JP2018089640A - 拡管性に優れる内面螺旋溝付管とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、近年、銅地金価格の高騰やリサイクル性の改善に鑑み、より安価でリサイクル性、軽量化に優れるアルミニウム合金製の伝熱管が使用され始めている。
アルミニウム合金の場合、直溝の伝熱管も使用されようとしているが、直溝は伝熱性を向上させるのにフィンの高さを高くする必要がある。
しかし、直溝の場合、拡管時にプラグとフィンの接触でフィン潰れやフィン倒れを生じやすい。また、直溝の伝熱管は螺旋溝の伝熱管に比べ、焼付きを生じやすい。すなわち、螺旋溝を設けた伝熱管では拡管時に管に挿入する拡管プラグの外周全周が管内面のフィン(溝)と均一に接するのに対し、直溝の伝熱管では一部の拡管プラグ表面との接触となるため焼き付きやすい。また、プラグの摩耗による消耗に偏りを生じプラグの寿命が短い。従って、直溝の伝熱管に比べ、螺旋溝の伝熱管の方が熱伝達性および拡管性の面で優れている。
また、一般的に銅合金製の内面螺旋溝付管は以下の特許文献2などに示されている溝転造法と称される方法により製造されている。この溝転造法とは、丸管の内部に溝付プラグを挿入し、丸管の外側から転造ボールなどの成形具で管を溝付プラグに押当てフォーミング加工することで丸管の内面に螺旋溝を転写する方法である。アルミニウム合金製の内面螺旋溝付伝熱管にも同じ製法が使用されている。しかしながら、アルミニウム合金製の伝熱管は銅に比べて拡管時に焼き付きを生じやすく、拡管プラグを支持し、管内周に押し込むためのロッドが変形してしまうなど、銅管に比べ拡管性が悪い。
材料特性から、アルミニウム合金の強度は銅合金の強度の約半分程度ではあるものの、管の耐圧を維持するために底肉厚を約倍以上と厚くしているため、拡管時の変形抵抗は決して小さくない。
熱交換器として十分な伝熱性能を得るには、伝熱管と放熱フィンとの充分な接合を図ることが必要で、それに加え、生産性を高める上で、焼き付きやロッドの変形などを生じにくい良好な拡管性が求められている。
アルミニウム合金では伝熱管本体や伝熱管の製造に押出した中空の丸管などの素管が使用されるが、押出時のコアとプレートの位置ズレが原因で、素管円周方向底肉厚の特定位置に偏肉を生じる。その程度は、コアとプレートとのズレ量に依存し、底肉厚の厚い箇所と薄い箇所の発生位置は、管円周方向で反対側に位置する傾向にある。直溝を有した押出による伝熱管では、偏肉部が円周方向の同じ個所に長手方向に連続して存在する。
また、溝転造は、最終伝熱管よりも径の大きい素管を押出し、数回のプラグ引抜で縮径した後に、溝転造にて管の内面に溝を転写するが、素管の段階で生じた偏肉部はその後の加工の中で解消されづらく残存する。
偏肉を生じた伝熱管に拡管すると、底肉厚の厚い部分がより拡管されて拡管率は大きくなり、管長手方向の縮み量は大きくなる。そのため、偏肉を生じた管を拡管すると管は縮み量の大きい底肉厚の厚い側に反る傾向にある。反りの程度は偏肉の程度、底肉厚の差に影響されるが、その反り量が大きいと、拡管プラグのスムーズな挿入が阻害され、拡管荷重が増加し焼き付きを生じやすくなる。また、反り量が更にひどい場合には、組立途中の熱交換器自体が変形してしまう。
本発明の内面螺旋溝付管において、前記螺旋溝が前記管本体の長さ方向に所定のリード角で螺旋状に形成され、前記底肉厚の偏肉部が前記リード角に応じ螺旋状に配置されている構成を採用できる。
本発明の内面螺旋溝付管において、前記リード角が8〜45゜であり、前記底肉厚が 0.2〜0.8mmである構成を採用できる。
本発明の内面螺旋溝付管は、拡管によって放熱フィンと接合されることが好ましい。
本発明に係る製造方法において、内面螺旋溝付管は、拡管によって放熱フィンと接合されるものであることが好ましい。
管本体の長さ方向に螺旋溝が所定のリード角で形成されていることにより、内部を流れる媒体との熱交換効率を良好にすることができ、熱交換効率の良好な熱交換器を提供できる。更に、偏肉部を前記リード角に応じ管本体の長さ方向に螺旋状に設けておくと、拡管プラグによる拡管時に一定方向への反りを抑制しつつ拡管できるので、拡管プラグの変形ならびに熱交換器の変形を防止できる。
引抜と捻りの複合加工による塑性加工を2回行なう理由として、1回の加工時に引抜ダイス入側で曲げ加工が、そしてダイスアプローチ最後の部分で曲げ戻しによるせん断応力が付与される。2回行なうことで、曲げ・曲げ戻しが繰り返されることにより、管が加工硬化し、捻りを付与した際に座屈することなく安定して加工できるようになる。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大や誇張して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
伝熱管10はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。伝熱管10をアルミニウム合金から形成する場合は、適用するアルミニウム合金に特に制限はなく、JISで規定される1050、1100、1200等の純アルミニウム系、あるいは、これらにMnを添加した3003に代表される3000系のアルミニウム合金等を適用でき、JIS規定以外のアルミニウム合金も広く適用できるのは勿論である。また、前記JIS規定合金以外にJISに規定されている5000系〜7000系のアルミニウム合金のいずれかを用いて伝熱管10を構成しても良い。なお、本明細書において「アルミニウム」とは、アルミニウム合金および純アルミニウムからなるものを包含する概念とする。
本実施形態において、フィン3は、例えば管本体10Aの周回りに30個〜60個設けられている。フィン3の高さ(すなわち半径方向の寸法)は、例えば0.1mm以上0.3mm以下である。また、伝熱管10の底肉厚d(すなわち、螺旋溝4の底部に対応する伝熱管10の管壁厚さ)は、例えば0.2mm以上0.8mm以下である。フィン3の頂角(フィン3の両側面同士のなす角)は、例えば10°〜30°である。螺旋状に形成されたフィン3(あるいは螺旋溝4)のリード角θ1(捻り角)は、例えば8°以上45°以下である。図2の縦断面においてリード角θ1は伝熱管10の内部中央側に直線状に描かれているフィン3(あるいは螺旋溝4)の延在方向を延長した線aと伝熱管10の長さ方向に平行な線bとの交わる角度として表記できる。
伝熱管10に形成されている偏肉部10d、10eは素管10Bに形成されていた偏肉部を後述する捻り加工と引抜き加工を同時に施す捻り引抜き加工によって伝熱管10の長さ方向に沿って螺旋状に捻ることで形成されている。素管10Bはアルミニウム合金から押出加工で形成するが、押出ダイスのコアとプレートとの芯ズレにより押出加工の段階で多少の偏肉は必然的に有しているものである。本実施形態の伝熱管10では円周方向の底肉厚の最大値と最小値の差(偏差)が0.12mm以下であることが好ましい。
以下、本願発明に係る伝熱管10の製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。伝熱管10の製造方法は、以下の押出成形工程と捻り引抜き工程を含む。
<押出成形工程>
まず、押出成形工程について説明する。
図4は、押出成形工程により成形された素管(直線溝付管)10Bの縦断面図である。
アルミニウム材料からなるビレットを押出成形することにより、図4に示すように、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝4Bが周方向に間隔をおいて形成された素管10Bを製造する(直線溝付管押出工程)。素管10Bの内面において周方向に隣接する複数の直線溝4B、4Bの間には凸条型のフィン3Bが形成されているので、素管10Bの内周には直線溝4Bとフィン3Bとが交互に個々に直線状に形成されている。
次に、捻り引抜き工程について説明する。
本実施形態の捻り引抜き工程は、空引きによる引抜き加工(縮径加工)を行いながら上述の素管10Bに捻り加工を付与することで、フィン3Bおよび直線溝4Bを螺旋状とする工程である。この工程を実施することによって素管10Bに形成されていた偏肉部は素管10Bの長さ方向に沿って螺旋状に加工される。
本明細書において、「前段」および「後段」とは、管材の加工順序に沿った前後関係(すなわち、上流および下流)を意味し、製造装置内の各部位の配置を意味するものではない。管材は内面螺旋溝付管の製造装置において、前段(上流)側から後段(下流)側に搬送される。前段に配置される部位は、必ずしも前方に配置されるとは限らず、後段に配置される部位は、必ずしも後方に配置されているとは限らない。
図5は、直線溝付管(素管)10Bに2回の縮径加工と捻り加工を付与して内面螺旋溝付管(伝熱管)10を製造する製造装置Aを示す側面図である。まず、製造装置Aについて説明した後に、製造装置Aを用いた捻り引抜き工程について説明する。
製造装置Aは、公転機構30と、浮き枠34と、巻き出しボビン(第1のボビン)11と、第1のガイドキャプスタン18と、第1の引抜きダイス1と、第1の公転キャプスタン21と、公転フライヤ23と、第2の公転キャプスタン22と、第2の引抜きダイス2と、第2のガイドキャプスタン61と、巻き取りボビン(第2のボビン)71と、を備える。以下、各部の詳細について詳細に説明する。
公転機構30は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを含む回転シャフト35と、駆動部39と、前方スタンド37Aと、後方スタンド37Bと、を有している。
公転機構30は、回転シャフト35並びに、回転シャフト35に固定された第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および公転フライヤ23を回転させる。
また、公転機構30は、回転シャフト35と同軸上に位置し回転シャフト35に支持される浮き枠34の静止状態を維持する。この構成により、浮き枠34に支持された巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1の静止状態を維持する。
駆動モータ39cは、直動シャフト39fを回転させる。直動シャフト39fは、前方スタンド37Aおよび後方スタンド37Bの下部において前後方向に延びている。
前方シャフト35Aの前方の端部35Abは、前方スタンド37Aを貫通した先端にプーリ39bが取り付けられている。プーリ39bは、ベルト39aを介し直動シャフト39fと連動する。同様に、後方シャフト35Bの後方の端部35Bbは、後方スタンド37Bを貫通した先端にプーリ39eが取り付けられ、ベルト39dを介し直動シャフト39fと連動する。これにより、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、公転回転中心軸Cを中心に同期回転する。
浮き枠34は、回転シャフト35の前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの互いに向かい合う端部35Aa、35Baに軸受34aを介し支持されている。また、浮き枠34は、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を支持する。
図6は、図5における矢印X方向から見た浮き枠34の平面図である。図5、図6に示すように、浮き枠34は、上下に開口する箱形状を有する。浮き枠34は、前後に対向する前方壁34bおよび後方壁34cと、左右に対向するとともに前後方向に延びる一対の支持壁34dと、を有する。
前方壁34bおよび後方壁34cには貫通孔が設けられ、それぞれ前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの端部35Aa、35Baが挿入されている。端部35Aa、35Baと前方壁34bおよび後方壁34cの貫通孔との間には、軸受34aが介在する。これにより、浮き枠34には、回転シャフト35(前方シャフト35Aおよび後方シャフト35B)の回転が伝達され難い。浮き枠34は、回転シャフト35が回転状態にあっても地面Gに対する静止状態を保つ。なお、公転回転中心軸Cに対し浮き枠34の重心を偏らせる錘を設けて浮き枠34の静止状態を安定させてもよい。
巻き出しボビン11には、直線溝4Bが形成された直線溝付管10B(図4参照)が巻き付けられている。巻き出しボビン11は、直線溝付管10Bを巻き出して後段に供給する。巻き出しボビン11は、ボビン支持シャフト12に着脱可能に取り付けられている。
図6に示すように、ボビン支持シャフト12は、回転シャフト35と直交する方向に延びている。また、ボビン支持シャフト12は、浮き枠34に自転回転可能に支持されている。なお、ここで自転回転とは、ボビン支持シャフト12自身の中心軸を中心として回転することを意味する。ボビン支持シャフト12は、巻き出しボビン11を保持し、巻き出しボビン11の供給方向に自転回転することで、巻き出しボビン11の管材5の繰り出しを補助する。
第1のガイドキャプスタン18は、円盤形状を有している。第1のガイドキャプスタン18には、巻き出しボビン11から繰り出された管材5が1周巻き掛けられる。第1のガイドキャプスタン18の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第1のガイドキャプスタン18は、管材5を第1の方向D1に沿って公転回転中心軸C上に誘導する。
第1のガイドキャプスタン18は、自転回転自在に浮き枠34に支持されている。また第1のガイドキャプスタン18の外周には、自転回転自在のガイドローラ18bが並んで配置されている。本実施形態の第1のガイドキャプスタン18は、自身が自転回転するとともにガイドローラ18bが転動するが、何れか一方が回転すれば、管材5をスムーズに搬送できる。なお、図6において、ガイドローラ18bの図示は省略されている。
なお、第1のガイドキャプスタン18に代えて、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との間にトラバース機能を有する誘導管を設けてもよい。誘導管を設ける場合には、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との距離を短くすることができ、工場内のスペースを有効活用できる。
第1の引抜きダイス1は、管材5(直線溝付管10B)を縮径する。第1の引抜きダイス1は、浮き枠34に固定されている。第1の引抜きダイス1は、第1の方向D1を引抜き方向とする。第1の引抜きダイス1の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。また、第1の方向D1は、公転回転中心軸Cと平行である。
第1の引抜きダイス1には、浮き枠34に固定された潤滑油供給装置9Aにより潤滑油が供給される。これにより第1の引抜きダイス1における引抜力を軽減できる。
第1の引抜きダイス1を通過した管材5は、浮き枠34の前方壁34bに設けられた貫通孔を介して、前方シャフト35Aの内部に導入される。
第1の公転キャプスタン21は、円盤形状を有している。第1の公転キャプスタン21は、中空の前方シャフト35Aの内外を径方向に貫通する横孔35Acに配置されている。第1の公転キャプスタン21は、円盤の中心を回転軸J21として、回転シャフト35(前方シャフト35A)の外周部に固定された支持体21aに自転回転が自在な状態で支持されている。
第1の公転キャプスタン21は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。
第1の公転キャプスタン21には、公転回転中心軸C上の第1の方向D1に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第1の公転キャプスタン21は、管材5を巻き掛けて前方シャフト35Aの内部から外部に引き出して公転フライヤ23に誘導する。
第1の公転キャプスタン21とともに、前方シャフト35Aには駆動モータ20が設けられている。駆動モータ20は、第1の公転キャプスタン21を管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。これにより、第1の公転キャプスタン21は、管材5に第1の引抜きダイス1を通過するための前方張力を付与する。
第1の公転キャプスタン21および駆動モータ20は、前方シャフト35Aの公転回転中心軸Cに重心が位置するように公転回転中心軸Cに対して互いに対称の位置に配置されることが好ましい。これにより、前方シャフト35Aの回転のバランスを安定させることができる。なお、第1の公転キャプスタン21と駆動モータ20の重量差が大きい場合は、錘を設けて重心を安定させてもよい。
公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で、管材5の管路を反転させる。公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1に搬送される管材5を反転させ、搬送方向を第2の引抜きダイス2の引抜き方向である第2の方向D2に向ける。より具体的には、公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22に管材5を誘導する。
公転フライヤ23は、複数のガイドローラ23aとガイドローラ23aを支持するガイドローラ支持体(図示略)とを有する。ここでは、煩雑さを解消するためガイドローラ支持体の図示を省略するが、ガイドローラ支持体は、回転シャフト35に支持されている。
ただし、フライヤの構造についてガイドローラは必須ではなく、単に管が通過するための板状の構造で、それに通過させるためのリングを取り付けた形状のものでも良い。このリングは板形状の部材に設けられても良い。このリングの一部はこの板形状の部材の一部で構成されてもよい。板形状の部材はガイドローラ支持体と同様に回転シャフト35に支持されてもよい。
ガイドローラ23aは、公転回転中心軸Cに対し外側に湾曲する弓形状を形成して並んでいる。ガイドローラ23a自身が転動して管材5をスムーズに搬送する。公転フライヤ23は、公転回転中心軸Cを中心として、浮き枠34並びに浮き枠34内に支持された第1の引抜きダイス1および巻き出しボビン11の周りを回転する。
また、図5において、管材5がガイドローラ23aの外側を通過する場合を例示した。
しかしながら、公転フライヤ23の回転速度が速い場合には、管材5が遠心力により公転フライヤから脱線するおそれがある。このような場合は、管材5の外側に更にガイドローラ23aを設けることが好ましい。
公転フライヤ23と同等の重量を有し前方シャフト35Aから後方シャフト35Bに延びて公転フライヤ23と同期回転するダミーフライヤを複数設けてもよい。これにより、回転シャフト35の回転を安定させることができる。
第2の公転キャプスタン22は、第1の公転キャプスタン21と同様に、円盤形状を有する。第2の公転キャプスタン22は、後方シャフト35Bの端部35Bbの先端に設けられた支持体22aに自転回転が自在な状態で支持されている。また、第2の公転キャプスタン22の外周には、自転回転自在のガイドローラ22cが並んで配置されている。本実施形態の第2の公転キャプスタン22は、自身が自転回転するとともにガイドローラ22cが転動するが、何れか一方が回転すれば、管材5をスムーズに搬送できる。
第2の公転キャプスタン22は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。
第2の公転キャプスタン22には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第2の公転キャプスタン22は、巻き掛けられた管材を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に繰り出す。
第2の公転キャプスタン22を支持する支持体22aは、公転回転中心軸Cに対し第2の公転キャプスタン22と対称の位置に錘22bを支持する。錘22bは、後方シャフト35Bの回転のバランスを安定させる。
第2の引抜きダイス2は、第2の公転キャプスタン22の後段に配置される。第2の引抜きダイス2は、反対の第2の方向D2を引抜き方向とする。第2の方向D2は、公転回転中心軸Cと平行な方向である。第2の方向D2は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1と反対である。管材5は、第2の方向D2に沿って第2の引抜きダイス2を通過する。第2の引抜きダイス2は、第2の引抜きダイス2は、地面Gに対して静止している。第2の引抜きダイス2の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。
第2の引抜きダイス2は、例えば図示略のダイス支持体を介して架台62に支持されている。また、第2の引抜きダイス2には、架台62に取り付けられた潤滑油供給装置9Bにより潤滑油が供給される。これにより第2の引抜きダイス2における引抜力を軽減できる。
第2の引抜きダイス2における縮径および捻り付与により、管材5は、中間捻り管10Cから内面螺旋溝付管10となる。
第2のガイドキャプスタン61は、円盤形状を有している。第2のガイドキャプスタン61の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第2のガイドキャプスタン61には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。
第2のガイドキャプスタン61は、回転軸J61を中心に架台62に回転可能に支持されている。また、第2のガイドキャプスタン61の回転軸J61は、駆動モータ63と駆動ベルト等を介し接続されている。第2のガイドキャプスタン61は、駆動モータ63により、管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。なお、駆動モータ63は、トルク制御可能なトルクモータを用いることが好ましい。
第2のガイドキャプスタン61が駆動することによって管材5には、前方張力が付与される。これにより管材5は、第2の引抜きダイス2における加工に必要な引抜き応力が付与され前方に搬送される。
巻き取りボビン71は、管材5の管路の終端に設けられ、管材5を回収する。巻き取りボビン71の前段には、誘導部72が設けられている。誘導部72は、トラバース機能を有し管材5を巻き取りボビン71に整列巻きさせる。
巻き取りボビン71は、ボビン支持シャフト73に着脱可能に取り付けられている。ボビン支持シャフト73は、架台75に支持され、駆動モータ74に駆動ベルト等を介し接続されている。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により駆動回転され、管材5を弛ませることなく巻き取る。巻き取りボビン71は、管材5が十分に巻き付けられた場合に取り外され、他の巻き取りボビン71に付け替えられる。
上述した内面螺旋溝付管の製造装置Aを用いて、内面螺旋溝付管10を製造する方法について説明する。
まず、予備工程として、直線溝付管10Bを巻き出しボビン11にコイル状に巻き付ける。更に、巻き出しボビン11を製造装置Aの浮き枠34にセットする。また、巻き出しボビン11から管材5(直線溝付管10B)を繰り出して、予め直線溝付管10Bの管路をセットする。具体的には、管材5を、第1のガイドキャプスタン18、第1の引抜きダイス1、第1の公転キャプスタン21、公転フライヤ23、第2の公転キャプスタン22、第2の引抜きダイス2、第2のガイドキャプスタン61、巻き取りボビン71の順に、通過させて、セットする。
まず、巻き出しボビン11から管材5を順次繰り出していく。
次に、巻き出しボビン11から繰り出された管材5を、第1のガイドキャプスタン18に巻き掛ける。第1のガイドキャプスタン18は、管材5を公転回転中心軸C上に位置する第1の引抜きダイス1のダイス孔に誘導する(第1の誘導工程)。
次に、管材5を第1の引抜きダイス1に通過させる。更に、第1の引抜きダイス1の後段で管材5を第1の公転キャプスタン21に巻き掛けて前記回転軸の周りを回転させる。
これにより、管材5を縮径するとともに捻りを付与する(第1の捻り引抜き工程)。
第2の捻り引抜き工程において、第1の捻り引抜き工程と同様に、捻りと縮径とが行われて、管材5には複合応力が付与させる。これにより、管材5の座屈応力に達する前に、管材に座屈の発生を抑制しつつ大きな捻りを付与できる。
以上の工程を経ることにより、製造装置Aを用いて内面螺旋溝付管10を製造することができる。
本実施形態の製造方法によれば、直線溝付管10Bに直接的に捻りを付与することで、フィン3と螺旋溝4と偏肉部を同時に螺旋状にすることが可能となる。これにより、螺旋状の偏肉部の存在による拡管時の反り抑制の効果と、螺旋状のフィン3と螺旋溝4による熱交換率の向上の効果を同時に達成する内面螺旋溝付管10を製造できる。
また、内面螺旋溝付管10の長さ方向にフィン3と螺旋溝4が所定のリード角で形成されていることにより、内部を流れる媒体との熱交換効率を良好にすることができ、熱交換効率の良好な熱交換器を提供できる。
本実施形態の捻り引抜き工程によれば、直線溝付管10Bに対して捻りを付与するとともに、縮径を行うため、座屈発生を抑制しつつ大きな捻り角を付与できる。
更に、本実施形態において、巻き出しボビン11を公転回転させることがないため、巻き出しボビン11に長尺の直線溝付管10B(管材5)を巻き付けることができる。このため、本実施形態の捻り引抜き工程によれば、巻き出しボビン11を付け替えることがなく、一気通貫で長尺の管材5に捻りを付与することができる。すなわち、本実施形態によれば内面螺旋溝付管10の大量生産が容易となる。
図7および図8は、本発明に係る捻り引抜き工程により製造された伝熱管81を備えた熱交換器80の概略図である。
熱交換器80は、冷媒を通過させるチューブとして伝熱管81を蛇行させて設け、この伝熱管81の周囲に複数のアルミニウム製の放熱板82を平行に配設した構造である。伝熱管81は、平行に配設したアルミニウム合金製の放熱板82を貫通するように設けた複数の挿通孔を通過するように設けられている。この例の伝熱管81は先に説明した伝熱管10と同等構造である。
以下、本明細書において、拡管前の伝熱管を単に伝熱管10と呼び拡管後の伝熱管を拡張管81と呼び、その用語を使い分けるものとする。
図9に示す拡管工程は、所定間隔に平行に並設する複数の放熱板82に形成された挿通孔82aに伝熱管10を通した状態で、伝熱管10に拡管プラグ90を挿入して拡管し伝熱管10の外周を放熱板82の挿通孔82aの内径部に密着させて熱交換器を製造する方法である。
拡管プラグ90を用いた拡管工程は、以下の手順で行われる。
まず、アルミニウム製の放熱板82を複数重ねて放熱板集合体86を構成する。それぞれの放熱板82には、互いに重ねられた時に一直線上に並ぶように挿通孔82aが形成されている。
拡管プラグ90により伝熱管10を拡管する場合、伝熱管10に形成されている偏肉部10d、10eの肉厚バラツキが小さく、偏肉部10d、10eが伝熱管10の長さ方向に螺旋状に形成されているので、拡管後に得られる拡張管81が弓状に反ることがなくなる。そのため組み立て拡管後に熱交換器の形状が歪むことがない。
特に、円周方向の底肉厚の偏肉の偏差が0.12mm以下の内面螺旋溝付管10であるならば、内面螺旋溝付管10を放熱板82の挿通孔82aに通し、内面螺旋溝付管10に拡管プラグ90を挿通して内面螺旋溝付管10を押し拡げて熱交換器80を組み立てる場合、内面螺旋溝付管10の反りが少なく、熱交換器80の変形を抑制できる。
まず、図18(a)、(b)に示すように、第1保持部31と第2保持部32を起立させて重ね合わせてスライド溝34aの上に固定する。これにより、第1保持部31と第2保持部32の境界部に丸溝31A、32Aを重ねることによって孔33が形成される。
次に図18(c)に示すように、孔33に内面螺旋溝付管10を挿入する。なお、孔33の内径は、内面螺旋溝付管10の外径よりも十分に大きく形成されており、上方から容易に挿入することができる。
次に図18(d)に示すように、図17の拡管プラグ13Aを取り付けたロッド13を挿入することで、内面螺旋溝付管10を拡管する。最後に、固定ボルト32aを取り外し、第1保持部31と第2保持部32を開くことで、拡管された内面螺旋溝付管10を取り出し、これを観察する。
上記の試験で得られた拡管によるロッドの変形結果を以下の表1に示す。
評価結果で変形が確認されなかったものを○とし、変形が確認されたものは×とした。
この結果から、内面螺旋溝付管の円周方向の底肉厚の偏肉の偏差が0.12mm以下であれば、内面螺旋溝付管を放熱フィンの挿通孔に通し、内面螺旋溝付管に拡管プラグを挿通して内面螺旋溝付管を押し拡げて熱交換器を組み立てる場合、内面螺旋溝付管の反りが少なく、熱交換器の変形を抑制できることが確認された。
図5、図6に示す製造装置において第2の引抜きダイス2の後段に設けられる誘導部72にダイス径6.1mmの仕上げダイスを設置した。この仕上げダイスによる縮径率(red.:%)は7.6%であり、最終的に捻り角14.5゜、外径6.04mmの内面螺旋溝付管を製造した。管材を移動させる際のライン速度を1m/分に設定し、後方張力10kg、引張り張力48kg、巻き取り張力15kg、巻き枠の回転数(6.5)rpmに設定した条件にて管材を2回捻り引抜き加工して目的の内面螺旋溝付管を製造した。なお、各ダイスに供給する潤滑油として共英油化株式会社製合成油KEX−5546(粘度270mm2/s)を用いた。
また、10m長さの素管の先端から1mごとの位置の横断面において前記と同様に周方向に等間隔で8箇所の測定位置を規定し、8カ所の測定位置における底肉厚値(肉厚)とフィン高さを測定し、フィン高さ変化率と肉厚変化率を求めた。
図11に肉厚測定結果を示し、図12にフィン高さ測定結果を示し、図13にフィン高さ変化率を示し、図14に肉厚変化率を示す。
また、捻り加工を略して単純に引抜き加工を施した空引きのみの空引き管の断面形状を測定した結果、肉厚の平均値は0.34mmであり、素管の状態より若干増肉したことを確認できた。空引き管の底肉厚の最大値と最小値の差(偏差)は0.059mmであり、素管の状態より減少していることを確認できた。空引き管のフィン高さの平均値は0.155mmであり、空引き管のフィン高さの最大値と最小値の差は0.026mmであり、素管のフィン高さの状態と殆ど変化していないことを確認できた。
図14に示す底肉厚の変化率をみると、空引き管、内面螺旋溝付管のいずれにおいても肉厚が厚い箇所では同等か若干の増肉を示し、肉厚が薄い部分では増肉変化が大きいことを確認できた。これは、肉厚の薄い部分に加工時の応力が集中し、肉厚の薄い部分が増肉したためであると考えられる。
肉厚のバラツキとフィン高さのバラツキをみると、引抜き加工を行うことでバラツキを小さくできることを確認でき、引抜き加工に捻り加工を加えることでバラツキを更に小さくできることを確認できた。また、空引きを行うことで偏肉の矯正効果は得られるが、捻り加工を加えることでその効果を更に大きくできることを確認できた。
Claims (8)
- 管本体の内面に長手方向に螺旋状に連続した複数のフィンと螺旋溝を有するアルミニウム製の内面螺旋溝付管であって、円周方向の底肉厚の最大値と最小値の差(偏差)が0.12mm以下であることを特徴とする内面螺旋溝付管。
- 前記螺旋溝が前記管本体の長さ方向に所定のリード角で螺旋状に形成され、前記底肉厚の偏肉部が前記リード角に応じ螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付管。
- 前記リード角が8〜45゜であり、前記底肉厚が0.2〜0.8mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内面螺旋溝付管。
- 拡管によって放熱フィンと接合されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管。
- 内面に直線状のフィンと溝を有するアルミニウム製の素管に捻り加工と引抜き加工を同時に付与する塑性加工を2回以上施し、前記素管から20%以上の縮径を行うことにより、管本体の内面に長手方向に螺旋状に連続した複数のフィンと螺旋溝を有し、円周方向の底肉厚の最大値と最小値の差(偏差)が0.12mm以下である内面螺旋溝付管を製造することを特徴とする内面螺旋溝付管の製造方法。
- 前記捻り加工と引抜き加工を同時に付与する塑性加工によって、前記管本体の長さ方向に所定のリード角で螺旋溝を形成するとともに前記底肉厚の偏肉部を前記リード角に応じ螺旋状に形成することを特徴とする請求項5に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 前記リード角が8〜45゜であり、前記底肉厚が0.2〜0.8mmである内面螺旋溝付管を得ることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 拡管によって放熱フィンと接合される内面螺旋溝付管であることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
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