JP6316697B2 - 内面螺旋溝付管およびその製造方法 - Google Patents
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Description
近年、空調機には省エネに向けた伝熱特性の向上が図られ、冷媒の見直しや熱交換器の構造設計の改良が行なわれている。その中で、構成要素の一つである伝熱管も更なる高性能化が求められている。現在は内面に連続した螺旋溝を設けた内面溝付管が主流となっており、熱交換効率の向上が図られている。
さらに他の製造方法として、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝が周方向に間隔をおいて形成された素管を、コイル状に巻取りし、そのコイル状素管をそのコイル軸線上に沿って一定の張力を負荷し直管状に引き伸ばすことにより、該素管に捻りを加え内面螺旋溝付管を製造する方法が知られている(特許文献3参照)。
例えば、溝転造法の実施に用いる装置は、図18に示すように、アルミニウム合金製の素管50を引き抜くための保持ダイス51を備え、保持ダイス50の内部に保持プラグ52を備え、保持ダイス51の下流側に仕上げダイス53を備えて構成されている。保持ダイス51と仕上げダイス53との間に転造ボール55が設けられ、転造ボール55が設けられた位置の内側に前記保持プラグ52から延在された連結軸56を介し溝付プラグ57が設けられている。
図18に示す装置は素管50を保持プラグ52と保持ダイス51により縮径するとともに、転造ボール55で素管50を溝付プラグ57に押し付けつつ素管50の内周面に螺旋溝58を転造しながら引抜き、仕上げダイス53により螺旋溝付管を製造するための装置である。
しかし、アルミニウム合金は銅合金に比べて強度が低いことから、内面螺旋溝付管で耐圧強度を得るために、銅内面螺旋溝付管に比べ管の底肉厚を厚くする必要があり、その場合、塑性流動しづらくなるために、図18に示す溝転造装置を用いて所定の内面溝形状、その中でも、フィン高さが高く、フィン幅が狭い、いわゆるハイスリムタイプのフィンを転造することが困難で、溝欠けなど塑性流動不良による欠陥を生じやすい。無理に加工すると管が座屈したり破断したりする。また、内周側に設けた溝プラグと管内周側の接触でアルミ滓が発生し、加工時の溝形状の精度を低下させたり、加工後に取り除くのが難しく管内に残存して溝を詰まらせ、伝熱特性及び圧力損失を大きくするといった問題が挙げられる。更に、溝転造法は予め溝付プラグ57を挿入する際、管の内周側に溝転造用潤滑油を充填しておくが、それが1コイルの長手方向の長い距離加工するうちに潤滑油の粘度が劣化・低下し、製造した内面螺旋溝付管の底肉厚及び溝形状が長手方向の頭とおしりとで変化し、その溝形状のバラツキが大きい。底肉厚及び溝形状のバラツキは熱特性に影響を及ぼすとともにフィンと内面螺旋溝付管を接合する拡管において、その拡管率にバラツキを生じさせる原因になる。
先の特許文献2に記載されている製造装置は、図17に示すように支柱型の2つの支持部材100によって軸周りに回転自在に水平に支持した回転軸101に操出ドラム102を軸支させ、この操出ドラム102にコイル状に巻き付けておいた素管103を引抜きダイス105を介し引き抜いた後、巻取りドラム106に巻き取る構成である。
素管103の内周面には直線溝が複数形成されており、引抜きダイス105を通過した素管103は内面に螺旋溝を有する内面螺旋溝付管108に成形される。
ところが、図17に示す製造装置では、操出ドラム102から素管103を繰り出した位置から、引抜きダイス105に至るまでの途中において素管103に捻れが作用し座屈するため、大きな捻り角の付与が困難である。即ち、引抜きダイス105の内部側に捻れと縮径の両方の力をバランス良く作用させることが困難であった。このため、操出ドラム102から繰り出された位置から引抜きダイス105に至るまでの間、例えば、素管103の移動経路を変更した回転軸101の先端側位置やその前後位置などに捻れ力が集中し、素管103がダイス105に至る前に容易に座屈するという問題点を有していた。
図19に示す製造装置120は、内面に複数の直線溝により内面フィンが形成された押出素管121を巻取りロール122の円周上にコイル状に巻取る巻取り手段123と、コイル状に形成されたコイル状素管121aをそのコイル軸線124の延長方向前方側に向かって引き伸ばし、直管状に成形する引張り手段130と、引張り後の管体の断面形状を矯正する図示略の引抜きダイスと、矯正後の内面螺旋溝付管を加熱する熱処理手段とを備えている。なお、図19に示す製造装置120は必要とする捻り角の大きさに合わせて複数段直列接続して使用される。
引張り手段130には、コイル状素管121aをチャッキングして引き延ばすストレッチャー128と、引き延ばし後の素管に張力を付加しつつ直管状に成形するピンチロール129が複数設けられ、これらによる加工後、巻取りロール131に内面螺旋溝付管132が巻き取られる。
また、付与される捻り角は前述したように、巻取りするロール径だけでなく、そのコイル状に巻き取りされる際のピッチも大きく影響するが、一定ピッチのバネ状に加工するのが難しく、結果的に長手方向で捻り角のバラツキが大きく、安定した捻り角が付与できないといった問題点が挙げられる。それを複数回繰り返して行うことから、捻り角のバラツキが更に大きくなりやすい。
本発明に係る内面螺旋溝付管において、前記捻り角が10°〜45゜の範囲内のいずれかの角度に設定されている構成を採用できる。
本発明において、内面の螺旋溝に沿って形成されているフィンのフィン倒れ角が1゜以下であることが好ましい。
本発明において、外面に表面粗さ(Rmax)15μmを超える段差として定義されるオレンジピールが無いことが好ましい。
本発明の内面螺旋溝付管において、その製造に用いた押出素管の結晶粒組織について平均結晶粒サイズが80μm以下であることが好ましい。
本発明において、前記引抜きダイスに前記素管を通して前記素管を捻りつつ縮径する際、前記素管に前方張力と後方張力を付加することが好ましい。
本発明において、前記120μm以下の平均結晶粒サイズが、焼き鈍し後に達成された平均結晶粒サイズであることが好ましい。
本発明において、内面の螺旋溝に沿って形成されているフィンのフィン倒れ角を1゜以下にすることができる。
本発明において、外面に表面粗さ(Rmax)15μmを超える段差として定義されるオレンジピールが無い内面螺旋溝付管を得ることができる。
本発明において、平均結晶粒サイズが80μm以下の前記素管を用いることが好ましい。
また、フィン倒れ角が1゜以下であり、細管への対応が可能で、表面にオレンジピールなどの凹凸が無く、表面が滑らかな内面螺旋溝付管を提供できる。
これにより、長さ方向に寸法精度が高く、内面溝形状の自由度が大きい内面螺旋溝付管を確実に生産できる効果を奏する。
本実施形態の内面螺旋溝付管の製造装置Aは、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝11aを周方向に間隔をおいて形成した素管11(図5参照)に、一定の捻りを生じさせ、内面に螺旋溝11dを有する内面螺旋溝付管11R(図6参照)を製造する装置である。図6に示す内面螺旋溝付管11Rにおいて、捻り角θは、内面螺旋溝付管11Rの直径の長さaと捻り周期bにおいて螺旋溝11dの傾斜角として把握される。
第1フレーム32は、ドラム21の巻軸21aを支持する矩形枠状の主フレーム32aと主フレーム32aの一側から先窄まり状に延出形成された側面視等脚台形状の副フレーム32bと、副フレーム32bの先端側に延出形成された軸型の前端部34と、主フレーム32aの後端側に延出形成された軸型の後端部35からなる。
第1フレーム32の前端部34は、一方の脚部37より更に前方に突出されており、その突出端部に巻出し側キャプスタン22を保持する第2フレーム(巻出し側フレーム)38が固定されている。したがって、第2フレーム38は第1フレーム32に対し一体化され、巻出し側キャプスタン22とともに、水平な軸心Cを中心として軸心周りに回転自在に支持されている。
この駆動部39により第1フレーム32及び第2フレーム38を一体に回転させる構成であり、駆動部39、両フレーム32、38、軸受36、脚部37等により、巻き出しドラム21と巻き出し側キャプスタン22とを上記軸心Cを中心に一体に回転する回転手段23が構成される。
なお、図2は図1に示す製造装置Aのうち、引抜きダイス24の前後に設けられている巻出し側キャプスタン22と引抜き側キャプスタン25を主体として素管11との相対関係を主体に描いた図であり、図2では従動ローラー41、43の記載を略している。
また、図2に示すようにキャプスタン22の頂上位置と引抜きダイス24の出口部分との間の長さLの領域が加工域とされる。
また、脚部37の中の軸受け36の中に、捻り加工前の素管11の真円を回復するための引抜きダイス16を有している。
コイル状に巻かれた素管11は、素管同士の接触で偏平状に変形している。変形したまままの形状で引抜きを行なうと、引抜きダイス24に偏平な素管11が均一に接触せず、捻りの付与で座屈してしまう。従って、真円度を長径/短径の比が1.2以内になるように、縮径率0.5〜3%の引抜きを行なう。この縮径率は、(引抜き前の素管11の外径−引抜き後の内面螺旋溝付管の外径)/引抜き前の素管の外径の百分率により求められる。
また、引抜き側キャプスタン25は、巻き出し側キャプスタン22と同様に、従動ローラー43を備えており、この従動ローラー43との間で内面螺旋溝付管11Rを複数ターン掛け回すように巻き付けた状態として上記軸心C1と平行に送り出すようにしている。内面螺旋溝付管11Rはキャプスタン25に数周分巻き付けられる。この引抜き側キャプスタン25において、内面螺旋溝付管11Rは、両キャプスタン22、25の間の軸心Cに対してキャプスタン25の回転軸と平行な方向にずれて送り出される。
引抜きダイス24は、図4に示すように素管11を挿通させるダイス孔24aを有しており、素管11の外径を減少させる空引きを行う。その引抜きダイス24における縮径率は5〜40%とされる。縮径率が小さ過ぎる場合は引抜きによる効果が乏しく、大きな捻り角を得ることが難しいので、5%以上とするのが好ましい。一方、縮径率が大きくなり過ぎると加工限界で破断を生じ易くなるので、40%以下とするのが好ましい。
巻き取りドラム29は、内面螺旋溝付管11Rを一定の張力で巻き取るものであり、回転のための駆動部46を備えている。
予め、押出により、図4に示すように、内面に長さ方向に沿う複数の直線溝11aが周方向に間隔をおいて形成された素管11を作製する(素管押出工程)。
そして、この素管11を巻き出しドラム21にコイル状に保持しておき、この巻き出しドラム21から巻き出した素管11を巻き出し側キャプスタン22に巻き付けつつ、回転手段23によってフレーム32、38と一体に巻き出しドラム21及び巻き出し側キャプスタン22を軸心C回りに回転させることにより、巻き出し側キャプスタン22から素管11を回転させながら巻き出す(素管巻き出し工程)。
この場合、捻りにより素管11には円周接線方向にせん断応力が作用し捻り角が付与されるが、同時に素管11の長手方向には捻りに伴う圧縮応力が作用し、その値が座屈応力を超えた場合に座屈が生じるが、引抜き加工による素管長手方向への引張応力により、圧縮応力を低減できるため、座屈の発生を抑制できる。
引抜きダイス24の終端部から引抜き側キャプスタン25の位置が離れすぎると、キャプスタン25に内面螺旋溝付管11Rを巻き付けてはいるものの、その拘束力が弱くなり、引抜きダイス24から内面螺旋溝付管11Rが出た後にも内面螺旋溝付管11Rが回転し、その場合、長手方向で加工域の長さが変化し、長手方向の捻り角がばらつく要因になる。
なお、内面螺旋溝付管の捻り角は、巻き出しキャプスタン22の公転速度と素管11の巻き出し速度との関係により定められる。
最後に内面螺旋溝付管11Rは巻き取りドラム29に巻き付けられる(巻き取り工程)。 巻取りドラム29は、引抜き側キャプスタン25およびキャプスタン27と同期してモーター駆動で回転する。
図7に示す熱交換器80の構造において内面螺旋溝付管81は、フィン材82を直線状に貫通する複数のU字状の主管81Aと、隣接する主管81Aの隣り合う端部開口どうしをU字形のエルボ管81Bで図7(b)に示すように接続してなる。また、フィン材82を貫通している内面螺旋溝付管81の一方の端部側に冷媒の入口部86が形成され、内面螺旋溝付管81の他方の端部側に冷媒の出口部87が形成されることで図7に示す熱交換器80が構成されている。
図7に示す熱交換器80に内面螺旋溝付管81を適用することで、熱交換効率の良好な熱交換器80を提供できる。
また、例えば、内面螺旋溝付管11Rの外径が10mm以下と小さく、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる内面螺旋溝付管11Rを用いて熱交換器80を構成すると、小型高性能であり、リサイクル時にフィン材82と内面螺旋溝付管81の分離が不要であって、リサイクル性に優れた熱交換器を提供できる。
外径10mm、内径9.1mm、内面に直線溝が形成された3003アルミニウム合金素管を用いて内面螺旋溝付管の製造を行った。
素管は、外径10mm、内径9.1mmの3003押出まま材を用い、内面の直線溝の数は45個(8°/1山)で、これら直線溝により形成されるフィンの高さが0.28mm、フィンの頂角が10°であるものを用いた。この素管を用いて、引抜きダイスの孔径が7.5mm、縮径率25%、引抜き速度が5m/minの条件で引抜き加工を行った。なお、用いた素管の平均結晶粒径は、80μmのものを用いている。素管の平均結晶粒径は、後述するように押出成形時のホモ処理条件と押出条件により制御可能であり、この例ではホモ処理条件580℃、5時間、押出時のビレット温度550℃、押出速度40m/分の押出速度とすることで平均結晶粒径80μmの素管を得た。
この図8に示されるように、両者の間には相関が認められ、加工域長さが短くなるにつれて限界捻り角の値は指数関数的に増大する傾向を示した。加工域長さ180mmでは座屈に至っておらず、参考データである。
加工域長さを220mmとして上記の条件で作製した素管引抜き工程後の内面螺旋溝付管は、外径が7.5mmとなり、内面に捻り角が30°の螺旋溝が形成されていた。仕上げ引抜き工程後では、第3の引抜きダイスを通すことにより、捻り角がわずかに小さくなることから、最終的に、外径が7.2mmで、内面螺旋溝の捻り角は28°となった。
また、内面にストレートの溝を設けた外径φ=10mm、内径φ=9.1mmの3003アルミニウム合金素管を用いて、加工域長さ220mm、引抜速度5m/minで、巻き出し側キャプスタンの公転速度を変量し、引抜き時の縮径率が限界捻り角(座屈を生じずに捻れる最大捻り角)に及ぼす影響を調べた結果、図9に示す結果となった。
この図9に示されるように、両者の間には相関が認められ、引抜き時の縮径率を大きくするにつれて限界捻り角が大きくなる傾向が認められる。
図10は、加工域長さ220mm、30%リダクションで外径φ7.5mm、内径φ6.6mm、引抜速度10m/minの条件において捻り角と巻き出し側キャプスタン回転速度の関係を示している。
巻出し側フレームの回転速度と捻り角は比例する関係となり、巻出し側フレームの回転速度を変量することにより、捻り角の変量が可能であることが判った。
次に、内面に直線溝を設けた外径φ=10mm、内径φ=9.1mmの3003アルミニウム合金からなる素管(平均結晶粒サイズ80μm)を用い、図1に示す装置を用いて、加工域長さ220mm、30%リダクション、引抜速度10m/min、巻き出し側キャプスタンの公転速度180rpmで、外径φ7.5mm、内径φ6.6mmの製造条件にて、20゜の内面螺旋溝を有する長さ778mの内面螺旋溝付管を製造した。なお、用いた素管の平均結晶粒径は、80μmのものを用いている。
得られた内面螺旋溝付管の一部を長さ5mにわたり、切り出し、切り出した内面螺旋溝付管の長さ方向における捻り角の分布を調べた。その結果を図11に示す。
図11に示す結果から、図1に示す製造装置を用いて形成した内面螺旋溝付管は、長手方向で安定した捻り角の付与ができていた。また、捻り角のばらつきは、±0.5゜の範囲内に納まっており、極めて優秀な精度で管材の長手方向に均一な捻り角を付与できていることが判った。
次に、内面に直線溝を設けた外径φ=10mm、内径φ=9.0mmの3003アルミニウム合金からなる押出素管(平均結晶粒径80μm)を用い、図1に示す装置を用いて25゜の内面螺旋溝を有する長さ778mの内面螺旋溝付管を製造した。この製造は、引抜きリダクション30%、加工域長220mm、外形φ7mmの捻り管を引抜速度10m/min、巻き出し側キャプスタンの公転速度250rpmの条件で作成した。
長さ778mの内面螺旋溝付管について、加工開始位置から、長さ方向に10m、195m、389m、584m、775mの各位置において捻り角(゜)、外径(mm)、底肉厚(mm)、フィン高さ(mm)、フィン頂幅(mm)、フィン頂角(゜)を測定した結果を以下の表1に示す。
フィン頂角とは、図12に示す等脚台形状のフィンにおいて、左右の斜辺がなす角度であり、フィン頂幅とはフィン頂部分の幅である。フィン高さはフィン底部からフィン頂部までの高さとした。
底肉厚とは、図13に示すように螺旋溝11dの部分に相当する内面螺旋溝付管11Rの肉厚を示す。なお、内面螺旋溝付管11Rは断面円形のため、正確には図13に示すようにフィン11cの底辺の中央点とフィン11cの頂辺の中央点どうしを結ぶ高さtとして計測している。
また、得られた内面螺旋溝付管のそれぞれの測定位置の部分から長さ140mmにわたり管を切り出し、切り出した管をそのまま試験片として用い、TS(引張り強さ)、YS(耐力)、EL(伸び)を測定した。
また、得られた内面螺旋溝付管は長さ方向についてTS、YS、ELのばらつきも小さく、均一に加工されていることが判る。
次に、対比のために、押出素管作成時のホモ条件と押出条件を変更し、押出素管の平均結晶粒径を変更した試料を以下の表2に示すように複数作成した。
実施例3で用いた加工前の前記押出素管の一部分を試料として切り出すとともに、得られた内面螺旋溝付管の先端から5mの部分を試料として切り出し、それぞれの試料について、押出素管の状態での平均結晶粒径(μm)、内面螺旋溝付管の平均結晶粒径(μm)、オレンジピール発生の有無、加工後内周面の平均溝倒れ角度(゜)、拡管率(%)について測定し、評価した。拡管率は、拡管試験前後における外径拡管率(分母は拡管前)を示す。
図13に示す4つのフィン11cにおいて、左側に記載した3つのフィン11cは変形していない状態を示し、右側に記載した1つのフィン11cが変形したフィンを例示している。図13の右側のフィン11cは変形しているので、倒れ角θ2を角abcから計測できるが、左側のフィン11cは変形していないので、直線L1の中央部bから円中心方向に形成した垂線上に頂辺中央部aが位置するので、この場合のフィン倒れ角θ2は0゜となる。なお、図13は、フィン頂角を例示するために作図したものであり、通常は複数のフィン11cにフィン倒れが生じる。
内面螺旋溝付管の拡管試験は、100kN引張試験機を用い、その上チャック部に拡管プラグを取り付け、ベース上に内面螺旋溝付管をプラグ挿入方向と平行に支持するための台を設置し圧縮試験モードで行なった。
内面螺旋溝付管に拡管プラグを挿入することで、内面螺旋溝付管を拡管し、これを観察した。拡管試験において用いる拡管プラグの最外径部の直径は、5.9mmのものを用いた。また、拡管プラグは、超硬合金からなる。内面螺旋溝付管に対する拡管プラグの挿入速度は、285mm/minとした。
拡管プラグの軸回転速度は、7.5rpm、12rpm、30rpmに設定して、それぞれの軸回転方向に対して試験を行った。なお、当然のことながら、回転を付加しない場合においては、軸回転速度は0rpmである。また、内面螺旋溝付管の内周面と拡管プラグとの潤滑油として、エヌ・エスルブリカンツ株式会社製のRF−520を使用した。
拡管を行う内面螺旋溝付管の長さは125mmであり、このうち95mmを拡管ストロークとして拡管試験を行った。尚、プラグを内面螺旋溝付管から抜く際、試料が付いてこないようにセットした内面螺旋溝付管の下から20mm位置に固定孔を設け、ホルダーにセット後、ホルダー側からピンを挿入し固定した。
以下の表2にオレンジピール発生の有無について、試験に用いた押出素管と加工熱処理後の内面螺旋溝付管の平均結晶粒径の大きさ等について示す。
フィン倒れ角が大きい場合、内面螺旋溝付管を拡管プラグにより拡管して熱交換器を組み立てる場合、拡管プラグが作用させる拡管力が倒れた内面フィンを更に倒すように作用し易くなる。この状態になると、内面フィンが更に倒れるように変形する結果、内面螺旋溝付管の拡管不足となり、熱交換器の製造に支障を来す。例えば、熱交換器を内面螺旋溝付管と外部のフィンとで構成する場合、外部のフィンに形成した透孔に内面螺旋溝付管を挿通し、内面螺旋溝付管を拡管することにより熱交換器を組み立てるが、拡管不足となると、外部フィンと内面螺旋溝付管との密着性が劣ることとなり、熱交換性能が低下することとなる。
次に前述の内面螺旋溝付管の横断面金属組織および外観の状態を調査した。
実施例5の螺旋溝付管のうち、素管平均結晶粒径83μm、内面螺旋溝付管の平均結晶粒径116μmの試料断面の金属組織写真を図14(a)に示し、同試料表面の外観写真を図14(b)に示す。得られた螺旋溝付管の外周は図14(b)に示すように平滑であり、オレンジピールに代表される不定形の凹凸による表面荒れは見られなかった。また、得られた内面螺旋溝付管のフィンの形状を図14(c)に示すが、形状が揃っており、フィン倒れ角が小さいことがわかる。
これらの対比から、表面の滑らかな螺旋溝付管を得ようとする場合は、押出素管の平均結晶粒径の大小が重要であり、平均結晶粒径80μm以下の押出素管を用いることが重要と想定できる。
図16に図14に示す試料の外観と図15に示す試料の外観を対比して示す。図16(a)に示すオレンジピールの無い内面螺旋溝付管の外観に対し、図16(b)に示すオレンジピールを有する内面螺旋溝付管の外観は明らかに表面凹凸が目立ち、肌荒れしていることがわかる。
C…軸芯、
C1…軸心、
11…素管、
11a…直線溝、
11b…フィン、
11R…内面螺旋溝付管、
21…ドラム(巻き出し側ドラム)、
21a…巻軸、
22…巻出し側キャプスタン、
23…回転手段、
24…引抜きダイス、
24a…ダイス孔、
25…引抜き側キャプスタン、
26…第2の引抜きダイス、
27…第3のキャプスタン、
29…巻取りドラム、
31…ガイドプーリ、
32…フレーム(第1フレーム)、
38…巻き出し側フレーム(第2フレーム)。
Claims (13)
- 内面に長さ方向に沿う複数の直線溝が周方向に間隔をおいて形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の素管に直接捻じり加工を付与して製造された内面螺旋溝付管であって、その結晶粒組織において平均結晶粒サイズが120μm以下であり、長さ1m〜長さ5mのいずれの長さの測定範囲においても捻り角のばらつきが±1%以下の範囲にばらついていることを特徴とする内面螺旋溝付管。
- 前記捻り角が10°〜45゜の範囲内のいずれかの角度に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の内面螺旋溝付管。
- 前記120μm以下の平均結晶粒サイズが、焼き鈍し後に達成された平均結晶粒サイズであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内面螺旋溝付管。
- 内面の螺旋溝に沿って形成されているフィンのフィン倒れ角が1゜以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管。
- 外面に表面粗さ(Rmax)15μmを超える段差として定義されるオレンジピールが無いことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管。
- 前記、内面螺旋溝付管において、その製造に用いた押出素管の結晶粒組織について平均結晶粒サイズが80μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管。
- 内面に長さ方向に沿う複数の直線溝が周方向に間隔をおいて形成されたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる素管をコイル状に保持したドラムから巻出して巻出し側キャプスタンに周回させつつ、これらドラム及び巻出し側キャプスタンをドラムの巻軸と直交する軸心に沿って回転させることにより、前記巻出し側キャプスタンから前記素管を前記軸心回りに回転させながら巻き出す素管巻出し工程と、巻き出された前記素管を引抜きダイスに通して縮径しながら引き抜くことにより、前記素管を内面螺旋溝付管に加工する引抜き工程を備えることにより、
結晶粒組織において平均結晶粒サイズが120μm以下であり、長さ方向に捻り角のばらつきが±1%以下である内面螺旋溝付管を製造することを特徴とする内面螺旋溝付管の製造方法。 - 前記巻出し側キャプスタンに前記素管を巻き始める位置と前記巻出し側キャプスタンから前記引抜きダイス側に前記素管を送り始める位置を前記巻出し側キャプスタンの回転軸と平行な方向にずらすことにより、前記巻出し側キャプスタンと前記引抜きダイスとの間を前記素管の捻り加工領域とすることを特徴とする請求項7に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 前記引抜きダイスに前記素管を通して前記素管を捻りつつ縮径する際、前記素管に前方張力と後方張力を付加することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 前記120μm以下の平均結晶粒サイズが、焼き鈍し後に達成された平均結晶粒サイズであることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 内面の螺旋溝に沿って形成されているフィンのフィン倒れ角を1゜以下にすることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 外面に表面粗さ(Rmax)15μmを超える段差として定義されるオレンジピールが無い内面螺旋溝付管を得ることを特徴とする請求項7〜請求項11のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
- 平均結晶粒サイズが80μm以下の前記素管を用いることを特徴とする請求項7〜請求項12のいずれか一項に記載の内面螺旋溝付管の製造方法。
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