JP6389681B2 - トンネル掘削工事における切羽前方の地盤改良方法 - Google Patents
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Description
切羽前方の地盤の改良には、従来、切羽の掘削時に折損され除去し易いように、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)製や、特殊構造の鋼管製のパイプ材が用いられている。
このパイプ材の相互は継ぎ足し可能で、パイプ材の外周面には複数の注入孔が設けられている。
このパイプ材に、先端にビットアダプターを介してビットが着脱可能に取り付けられたロッドを通しておき、このロッドをトンネル掘削に使用されるドリルジャンボのドリル装着部に装着する。そして、パイプ材に挿通されたロッドを介してビットを回転させながら切羽を削孔すると共に、ビットで削孔された孔にパイプ材を挿入していき、ロッドとパイプ材を継ぎ足しながら切羽にパイプ材を打ち込む。
切羽にパイプ材を打ち込んだならば、ロッドを逆転させてビットをビットアダプターから取り外し、パイプ材の先端にビットを残し、パイプ材からビットアダプターと共にロッドを引き抜く。
このようにして切羽の複数箇所にパイプ材を打ち込む。
そして、各パイプ材の基部からグラウトを供給し、グラウトをパイプ材の外周面の孔から地盤に浸み込ませ、地盤の改良を行なう。この場合、ビットは切羽に埋め殺しとしている。
そして、地盤改良後、例えば、自由断面掘削機や岩盤掘削用ブレーカなどにより切羽を掘削する。
ビットを回転させるロッドをパイプ材の内部に通す関係上、外径の小さいロッドを使用せざるを得ず、切羽を削孔する深さに限界があり、切羽の前方に最大で13.5m前後の長さの範囲でしか地盤改良を行なえない。そのため切羽の掘削が9m程度しか行なえず、トンネル掘削工事における切羽前方の地盤改良の工数が増加せざるを得ない。例えば、トンネル長が5kmの場合、13.5mの深さの地盤改良では掘削が9mとなるため、地盤改良の工数が555回前後となる。この地盤改良の工数は、トンネル長が長くなるにつれて増大し、トンネル工事の工期の短縮化、コストダウンを図る上で不利がある。
また、パイプ材の先端に取着されたビットは、パイプ材に比べ比較的高価であり、このビットがパイプ材と共に切羽に埋め殺しとなる。例えば、一つの切羽に打ち込むパイプ材の箇所の数が20とすると、トンネル長が5kmの場合、地盤改良の工数が555回前後となり、20×555で11100個のビットが無駄となる。この無駄となるビットの個数は、トンネル長が長くなるにつれて増大し、トンネル工事のコストダウンを図る上で不利がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、トンネル工事の工期短縮化、コストダウンを図る上で有利な切羽前方の地盤の改良方法を提供することにある。
そして、削孔された長尺孔に、パイプ材を継ぎ足しつつ挿入することで、従来に比べ、切羽の前方に、約2倍程度の長さの範囲の地盤改良を一度に行なえ、切羽の掘削も約2倍程度の長さで行なうことが可能となる。
したがって、トンネル工事における切羽前方の地盤改良の工数を大幅に削減できる。
例えば、本発明によれば、長尺孔を24mの深さで削孔でき、長さが24mのパイプ材を長尺孔に挿入でき、切羽の前方に24m前後の長さの範囲で地盤改良を行なえ、切羽の掘削が20m程度行なえるようになる。したがって、トンネル長が5kmの場合、切羽前方の地盤改良の工数を従来の555回から250回に減らすことができ、トンネル工事の工期の短縮化、コストダウンを図る上で有利となる。
また、トンネル長が5kmの場合、従来、切羽に埋め殺しとなる11100個のビットも不要となるため、トンネル工事のコストダウンを図る上で有利となる。
図1(A)、(B)に示すように、トンネル掘削時、切羽10の前方の地盤12にグラウトGを浸透させて地盤改良するに際して、ドリルジャンボ14の複数のドリル装着部16にそれぞれ削孔ドリル18を装着し、削孔ドリル18のロッド18Aを継ぎ足しつつ切羽10の前方に複数の長尺孔20を削孔する削孔工程を行なう。
長尺孔20の深さは、例えば、20〜24mであり、本実施の形態では24mとしている。
なお、本発明において削孔ドリル18とは、図2に示すように、ロッド18Aの先端にビット18Bが取着されたものをいう。ロッド18Aは、従来のようにパイプ材の内部に挿通する必要がないため、太いロッドが使用可能であり、ビット18Bを太いロッド18Aで支持することが可能となる。
本実施の形態では、ドリル装着部16は、回転可能かつ往復直線移動可能に支持されたシャンクロッド16Aで構成され、シャンクロッド16Aの先部に装着部側雄ねじ部1602が形成されている。また、削孔ドリル18の基部に(すなわちロッド18Aの基部に)、ドリル側雄ねじ部1802が形成されている。
シャンクロッド16Aと削孔ドリル18の基部との連結は、装着部側雄ねじ部1602とドリル側雄ねじ部1802に螺合可能なカップリング側雌ねじ部2202が長手方向の両端に形成された筒状のドリル装着用カップリング22が用いられる。
すなわち、削孔ドリル18のドリル装着部16への装着は、装着部側雄ねじ部1602とドリル側雄ねじ部1802にドリル装着用カップリング22のカップリング側雌ねじ部2202を螺合させ、削孔ドリル18とドリル装着部16とをドリル装着用カップリング22で連結することでなされる。
また、ロッド18Aどうしの連結には、従来と同様にロッド連結用カップリングが使用される。
パイプ材24は、本実施の形態ではFRP製であるが、パイプ材24には、切羽10の掘削時に折損され除去し易い特殊構造の鋼管など従来公知の様々な材料が使用可能である。
パイプ材24の長手方向に間隔をおいた複数箇所に、グラウト注入用の注入孔26が形成されている。
長尺孔20に挿入されるパイプ材24の先部は閉塞され、長尺孔20への挿入時における土砂のパイプ材24への侵入を阻止し、注入孔26からのグラウトGの地盤12への注入が円滑になされるように図られている。
パイプ材24の長さは、取扱い性を考慮し、例えば、6m〜8mが好ましく、本実施の形態では、後述するように、ひとつの長尺孔20に8mのパイプ材24が3本継ぎ足されて挿入される。
パイプ材24の基部のドリル装着部16への装着は、ドリル装着用カップリング22と同一構造のパイプ装着用カップリング28が用いられる。
パイプ材24の基部のドリル装着部16への装着は、装着部側雄ねじ部1602とパイプ材側雄ねじ部2602にパイプ装着用カップリング28のカップリング側雌ねじ部2802を螺合させることでなされる。
パイプ材24の継ぎ足しは、双方のパイプ材24の端部のパイプ材側雄ねじ部2602に、継ぎ足し用カップリング30のカップリング側雌ねじ部3002を螺合させることでなされる。
なお、パイプ材側雄ねじ部2602は、継ぎ足し用カップリング30を用いて継ぎ足す上で、パイプ材24の長手方向の両端のみに形成しておくことで足りるが、本実施の形態のように、パイプ材側雄ねじ部2602をパイプ材24の長手方向の全長にわたって形成しておくと、パイプ材24を適宜長さで切断した場合でも、継ぎ足し用カップリング30を用いて簡単に継ぎ足す上で有利となる。
また、パイプ材24のパイプ材側雄ねじ部2602をドリル側雄ねじ部1802と異なったねじ構造としてもよいが、本実施の形態のように、パイプ材側雄ねじ部2602をドリル側雄ねじ部1802と同一構造のものとしておくと、パイプ装着用カップリング28としてドリル装着用カップリング22を使用でき、パイプ装着用カップリング28を新たに製作する必要がなくなり、コストダウンを図る上で有利となる。
継ぎ足されたパイプ材24の全長は、長尺孔20の深さとほぼ同一で、例えば、24mである。
すなわち、図5に示すように、パイプ材24の先端に、先端に至るにつれて断面積が小さくなる先部を有する鋼製やFRP製のキャップ32を取着する。この場合の取着は、キャップ32の雌ねじ3202を、先端が開放されたパイプ材24のパイプ材側雄ねじ部2602に螺合することでなされる。
次に、図1(C)、図3に示すように、ドリル装着部16にパイプ装着用カップリング28を介してパイプ材24の基部を装着する。
そして、図1(D)に示すように、ドリル装着部16によりパイプ材24を回転させつつ長尺孔20に挿入し、継ぎ足し用カップリング30によりパイプ材24を継ぎ足しつつ、パイプ材24の先部が長尺孔20の奥部に至るまで挿入する。
このように、長尺孔20に、ドリルジャンボ14のドリル装着部16によりパイプ材24を回転させつつ挿入すると、キャップ32により土砂を掻き分け、パイプ材24を長尺孔20に円滑に挿入する上で有利となる。この場合、長尺孔20は既に削孔されているため、パイプ材24にはキャップ32により土砂を掻き分ける力しか作用せず、パイプ材24を破損させることなく、パイプ材24を長尺孔20へ円滑に挿入できる。
そして、長尺孔20に、パイプ材24を継ぎ足しつつ挿入することで、従来に比べ、切羽10の前方において、約2倍程度の長さの範囲の地盤改良を一度に行なうことが可能となる。
これにより、地盤改良後の切羽10の掘削も従来に比べて約2倍程度の長さで行なうことが可能となる。
例えば、本実施の形態によれば、長尺孔20を24mの深さで削孔でき、長さが24mのパイプ材24を長尺孔30に挿入でき、切羽10の前方に24m前後の長さの範囲で地盤改良を行なえ、切羽10の前方の掘削を20m程度行なえるようになる。したがって、トンネル長が5kmの場合、切羽前方の地盤改良の工数を従来の555回から250回に減らすことができ、トンネル工事の工期の短縮化、コストダウンを図る上で有利となる。
また、トンネル長が5kmの場合、従来、切羽に埋め殺しとなる11100個のビットも不要となるため、トンネル工事のコストダウンを図る上で有利となる。
12……切羽前方の地盤
14……ドリルジャンボ
16……ドリル装着部
16A……シャンクロッド
1602……装着部側雄ねじ部
18……削孔ドリル
18A……ロッド
18B……ビット
1802……ドリル側雄ねじ部
20……長尺孔
22……ドリル装着用カップリング
2202……カップリング側雌ねじ部
24……パイプ材
26……注入孔
2602……パイプ材側雄ねじ部
28……パイプ装着用カップリング
2802……カップリング側雌ねじ部
30……継ぎ足し用カップリング
3002……カップリング側雌ねじ部
32……キャップ
G……グラウト
Claims (5)
- トンネル掘削時、切羽の前方の地盤にグラウトを浸透させて地盤改良する方法であって、
ドリルジャンボのドリル装着部に、ロッドの先端にビットが取着された削孔ドリルを装着し、前記ロッドを継ぎ足しつつ切羽の前方に複数の長尺孔を削孔する削孔工程と、
前記複数の長尺孔の削孔後、前記複数の長尺孔から前記削孔ドリルを抜き出す工程と、
前記ドリルジャンボのドリル装着部に、注入孔が外周面に形成されたパイプ材を装着し、前記複数の長尺孔に、前記パイプ材を継ぎ足しつつ挿入するパイプ材挿入工程と、
前記長尺孔に前記パイプ材を挿入後、前記パイプ材を通して前記注入孔からグラウトを前記地盤に浸透させるグラウト注入工程とを備え、
前記ドリル装着部は装着部側雄ねじ部を有し、前記ロッドの基部は、ドリル側雄ねじ部を有し、
前記削孔ドリルの前記ドリル装着部への装着に、長手方向の両端に前記装着部側雄ねじ部と前記ドリル側雄ねじ部に螺合するカップリング側雌ねじ部が形成されたドリル装着用カップリングが用いられ、
前記削孔ドリルの前記ドリル装着部への装着は、前記装着部側雄ねじ部と前記ドリル側雄ねじ部に前記カップリング側雌ねじ部を螺合させることでなされ、
前記パイプ材の外周面で長手方向の両端に前記ドリル側雄ねじ部と同一構造のパイプ材側雄ねじ部が形成され、
前記パイプ材の基部の前記ドリル装着部への装着は、前記ドリル装着用カップリングが用いられ、
前記パイプ材の基部の前記ドリル装着部への装着は、前記装着部側雄ねじ部と前記パイプ材側雄ねじ部に前記ドリル装着用カップリングのカップリング側雌ねじ部を螺合させることでなされる、
ことを特徴とするトンネル掘削工事における切羽前方の地盤改良方法。 - 前記パイプ材の先端に、先端に至るにつれて断面積が小さくなる先部を有するキャップを取着し、
前記パイプ材挿入工程において、前記パイプ材を前記ドリル装着部に装着し、前記ドリル装着部により前記パイプ材を回転させつつ前記長尺孔に挿入する、
ことを特徴とする請求項1項記載のトンネル掘削工事における切羽前方の地盤改良方法。 - 前記パイプ材の継ぎ足しに、継ぎ足し用カップリングが用いられ、
前記パイプ材の継ぎ足しは、双方のパイプ材の長手方向の端部のパイプ材側雄ねじ部に、前記継ぎ足し用カップリングのカップリング側雌ねじ部を螺合させることでなされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のトンネル掘削工事における切羽前方の地盤改良方法。 - 前記パイプ材はFRP製で、前記パイプ材側雄ねじ部は、前記パイプ材の長手方向の全長にわたって形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のトンネル掘削工事における切羽前方の地盤改良方法。 - 前記長尺孔の深さおよび該長尺孔に継ぎ足して挿入される前記パイプ材の全長は、20〜24mである、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載のトンネル掘削工事における切羽前方の地盤改良方法。
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