以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
<第1実施形態>
最初に、図1〜図6を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
<内燃機関全体の説明>
図1は、本発明の第1実施形態における内燃機関100を概略的に示す図である。図1を参照すると1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。吸気弁6は吸気ポート7を開閉し、排気弁8は排気ポート9を開閉する。
図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4の内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。点火プラグ10は、点火信号に応じて火花を発生させるように構成される。また、燃料噴射弁11は、噴射信号に応じて、所定量の燃料を燃焼室5内に直接噴射する。燃料噴射弁11は、燃焼室5内に燃料を直接噴射するようにシリンダヘッド4の内壁面周辺部に配置されている。すなわち、内燃機関100は筒内噴射式内燃機関である。なお、内燃機関100はポート噴射式内燃機関であってもよい。この場合、燃料噴射弁11は、吸気ポート7内に燃料を噴射するように配置される。また、本実施形態では、燃料として理論空燃比が14.6であるガソリンが用いられる。
各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気ポート7、吸気枝管13、サージタンク14、吸気管15は、空気を燃焼室5に導く吸気通路を形成する。また、吸気管15内にはスロットル弁駆動アクチュエータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。スロットル弁18は、スロットル弁駆動アクチュエータ17によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。
一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結される。排気マニホルド19は、各排気ポート9に連結される複数の枝部とこれら枝部が集合した集合部とを有する。排気マニホルド19の集合部は上流側排気浄化触媒20を内蔵した上流側ケーシング21に連結される。上流側ケーシング21は、排気管22を介して下流側排気浄化触媒24を内蔵した下流側ケーシング23に連結される。したがって、下流側排気浄化触媒24は排気通路において上流側排気浄化触媒20の排気流れ方向下流側に配置される。排気ポート9、排気マニホルド19、上流側ケーシング21、排気管22及び下流側ケーシング23は、混合気の燃焼によって生じた排気ガスを燃焼室5から排出する排気通路を形成する。
電子制御ユニット(ECU)31はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を具備する。吸気管15には、吸気管15内を流れる空気流量を検出するためのエアフロメータ39が配置され、このエアフロメータ39の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
また、排気マニホルド19の集合部、すなわち上流側排気浄化触媒20の排気流れ方向上流側には、排気マニホルド19内を流れる排気ガス(すなわち、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガス)の空燃比を検出する上流側空燃比センサ40が配置される。加えて、排気管22内、すなわち上流側排気浄化触媒20と下流側排気浄化触媒との間には、排気管22内を流れる排気ガス(すなわち、上流側排気浄化触媒20から流出して下流側排気浄化触媒24に流入する排気ガス)の空燃比を検出する下流側空燃比センサ41が配置される。これら空燃比センサ40、41の出力も対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。
また、アクセルペダル42にはアクセルペダル42の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ43が接続され、負荷センサ43の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。クランク角センサ44は例えばクランクシャフトが15度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート36に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ44の出力パルスから機関回転数が計算される。一方、出力ポート37は対応する駆動回路45を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11及びスロットル弁駆動アクチュエータ17に接続される。なお、ECU31は、内燃機関100の各種制御を行う制御装置として機能する。
なお、本実施形態に係る内燃機関100は、ガソリンを燃料とする無過給内燃機関であるが、本発明に係る内燃機関の構成は、上記構成に限定されるものではない。例えば、本発明に係る内燃機関は、気筒配列、燃料の噴射態様、吸排気系の構成、動弁機構の構成、過給器の有無、及び過給態様等が、図1に示した内燃機関100と異なるものであってもよい。
<排気浄化触媒の説明>
排気通路に配置された上流側排気浄化触媒20及び下流側排気浄化触媒24は、いずれも同様な構成を有する。排気浄化触媒20、24は、酸素吸蔵能力を有する三元触媒である。具体的には、排気浄化触媒20、24は、セラミックから成る基材に、触媒作用を有する貴金属(例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等)及び酸素吸蔵能力を有する物質(例えば、セリア(CeO2))を担持させたものである。排気浄化触媒20、24は、所定の活性温度に達すると、未燃ガス(HC、CO等)と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化する触媒作用に加えて、酸素吸蔵能力を発揮する。
排気浄化触媒20、24の酸素吸蔵能力によれば、排気浄化触媒20、24は、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン(リーン空燃比)であるときには排気ガス中の酸素を吸蔵する。一方、排気浄化触媒20、24は、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ(リッチ空燃比)であるときには、排気浄化触媒20、24に吸蔵されている酸素を放出する。
排気浄化触媒20、24は、触媒作用及び酸素吸蔵能力を有することにより、酸素吸蔵量に応じてNOx及び未燃ガスの浄化作用を有する。すなわち、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比がリーン空燃比である場合、図2(A)に示したように、酸素吸蔵量が少ないときには排気浄化触媒20、24により排気ガス中の酸素が吸蔵される。また、これに伴って、排気ガス中のNOxが還元浄化される。また、酸素吸蔵量が多くなると、最大吸蔵可能酸素量Cmax近傍の或る吸蔵量(図中のCuplim)を境に排気浄化触媒20、24から流出する排気ガス中の酸素及びNOxの濃度が急激に上昇する。
一方、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比である場合、図2(B)に示したように、酸素吸蔵量が多いときには排気浄化触媒20、24に吸蔵されている酸素が放出され、排気ガス中の未燃ガスは酸化浄化される。また、酸素吸蔵量が少なくなると、ゼロ近傍の或る吸蔵量(図中のClowlim)を境に排気浄化触媒20、24から流出する排気ガス中の未燃ガスの濃度が急激に上昇する。
以上のように、本実施形態において用いられる排気浄化触媒20、24によれば、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比及び酸素吸蔵量に応じて排気ガス中のNOx及び未燃ガスの浄化特性が変化する。なお、触媒作用及び酸素吸蔵能力を有していれば、排気浄化触媒20、24は三元触媒とは異なる触媒であってもよい。
<空燃比センサの出力特性>
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態における空燃比センサ40、41の出力特性について説明する。図3は、本実施形態における空燃比センサ40、41の電圧−電流(V−I)特性を示す図であり、図4は、印加電圧を一定に維持したときの、空燃比センサ40、41周りを流通する排気ガスの空燃比(以下、「排気空燃比」という)と出力電流Iとの関係を示す図である。なお、本実施形態では、両空燃比センサ40、41として同一構成の空燃比センサが用いられる。
図3からわかるように、本実施形態の空燃比センサ40、41では、出力電流Iは、排気空燃比が高くなるほど(リーンになるほど)、大きくなる。また、各排気空燃比におけるV−I線には、V軸にほぼ平行な領域、すなわちセンサ印加電圧が変化しても出力電流がほとんど変化しない領域が存在する。この電圧領域は限界電流領域と称され、このときの電流は限界電流と称される。図3では、排気空燃比が18であるときの限界電流領域及び限界電流をそれぞれW18、I18で示している。したがって、空燃比センサ40、41は限界電流式の空燃比センサであるということができる。
図4は、印加電圧を0.45V程度で一定にしたときの、排気空燃比と出力電流Iとの関係を示す図である。図4からわかるように、空燃比センサ40、41では、排気空燃比が高くなるほど(すなわち、リーンになるほど)、空燃比センサ40、41からの出力電流Iが大きくなるように、排気空燃比に対して出力電流がリニアに(比例するように)変化する。加えて、空燃比センサ40、41は、排気空燃比が理論空燃比であるときに出力電流Iが零になるように構成される。また、排気空燃比が一定以上に大きくなったとき、或いは一定以下に小さくなったときには、排気空燃比の変化に対する出力電流の変化の割合が小さくなる。
なお、上記例では、空燃比センサ40、41として限界電流式の空燃比センサを用いている。しかしながら、排気空燃比に対して出力電流がリニアに変化するものであれば、空燃比センサ40、41として、限界電流式ではない空燃比センサ等、如何なる空燃比センサを用いてもよい。また、両空燃比センサ40、41は互いに異なる構造の空燃比センサであってもよい。
<空燃比制御装置の説明>
内燃機関100は空燃比制御装置を備える。本実施形態ではECU31が空燃比制御装置に相当する。空燃比制御装置は、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガス(以下、単に「流入排気ガス」と称する。)の目標空燃比を設定すると共に、上流側空燃比センサ40の出力空燃比が目標空燃比に一致するように燃焼室5に供給される燃料量をフィードバック制御する。目標空燃比は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比等に基づいて設定される。なお、「出力空燃比」とは、空燃比センサ40、41によって検出された空燃比であり、空燃比センサ40、41の出力値に相当する空燃比を意味する。
例えば、空燃比制御装置は、通常制御において、流入排気ガスの目標空燃比をリーン設定空燃比と通常リッチ設定空燃比とに交互に設定する。この場合、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ空燃比となったときに、目標空燃比をリーン設定空燃比に設定する。リーン設定空燃比は、理論空燃比よりもリーンである予め定められた空燃比であり、例えば14.8〜15.5程度とされる。また、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が理論空燃比よりも僅かにリッチであるリッチ側ストイキ判定空燃比(例えば、14.55)未満になったときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ空燃比になったと判定する。
空燃比制御装置は、目標空燃比をリーン設定空燃比に変更した後、流入排気ガスの酸素過不足量を積算する。酸素過不足量とは、流入排気ガスの空燃比を理論空燃比にしようとしたときに過剰となる酸素の量又は不足する酸素の量を意味する。特に、目標空燃比がリーン設定空燃比となっているときには流入排気ガス中の酸素は過剰となり、この過剰な酸素は上流側排気浄化触媒20に吸蔵される。したがって、酸素過不足量の積算値(以下、「積算酸素過不足量」と称する。)は、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量の推定値を表している。
酸素過不足量OEDは、例えば、下記式(1)により算出される。
OED=0.23×(AFup−14.6)×Qi …(1)
ここで、0.23は空気中の酸素濃度、14.6は理論空燃比、Qiは燃料噴射量、AFupは上流側空燃比センサ40の出力空燃比をそれぞれ表している。
このようにして算出された酸素過不足量を積算した積算酸素過不足量が、切替基準値(切替基準吸蔵量Crefに相当)以上になると、空燃比制御装置は、流入排気ガスの目標空燃比をリーン設定空燃比から通常リッチ設定空燃比に切り替える。切替基準吸蔵量Crefは、上流側排気浄化触媒20が未使用であるときの最大吸蔵可能酸素量よりも少ない値に設定される。また、通常リッチ設定空燃比は、理論空燃比よりもリッチである予め定められた空燃比であり、例えば14.4〜14.5程度とされる。なお、本実施形態では、通常リッチ設定空燃比と理論空燃比との差(リッチ度合)は、リーン設定空燃比と理論空燃比との差(リーン度合)以下とされる。
空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が再びリッチ側ストイキ判定空燃比未満となったときに、目標空燃比を通常リッチ設定空燃比からリーン設定空燃比に切り替え、その後、同様に目標空燃比をリーン設定空燃比と通常リッチ設定空燃比とに交互に設定する。
ただし、上述したような通常制御を行った場合であっても、積算酸素過不足量が切替基準値に到達する前に上流側排気浄化触媒20の実際の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量に到達する場合がある。その原因としては、例えば、経年劣化によって上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量が低下することが挙げられる。上流側排気浄化触媒20の実際の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量に到達すると、上流側排気浄化触媒20からリーン空燃比の排気ガスが流出する。
このため、本実施形態では、積算酸素過不足量が切替基準値に到達する前に下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比となった場合には、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比となったときに目標空燃比をリーン設定空燃比からリッチ設定空燃比に切り替える。この場合、空燃比制御装置は、その後の通常制御における切替基準値を低下させる。このことによって、その後の通常制御において上流側排気浄化触媒20からリーン空燃比の排気ガスが再び流出することを抑制することができる。
また、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が理論空燃比よりも僅かにリーンであるリーン側ストイキ判定空燃比(例えば、14.65)よりも高くなったときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比になったと判定する。また、上述したように、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が理論空燃比よりも僅かにリッチであるリッチ側ストイキ判定空燃比(例えば、14.55)未満になったときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ空燃比になったと判定する。したがって、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ側ストイキ判定空燃比とリーン側ストイキ判定空燃比との間のストイキ判定領域(例えば14.55〜14.65)にあるときには、上流側排気浄化触媒20から流出する排気ガス(以下、単に「流出排気ガス」と称する。)が理論空燃比であると判定する。
<燃料カット制御>
また、空燃比制御装置は、内燃機関100の運転中に燃焼室5への燃料供給を停止する燃料カット制御を実行する。具体的には、空燃比制御装置は、燃料カット制御において、燃料噴射弁11からの燃料噴射を停止することで燃焼室5への燃料供給を停止する。燃料カット制御は、燃料カット制御の所定の実行条件が成立しているときに実行される。例えば、燃料カット制御の実行条件は、アクセルペダル42の踏込み量がゼロ又はほぼゼロ(すなわち、機関負荷がゼロ又はほぼゼロ)であり且つ機関回転数がアイドリング時の回転数よりも高い所定の回転数以上であるときに成立する。
燃料カット制御が実行されると、機関本体1から空気又は空気と同様な排気ガスが排出されるため、上流側排気浄化触媒20には空燃比の極めて高い(すなわち、リーン度合の極めて高い)ガスが流入することになる。このため、燃料カット制御が所定時間以上継続されると、上流側排気浄化触媒20に多量の酸素が流入し、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量に達する。また、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量に達すると、下流側排気浄化触媒24にも多量の酸素が流入し、下流側排気浄化触媒24の酸素吸蔵量も最大吸蔵可能酸素量に達する。
<復帰後リッチ制御>
上述したように、燃料カット制御が所定時間以上継続されると、上流側排気浄化触媒20及び下流側排気浄化触媒24の酸素吸蔵量が最大となる。上流側排気浄化触媒20及び下流側排気浄化触媒24は、酸素吸蔵量が最大の状態では排気ガス中のNOxを還元浄化することができない。このため、空燃比制御装置は、燃料カット制御の終了後に、流入排気ガスの目標空燃比をリッチ側ストイキ判定空燃比よりもリッチな空燃比に設定する復帰後リッチ制御を実行する。
復帰後リッチ制御では、燃料カット制御後に上流側排気浄化触媒20及び下流側排気浄化触媒24からNOxが流出することを抑制すべく、燃料カット制御中に上流側排気浄化触媒20の貴金属に付着した酸素を迅速に還元浄化する必要がある。このため、復帰後リッチ制御における目標空燃比は、通常制御における通常リッチ設定空燃比よりもリッチにされる。
しかしながら、復帰後リッチ制御における目標空燃比がリッチ度合が大きな空燃比に維持されると、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量がゼロになった後、リッチ度合が大きな排気ガスが下流側排気浄化触媒24にも流入し、下流側排気浄化触媒24の酸素吸蔵量が過度に低下する。この結果、下流側排気浄化触媒24における未燃ガスの浄化能力が低下するため、排気ガス中の未燃ガスが下流側排気浄化触媒24から流出し、排気エミッションが悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態では、空燃比制御装置は、復帰後リッチ制御において、上流側空燃比センサ40の出力空燃比がリッチ側ストイキ判定空燃比よりもリッチであり且つ下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン側ストイキ判定空燃比よりもリーンな切替空燃比以下になったときに流入排気ガスの目標空燃比のリッチ度合を低下させる。この結果、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量がゼロになる前に流入排気ガスの目標空燃比のリッチ度合が低下されるため、リッチ度合の大きな排気ガスが下流側排気浄化触媒24に流入することが抑制される。したがって、燃料カット制御後に、排気ガス中の未燃ガスが下流側排気浄化触媒24から流出し、排気エミッションが悪化することを抑制することができる。
一方、本実施形態における復帰後リッチ制御においても、流入排気ガスの目標空燃比のリッチ度合を低下させる前には、リッチ度合が大きな排気ガスが上流側排気浄化触媒20に流入する。このため、燃料カット制御中に上流側排気浄化触媒20の貴金属に付着した酸素を迅速に還元浄化することでき、燃料カット制御後に、排気ガス中のNOxが上流側排気浄化触媒20及び下流側排気浄化触媒24から流出し、排気エミッションが悪化することを抑制することができる。したがって、本実施形態における復帰後リッチ制御によれば、燃料カット制御後の排気エミッションの悪化を抑制することができる。
<タイムチャートを用いた空燃比制御の説明>
以下、図5のタイムチャートを参照して、本実施形態における空燃比制御について具体的に説明する。図5は、燃料カット制御の前後における、流入排気ガスの目標空燃比TAF、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFup、下流側空燃比センサ41周りの実際の空燃比、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwn、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAup及び下流側排気浄化触媒24の酸素吸蔵量OSAdwnのタイムチャートである。
図示した例では、時刻t1まで燃料カット制御が実行されている。この結果、時刻t1において、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAupが最大吸蔵可能酸素量Cmaxupになっており、下流側排気浄化触媒24の酸素吸蔵量OSAdwnが最大吸蔵可能酸素量Cmaxdwnになっている。なお、この例では、下流側排気浄化触媒24の最大吸蔵可能酸素量Cmaxdwnは上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量Cmaxupよりも少ない。
時刻t1において燃料カット制御が終了せしめられ、復帰後リッチ制御が開始される。通常、空燃比センサ40、41の温度は燃料カット制御によって低下し、燃料カット制御の終了時には、空燃比センサ40、41は非活性状態となっている。このため、復帰後リッチ制御の開始直後には、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupに基づいて空燃比をフィードバック制御することができない。
そこで、復帰後リッチ制御の開始直後には、空燃比の開ループ制御が実行される。具体的には、燃焼室5に供給される燃料と空気との比率が目標空燃比TAFに一致するように、エアフロメータ39によって検出された吸入空気量と、目標空燃比TAFとから算出された燃料量が燃焼室5に供給される。このときの目標空燃比TAFは、リッチ度合が非常に大きな値に設定される。時刻t1において復帰後リッチ制御が開始されると、上流側排気浄化触媒20から酸素が放出されるため、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAupは徐々に低下していく。
時刻t1の後、時刻t2において、上流側空燃比センサ40が活性状態となり、目標空燃比が強リッチ設定空燃比TAFsrichに設定される。時刻t2以降、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupに基づく空燃比のフィードバック制御が実行される。
時刻t2の後、時刻t3において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが切替空燃比AFsw以下になる。また、このときの上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupは、強リッチ設定空燃比TAFsrichであり、リッチ側ストイキ判定空燃比AFrichよりもリッチである。時刻t3において、目標空燃比TAFが強リッチ設定空燃比TAFsrichから弱リッチ設定空燃比TAFwrichに切り替えられる。すなわち、目標空燃比TAFのリッチ度合が低下せしめられる。
時刻t3において上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量はゼロよりも多い。このため、下流側空燃比センサ41周りの実際の空燃比は理論空燃比以上になっており、下流側排気浄化触媒の酸素吸蔵量OSAdwnは最大吸蔵可能酸素量Cmaxdwnに維持されている。
時刻t3の後、時刻t4において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満となる。この結果、目標空燃比TAFが弱リッチ設定空燃比TAFwrichからリーン設定空燃比TAFleanに切り替えられ、復帰後リッチ制御が終了せしめられる。
下流側空燃比センサ41周りの実際の空燃比は時刻t4よりも前にリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満となっている。このため、リッチ空燃比の排気ガスが下流側排気浄化触媒24に流入し、下流側排気浄化触媒24の酸素吸蔵量OSAdwnが減少する。しかしながら、下流側空燃比センサ41周りの実際の空燃比がリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満になる前の時刻t3において目標空燃比TAFのリッチ度合を低下させているため、酸素吸蔵量OSAdwnの減少量は少ない。このため、復帰後リッチ制御が終了した後も、未燃ガスを酸化浄化するのに十分な量の酸素が下流側排気浄化触媒24に残される。
時刻t4以降、通常制御が実行される。その後、時刻t5において、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAupが切替基準吸蔵量Crefに達する。この結果、目標空燃比TAFがリーン設定空燃比TAFleanから通常リッチ設定空燃比TAFnrichに切り替えられる。通常リッチ設定空燃比TAFnrichは弱リッチ設定空燃比TAFwrichよりもリッチ度合が小さい。
時刻t5の後、時刻t6において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが再びリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満となる。この結果、目標空燃比TAFが通常リッチ設定空燃比TAFnrichからリーン設定空燃比TAFleanに切り替えられる。その後、通常制御では、目標空燃比TAFが通常リッチ設定空燃比TAFnrichとリーン設定空燃比TAFleanとの間で交互に切り替えられる。
なお、図示した例では、空燃比の開ループ制御が実行されるとき(時刻t1〜時刻t2)の目標空燃比が強リッチ設定空燃比TAFsrichよりもリッチな値にされている。しかしながら、空燃比の開ループ制御が実行されるときの目標空燃比は強リッチ設定空燃比TAFsrichと同じであってもよい。また、空燃比の開ループ制御が実行されるときの目標空燃比は二段階以上に切り替えられてもよい。
<空燃比制御の制御ルーチン>
以下、図6のフローチャートを参照して、本実施形態における空燃比制御について詳細に説明する。図6は、第1実施形態における空燃比制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、内燃機関100の始動後、ECU31によって繰り返し実行される。
最初にステップS101において燃料カット制御の実行条件が成立しているか否かが判定される。例えば、アクセルペダル42の踏込み量がゼロ又はほぼゼロであり且つ機関回転数がアイドリング時の回転数よりも高い所定の回転数以上であるときに燃料カット制御の実行条件が成立していると判定され、アクセルペダル42の踏込み量が所定値以上であり又は機関回転数がアイドリング時の回転数よりも高い所定の回転数未満であるときに燃料カット制御の実行条件が成立していないと判定される。
ステップS101において燃料カット制御の実行条件が成立していると判定された場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。ステップS102では、燃焼室5への燃料供給が停止される。
次いで、ステップS103において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが所定値A以上であるか否かが判定される。所定値Aは、リーン度合が非常に大きい空燃比とされ、例えば16〜17である。下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが所定値A以上である場合には、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量となっており、上流側排気浄化触媒20から酸素が流出していると考えられる。
ステップS103において下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが所定値A以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS104に進む。この場合、燃料カット制御の終了後に復帰後リッチ制御によって上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量を迅速に減少させる必要があるため、ステップS104において、復帰後リッチ制御実行フラグFが1に設定される。なお、復帰後リッチ制御実行フラグFの初期値はゼロである。また、復帰後リッチ制御実行フラグFは、後述するように復帰後リッチ制御が終了するときにゼロに設定される。ステップS104の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS103において下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが所定値A未満であると判定された場合、復帰後リッチ制御実行フラグFが1に設定されることなく、本制御ルーチンは終了する。
また、ステップS101において燃料カット制御の実行条件が成立していないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS105に進む。ステップS105では、復帰後リッチ制御実行フラグFが1であるか否かが判定される。復帰後リッチ制御実行フラグFが1であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS106に進む。
ステップS106では、上流側空燃比センサ40が活性状態にあるか否かが判定される。例えば、上流側空燃比センサ40のセンサ素子の温度が活性温度以上であるときには上流側空燃比センサ40が活性状態にあると判定され、上流側空燃比センサ40のセンサ素子の温度が活性温度未満であるときには上流側空燃比センサ40が活性状態にないと判定される。上流側空燃比センサ40のセンサ素子の温度は例えばセンサ素子のインピーダンスから算出される。
ステップS106において上流側空燃比センサ40が活性状態にないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS107に進む。ステップS107では、空燃比の開ループ制御が実行される。具体的には、燃焼室5に供給される燃料と空気との比率が目標空燃比TAFに一致するように、エアフロメータ39によって検出された吸入空気量と、目標空燃比TAFとから算出された燃料量が燃焼室5に供給される。このときの目標空燃比TAFは、リッチ度合が非常に大きい値に設定される。ステップS107の後、本制御ルーチンは終了する。
一方、ステップS106において上流側空燃比センサ40が活性状態にあると判定された場合、本制御ルーチンはステップS108に進む。ステップS108では、目標空燃比TAFが強リッチ設定空燃比TAFsrichに設定される。強リッチ設定空燃比TAFsrichは、通常リッチ設定空燃比TAFnrich及び弱リッチ設定空燃比TAFwrichよりもリッチな空燃比であり、例えば11〜13である。
次いで、ステップS109において、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupがリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満であるか否かが判定される。リッチ側ストイキ判定空燃比AFrichは、理論空燃比よりも僅かにリッチな空燃比であり、例えば14.55である。
ステップS109において上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupがリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS108に戻る。この場合、目標空燃比TAFは強リッチ設定空燃比TAFsrichに維持される。一方、ステップS109において上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupがリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS110に進む。
ステップS110では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが切替空燃比AFsw以下であるか否かが判定される。切替空燃比AFswは、リーン側ストイキ判定空燃比AFleanよりもリーンな予め定められた空燃比であり、例えば14.7〜15.5である。
ステップS110において下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが切替空燃比AFswよりも高い(リーンである)と判定された場合、本制御ルーチンはステップS108に戻る。この場合、目標空燃比TAFは強リッチ設定空燃比TAFsrichに維持される。一方、ステップS110において下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが切替空燃比AFsw以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS111に進む。
ステップS111では、目標空燃比TAFが弱リッチ設定空燃比TAFwrichに設定される。すなわち、目標空燃比TAFが強リッチ設定空燃比TAFsrichから弱リッチ設定空燃比TAFwrichに切り替えられる。弱リッチ設定空燃比TAFwrichは、通常リッチ設定空燃比TAFnrichよりもリッチであり且つ強リッチ設定空燃比TAFsrichよりもリーンな空燃比であり、例えば13.5〜14.3である。
次いで、ステップS112において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満であるか否かが判定される。下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS111に戻る。この場合、目標空燃比TAFは弱リッチ設定空燃比TAFwrichに維持される。一方、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ側ストイキ判定空燃比AFrich未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS113に進む。
ステップS113では、目標空燃比TAFがリーン設定空燃比TAFleanに設定され、復帰後リッチ制御実行フラグFがリセットされてゼロにされる。リーン設定空燃比TAFleanは、リーン側ストイキ判定空燃比AFleanよりもリーンな空燃比であり、例えば14.8〜15.5である。ステップS113の後、本制御ルーチンは終了する。
また、ステップS105において復帰後リッチ制御実行フラグFがゼロであると判定された場合、本制御ルーチンはステップS114に進む。ステップS114では、通常制御が実行される。通常制御では、目標空燃比TAFがリーン設定空燃比TAFleanと通常リッチ設定空燃比TAFnrichとの間で交互に切り替えられる。ステップS114の後、本制御ルーチンは終了する。
なお、ステップS107において空燃比の閉ループ制御が実行されるときの目標空燃比TAFは、強リッチ設定空燃比TAFsrichと同じであってもよい。また、空燃比の開ループ制御が実行されるときの目標空燃比TAFは二段階以上に切り替えられてもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態に係る内燃機関は、以下に説明する点を除いて、基本的に第1実施形態に係る内燃機関の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量は、未使用の状態で最大であり、使用に伴って徐々に低下する。また、切替空燃比が予め定められた値である場合、復帰後リッチ制御において下流側空燃比センサ41の出力空燃比が切替空燃比以下になるときの上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量は、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量が多いほど多くなる。
このため、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量が相対的に多いときには、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量を迅速に減少させることによってNOxの流出を抑制すべく、切替空燃比のリーン度合を相対的に小さくすることが望ましい。一方、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量が相対的に少ないときには、流入排気ガスの目標空燃比のリッチ度合を低下させる前にリッチ度合の高い排気ガスが下流側排気浄化触媒24に流入することを抑制すべく、切替空燃比のリーン度合を相対的に大きくすることが望ましい。
そこで、第2実施形態では、空燃比制御装置は、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量を推定し、推定した最大吸蔵可能酸素量が相対的に多い場合には、推定した最大吸蔵可能酸素量が少ない場合に比べて、切替空燃比のリーン度合を小さくする。このことによって、燃料カット制御後の排気エミッションの悪化をより効果的に抑制することができる。
空燃比制御装置は、例えば、通常制御における積算酸素過不足量の切替基準値(切替基準吸蔵量Crefに相当)に基づいて上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量を推定する。第1実施形態の説明において上述したように、通常制御において積算酸素過不足量が切替基準値に到達する前に下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比となった場合、空燃比制御装置は、その後の通常制御における切替基準値を低下させる。通常制御において積算酸素過不足量が切替基準値に到達する前に下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比となった場合には、経年劣化によって上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量が低下していると考えられる。したがって、切替基準値は、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量が所定量減少したときに低下せしめられるため、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量と相関する。このため、空燃比制御装置は、通常制御における積算酸素過不足量の切替基準値に基づいて上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量を推定することができる。空燃比制御装置は、例えば、積算酸素過不足量の現在の切替基準値に1以上の係数を乗じた値を上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量として算出する。
また、上述した通常制御では、空燃比制御装置は、基本的に、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ側ストイキ判定空燃比未満になったときに目標空燃比をリーン設定空燃比に設定し、積算酸素過不足量が切替基準値以上になったときに目標空燃比を通常リッチ設定空燃比に設定している。しかしながら、通常制御において、空燃比制御装置は、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ側ストイキ判定空燃比未満になったときに目標空燃比をリーン設定空燃比に設定し、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン側ストイキ判定空燃比よりも高くなったときに目標空燃比を通常リッチ設定空燃比に設定してもよい。
後者の通常制御が実行される場合、目標空燃比がリッチ設定空燃比からリーン設定空燃比に切り替えられるときには上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量がゼロとなっており、目標空燃比がリーン設定空燃比からリッチ設定空燃比に切り替えられるときには上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量が最大となっていると考えられる。このため、空燃比制御装置は、目標空燃比がリッチ設定空燃比に維持されている間の積算酸素過不足量の絶対値、目標空燃比がリーン設定空燃比に維持されている間の積算酸素過不足量、又は両方の値の平均値を上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量として算出することができる。
また、空燃比制御装置は、図7に示したようなマップを用いて、推定した最大吸蔵可能酸素量から切替空燃比を算出する。このマップでは、切替空燃比AFswが上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量Cmaxupの関数として示される。なお、切替空燃比は、図7に破線で示したように、最大吸蔵可能酸素量が多くなるにつれて段階的(ステップ状)にリーン度合が小さくされてもよい。
また、切替空燃比は二段階に変更されてもよい。具体的には、空燃比制御装置は、推定した最大吸蔵可能酸素量が予め定められた基準量以上のときには切替空燃比をリーン側ストイキ判定空燃比に設定し、推定した最大吸蔵可能酸素量が基準量未満のときには切替空燃比をリーン側ストイキ判定空燃比よりもリーンな空燃比に設定する。基準量は上流側排気浄化触媒20が未使用であるときの最大吸蔵可能酸素量よりも少ない値に設定される。したがって、空燃比制御装置は、推定した最大吸蔵可能酸素量が予め定められた基準量以上の場合には、復帰後リッチ制御において、上流側空燃比センサ40の出力空燃比がリッチ側ストイキ判定空燃比よりもリッチであり且つ下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン側ストイキ判定空燃比以下になったときに流入排気ガスの目標空燃比のリッチ度合を低下させてもよい。
<空燃比制御の制御ルーチン>
以下、図8及び図9のフローチャートを参照して、第2実施形態における空燃比制御について説明する。図8及び図9は、第2実施形態における空燃比制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、内燃機関100の始動後、ECU31によって繰り返し実行される。
最初に、ステップS201において、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量Cmaxupが取得される。最大吸蔵可能酸素量Cmaxupは、上述したいずれかの方法によって通常制御中に算出される。
次いで、ステップS202において、ステップS201において取得された最大吸蔵可能酸素量Cmaxupに基づいて切替空燃比AFswが算出される。例えば、切替空燃比AFswは、図7に示したようなマップを用いて最大吸蔵可能酸素量Cmaxupから算出される。なお、切替空燃比AFswは、最大吸蔵可能酸素量Cmaxupが予め定められた基準量以上のときにはリーン側ストイキ判定空燃比に設定され、最大吸蔵可能酸素量Cmaxupが基準量未満のときにはリーン側ストイキ判定空燃比よりもリーンな空燃比に設定されてもよい。基準量は上流側排気浄化触媒20が未使用であるときの最大吸蔵可能酸素量Cmaxupよりも少ない値である。
ステップS202の後、ステップS203〜ステップS216が、それぞれ、図6のステップS101〜ステップS114と同様に実行される。このとき、ステップS212において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが、ステップS202において算出された切替空燃比AFsw以下であるか否かが判定される。なお、ステップS201及びステップS202は、本制御ルーチンにおける他の位置、例えばステップS208とステップS210との間において実行されてもよい。
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。