JP2019100679A - 拡管性及び熱特性に優れる伝熱管と熱交換器 - Google Patents
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Abstract
Description
銅合金またはアルミニウム合金を使用した伝熱管では、その熱特性を高めるために内面に螺旋溝を有した伝熱管が提案されている。内面の溝を螺旋化することで管内周の面積を増大させることができるとともに、毛細管現象でぬれ性が向上することで、冷媒を巻き上げ、熱伝達に寄与する円周長の増大を図ることができる。
また、一般に空調機や冷凍機のフィンアンドチューブタイプ熱交換器では、等ピッチで並べられた放熱板の孔にヘアピン曲げした伝熱管を挿通し、拡管プラグで伝熱管を拡管することで、放熱板と伝熱管を接合している。そして、隣接するヘアピン管の管端に予め曲げ加工を施したU型のベンド管を嵌合し、ろう付けすることにより熱交換器が組み立てられる。
また、伝熱管の加工中に発生する表面傷の問題があり、例えば、伝熱管のヘアピン曲げ加工時に曲げ部分を起点に割れが発生しやすいなどの問題があった。
本発明の伝熱管において、前記内周面の周方向に沿って複数のフィンが配列され、配列されたフィンのうち、前記逆テーパーフィンと前記順テーパーフィンのどちらか一方が他のフィンに対し複数個おきに配置された構成を採用できる。
本発明の伝熱管において、前記逆テーパーフィンを構成する2つの側壁のなすフィン頂角が0゜より大きく、30゜以下である構成を採用できる。。
本発明の伝熱管において、アルミニウム又はアルミニウム合金から伝熱管が構成されることが好ましい。
本発明の熱交換器は、先のいずれかに記載された伝熱管を備えたことを特徴とする。
また、本願発明によれば、逆テーパーフィンを複数備えているので、熱交換器に組み込む場合の拡管時にフィン潰れを発生する確率が低くなり、円周方向で均等に拡管できるので、熱交換器を構成した場合の接合性に優れ、円周方向で均等なフィン間冷媒の流れを確保でき、冷媒排出性の低下を生じない伝熱管を提供できる。
なお、以下の説明で用いる図面は、便宜上特徴となる部分を拡大して強調表示している場合があり、各図に示す構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
この例の熱交換器60は、冷媒を通過させるチューブとして伝熱管61を蛇行させて設け、この伝熱管61の周囲に複数のアルミニウム製の放熱板62を平行に配設した構造である。伝熱管61は、平行に配設した個々の放熱板62を貫通するように設けた複数の挿通孔を通過して蛇行するように設けられている。
この構成の熱交換器60は、主管61Aより若干径の小さな後述の伝熱管10を放熱板62の挿通孔に通し、伝熱管10を拡管して主管61Aを構成し、主管61Aと放熱板62とを機械的に結合し組み立てられている。
次に、上述の熱交換器60に適用されている拡管前の伝熱管10について具体的に説明する。
図3は、第1実施形態の伝熱管10の横断面図であり、図4は図3に示す伝熱管10の一部分を拡大した図である。図5は伝熱管10の縦断面図、図6は伝熱管10の側面図であり、伝熱管10の外周面10aに形成されているダイスマークDMを模式的に示す図である。
また、伝熱管10はJIS規定のアルミニウム合金以外のアルミニウム合金から形成されていても良く、銅系合金あるいはステンレス鋼などの鉄系合金から形成されていてもよい。この実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金からなる伝熱管10を例として説明するが、本発明で目的とする伝熱管は引抜きダイスにより引抜きが可能な材料であれば適用可能であるので、銅系合金あるいは鉄系合金など、他の合金からなる管を用いて本発明に適用しても良いのは勿論である。
したがって、逆テーパーフィン3A同士の間に位置する螺旋溝4Aは、径方向内側を向く開口4bが底側と比較して狭くなっている。逆テーパーフィン3Aの先端幅d2を底幅d1より大きくすることで、伝熱管10の内周面における表面積を大きくすることができ、伝熱管10の熱特性を向上できる。
また、逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bとの間に位置する螺旋溝4Bは図4の例では径方向内側を向く開口4bが底側と同じ幅とされている。
上述のフィン3の形状によれば、乱流効果の促進、冷媒の膜厚の抑制等により、高い蒸発熱伝達率および高い凝縮熱伝達率を得ることを期待できる。
逆テーパーフィン3Aのフィン頂角γを0°より大きくすることで、伝熱管10の表面積増大による熱交換効率の向上効果を得ることができる。
また、逆テーパーフィン3Aのフィン頂角γが30°を超えると、伝熱管10の内部に拡管プラグを挿入して伝熱管10を拡管する工程において、逆テーパーフィン3Aに倒れが生じやすくなる。フィン頂角γを30°以下とすることで、逆テーパーフィン3Aの倒れを十分に抑制できる。さらに、フィン頂角γが、30°よりも大きくなると、溝4の径方向内側の開口4bが狭くなりすぎて、溝4内に冷媒が入りづらくなってしまい、熱伝達性が悪化する虞がある。加えて、冷媒の圧力損失が大きくなってしまうという問題がある。逆テーパーフィン3Aのフィン頂角γを30°以下とすることで溝4の開口4bを十分に大きくして、冷媒への熱伝達性を高めるとともに、冷媒の流れをスムーズにすることができる。
一方、本実施形態の伝熱管10では、後段において説明するように、押出し素管に捻りを付与して螺旋状の逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bおよびそれらの間の螺旋溝4A、4Bを形成するため、溝転造法では不可能であった逆テーパーフィン3Aおよび開口間口の小さな螺旋溝4Aの形状を形成できるようになった。その結果、熱伝達性に大きな影響を及ぼす濡れ縁長さの割合を従来の伝熱管よりも大きくすることが可能となり、熱交換性能に優れるとともに、拡管性にも優れた伝熱管10を提供できる。
底部4aの占める長さ(F)と濡れ縁長さ(E)の比[F/E]が、0.15未満では熱特性への効果が小さい。一方で、底部4aの占める長さ(F)と濡れ縁長さ(E)の比[F/E]が、0.65を超えるとフィン3A、3Bの底部3bが短すぎるために、フィン3A、3Bの安定性が低下し、拡管工程におけるフィン3A、3Bの倒れが顕著となりやすい。すなわち、底部4aの占める長さ(F)と濡れ縁長さ(E)の比[F/E]を0.15以上、0.65以下とすることにより、熱特性を向上させると共に拡管工程におけるフィン3A、3Bの倒れを十分に抑制できる。
まず、捻りを付与する前の図7に示す素管10Bを定盤に搭載し、ハイトゲージを用いて、素管10Bの外周面に長さ方向に延びる直線状の罫書き線を形成する。
次いで、後述の捻り引抜き加工を付与し素管10Bから伝熱管10を製造する。伝熱管10の罫書き線は、螺旋状となる。
次いで、螺旋状となった罫書き線のピッチpと、伝熱管10の円周長さaから以下の式を用いてリード角θ1を求めることができる。
θ1=tan−1(a/p)
なお、図6に示すダイスマークDMは、分かり易さのために1本のダイスマークDMのみを連続的に形成しているように図示している。実際のダイスマークは、後述する図15(a)および図16(a)に写真として示すように、長さ方向に沿って間欠的に複数形成されている。また、伝熱管10の外周面の周方向に沿って複数のダイスマークDMが螺旋状かつ並行に延在されている。
なお、本願明細書においてダイスマークという用語は、押出工程により形成された凹部のみならず、係る凹部を有する素管に捻りを付与した後の伝熱管の凹部についても用いる。捻りが付与された後の管材の凹部は、厳密にはダイスマークに起因する凹部である。しかしながら、本明細書において分かり易さのため、これらを含む概念をダイスマークと呼ぶ。
ダイスマーク深さ計測は、例えば、株式会社キーエンス製走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)を用いて表面形状の測定を行うことができる。また、計測解析では、解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いてダイスマーク深さを計測できる。
まず、走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)のステージに試料を置き、観察倍率50倍のもと、フォーカスを合わせた後に、観察高さ上下限範囲100μmとして、0.5μmピッチで表面形状の測定を行う。
前処理を行った表面形状から、管円周方向に平行になるように直線を3点引き、得られた粗さ曲線から、最大谷深さ(Rv)、最大高さ(Rz)を求め、ダイスマーク深さの計測では、最大断面高さ(Rt)として計測を行う。
解析アプリケーションでは「表面粗さの定義」(JISB0601:2001)に基づいて、JISB0601−2001およびJIS 0601−1994で定義されている粗さパラメータで表面粗さ解析を実施する。
図15(b)に、図15(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。同様に、図16(b)に、図16(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。なお、図15および図16に例示するダイスマークDMを有する伝熱管は、本実施形態の伝熱管10の一例である。
tanθ2={(α+2πβ)tanθ1}/α
伝熱管10の外周面10aにおける螺旋状のダイスマークDMのリード角θ2は、螺旋状のフィン3のリード角θ1より、例えば1.0°以上大きい。
螺旋状の逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bを備えた伝熱管10は、後述するように押出加工により長さ方向に直線状に延びるフィンを形成した素管10Bに引き抜きながら捻りを付与することで形成できる。これにより、ダイスマークDMを伸長させてダイスマークDMを十分に浅くすることで強度に優れ、ヘアピン曲げ加工時などに破損し難い伝熱管10を提供することができる。
以下、本願発明に係る伝熱管10の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。伝熱管10の製造方法は、押出成形工程と捻り引抜き工程をこの順で含む。
まず、押出成形工程について説明する。
図7は、押出成形工程により成形された素管(直線溝付管)10Bの縦断面図であり、図8は、素管10Bの斜視図である。
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるビレットを押出成形することにより、図8に示すように、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝が周方向に間隔をおいて形成された素管10Bを製造(直線溝付管押出工程)する。
押出成型工程により成形された素管10Bには、外周面に長さ方向に沿って直線的に延びるダイスマークDMが形成され、素管10Bの内周面の円周方向には長さ方向に沿って直線的に延びる2つの逆テーパーフィン10Cと1つの順テーパーフィン10Dが交互に順次形成されている。また、2つの逆テーパーフィン10Cの間には開口間口の狭い直線溝10Eが形成され、逆テーパーフィン10Cと順テーパーフィン10Dの間には底部幅と同じ幅の開口間口を有する直線溝10Fが形成されている。
次に、捻り引抜き工程および空引き工程について説明する。
捻り引抜き工程は、引抜きを行いながら上述の素管10Bに捻りを付与することで、螺旋状のダイスマークDM、逆テーパーフィン3A、順テーパーフィン3Bおよび螺旋溝4A、4Bを得る工程である。
また、空引き工程は、捻りを付与することなく管材に対して引抜きを行い管材の外形を整える工程である。
本明細書において、「前段」および「後段」とは、管材の加工順序に沿った前後関係(すなわち、上流および下流)を意味し、装置内の各部位の配置を意味するものではない。
管材は内面螺旋溝付管の製造装置において、前段(上流)側から後段(下流)側に搬送される。前段に配置される部位は、必ずしも前方に配置されるとは限らず、後段に配置される部位は、必ずしも後方に配置されるとは限らない。
図9は、素管10Bに2回の捻り引抜き加工を付与して伝熱管10を製造する製造装置Aを示す側面図である。まず、製造装置Aについて説明した後に、製造装置Aを用いた捻り引抜き工程および空引き工程について説明する。
公転機構30は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを含む回転シャフト35と、駆動部39と、前方スタンド37Aと、後方スタンド37Bと、を有している。
公転機構30は、回転シャフト35並びに、回転シャフト35に固定された第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および公転フライヤ23を回転させる。
また、公転機構30は、回転シャフト35と同軸上に位置し回転シャフト35に支持される浮き枠34の静止状態を維持する。これにより、浮き枠34に支持された巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1の静止状態を維持する。
駆動モータ39cは、直動シャフト39fを回転させる。直動シャフト39fは、前方スタンド37Aおよび後方スタンド37Bの下部において前後方向に延在されている。
前方シャフト35Aの前方の端部35Abは、前方スタンド37Aを貫通した先端にプーリ39bが取り付けられている。プーリ39bは、ベルト39aを介し直動シャフト39fと連動する。同様に、後方シャフト35Bの後方の端部35Bbは、後方スタンド37Bを貫通した先端にプーリ39eが取り付けられ、ベルト39dを介し直動シャフト39fと連動する。これにより、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、公転回転中心軸Cを中心に同期回転する。
浮き枠34は、回転シャフト35の前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの互いに向かい合う端部35Aa、35Baに軸受34aを介し支持されている。また、浮き枠34は、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を支持する。
巻き出しボビン11には、素管10B(図7参照)が巻き付けられている。巻き出しボビン11は、素管10を巻き出して後段に供給する。
巻き出しボビン11は、ボビン支持シャフト12に着脱可能に取り付けられている。
第1のガイドキャプスタン18は、円盤形状を有している。第1のガイドキャプスタン18には、巻き出しボビン11から繰り出された素管10Bが1周巻き掛けられる。第1のガイドキャプスタン18の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第1のガイドキャプスタン18は、素管10Bを第1の方向D1に沿って公転回転中心軸C上に誘導する。
図10に示すように、第1のガイドキャプスタン18と巻き出しボビン11との間には、管路誘導部18aが設けられている。管路誘導部18aは、例えば素管10Bを囲むように配置された複数のガイドローラである。管路誘導部18aは、巻き出しボビン11から供給される素管10Bを第1のガイドキャプスタン18に誘導する。
第1の引抜きダイス1は、素管10B(管材5)を縮径する。第1の引抜きダイス1は、浮き枠34に固定されている。第1の引抜きダイス1は、第1の方向D1を引抜き方向とする。第1の引抜きダイス1の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。また、第1の方向D1は、公転回転中心軸Cと平行である。
第1の引抜きダイス1には、浮き枠34に固定された潤滑油供給装置9Aにより潤滑油が供給される。これにより第1の引抜きダイス1における引抜力を軽減できる。
第1の引抜きダイス1を通過した管材5は、浮き枠34の前方壁34bに設けられた貫通孔を介して、前方シャフト35Aの内部に導入される。
第1の公転キャプスタン21は、円盤形状を有している。第1の公転キャプスタン21は、中空の前方シャフト35Aの内外を径方向に貫通する横孔35Acに配置されている。第1の公転キャプスタン21は、円盤の中心を回転軸J21として、回転シャフト35(前方シャフト35A)の外周部に固定された支持体21aに支持されている。
第1の公転キャプスタン21には、公転回転中心軸C上の第1の方向D1に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第1の公転キャプスタン21は、管材5を巻き掛けて前方シャフト35Aの内部から外部に引き出して公転フライヤ23に誘導する。
公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で、管材5の管路を反転させる。公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1に搬送される管材5を反転させ、搬送方向を第2の引抜きダイス2の引抜き方向である第2の方向D2に向ける。より具体的には、公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22に管材5を誘導する。
ガイドローラ23aは、公転回転中心軸Cに対し外側に湾曲する弓形状を形成して並列されている。ガイドローラ23a自身が転動して管材5をスムーズに搬送する。公転フライヤ23は、公転回転中心軸Cを中心として、浮き枠34並びに浮き枠34内に支持された第1の引抜きダイス1および巻き出しボビン11の周りを回転する。
しかしながら、公転フライヤ23の回転速度が速い場合には、管材5が遠心力により公転フライヤから脱線するおそれがある。このような場合は、管材5の外側に更にガイドローラ23aを設けることが好ましい。
公転フライヤ23と同等の重量を有し前方シャフト35Aから後方シャフト35Bに延びて公転フライヤ23と同期回転するダミーフライヤを複数設けてもよい。これにより、回転シャフト35の回転を安定させることができる。
第2の公転キャプスタン22は、第1の公転キャプスタン21と同様に、円盤形状を有する。第2の公転キャプスタン22は、後方シャフト35Bの端部35Bbの先端に設けられた支持体22aに自転回転が自在な状態で支持されている。また、第2の公転キャプスタン22の外周には、自転回転自在のガイドローラ22cが並んで配置されている。本実施形態の第2の公転キャプスタン22は、複数のガイドローラ22cが個々に回転するが、この回転により管材5をスムーズに搬送できる。
第2の公転キャプスタン22には、回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第2の公転キャプスタン22は、巻き掛けられた管材を回転中心軸C上の第2の方向D2に繰り出す。
第2の引抜きダイス2は、第2の公転キャプスタン22の後段に配置される。第2の引抜きダイス2は、反対の第2の方向D2を引抜き方向とする。第2の方向D2は、回転中心軸Cと平行な方向である。第2の方向D2は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1と反対である。管材5は、第2の方向D2に沿って第2の引抜きダイス2を通過する。第2の引抜きダイス2は、地面Gに対して静止している。第2の引抜きダイス2の中心は、回転シャフト35の回転中心軸Cと一致する。
第2のガイドキャプスタン61は、円盤形状を有している。第2のガイドキャプスタン61の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第2のガイドキャプスタン61には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。
巻き取りボビン71は、伝熱管10の管路の終端に設けられ、伝熱管10を回収する。巻き取りボビン71の前段には、プーリー72が設けられている。巻き取りボビン71あるいはプーリー72は、トラバース機能を有し伝熱管10を巻き取りボビン71に整列巻きあるいはランダムな重ね巻きの状態で巻き取ることができる。
上述した製造装置Aを用いて、伝熱管10を製造する方法について説明する。
まず、予備工程として、素管10Bを巻き出しボビン11にコイル状に巻き付ける。更に、巻き出しボビン11を製造装置Aの浮き枠34にセットする。また、巻き出しボビン11から素管10B(管材5)を繰り出して、予め素管10Bの管路にセットする。具体的には、管材5を、第1のガイドキャプスタン18、第1の引抜きダイス1、第1の公転キャプスタン21、公転フライヤ23、第2の公転キャプスタン22、第2の引抜きダイス2、第2のガイドキャプスタン61、巻き取りボビン71の順に、通過させて、セットする。
まず、巻き出しボビン11から素管10B(管材5)を順次繰り出していく。
次に、巻き出しボビン11から繰り出された素管10Bを、第1のガイドキャプスタン18に巻き掛ける。第1のガイドキャプスタン18は、素管10Bを回転中心軸C上に位置する第1の引抜きダイス1のダイス孔に誘導する(第1の誘導工程)。
第1の捻り引抜き工程により素管10Bは、中間捻り管10Cとなる。中間捻り管10Cは、伝熱管10の製造工程における中間段階の管材であり、伝熱管10の逆テーパーフィン3A、順テーパーフィン3B、螺旋溝4A、4Bより浅いリード角の逆テーパーフィン、順テーパーフィン、螺旋溝が形成された状態である。
加工域の長さと、限界リード角(座屈を生じないで捻ることができる最大リード角)の関係には、相関関係があり、加工域を短くすることで、大きなリード角を付与しても座屈が生じにくい。第1のガイドキャプスタン18を設けることで、第1の引抜きダイス1の前段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。また、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との距離を近づけることで加工域を短く設定し、座屈を生じさせずに管材5に大きな捻りを付与できる。
一方で、縮径率が大きくなり過ぎると加工限界で破断を生じ易くなるので、40%以下とするのが好ましい。
なお、第1の引抜きダイス1において、大きな縮径(例えば縮径率30%以上の縮径)を行うと管材5が加工硬化するために、第2の引抜きダイス2での大きな縮径を行うことが困難になる。したがって、第1の引抜きダイス1の縮径率と第2の引抜きダイス2の縮径率との合計は、4%以上50%以下とすることが好ましい。
第1および第2の捻り引抜き工程では、合計で5°以上の捻りが付与される。捻り引抜き工程において、引抜きとともに5°以上の捻りを付与することでダイスマークDMが十分に伸張される。これにより、ダイスマークDMの深さを35μm以下とすることが可能となり、割れやしわの発生なくヘアピン曲げできる伝熱管10を製造できる。
本実施形態の捻り引抜き工程によれば押出成形工程において外管9のダイスマークDMが螺旋状となる。これにより、内圧の上昇に対して亀裂が生じにくいダイスマークDMを形成することができる。
次に、管材5を仕上げ引抜きダイス70に通過させる(仕上げ引抜き工程)。伝熱管10は、仕上げ引抜きダイス70を通過することで、表面が整形されるとともに底肉厚の偏肉が低減される。また、伝熱管10に若干のつぶれ等の変形が生じていた場合でも、この仕上げ引抜き工程を経ることにより、その変形も修正して、所定の真円度の伝熱管10とすることができる。なお、仕上げ引抜きダイス70の引抜き荷重に対して管材5を搬送させる力は、巻き取りボビン71に設けられた駆動モータ74により付与される。
また、捻り引抜き工程(第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程)の後段において空引き工程を行うことで、表面性状および形状が安定した伝熱管10を製造できる。
なお、図9では記載を略しているが、架台62と架台75の間には仕上げ引抜きダイス70を支持するための図示略の架台が立設されている。この架台には仕上げ引抜きダイス70に潤滑油を供給するための図示略の供給ノズルと油タンクが設けられている。
次に、管材5は、巻き取りボビン71に巻き付けられ回収される。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により、管材5の搬送速度と同期して回転することで、管材5を弛みなく巻き取ることができる。
以上の工程を経ることにより、製造装置Aを用いて、逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bと螺旋溝4A、4BとダイスマークDMを備えた伝熱管10を製造することができる。
次に、熱処理工程について説明する。
熱処理工程は、捻り引抜き工程の後に400℃以上の高温で4h以上行われる。熱処理工程は、伝熱管10に焼きなまし処理を施す熱処理工程である。熱処理工程を行うことによって、アルミ材料の歪みを除去し、内部応力を除去できる。
したがって、リード角θ1の大きなフィン3A、3B、螺旋溝4A、4Bを有する伝熱管10を、座屈を生じさせることなく製造することができる。伝熱管10は、そのリード角θ1を大きくすることで熱交換効率を高めることができる。また、伝熱管10は、肉厚を薄くすることで、軽量化するとともに材料費を低減して安価とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、軽量、安価かつ熱交換効率の高い伝熱管10を製造できる。
更に、本実施形態において、巻き出しボビン11を公転回転させることがないため、巻き出しボビン11に長尺の素管10B(管材5)を巻き付けることができる。このため、本実施形態の捻り引抜き工程によれば、巻き出しボビン11を付け替えることがなく、一気通貫で長尺の管材5に捻りを付与することができる。すなわち、本実施形態によれば伝熱管10の大量生産が容易となる。
以上の説明の捻り引抜き工程により、図7に示す素管10Bから図3〜図5に示す構成の伝熱管10を製造することができる。
押出で製造する伝熱管10には、長手方向に伸びる凹状のダイスマークが発生しており、その深さは40μm以下であるが局部的に50μm近い深さのマークもあり、本発明者の経験的にその深さは50μm以下である。伝熱管10に対して、捻り引抜き工程と空引き工程とを行なうことで、管は縮径・伸長されるとともに、外周面の凹状のダイスマークDMが浅くなる。
更に、複合加工で捻りを付与するため、その螺旋角とともに伸長の程度が増加し、より効果的に凹状のダイスマークDMを浅くでき、適切な条件で加工することで、管外周の凹部の深さは35μm以下に制御可能となる。すなわち、本実施形態の捻り引抜き工程によれば、複数回の捻りおよび引抜きを繰り返す。これにより、押出成形工程で形成されたダイスマークDMを複数回に亘って伸長させて浅くすることができ、結果として強度が高い伝熱管10を製造できる。
図11に示す伝熱管50は、横断面の外形状が円形の管本体50Aからなる。管本体50Aの外周面50aの直径は、第1実施形態の伝熱管10と同様に、例えば、3mm以上15mm以下である。管本体50Aの内周面50bには、長さ方向に沿って螺旋状に形成された逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bが交互に設けられている。また、管本体50Aの内周方向に隣接する逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bの間には、螺旋溝4Cが形成されている。
第2実施形態の伝熱管50においても、第1実施形態の伝熱管10と同等の作用効果が得られる。
例えば、逆テーパーフィン3Aを設けていることで拡管性に優れ、逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bを設けていることで優れた熱交換効率が得られる。
あるいは、逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bを任意の数毎に交互配置する構造を採用しても良い。
フィン3の全数に対し、逆テーパーフィン3Aと順テーパーフィン3Bを配置する割合は目的の伝熱管に要求される拡管性や熱特性に合わせて適宜変更することができる。
図12、図13は伝熱管10、50を製造するために用いる第2の製造装置Bを示すもので、図12は製造装置Bの全体構造の側面を示し、図13は製造装置Bの全体構造の平面を示す。
この製造装置Bは、図7、図8に示す素管10Bを図12に示すようにコイル状に巻き取った状態に保持する巻き出し側キャプスタン80と、この巻き出し側キャプスタン80から巻き出される素管10Bを巻き出し側キャプスタン80とともに回転する回転手段81を備えている。また、製造装置Bは、巻き出し側キャプスタン80から送り出された素管10Bを通す引抜きダイス82と、引抜きダイス82を通って捻り加工と引抜き加工がなされた伝熱管10を巻き付けながら送り出す引抜き側キャプスタン83を備えている。
中空軸部88の他端側には中空軸部88に対し斜め方向に延在するように第2支持フレーム91が設けられ、第2支持フレーム91の先端側に延設された延長フレーム92に錘体93が取り付けられている。第1支持フレーム90と第2支持フレーム91は中空軸部88の他端88bに対しV字型に配置されるように接続され、中空軸部88の軸回りの回転によって第1支持フレーム90と第2支持フレーム92はV字型に支持されたまま回転される。
巻き出し側キャプスタン80において、円盤部80aの外周縁に沿って素管10Bを巻き付けることができるように構成されている。
中空軸部88の一端88a側の開口部には素管10Bを挿入可能な大きさの入口部88cが形成され、中空軸部88の他端88b側の開口部には先の素管10Bを引き出し可能な出口部88dが形成されている。
この巻き出し側キャプスタン80に対する素管10Bの巻き付け状態と巻き出し状態の一例を図14に簡略的に示しておく。図14においてC0は巻き出し側キャプスタン80に巻き付けられる前段側の素管10Bの軸心を示し、C1は巻き出し側キャプスタン80から巻き出された素管10Bの軸心を示している。
この駆動モーター96と動力伝達装置97と中空軸部88により巻き出し側キャプスタン80と錘体93を一体に回転させる構成であり、駆動モーター96と動力伝達装置97と中空軸部88により、巻き出し側キャプスタン80を回転駆動する回転手段81が構成されている。
また、素管10Bがダイス孔を通過する際、巻き出し側キャプスタン80が回転されるので、素管10Bは引抜きダイス82のダイス孔によって縮径されると同時に捻りが付与される。このため、素管10Bは捻りが付加されて図3〜図6に示す伝熱管10に加工される。
支柱部材98において引き抜き側キャプスタン83を取り付けた側と反対側に回転駆動用の駆動モーター106の出力軸106aが水平軸105に直接連結するように設置され、駆動モーター106によって引き抜き側キャプスタン83を回転駆動できる。
次に、以上説明のように構成された製造装置Bを用いて、伝熱管10を製造する方法の一例について説明する。
予め、図7に示す素管10Bを用意する(複合素管準備工程)。
図12〜図14に示す製造装置Bに対し素管10Bを供給するには、素管10Bの先端側を中空軸部88の入口部88cから中空軸部88に挿通し、中空軸部88の出口部88dから素管10Bを引き出し、巻き出し側キャプスタン80の外周に沿って図12に示すように1周分巻き付ける。この素管10Bを巻き出し側キャプスタン80から接線方向に水平に巻き出して引抜きダイス82のダイス孔に挿通し、引抜きダイス82のダイス孔を通過させた素管10Bを引き抜き側キャプスタン83に1周分以上巻き付け、引き抜き側キャプスタン83の下流側にまで素管10Bを引き出す。これらの操作は伝熱管10の製造開始前の準備段階の作業となる。
巻き出し側キャプスタン80から巻き出した素管10Bに引抜きダイス82を通過させて引き抜き側キャプスタン83に巻き付け、引き抜き側キャプスタン83から一定の速度で巻き出す。これらの動作を開始すると同時に中空軸部88を駆動モーター96により所定速度で回転させ、巻き出し側キャプスタン80と錘体93を回転駆動する(捻り引抜き工程)。
更に、引き抜き側キャプスタン80から素管10Bが引き出される場合の前方張力を一定になるように調整する。
前方張力の安定的な付加のためには、張力調整具109の下流側に巻き取りローラーやウインチ装置などの引張り装置を配置し、一定の速度で張力調整具109を牽引できるように調整することが好ましい。また、後方張力の安定的な付加のためには、張力調整具110の上流側に巻き出しローラーなどの巻き出し装置を配置し、一定の速度で張力調整具110を繰り出しできるように調整することが好ましい。
あるいは、張力調整具109、110を略してこれらの位置に巻き出し用のローラーと巻取用のローラーを配置し、これらのローラーにブレーキ機構や速度調整機構を内蔵し、引抜きダイス82より下流側の素管10Bの先端側に所望の前方張力を付加し、引抜きダイス82より上流側の素管10Bの後端側に所望の後方張力を付加できるように構成することが大量生産を行う上では好ましい。
通常、3〜20mm程度、あるいは3〜12mm程度などの外径のアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる薄肉の素管に対し、捻りのみを作用させると容易に座屈するか破断する。この製造装置Bでは捻りの作用と同時に引抜きを作用させて捻りによる座屈・破断を抑制しながら引き抜くので、上述のサイズの細径のアルミニウム又はアルミニウム合金製の素管10Bであっても、座屈・破断させることなく捻りを付加できる。
引抜きダイス82のダイス孔を素管10Bが通過する場合、素管10Bの中心とダイス孔の中心の位置合わせを行い、素管10Bに余計な応力が作用しないようにするためには、巻き出し側キャプスタン80から巻き出された側の軸心C1を回転中心として軸心C1の周回りに巻き出し側キャプスタン80が回転するように、中空軸部88の位置関係と第1支持フレーム90の位置関係と巻き出し側キャプスタン80の位置関係を合わせることが好ましい。
素管10Bの中心とダイス孔の中心の位置合わせを行っていることにより、ダイス孔を通過する素管10Bに大きな捻りを付与し、リード角の大きな加工を施しても素管10Bを座屈・破断させることなく捻り加工できる。
なお、先に説明した製造装置Aを用いて捻り引抜き加工を施す場合と同様に2回に分けて捻り引抜き加工を施すには製造装置Bに素管10Bを2回通して捻り引抜き加工を施すと良い。その場合、1回目の捻り引抜き加工で用いる引抜きダイスのダイス孔のサイズと縮径率、2回目の捻り引抜き加工で用いる引抜きダイスのダイス孔のサイズと縮径率を適宜変更し、2回の捻り引抜き工程で最終的に得るべきリード角になるように調整することが好ましい。
しかし、素管10Bを用いて捻り引抜き加工を施す場合、本願出願人が先に特許出願している特開2016−22505号公報の図1に記載の製造装置を用いて捻り引抜き加工を施しても良い。
この製造装置は、複合素管をコイル状に保持したドラムから巻き出して巻き出し側キャプスタンに巻き付けつつ、ドラム及び巻き出し側キャプスタンをドラムの巻軸と直交する軸心に沿って回転させることができる装置である。そして、巻き出し側キャプスタンから複合素管を軸心回りに回転させながら巻き出す素管送り出し工程と、巻き出された複合素管を引抜きダイスに通して縮径しながら引抜いた後に引抜き側キャプスタンに巻き付けることができる装置である。
この特開2016−22505号公報に記載されている製造装置を用いて先の実施形態に記載した素管10Bに捻り引抜き加工を施すことで、図3〜図6に示す構造の伝熱管10を製造しても良い。
次に、その素管に図9、図10に示す製造装置を用いて捻り引抜き加工(引抜+捻り)を施して伝熱管(内面螺旋溝付管)を製造した。この伝熱管は、外径Dが7.00mm、フィン底幅の弧長Wが0.13mm、0.15mm、フィンの条数が45、フィンの高さHが0.25mm、逆テーパーフィンのフィン頂角αが−5〜−25°の範囲でそれらの値を種々に変量し、底肉厚tは0.50mmとした。実施例の伝熱管の逆テーパーフィンの形状は、図4に示すように先端幅が底幅より大きい形状であり、伝熱管の内周方向に2つの逆テーパーフィンと1つの順テーパーフィンが、交互に配置された構造となっている。
比較例として、底幅が先端幅より大きい順テーパーフィンのみを有する伝熱管(内面螺旋溝付管)を用意した。比較例の伝熱管も、実施例の伝熱管と同様に、フィンは螺旋状に形成されている。また、比較例の伝熱管の各寸法は、上述の実施例の伝熱管の各寸法と同じとした。
また、伝熱管におけるリード角の影響を確認するために、一部の比較例においては、実施例と同じ形状の伝熱管のリード角を0°、10°と変量し、同じ試験を行った。
得られた実施例および比較例の伝熱管について、管内面の溝およびフィンの形状、伝熱特性、ヘアピン曲げ加工性、拡管後のプラグの焼き付きの有無を調べた。前記溝形状は、伝熱管(長さ300mm)を縦に2分割して管内面のフィンの高さ、底肉厚、底幅の弧長、等を測定して調べた。
伝熱特性は、図19、図20に示す従来公知の伝熱性能評価装置を用いて、管内熱伝達率(管内凝縮および管内蒸発)を測定して調べた。図19は、凝縮試験を行う伝熱特性評価装置であり、図20は、蒸発試験を行う伝熱特性評価装置である。
各試験装置において、冷媒質量速度は250kg/m2・sとした。その他の試験条件は、管内の凝縮側について、冷媒の平均飽和温度を45℃、冷媒入口過熱度を20℃、冷媒出口過冷却度5℃、管入口圧力を2.63MPaに設定し、管内の蒸発側について、冷媒の平均飽和温度を5℃、冷媒入口乾き度0.2、冷媒出口過熱度を7℃、管出口圧力を0.86MPaに設定し、測定に使用した伝熱管長さ4m、冷媒R32を用いて評価を行なった。基準には外径7.00mmで、底肉厚0.25mm、フィン高さ0.17mm、フィン頂角25°、条数55条、リード角10°の従来の銅製内面溝付伝熱管について管内熱伝達率を上記と同じ方法で測定した。管内熱伝達率は各伝熱管3本について測定し、その平均値をその伝熱管の管内熱伝達率とした。
図17に、拡管試験で使用した拡管プラグ113Aおよびロッド113を備えた拡管具114を示す。また、図18に、拡管試験において用いた管保持具130を示す。
拡管具114はハンドルHの先端側にロッド113を有し、その先端に拡管プラグ113Aが形成されている。管保持具130は、上面側にスライド溝134aを有した円盤状の支持台134と、この支持台134のスライド溝134aに装着されるブロック状の第1保持部131と第2保持部132を有する。第1保持部131と第2保持部132はこれらの側面に形成されたねじ孔に螺合される固定ボルト132aによって互いを沿わせた状態で一体化できるように構成されている。また、第1保持部131と第2保持部132の側面中央側にはそれぞれ丸溝131A、132Aが形成されている。
次に図18(c)に示すように、孔133にサンプルの伝熱管Jを挿入する。なお、孔133の内径は、伝熱管Jの外径よりも十分に大きく形成されており、上方から容易に挿入することができ、挿入する伝熱管Jの長さは125mmである。
次に図18(d)に示すように、図17の拡管プラグ113Aを取り付けたロッド113を挿入することで、伝熱管Jを拡管する。最後に、固定ボルト132aを取り外し、第1保持部131と第2保持部132を開くことで、拡管された伝熱管Jを取り出すことができる。これを200本連続して実施し、その後の拡管プラグの焼き付きの有無を確認した。焼き付きが生じたものは×、拡管時焼き付きは生じないものの拡管抵抗が増大したものは△、焼き付きが生じなかったものは○とした。
各サンプルの伝熱管を、外径7.0mmのものは曲率半径(R=15)でヘアピン状に180°曲げる、曲げ加工を行った。各条件n=20で評価し、1つでも伝熱管の外周面に座屈が観察されたものを×とし、座屈はしないが曲げ部分に変形が大きいものを△、座屈と変形が観察されなかったものを〇とした。
なお、表1、表2において、「リード角」は、フィン3のリード角θ1を意味する。表1、表2において、頂角は、フィン頂角γを意味する。表1、表2において、「底肉厚弧長/濡れ縁長さ」とは、底部4aの占める長さ(F)と濡れ縁長さ(E)の比[F/E]を意味する。表1、表2において、「濡れ縁長さ/外周長」は、濡れ縁長さ(E)と外周長(D)の比[E/D]を意味する。
表1、表2に示す結果から、実施例1〜6の伝熱管は、比較例1〜5の伝熱管と比較して、いずれも円周方向に均等な拡管が可能であった。
比較例1〜比較例5の試料は、逆テーパーフィンを設けていない試料であるが、拡管時焼き付きが発生し、比較例2の試料のようにフィン3のリード角が0゜の試料は拡管時に焼付が発生した上に、ヘアピン曲げ試験において座屈を生じた。
表2に示す実施例7、8は熱特性は若干低下するが焼き付きやヘアピン曲げ時に座屈を生じていない例である。
なお、条数45なので、実施例9の逆テーパフィン割合において5/45=11%が拡管時の抵抗が増大した試料(△)である。実施例12の逆テーパーフィン割合において40/45=88.8%はヘアピン曲げ結果が△の試料である。実施例13の逆テーパーフィン割合42/45=93.3%がヘアピン曲げ結果が△の試料である。
また、各実施例の試料は逆テーパーフィンの数、フィン頂角が適切であり、伝熱性および拡管時の焼き付き性にも優れていることがわかる。
本発明の伝熱管において、前記逆テーパーフィンを構成する2つの側壁のなすフィン頂角が0゜より大きく、30゜以下である構成を採用できる。
Claims (7)
- 押出素管の捻り加工材である伝熱管であって、
管本体の内周面に周方向に沿って並び長さ方向に沿って螺旋状に形成された複数のフィンを有し、前記内周面に沿って形成された複数のフィンの内、一部のフィンが、その先端幅を底幅より大きくした逆テーパーフィンであって、他のフィンが、その先端幅を底幅より小さくした順テーパーフィンであることを特徴とする伝熱管。 - 前記逆テーパーフィンと前記順テーパーフィンが前記内周面の周方向に沿って交互に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の伝熱管。
- 前記内周面の周方向に沿って複数のフィンが配列され、配列されたフィンのうち、前記逆テーパーフィンと前記順テーパーフィンのどちらか一方が他のフィンに対し複数個おきに配置されたことを特徴とする請求項1に記載の伝熱管。
- 前記管本体の長さ方向に沿う前記逆テーパーフィンのリード角と前記管本体の長さ方向に沿う前記順テーパーフィンのリード角が5゜〜45℃の範囲とされたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の伝熱管。
- 前記逆テーパーフィンを構成する2つの側壁のなすフィン頂角が0゜より大きく、30゜以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の伝熱管。
- アルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の伝熱管。
- 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載された伝熱管を備えたことを特徴とする熱交換器。
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