JP6385577B2 - 二酸化塩素発生具およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、二酸化塩素発生具およびその製造方法に関する。より詳細には、亜塩素酸塩と塩素吸収剤とを含有する含水ゲルの入った容器からなる二酸化塩素発生具およびその製造方法に関する。
近年、二酸化塩素は塩素に代わる殺菌消毒剤として注目されており、スプレー型、首掛け型、置き型など種々の二酸化塩素発生具が使用されている。特に置き型としては亜塩素酸塩を含有する含水ゲルが利用されている。しかし、含水ゲルは長期間在庫すると二酸化塩素によりゲルが分解して流動化するため商品として体をなさないという問題がある。そこで使用直前に液体と粉を混ぜて含水ゲルとして使用する二液型の製品となっている(たとえば、特許文献1、2)。
特開2012−11028号公報 特開2011−201721号公報
しかしながら、消費者が使用前に自分で混合して用いるのは煩雑であり、さらに均一なゲルができにくく、且つ特に混合初期において強い塩素臭がするなどの点で使用しにくいという問題がある。容器の蓋を開けただけで使用できる置き型の二酸化塩素発生具が望まれている。
本発明の目的は、蓋を開けるだけで二酸化塩素が発生する含水ゲルを含む置き型の二酸化塩素発生具であって、蓋を開けたときの塩素臭が少なく、且つ蓋を開けるまでは含水ゲルがゲルの形態を保持する二酸化塩素発生具を提供することである。
発明者は、鋭意検討した結果、ゲル中に亜塩素酸塩と塩素吸収剤とを含有させるとともに、該ゲルを容器内に空間が残存しないよう充満させて、容器の蓋を最初に開けるまで極力二酸化塩素の発生を抑えることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、亜塩素酸塩を含有する含水ゲルが蓋付きの容器内に収納された二酸化塩素発生具であって、前記含水ゲルは吸水性樹脂でゲル化されてなり、含水ゲルが塩素吸収剤を含み、含水ゲルが容器内を満たしていることを特徴とする二酸化塩素発生具である。
さらに本発明は、前記含水ゲルが吸水性樹脂の濃度が異なる上下2つの部分からなり、上部が塩素吸収剤を含むことを特徴とする。
さらに本発明は、前記塩素吸収剤が有機酸または無機酸のアンモニウム塩であることを特徴とする。
さらに本発明は、前記含水ゲルがさらに無機増粘剤を含むことを特徴とする。
さらに本発明は、蓋付きの容器と、該容器内を満たしている含水ゲルであって、亜塩素酸塩および塩素吸収剤を含み、吸水性樹脂でゲル化されてなる含水ゲルと、を有することを特徴とする二酸化塩素発生具である。
また本発明は、前記容器中において亜塩素酸塩を含有する含水ゲルを形成した後、該亜塩素酸塩を含有する含水ゲルの上に塩素吸収剤を含有する水を加えて塩素吸着剤を含有する含水ゲルを形成することを特徴とする二酸化塩素発生具の製造方法である。
本発明の二酸化塩素発生具は、(1)蓋を開けたときに塩素臭が少ない、(2)少なくとも容器の蓋を開けるまでは容器の中の含水ゲルがゲルの形態を保持している、(3)二酸化塩素が徐々に発生してその殺菌消臭効果を発揮する、という効果を奏する。
本発明の目的、特色、および利点は下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
本発明における一実施態様の二酸化塩素発生具の斜視図であり、該二酸化塩素発生具は、円筒形状である。 図1におけるX−Y軸を含む垂直な面で切断したときの断面図である。
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係る二酸化塩素発生具1の斜視図である。図1は容器2を蓋3で密閉した状態である。容器2は含水ゲル4でほぼ満たされている。このような構成の容器2は含水ゲル4で満たされているので、蓋3を開けるまではゲルの状態を保持することになる。
本発明の二酸化塩素発生具1は、蓋付き容器に亜塩素酸塩および塩素吸収剤を含む含水ゲル4が、前記容器内に空間を残さないように収納されたものである。本発明において、前記亜塩素酸塩を含む含水ゲル4に対する亜塩素酸塩の含有量は、脱臭、殺菌、防カビ、防腐などに有効な濃度の二酸化塩素を発生しうる量であれば特に限定はないが、概ね含水ゲルの質量に対して0.3質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。
本発明において、亜塩素酸塩としては、たとえば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩、または亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらの中で、亜塩素酸ナトリウムが入手しやすく使用上も問題がないので好ましい。
亜塩素酸塩を含有する水の中の亜塩素酸塩の濃度は、脱臭、殺菌、防カビ、防腐などに有効な濃度の二酸化塩素を発生すれば特に限定はないが、安全性を考慮すれば、0.05質量%以上25質量%以下が好ましい。
亜塩素酸塩および塩素吸収剤を含有して、含水ゲルを構成する吸水性樹脂としては、天然系でも合成系でも特に限定はないが、安価で、安全性、耐久性、吸水倍率・保水性などの吸水特性に優れ、かつ、腐敗の心配の無いものが好ましい。
このようなものとしては、特に合成系の吸水性樹脂が挙げられ、たとえば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルアルカンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体などが挙げられる。
これらのうち、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、およびデンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物が、吸水特性、安全性や経済性などが特に良好であるため好ましい。かかる吸水性樹脂としては、市販のものを好適に使用することができ、たとえば、「サンウエットST−500D」(三洋化成工業株式会社製、ポリアクリル酸型吸水性樹脂)、「アクアキープ10SH−PF」(住友精化株式会社製、ポリアクリル酸型吸水性樹脂)、「アクアキープSA−605」(住友精化株式会社製、ポリアクリル酸型吸水性樹脂)などがあげられる。
上記の吸水性樹脂は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。吸水性樹脂の形状には限定はなく、不定形破砕状、球状、鱗片状、繊維状、棒状、塊状、粒子状、粉末状など種々の形状のものが使用できるが、粒子状または粉末状が好ましく、二酸化塩素発生の点から表面積が大きい粉末状であることがより好ましい。
吸水性樹脂の粒子の重量平均粒子径について特に限定はないが、好ましくは30〜850μmであり、より好ましくは60〜400μmである。重量平均粒子径はたとえば篩法によって測定できる。
吸水性樹脂の吸水倍率は20〜1,000g/gが好ましく、80〜600g/gがより好ましい。吸水倍率が20g/g以上であるとゲル特性が良好であり、1,000g/g以下であるとゲルの形態を保持しやすい。吸水倍率は通常の吸水性樹脂の測定法、たとえば、ティーバッグ法によって測定できる。
吸水性樹脂の量は亜塩素酸塩または亜塩素酸塩と塩素吸収剤とを含有する水の質量に対して、1質量%以上10質量%以下である。1質量%以上であればゲル化が可能であり、10質量%以下であればゲルがパサつかず取り扱いやすい。好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
本発明の二酸化塩素発生具において、亜塩素酸塩とともに含水ゲルに含まれる塩素吸収剤としては、塩素を吸収する物質であって、ゲル中に均一に分散することができ、ゲルの安定性を損なわないものであれば、どのような物質でも使用することができる。
かかる塩素吸収剤としては、炭酸カルシウム、石灰石、生石灰、消石灰、ゼオライト、活性炭、無機酸アンモニウム塩などの無機系塩素吸収剤があげられる。また、アニリン、N−アルキルアニリンなどのアミン、およびそのアルキレンオキサイド付加物、有機酸アンモニウム塩などの有機系塩素吸収剤が挙げられる。好ましいのは有機酸または無機酸のアンモニウム塩である。これらの塩は水溶性であるので溶解した塩素を吸収しやすい。
有機酸または無機酸のアンモニウム塩としては特に限定はないが、クエン酸アンモニウム塩、クエン酸水素アンモニウム塩、マレイン酸アンモニウム塩、マレイン酸水素アンモニウム塩などの有機酸アンモニウム塩;炭酸アンモニウム塩、炭酸水素アンモニウム塩、リン酸アンモニウム塩、リン酸水素アンモニウム塩、硫酸水素アンモニウム塩、亜硫酸水素アンモニウム塩などの無機酸アンモニウム塩が挙げられる。好ましいのは無機酸アンモニウム塩であり、より好ましいのは無機酸水素アンモニウム塩である。
含水ゲルに含まれる塩素吸収剤の量は、容器の蓋を開けたとき塩素臭がしない程度に、塩素を捕捉する量であれば限定されない。塩素吸収剤の量は、含水ゲルに含まれる亜塩素酸塩の量、塩素吸収剤の種類によって異なるが、含水ゲルの質量に対して0.05質量%以上5質量%以下であるのが好ましい。0.1質量%以上2質量%以下がより好ましい。0.05質量%以上であれば蓋を開けたときの塩素臭を抑制する効果が現れ、二酸化塩素の抗菌・消臭効果がより良好である。5質量%以下であれば蓋を開けるまでゲルの安定性もより良好である。
亜塩素酸塩を含有する水を吸水性樹脂でゲル化する方法は特に限定はないが、室温で亜塩素酸塩を含有する水に吸水性樹脂を投入して攪拌すれば容易に得られる。また、亜塩素酸塩とともに塩素吸収剤を配合する場合は、亜塩素酸塩を含有する水をゲル化する前に、予め吸水性樹脂に塩素吸収剤を混合した混合物と、後亜塩素酸塩を含有する水とを混合すればよい。
亜塩素酸塩を含有する水の中の亜塩素酸塩の濃度は、脱臭、殺菌、防カビ、防腐などに有効な濃度の二酸化塩素を発生すれば特に限定はないが、安全性を考慮すれば、0.05質量%以上25質量%以下が好ましい。
亜塩素酸塩を含有する含水ゲル4を収納する蓋付きの容器は、プラスチック製、ガラス製、金属製などが使用できるが、腐食などの観点からプラスチック製の容器が好ましい。容器2の容量も特に限定はないが、消費者で使用しやすいように、50mL以上500mL以下が好ましい。
容器の材質はプラスチック製が好ましい。容器の形状は特に限定はないが、容器の中で混合が容易な円筒状が好ましい。容器の蓋3は密封がしやすいネジ付き蓋が好ましい。また、容器の蓋3は上部に設けられるのが好ましく、蓋3の形状はゲル表面との空間を最小にすることができる形状が好ましい。かかる蓋3としては、平板状のものが最適である。
本発明において「含水ゲルが容器を満たしている」とは、蓋3とゲル表面との間に空間がないことを意味する。現実には蓋3をするときはどうしてもいくらかの空間が発生するが、その場合でも、最初に蓋3を開けたときに塩素臭が気にならない程度の塩素発生量となる空間であればよい。かかる最初に蓋3を開けたときに塩素臭が気にならない程度の塩素発生量となる空間は、蓋とゲル表面との空間が容器の内容積の6%以下であるのが好ましい。
容器2の内容積は、容器の内側の数値から計算できるし、また容器の中に水を入れその容量からでも確認できる。また、空間2の容量は、容器2内にあるゲルの上に液体を入れ満杯にしたときの入った液体の容積を空間の容量とする。前記液体としては、表面張力が小さく、かつ含水ゲルに吸収されない液体であればよく、たとえば、n−ヘキサン、石油などがあげられる。
亜塩素酸塩または亜塩素酸塩と塩素吸収剤とを含有する含水ゲル4は、該含水ゲルを作成してから容器に入れてもよいが、効率面からは、容器中で含水ゲルを製造するのがよい。
本発明の二酸化塩素発生具1においては、塩素は蓋3を開けると揮散するが、容器2の蓋3と含水ゲルの間の空間に既に発生して存在している塩素が揮散しやすく、その次に上部の含水ゲルに溶解している塩素が揮散すると考えられる。塩素が含水ゲルの中央や底の部分に溶解していたとしてもすぐ揮散するとは考えにくい。
したがって、塩素臭を制御するには、容器2の蓋3の裏面と、これに対向する含水ゲル上部を制御するのが経済的であり好ましい。
すなわち、含水ゲル全体に塩素吸収剤を配合してもよいが、容器2を含水ゲル4で満たすとともに、蓋3裏面に対向する含水ゲルの部分、含水ゲルの上部4aのみに塩素吸収剤を配合しても本発明の効果を奏することができる。
上部のみに塩素吸収剤を配合する場合、容器中において亜塩素酸塩を含有する下部含水ゲル4bを形成した後、下部含水ゲル4bの上に塩素吸収剤を含有する水を加えて、上部含水ゲル4aを形成してもよく、また亜塩素酸塩を含有する下部含水ゲル4bと塩素吸収剤を含有する上部含水ゲル4aを別々に形成して二層に重ねてもよい。前記二層構造とする場合には、二層とも、亜塩素酸塩と塩素吸収剤とを含有し、上部の層が下部の層よりも、塩素吸収剤の含有量を高くするようにしたものであってもよい。
前記の容器中において亜塩素酸塩を含有する下部含水ゲル4bを形成した後、下部含水ゲル4bの上に塩素吸収剤を含有する水を加えて上部含水ゲル4aを形成する場合には、亜塩素酸塩を含有する下部含水ゲル4bを作製してから、塩素吸収剤を含有する水を上から注げば、亜塩素酸塩を含有する含水ゲル中の吸水性樹脂がさらに膨潤して上の塩素吸収剤を含有する水を吸収して膨潤しゲル化することに基づく。
この場合、最初に作製される下部含水ゲル4bの表面近辺にある吸水性樹脂がまだ水を吸収する余力を有していることが必要である。容器内の吸水性樹脂の吸水能力は吸水性樹脂の量と吸水倍率に比例するので、そのことを考慮して含水ゲルを作成するのが好ましい。また、ゲルが生成するとき水の体積よりも増えるので、そのことも考慮して水を投入するのが好ましい。含水ゲル4の上部含水ゲル4aとその下の下部含水ゲル4bとの比率は、体積比率で1/9〜5/5であるのが好ましい。
すなわち、本発明の好ましい形態は、含水ゲル4が吸水性樹脂の濃度が異なる上下2つの部分4a,4bからなり、上部が塩素吸収剤を含む上部含水ゲル4aである。この場合には上下部分の境界面は明確でなく、上部のゲル中の吸水性樹脂の濃度は下部よりも小さくなる。また上部の塩素吸収剤は下部にも移行するがその濃度は上部よりも小さい。
本発明の含水ゲル4はさらに無機増粘剤を含むのが好ましい。無機増粘剤を併用すると無機増粘剤は二酸化塩素により分解されずに水を増粘するので、ゲルの流動化を遅くするのに有効であり、ゲルの形態をさらに長期間良好に保持することができる。
無機増粘剤は、一般に使用される無機増粘剤を使用することができ、二酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、ケイ灰石、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸アルミニウム、塩化マグネシウム、およびベントナイト、セピオライト、モンモリロナイト、ケイソウ土、タルク、アルミナゲル、アルミナ・シリカゲル、ケイ酸カルシウム、貝がら・サンゴなどの焼成骨材、焼成粘土などが挙げられる。これらの内で好ましいのはベントナイト、セピオライト、モンモリロナイトである。
かかる無機増粘剤としては、市販のものを好適に使用することができ、たとえば、「パンゲルAD」(楠本化成株式会社製、無機増粘剤、セピオライト)、「ベンゲルHV」(ホージュン社製、無機増粘剤、ベントナイト)、「クニピアF」(クニピア工業株式会社製、モンモリロナイト)などがあげられる。
無機増粘剤の形状、粒子径などは上記の吸水性樹脂と同様の範囲が使用できる。無機増粘剤の使用量は含水ゲルの質量に対して、3質量%以上、30質量%以下である。無機増粘剤が3質量%以上であればゲルの形態を長期間保持でき30質量%以下であれば二酸化塩素を長時間放出できる。好ましくは5質量%以上20質量%以下である。
無機増粘剤をゲルに混合する方法は特に限定はないが、吸水性樹脂と無機増粘剤を混合した後、亜塩素酸塩を含有する水を加えるのが、均一になりやすいので好ましい。
含水ゲル4には亜塩素酸塩と共に、また別々に通常二酸化塩素発生具に使用される以下の化合物を配合してもよい。吸水性樹脂で水を吸収させると中の水のpHが下がるが、さらに酸(酸性物質)を併用して、二酸化塩素の発生を助長することができる。このような酸としては、たとえば、リン酸などの無機酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸、さらし粉、イソシアヌル酸類などが挙げられる。
水素塩(アンモニウム塩を除く)を併用して、二酸化塩素の発生をさらに助長することもできる。水素塩とは、多価の酸のH+を陽イオンで置換した塩のうち、なおH+を残しているものをいい、たとえば、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
酸や水素塩をゲルに混合する方法は特に限定はないが、吸水性樹脂と酸や水素塩を混合した後、亜塩素酸塩を含有する水を加えるのが、均一になりやすいので好ましい。
図2は、図1におけるX−Y軸を含む垂直な面で切断したときの断面図である。蓋をする際にゲル4を入れすぎると蓋にゲルが付着し使用するときにゲルが体に付着するという問題が発生する。予防策として、ゲル表面に通気性シート5を置くことができる。この通気性シート5は二酸化塩素を通過させゲルを通過させなければ限定はなく、たとえば、紙や布シート、プラスチックの多孔質シート、半透膜フィルムなどが挙げられる。また、この通気性シートとして活性炭付着シートなどを用いてさらに塩素を吸着してもよく、半透膜フィルムやシートの厚さを調整することによって二酸化塩素、塩素の通過量を調整してもよい。
半透膜フィルムは、上記のように気体の揮散を抑制することができる。同時に二酸化塩素の系内からの放出を抑え、全体的に放出速度をより均一化することができる。半透膜フィルムは特に限定はなく、目的とする二酸化塩素のより均一な放出速度が得られるように半透膜フィルムを選定すればよい。
このような半透膜フィルムとしては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルム(ビニロンフィルム)、セロフアン、低延伸性ナイロンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール系共重合体フィルム、多孔性フィルム(微細孔を持つフィルム)などが挙げられるが、これらに限定されない。
上記のように製造した二酸化塩素発生具1は、蓋3を開けたときに塩素臭がなく、二酸化塩素が徐々に発生して殺菌消臭効果を発揮する。また、容器2の蓋3を開けるまでは容器2の中の含水ゲル4がゲルの形態を保持する。
上記のような効果を奏する理由は明確でないが、以下のように推定できる。
亜塩素酸塩は酸によって二酸化塩素を発生するが、その反応は平衡関係にある。その際塩素も副生する。二酸化塩素は11℃で気体となり、容器内の空間に溜まり気液平衡関係を維持する。気体は液体のない空間に集まりやすく、空間が少ないほど二酸化塩素の量も少ない。したがって、二酸化塩素の発生量も抑制される。
また二酸化塩素の発生と共に塩素が発生するが、発生する塩素の量も同様に容器の空間が少ないほど少なくなる。また、塩素は二酸化塩素と共に水に若干溶解するが塩素はゲル中に溶解している塩素吸収剤に吸収され保持される。そうすれば最初に蓋を開けたときに塩素臭はさらに抑制される。容器の蓋を開けた後徐々に二酸化塩素と塩素が発生するが塩素臭が気にならない範囲で二酸化塩素を発生させても殺菌消臭効果が発揮されることは確認されている。その範囲で二酸化塩素の発生量を制御すれば現実的に使用可能である。
また、吸水性樹脂のゲルは有機系のゲルであるので二酸化塩素によって徐々に分解され徐々に流動化してくる。しかし、上記のように含水ゲルは塩素吸収剤と共にゲルのない空間を少なくしておくと、塩素の発生と共に二酸化塩素の発生を抑制できる。二酸化塩素の量が少ないと吸水性樹脂の分解が遅くなり長期間ゲルが流動化しにくくなり、少なくとも容器の蓋を開けるまではゲルの形態を保持することができる。
以下、実施例にて説明するが、本発明はこれに限定されない。
各実施例の本発明の二酸化塩素発生具、および各比較例の二酸化塩素発生具について、容器の蓋を開封したときの塩素臭および塩素発生量、ゲルの安定性、タバコ消臭性を以下の試験法で評価した。ただし、ゲルの安定性の試験については、実施例1〜5は、45℃の恒温器に3ヶ月間放置した後の安定性を評価した。その結果を表1に示した。
(試験方法)
1.容器の蓋を開封したときの塩素臭および塩素発生量
容器を密封して25℃で28日間放置した後、蓋を開けて4Lポリ容器に入れてポリ容器の蓋をした。10分静置後、容器内の塩素臭を鼻で嗅いで塩素臭の程度を5人に評価してもらい下記基準で3人以上の同じ判定があったものを塩素臭の評価結果とした。発生塩素量は北川式検知管で測定した。北川式検知管としては、二酸化塩素測定検知管No.116(光明化学工業株式会社製、1〜20ppm)、No.23L(ガステック社製、0.025〜1.2ppm)が使用できる。
塩素臭:小 塩素臭がないか、あるが気にならない程度
中 塩素臭がややある、塩素臭が気になる程度
大 塩素臭が大
2.ゲルの安定性
容器の蓋をして、実施例1〜4については37℃の恒温器に30日間放置後の、実施例5〜8については45℃の恒温器に3ヶ月間放置後の、ゲルの安定性を評価した。
○:ゲルの形態を維持
△:やや流動化している
×:完全に流動化
3.タバコ消臭性
室内で容器の蓋を開けて7日間置いた。7日間経過後の容器をタバコの煙を15秒間封入した15Lポリ容器に入れ、密閉してタバコ臭がなくなるまでの時間を測定した。
結果は表1に示すとおりである。
(実施例1)
図1と同じ円筒形状の、外径5.8cm(内径5.5cm)、深さ5.5cmのポリプロピレン製容器に亜塩素酸ナトリウム1.25gを溶解した水に「サンウエットST−500D」(三洋化成工業株式会社製、ポリアクリル酸型吸水性樹脂)3.5g、「パンゲルAD」(楠本化成株式会社製、無機増粘剤、セピオライト)7gを入れ、混合した。数分後にゲル化した。容器内の約60%を満たした。
さらに塩素吸収剤として1.0%炭酸水素アンモニウム水溶液をその上から入れてしばらく放置して上の水もゲル化させた。ゲルは蓋の上部すれすれまで上がってきた。完全にゲル化してから、含水ゲルの表面に、その形状に合わせた不織布シート(ポリエステル/アクリル混紡)を置き、その上から蓋を閉めて密閉にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。容器内は含水ゲルで満たされている状態であるが、蓋と含水ゲル表面との間の空間は6mLであった。
(実施例2)
実施例1において、亜塩素酸ナトリウム1.25g、「サンウエットST−500D」3.5g、「パンゲルAD」7g、1.0%炭酸水素アンモニウム水溶液に替えて、亜塩素酸ナトリウム2.5g、「サンウエットST−500D」4.0g、「パンゲルAD」9g、2.0%炭酸水素アンモニウム水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は5mLであった。
(実施例3)
実施例1において、「パンゲルAD」7g、1.0%炭酸水素アンモニウム水溶液に替えて、「パンゲルAD」9g、1.0%リン酸水素アンモニウム水溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は7mLであった。
(実施例4)
実施例2において、2.0%炭酸水素アンモニウム水溶液に替えて、1.0%炭酸アンモニウム水溶液を用いる以外は、実施例2と同様にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は2mLであった。
(比較例1)
実施例1に用いた容器内に1層のゲルを作製した。亜塩素酸ナトリウム2.5gを溶解した水に「サンウエットST−500D」4.0g、「パンゲルAD」9gを入れ、混合した。数分後にゲル化した。容器内の約60%を満たした比較の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は30mLであった。
(比較例2)
実施例1に用いた容器内に1層のゲルを作製した。亜塩素酸ナトリウム1.25gを溶解した水に「サンウエットST−500D」3.5g、「パンゲルAD」7gを入れ、混合して、容器内の約60%を満たしてゲル化させた。その上から蒸留水を入れてゲル化させて比較の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は7mLであった。
(比較例3)
実施例1に用いた容器内に1層のゲルを作製した。亜塩素酸ナトリウム1.25gを溶解した水に「サンウエットST−500D」3.5g、「パンゲルAD」7gを入れ、混合して、容器内の約95%を満たしてゲル化させて比較の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は6mLであった。
(比較例4)
比較例1において、炭酸水素アンモニウムを1.3g添加する以外は同様にして比較の二酸化塩素発生具Hを作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は30mLであった。表1から、実施例1〜4は塩素臭がほとんどなく、二酸化塩素の効果であるタバコの消臭性が良好である。30℃、30日間でゲルの安定性も良好である。容器内のゲルのない空間を少なくして上層部に塩素吸収剤を入れれば、本発明の効果を奏することが確認できた。
(実施例5)
図1と同じ円筒形状の、内径5.5cm、深さ5.3cmのポリプロピレン製容器に、亜塩素酸ナトリウム1.25gを溶解した水70gに「サンウエットST−500D」(三洋化成工業株式会社製、ポリアクリル酸型吸水性樹脂)4.5g、「パンゲルAD」(楠本化成株式会社製、無機増粘剤、セピオライト)7gを入れ、混合した。数分後にゲル化した。このゲルが容器内の約65%を満たした。
さらに1.0%炭酸水素アンモニウム水溶液をその上から入れてしばらく放置して上の水もゲル化させた。ゲルは蓋の上部すれすれまで上がってきた。完全にゲル化してから、含水ゲルの表面に形状に合わせて不織布シート(ポリエステル/アクリル混紡)を置き、その上から蓋を閉めて密閉にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。容器内を含水ゲルで満たす状態であるが、蓋と含水ゲル表面との間の空間は6mLであった。
(実施例6)
実施例5において、亜塩素酸ナトリウム1.25g、「サンウエットST−500D」3.5g、「パンゲルAD」7g、1.0%炭酸水素アンモニウム水溶液に替えて、亜塩素酸ナトリウム2.5g、「サンウエットST−500D」4.5g、「パンゲルAD」9g、0.5%炭酸水素アンモニウム水溶液45gを用いる以外は、実施例5と同様にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は5mLであった。
(実施例7)
実施例5において、1.0%炭酸水素アンモニウム水溶液に替えて、「ベンゲルHV」(ホージュン社製無機増粘剤、ベントナイト)3g、0.5%リン酸二水素アンモニウム塩水溶液28gを用い、容器内の80%を満たすようにゲル化させる以外は、実施例5と同様にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は3mLであった。
(実施例8)
実施例6において、0.5%炭酸水素アンモニウム塩水溶液に替えて、0.2%リン酸二水素アンモニウム水溶液を同量用いる以外は、実施例6と同様にして、本発明の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は2mLであった。
(比較例5)
実施例5に用いた容器内にゲルを作製した。亜塩素酸ナトリウム2.5gを溶解した水に「サンウエットST−500D」4.0g、「パンゲルAD」9gを入れ、混合した。数分後にゲル化した。容器内の約65%を満たした比較の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は45mLであった。
(比較例6)
実施例5に用いた容器内にゲルを作製した。亜塩素酸ナトリウム1.25gを溶解した水に「サンウエットST−500D」3.5g、「パンゲルAD」7gを入れ、混合して、容器内の約65%を満たしてゲル化させた。その上から蒸留水を入れてゲル化させて比較の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は7mLであった。
(比較例7)
比較例5において、炭酸水素アンモニウムを1.3g添加する以外は同様にして比較の二酸化塩素発生具を作製した。蓋と含水ゲル表面との間の空間は45mLであった。
Figure 0006385577
表1から、実施例1〜8は塩素臭がほとんどなく、二酸化塩素の効果であるタバコの消臭性も良好であることがわかる。また、30℃で30日間放置した実施例1〜4の含水ゲル、45℃で3ヶ月間放置した実施例5〜8の含水ゲルは、いずれも安定性が良好であった。このことから、容器内のゲルのない空間を少なくして上部に塩素吸収剤を入れることによって、本発明の効果を奏することが確認できた
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
1 二酸化塩素発生具
2 容器
3 蓋
4 含水ゲル
4a 上部含水ゲル
4b 下部含水ゲル
5 通気性シート

Claims (6)

  1. 亜塩素酸塩を含有する含水ゲルが蓋付きの容器内に収納された二酸化塩素発生具であって、
    前記含水ゲルは吸水性樹脂でゲル化されてなり、含水ゲルが塩素吸収剤を含み、含水ゲルが容器内を満たしていることを特徴とする二酸化塩素発生具。
  2. 前記含水ゲルが吸水性樹脂の濃度が異なる上下2つの部分からなり、上部が塩素吸収剤を含むことを特徴とする請求項1記載の二酸化塩素発生具。
  3. 前記塩素吸収剤が有機酸または無機酸のアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1または2記載の二酸化塩素発生具。
  4. 前記含水ゲルがさらに無機増粘剤を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の二酸化塩素発生具。
  5. 蓋付きの容器と、
    該容器内を満たしている含水ゲルであって、亜塩素酸塩および塩素吸収剤を含み、吸水性樹脂でゲル化されてなる含水ゲルと、を有することを特徴とする二酸化塩素発生具。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項記載の二酸化塩素発生具を製造する製造方法であって、前記容器中において亜塩素酸塩を含有する含水ゲルを形成した後、該亜塩素酸塩を含有する含水ゲルの上に塩素吸着剤を含有する水を加えて塩素吸着剤を含有する含水ゲルを形成することを特徴とする二酸化塩素発生具の製造方法。
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