JP6925170B2 - 管式熱交換器とその製造方法および熱交換器 - Google Patents

管式熱交換器とその製造方法および熱交換器 Download PDF

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Description

本願発明は、管式熱交換器とその製造方法および熱交換器に関し、管内2個以上の流路を流れる複数の熱媒体間での熱交換性能の向上と曲げ加工時の曲げ性の向上が得られる管式熱交換器とその製造方法および熱交換器に関する。
従来から、管内において内側流路とその周囲に配置された外側の複数の流路間で、内側と外側を流れる冷媒間で熱交換を行なう方式の管式熱交換器が知られている。
以下の特許文献1には、ヒートポンプ式の熱源機においてコストの増加を抑制しつつ熱交換性能の向上を図った二重管式熱交換器が開示されている。
特開2016−99075号公報
二重管式熱交換器の課題として、高コスト化を抑制し且つ熱交換性能を高めるといった要望を満足することが挙げられる。熱交換性能向上には二重管式熱交換器の長さを長くすることで実現可能であるが、一方で熱交換器が大型化するとともに、材料費の増加でコストが高くなるといった問題がある。
そこで、本発明の目的は、熱交換器の大型化及びコストの増加を抑制しつつ、熱交換性能の向上が図れる成形性に優れる管式熱交換器とその製造方法を提供することにある。
本発明に係る管式熱交換器は、外管の内部に長さ方向に連通する複数の捻り流路を設けた金属製の管式熱交換器であって、前記外管と前記捻り流路を備えた管式熱交換器が捻り引抜き管からなり、前記複数の捻り流路がいずれも所定の捻り角で前記外管の長さ方向に螺旋状に形成されるとともに、前記外管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が形成され、前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}{111}の集積度合いが、前記捻り引抜き管と同じ縮径の引抜きのみを施した引抜管のCu方位{112}{111}の集積度合いよりも小さくされたことを特徴とする。
本発明に係る管式熱交換器は、外管の内部に長さ方向に連通する複数の捻り流路を設けた金属製の管式熱交換器であって、前記複数の捻り流路がいずれも所定の捻り角で前記外管の長さ方向に螺旋状に形成されるとともに、前記外管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が形成され、前記外管の外周面に螺旋状のウエルドラインが形成され、前記ウエルドラインが長さ方向に沿って間欠的に螺旋状に形成されたことを特徴とする。
本発明に係る管式熱交換器において、前記間欠的に形成されたウエルドラインの長さが5mm以下であることが好ましい。

本発明に係る管式熱交換器において、前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることが好ましい。
本発明に係る管式熱交換器において、前記集合組織がCu方位{112}{111}の集積とGoss方位{011}{100}の集積がなされた集合組織であることが好ましい
発明に係る管式熱交換器において、前記外管の外周面に螺旋状のダイスマークが形成されており、前記ダイスマークの最大深さが35μm以下であることが好ましい。
本発明に係る管式熱交換器において、前記外周面における螺旋状の前記ダイスマークの捻り角が、前記螺旋状の前記捻り流路を構成する流路管の捻り角より、1.0°以上大きいことが好ましい。
本発明の熱交換器は、先の何れかに記載の管式熱交換器と、前記管式熱交換器に結合された放熱板と、を備えたことを特徴とする。
本発明に係る管式熱交換器の製造方法は、外管の内部に長さ方向に沿って直線的に延びる複数の流路を有し、前記外管の外周面に長さ方向に沿って直線的に延びるダイスマークとウエルドラインの少なくとも一方を有する金属製の複合素管を押出により成形する押出成形工程と、前記複合素管に引抜きとともに捻り角が5°以上の捻りを付与する捻り引抜き工程と、前記捻り引抜き工程の後に縮径率が10%以上の引抜きを行う空引き工程を施すことによって、前記外管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を形成することを特徴とする。
本発明に係る製造方法において、前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることが好ましい。
本発明によれば、大きな捻り角の捻り流路を金属製の外管内に備えた管式熱交換器であって、曲げ部分を形成したとしても、き裂や破断を生じることのない管式熱交換器とそれを利用した熱交換器とその製造方法を提供できる。
本発明に係る第1実施形態の管式熱交換器の一部を断面とした斜視図である。 本発明に係る第1実施形態の管式熱交換器において外管の一部を破断とした側面図である。 同管式熱交換器の外管に形成されているウエルドラインとダイスマークを示す側面図であり、(a)はウエルドラインの一例を示す側面図、(b)はダイスマークの一例を示す側面図である。 同管式熱交換器を製造するための複合素管の一部を示す斜視図である。 同管式熱交換器を製造する場合に捻り引抜き工程を行う第1の製造装置を示す正面図である。 図5における矢印X方向から見た浮き枠の平面図である。 本発明に係る第2実施形態の管式熱交換器を示す斜視図である。 本発明に係る管式熱交換器を伝熱管として用いた熱交換器の一例を示す正面図である。 本発明に係る管式熱交換器を伝熱管として用いた熱交換器の一例を示す部分斜視図である。 同管式熱交換器を製造する場合に捻り引抜き工程を行う第2の製造装置の要部構成を示す模式図である。 同第2の製造装置の全体構成を示す側面図である。 同第2の製造装置の全体構成を示す平面図である。 同第2の製造装置の巻き出し側キャプスタンに対し複合素管を巻き付けて巻き出した状態を示す平面図である。 実施例において得られた管式熱交換器の部分断面写真である。 同管式熱交換器の外管の一部を除去した側面写真である。 実施例の管式熱交換器を製造するために用いた複合素管の横断面写真である。 実施例における管式熱交換器のウエルドラインのSEM画像である。 管式熱交換器外周部のSEM画像であり、(a)はウエルドライン消失部であり、(b)はウエルドライン残留部である。 実施例で得られた管式熱交換器の結晶方位を解析するための(200)不完全極点図である。 実施例で得られた管式熱交換器の結晶方位を解析するための(220)不完全極点図である。 実施例で得られた管式熱交換器の結晶方位を解析するための(111)不完全極点図である。 図19に示す極点図をRD−TD方向に30゜補正した後の(200)極点図である。 図20に示す極点図をRD−TD方向に30゜補正した後の(220)極点図である。 図21に示す極点図をRD−TD方向に30゜補正した後の(111)極点図である。 比較例として作成した直線溝付引抜き管の結晶方位を解析するための(200)不完全極点図である。 比較例として作成した直線溝付引抜き管の結晶方位を解析するための(220)不完全極点図である。 比較例として作成した直線溝付引抜き管の結晶方位を解析するための(111)不完全極点図である。 実施例で得られた管式熱交換器の結晶方位分布関数を0゜、25゜、45゜。90゜毎に示す説明図である。 実施例で得られた管式熱交換器の0゜、25゜、45゜。90゜の場合毎の結晶方位分布関数に、30゜補正を加えた結晶方位分布関数を示す説明図である。 比較例として得られた直線溝付管の0゜、25゜、45゜。90゜の場合毎の結晶方位分布関数を示す説明図である。 図5に示す第1の製造装置で製造した管式熱交換器におけるダイスマークの一例を示すもので、(a)はダイスマークの拡大写真、(b)は深さの測定結果を示すグラフである。 図5に示す第1の製造装置で製造した管式熱交換器におけるダイスマークの他の例を示すもので、(a)はダイスマークの拡大写真、(b)は深さの測定結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示している場合がある。
[熱交換器]
図1〜図3は本発明の第1実施形態に係る管式熱交換器を示し、この実施形態の管式熱交換器10は、一例として3〜20mm、より具体的には3〜12mm程度の外径を有し、四葉のクローバー型の横断面形状を有する内管8とそれを覆う円管状の外管9とからなる。
図2に示すように内管8は、薄いアルミニウム板またはアルミニウム合金板などの金属板をクローバーの葉型に折曲してなる流路管8Aを4つ、外管9の内部に横断面において対象になるように設けている。図1の横断面部分に示すように各流路管8Aは頭部8aと首部8bからなり、各流路管8Aにおいて頭部8aの外周側は外管9の内面に接するように配置され、流路管8Aの首部8bは外管8の中心側において隣接する他の流路管8Aの首部8bにそれぞれ連続されている。このように4つの流路管8Aが接続一体化されることで、横断面において4つの流路管8Aが四葉のクローバー型に配置されている。
流路管8Aにおいて頭部8aの内側には第1の流路(捻り流路)10aが形成され、流路管8Aの頭部8aの側方であって隣接する他の流路管8Aの頭部8aと外管9により囲まれた位置に第2の流路(捻り流路)10bが形成されている。また、4つの流路管8Aにおいてそれらの首部8bが接続された部分の中心に第3の流路10dが形成されている。
管式熱交換器10を構成する内管8と外管9は、アルミニウム又はアルミニウム合金、あるいは、銅系合金または鉄系合金などの各種金属材料からなるものを用いることができる。これらにアルミニウム合金を用いる場合は、そのアルミニウム合金に特に制限はなく、JISで規定される1050、1100、1200等の純アルミニウム系、あるいは、これらにMnを添加した3003に代表される3000系のアルミニウム合金等を適用できる。また、前記以外にJISに規定されている5000系〜7000系のアルミニウム合金のいずれかを用いて管式熱交換器10を構成しても良く、JISに規定されていないアルミニウム合金を用いても良いのは勿論である。
内管8と外管9が上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる場合、内管8と外管9が同じ種別のアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されていてもよく、異なる種別のアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されていても良い。例えば、内管8を構成するアルミニウム合金と外管9を構成するアルミニウム合金の組成を変えて内管8の強度を外管9の強度よりも低くしても良く、内管8の伸びを外管9の伸びよりも大きくすることができるなど、それぞれ適用する内管8と外管9に応じて純アルミニウムまたはアルミニウム合金を使い分けることができる。
なお、この実施形態において用いる内管8と外管9については上述したように銅系合金あるいはステンレス鋼などの鉄系合金から形成されていてもよい。この実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金からなる内管8と外管9を例示して説明するが、本発明で目的とする管式熱交換器は引抜きダイスにより引抜きが可能な材料であれば適用可能であるので、銅系合金あるいは鉄系合金など、他の金属からなる管を用いて本発明に適用しても良いのは勿論である。
内管8と外管9は同じ材料である必要は無く、外管9を銅合金製とし、内管8をアルミニウム合金製などとしても良い。
本実施形態において内管8と外管9はその長さ方向に所定のピッチで螺旋状に捻られている。即ち、外管9の内側において4本の流路管8Aはそれぞれ同一の捻り角θ1で螺旋状に延在されている。
図2に流路管8Aの捻り角θ1を示すが、この実施形態では一例として管式熱交換器全体外径:10mm、捻り角θ1:25゜に設定される。捻り角θ1は、後述する製造装置で管式熱交換器10を製造する場合に座屈を生じない程度の角度とすることが望ましく、例えば10゜以上80゜以下の範囲を選択できるが、10゜以上45゜以下の範囲に制御すると製造時の管の座屈も防止することができる。捻り角θ1は、例えば、図2に示すように外管9の一部を排除して内管8を側面視した場合、流路管8Aが描く螺旋を観察し、その直線部分を抽出して管式熱交換器10(外管9)の中心軸線との交差角として把握されるが正確には以下に説明するように把握することができる。
まず、捻りを付与する前の素管(後述の流路素管7)を定盤に搭載し、ハイトゲージを用いて、流路素管7の外周面に長さ方向に延びる直線状の罫書き線を形成する。例えば、1つの頭部7aの幅方向中央部に流路素管7の長さ方向に沿って直線状の罫書き線を形成する。
次いで、後述の捻り加工を付与し管式熱交換器10を製造する。製造された管式熱交換器10の罫書き線は、螺旋状となる。
次いで、螺旋状となった罫書き線のピッチpと、内管8の外周面8aの円周長さaから以下の(式1)を用いて求めることができる。
θ1=tan−1(a/p)
この範囲内の捻り角θ1において内部に流す冷媒との熱交案効率を向上させ、製造時の管の座屈も防止するためには、捻り角θ1=15゜〜40゜の範囲とすることが望ましく、捻り角θ1=15゜〜30゜の範囲とすることがより好ましい。
外管9は横断面の外形が円形の管材である。外管9の直径は、管式熱交換器10の外径に相当し、例えば、3mm以上20mm以下の範囲に設定できるが、この範囲に限るものではない。外管9の肉厚は内管8の肉厚と同程度とされるが、一方が他方より厚くても薄くても良く、特に制限はない。
図2に示すように、流路管8Aは捻り角θ1の螺旋状に形成されている。一方で、図3(b)に示すように、外管9の外周面9aにはダイスマークDMが、捻り角θ2を有して螺旋状に形成されている。αを外管9の内周長とし、βを外管9の肉厚としたとき、流路管8Aの捻り角θ1とダイスマークDMの捻り角θ2は、以下の関係を満たす。
Figure 0006925170
上記式によれば、ダイスマークDMの捻り角θ2は、上記の式から、流路管8Aの捻り角θ1より大きくなる。これは、流路管8Aの捻り角θ1およびダイスマークDMの捻り角θ2の基準となる面が外周面と内周面であり、肉厚差に起因して異なっていることに由来する。管式熱交換器10の外周面における螺旋状のダイスマークDMの捻り角θ2は、螺旋状の流路管8Aの捻り角θ1より、1.0°以上大きい。なお、本実施形態により得られる管式熱交換器10の外径は4mm以上15mm以下である。さらに管式熱交換器10の外径は、出発材である押出複合素管径に比べ外径が70%以下である。
捻り角θ1は、後述する製造装置で管式熱交換器10を製造する場合に座屈を生じない程度の角度とすることが望ましく、10゜以上80゜以下の範囲を選択できるが、例えば10゜以上45゜以下の範囲に制御すると製造時の管の座屈も防止することができる。捻り角θ1は、例えば、図2に示すように外管9の一部を排除して内管8を側面視した場合、流路管8Aが描く螺旋を観察し、その直線部分を抽出して管式熱交換器10(外管9)の中心軸線との交差角として把握される。
この範囲内の捻り角θ1において内部に流す冷媒との熱交案効率を向上させ、製造時の管の座屈も防止するためには、捻り角θ1=15゜〜40゜の範囲とすることが望ましく、捻り角θ1=15゜〜30゜の範囲とすることがより好ましい。
外管9は横断面の外形が円形の管材である。外管9の直径は、管式熱交換器10の外径に相当し、例えば、4mm以上15mm以下の範囲に設定できるが、この範囲に限るものではない。外管9の肉厚は内管8の肉厚と同程度とされるが、一方が他方より厚くても薄くても良く、特に制限はない。
ダイスマークDMは、押出加工により成形された部材の周面に押出方向に沿って形成される線状の溝である。ダイスマークDMは、押出金型やベアリング面の傷等の影響により形成される。本実施形態の外管9は、押出加工した素管に引き抜きながら捻りを加えることで製造されている。このため、押出加工により線状に形成されたダイスマークDMは、捻りの付与とともに螺旋状となる。
なお、図3(b)に示すダイスマークDMは、分かり易さのために複数本のダイスマークDMが連続的に形成されているように図示されている。実際のダイスマークは、長さ方向に沿って間欠的に形成されている。また、外管9の外周面の周方向に沿って複数のダイスマークDMが螺旋状かつ並行に延在されている。
なお、本明細書においてダイスマークという用語は、押出工程により形成された直線筋状の凹溝のみならず、係る凹溝を有する素管に捻りを付与した後の裸線筋状の凹部についても用いる。捻りが付与された後の螺旋筋状の凹部は、厳密にはダイスマークに起因する凹部である。しかしながら、本明細書において分かり易さのため、これらを含む概念をダイスマークと呼称する。
捻り引抜き加工が付与された後のダイスマークDMの最大深さは、35μm以下である。管式熱交換器10は、設置される際に、ヘアピン状に屈曲される曲げ加工が施される場合がある。このような曲げ加工において、ダイスマークDMは、管式熱交換器10の破損の起点となり易い。本実施形態によれば、ダイスマークDMの最大深さを35μm以下とすることによって、管式熱交換器10の強度を高め、曲げ加工などの追加加工に対して破損し難い管式熱交換器10を提供できる。
ダイスマーク深さ計測方法について説明する。
ダイスマーク深さ計測は、例えば、株式会社キーエンス製走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)を用いて表面形状の測定を行うことができる。また、計測解析では、解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いてダイスマーク深さを計測できる。
まず走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)のステージに試料を置き、観察倍率50倍のもと、フォーカスを合わせた後に、観察高さ上下限範囲100μmとして、0.5μmピッチで表面形状の測定を行う。
次に解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いて得られた画像上のダイスマーク深さを計測する。計測前の前処理として、管表面の円弧を平坦にする傾き補正を行った。前処理を行った表面形状から、管円周方向に平行になるように直線を3点引き、得られた粗さ曲線から、最大谷深さ(Rv)、最大高さ(Rz)を求め、ダイスマーク深さの計測では、最大断面高さ(Rt)として計測を行う。
解析アプリケーションでは「表面粗さの定義」(JISB0601:2001)に基づいて、JISB0601−2001およびJIS 0601−1994で定義されている粗さパラメータで表面粗さ解析を実施した。
図31(b)に、図31(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。同様に、図32(b)に、図32(a)のダイスマークDMの深さ測定結果を示す。なお、図31および図32に例示するダイスマークDMを有する管式熱交換器は、本実施形態の管式熱交換器10の一例である。
一方、図3(a)に示すように、外管9の外周面9aには、周方向に沿って等間隔で並ぶ4つのウエルドラインWLが形成されている。また、図3(a)に示すように、4つのウエルドラインWLは、外管9の外周面9aに沿って外管9の長さ方向に4つともそれぞれ同じ捻り角θ2で螺旋状に形成されている。
ウエルドラインWLは、押出加工と捻り引抜き加工を行って外管9を製造する際、押出装置のダイスに通じる素材流路でアルミニウム素材同士が合流して溶着した部分が元となり、その部分が捻り加工で螺旋状に形成されたものである。
ウエルドラインWLは、外管9の外周面9aに沿って螺旋状に形成されたそれぞれの位置において外管9の管壁を厚さ方向に貫通して外管9の外周面9aから外管9の内周面に至るように形成されている。
なお、ウエルドラインWLの数は、本実施形態の如く4つに限られない。本実施形態の外管9の製造時において、押出加工装置内に収容したアルミニウム素材(ビレット)を複数の流路に分けて圧送しダイスの内部で合流させた部分に形成される。したがって、押出装置内の流路の数に応じてウエルドラインWLの数が決まる。例えば、外管9の外周面9aに沿って2本、4本、6本などの本のウエルドラインWLが形成されていても差し支えない。
本実施形態において、螺旋状に形成されたウエルドラインWLの捻り角θ2は、例えば10゜以上80°以下である。後段において説明するように、本実施形態の管式熱交換器10は、図4に示す断面形状の複合素管4に捻り引抜き加工を付与することにより形成されている。したがって、捻り引抜き加工後の外管9に形成されているウエルドラインWLの螺旋ピッチと内管8を構成する流路管8Aの螺旋ピッチは、ほぼ一致される。
捻り角θ2は、例えば、図3(a)に示すように外管9を側面視した場合、ウエルドラインWLが描く螺旋を観察し、その直線部分を抽出して管式熱交換器10(外管9)の中心軸線との交差角として把握される。
図4に示す複合素管4は、外素管6と内素管7とからなり、内素管7は図4に示す横断面形状の四葉のクローバー型を構成する4つの流路素管7Aからなる。外素管6の外径は先に図1を基に説明した管式熱交換器10の外管9より若干大きな外径とされている。外素管6は先の外管9と同等材料からなり、内素管7は先の内管8と同等材料からなる。
図4に示すように各流路素管7Aは頭部7aと首部7bからなり、各流路素管7Aにおいて頭部7aの外周側は外素管6の内面に接するように配置され、流路素管7Aの首部7bは外素管6の中心側において隣接する他の流路素管7Aの首部7bにそれぞれ連続されている。このように4つの流路素管7Aが接続一体化されることで、横断面において4つの流路素管7Aが四葉のクローバー型に配置されている。
複合素管4において、各流路素管7Aの内部には第1の流路4aが形成され、流路素管7A、7Aの間にこれらと外素管6に囲まれて第2の流路4bが形成され、4つの流路素管7Aの首部7bに囲まれるように第2の流路4cが形成されている点は、管式熱交換器10と同様な構造とされている。
ただし、流路素管7の横断面形状は、先に図1を基に説明した管式熱交換器10における流路管8の横断面形状と若干形状が異なっている。
図4に示す複合素管4において、流路素管7Aの頭部7aの横断面形状は図1に示す流路管8の頭部8aの横断面形状よりも若干円形に近い楕円型に形成されているのに対し、流路管8の頭部8aの横断面形状は図3に示すように偏平型に近い楕円型に形成されている。
図4に示す複合素管4において、第2の流路4bは、外素管6に近い側が幅広であり、外素管6の中心に近い側が若干幅狭に形成されているが、図1、図2に示す管式熱交換器10において、第2の流路10bが外管9に近い側から外管9の中心に近い側まで幅狭に形状されている。
複合素管4の横断面形状と管式熱交換器10の横断面形状が異なる理由は、複合素管4を用いて後述する製造装置においてダイスを用いて2回塑性変形させて複合素管4に捻り引抜き加工を付加したためである。この捻り引抜き加工により複合素管4にその長さ方向に沿って直線状に形成されていた4つの流路素管7Aが捻り引抜き加工を受け、図3に示すねじり角と捻りピッチを有する4つの流路管8Aを有する管式熱交換器10を得ることができる。
後述する製造装置を用いて引抜きダイスにより複合素管4に引抜き力を加えながら捻り加工を施すことで、アルミニウムまたはアルミニウム合金から、または、鉄系合金あるいは銅系合金などの金属からなる外径3〜15mm程度の肉薄の複合素管4であっても管に破断やき裂を引き起こすことなく捻り加工できる。
管式熱交換器10の内部には、例えば熱交換器の冷媒流通管として用いた場合、熱交換器の種類によっては高圧の冷媒が流れる。したがって、管式熱交換器10には、内部圧に対する十分な耐圧強度が求められる。
本実施形態の管式熱交換器10によれば、ウエルドラインWLは、螺旋状に形成されていることにより、ウエルドラインWLが直線状に設けられている構造よりも耐圧強度が高められている。管式熱交換器10の内部圧が高まると、外管9の内周面には、外管9を径方向外側に押し広げる応力が加わる。このため、管式熱交換器10において、内部圧の高まりに起因する亀裂は、外管9の長手方向に沿って形成されやすい。また、一方で、ウエルドラインWLは、他の部位と比較して組織が異なるため、腐食などが生じると亀裂の起点となり易い。
本実施形態によれば、ウエルドラインWLが、外管9の管壁に螺旋状に形成されているために、内部圧が高まった場合であっても、直線状のウエルドラインWLが設けられた構造に対し、螺旋状のウエルドラインWLに沿って亀裂が生じ難い。このため、耐圧性に優れた管式熱交換器10を提供できる。
なお、図1に示す管式熱交換器10の外管9を螺旋ピッチの長さ分切り開いて長方形状に展開すると、展開面にウエルドラインWLの1周分の長さを対角線として得ることができるので、その長さを測定すればウエルドラインWLの1周分の長さを測定することができる。
このような管式熱交換器10のウエルドラインWLは、十分大きな捻り角θ2の螺旋を描く。したがって、螺旋状に形成されたウエルドラインWLが、内圧の高まりに応じて亀裂が生じようとする方向である管式熱交換器10の長さ方向に対して、十分に傾斜して延在する。これによりウエルドラインWLに沿って亀裂が生じることをより効果的に抑制できる。
本実施形態において、螺旋状のウエルドラインWLは、外管9の長さ方向に沿って螺旋状かつ間欠的に形成されている。すなわち、ウエルドラインWLには、部分的に途切れた部分が形成されている。上述したように、ウエルドラインWLは、押出加工を行った際のアルミニウム素材同士の溶着部分である。このため、外管9においてウエルドラインWLの組織は、外管9の他の部分と異なる組織となる。
本実施形態の管式熱交換器10は、後段に説明するように、押出加工で形成した外素管6を有する複合素管4に対して引抜きと捻りを繰り返し付与して製造される。ウエルドラインWLは、複数回の加工が付与されることで周囲の組織と混ざり合い、境界が曖昧となる。これにより、ウエルドラインWLは、部分的に消失し、間欠的となる。
ウエルドラインWLが消失している部分の組織は、周囲の組織と混ざって均一化されている。このために、ウエルドラインWLに沿う外管9の強度を高めることができる。これにより、耐圧性の高い管式熱交換器10を提供できる。
また、ウエルドラインWLは、形成時に固溶成分が析出するため優先的に腐食しやすいと言われている。本実施形態によれば、ウエルドラインWLが長さ方向に沿って螺旋状かつ間欠的に形成されているため、腐食部分が連続的に延びることがなく、腐食に伴う耐圧性の低下を抑制できる。
螺旋状かつ間欠的に形成されたそれぞれのウエルドラインWLの長さは、5mm以下であることが好ましい。それぞれのウエルドラインWLの長さをそれぞれ5mm以下とすることで、ウエルドラインWLによる耐圧性低下を効果的に抑制できる。
管式熱交換器10の外管9を10%硝酸水溶液に20秒浸漬させてエッチングすると、ウエルドラインWLは、表面上に白いスジ状に浮き上がる。また、白いスジ状の部位は、溶着部であるために他の部位に比べてエッチングのされ方に違いがあり、細かいピットを生じている。この状態で、ウエルドラインWLでは、光が散乱されスジ状の部位として識別できる。
後述する実施例において図17に示すように、エッチングにより顕在化されたウエルドラインWLをSEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)により観察すると、径が10μm以上のピットの存在を確認できる。
図18は、後述する製造装置により製造した管式熱交換器10の外管9において外周部のSEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)画像であり、図18(a)はウエルドライン消失部であり、図18(b)はウエルドラインが残留した部分である。図18に示すように、エッチングすることにより伝熱管の外周部の細かいピットが顕在化する。図18(b)に示すように、外管9の外周面をSEMにより観察すると、ウエルドラインWLには、径が10μm以上のピットが形成されている。一方で、図18(a)に示すように、ウエルドライン消失部では、径が10μm以上のピットがわずかしか形成されていない。
本明細書においては、SEMによる観察視野180μm×250μmの範囲の観察において、径が10μm以上のピットを30個以上含んでいる部分をウエルドラインWLと定義する。したがって、径が10μm以上のピットの数が30個未満である部分では、ウエルドラインWLが消失しているとみなす。
本実施形態の管式熱交換器10において流路管8Aは捻り角θ1の螺旋状に形成されている。一方で、図5に示すように、ウエルドラインWLは、捻り角θ2の螺旋状に形成されている。αを外管9の内周長とし、βを外管9の肉厚としたとき、流路管8Aの捻り角θ1とウエルドラインWLの捻り角θ2は、以下の関係を満たす。
Figure 0006925170
上記式によれば、ウエルドラインWLの捻り角θ2は、上記の式から、流路管8Aの捻り角θ1より大きくなる。これは、流路管8Aの捻り角θ1およびウエルドラインWLの捻り角θ2の基準となる面の外周面と内周面が、肉厚差に起因して異なっていることに由来する。
本実施形態によれば、管式熱交換器10の内部に長さ方向に沿って螺旋状に形成された複数の第1の流路10aと第2の流路10bを設けているので、管式熱交換器10の内部を流れる冷媒との熱交換効率を高めることができる。螺旋状の第1の流路10aと第2の流路10bを備えた管式熱交換器10は、図6に示す複合素管4に捻りを付与することで形成できる。また、捻りを付与することにより、ウエルドラインWLを螺旋状に形成することができ、内圧に対する耐圧性の優れた外管9を備えた管式熱交換器10を提供することができる。また、第1の流路4aと第2の流路4bにはそれぞれ別の冷媒を流すことができ、また、一方の流路と他方の流路の流れを逆として往路と復路に適用することもできる。
なお、これまでの説明においては、管式熱交換器10を熱交換器に適用した例について説明したが、管式熱交換器10の適用用途は熱交換器に限らず、コンプレッサーのアフタークーラー用途、自動販売機のCO配管用途、大型ボイラー用配管用途、給湯器用配管用途など、種々の用途に広く適用できるのは勿論である。
「集合組織」
アルミニウム又はアルミニウム合金から管式熱交換器10が形成されている場合、外管9の管壁には集合組織が形成されている。
アルミニウム又はアルミニウム合金は多結晶体であり、通常個々の結晶粒の方向はランダムであるが、多結晶体が塑性変形を受けた場合に結晶粒の方位が特定の方向に集合し易くなる場合があり、この特定の方向を優先方位と称し、優先方位を有する多結晶体のことを集合組織を有する材料と呼称することができる。塑性加工による集合組織の形成は、特定の結晶面と結晶方向でのすべりに起因した結晶回転の結果として知られている。
本実施形態の管式熱交換器10は後述する如く図4に示す構造の複合素管4に対し、後述する製造装置Aを用いて捻り引抜き加工を施して得られる。
即ち、ダイスを用いた引抜き加工と同時に複合素管4に捻り加工を行うことで管式熱交換器10が得られる。
このため、外管9の管壁には引抜きと捻りに起因する所定の塑性加工が施される結果、管壁の特定の方向に集合組織が発達した金属組織を有する管式熱交換器10が得られる。
この集合組織の方位を特定するには、一例として、管式熱交換器10を適当な長さに切断し、外管9の管壁を切り開いて平板状の試料とした上で、この試料の外表面(管壁の外表面)に対しX線反射法を用いて(200)、(220)、(111)不完全極点図を測定し、解析ソフト(Standard ODF)を用いて、Bunge法により解析し、結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)の測定を行って把握することができる。
例えば、X線反射法におけるX線回折条件として、Cu管球、40kV−40mAを用い、α角度:20〜90゜(Step:5.0゜)の条件で求めることができ、測定面として、引抜き方向をRD、走査方向をTD、管の半径方向をNDと規定することができる。
図19は後述する製造装置Aを用い、実施例において30゜の捻り角を付与するように製造された外管の(200)不完全極点図、図20は(220)不完全極点図、図21は(111)不完全極点図の一例を示す。
これらの極点図に対しそれらのRD−TD方向に捻り角に対応する30゜の補正を加えた極点図を図22、図23、図24にそれぞれ示す。
また、これら実施例試料に対し、後述する製造装置Aを用いて捻りを略し、引抜きのみを施して得た比較例試料の(200)極点図、(220)極点図、(111)極点図を図25、図26、図27に示す。
図19〜図21に示す極点図では主な特徴を確認できないが、30゜補正後の図22〜図24に示す極点図は図25〜図27に示す引抜き管の極点図に類似したパターンを示すことがわかる。
このことから、補正値30゜が管式熱交換器の捻り角(外管の捻り角)と一致することから、外管の集合組織の結晶方位は引抜き管に比べ、その引抜き方向に30゜の捻れを生じていることがわかった。
また、図19〜図21に示す不完全極点図から求めた外管の結晶方位分布関数を図28に示し、図22〜図24に示す30゜補正後の不完全極点図から求めた外管の結晶方位分布関数を図29に示し、図25〜図27に示す不完全極点図から求めた引抜き管の結晶方位分布関数を図30に示す。
これらの対比から、管式熱交換器の結晶方位分布関数では、極点図同様に30゜の補正を加えることで、引抜き管と同様の結晶方位図を得ることができた。
集合組織について面心立方晶に観察される代表的な優先方位の位置から、引抜き管、管式熱交換器(多重捻り管)ともに圧延集合組織であるCu方位{112}<111>の集積を認めることができた。
次に、Goss方位{011}<100>の集積が認められた。
また、これらの集積の度合いは、引抜き管に比べて管式熱交換器の方が弱い傾向を示していることがわかる。
これらの分析から、外管の集合組織は、Cu方位、Goss方位が優先的に配向した集合組織を示していることがわかり、集合組織の方位は、RD(引抜き方位)に対し、RD−TD方向に捻り角に依存した30゜の傾きを有した集合組織であると判断できる。
以上説明のように管式熱交換器10、その外管9の管壁に捻り角に依存する集合組織を有しているが、引抜き管よりも集合組織の発達が弱いため、引抜き管よりも集合組織の発達を弱くすることができる。集合組織の発達の強い引抜き管よりも集合組織の発達の弱い外管9とするならば、その外管9は管壁の伸びの異方性、強度の異方性を弱くしていることとなり、集合組織の発達の強い引抜き管より集合組織の発達の弱い外管9の方がヘアピン曲げの部分にクラック発生や座屈発生を抑制できる特徴を有する。
このため、管式熱交換器10を小さな曲率半径でヘアピン曲げ加工したとしても、曲げ部分にしわや偏平部分が発生し難く、き裂や破断を生じ難い管式熱交換器10を提供できる特徴がある。
[製造方法]
以下、本願発明に係る管式熱交換器10の製造方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。管式熱交換器10の製造方法は、押出成形工程と捻り引抜き工程をこの順で含む。
<押出成形工程>
まず、押出成形工程により外素管6を形成し、この外素管6に図4に示す断面形状の内素管7を挿入して複合素管4を得る。
アルミニウム材料からなるビレットを押出成形することにより、外素管6を製造(管押出成形工程)する。押出成形工程により成形された外素管6には、外素管6の長さ方向に直線状に延びる例えば4つのウエルドラインWLが形成される。4つのウエルドラインWLは、例えば外素管6の周方向に沿って等間隔(90°間隔)に配置される。この外素管6に四葉のクローバー型に成形した内素管7を挿入して複合することで、図6に示す複合素管4を得ることができる。
<捻り引抜き工程>
次に、捻り引抜き工程について説明する。
捻り引抜き工程は、引抜きを行いながら上述の複合素管4に捻りを付与することで、ウエルドラインWL、流路素管7Aを螺旋状とするとともに螺旋状の集合組織を形成する工程である。
なお、本明細書において、直線状の流路素管7Aを備えた複合素管4から管式熱交換器10に至る過程において、管式熱交換器10と比較して半分程度の捻りが付与された中間形成品を「中間捻り管」と呼ぶ。更に、本明細書の「管材」とは、複合素管4、中間捻り管および管式熱交換器10の上位概念であり、製造工程の段階を問わず、加工対象となる管を示すことがある。
本明細書において、「前段」および「後段」とは、管材の加工順序に沿った前後関係(すなわち、上流および下流)を意味し、製造装置内の各部位の配置を意味するものではない。管材は管式熱交換器10の製造装置において、前段(上流)側から後段(下流)側に搬送される。前段に配置される部位は、必ずしも前方に配置されるとは限らず、後段に配置される部位は、必ずしも後方に配置されるとは限らない。
<捻り引抜き工程を行う製造装置>
図5は、複合素管4に2回の捻り引抜きを付与して管式熱交換器10を製造する製造装置Aを示す正面図である。まず、製造装置Aについて説明した後に、製造装置Aを用いた捻り工程について説明する。
製造装置Aは、公転機構30と、浮き枠34と、巻き出しボビン(第1のボビン)11と、第1のガイドキャプスタン18と、第1の引抜きダイス1と、第1の公転キャプスタン21と、公転フライヤ23と、第2の公転キャプスタン22と、第2の引抜きダイス2と、第2のガイドキャプスタン61と、巻き取りボビン(第2のボビン)71と、を備える。以下、各部の詳細について説明する。
(公転機構)
公転機構30は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを含む回転シャフト35と、駆動部39と、前方スタンド37Aと、後方スタンド37Bと、を有している。
公転機構30は、回転シャフト35並びに、回転シャフト35に固定された第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および公転フライヤ23を回転させる。
また、公転機構30は、回転シャフト35と同軸上に位置し回転シャフト35に支持される浮き枠34の静止状態を維持する。これにより、浮き枠34に支持された巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1の静止状態を維持する。
前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、ともに内部が中空の円筒形状を有する。前方シャフト35Aと後方シャフト35Bは、ともに公転回転中心軸C(第1引抜ダイスのパスライン)を中心軸とする同軸上に配置されている。前方シャフト35Aは、前方スタンド37Aに軸受36を介し回転自在に支持され、前方スタンド37Aから後方(後方スタンド37B側)に向かって延びている。同様に、後方シャフト35Bは、後方スタンド37Bに軸受を介し回転自在に支持され、後方スタンド37Bから前方(前方スタンド37A側)に向かって延びている。前方シャフト35Aと後方シャフト35Bとの間には、浮き枠34が架け渡されている。
駆動部39は、駆動モータ39cと直動シャフト39fとベルト39a、39d、プーリ39b、39eとを有している。駆動部39は、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bを回転させる。
駆動モータ39cは、直動シャフト39fを回転させる。直動シャフト39fは、前方スタンド37Aおよび後方スタンド37Bの下部において前後方向に延びている。
前方シャフト35Aの前方の端部35Abは、前方スタンド37Aを貫通した先端にプーリ39bが取り付けられている。プーリ39bは、ベルト39aを介し直動シャフト39fと連動する。同様に、後方シャフト35Bの後方の端部35Bbは、後方スタンド37Bを貫通した先端にプーリ39eが取り付けられ、ベルト39dを介し直動シャフト39fと連動する。これにより、前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bは、公転回転中心軸Cを中心に同期回転する。
回転シャフト35(前方シャフト35Aおよび後方シャフト35B)には、第1の公転キャプスタン21、第2の公転キャプスタン22および公転フライヤ23が固定されている。回転シャフト35が回転することで、回転シャフト35に固定されたこれらの部材は、公転回転中心軸Cを中心に公転回転する。
(浮き枠)
浮き枠34は、回転シャフト35の前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの互いに向かい合う端部35Aa、35Baに軸受34aを介し支持されている。また、浮き枠34は、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を支持する。
図6は、図5における矢印IX方向から見た浮き枠34の平面図である。図5、図6に示すように、浮き枠34は、上下に開口する箱形状を有する。浮き枠34は、前後に対向する前方壁34bおよび後方壁34cと、左右に対向するとともに前後方向に延びる一対の支持壁34dと、を有する。
前方壁34bおよび後方壁34cには貫通孔が設けられ、それぞれ前方シャフト35Aおよび後方シャフト35Bの端部35Aa、35Baが挿入されている。端部35Aa、35Baと前方壁34bおよび後方壁34cの貫通孔との間には、軸受34aが介在する。これにより、浮き枠34には、回転シャフト35(前方シャフト35Aおよび後方シャフト35B)の回転が伝達され難い。浮き枠34は、回転シャフト35が回転状態にあっても地面Gに対する静止状態を保つ。なお、公転回転中心軸Cに対し浮き枠34の重心を偏らせる錘を設けて浮き枠34の静止状態を安定させてもよい。
図6に示すように、一対の支持壁34dは、巻き出しボビン11、第1のガイドキャプスタン18および第1の引抜きダイス1を左右方向(図5紙面中の上下方向)両側に配置されている。一対の支持壁34dは、巻き出しボビン11を保持するボビン支持シャフト12および第1のガイドキャプスタン18の回転軸J18を回転可能に支持する。また、支持壁34dは、図示略のダイス支持体を介し第1の引抜きダイス1を支持する。
(巻き出しボビン)
巻き出しボビン11には、複合素管4(図4参照)が巻き付けられている。巻き出しボビン11は、複合素管4を巻き出して後段に供給する。
巻き出しボビン11は、ボビン支持シャフト12に着脱可能に取り付けられている。
図6に示すように、ボビン支持シャフト12は、回転シャフト35と直交する方向に延びている。また、ボビン支持シャフト12は、浮き枠34に自転回転可能に支持されている。なお、ここで自転回転とは、ボビン支持シャフト12自身の中心軸を中心として回転することを意味する。ボビン支持シャフト12は、巻き出しボビン11を保持し、巻き出しボビン11の供給方向に自転回転することで、巻き出しボビン11からの複合素管4の繰り出しを補助する。
巻き出しボビン11は、巻き付けられた複合素管4を全て供給した際に取り外され、他の巻き出しボビンに交換される。取り外された空の巻き出しボビン11は、複合素管4を形成する押出装置に取り付けられ、再び複合素管4が巻き付けられる。巻き出しボビン11は、浮き枠34に支持され公転回転しない。したがって、巻き出しボビン11に複合素管4が乱巻されていても支障なく供給を行うことができ、巻き直しを行うことなく使用できる。また、巻き出しボビン11の重量により製造装置Aにおいて複合素管4に捻りを付与するための公転回転の回転数は制限されない。したがって、巻き出しボビン11に長尺の複合素管4が巻き付けることができる。これにより、長尺の複合素管4に対して、捻りを付与することができ、製造効率を高めることができる。
ボビン支持シャフト12には、ブレーキ部15が設けられている。ブレーキ部15は、浮き枠34に対するボビン支持シャフト12の自転回転に制動力を与える。すなわち、ブレーキ部15は、巻き出しボビン11の巻き出し方向の回転を規制する。ブレーキ部15による制動力により、巻き出し方向に搬送される複合素管4には、後方張力が付加される。ブレーキ部15としては、例えば、制動力としてのトルク調節が可能なパウダーブレーキ又はバンドブレーキを採用できる。
(第1のガイドキャプスタン)
第1のガイドキャプスタン18は、円盤形状を有している。第1のガイドキャプスタン18には、巻き出しボビン11から繰り出された複合素管4が1周巻き掛けられる。第1のガイドキャプスタン18の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第1のガイドキャプスタン18は、複合素管4を第1の方向D1に沿って公転回転中心軸C上に誘導する。
第1のガイドキャプスタン18は、自転回転自在に浮き枠34に支持されている。また第1のガイドキャプスタン18の外周には、自転回転自在のガイドローラ18bが並んで配置されている。本実施形態の第1のガイドキャプスタン18は、自身が自転回転するとともにガイドローラ18bが転動するが、何れか一方が回転すれば、複合素管4をスムーズに搬送できる。なお、図5において、ガイドローラ18bの図示は省略されている。
図5に示すように、第1のガイドキャプスタン18と巻き出しボビン11との間には、管路誘導部18aが設けられている。管路誘導部18aは、例えば複合素管4を囲むように配置された複数のガイドローラである。管路誘導部18aは、巻き出しボビン11から供給される複合素管4を第1のガイドキャプスタン18に誘導する。
なお、第1のガイドキャプスタン18に代えて、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との間にトラバース機能を有する誘導管を設けてもよい。誘導管を設ける場合には、巻き出しボビン11と第1の引抜きダイス1との距離を短くすることができ、工場内のスペースを有効活用できる。
(第1の引抜きダイス)
第1の引抜きダイス1は、複合素管4(管材5)を縮径する。第1の引抜きダイス1は、浮き枠34に固定されている。第1の引抜きダイス1は、第1の方向D1を引抜き方向とする。第1の引抜きダイス1の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。また、第1の方向D1は、公転回転中心軸Cと平行である。
第1の引抜きダイス1には、浮き枠34に固定された潤滑油供給装置9Aにより潤滑油が供給される。これにより第1の引抜きダイス1における引抜力を軽減できる。
第1の引抜きダイス1を通過した管材5は、浮き枠34の前方壁34bに設けられた貫通孔を介して、前方シャフト35Aの内部に導入される。
(第1の公転キャプスタン)
第1の公転キャプスタン21は、円盤形状を有している。第1の公転キャプスタン21は、中空の前方シャフト35Aの内外を径方向に貫通する横孔35Acに配置されている。第1の公転キャプスタン21は、円盤の中心を回転軸J21として、回転シャフト35(前方シャフト35A)の外周部に固定された支持体21aに自転回転が自在な状態で支持されている。
第1の公転キャプスタン21は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。
第1の公転キャプスタン21には、公転回転中心軸C上の第1の方向D1に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第1の公転キャプスタン21は、管材5を巻き掛けて前方シャフト35Aの内部から外部に引き出して公転フライヤ23に誘導する。
第1の公転キャプスタン21は、公転回転中心軸Cの周りを前方シャフト35Aとともに公転回転する。公転回転中心軸Cは、第1の公転キャプスタン21の自転回転の回転軸J21と直交する方向に延びている。管材は、第1の公転キャプスタン21と第1の引抜きダイス1との間で捻りが付与される。これにより、管材は、複合素管4から中間捻り管10Cとなる。
第1の公転キャプスタン21とともに、前方シャフト35Aには駆動モータ20が設けられている。駆動モータ20は、第1の公転キャプスタン21を管材5の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。これにより、第1の公転キャプスタン21は、管材5に第1の引抜きダイス1を通過するための前方張力を付与する。
第1の公転キャプスタン21および駆動モータ20は、前方シャフト35Aの公転回転中心軸Cに重心が位置するように公転回転中心軸Cに対して互いに対称の位置に配置されることが好ましい。これにより、前方シャフト35Aの回転のバランスを安定させることができる。なお、第1の公転キャプスタン21と駆動モータ20の重量差が大きい場合は、錘を設けて重心を安定させてもよい。
(公転フライヤ)
公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で、管材5の管路を反転させる。公転フライヤ23は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1に搬送される管材5を反転させ、搬送方向を第2の引抜きダイス2の引抜き方向である第2の方向D2に向ける。より具体的には、公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22に管材5を誘導する。
公転フライヤ23は、複数のガイドローラ23aとガイドローラ23aを支持するガイドローラ支持体(図示略)とを有する。ここでは、煩雑さを解消するためガイドローラ支持体の図示を省略するが、ガイドローラ支持体は、回転シャフト35に支持されている。ただし、フライヤの構造についてガイドローラは必須ではなく、単に管が通過するための板状の構造で、それに通過させるためのリングを取り付けた形状のものでも良い。このリングは板形状の部材に設けられても良い。このリングの一部はこの板形状の部材の一部で構成されてもよい。板形状の部材はガイドローラ支持体と同様に回転シャフト35に支持されてもよい。
ガイドローラ23aは、公転回転中心軸Cに対し外側に湾曲する弓形状を形成して並んでいる。ガイドローラ23a自身が転動して管材5をスムーズに搬送する。公転フライヤ23は、公転回転中心軸Cを中心として、浮き枠34並びに浮き枠34内に支持された第1の引抜きダイス1および巻き出しボビン11の周りを回転する。
公転フライヤ23の一端は、公転回転中心軸Cに対し第1の公転キャプスタン21の外側に位置している。また、公転フライヤ23の他端は、中空の後方シャフト35Bの内外を径方向に貫通する横孔35Bcを通過して後方シャフト35Bの内部に延びている。公転フライヤ23は、第1の公転キャプスタン21に巻き掛けられて外側に繰り出された管材5を後方シャフト35B側に誘導する。また、公転フライヤ23は、管材5を後方シャフト35Bの内部において、第2の方向D2に沿って公転回転中心軸C上に繰り出す。
なお、本実施形態の公転フライヤ23は、ガイドローラ23aにより管材5を搬送するものであるとして説明した。しかしながら公転フライヤ23を、弓状に形成した帯板から形成して、管材5を帯板の一面を滑動させて搬送してもよい。
また、図5において、管材5がガイドローラ23aの外側を通過する場合を例示した。
しかしながら、公転フライヤ23の回転速度が速い場合には、管材5が遠心力により公転フライヤから脱線するおそれがある。このような場合は、管材5の外側に更にガイドローラ23aを設けることが好ましい。
公転フライヤ23と同等の重量を有し前方シャフト35Aから後方シャフト35Bに延びて公転フライヤ23と同期回転するダミーフライヤを複数設けてもよい。これにより、回転シャフト35の回転を安定させることができる。
(第2の公転キャプスタン)
第2の公転キャプスタン22は、第1の公転キャプスタン21と同様に、円盤形状を有する。第2の公転キャプスタン22は、後方シャフト35Bの端部35Bbの先端に設けられた支持体22aに自転回転が自在な状態で支持されている。また、第2の公転キャプスタン22の外周には、自転回転自在のガイドローラ22cが並んで配置されている。本実施形態の第2の公転キャプスタン22は、自身が自転回転するとともにガイドローラ22cが転動するが、何れか一方が回転すれば、管材5をスムーズに搬送できる。
第2の公転キャプスタン22は、外周の接線の1つが公転回転中心軸Cと略一致する。
第2の公転キャプスタン22には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。第2の公転キャプスタン22は、巻き掛けられた管材を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に繰り出す。
第2の公転キャプスタン22は、公転回転中心軸Cの周りを後方シャフト35Bとともに公転回転する。公転回転中心軸Cは、第2の公転キャプスタン22の自転回転の回転軸J22と直交する方向に延びている。第2の公転キャプスタン22から繰り出された管材5は、第2の引抜きダイス2において縮径される。第2の引抜きダイス2は、地面Gに対し静止しているため、第2の公転キャプスタン22と第2の引抜きダイス2との間で、管材5に捻りを付与できる。これにより、管材5は、中間捻り管10Cから管式熱交換器10となる。
第2の公転キャプスタン22を支持する支持体22aは、公転回転中心軸Cに対し第2の公転キャプスタン22と対称の位置に錘22bを支持する。錘22bは、後方シャフト35Bの回転のバランスを安定させる。
(第2の引抜きダイス)
第2の引抜きダイス2は、第2の公転キャプスタン22の後段に配置される。第2の引抜きダイス2は、反対の第2の方向D2を引抜き方向とする。第2の方向D2は、公転回転中心軸Cと平行な方向である。第2の方向D2は、第1の引抜きダイス1の引抜き方向である第1の方向D1と反対である。管材5は、第2の方向D2に沿って第2の引抜きダイス2を通過する。第2の引抜きダイス2は、第2の引抜きダイス2は、地面Gに対して静止している。第2の引抜きダイス2の中心は、回転シャフト35の公転回転中心軸Cと一致する。
第2の引抜きダイス2は、例えば図示略のダイス支持体を介して架台62に支持されている。また、第2の引抜きダイス2には、架台62に取り付けられた潤滑油供給装置9Bにより潤滑油が供給される。これにより第2の引抜きダイス2における引抜力を軽減できる。
第2の引抜きダイス2における縮径および捻り付与により、管材5は、中間捻り管10Cから管式熱交換器10となる。
(第2のガイドキャプスタン)
第2のガイドキャプスタン61は、円盤形状を有している。第2のガイドキャプスタン61の外周の接線方向は、公転回転中心軸Cと一致する。第2のガイドキャプスタン61には、公転回転中心軸C上の第2の方向D2に搬送される管材5が一周以上、巻き掛けられる。
第2のガイドキャプスタン61は、回転軸J61を中心に架台62に回転可能に支持されている。また、第2のガイドキャプスタン61の回転軸J61は、駆動モータ63と駆動ベルト等を介し接続されている。第2のガイドキャプスタン61は、駆動モータ63により、管式熱交換器10の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動回転する。なお、駆動モータ63は、トルク制御可能なトルクモータを用いることが好ましい。
第2のガイドキャプスタン61が駆動することによって管材5には、前方張力が付与される。これにより管材5は、第2の引抜きダイス2における加工に必要な引抜き応力が付与され前方に搬送される。
(巻き取りボビン)
巻き取りボビン71は、管式熱交換器10の管路の終端に設けられ、管式熱交換器10を回収する。巻き取りボビン71の前段には、誘導部72が設けられている。誘導部72は、トラバース機能を有し管式熱交換器10を巻き取りボビン71に整列巻きさせる。
巻き取りボビン71は、ボビン支持シャフト73に着脱可能に取り付けられている。ボビン支持シャフト73は、架台75に支持され、駆動モータ74に駆動ベルト等を介し接続されている。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により駆動回転され、管材5を弛ませることなく巻き取る。巻き取りボビン71は、管式熱交換器10が十分に巻き付けられた場合に取り外され、他の巻き取りボビン71に付け替えられる。
<捻り引抜き工程>
上述した製造装置Aを用いて、管式熱交換器10を製造する方法について説明する。
まず、予備工程として、複合素管4を巻き出しボビン11にコイル状に巻き付ける。更に、巻き出しボビン11を製造装置Aの浮き枠34にセットする。また、巻き出しボビン11から複合素管4(管材5)を繰り出して、予め複合素管4の管路をセットする。具体的には、管材5を、第1のガイドキャプスタン18、第1の引抜きダイス1、第1の公転キャプスタン21、公転フライヤ23、第2の公転キャプスタン22、第2の引抜きダイス2、第2のガイドキャプスタン61、巻き取りボビン71の順に、通過させて、セットする。
管式熱交換器10の製造工程において、管材の搬送経路に沿って説明する。
まず、巻き出しボビン11から複合素管4(管材5)を順次繰り出していく。
次に、巻き出しボビン11から繰り出された複合素管4を、第1のガイドキャプスタン18に巻き掛ける。第1のガイドキャプスタン18は、複合素管4を公転回転中心軸C上に位置する第1の引抜きダイス1のダイス孔に誘導する(第1の誘導工程)。
次に、素管10Bを第1の引抜きダイス1に通過させる。更に、第1の引抜きダイス1の後段で管材5を第1の公転キャプスタン21に巻き掛けて前記回転軸の周りを回転させる。これにより、素管10Bを縮径するとともに捻りを付与する(第1の捻り引抜き工程)。
第1の捻り引抜き工程において、管材5には第1の公転キャプスタン21を駆動する駆動モータ20により、前方張力が付与される。また、同時に管材5には巻き出しボビン11のブレーキ部15により後方張力が付与される。このため、管材5に適度な張力を付与することが可能となり、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
管材5は、第1の引抜きダイス1に通された後に、公転回転する第1の公転キャプスタン21に巻き掛けられる。管材5は、第1の引抜きダイス1により縮径されるとともに、第1の公転キャプスタン21により捻りを付与される。これにより、管材5の内部の直線状の流路管7Aに捻りが付与され管式熱交換器10が形成される。第1の捻り引抜き工程により複合素管4は、中間捻り管10Cとなる。中間捻り管10Cは、管式熱交換器10の製造工程における中間段階の管材であり、管式熱交換器10の流路管8Aより浅い捻り角の螺旋状の流路管が形成された状態である。
第1の捻り引抜き工程において、管材5(複合素管4)には、捻りが付与されると同時に引抜きダイスによる縮径が行われる。すなわち、管材5は、捻りと縮径との同時加工による複合応力が付与させる。複合応力下においては、捻り加工のみを行う場合と比較して管材5の降伏応力が小さくなり、管材5の座屈応力に達する前に、管材5に大きな捻りを付与できる。これにより、管材5の座屈の発生を抑制しつつ大きな捻りを付与できる。また、この捻り引抜き工程により管材5の管壁の集合組織がある程度発達する。
第1の引抜きダイス1の前段には、第1のガイドキャプスタン18が設けられており管材5の回転が規制されている。すなわち、管材5は、第1の引抜きダイス1の前段で、捻り方向の変形が拘束されている。管材5には、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との間で捻りが付与される。すなわち、第1の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との間に制限される。
加工域の長さと、限界捻り角(座屈を生じないで捻ることができる最大捻り角)の関係には、相関関係があり、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても管材5に座屈が生じにくい。第1のガイドキャプスタン18を設けることで、第1の引抜きダイス1の前段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。また、第1の引抜きダイス1と第1の公転キャプスタン21との距離を近づけることで加工域を短く設定し、座屈を生じさせずに管材5に大きな捻り、例えば10〜45゜の捻りを付与できる。
第1の引抜きダイス1による管材5の縮径率は、2%以上とすることが好ましい。限界捻り角と縮径率の間には相関が認められ、引抜き時の縮径率を大きくするにつれて限界捻り角が大きくなる傾向が認められる。すなわち、縮径率が小さ過ぎる場合は引抜きによる効果が乏しく、大きな捻り角を得ることが難しいので、2%以上とするのが好ましい。なお、同様の理由から縮径率を5%以上とすることがより好ましい。
一方で、縮径率が大きくなり過ぎると加工限界で破断を生じ易くなるので、40%以下とするのが好ましい。
次に、公転フライヤ23に管材5を巻き掛けて、管材5の搬送方向を公転回転中心軸C上の第2の方向D2に向ける。更に、第2の公転キャプスタン22に管材5を巻き掛けて、管材5を第2の引抜きダイス2に導入する(第2の誘導工程)。これにより、管材5の搬送方向は、第1の方向D1から第2の方向D2に反転し、第2の引抜きダイス2の中心に合わせられる。公転フライヤ23は、浮き枠34の周りを公転回転中心軸Cを中心として回転する。なお、第1の公転キャプスタン21、公転フライヤ23および第2の公転キャプスタン22は、公転回転中心軸Cを中心として同期回転する。したがって、第1の公転キャプスタン21から第2の公転キャプスタン22の間で、管材5は相対的に回転せず捻りが付与されない。
次に、第2の公転キャプスタン22とともに回転する管材5を第2の引抜きダイス2に通過させる。これにより、管材5を縮径するとともに捻りを付与し、螺旋状の流路管の捻り角を更に大きくする(第2の捻り引抜き工程)。この第2の捻り引抜き工程により中間捻り管10Cは、管式熱交換器10となる。
第2の捻り引抜き工程において、管材5には第2のガイドキャプスタン61を駆動する駆動モータ63により、前方張力が付与される。駆動モータ63としては、トルク制御可能なトルクモータを用いた場合、第2のガイドキャプスタン61は、管材5に付与する前方張力を調整できる。第2のガイドキャプスタン61により前方張力を調整することで、第2の捻り引抜き工程において管材5に適度な張力を付与することが可能となる。これにより、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
管材5は、公転回転する第2の公転キャプスタン22に巻き掛けられた後に第2の引抜きダイス2を通過する。管材5は、第2の引抜きダイス2により縮径されるとともに、第2の公転キャプスタン22により管材5に捻りを付与される。これにより、管材5の流路管に更に大きな捻りが付与され、流路管の捻り角が大きくなる。第2の捻り引抜き工程により中間捻り管10Cは、管式熱交換器10となる。
第2の引抜きダイス2の前段では、第2の公転キャプスタン22に管材5が巻き掛けられている。第2の引抜きダイス2の後段では、第2のガイドキャプスタン61が設けられ管材5の回転が規制されている。すなわち、管材5は第2の引抜きダイス2の前後で、捻り方向の変形が拘束されており、第2の公転キャプスタン22と第2のガイドキャプスタン61との間で、管材5に捻りと引抜きが付与される。すなわち、第2の捻り引抜き工程において、管材5に捻りが付与される領域(加工域)は、第2の公転キャプスタン22と第2の引抜きダイス2との間に制限される。上述したように、加工域を短くすることで、大きな捻り角を付与しても座屈が生じにくい。第2のガイドキャプスタン61を設けることで、第2の引抜きダイス2の後段で捻りが付与されることがなく、加工域を短く設定できる。
なお、本実施形態において、第2の公転キャプスタン22は、後方スタンド37Bの後方(第2の引抜きダイス2側)に設けられているが、第2の公転キャプスタン22は、前方スタンド37Aと後方スタンド37Bとの間に位置していてもよい。しかしながら、第2の公転キャプスタン22を、後方スタンド37Bに対し後方に配置して第2の引抜きダイス2に近づけることで、第2の捻り引抜き工程における加工域を短くすることができる。これにより、座屈の発生をより効果的に抑制できる。
第2の捻り引抜き工程において、第1の捻り引抜き工程と同様に、捻りと縮径とが行われて、管材5には複合応力が付与させる。これにより、管材5の座屈応力に達する前に、管材に座屈の発生を抑制しつつ大きな捻り、例えば10〜45゜の捻り角を付与できる。
また、第2の捻り引抜き工程により集合組織の発達が進行し、目的の捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が発達する。
第2の引抜きダイス2による管材5の縮径率は、第1の捻り引抜き工程と同様に、2%以上(より好ましくは5%以上)40%以下とすることが好ましい。
なお、第1の引抜きダイス1において、大きな縮径(例えば縮径率30%以上の縮径)を行うと管材5が加工硬化するために、第2の引抜きダイス2での大きな縮径を行うことが困難になる。したがって、第1の引抜きダイス1の縮径率と第2の引抜きダイス2の縮径率との合計は、4%以上50%以下とすることが好ましい。
<空引き工程>
次に、管材5を仕上げ引抜きダイス70に通過させる(仕上げ引抜き工程)。管材5は、仕上げ引抜きダイス70を通過することで、表面が整形されるとともに肉厚の偏肉が低減される。また、管材5に若干のつぶれ等の変形が生じていた場合でも、この仕上げ引抜き工程を経ることにより、その変形も修正して、所定の真円度の管材5とすることができる。なお、仕上げ引抜きダイス70の引抜き荷重に対して管材5を搬送させる力は、巻き取りボビン71に設けられた駆動モータ74により付与される。
また、捻り引抜き工程(第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程)の後段で、空引き工程を行うことで、表面性状および形状が安定した伝熱管を製造できる。空引き工程における管材5の縮径率は、25%以下とすることが好ましい。さらに、第1の引抜き工程、第2の引抜き工程および空引き工程の縮径率の合計は、30%以上とすることが好ましい。
<回収工程>
次に、管材5は、巻き取りボビン71に巻き付けられ回収される。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により、管材5の搬送速度と同期して回転することで、管材5を弛みなく巻き取ることができる。
以上の工程を経て、製造装置Aを用いて、管式熱交換器10を製造することができる。
<O材化工程>
次に、O材化工程について説明する。
O材化工程は、捻り工程の後に行われる。O材化工程は、管材5に焼きなまし処理を施す熱処理工程である。O材化工程を行うことによって、アルミ材料の歪みを除去し、内部応力を除去できる。
次に、管材5は、巻き取りボビン71に巻き付けられ回収される。巻き取りボビン71は、駆動モータ74により、管材5の搬送速度と同期して回転することで、管材5を弛みなく巻き取ることができる。
以上の工程を経て、製造装置Aを用いて、管式熱交換器10を製造できる。
本実施形態の捻り工程によれば押出成形工程において外管9に形成された直線状のウエルドラインWLが螺旋状となる。これにより、内圧の上昇に対して亀裂が生じにくいウエルドラインWLを形成することができる。
また、本実施形態の捻り工程によれば複数回の捻りを繰り返す。これにより、押出成形工程で形成されたウエルドラインWLは、周囲の組織と混ざり合って境界が曖昧となる。これにより、ウエルドラインWLを部分的に消失させて間欠的に形成でき、結果として耐圧性能の高い管式熱交換器10を製造できる。
本実施形態の製造方法によれば、押出加工により成形された複合素管4に捻りと引抜加工を付与した後に熱処理(O材化工程)を行なうことで、押出で複合素管4に生じたウエルドラインWLの拡散接合をより強固にして接合強度を高めることができる。
本実施形態の製造方法によれば、各工程(第1の引抜き工程、第2の引抜き工程および空引き工程)の合計の縮径率が30%以上である。縮径率を30%以上とすることで、大きな捻りを付与できる。また、本実施形態の製造方法によれば、各工程の縮径率は、25%以下である。各工程の縮径率が25%以下であることで、加工硬化を抑制し後工程での縮径をスムーズに行うことができる。
本実施形態の製造方法によれば、流路素管7Aに直接的に捻りと引抜きを付与することで、ウエルドラインWLと螺旋状の流路管8Aを同時に螺旋状且つ間欠的に形成することが可能となる。また、目的の捻り角に依存した傾斜角の集合組織を発達させることができる。
これらにより、ウエルドラインWLを螺旋状に且つ間欠的に形成することによる耐圧性の向上の効果と、螺旋状の流路管8Aによる熱交換率の向上の効果と、を同時に達成する管式熱交換器10を製造できる。また、捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を発達させることができるので、小さな曲率でヘアピン曲げを施してもき裂や破断を生じ難い管式熱交換器10を製造できる。
本実施形態の捻り工程は、上述の工程を経て形成された管式熱交換器10に対して、再び第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程を行い、更に大きな捻り角を付与してもよい。この場合には、上述の工程を経た管式熱交換器10に対して熱処理(焼きなまし)を行い、O材化する。更に巻き出しボビン11に巻き付けて、この巻き出しボビン11を適当な縮径率を有する第1の引抜きダイスおよび第2の引抜きダイスを有する製造装置Aに取り付ける。更に、製造装置Aにより上述の工程と同様の工程(第1の捻り引抜き工程および第2の捻り引抜き工程)を経ることで、更に大きな捻り角を付与した管式熱交換器10を製造できる。
本実施形態の捻り工程によれば、捻りと同時に縮径を行っているため、出発材と最終製品の外径および断面積が異なる。また、管材5に捻りと縮径の複合応力を付与する為に、捻り加工に必要なせん断応力を低減させることが可能となり、管材5の座屈応力に達する前に、管材5に大きな捻りを付与できる。したがって、捻り角θ1の大きな流路管8Aを有するとともに、肉厚が薄い流路管8と外管9を、座屈を生じさせることなく製造することができる。また、捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を発達させた管式熱交換器10であって、ヘアピン曲げに強い管式熱交換器10を製造することができる。
管式熱交換器10は、流路管8Aの捻り角θ1を大きくすることで熱交換効率を高めることができる。また、管式熱交換器10は、肉厚を薄くすることで、軽量化するとともに材料費を低減して安価とすることができる。すなわち、本実施形態によれば、軽量、安価かつ熱交換効率の高い管式熱交換器10を製造できる。
本実施形態の捻り工程によれば、直管状の流路管7Aに対して捻りを付与するとともに、縮径を行うため、座屈発生を抑制しつつ大きな捻り角を付与できる。なお、本実施形態において、最終品である管式熱交換器10の外径に対し、素材となる複合素管4の外径は1.1倍以上である。
本実施形態の捻り工程によれば、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との間で第1の公転キャプスタン21により、管材5に捻りを付与している。更に、第1の引抜きダイス1と第2の引抜きダイス2との引抜き方向が反転している。これにより、第1の捻り引抜き工程と、第2の捻り引抜き工程における、捻り方向を一致させて、管材5に捻りを付与できる。また、管材5の管路の始端である巻き出しボビン11と管路の終端である巻き取りボビン71を公転回転させる必要がない。ラインの速度は、回転速度に依存するため、重量物である巻き出しボビン11又は巻き取りボビン71を回転させない本実施形態の捻り工程では、回転速度を容易に高めることができる。すなわち、本実施形態によれば容易にライン速度を高速化できる。
更に、本実施形態において、巻き出しボビン11を公転回転させることがないため、巻き出しボビン11に長尺の複合素管4(管材5)を巻き付けることができる。このため、本実施形態の捻り工程によれば、巻き出しボビン11を付け替えることがなく、一気通貫で長尺の管材5に捻りを付与することができる。すなわち、本実施形態によれば管式熱交換器10の大量生産が容易となる。
本実施形態の捻り工程は、少なくとも2回の捻り引抜き工程を経て管材5に捻りを付与するものである。このため、各段階の捻り引抜き工程で付与する捻り角を積み上げて大きな捻り角を付与することができる。
本実施形態の捻り工程によれば、第1の捻り引抜き工程および前記第2の捻り引抜き工程において、管材5に前方張力と後方張力が付与される。前方張力は、第2のガイドキャプスタン61により管材5に付与され、後方張力は、巻き出しボビン11を制動するブレーキ部15によって管材5に付与される。これにより、加工対象の管材5に適切な張力を安定して付与することができる。管材5の管路に弛みが無く、管材5が芯ずれせずに引抜きダイスに入るため、管材5に座屈・破断を生じさせることなく安定した捻り角を付与できる。
本実施形態に係る第1の引抜きダイス1および第2の引抜きダイス2において、ダイス孔の中心は、公転回転中心軸C上に位置している。これにより、ダイス孔を通過する管材5をダイス孔に対して直線的に配置できるため、管材5を均一に縮径して、捻り付与時の座屈を抑制できる。なお、第1の引抜きダイス1および第2の引抜きダイス2において、管材5が正常に縮径できる範囲であれば、公転回転中心軸Cに対するダイス孔の位置ズレは許容される。
なお、本実施形態においては、巻き出しボビン11が浮き枠34に支持され、巻き取りボビン71が地面Gに設置されているものとして説明した。しかしながら、巻き出しボビン11と巻き取りボビン71のうち何れが浮き枠34に支持されていてもよい。すなわち、図7において、巻き出しボビン11と巻き取りボビン71とを入れ替えて配置してもよい。この場合には、管材5の搬送経路が反転する。また、第1の引抜きダイス1および第2の引抜きダイス2が入れ替えて配置されるとともに、搬送方向に沿ってそれぞれの引抜きダイス1、2の引抜き方向を反転させて配置する。更に、引抜きダイス1、2の前後に位置するキャプスタンにおいて、引抜きダイスの後段に位置するキャプスタンを管材の巻き掛け方向(搬送方向)に駆動させ、引抜きダイスにおける引抜力に抗する前方張力を与える。
以上の説明の工程により、図1〜図3に示す構成の管式熱交換器10を製造することができる。
図7は本発明に係る第2実施形態の管式熱交換器を示すもので、この第2実施形態の管式熱交換器50は、外管51と内管52を備え、内管52の周方向に所定の間隔で放射状に複数の隔壁53が形成され、これら隔壁53は外管51と内管52に一体的に接続してこれらの菅の長さ方向に螺旋状に延在されている。
これらの隔壁53が螺旋状に延在されることで内管52の外側に外管51と内管52と隔壁53に区画された複数の捻り流路(第1の流路)54が形成されている。また、内管52の内部には第2の流路55が形成されている。
内管52の外側に形成されている隔壁53は、内管52の長さ方向に沿って所定の捻り角と螺旋ピッチで螺旋状に形成されているので、第1実施形態の管式熱交換器10と同様に内管52の周囲を囲むように所定の螺旋ピッチと捻り角で螺旋状に複数の捻り流路54が形成されている。
これら捻り流路54の捻り角は先に説明した第1実施形態の流路管8における捻り角θ1と同等の捻り角に形成され、螺旋ピッチも先に説明した第1実施形態の流路管8における螺旋ピッチp1と同等の螺旋ピッチに形成されている。
また、本実施形態において、内管52の周囲に6個の捻り流路54が形成されるとともに、内管52の直径は外管51の直径の半分程度に形成され、外管51の径方向に沿う捻り流路54の高さは内管52の半径程度に形成されている。
第2実施形態の管式熱交換器50も先の第1実施形態の管式熱交換器10と同等のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。また、外管51の周壁に先の第1実施形態と同等の螺旋状のウエルドラインが形成され、外管51の周壁に先の実施形態と同様に集合組織が形成されている。
第2実施形態の管式熱交換器50は、外管と内管の間にこれら管の長さ方向に沿って帯板状に延在し、螺旋状ではない隔壁を有する複合素管を押出加工で製造し、この複合素管を図5、図6に示す製造装置Aで捻り加工することで製造することができる。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様にウエルドラインが螺旋状かつ間欠的に形成されているため、ウエルドラインに沿う外管51の強度を高めることができ、耐圧性の高い管式熱交換器50を提供できる。また、第1実施形態と同様に外管51の周壁に捻り角に対応する傾斜を有する集合組織が形成されている。
管式熱交換器50の内部に長さ方向に沿って螺旋状に形成された複数の第1の流路54を設けているので、管式熱交換器50の内部を流れる冷媒との熱交換効率を高めることができる。
また、第1の流路54と第2の流路55を冷媒の流通路として用いることができ、これらの一方を往路として、他方を復路として適用することもできる。
第2実施形態の管式熱交換器50においても先に説明した管式熱交換器10と同等の効果を得ることができる。
以上説明した如く本発明の管式熱交換器は、図1〜図3、図7に例示した如く種々の形状を採用することができる。また、本発明において、捻り流路も2層に限らず、外管の内側に3層以上の多層構造としても良い。
例えば、外管の内側に3層以上の多層となるように粒径の小さな流路管を複数収容した複合素管を用いて製造装置Aにより捻り加工を施すことで3層以上の多層の捻り流路を設けた管式熱交換器を製造することができる。
図8は先に説明した管式熱交換器10、50のいずれかを伝熱管65として用いた熱交換器の一例を示すもので、この例の熱交換器66は、放熱板としてのフィン67を所定の間隔で複数並列配置し、各フィン67に形成されている挿通孔にU字状に折曲した伝熱管65を挿通することで構成されている。
伝熱管65は例えば直管部65Aで複数のフィン67の挿通孔を通過するように配置され、直管部65Aの開口端どうしを更にエルボ管65Bで接合することで蛇行状の伝熱管65を構成することができる。伝熱管65においてその一端側が導入部65cとされ、その他端側が導出部65dとされ、導入部65cから冷媒または熱媒が導入され、導出部65dから冷媒または熱媒が導出される。
フィン67は一例としてアルミニウムまたはアルミニウム合金板からなり、その一部にバーリング加工などを施して挿通孔が形成されており、挿通孔の開口内周縁部分にフランジ部が形成されている。
図8に示す構造の熱交換器66において管式熱交換器10、50のいずれかを適用することで熱交換効率の高い熱交換器66を提供できる。
また、管式熱交換器10、50の外周面に犠牲陽極層が形成されているならば、熱交換器66が腐食環境に設置された場合、電位の卑な犠牲陽極層が優先的に腐食される。この結果、腐食生成物が管式熱交換器10、50の表面に生成し、この腐食生成物は管式熱交換器10、50がフィン67のフランジ部を通過する部分にも生成する。
この結果、管式熱交換器10がフランジ部を通過した部分の隙間を前記腐食生成物で埋めることができ、これによって熱交換器66の外部からフィン67の内側に前記隙間を介し侵入しようとする雨水などの侵入を防止できる。
並列されたフィン67の間に雨水などが浸入して水滴を構成し、フィン間の隙間を水滴が閉塞すると、フィン67に送風した場合の送風抵抗が増大し、熱交換器66の熱交換効率が低下する。このため、管式熱交換器10、50の外周面に形成した犠牲陽極層は熱交換器66の耐食性を高めるとともに、熱交換器66の効率低下も抑制する。
「第2の製造装置」
図10〜図12は管式熱交換器10を製造するために用いる第2の製造装置Bを示すもので、図10は製造装置Bの要部のみを簡略的に示し、図11は製造装置Bの全体構造の側面を示し、図12は製造装置Bの全体構造の平面を示す。
この製造装置Bは、図4に示す複合素管4を図10、図11に示すようにコイル状に巻き取った状態に保持する巻き出し側キャプスタン80と、この巻き出し側キャプスタン80から巻き出される複合素管4を巻き出し側キャプスタン80とともに回転する回転手段81を備えている。また、製造装置Bは、巻き出し側キャプスタン80から送り出された複合素管4を通す引抜きダイス82と、引抜きダイス82を通って捻り加工と引抜き加工がなされた管式熱交換器10を巻き付けながら送り出す引抜き側キャプスタン83を備えている。
巻き出し側キャプスタン80は、図11に示すように離間して前後に立設された鋼材からなる支柱部材85、86の上端部に取り付けられた軸受け部87に軸回りに回転自在に水平に支持された中空軸部88に支持されている。なお、この中空軸部88の長さ方向の延長線に沿って巻き出し側キャプスタン80とダイス82と引き抜き側キャプスタン83が順次配置され、複合素管4が中空軸部88、巻き出し側キャプスタン80、引抜きダイス82、引き抜き側キャプスタン83の順に移動されて加工される。このため、以下の説明において複合素管4の移動方向に沿って上流側を前段側、下流側を後段側と適宜呼称しつつ説明する。
中空軸部88は支柱部材85の上端部と支柱部材86の上端部にそれぞれ設けられている軸受け部材85a、86aに支持されて水平に設けられ、その一端88aを支柱部材85の上端部から上流側外部に突出させ、その他端88bを支柱部材86の上端部から下流側外部に突出させて水平に、かつ、軸回りに回転自在に支持されている。中空軸部88の他端側に中空軸部88に対し斜め方向に隣接して延在する一対の第1支持フレーム90が設けられ、それらの先端側に第1支持フレーム90、90に挟まれるように巻き出し側キャプスタン80が支持されている。
中空軸部88の他端側には中空軸部88に対し斜め方向に延在するように第2支持フレーム91が設けられ、第2支持フレーム91の先端側に延設された延長フレーム92に錘体93が取り付けられている。第1支持フレーム90と第2支持フレーム91は中空軸部88の他端88bに対しV字型に配置されるように接続され、中空軸部88の軸回りの回転によって第1支持フレーム90と第2支持フレーム92はV字型に支持されたまま回転される。
巻き出し側キャプスタン80の円盤部80aはその中心部から若干ずれた位置を第1支持フレーム90、90の先端部90aによって支持されている。また、中空軸部88の中心軸の延長線を巻き出し側キャプスタン80の外周縁の接線と近似するように巻き出し側キャプスタン80が第1支持フレーム90によって支持されている。このため、中空軸部88の回転に伴い巻き出し側キャプスタン80が旋回すると、中空軸部88の中心軸の延長線の周囲を周回するように巻き出し側キャプスタン80が回転する。また、同様に中空軸部88の回転に伴い錘体93も中空軸部88の中心軸の延長線の周囲を周回するように回転する。
巻き出し側キャプスタン80において、円盤部80aの外周縁に沿って複合素管4を巻き付けることができるように構成されている。
例えば、図10に示すように巻き出し側キャプスタン80が最も下方位置になるように中空軸部88を回転させた場合、巻き出し側キャプスタン80の最上部の若干上方を中空軸部88の中心軸の延長線が通過する。あるいは、巻き出し側キャプスタン80が最も上方位置になるように中空軸部88を回転させた場合、巻き出し側キャプスタン80の最下部の若干下方を中心軸部88の中心軸部の延長線が通過する。
中空軸部88の一端88a側の開口部には複合素管4を挿入可能な大きさの入口部88cが形成され、中空軸部88の他端88b側の開口部には先の複合素管4を引き出し可能な出口部88dが形成されている。
このため、中空軸部88の内部を通過させた複合素管4を巻き出し側キャプスタン80の外周の接線に沿うように導入して巻き出し側キャプスタン80の外周に巻き掛けることができるとともに、巻き出し側キャプスタン80の外周に例えば1周分巻き付けた複合素管4を巻き出し側キャプスタン80の外周から巻き出して引抜きダイス82側に導出することができる。
この巻き出し側キャプスタン80に対する複合素管4の巻き付け状態と巻き出し状態の一例を図13に簡略的に示しておく。図13においてC0は巻き出し側キャプスタン80に巻き付けられる前段側の複合素管4の軸心を示し、C1は巻き出し側キャプスタン80から巻き出された複合素管4の軸心を示している。
中空軸部88の他端側にはV字型に第1のフレーム90と第2のフレーム91が延出され、それらの先端側に巻き出し側キャプスタン80と錘体93が取り付けられているが、錘体93と巻き出し側キャプスタン80の重量および取付位置は、それらが回転した場合に、重量バランスの均衡がとれる位置とされている。即ち、中空軸部88の回転により錘体93と巻き出し側キャプスタン80が旋回した場合、両者の回転モーメントのバランスが均衡し、両者の回転に伴う振動が可能な限り小さくなるように巻き出し側キャプスタン80と錘体93のそれぞれの重量と取付位置が調整されている。
支柱部材85の上部と支柱部材86の上部の間に支持板95が架設され、支持板95に駆動モーター96が取り付けられ、駆動モーター96の出力軸96aに無端ベルトなどの動力伝達装置97が接続されている。この動力伝達装置97はその上方に位置する中空軸部88の一端側に接続されていて、駆動モーター96の出力軸96aの回転により中空軸部88を回転駆動することができる。
この駆動モーター96と動力伝達装置97と中空軸部88により巻き出し側キャプスタン80と錘体93を一体に回転させる構成であり、駆動モーター76と動力伝達装置77と中空軸部88により、巻き出し側キャプスタン80を回転駆動する回転手段81が構成されている。
中空軸部88の出口部88dに対し下流側に巻き出し側キャプスタン80が設けられているが、その更に下流側に引抜きダイス82が支柱部材98に支持されて設けられている。引抜きダイス82の設置位置は、図11に示すように中空軸部88の出口部88dと同等高さにダイス孔が望む位置とされ、中空軸部88の出口部88dと引抜きダイス82との中間位置に巻き出し側キャプスタン80の外周縁が望ませられている。引抜きダイス82はこの例では支柱部材98の上端部に中空の支持架台99を介し取り付けられている。また、支持架台99の上方には引抜きダイス82のダイス孔に潤滑油を供給するためのタンク100とフレキシブル供給管101が設置されている。
引抜きダイス82は、複合素管4を挿通させるダイス孔を有しており、複合素管4の外径を減少させる空引きを行う。引抜きダイス82における縮径率はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる複合素管4の場合、5〜40%程度に設定される。縮径率が小さ過ぎる場合は引抜きによる効果が乏しく、大きな捻り角を得ることが難しいので、5%以上とするのが好ましい。一方、縮径率が大きくなり過ぎると加工限界で複合素管4に破断を生じ易くなるので、40%以下とするのが好ましい。
また、複合素管4がダイス孔を通過する際、巻き出し側キャプスタン80が回転されるので、複合素管4は引抜きダイス82のダイス孔によって縮径されると同時に捻りが付与される。このため、複合素管4は捻りが付加されて図1〜図3に示す管式熱交換器10に加工される。
引抜きダイス82の下流側に支柱部材98に支持されて引抜き側キャプスタン83が設けられ、引き抜き側キャプスタン83は支柱部材98に支持された水平軸105を介し鉛直向きに設置され、回転自在に支持されている。引き抜き側キャプスタン83の最上部は引抜きダイス82のダイス孔の位置と同等高さに設置され、その外周面に沿って引抜きダイス82で加工された管式熱交換器が巻き付けられるようになっている。
支柱部材98において引き抜き側キャプスタン83を取り付けた側と反対側に回転駆動用の駆動モーター106の出力軸106aが水平軸105に直接連結するように設置され、駆動モーター106によって引き抜き側キャプスタン83を回転駆動できる。
「第2の製造装置による製造方法」
次に、以上説明のように構成された製造装置Bを用いて、管式熱交換器10を製造する方法の一例について説明する。
予め、図4に示す複合素管4を用意する(複合素管準備工程)。
図10〜図12に示す製造装置Bに対し複合素管4を供給するには、複合素管4の先端側を中空軸部88の入口部88cから中空軸部88に挿通し、中空軸部88の出口部88dから複合素管4を引き出し、巻き出し側キャプスタン80の外周に沿って図11に示すように1周分巻き付ける。この複合素管4を巻き出し側キャプスタン80から接線方向に水平に巻き出して引抜きダイス82のダイス孔に挿通し、引抜きダイス82のダイス孔を通過させた複合素管4を引き抜き側キャプスタン83に1周分以上巻き付け、引き抜き側キャプスタン83の下流側にまで複合素管4を引き出す。これらの操作は管式熱交換器10の製造開始前の準備段階の作業となる。
この準備作業の後、複合素管4の先端側と後端側に図12に示すようにそれぞれ筒型の拘束具108を被せ、拘束具108の周壁に複数形成されているねじ孔に蝶ネジ108aを螺合して複合素管4の先端側と後端側を拘束する。次に、図12に示すように複合素管4の先端側の拘束具108に張力調整用のコイルバネを備えたバネばかり型の張力調整具109を接続し、複合素管の後端側の拘束具108に張力調整用のコイルバネを備えたばねばかり型の張力調整具110を接続する。
この状態から複合素管4の加工を開始する。加工開始とともに順次、複合素管4を一定の速度で移動させて中空軸部88を通過させ、巻き出し側キャプスタン80に巻き付ける(巻き出し工程)。複合素管4を引抜きダイス7に通すための引抜き力は駆動モーター25により回転させる引き抜き側キャプスタン83の回転力により与えられる。
巻き出し側キャプスタン80から巻き出した複合素管4に引抜きダイス82を通過させて引き抜き側キャプスタン83に巻き付け、引き抜き側キャプスタン83から一定の速度で巻き出す。これらの動作を開始すると同時に中空軸部88を駆動モーター96により所定速度で回転させ、巻き出し側キャプスタン80と錘体93を回転駆動する(捻り引抜き工程)。
また、張力調整具109、110の張力を監視しながら、複合素管4が巻き出し側キャプスタン80に巻き付けられる場合の後方張力を一定になるように調整する。
更に、引き抜き側キャプスタン80から複合素管4が引き出される場合の前方張力を一定になるように調整する。
前方張力の安定的な付加のためには、張力調整具109の下流側に巻き取りローラーやウインチ装置などの引張り装置を配置し、一定の速度で張力調整具109を牽引できるように調整することが好ましい。また、後方張力の安定的な付加のためには、張力調整具110の上流側に巻き出しローラーなどの巻き出し装置を配置し、一定の速度で張力調整具110を繰り出しできるように調整することが好ましい。
あるいは、張力調整具109、110を略してこれらの位置に巻き出し用のローラーと巻取用のローラーを配置し、これらのローラーにブレーキ機構や速度調整機構を内蔵し、引抜きダイス82より下流側の複合素管4の先端側に所望の前方張力を印加し、引抜きダイス82より上流側の複合素管4の後端側に所望の後方張力を印加できるように構成することが大量生産を行う上では好ましい。
引抜きダイス82を中心として下流側の複合素管4に適切な後方張力を印加しつつ上流側の複合素管4に適切な後方張力を印加しながら巻き出し側キャプスタン80から引抜きダイス82のダイス孔に複合素管Fを通過させると同時に、巻き出し側キャプスタン80を回転させることで引抜きダイスのダイス孔を通過する複合素管4に引抜き力と捻り力を同時に作用させる。
通常、3〜15mm程度、例えば、3〜10mm程度などの外径のアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる肉薄の素管に対し、捻り力のみを作用させると容易に座屈するか破断する。この製造装置Bでは捻り力の作用と同時に引抜き力を作用させて捻り力による破断を抑制しながら引き抜くので、上述のサイズの細径のアルミニウム又はアルミニウム合金製の複合素管4であっても、破断させることなく捻り力を付加できる。
引抜きダイス82を中心として下流側の複合素管4に適切な後方張力を印加しつつ上流側の複合素管4に適切な後方張力を印加しながら巻き出し側キャプスタン80から引抜きダイス82のダイス孔に複合素管4を通過させると同時に、巻き出し側キャプスタン80を回転させることで引抜きダイスのダイス孔を通過する複合素管4に引抜き力と捻り力を同時に作用させる。
通常、3〜15mm程度、例えば、3〜10mm程度などの外径のアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる肉薄の素管に対し、捻り力のみを作用させると容易に座屈するか破断する。この製造装置Bでは、捻り力の作用と同時に引抜き力を作用させて捻り力による破断を抑制しながら引き抜くので、上述のサイズの細径のアルミニウム又はアルミニウム合金製の複合素管4であっても、破断させることなく捻り力を付加できる。
図10は図11に示す製造装置Bのうち、引抜きダイス82の前後に設けられている巻出し側キャプスタン80と引抜き側キャプスタン83を主体として複合素管4との相対関係を主体に描いた図である。
図8に示すように巻き出し側キャプスタン80の頂上位置と引抜きダイス82の出口部分との間の長さLの領域が複合素管4の捻り加工領域とされる。製造装置Bにあってはこの捻り加工領域の長さLを極力短くしているので、大きな捻り角を複合素管4に与えても、複合素管4に破断を生じることなく5゜〜40゜程度までの捻りを付与することができる。
複合素管4は巻き出し側キャプスタン80に1周分巻き付けられることにより、図13に示すように巻き始め側の軸心C0から巻き出し側キャプスタン80の外周に沿って若干ずれた軸心C1に沿って送り出される。
引抜きダイス82のダイス孔を複合素管4が通過する場合、複合素管4の中心とダイス孔の中心の位置合わせを行い、複合素管4に余計な応力が作用しないようにするためには、巻き出し側キャプスタン80から巻き出された側の軸心C1を回転中心として軸心C1の周回りに巻き出し側キャプスタン80が回転するように、中空軸部88の位置関係と第1支持フレーム90の位置関係と巻き出し側キャプスタン80の位置関係を合わせることが好ましい。
複合素管4の中心とダイス孔の中心の位置合わせを行っていることにより、ダイス孔を通過する複合素管4に大きな捻り力を付加し、捻り角の大きな加工を施しても複合素管4を破断させることなく捻り加工できる。
なお、巻き出し側キャプスタン80を回転させるための回転中心は中空軸部88の軸心と一致するが、この軸心は引抜きダイス82のダイス孔の中心と位置合わせされ、この軸心に沿って複合素管4の中心が移動する必要がある。このため、巻き出し側キャプスタン80に巻き掛けられる前の複合素管4は前記軸心から若干ずれた位置にあって回転する。このため、巻き出し側キャプスタン80に巻き付けられる前の複合素管4は中空軸部88の内部において偏心回転することとなるが、中空軸部88の内径はこの偏心回転を吸収するだけの値に設定されているので、複合素管4の回転に支障はない。
以上説明した捻り引抜き加工を行うことで引抜きダイス82を通過する複合素管4に大きな捻り力を付与することができる結果、複合素管4を螺旋状に捻り、捻り流路10a、10b、10dを有する図2に示す管式熱交換器10を製造することができる。
なお、先に説明した製造装置Aを用いて捻り引抜き加工を施す場合と同様に2回に分けて捻り引抜き加工を施すには製造装置Bに複合素管4を2回通して捻り引抜き加工を施すと良い。その場合、1回目の捻り引抜き加工で用いる引抜きダイスのダイス孔のサイズと縮径率、2回目の捻り引抜き加工で用いる引抜きダイスのダイス孔のサイズと縮径率を適宜変更し、2回の捻り引抜き工程で最終的に得るべき捻り角になるように調整することが好ましい。
ここまで、図4に示す構造の複合素管4を用い、製造装置A、Bを適宜用いて図1、図2あるいは図7に示す螺旋構造の流路を備えた管式熱交換器10、50を製造できることについて先に説明した。
しかし、複合素管4を用いて捻り引抜き加工を施す場合、本願出願人が先に特許出願している特開2016−22505号公報の図1に記載の製造装置を用いて捻り引抜き加工を施しても良い。
この製造装置は、複合素管をコイル状に保持したドラムから巻き出して巻き出し側キャプスタンに巻き付けつつ、ドラム及び巻き出し側キャプスタンをドラムの巻軸と直交する軸心に沿って回転させることができる装置である。そして、巻き出し側キャプスタンから複合素管を軸心回りに回転させながら巻き出す素管送り出し工程と、巻き出された複合素管を引抜きダイスに通して縮径しながら引抜いた後に引抜き側キャプスタンに巻き付けることができる装置である。
この特開2016−22505号公報に記載されている製造装置を用いて先の実施形態に記載した複合素管4に捻り引抜き加工を施すことで、図1、図2に示す構造の管式熱交換器10あるいは図7に示す構造の管式熱交換器50を製造しても良い。
上述の実施形態に記載の製造装置Aを用いた製造方法に従い、図16の断面写真に示す複合素管を用いて図14、図15に示す構造の多重捻り管型の管式熱交換器を製造した。
用いた複合素管は、AA3003合金からなり、外径10mm、肉厚0.5mmであり、得られた管式熱交換器の外径8.4mm、捻り角25゜である。
なお、図15は管式熱交換器の外管の一部を剥離してその内部の流路管に付与された捻り角と螺旋ピッチの側面を露出させた写真である。
図14、図15に示すように捻りを加えた多重捻り管型の管式熱交換器を製造できることがわかった。
前記製造方法と同等の製造方法に従いAA3003合金からなり、外径8mm、肉厚0.5mmの複合素管を用いて多重捻り管型の管式熱交換器試料を製造した。
各試料は、外径とダイスマークの捻り角およびダイスマークの最大深さを計測し、ヘアピン曲げ試験の結果を後記する表1に併記した。なお、このヘアピン曲げ試験は管式熱交換器の曲げ加工性評価のための一種の加速テストとして行っている。
(ヘアピン曲げに対する強度測定)
各試料の伝熱管を曲率半径(R=20)でヘアピン状に180°曲げる曲げ加工を行った。各条件n=20で評価し、1つでも伝熱管の外周面に亀裂が観察されたものを×とし、亀裂が観察されなかったものを〇とした。評価結果を表1にまとめた。
また、ダイスマーク深さ計測方法について説明する。
ダイスマーク深さ計測は、例えば、株式会社キーエンス製走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)を用いて表面形状の測定を行うことができる。また、計測解析では、解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いてダイスマーク深さを計測できる。
まず、走査型レーザー顕微鏡(VK−X100/X200)のステージに試料を置き、観察倍率50倍のもと、フォーカスを合わせた後に、観察高さ上下限範囲100μmとして、0.5μmピッチで表面形状の測定を行った。
次に解析アプリケーション(VK−H1XA)を用いて得られた画像上のダイスマーク深さを計測する。計測前の前処理として、管表面の円弧を平坦にする傾き補正を行った。前処理を行った表面形状から、管円周方向に平行になるように直線を3点引き、得られた粗さ曲線から、最大谷深さ(Rv)、最大高さ(Rz)を求め、ダイスマーク深さの計測では、最大断面高さ(Rt)として計測を行った。
解析アプリケーションでは「表面粗さの定義」(JISB0601:2001)に基づいて、JISB0601−2001およびJIS 0601−1994で定義されている粗さパラメータで表面粗さ解析を実施した。
Figure 0006925170
表1に示す結果から、十分な捻り角で捻りを付与した管式熱交換器において、ヘアピン曲げ加工で破損が生じにくくなることが確認された。
次に、前記製造方法と同等の製造方法に従いAA3003合金からなり、外径8mm、肉厚0.5mmの複合素管を用いて多重捻り管型の管式熱交換器試料を製造した。
この際、ウエルドラインリード角(捻り角)を1.0°〜21.0°まで変量させた複数の管式熱交換器を作製し、それぞれについて曲率半径(R=20)でヘアピン状に180°曲げる曲げ加工試験を行った。各条件n=20で評価し、1つでも管式熱交換器の外周面に亀裂が観察されたものを×とし、亀裂が観察されなかったものを〇とした。なお、このヘアピン曲げ試験は管式熱交換器の曲げ加工性評価のための一種の加速テストとして行っている。
ウエルドラインの捻り角の測定は、各管式熱交換器試料を8%濃度硝酸に1分間浸漬し、エッチング後の白筋模様をウエルドラインと判定し、捻り角を計測した。それらの結果を以下の表2に示す。
Figure 0006925170
表2の結果から、前述の構成の製造装置Aを用い、図16に示すような断面構造の複合素管を用いて図14、図15に示す捻り流路を備えた管式熱交換器を製造できることがわかった。
また、ヘアピン曲げ試験結果からウエルドラインの捻り角(リード角)は10゜以上が望ましいことも分かった。
「集合組織の解析」
表1の最初のサンプル(ダイスマークリード角25゜の試料)から一部を切り出し、管壁を切り開いてプレス装置で軽く圧を加えて平板状の試料(40mmL×29mmW×0.5mmt)に加工した上で、この試料の外表面(管壁の外表面)に対しX線反射法を用いて(200)、(220)、(111)不完全極点図を測定した。
X線反射法におけるX線回折条件として、Cu管球、40kV−40mAを用い、α角度:20〜90゜(Step:5.0゜)の条件で求めることができ、測定面として、引抜き方向をRD、走査方向をTD、管の半径方向をNDと規定する。
図19はこのサンプルの(200)不完全極点図、図20は(220)不完全極点図、図21は(111)不完全極点図を示す。
これら極点図に対しそれらのRD−TD方向に捻り角に対応する30゜の補正(捻り角と同じ傾きの補正)を加えた極点図を図22、図23、図24にそれぞれ示す。
また、これら実施例試料に対し、製造装置Aを第1の引抜きダイスと第2の引抜きダイスを通過する場合に捻りを略し、引抜きのみを施して得たサンプルNo.4(引抜き管)の(200)極点図、(220)極点図、(111)極点図を図25、図26、図27に示す。
図19〜図21に示す極点図では主な特徴を確認できないが、30゜補正後の図22〜図24に示す極点図は図25〜図27に示す引抜き管の極点図に類似したパターンを示すことがわかる。例えば、(200)極点図どうしの比較では、RD中心線とTD中心線の交点を中心とするTD両側とRD両側にそれぞれ集積点がある。(220)極点図どうしの比較ではRD中心線上に峰と集積点がありTD中心線に沿って左右に高密度点があり、TD中心線、RD中心線に対し45゜方向に集積点がある。(111)極点図どうしの比較では、RD中心線に沿って上下に高密度点があり、TD中心線、RD中心線に対し45゜方向に峰続きが存在する。
30゜補正後の極点図の特徴が管式熱交換器の極点図の特徴と近似することから、管式熱交換器の集合組織の結晶方位は引抜き管に比べ、その引抜き方向に30゜の捻れを生じていることがわかった。
次に、解析ソフト(Standard ODF)を用いて、Bunge法により解析し、結晶方位分布関数(ODF:Orientation Distribution Function)を求めた。
図19〜図21に示すサンプルの不完全極点図から求めた管式熱交換器の結晶方位分布関数を図28に示し、図22〜図24に示す30゜補正後のサンプルの不完全極点図から求めた管式熱交換器の結晶方位分布関数を図29に示し、図25〜図27に示す引抜き管の不完全極点図から求めた管式熱交換器の結晶方位分布関数を図30に示す。
図28〜図30の対比から、図28に示す管式熱交換器の結晶方位分布関数では、図29に示すように極点図同様に30゜の補正を加えることで、図30に示す引抜き管の結晶方位分布関数と同様の結晶方位図を得ることができた。
これらサンプルの集合組織について面心立方晶に観察される代表的な優先方位の位置から、引抜き管(図30)、管式熱交換器(図28、図29)ともに圧延集合組織であるCu方位{112}<111>の集積を認めることができた。
次に、これらのサンプルにおいて、Goss方位{011}<100>の集積が認められた。
また、図28、図29に示すこれらの集積の度合いからみて、図30に示す引抜き管に比べて管式熱交換器の方が弱い傾向を示していることがわかる。
これらの分析から、管式熱交換器の集合組織は、Cu方位、Goss方位が優先的に配向した集合組織を示していることがわかり、集合組織の方位は、RD(引抜き方位)に対し、RD−TD方向に捻り角に依存した30゜の傾きを有した集合組織であると判断できる。
このことは、第1の引抜きダイスと第2の引抜きダイスを用いた2回の捻り引抜き加工により素管の管壁に優先方向を有する集合組織であって、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を管式熱交換器の捻り角30゜に依存した傾斜をもつように生成できたことを意味する。
また、表2に示すヘアピン曲げ評価において、ウエルドラインのリード角16゜、21゜の試料が、ウエルドラインのリード角1〜5゜の比較例よりもヘアピン曲げ評価の面で優れていることもわかった。
このことは、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を管式熱交換器の捻り角に依存した大きな角度傾斜をもつように生成することでヘアピン曲げ時の強度も向上できることを意味している。
このため、本発明の管式熱交換器であるならば、ヘアピン曲げ強度と耐食性に優れた伝熱管を提供でき、熱交換器に伝熱管として利用した場合にヘアピン曲げを施してもき裂や破断し難い伝熱管を提供できることがわかった。
管式熱交換器のCu方位集積度とGoss方位集積度が、直線溝付管の引抜き管のCu方位集積度とGoss方位の集積度よりも低くなり、集合組織の集積度合いが低いと言うことは、引抜き管の組織に比べ、管式熱交換器の組織の異方性を緩和できていることと同義となり、このためへピン曲げなどの加工による破断を抑制できたと考えられる。
従来から、アルミニウム合金の押出材、伸線材は長手方向に延ばされた繊維状集合組織が形成されやすいとされ、その場合、<111>方位または<100>方位を有する結晶面が優先配向されやすいと言われている。この現象は、捻りと引抜きを同時に加えて製造する管式熱交換器において、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を管式熱交換器の捻り角に依存した傾斜をもつように生成できるという今回の結果と合っている。降伏条件一定のもと、管式熱交換器の製造では引抜きと捻りを同時に付加しているので、一方向への力の作用を緩和、分散することができ、必要以上に強い集合組織の形成を抑制できていると思われる。
そのため、管式熱交換器の組織の異方性を低減でき、限界引抜き量を向上させた結果、高い捻り角の流路管を形成できると同時に、Cu方位{112}<111>とGoss方位{011}<100>を集積した集合組織を管式熱交換器の捻り角に依存した傾斜をもつように生成できると推定できる。
以上、本願発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本願発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本願発明は実施形態によって限定されることはない。
本発明によりアルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属製であって内部に螺旋状の流路を備えた管式熱交換器を提供できるようになる。その結果として、熱交換器の低コスト化、軽量化、高性能化等をもたらす。
A、B…製造装置、1…第1の引抜きダイス、2…第2の引抜きダイス、4…複合素管、8…内管、8A…流路管、9…外管、9a…外周面、10…管式熱交換器(多重捻り管)、10a…第1の流路(捻り流路)、10b…第2の流路(捻り流路)、11…巻き出しボビン、21…第1の公転キャプスタン、22…第2の公転キャプスタン、23…公転フライヤ、30…公転機構、34…浮き枠、35…回転シャフト、65…伝熱管、66…熱交換器、67…放熱板、71…巻取りボビン、θ1…流路管の捻り角、θ2…ウエルドラインの捻り角、WL…ウエルドライン、80…巻き出し側キャプスタン、82…引抜きダイス、83…引き抜き側キャプスタン。

Claims (10)

  1. 外管の内部に長さ方向に連通する複数の捻り流路を設けた金属製の管式熱交換器であって、前記外管と前記捻り流路を備えた管式熱交換器が捻り引抜き管からなり、
    前記複数の捻り流路がいずれも所定の捻り角で前記外管の長さ方向に螺旋状に形成されるとともに、前記外管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が形成され、
    前記傾斜を有する集合組織が捻り引抜き集合組織であって、前記Cu方位{112}{111}の集積度合いが、前記捻り引抜き管と同じ縮径の引抜きのみを施した引抜管のCu方位{112}{111}の集積度合いよりも小さくされたことを特徴とする管式熱交換器。
  2. 外管の内部に長さ方向に連通する複数の捻り流路を設けた金属製の管式熱交換器であって、
    前記複数の捻り流路がいずれも所定の捻り角で前記外管の長さ方向に螺旋状に形成されるとともに、前記外管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織が形成され、
    前記外管の外周面に螺旋状のウエルドラインが形成され、前記ウエルドラインが長さ方向に沿って間欠的に螺旋状に形成されたことを特徴とする管式熱交換器。
  3. 前記間欠的に形成されたウエルドラインの長さが5mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の管式熱交換器。
  4. 前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の管式熱交換器。
  5. 前記集合組織がCu方位{112}{111}の集積とGoss方位{011}{100}の集積がなされた集合組織であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の管式熱交換器。
  6. 前記外管の外周面に螺旋状のダイスマークが形成され、前記ダイスマークの最大深さが35μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の管式熱交換器。
  7. 前記外周面における螺旋状の前記ダイスマークの捻り角が、前記螺旋状の前記捻り流路を構成する流路管の捻り角より、1.0°以上大きいことを特徴とする請求項6に記載の管式熱交換器。
  8. 請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の管式熱交換器と、前記管式熱交換器に結合された放熱板と、を備えたことを特徴とする熱交換器。
  9. 外管の内部に長さ方向に沿って直線的に延びる複数の流路を有し、前記外管の外周面に長さ方向に沿って直線的に延びるダイスマークとウエルドラインの少なくとも一方を有する金属製の複合素管を押出により成形する押出成形工程と、
    前記複合素管に引抜きとともに捻り角が5°以上の捻りを付与する捻り引抜き工程と、
    前記捻り引抜き工程の後に縮径率が10%以上の引抜きを行う空引き工程を施すことによって、前記外管の管壁に、その長さ方向に対し前記捻り角に依存した傾斜を有する集合組織を形成することを特徴とする管式熱交換器の製造方法。
  10. 前記集合組織がCu方位とGoss方位の優先配向した集合組織であることを特徴とする請求項9に記載の管式熱交換器の製造方法。
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