、加工後に得られた内面螺旋溝付管11Rは加工硬化されており、そのままでは硬度が高く、拡管プラグによる拡管に支障を生じるので、O材化のための焼き鈍しを行うことで軟化させ、拡管し易くする。この焼き鈍しによるO材化は、300〜420℃の温度範囲に内面螺旋溝付管11Rを0.5時間以上、4時間以内加熱後、徐冷する処理を意味する。
O材化の際の加熱温度が300℃未満では加工後の管の歪を完全に取ることができず、4時間を超える加熱処理では結晶粒が成長し過ぎてオレンジピールの発生に繋がるおそれがある。
図7は、第2実施形態の内面螺旋溝付管の製造装置50を示す。この製造装置50は、第1実施形態の製造装置100と同様に、内面に長さ方向に沿うストレート溝11aを周方向に間隔をおいて複数形成した押出素管11(図2参照)に、一定の捻りを生じさせ、内面に螺旋溝11dを有する内面螺旋溝付管11R(図3参照)を製造する装置である。
また、巻出ドラム51の内側にはドラムブレーキあるいはディスクブレーキ等のブレーキ装置54が内蔵されていて、巻出ドラム51の回転に対し一定の制動力を付加できるように構成されている。このブレーキ装置54が発生させる制動力を調節することにより巻出ドラム51から巻き出して引抜ダイス53を通過しようとする押出素管11に対し所定の後方張力(バックテンション)を付加することができる。
支持枠57において支持軸59を設けた側の端部には押出素管11を通過させる通過孔57aがダイス53のダイス孔に連通するように形成されていて、巻出ドラム51から巻き出した押出素管11について通過孔57aを介し引抜ダイス53側に導出し、引抜ダイス53を介し巻取ドラム55側に巻き取ることができるように構成されている。以上の構成により、巻出ドラム51は巻き出した押出素管11の周回り方向に回転することができ、ダイス53を通過しようとする押出素管11をその周回りに捻ることができる。
巻取ドラム55のサーボモーター48はその回転駆動力を調節することで巻取ドラム55の巻取力を調節できるように構成されている。従って、引抜ダイス53を通過した内面螺旋溝付管11Rを引き抜く力を調節し、引抜ダイス53を通過しようとする押出素管11に対し任意の前方張力を付加できるようになっている。
支持枠57において支持軸58を設けた側の端部には延長軸部62が形成され、この延長軸部62が脚部60の外側に延出され、延長軸部62がその下方の基台61に設置された駆動装置63により伝導装置64を介し回転駆動されるようになっている。
第2実施形態の製造装置50において、駆動装置63と伝導装置64と脚部60、60と支持枠57により巻出ドラム51の回転手段52が構成されている。
先ず、ボビン56に巻かれた内面ストレート溝付の押出素管11をボビン56ごと巻出ドラム51に装着し、押出素管11とボビン56を巻出ドラム51ごと回転させて、押出素管11に捻じりを付与する。巻出ドラム51の回転は、駆動装置63による伝導装置64を介した支持枠57の回転状態により制御できるので、押出素管11に対し必要な捻り力を付与することができる。
前述の捻りの付与と同時に押出素管11は引抜ダイス53を通り、捻り付与と同時に縮径されて内面螺旋溝付管11Rに成形され、巻取ドラム55に巻き取られる。
例えば、特許第3489359号(特開平10−166086号)に記載されている製造装置では、繰り出しドラムとダイスとの間に原管のパスラインを規制してダイスのダイス孔に原管を水平に導くための支点が必然的に存在するので、この特許に記載の製造装置では、その支点部分で原管の破断または座屈を生じやすい。
これに対し本実施形態の装置では、押出素管11に捻り力を付加する位置と押出素管11に縮径力を付加する位置を引抜ダイス53の内部で同一領域に設定し、前方張力と後方張力のバランスを取っているので、押出素管11の座屈と破断を生じない製造装置50とすることができる。このため、上述したような細径の押出素管11であっても支障なく内面螺旋溝付管11Rに成形できる。
外径10mm、内径8.86mm、内面に直線溝が形成された3003アルミニウム合金の押出素管を用いて内面螺旋溝付管の製造を行った。押出素管においてフィンの根元部コーナーRは0.06mmであり、金属組織および平均結晶粒径を変量した。
押出素管は押出時の製造条件として、押出速度40m/min、アルミニウム材料投入時の押出装置ビレット温度550℃、ビレット中で595℃×10時間均熱処理を施すビレットホモ処理を行って製造した押出素管である。
押出素管は、内面の直線溝の数、36個(36条)、これら直線溝により形成されるフィンの高さが0.26mm、フィン頂角10゜であり、押出素管は平均結晶粒径80μmの結晶粒からなる。また、フィン形状等は同等であるが、平均結晶粒サイズが140μmの結晶粒組織を有する押出素管を比較例の押出素管として用いた。この比較例の押出素管は、押出速度40m/min、アルミニウム材料投入時の押出装置ビレット温度520℃、610℃で8時間均熱処理することで製造した押出素管である。
先ず、巻き取りロール上に巻き取りピッチ15mmで巻き取りを行った後に、そのコイル状管材を引き伸ばし、これら巻き取り工程と引張り工程とを3回ずつ繰り返した後に、φ8mmの中空孔を有する引抜ダイスで引抜きし、扁平率118%まで潰れた管材を再び扁平率103%の真円に回復させた(引抜き工程)。その後、350℃で4時間の中間焼鈍を行い(熱処理工程)、再度、φ160mmの巻き取りロールにより巻き取りピッチ12mmで巻き取りを実施した。巻き取り工程と引張り工程とを3回ずつ行った後、φ7.5mmの中空孔を有する引抜ダイスで引抜きを行い、350℃で4時間の熱処理を行った。
次いで、φ160mmの巻き取りロールにて巻き取りピッチ11.25mmで巻き取りを実施し、巻き取り工程と引張り工程とを1回ずつ行った。最後にφ7.2mmの中空孔の引抜ダイスで引抜きを行い、最終的に捻れ角20°の内面螺旋溝付管を製造した。
巻き取り速度および抜取り速度は30m/minとした。また、引張り工程は、巻き取りロール上から送り出された3巻分のコイル状の管材の下側端部をストレッチャーにより矯正を加え、ある程度、直管状に伸ばした後、二対のピンチロール間で1〜2kNの張力を負荷しながら直管状に矯正した。
以上の工程により得られた内面螺旋溝付管において、平均結晶粒80μmの結晶粒組織を有する押出素管を用いて得られた内面螺旋溝付管の断面の金属組織の拡大を図11(a)に示し、同内面螺旋溝付管の一部を切り開いた状態を図11(b)に示し、同内面螺旋溝付管の横断面の溝形状を図11(c)に示す。また、平均結晶粒径140μmの結晶粒組織を有する押出素管を用いて得られた内面螺旋溝付管の断面の金属組織の拡大を図12(a)に示し、同内面螺旋溝付管の一部を切り開いた状態を図12(b)に示し、同内面螺旋溝付管の横断面の溝を図12(c)に示す。
これに対し、図12に示す比較例の内面螺旋溝付管は、フィンの形状が不揃いであり、フィンの一部が折れ曲がる等、フィン形状が崩れていた。また、図12(a)に示す組織写真のように結晶粒が大きく、溝とフィンの一部を結晶粒が形作っているので、結晶粒が一部脱落してフィンの形状が一部欠落している箇所を複数確認できた。また、表面にオレンジピールと表される肌荒れを確認できた。また、図12に示す内面螺旋溝付管のフィンの根元部コーナーRは平均0.12mmであった。
以上の比較から、平均結晶粒80μmの結晶粒組織を有する押出素管を用いて得られた内面螺旋溝付管の方がフィン形状が整っていることが明かであり、表面性状にも優れていることが明かである。
オレンジピール発生の有無は、得られた螺旋溝付き管の長さ150cmの領域の外面を顕微鏡観察して1箇所もオレンジピールを観測できない場合は発生無し、1箇所でも確認できた場合は発生した、と判断した。
また、内面螺旋溝付管の長手方向と垂直にカットした試料の断面をCCDカメラで観察し、フィンの倒れ角を計測した。フィンの倒れ角θ2は、図14に示すようにフィン付け根部両端に亘る直線L1を引き、直線L1の中央部bから円中心方向(内面螺旋溝付管中心方向)に垂線を作図し、それがフィン頂辺と交わる点をcとし、頂辺中央部aより、角abcを計測した。フィンの傾きの計測は任意に切り出したそれぞれの内面螺旋溝付管の断面3視野のそれぞれから適当に8か所を計測し、計24か所の平均値を求めた。
図14に示す4つのフィン11cにおいて、左側に記載した3つのフィン11cは変形していない状態を示し、右側に記載した1つのフィン11cが変形したフィンを例示している。図14の右側のフィン11cは変形しているので、倒れ角θ2を角abcから計測できるが、左側のフィン11cは変形していないので、直線L1の中央部bから円中心方向に形成した垂線上に頂辺中央部aが位置するので、この場合のフィン倒れ角θ2は0゜となる。なお、図14は、フィン頂角を例示するために作図したものであり、通常は複数のフィン11cにフィン倒れが生じる。また、図14に参考としてフィン頂角θ1を表記しておく。
内面螺旋溝付管の保持治具70は、支持台74、第1保持部材71、並びに第2保持部材72から概略構成されている。図15(a)に示すように、支持台74は、この内面螺旋溝付管の保持治具70を設置する設置面に固定されており、当該支持台74に、ブロック状の第1保持部材71が固定されている。また、図15(b)に示すように、第2保持部材72は、第1保持部材71と同様にブロック状に形成され、第1保持部材71に着脱自在に重ね合わせ可能に構成されている。
支持台74には、第1保持部材71及び、第2保持部材72の幅と一致するスライド溝74aが形成されており、このスライド溝上に第1保持部材71及び第2保持部材72を載置することによって、これらの幅方向の位置合わせが可能となる。即ち、第1保持部材71、及び第2保持部材72に設けられた溝71A、72A同士の位置合わせは、前記スライド溝74aにより容易に行うことができる。
図15(a)に示すように、第1保持部材71には、螺子孔71aが設けられている。図15(b)に示すように、第2保持部材72を重ね合わせた後に第2保持部材側から、前記螺子孔31aに固定ボルト32aを螺着することで、第1保持部材71と第2保持部材72を固定することができる。
次に図15(c)に示すように、前記孔73に内面螺旋溝付管11Rを挿入する。なお、前記孔73の内径は、内面螺旋溝付管11Rの外径よりも十分に大きく形成されており、上方から容易に挿入することができる。
次に図15(d)に示すように、拡管プラグ76を挿入することで、内面螺旋溝付管11Rを拡管する。
最後に、固定ボルト72aを取り外し、第1保持部材71と第2保持部材72を開くことで、拡管された内面螺旋溝付管11Rを取り出し、これを観察する。
また、拡管プラグ76の挿入速度は、285mm/minとした。
拡管を行う内面螺旋溝付管11Rの長さは125mmであり、このうち95mmを拡管ストロークとして拡管試験を行った。尚、プラグを内面螺旋溝付管から抜く際、試料が付いてこないようにセットした内面螺旋溝付管の下から20mm位置に固定孔を設け、ホルダーにセット後、ホルダー側からピンを挿入し固定した。
以下の表2にオレンジピール発生の有無について、試験に用いた押出素管と加工熱処理後の内面螺旋溝付管の平均結晶粒径の大きさ等について示す。
これらの試料に対し、No.4、5、6の試料は平均結晶粒径80μmを超えた試料であるが、オレンジピールの発生が見られ、フィン倒れ角も1゜を超えて大きくなった。
フィン倒れ角が大きい場合、内面螺旋溝付管を拡管プラグにより拡管して熱交換器を組み立てる場合、拡管プラグが作用させる拡管力が倒れた内面フィンを更に倒すように作用し易くなる。この状態になると、内面フィンが更に倒れるように変形する結果、内面螺旋溝付管の拡管不足となり、熱交換器の製造に支障を来す。例えば、熱交換器を内面螺旋溝付管と外部のフィンとで構成する場合、外部のフィンに形成した透孔に内面螺旋溝付管を挿通し、内面螺旋溝付管を拡管することにより熱交換器を組み立てるが、拡管不足となると、外部フィンと内面螺旋溝付管との密着性が劣ることとなり、熱交換性能が低下することとなる。
外径8.5mm、内径7.5mm、内面にストレート溝が周方向に一定間隔で36条形成された3003アルミニウム合金の押出素管を用い、図7に示す構造の製造装置50を用いて内面螺旋溝付管の製造を行った。
押出素管の内面溝形状は、溝の高さが0.22mm、フィンの根元部コーナーR0.06mm、フィン頂角10゜であり、押出素管の平均結晶粒径は、30〜140μmである。
また、得られた内面螺旋溝付管の外周について、表面粗さ(Rmax)を二次元粗さ計(サーフコム1400D:株式会社東京精密)で測定した。パラメータ算出はJIS’94規格を選定し、最小二乗直線補正を入れ、試料の傾斜をキャンセルした上で、測定長4mm、測定速度を0.3mm/s、測定レンジ±400.0μmで計測した。
また、比較例において、押出素管の平均結晶粒径が大きい試料は、得られた内面螺旋溝付管の結晶粒径も大きくなり、フィン倒れ角も大きくなった。
次に、実施例で用いたコーナーR0.06mmの押出素管に替えて、コーナーR0.08mmの押出素管、0.04mmの押出素管を使用して同様に全面ファイバーの試料、両面表層3%再結晶組織の試料、両面表層5%再結晶組織の試料を作成してみたが、いずれの試料においてもフィン倒れ角が小さく、拡管率も優れていた。
これに対し、図18に示す比較例の80μm超えの内面螺旋溝付管は、表面にオレンジピールと表される肌荒れを確認できた。
図19に示す熱交換器の構造において内面螺旋溝付管81は、フィン材82を直線状に貫通する複数のU字状の主管81Aと、隣接する主管81Aの隣り合う端部開口どうしをU字形のエルボ管81Bで図19に示すように接続してなる。また、フィン材82を貫通している内面螺旋溝付管81の一方の端部側に冷媒の入口部86が形成され、内面螺旋溝付管81の他方の端部側に冷媒の出口部87が形成されることで図19に示す熱交換器80が構成されている。
図19に示す熱交換器80に内面螺旋溝付管81を適用することで、熱交換効率の良好な熱交換器80を提供することができる。
Claims (5)
- 内面に長さ方向に沿う複数のストレート溝が周方向に間隔をおいて形成され、これらストレート溝間にフィンが形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の素管を用い、
引抜ダイスのダイス孔の導入側に前記ダイス孔に向かって直線状に素管を供給する送出装置を設置し、前記引抜ダイスの導出側に前記素管の巻取装置を設置し、前記ダイス孔の中心を通過する中心線の延長線を中心軸としてその軸周り方向に回転するように前記送出装置を設け、前記送出装置から前記引抜ダイスのダイス孔に至る素管を直線状に維持しながら該素管に後方張力と回転力を付与し、前記引抜ダイスのダイス孔から前記巻取装置に至る管に前方張力を印加し、前記ダイス孔を通過する素管に引抜き加工と捻り加工を加えることにより、
内面に長さ方向に沿う複数の螺旋溝が間隔をおいて形成され、内面の螺旋溝間にフィンが形成され、該フィンの根元部コーナーRが0.1mm以下で、且つ、その結晶粒組織において平均結晶粒サイズが120μm以下である内面螺旋溝付管を製造することを特徴とするアルミニウムまたはアルミニウム合金製内面螺旋溝付管の製造方法。 - 前記内面螺旋溝付管を製造するに際し、前記素管に予め形成されたフィンの根元部コーナーRが0.1mm以下、且つ、金属組織が全て管の長さ方向に沿う繊維状組織あるいは表層のみ外内周それぞれ肉厚の5%以下が再結晶組織であってそれ以外は全て繊維状組織または全面平均結晶粒サイズ80μm以下の結晶粒とされた押出素管を用いることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 前記120μm以下の平均結晶粒径が、焼き鈍し後に達成された平均結晶粒径であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 内面の螺旋溝に沿って形成されているフィンのフィン倒れ角が1゜以下の内面螺旋溝付管を製造することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 外面に表面粗さ(Rmax)15μmを超える段差として定義されるオレンジピールが無い内面螺旋溝付管を製造することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
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