以下、本開示の技術に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、或いはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
〈エンジンシステムの構成〉
図1に、エンジンシステム1の概略構成のブロック図を示す。エンジンシステム1は、主に、図1に示すように、外部から導入された空気である吸気が通過する吸気通路3と、この吸気通路3から供給された空気と燃料とを混合した混合気を燃焼させて車両の動力を発生するエンジン5と、このエンジン5内の燃焼により発生した排気を排出する排気通路7と、当該エンジンシステム1全体を制御するECU(Electric Control Unit)と呼ばれる制御部9とを備える。また、詳しくは後述するが、エンジンシステム1は、排気通路7に配置されたリア酸素センサ79の異常診断装置を搭載している。
吸気通路3には、上流側から順に、外部から空気が導入される際にその空気中に含まれるゴミ等の異物を取り除いて吸気を浄化するエアクリーナ11と、吸気通路3内の流路面積を変化させてエンジン5への吸気の供給量を調整するスロットルバルブ13と、エンジン5に供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク15とが設けられている。
スロットルバルブ13は、電子制御式のバルブであり、運転者による図示しないアクセルペダル装置に対するペダルの踏込み操作に応じて、制御部9からの制御信号により開閉作動する。吸気通路3のうちサージタンク15よりも下流側の部分は、後述するエンジン5の各気筒17毎に分岐した複数の独立吸気通路3a(図1では1つのみ示す)で構成されている。
エンジン5は、いわゆる火花点火式直噴エンジンであって、複数の気筒17(図1では1つのみ示す)が直列に設けられたシリンダブロック19と、このシリンダブロック19上に配置されたシリンダヘッド21とを備える。このエンジン5の各気筒17内には、空気と燃料との混合気を燃焼させる燃焼室23をシリンダヘッド21との間に区画するピストン25が往復動可能に嵌め入れられている。このピストン25は、コネクティングロッド27を介してクランクシャフト29に連結されている。クランクシャフト29は、ピストン25の往復運動を回転運動に変換して動力として出力する。
シリンダヘッド21には、各気筒17毎に燃焼室23の天井面にそれぞれ開口した吸気ポート31及び排気ポート33が形成されている。吸気ポート31は、吸気通路3の独立吸気通路3aから燃焼室23に空気を導入する接続口である。この吸気ポート31には、その燃焼室23側の開口を開閉する吸気バルブ35が設けられている。
この吸気バルブ35は、シリンダヘッド21の内部に軸支された吸気カムシャフト39によって、クランクシャフト29の回転に同期して開閉作動する。さらに、吸気バルブ35は、吸気カムシャフト39の位相を所定の角度範囲内で連続的に変更可能な、電磁式の位相可変機構(VVT:Variable Valve Timing)43によって開閉タイミングを進角側及び遅角側に変更可能となっている。
他方、排気ポート33は、燃焼室23での混合気の燃焼により生じた排気を排気通路7へ排出する接続口である。この排気ポート33には、その燃焼室23側の開口を開閉する排気バルブ37が設けられている。この排気バルブ37は、シリンダヘッド21の内部に軸支された排気カムシャフト41によって、クランクシャフト29の回転に同期して開閉作動する。
シリンダヘッド21にはさらに、各気筒17毎に、燃焼室23に向けて燃料(例えばガソリン)を噴射するインジェクタ45が設けられている。このインジェクタ45は、制御部9からの制御信号により、ピストン25の往復運動によって燃焼室23内の空気を圧縮する圧縮行程の上死点付近で燃料を噴射する。
また、シリンダブロック19には、各気筒17毎に、燃焼室23内において吸気ポート31から吸い込んだ空気とインジェクタ45から供給された燃料との混合気に点火する点火プラグ47が設けられている。この点火プラグ47は、制御部9からの制御信号により所定のタイミングで火花を発生し、その火花によって混合気を爆発燃焼させる。
排気通路7は、エンジン5の各気筒17毎に分岐してそれら各気筒17の排気ポート33からの排気がそれぞれ排出される複数の独立排気通路7a(図1では2つ示す)と、これら複数の独立排気通路7aを集合させた排気集合部7bと、この排気集合部7bから当該排気通路7の排出口側に延びる共通排気通路7cとを備える。
そして、この排気通路7のうち共通排気通路7cには、エンジン5から排出された排気に含まれる有害な大気汚染物質を浄化する排気浄化システム49が組み込まれている。大気汚染物質としては、NOx(窒素酸化物)、CO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)等が挙げられる。NOxは、燃料噴射量に対して吸入空気量が多い場合、つまりは空燃比がリーンである場合に、排気に多く生成されやすい成分である。また、CO,HCは、逆に燃料噴射量に対して吸入空気量が少ない場合、つまりは空燃比がリッチである場合に、排気に多く生成されやすい未燃成分である。
排気浄化システム49は、エンジン5寄りに設けられた近位連結触媒(CCC:Closed-Coupled Catalyst)コンバータと呼ばれる上流側触媒コンバータ51と、この上流側触
媒コンバータ51よりも排気通路7の排出口側で車両の床下に設けられた床下触媒(U/F:Under Floor)コンバータと呼ばれる下流側触媒コンバータ53とを併用したシステムである。
これら上流側触媒コンバータ51及び下流側触媒コンバータ53は、例えばいずれもモノリス型触媒コンバータであって、詳しくは図示しないが、筒状のケーシング内にハニカム構造の担体を収容して構成されている。担体には、上述した大気汚染物質を浄化可能な排気の浄化機能を有する排気浄化触媒51a,53aが担持されている。
これら排気浄化触媒51a,53aは、酸素を吸蔵及び放出する酸素吸蔵放出能を有し、排気中にNOxが含まれている場合は、それらを還元することで排気を浄化すると共に、その還元の過程で放出された酸素を吸蔵することができる。また、排気浄化触媒51a,53aは、排気中にCOやHCが含まれている場合には、吸蔵している酸素を放出しながらそれらを酸化することで、排気を浄化することができる。このような排気浄化触媒51a,53aの排気浄化性能は、当該排気浄化触媒51a,53aが所定の活性温度以上であるときに活性状態となって良好に発揮される。
排気浄化触媒51a,53aの酸素吸蔵放出能を測る指標値としては、酸素吸蔵容量(OSC:O2 Storage Capacity)なる値が用いられる。酸素吸蔵容量(OSC)は、排気浄化触媒51a,53aが吸蔵し得る酸素の吸蔵量(OSA:O2 Storage Amount)の最大値を示す。排気浄化触媒51a,53aが劣化すると、その劣化が進行するに連れて当該排気浄化触媒51a,53aの酸素吸蔵放出能は次第に低下し、それに伴い酸素吸蔵容量(OSC)も徐々に低下していく。このことから、酸素吸蔵容量(OSC)は、排気浄化触媒51a,53aの劣化度を表す指標値としても利用できる。
また、エンジンシステム1には、各種のセンサが設けられている。
具体的には、吸気通路3においては、エアクリーナ11とスロットルバルブ13との間でエアクリーナ11寄りの部分に、エアフローセンサ55が設けられている。エアフローセンサ55は、エアクリーナ11を通して吸気通路3に流入した吸入空気量を検出する。また、エアフローセンサ55は、吸気通路3の吸入口寄りの部分の気圧を大気圧として検出する気圧センサを内蔵している。このエアフローセンサ55としては、例えば、熱線式又はカルマン渦式のエアフローセンサを採用できる。
スロットルバルブ13には、当該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ57が設けられている。さらに、サージタンク15には、当該サージタンク15内の圧力、つまりスロットルバルブ13よりも下流側の吸気通路3の圧力を検出する吸気圧センサ59と、当該サージタンク15内の温度を検出する吸気温センサ61とが設けられている。
エンジン5においては、クランクシャフト29に、当該クランクシャフト29の回転角度位置を検出するための検出板63が一体に回転するように固定されており、この検出板63の回転角度位置を検出することでエンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ65が設けられている。さらに、シリンダブロック19には、図示しないウォータジャケットの内部に臨んで冷却水の温度(エンジン水温)を検出する水温センサ67が設けられている。
シリンダヘッド21には、吸気カムシャフト39の回転角度を検出する吸気カム角度センサ69と、排気カムシャフト41の回転角度を検出する排気カム角度センサ71とが設けられている。その他、図示しない燃料供給システムのコモンレール73には、インジェクタ45に供給する燃料の圧力を検出する燃圧センサ75が設けられている。
そして、排気通路7においては、共通排気通路7cのうち上流側触媒コンバータ51の上流側(エンジン5に近い側)の部分に、燃焼室23内の空燃比をフィードバック制御するために排気中の酸素濃度を検出するフロント酸素センサ77が設けられている。このフロント酸素センサ77は、排気中の酸素濃度に対し出力値がリニアに変化する出力特性を示すリニア空燃比センサ(LAFS:Linear A/F Sensor)であって、当該フロント酸素センサ77が良好な出力特性を発揮する活性温度にまで昇温(活性化)させるヒータを内蔵している。
さらに、共通排気通路7cのうち上流側触媒コンバータ51の下流側、具体的には上流側触媒コンバータ51と下流側触媒コンバータ53との間の部分には、上流側触媒コンバータ51を通過した後の排気の酸素濃度に応じて出力値が変化し、排気から空燃比がストイキ(理論空燃比)ないしリッチであるか、又はリーンであるかを検出するリア酸素センサ79が設けられている。このリア酸素センサ79は、ストイキに相当する酸素濃度を境に出力値が急激に変化する特性を示すラムダセンサであって、ストイキに対し、燃料が濃いリッチな場合には、酸素が薄いことを示す高出力値、例えば略1Vを出力し、逆に燃料が薄いリーンな場合には、酸素が濃いことを示す低出力値、例えば略0Vを出力する。
その他、エンジンシステム1は、車両の速度を検出する車速センサ81や、アクセルペダル装置に対するペダルの踏込み量を検出するアクセルセンサ83等を備える。
エアフローセンサ55は、検出した吸入空気量に対応する検出信号及び気圧に対応する検出信号を制御部9に出力する。スロットル開度センサ57は、検出したスロットルバルブ13の開度に対応する検出信号を制御部9に出力する。吸気圧センサ59は、検出したサージタンク15内の圧力に対応する検出信号を制御部9に出力する。吸気温センサ61は、検出したサージタンク15内の温度に対応する検出信号を制御部9に出力する。エンジン回転数センサ65は、検出したエンジン5の回転数に対応する検出信号を制御部9に出力する。水温センサ67は、検出した検出したエンジン水温に対応する検出信号を制御部9に出力する。
吸気カム角度センサ69は、検出した吸気カムシャフト39の回転角度に対応する検出信号を制御部9に出力する。排気カム角度センサ71は、検出した排気カムシャフト41の回転角度に対応する検出信号を制御部9に出力する。燃圧センサ75は、検出した燃料の圧力に対応する検出信号を制御部9に出力する。フロント酸素センサ77及びリア酸素センサ79は、それぞれ検出した排気中の酸素濃度に対応する検出信号を制御部9に出力する。車速センサ81は、検出した車速に対応する出力信号を制御部に出力する。アクセルセンサ83は、検出したペダルの踏込み量に対応する出力信号を制御部9に出力する。
制御部9は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)と、各種のプ
ログラム(OSなどの基本制御プログラムやOS上で起動されて特定の機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)やデータを格納するためのROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等により構成された内部メモリと、入出力(I/O)インターフェースとを備える。この制御部9は、上述した各種センサから出力された検出信号に基づいて種々の制御や処理を行う。
図2に、制御部9の機能ブロック図を示す。制御部9は、機能的には、図2に示すように、エンジン5の燃焼室23へ供給される空気量を設定する吸気量制御部85と、燃焼室23への燃料の噴射量を制御する燃料噴射量制御部87と、上流側触媒コンバータ51における排気浄化触媒51aの劣化を診断する触媒劣化診断部89と、エンジン5の燃焼室23への燃料噴射を停止させる燃料カット制御部91と、上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)を算出する吸蔵量算出部93と、上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出する酸素の流出量(OLA:O2 Leak Amount)を算出する流出量算出部95と、リア酸素センサ79の異常を判定するセンサ異常判定部97と、を備える。また、制御部9は、リア酸素センサ79の異常診断装置を構成している。
〈吸入空気量の制御〉
吸気量制御部85は、アクセルセンサ83により検出したペダルの踏込み量と車速センサ81により検出した車速などに基づき、エンジン5の出力として要求されているトルクを算出し、その要求されているトルクを実現するための目標とする吸入空気量(以下、「目標吸入空気量」と称する)を設定する。
また、吸気量制御部85は、エアフローセンサ55により検出された吸入空気量に基づき、又は、スロットル開度センサ57により検出されたスロットルバルブ13の開度と、吸気圧センサ59により検出されたサージタンク15内の気圧と、吸気温センサ61により検出されたサージタンク15内の温度とに基づき、燃焼室23へ供給される現在の吸入空気量(以下、「実吸入空気量」と称する)を算出する。
そして、吸気量制御部85は、実吸入空気量と目標吸入空気量との差に基づいて、スロットルバルブ13の開度を調整し、実吸入空気量を目標吸入空気量に近づけるように制御する。この吸気量制御部85では、実吸入空気量をエンジン5の制御に用いる吸入空気量として設定する。ここで設定された実吸入空気量は、例えば以下の燃料噴射量の制御に用いられる。
〈燃料噴射量の制御〉
燃料噴射量制御部87は、吸気量制御部85により設定された実吸入空気量を用いて、インジェクタ45から噴射する燃料噴射量を制御する。具体的には、燃料噴射量制御部87は、まず、吸気量制御部85により設定された実吸入空気量と、エンジン回転数センサ65により検出されたエンジン5の回転数から基本噴射量を演算する。次いで、この基本噴射量に、水温センサ67により検出されたエンジン水温に応じた補正量を加算する。
さらに、フロント酸素センサ77により検出された排気中の酸素濃度に基づいて、燃焼室23内の空燃比が所望の空燃比となるように、インジェクタ45による燃料噴射量をフィードバック補正する。
すなわち、フロント酸素センサ77の出力値が空燃比のリーンな状態を示す場合には、当該空燃比をリッチ側に移行させるように燃料噴射量にフィードバック補正量としてプラスの値を加算し、燃料噴射量をリッチ側に漸増させる。また、フロント酸素センサ77の出力値が空燃比のリッチな状態を示す場合には、当該空燃比をリーン側に移行させるように燃料噴射量にフィードバック補正量としてマイナスの値を加算し、燃料噴射量をリーン側に漸減させる。
このようなフィードバック制御によれば、排気の空燃比がストイキを挟んでリッチ側とリーン側とに移行を繰り返すから、上流側触媒コンバータ51及び下流側触媒コンバータ53の各排気浄化触媒51a,53aの酸素吸蔵放出能が有効に活用されて、排気浄化性能を良好に発揮させることができる。
なお、ここでは、燃料噴射量を調整することにより空燃比をフィードバック制御する場合を例に挙げて説明したが、これに代えて又はこれと併せて、吸入空気量を調整することにより空燃比をフィードバック制御することも可能である。吸入空気量の調整は、スロットルバルブ13の開度を操作する他、位相可変機構43によって吸気バルブ35の開閉タイミングを変更することでも行うことができる。
そして、燃料噴射量制御部87では、上流側触媒コンバータ51の排気浄化触媒51aの劣化による排気浄化性能の低下を補償するため、リア酸素センサ79により検出された排気中の酸素濃度に基づいて上述したフィードバック制御を補正する。
具体的には、リア酸素センサ79の出力値が空燃比のリーンな状態を示す低出力値である場合には、上流側触媒コンバータ51からその下流側に酸素が流出しているのであるから、上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)は酸素吸蔵容量(OSC)の上限に達した飽和状態である。よって、その場合には、空燃比をリッチ側に移行させるように燃料噴射量に対するフィードバック補正量を補正する。これにより、リーンな雰囲気が打ち消されると共に、上流側触媒コンバータ51に吸蔵された酸素の消費が促進されることで上流側触媒コンバータ51での酸素吸蔵能が回復し、それによって排気浄化機能を有効に発揮させることができる。
逆に、リア酸素センサ79の出力値が空燃比のリッチな状態を示す高出力値である場合には、上流側触媒コンバータ51からその下流側に酸素が流出していないのであるから、上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)は、酸素が殆ど吸蔵されていないか或いは全く吸蔵されていない枯渇状態であるかも知れない。よって、その場合には、空燃比をリーン側に移行させるように燃料噴射量に対するフィードバック補正量を補正する。これにより、リッチな雰囲気が打ち消されると共に、上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵が促進されることで上流側触媒コンバータ51での酸素放出能が回復し、それによって排気浄化機能を有効に発揮させることができる。
〈上流側触媒コンバータの触媒劣化診断処理〉
触媒劣化診断部89は、上流側触媒コンバータ51での現在の酸素吸蔵容量(OSC)を推定し、その酸素吸蔵容量(OSC)が初期状態から減少している場合には、上流側触媒コンバータ51の排気浄化触媒51aが熱損や被毒により劣化していると判定する。この触媒劣化診断部89による排気浄化触媒51aの劣化診断処理は、リア酸素センサ79が高出力値を示す状態において開始される。
具体的には、排気浄化触媒51aの劣化診断処理では、まず、フロント酸素センサ77により検出された排気中の酸素濃度に基づき、排気の空燃比がリーンとなるようにインジェクタ45による燃料噴射量を調整し、リア酸素センサ79が高出力値を示している間は、空燃比を強制的にリーン側に制御する。そして、リア酸素センサ79の出力値を監視する。
このように空燃比を強制的にリーン側に制御していると、NOxが排気中に多く含まれるため、上流側触媒コンバータ51の排気浄化触媒51aは、それらNOxを還元し、その過程で放出された酸素を吸蔵していく。そして、上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)が飽和状態となると、上流側触媒コンバータ51の下流側に酸素が流出するため、リア酸素センサ79の出力値が低出力値に反転する。よって、リア酸素センサ79の出力値が低出力値に反転したときには、上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)が上限に達していると判定することができる。
リア酸素センサ79の出力値が低出力値に反転したことが確認されると、続いて、フロント酸素センサ77により検出された排気中の酸素濃度に基づき、排気の空燃比がリッチとなるように燃料噴射量を調整し、リア酸素センサ79が低出力値を示している間は、空燃比を強制的にリッチ側に制御する。そして、リア酸素センサ79の出力値が低出力値となってから燃焼室23に噴射した燃料噴射量を積算すると共に、リア酸素センサ79の出力値を監視する。
このように空燃比を強制的にリッチ側に制御していると、CO、HCが排気中に多く含まれるため、上流側触媒コンバータ51の排気浄化触媒51aは、それらCO、HCを酸化し、その酸化の過程で酸素を放出していく。こうして排気浄化触媒51aが酸素を放出している間は、上流側触媒コンバータ51を通過した排気に酸素が補充されて十分に含まれるため、リア酸素センサ79の出力値は低出力のまま維持される。
そして、当該排気浄化触媒51aに吸蔵していた酸素がCO、HCの酸化に使い果たされると、排気は酸素の少ない状態で上流側触媒コンバータ51を通過してその下流側に流れるため、リア酸素センサ79の出力値が高出力値に反転する。よって、リア酸素センサ79の出力値が高出力値に反転したときには、上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)が下限に達していると判定することができる。
リア酸素センサ79の出力値が高出力値に反転したことが確認されると、次に、リア酸素センサ79の出力値が低出力値を示してから高出力値に反転するまでの間に燃焼室23に噴射した燃料噴射量に基づき、上流側触媒コンバータ51での現在の酸素吸蔵容量(OSC)を算出する。そして、その酸素吸蔵容量(OSC)と初期状態での酸素吸蔵容量(OSC)とを比較して、現在の酸素吸蔵容量(OSC)が初期状態での酸素吸蔵容量(OSC)から減っている場合には、排気浄化触媒51aは劣化していると判定する。
上述した排気浄化触媒51aの劣化診断処理は、所定期間をあけて定期的に実行される。なお、ここで算出した酸素吸蔵容量(OSC)は、後述する上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)の算出処理に用いられる。
〈減速時燃料カットの制御〉
燃料カット制御部91は、エンジン5が減速運転状態にある場合で所定の燃料カット条件が成立したときに、インジェクタ45によるエンジン5への燃料供給を停止させる減速燃料カットを行う。上記所定の燃料カット条件としては、例えば、スロットル開度センサ57により検出されたスロットルバルブ13の開度が全閉であり、且つエンジン回転数センサ65により検出されたエンジン回転数が所定回転数(アイドル回転数よりも若干高い回転数)よりも高いという条件である。この減速燃料カット時には、インジェクタ45及び点火プラグ47は作動しない。
〈上流側触媒コンバータでの吸蔵量の算出方法〉
吸蔵量算出部93は、エンジン5の運転状態に関わらず、上流側触媒コンバータ51での吸蔵量(OSA)の算出を実行する。この吸蔵量(OSA)の算出方法について、以下に、図3を参照しながら説明する。図3は、吸蔵量算出部93での演算処理のフローチャート図である。
吸蔵量算出部93による吸蔵量(OSA)の算出処理では、図3に示すように、まず、ステップST001において、エンジン5が始動し運転状態にあるかどうかを判定する。具体的には、制御部9がイグニッションスイッチのオン状態又はオフ状態を検出し、イグニッションスイッチがオン状態の場合にはエンジン5運転中と判定し、オフ状態の場合にはエンジン5が始動していないと判定する。このとき、エンジン5が始動していない場合には、ステップST001に戻って、再びエンジン5の運転状態を判定する。また、エンジン5が運転状態にある場合には、ステップST002に進む。
ステップST002では、吸蔵量算出部93で算出する吸蔵量(OSA)を初期化する。具体的には、吸蔵量(OSA)を「0」としてリセットする。続いて、ステップST003に進む。
ステップST003では、フロント酸素センサ77が活性状態となっているかどうか、そして、上流側触媒コンバータ51が排気浄化率50%に達するライトオフ温度となっているかどうかを判定する。
フロント酸素センサ77の活性状態については、当該フロント酸素センサ77の通電抵抗を測定し、その測定された通電抵抗に基づいて判定する。すなわち、当該通電抵抗が所定の基準値よりも高ければ、フロント酸素センサ77は未だ活性状態でないと判定し、当該通電抵抗が所定の基準値以下であれば、フロント酸素センサ77は活性状態となっていると判定する。
また、上流側触媒コンバータ51の温度は、エンジン5から排出される排気の温度を算出し、その算出された排気温度に基づいて推定する。そして、その排気温度が所定の基準値未満であれば、上流側触媒コンバータ51は未だライトオフ温度に達していないと判定し、当該排気温度が所定の基準値以上であれば、上流側触媒コンバータ51はライトオフ温度に達していると判定する。排気温度は、例えば、吸気温センサ61により検出された吸気温度に対し、エンジン5の燃焼室23での燃焼や後燃えによって受け取る熱量を積算すると共に、車両の走行に伴って放出される熱量を減算することにより算出することができる。
このステップST003での判定において、フロント酸素センサ77が活性状態でないか、又は上流側触媒コンバータ51がライトオフ温度に達していない場合には、ステップST002に戻る。また、フロント酸素センサ77が活性状態であり、且つ上流側触媒コンバータ51がライトオフ温度に達している場合には、ステップST004に進む。
ステップST004,ST005は、上流側触媒コンバータ51の排気浄化触媒51aの劣化診断処理によって吸蔵量(OSA)の初期化の要否を判定するステップである。ステップST003からステップST004に進んだときには、吸蔵量(OSA)は初期化されているので、ステップST004,ST005の処理に関わらず、吸蔵量(OSA)が初期化された状態でステップST006に進む。ステップST004及びステップST005については後述する。
ステップST006では、フロント酸素センサ77により検出された酸素濃度に基づいて排気の当量比φが、リッチな状態(φ>1)にあるのか、ストイキな状態(φ=1)にあるのか、リーンな状態(φ<1)にあるのかを判定する。このとき、当量比φがリッチな状態にある場合には、ステップST007に進む。また、当量比φがリーンな状態にある場合には、ステップST008に進む。その他、当量比φがストイキな状態にある場合には、吸蔵量(OSA)をそのまま保持し、ステップST009に進む。
ステップST007では、上流側触媒コンバータ51から放出される酸素の放出量、つまり吸蔵量減少分(ΔOSA1)を推定すると共に、その吸蔵量減少分(ΔOSA1)を吸蔵量(OSA)から減算する。この減算処理は、以下の式(1)に基づいて行われる。
OSA=OSA−ΔOSA1 …(1)
ここで、「ΔOSA1」は、以下の式(2)で表される。なお、「OA」は、吸入酸素量であり、エアフローセンサ55により検出された吸入空気量から当該吸入空気量に含まれる酸素の割合に基づいて算出される。
ΔOSA1=OA×(Φ−1) …(2)
ステップST008では、上流側触媒コンバータ51に吸蔵される酸素の吸蔵量増加分(ΔOSA2)を推定すると共に、その吸蔵量増加分(ΔOSA2)を吸蔵量(OSA)に加算する。この加算処理は、以下の式(3)に基づいて行われる。
OSA=OSA+ΔOSA2 …(3)
ここで、「ΔOSA2」は、以下の式(4)で表される。なお、「OA」は上述した式(2)と同じ吸入酸素量を示す。減速燃料カット時は、当量比φが「0」となるため、ΔOSAは、吸入酸素量(OA)と等しくなる。
ΔOSA2=OA×(1−Φ) …(4)
ステップST007では減算処理を終えた後、ステップST008では加算処理を終えた後に、ステップST009に進む。
ステップST009では、吸蔵量(OSA)が上流側触媒コンバータ51の酸素吸蔵容量(OSC)の上限値と下限値との間の範囲内にあるかどうかを判定する。ここで、酸素吸蔵容量(OSC)としては、初期状態での酸素吸蔵容量(OSC)が用いられる。このとき、吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)の下限値を下回っている場合には、ステップST010に進む。また、吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)の上限値を上回っている場合には、ステップST011に進む。その他、吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)の上下限範囲内にある場合には、吸蔵量(OSA)をそのまま保持し、ステップST012に進む。
ステップST010では、吸蔵量(OSA)に酸素吸蔵容量(OSC)の下限値、具体的には「0」を代入し、ステップST012に進む。ステップST011では、吸蔵量(OSA)に酸素吸蔵容量(OSC)の上限値を代入し、ステップST012に進む。
ステップST012では、これまでの処理で算出した吸蔵量(OSA)を確定する。しかる後、エンジン5が運転状態にある間は、ステップST004に戻って、それ以降の処理を実行することにより、吸蔵量(OSA)の再計算を繰り返す。
この吸蔵量(OSA)の算出処理中に、触媒劣化診断部89による排気浄化触媒51aの劣化診断処理は実行される。排気浄化触媒51aの劣化診断処理が実行された場合には、上流側触媒コンバータ51に吸蔵していた酸素がCO、HCの浄化に使い果たされて枯渇するため、吸蔵量(OSA)の算出処理では、吸蔵量(OSA)を初期化する必要がある。ステップST004,ST005はそのためのステップである。
すなわち、ステップST004では、上述した触媒劣化診断部89によって上流側触媒コンバータ51の排気浄化触媒51aの劣化診断処理が実行されたかどうかを判定する。このとき、排気浄化触媒51aの劣化診断処理が実行された場合には、ST005に進んで、吸蔵量(OSA)を初期化、つまり「0」とする。また、排気浄化触媒51aの劣化診断処理が実行されていない場合には、ステップST006に進み、上述したそれ以降の処理を実行する。
なお、ステップST004で排気浄化触媒51aの劣化診断処理が実行されたと判定された場合には、それ以降に実行されるステップST009では、初期状態での酸素吸蔵容量(OSC)に代えて、排気浄化触媒51aの劣化診断処理で算出した現在の酸素吸蔵容量(OSC)が用いられる。以上の処理により、上流側触媒コンバータ51の吸蔵量(OSA)は繰り返し算出されて時々刻々と変化する。
〈酸素流出量の算出方法〉
流出量算出部95は、燃料カット制御部91によるエンジン5の減速運転中に行われる減速燃料カット時に、上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出する酸素の流出量(OLA:O2 Leak Amount)の算出を実行する。この流出量(OLA)の算出処理は、吸蔵量(OSA)の算出処理と並行して実行される。当該流出量(OLA)の算出方法について、以下に、図4を参照しながら説明する。図4は、流出量算出部95での演算処理のフローチャート図である。
流出量算出部95による流出量(OLA)の算出処理では、図4に示すように、まず、ステップST101において、燃料カット制御部91による減速燃料カットの実行中かどうかを判定する。このとき、減速燃料カットの実行中でない場合には、ステップST102に進む。また、減速燃料カットの実行中である場合には、ステップST103に進む。
ステップST102では、上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出する酸素の流出量(OLA)を初期化する。具体的には、当該流出量(OLA)を「0」としてリセットする。そして、ステップST101に戻って、減速燃料カットの実行中かどうかの判定を再び行う。
ステップST103では、吸蔵量算出部93で算出された吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)の上限値以上であるかどうかを判定する。このとき、当該吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)未満である場合には、上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に酸素が流出していないと推定されるため、ステップST102に進んで、流出量(OLA)を初期化、つまり「0」とする。また、当該吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)以上である場合には、ステップST104に進む。
ステップST104では、上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に酸素が流出していると推定されるので、上流側触媒コンバータ51からその下流に流出する酸素の流出量増加分(ΔOLA)を推定すると共に、その流出量増加分(ΔOLA)を流出量(OLA)に加算する。この加算処理は、以下の式(5)に基づいて行われる。
OLA=OLA+ΔOLA …(5)
ここで、ΔOLAは、上記式(4)と同様な以下の式(6)で表される。なお、「OA」は上述した式(2)と同じ吸入酸素量を示す。
ΔOLA=OA×(1−Φ) …(6)
しかる後、ステップST101に戻って、減速燃料カットの実行中である間は、それ以降の処理を実行することにより、流出量(OLA)の再計算を繰り返す。そして、吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)の上限以上であるうちは流出量(OLA)が積算され続ける。これにより、上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出する酸素の流出量(OLA)が算出される。
〈リア酸素センサの異常判定方法〉
センサ異常判定部97は、流出量算出部95により算出された流出量(OLA)が所定の判定基準値となったときに、リア酸素センサ79の異常を判定する。ここでいう「所定の判定基準値」には、実際にリア酸素センサ79が反応する酸素量に相当する値が設定される。このリア酸素センサ79の異常判定方法について、以下に、図5を参照しながら説明する。図5は、センサ異常判定部97での異常判定処理のフローチャート図である。
センサ異常判定部97によるリア酸素センサ79の異常判定処理では、図5に示すように、まず、ステップST201において、流出量算出部に95より算出された流出量(OLA)が所定の判定基準値以上となっているかどうかを判定する。このとき、当該流出量(OLA)が所定の判定基準値に満たない場合には、ステップST201に戻って、再び同様の判定を行う。また、当該流出量(OLA)が所定の判定基準値以上となっている場合には、ステップST202に進む。
ステップST202では、リア酸素センサ79が反応するだけの十分な酸素を含んだ排気が上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出しているものとして、リア酸素センサ79の出力値が高出力値から低出力値に切り替わっているかどうかを判定する。このとき、リア酸素センサ79の出力値が低出力値である場合には、ステップST203に進み、リア酸素センサ79は正常に動作しているとして、異常診断処理を終了する。また、リア酸素センサ79の出力値が高出力値のままである場合には、ステップST204に進む。
ステップST204では、リア酸素センサ79に故障などの異常が発生していると判定し、ステップST205に進む。ステップST205では、MIL(Malfunction Indicator Lamp)と呼ばれる警告灯99を点灯させることにより運転者に異常発生を知らせて、異常判定処理を終了する。
制御部9は、以上に説明した上流側触媒コンバータ51での吸蔵量(OSA)の算出処理、流出量(OLA)の算出処理、及びリア酸素センサ79の異常判定処理によって、リア酸素センサ79の異常を診断する。
この制御部9によるリア酸素センサ79の異常診断処理について、以下に、図6を参照しながら一例を挙げて説明する。図6は、リア酸素センサ79の異常診断処理での燃料カット、排気通路7に流れる排気に含まれる酸素量、上流側触媒コンバータ51での吸蔵量(OSA)、上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出した酸素の流出量(OLA)、及びリア酸素センサ79の出力値を示すタイミングチャートである。
ここでは、減速燃料カットの実行中に一旦中断が入ってから減速燃料カットの実行に復帰する場合について説明する。また、説明の便宜上、時刻t0において、減速燃料カットの実行が開始され、そのときの上流側触媒コンバータ51は吸蔵した酸素を全て放出した状態、つまり吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)の下限となっており、リア酸素センサ79の出力値は空燃比がリッチであることを示す高出力値であるものとする。
減速燃料カットが実行されると、吸気通路3からエンジン5の燃焼室23に吸入された空気が、燃料との混合気として燃焼されることなく、そのまま排気通路7に排気として排出されるため、排気通路7に排出された排気に含まれる酸素量は時間tの経過と共に増大していく。このように酸素を含む排気が排気通路7に流れている期間中は、排気に含まれる酸素が上流側触媒コンバータ51に吸蔵されていく。このときの上流側触媒コンバータ51での吸蔵量(OSA)は、上述した通り吸蔵量算出部93により算出される。
そして、時刻t1において上流側触媒コンバータ51での吸蔵量(OSA)が酸素吸蔵容量(OSC)の上限に達する飽和状態となると、その後に、上流側触媒コンバータ51から下流側に酸素を含む排気が流れ始め、その排気と共に流出する酸素の流出量(OLA)が漸増していく。このとき、上流側触媒コンバータ51から下流側に流出する酸素の流出量(OLA)は、上述した通り流出量算出部95により算出される。
この例では、流出量算出部95により算出される流出量(OLA)が所定の判定基準値に達する前の時刻t2に、減速時燃料カットが一旦中断される。減速時燃料カットが中断された後暫く時刻t3までの期間は、エンジン5の気筒17内に残存した酸素を多く含む空気が排気通路7に排出されるが、その後は吸入空気がエンジン5の燃焼室23にて燃料との混合気として燃焼され、排気通路7には、酸素の少ない排気が排出される。この排気が上流側触媒コンバータ51に流れると、上流側触媒コンバータ51は、吸蔵していた酸素をその排気に含まれるCO、HCを浄化するために放出するので、上流側触媒コンバータ51での吸蔵量(OSA)は、飽和状態から減量される。
続く時刻t4において、この例では、中断していた減速時燃料カットを実行状態に復帰させる。そうすると、エンジン5から排気通路7に酸素を含む空気が排気として排出され、その排気に含まれる酸素が上流側触媒コンバータ51に吸蔵されていく。そして、時刻t5において上流側触媒コンバータ51での吸蔵量(OSA)が再び飽和状態となり、その後に、上流側触媒コンバータ51から下流側に酸素を含む排気が流れて、上流側触媒コンバータ51から下流側に流出する酸素の流出量(OLA)が漸増していく。
上流側触媒コンバータ51から下流側に酸素が流出し始めてから暫く経った時刻t6において、リア酸素センサ79が排気に含まれる酸素に反応し始める。その時点において、流出量算出部95により算出される流出量(OLA)は、所定の判定基準値に達していない。この流出量(OLA)は、しかる後の時刻t7において所定の判定基準値以上となる。このとき、リア酸素センサ79の出力値が観測され、観測されたリア酸素センサ79の出力値に基づいて当該リア酸素センサ79に異常が生じていないかどうかがセンサ異常判定部97によって判定される。この例では、リア酸素センサ79の出力値が低出力値に切り替わっているので、リア酸素センサ79は正常であると判断される。
この実施形態によると、流出量算出部95で上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出する流出量(OLA)を算出し、センサ異常判定部97により、流出量算出部95で算出された流出量(OLA)が所定の判定基準値以上となったときにリア酸素センサ79の異常をその出力値に基づいて判定するので、実際にリア酸素センサ79が反応するだけの十分な酸素を含んだ排気が上流側触媒コンバータ51からリア酸素センサ79側に流出したタイミングを見計らってリア酸素センサ79の異常を判定することができる。これによって、リア酸素センサ79の異常を精度良く検出することができる。
以上、本明細書において開示する技術の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されない。上記実施形態が例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せに、さらに色々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の技術範囲に属することは当業者に理解されるところである。
例えば、上記実施形態では、排気浄化触媒51aの劣化診断処理で算出した酸素吸蔵容量(OSC)が、吸蔵量算出部93による上流側触媒コンバータ51での酸素の吸蔵量(OSA)の算出処理に用いられるとしたが、これに限らず、当該吸蔵量の算出処理には、予め定めた所定の酸素吸蔵容量(固定値)を用いていてもよい。
また、上記実施形態では、エンジンが過給機を有しないエンジンシステムであるものを例に挙げて説明したが、過給機付きのエンジンシステムであってもよい。