本発明に係る電気掃除機の実施形態について、図1から図15を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電気掃除機の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1は、いわゆるキャニスタ型の電気掃除機である。電気掃除機1は、被掃除面上を走行可能な掃除機本体2と、掃除機本体2に着脱自在な管部3と、を備えている。掃除機本体2と管部3とは、流体的に接続されている。
掃除機本体2は、本体ケース5と、本体ケース5の左右両側方にそれぞれ設けられている一対の車輪6と、本体ケース5の前半部に配置されている着脱自在な塵埃分離集塵部7と、本体ケース5の後半部に収納されている電動送風機8と、主に電動送風機8を制御する本体制御部9と、電動送風機8へ電力を導く電源コード11と、を備えている。
掃除機本体2は、電源コード11を経て供給される電力で電動送風機8を駆動させて、電動送風機8の駆動によって発生する負圧を管部3に作用させている。電気掃除機1は、管部3を通じて被掃除面から塵埃を含んだ空気(以下、「含塵空気」と呼ぶ。)を吸い込み、含塵空気から塵埃を分離し、分離後の塵埃を捕集し、蓄積するとともに分離後の空気を排気する。
本体ケース5の正面部分には、本体接続口12が設けられている。本体接続口12は、掃除機本体2の流体的な入口であり、管部3と塵埃分離集塵部7とを流体的に接続している。
車輪6は、大径の走行輪であり、掃除機本体2を支えている。
塵埃分離集塵部7は、掃除機本体2に流れ込む含塵空気から塵埃を分離し、捕集し、蓄積する一方で、塵埃が除去された清浄な空気を電動送風機8へ送る。塵埃分離集塵部7は、遠心分離方式であっても良いし、濾過分離方式であっても良い。
電動送風機8は、塵埃分離集塵部7から空気を吸い込んで負圧(吸込負圧)を発生させる。
本体制御部9は、マイクロプロセッサ(図示省略)、およびマイクロプロセッサが実行する各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する記憶装置(図示省略)を備えている。記憶装置には、予め設定される複数の運転モードが記憶されている。予め設定される複数の運転モードは、電動送風機8の運転出力の大小に関連するものであって、管部3で受け付けられる使用者の操作に対応している。それぞれの運転モードには、相互に異なる入力値(電動送風機8の入力値)が設定されている。本体制御部9は、管部3で受け付けられる使用者の操作に応じて、その操作内容に対応する任意の運転モードを予め設定される複数の運転モードから択一的に選択して記憶部から読み出し、読み出した運転モードにしたがって電動送風機8を制御する。
電源コード11は、配線用差込接続器(図示省略、所謂コンセント)から掃除機本体2へ電力を供給する。電源コード11の自由端部には、差込プラグ14が設けられている。
管部3は、掃除機本体2から作用する負圧によって、被掃除面から含塵空気を吸い込み掃除機本体2へ案内する。管部3は、掃除機本体2に着脱自在に接続されている継手としての接続管19と、接続管19に流体的に接続されている集塵ホース21と、集塵ホース21に流体的に接続されている手元操作管22と、手元操作管22から突出している把持部23と、把持部23に設けられている操作部24と、手元操作管22に着脱自在に接続されている延長管25と、延長管25に着脱自在に接続されている吸込口体26と、を備えている。
接続管19は、本体接続口12へ着脱自在に接続される継手であり、本体接続口12を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
集塵ホース21は、長尺で可撓な略円筒形状のホースである。集塵ホース21の一方の端部(ここでは、後方の端部)は、接続管19に流体的に接続されている。集塵ホース21は、接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
手元操作管22は、集塵ホース21と延長管25とを中継している。手元操作管22の一方の端部(ここでは、後方の端部)は、集塵ホース21の他方の端部(ここでは、前方の端部)に流体的に接続されている。手元操作管22は、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
把持部23は、電気掃除機1を操作するために使用者が手で把持する部分である。把持部23は、使用者が手で容易に把持できる適宜の形状で手元操作管22から突出している。
操作部24は、それぞれの運転モードに対応付けられるスイッチを備えている。具体的には、操作部24は、電動送風機8の運転停止操作に対応付けられる停止スイッチ24aと、電動送風機8の運転開始操作に対応付けられる起動スイッチ24bと、吸込口体26への電源供給に対応付けられるブラシスイッチ24cと、を備えている。停止スイッチ24aおよび起動スイッチ24bは、本体制御部9に電気的に接続されている。電気掃除機1の使用者は、操作部24を操作して電動送風機8の運転モードを択一的に選択できる。起動スイッチ24bは、電動送風機8の運転中に、運転モードの選択スイッチとしても機能している。この場合、本体制御部9は、起動スイッチ24bから操作信号を受け取る度に運転モードを強→中→弱→強→中→弱→………の順に切り換える。なお、操作部24は、起動スイッチ24bに代えて、強運転スイッチ(図示省略)、中運転スイッチ(図示省略)、および弱運転スイッチ(図示省略)を個別に備えていても良い。
複数の筒状体を重ね合わせたテレスコピック構造の延長管25は、伸縮可能な細長略円筒状の管である。延長管25の一方の端部(ここでは、後方の端部)には、手元操作管22の他方の端部(ここでは、前方の端部)に着脱自在な継手構造が設けられている。延長管25は、手元操作管22、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。
吸込口体26は、木床やカーペットなどの被掃除面上を走行自在または滑走自在であり、走行状態または滑走状態において被掃除面に対向する底面に吸込口28を有する。また、吸込口体26は、吸込口28に配置されている回転自在な回転清掃体29と、回転清掃体29を駆動させる電動機31と、を備えている。吸込口体26の一方の端部(ここでは、後方の端部)には、延長管25の他方の端部(ここでは、前方の端部)に着脱自在な継手構造が設けられている。吸込口体26は、延長管25、手元操作管22、集塵ホース21および接続管19を通じて塵埃分離集塵部7に流体的に接続されている。つまり、吸込口体26、延長管25、手元操作管22、集塵ホース21、接続管19、および塵埃分離集塵部7は、電動送風機8から吸込口28へ至る吸込風路である。電動機31は、ブラシスイッチ24cから操作信号を受け取る度に運転開始と停止とを交互に繰り返す。
電気掃除機1は、起動スイッチ24bに対する使用者の操作を受け付けると電動送風機8を始動させる。例えば、電気掃除機1は、電動送風機8が停止している状態で起動スイッチ24bに対する操作を受け付けると、先ず電動送風機8を強運転モードで運転し、再び起動スイッチ24bに対する操作を受け付けると電動送風機8を中運転モードで運転し、三度、起動スイッチ24bに対する操作を受け付けると電動送風機8を弱運転モードで運転し、以下同様に繰り返す。強運転モード、中運転モードおよび弱運転モードは、予め設定される複数の運転モードであり、強運転モード、中運転モード、弱運転モードの順に電動送風機8に対する入力値が小さい。始動した電動送風機8は、塵埃分離集塵部7から空気を排気してその内部を負圧にする。
塵埃分離集塵部7内の負圧は、本体接続口12、接続管19、集塵ホース21、手元操作管22、延長管25、および吸込口体26を順次に通じて吸込口28に作用する。電気掃除機1は、吸込口28に作用した負圧によって、被掃除面上の塵埃を空気とともに吸い込んで被掃除面を掃除する。塵埃分離集塵部7は、電気掃除機1に吸い込まれた含塵空気から塵埃を分離し、蓄積する一方で、含塵空気から分離した空気を電動送風機8へ送る。電動送風機8は、塵埃分離集塵部7から吸い込んだ空気を掃除機本体2外へ排気する。
図2は、本発明の実施形態に係る電気掃除機の電動送風機を部分的に切り欠いて示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の電動送風機8は、吸気口35を有する遠心ファン部36と、排気口37を有するモータ部38と、を備えている。
モータ部38は、整流子電動機である。モータ部38は、排気口37を有するモータハウジング39と、モータハウジング39の内周面39aに設けられる固定子41と、モータハウジング39内に回転自在に支持される回転子42と、モータハウジング39に設けられて回転子42に電気的に接続される一対のブラシ機構43と、を備えている。
回転子42は、固定子41の内側に配置されている。回転子42は、回転中心となるロータ軸45と、ロータ軸45に設けられる回転子鉄心46と、回転子鉄心46に巻き付けられるフィールド巻線47と、ロータ軸45に設けられてフィールド巻線47に電気的に接続される整流子48と、を備えている。
ブラシ機構43は、モータハウジング39のブラシホルダ固定部49を貫いて固定されるブラシホルダ51と、ブラシホルダ51内に収容される摺動自在なブラシ52と、ブラシ52を整流子48へ押さえ付けるコイルバネ53と、を備えている。ブラシ52は、カーボンブラシである。
図3は、本発明の実施形態に係る電気掃除機を示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1は、差込プラグ14を介して商用交流電源Eに電気的に接続される本体制御回路55を備えている。
本体制御回路55は、電動送風機8の運転を制御する。本体制御回路55は、商用交流電源Eへ直列に接続される電動送風機8と、商用交流電源Eと電動送風機8とを接続する電路を開閉するスイッチング素子56と、商用交流電源Eを変換して本体制御部9へ動作電力を供給する本体電源部57と、整流子48とブラシ52との摩擦によって発生する火花の大きさを検知する火花検知部58と、電動送風機8の運転を制御する本体制御部9と、を備えている。
スイッチング素子56は、双方向サイリスタや逆阻止3端子サイリスタなどの素子であり、本体制御部9に接続されるゲートを備えている。スイッチング素子56は、ゲート電流の変化に応じて電動送風機8の入力を変える。
本体電源部57は、本体制御部9の制御電源を発生させる電源回路である。
火花検知部58は、例えばカレントトランスであり、電動送風機8に流れる電流を検知する。火花検知部58は、整流子48とブラシ52との摩擦によって発生する火花の大きさを、火花の発する光で検知する光センサでも良い。火花検知部58は検知した電流値を電圧値に変換して本体制御部9へ出力する。火花検知部58の電源は、例えば商用電源定格100Vを用いる。なお、整流子48とブラシ52との摩擦によって火花が発生すると、火花検知部58が検知する電流値は、低下する傾向にある。
本体制御部9は、マイクロコンピュータからなり、中央処理部(図示省略)、記憶部59、I/O部(図示省略)およびタイマ(図示省略)を備えている。記憶部59は、中央処理部が実行する制御プログラムや、制御プログラムの実行に必要な定数などのデータを予め記憶する。このデータは、予め設定された各運転モードに対応する入力値を示す定数を含む。また、記憶部59は、中央処理部の演算データなどを一時記憶しておくデータ記憶領域および作業領域である。
また、本体制御部9は、操作部24が出力する操作信号と、ゼロクロス検出器(図示省略)が検出する商用交流電源Eのゼロクロスタイミングと、を周期的に読み取り、選択された運転モードにしたがってスイッチング素子56のスイッチング制御(位相制御)を行い電動送風機8の入力を制御する。
さらに、本体制御部9は、例えば、弱、中および強からなる3つの運転モードに応じて電動送風機8の入力を制御する。本体制御部9は、起動スイッチ24bから操作信号を受け取る都度、運転モードを順次に切り換えてスイッチング素子56のスイッチング制御を行う。
さらにまた、本体制御部9は、火花検知部58から入力される火花の検知結果に基づいて電動送風機8を制御する。本体制御部9は、火花検知部58がサンプリングする検知結果の前回実測値Ia(前回値)と今回実測値Ib(今回値)との差から予測値Ine(予測次回値)を算出し、この予測値Ineと火花検知部58がサンプリングする検知結果の実測値In(実次回値)との差の絶対値が予め定める所定値Isより大きい場合には、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生を推測する。
ここで、先ず、本体制御部9による火花検知について詳細に説明する。
(火花検知の第1実施例)
図4は、本実施形態に係る電気掃除機の火花検知の第1実施例を示すフローチャートである。
図5は、本実施形態に係る電気掃除機の火花検知の第1実施例のサンプリング方法を示す概念図である。
図4および図5に示すように、本実施形態に係る本体制御部9は、操作部24の起動スイッチ24bが操作されると電動送風機8の運転を開始するとともに火花検知を開始する。
本体制御部9は、等時間間隔で継続的に火花検知部58の検知結果、つまり火花検知部58の出力電圧をサンプリングする(ステップS1)。このサンプリングは、例えば、50Hzの半周期当たり(10msec当たり)に100ポイント(つまり、0.1msec毎)行われる。位相制御が行われている場合には、本体制御部9は、電流が流れている間だけサンプリングを行う。
次いで、本体制御部9は、(n−2)回目のサンプリング結果を前回実測値Ia(前回値)として記憶部59に記憶する(ステップS2)。
さらに、本体制御部9は、(n−1)回目のサンプリング結果を今回実測値Ib(今回値)として記憶部59に記憶する(ステップS3)。
次いで、本体制御部9は、予測値Ineを演算する(ステップS4)。予測値Ineは、前回実測値Iaと今回実測値Ibとから演算される。具体的には、予測値Ineは、前回実測値Iaと今回実測値Ibとの差に今回実測値Ibを加えたもの、つまりIne=(Ib−Ia)+Ib=2Ib−Iaである。
次いで、本体制御部9は、予測値Ineと実測値Inの差の絶対値|In−Ine|が、予め定める所定値Isより大きいか否か、すなわち、|In−Ine|>Isを判断する(ステップS5)。n回目のサンプリング結果を実測値Inとして使用する。予め定める所定値Isは予め実験によって求められ、ブラシ52が正常な状態の値である。予測値Ineと実測値Inとの差の絶対値|In−Ine|が、所定値Isより大きい場合、本体制御部9は、火花が過大に発生していると判断する。その他の場合、本体制御部9は、ステップS1に戻って火花検知を繰り返し、継続する。
ところで、図5は、正弦波状に観測される火花検知部58の検知結果において、位相角0度から90度まで、または位相角270度から360度まで、つまり電流値が上り調子になる位相角の任意の一部を切り出したものである。図5中の小さな波は、電源に重畳するノイズ成分である。
そして、(n−2)回目、(n−1)回目のサンプリングでは火花が大きく発生しているため、当該位相角における振幅が、低下している。つまり、前回実測値Ia、および今回実測値Ibは、火花が発生していない際における電流値よりも小さく観測されている。他方、n回目のサンプリングにおける実測値Inは、火花の発生が小さく、当該位相角における本来の振幅(電流値)に回復している。そして、前回実測値Iaおよび今回実測値Ibに基づく予測値Ineは、実測値Inよりも小さく予測されている。
仮に、(n−2)回目、(n−1)回目のサンプリングでは火花が発生していない場合、当該位相角における本来の振幅は大きくなる。他方、n回目のサンプリングでは火花が発生している場合、当該位相角における振幅は小さくなる。このケースでは、図5とは異なり、n回目のサンプリングにおける予測値Ineは、火花が発生している際における電流値、つまり実測値Inよりも大きく予測される。このケースでは、予測値Ineと実測値Inとの上下位置関係は図5のケースに対して逆転する。このケースであっても、Ine−In|>Isを判断することによって火花異常を判定できる。
また、火花検知部58の検知結果が下り調子、つまり位相角90度から270度の区間で予測値Ineを求めるのであっても、予測値Ine=Ib−|Ib−Ia|=Ib−(Ia−Ib)=2×Ib−Iaで求められる。
以上のように、火花検知の第1実施例では、本体制御部9は、予測値Ineと実測値Inとの差の絶対値|In−Ine|が、予め定める所定値Isより大きい場合、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生を推測する。他方、本体制御部9は、予測値Ineと実測値Inとの差の絶対値|In−Ine|が、所定値Isより大きくない場合、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生がないことを推測して電動送風機8の運転を継続させる。
(火花検知の第2実施例)
本体制御部9は、第1実施例の火花検知に代えて第2実施例の火花検知を実行することもできる。
図6は、本実施形態に係る電気掃除機の火花検知の第2実施例を示すフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る電気掃除機の火花検知の第2実施例のサンプリング方法を示す概念図である。
図6および図7に示すように、本実施形態に係る本体制御部9は、第1実施例のステップS1からステップS4を、同じ周波数で複数回(具体的には(n−2)回)繰り返す(ステップS11、ステップS1からステップS4、ステップS12、ステップS13)。整数nは予め定める整数である。
本体制御部9は、等時間間隔で継続的に火花検知部58の検知結果のサンプリングを複数回(具体的には(n−2)回)繰り返し、実測値Inと予測値Ineの差の絶対値|In−Ine|の(n−2)回分の絶対値総和Σ|In−Ine|が、所定値Isより大きいか否か、すなわち、Σ|In−Ine|>Isを判断する(ステップS14)。
以上のように、火花検知の第2実施例では、本体制御部9は、予測値Ineと実測値Inとの差の絶対値|In−Ine|の(n−2)回分の絶対値総和Σ|In−Ine|が、予め定める所定値Isより大きい場合、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生を推測する。他方、本体制御部9は、予測値Ineと実測値Inとの差の絶対値|In−Ine|の(n−2)回分の絶対値総和Σ|In−Ine|が、所定値Isより大きくない場合、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生がないことを推測して電動送風機8の運転を継続させる。
(火花検知の第3実施例)
また、本体制御部9は、第1実施例、および第2実施例の火花検知に代えて第3実施例の火花検知を実行することもできる。
図8は、本実施形態に係る電気掃除機の火花検知の第3実施例を示すフローチャートである。
図9は、本実施形態に係る電気掃除機の火花検知の第3実施例のサンプリング方法を示す概念図である。
図8および図9に示すように、本実施形態に係る本体制御部9は、第2実施例のステップS11、ステップS1からステップS4、ステップS12を、予め定める周期C毎に複数回(具体的にはN回)繰り返す(ステップS21、ステップS22、ステップS11、ステップS1からステップS4、ステップS12、ステップS13、ステップS14、ステップS24、ステップS25)。予め定める周期Cは、電動送風機8の電源周期またはその整数倍である。整数Nは、予め定める整数である。各周期Cにおいて、本体制御部9は、等時間間隔で継続的に火花検知部58の検知結果のサンプリングを複数回(具体的にはn−2回)繰り返し、実測値Inと予測値Ineの差の絶対値|In−Ine|の(n−2)回分の絶対値総和Σ|In−Ine|を求め、記憶部59に一時的に記憶する(ステップS13)。なお、各周期Cにおける絶対値総和Σ|In−Ine|をΣ1、Σ2、…、ΣNと表記する。
次いで、本体制御部9は、周期C毎の絶対値総和Σ1、Σ2、…、ΣNの総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)を整数Nで平均し(つまり、実測値Inと予測値Ineの差の絶対値|In−Ine|の(n−2)回分の絶対値総和Σ|In−Ine|に関する平均的な値を求め)、所定値Isより大きいか否か、つまりΣ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/N>Isを判断する(ステップS26)。例えば、周期C=1/50Hz、整数N=50にすれば1秒間の平均的絶対値総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/Nが求められる。
以上のように、火花検知の第3実施例では、本体制御部9は、周期C毎に実測値Inと予測値Ineの差の絶対値|In−Ine|の(n−2回)分の絶対値総和Σ|In−Ine|を求め、平均的絶対値総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/Nが、予め定める所定値Isより大きい場合、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生を推測する。他方、本体制御部9は、平均的絶対値総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/Nが、所定値Isより大きくない場合、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生がないことを推測して電動送風機8の運転を継続させる。
火花検知の第3実施例では、平均的絶対値総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/Nを求めることで、突発的な火花の発生に対する感受性、応答性を抑制し、電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生の推測を安定化させる。
(火花検知の第4実施例)
火花検知の第4実施例は、火花検知の第1実施例から第3実施例に対し電動送風機8に供給される電源電圧の変化(定格に対する実測)に応じて所定値Isを変える。
図10は、本実施形態に係る電気掃除機の電動送風機に対する電源電圧・周波数・運転モードによる平均的絶対値総和の違いを示す図表である。
図10(a)は強運転モードの場合を示し、図10(b)は中運転モードの場合を示す。
図11は、本実施形態に係る電気掃除機の周波数50Hz、強運転モードにおける電源電圧と平均的絶対値総和の相関を示す線図である。
図12は、本実施形態に係る電気掃除機の周波数50Hz、中運転モードにおける電源電圧と平均的絶対値総和の相関を示す線図である。
図13は、本実施形態に係る電気掃除機の周波数60Hz、強運転モードにおける電源電圧と平均的絶対値総和の相関を示す線図である。
図10から図13に示すように、周波数50Hzと周波数60Hzともに、電源電圧(実測)が増加すると、平均的絶対値総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/Nも増加し、50Hzと60Hzでは、いずれの電源電圧(実測)においても、周波数60Hzが周波数50Hzに比べて平均的絶対値総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/Nが大きいことがわかる。
他方、周波数50Hzにおいて、強運転モードと中運転モードの平均的絶対値総和Σ(Σ1+Σ2+…+ΣN)/Nは、電源電圧(実測)によっては大小関係が反転する。
したがって、電源電圧の変化、周波数の変化に応じて所定値Isを変更する必要が有る。
例えば、先ず、電動送風機8に供給される電源電圧(実測)毎、運転モード毎に複数の所定値Isを記憶部59に記憶しておく。そして、電動送風機8に供給される電源電圧を検知し、この検知電圧(電源電圧の実測値)を本体制御部9で読み取り、選択中の運転モードと組み合わせて最適な所定値Isを選択する。具体的な一例として、電源電圧が定格100Vの場合、検知電圧と所定値Isの関係は図14のように設定される。
図14は、本実施形態に係る電気掃除機において電動送風機の電源電圧が定格100Vの場合の検知電圧と所定値との相関関係を示す図表である。
図14に示すように、検知電圧<80Vの場合の所定値IsはA値、80V≦検知電圧<90Vの場合の所定値IsはB値、90V≦検知電圧<100Vの場合の所定値IsはC値、100V≦検知電圧の場合の所定値IsはD値である。このように所定値Isは10V単位で書き換えられる。
火花検知の第4実施例では、火花検知の第1実施例から第3実施例による火花検知に加えて、電源電圧(実測)に応じて所定値Isを変えることで、整流子48とブラシ52との摩擦によって発生する火花を誤検出なく正確に検出する。
次いで、電動送風機8が発する火花の大きさに連動させて電動送風機8の入力を低減させ、また再始動時の入力を決定する入力変更制御について説明する。
(入力変更制御の実施例)
図15は、本実施形態に係る電気掃除機の入力変更制御を示すフローチャートである。
図15に示すように、本実施形態に係る電気掃除機1の本体制御部9は、火花検知部58がサンプリングする検知結果の前回実測値Ia(前回値)と今回実測値Ib(今回値)との差から予測値Ine(予測次回値)を算出し、この予測値Ineと火花検知部58がサンプリングする検知結果の実測値In(実次回値)との差の絶対値が予め定める所定値Isより大きい場合、つまり電動送風機8の整流子48とブラシ52との摩擦による火花の過大な発生を推測した場合には、電動送風機8の入力を低減させて電動送風機8の運転を継続させる一方、電動送風機8を停止(運転停止操作に基づき停止)させる際に電動送風機8の入力を低減させていた場合には電動送風機8を再始動させる際にも電動送風機8の入力低減状態を維持する。
また、本体制御部9は、電動送風機8の入力低減状態にあるとき、予測値Ineと火花検知部58がサンプリングする検知結果の実測値In(実次回値)との差の絶対値が所定値Is以内になれば電動送風機8の入力低減状態を解除して電動送風機8の入力を復帰させる。
さらに、本体制御部9は、電動送風機8の入力低減状態が予め定める継続時間閾値Tsに達すると電動送風機8を停止させ、かつ電動送風機8の再起動を禁止する。
なお、記憶部59は、電動送風機8が入力低減状態にあるとき、入力低減状態の継続時間Tcを記憶する。この継続時間Tcに関する記憶情報は、記憶部59によって不揮発に記憶されている。つまり、電気掃除機1は、一旦商用交流電源Eから切り離されても、再度商用交流電源Eに接続されて電動送風機8を再始動させるときには、継続時間Tcを累積的に計時する。
具体的には、本体制御部9は、電動送風機8の始動、または再始動させると入力変更制御を開始する。そして先ず、本体制御部9は、前回運転の停止時(運転停止操作に基づく停止時)に電動送風機8が入力低減状態であったか否かを確認する(ステップS31)。本体制御部9は、記憶部59から継続時間Tcを読み出して、継続時間Tcが0より大きい場合には前回の停止時(運転停止操作に基づく停止時)に電動送風機8が入力低減状態であったことを確認し(ステップS31 Yes)、継続時間Tcが0以下の場合には前回の停止時(運転停止操作に基づく停止時)に電動送風機8が通常の入力状態であったことを確認する(ステップS31 No)。
そして、継続時間Tcが0以下の場合、つまり前回運転の停止時に電動送風機8が入力低減状態でなかった場合(ステップS31 No)には、本体制御部9は、それぞれの運転モードに対応させて、低減されていない通常の入力で電動送風機8の運転を制御する(ステップS32)。本体制御部9は、電動送風機8を通常入力状態で運転させている最中、火花検知(上記で説明した火花検知の第1実施例から第4実施例のいずれか)を行って火花の過大な発生の有無を繰り返し、推測する(ステップS33、ステップS34 No)。
他方、継続時間Tcが0より大きい場合、つまり前回運転の停止時(運転停止操作に基づく停止時)に電動送風機8が入力低減状態であった場合(ステップS31 Yes)には、本体制御部9は、電動送風機8の入力を通常入力状態よりも低減させて電動送風機8の運転を制御する(ステップS35)。また、電動送風機8を通常入力状態で運転させている最中、火花検知を行って火花の過大な発生を推測した場合(ステップS34 Yes)にも、本体制御部9は、電動送風機8の入力を通常入力状態よりも低減させて電動送風機8の運転を制御する(ステップS35)。入力低減状態における入力値は、通常入力状態における入力値と0より大きく1より小さい係数との積や、弱運転モードにおける入力値と0より大きく1より小さい係数との積や、予め定める実験値などから定める。
そして、本体制御部9は、電動送風機8を入力低減状態で運転させている最中も、火花検知を行って火花の過大な発生の有無を継続して推測する(ステップS36、ステップS37)。電動送風機8を入力低減状態で運転させている最中、火花の過大な発生が推測されなくなる、つまり電動送風機8の正常な運転を推測した場合には(ステップS37 No)、本体制御部9は、入力低減状態を解除し、それぞれの運転モードに対応させて、低減されていない通常の入力で電動送風機8の運転を制御する状態、つまり通常入力状態に復帰する(ステップS32)。このとき、本体制御部9は、入力低減状態の継続時間Tcをゼロ値に初期化する(ステップS38)。なお、入力低減状態の継続時間Tcは、電気掃除機1を一旦商用交流電源Eから切り離しても記憶部59に記憶されている。したがって、電気掃除機1は、一旦入力低減状態で電動送風機8の運転を制御し始めると、火花の過大な発生が推測されなくなって電動送風機8の正常な運転に復帰する(ステップS32、ステップS38)までは、入力低減状態を保ち続ける(ステップS31)。
他方、電動送風機8を入力低減状態で運転させている最中、火花の過大な発生を推測した場合には(ステップS37 Yes)、本体制御部9は、電動送風機8の入力低減状態を継続させて(ステップS39)、入力低減状態の継続時間Tcを累積して計時する(ステップS40)。本体制御部9は、入力低減状態の継続時間Tcを繰り返し監視する(ステップS41 No、ステップS36、ステップS37、ステップS39、ステップS40)。
そして、本体制御部9は、入力低減状態の継続時間Tcが継続時間閾値Tsより大きくなれば、電動送風機8を停止(運転停止操作に基づかない強制停止)させるとともに、これ以降の電動送風機8の再始動を禁止する(ステップS42)。
このように、本実施形態に係る電気掃除機1は、電動送風機8に過大な火花が発生した場合、電動送風機8の入力を低減させて運転を継続させる一方、電動送風機8を停止(運転停止操作に基づき停止時)させる際に電動送風機8の入力を低減させていた場合には電動送風機8を再始動させる際にも電動送風機8の入力低減状態を維持するため、整流子48とブラシ52との接触状態が馴染んだり、整流子48とブラシ52との接触部分の温度が低下したりして火花の発生量を改善させる可能性を高めて使用者の利便を図る一方で、過大な火花の発生を回避して安全性をも高められる。
また、本実施形態に係る電気掃除機1は、電動送風機8に過大な火花が発生しなくなれば電動送風機8の入力低減状態を解除して電動送風機8の入力を復帰させることによって、使用者の利便と火花の発生に対する安全性を両立できる。
さらに、本実施形態に係る電気掃除機1は、電動送風機8の入力低減状態が予め定める継続時間閾値Tsに達すると電動送風機8を停止(運転停止操作に基づかない強制停止)させ、かつ電動送風機8の再起動を禁止することによって、電動送風機が寿命に達していることを勘案し、火花の抑制を確実にして安全を確保する。
したがって、本発明に係る電気掃除機1によれば、整流子48とブラシ52との摩擦に基づく電動送風機8の発煙・発火を未然に防ぎつつ、火花発生量の回復が見込めない場合には適切に電動送風機8を停止させ、再起動を禁止できる。
なお、本実施形態に係る電気掃除機1は、キャニスタ型のものに限らず、アップライト型、スティック型、あるいはハンディ型などのものであってもよい。また、電気掃除機1は、商用交流電源Eの他に二次電池を備えたコードレス型のものであってもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。