JP6380072B2 - 磁気特性測定方法、磁気特性測定システム、およびプログラム - Google Patents
磁気特性測定方法、磁気特性測定システム、およびプログラム Download PDFInfo
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Description
このような磁気特性を測定するために、励磁コイル(1次巻線)とBコイル(2次巻線)とを磁性材料に巻き回し、励磁コイルやBコイルにおける電圧や電流の測定が行われる。
vc (j+1)=vc (j)−K×(Vc1 (j)/VB1 (j))×(vB (j)−vBr) ・・・(1)
また、非特許文献1に記載の技術では、磁性材料の磁束密度および磁化力の関係が非線形であることを考慮していない。このため、磁束密度の制御に要する時間を十分に抑制することに加え、磁束密度を高精度に制御することが容易でない。
また、特許文献1に記載の技術では、励磁信号をヒステリシス曲線のパラメータとしており、また、Bコイルの誘導起電力がフィードバックされるため、磁束密度を制御するロジックが複雑になる虞がある。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、磁気特性測定システムの構成の一例を示す図である。図1では、複数の電磁鋼板を積み重ねてリング状にしたリング試料Rの磁気特性を測定する場合を例に挙げて示す。ただし、軟磁性材料に代表される磁性材料であれば、磁気特性の測定対象は、リング試料Rに限定されるものではない。例えば、エプスタイン試料や単板であってもよい。
磁気特性測定システムは、励磁電源100と、励磁コイル200と、Bコイル(サーチコイル)300と、2次電圧検出部400と、磁気特性測定装置500と、を有する。
励磁電源100から出力された励磁電圧が励磁コイル200に印加されると(励磁コイル200に励磁電流が流れると)リング試料Rは励磁され、Bコイル300に誘導起電力が生じる。
尚、図1に示す磁気特性測定システムで励磁電流を検出する場合には、例えば、励磁電源100と励磁コイル200との間にシャント抵抗を直列に配置すればよい。また、励磁電圧を検出する場合には、例えば、励磁コイル200の両端の電圧を検出する電圧計を配置すればよい。
目標磁束密度取得部501は、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)[T](磁束密度の目標値と時間との関係を示す波形)を、少なくとも一周期分予め取得して記憶する。図2は、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)の一例を示す図である。図2に示す例では、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)は、正弦波と異なる波形(基本波に高調波が重畳された歪み波形)である。ただし、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)が正弦波であっても本実施形態の手法を適用することができる。
また、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)の取得形態としては、例えば、オペレータによるユーザインターフェースの操作、外部装置からの受信、または、可搬型記憶媒体からの読み出しが挙げられる。
目標励磁電圧導出部502は、波形制御回数iにおける目標励磁電圧Vref,i(t)[V]を、少なくとも一周期分導出して励磁電源100に出力する。励磁電源100は、目標励磁電圧Vref,i(t)を有する励磁電圧を生成して出力する。
磁束密度導出部503は、2次電圧検出部400で検出されたBコイル300の誘導起電力から、波形制御回数iにおける各サンプリングタイミングでのBコイル300の誘導起電力V2,i(t)を抽出する。そして、磁束密度導出部503は、以下の(4)式の計算を行って、波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)[T]を(一周期分)導出する。
[収束判定部504]
収束判定部504は、磁束密度導出部503により導出された「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)」と、目標磁束密度取得部501により取得された「リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)」とを比較した結果に基づいて、磁束密度導出部503により導出された「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)」が収束したか否かを判定する。
BH関係取得部505は、リング試料Rと同じ材質の磁性材料におけるBH曲線(磁束密度Bと磁化力Hとの関係を示すヒステリシス曲線)を表す関数として、以下の(6)式に示す関数を予め取得して記憶する。本実施形態では、BH曲線を表す関数は、JIS C 2550−1(2011)に記載されている手法で測定された磁束密度と磁化力の値を用いて導出される。関数の導出には、例えば、公知のパラメータフィッティングまたは線形補間を用いることができる。
H(t)=f(B(t)) ・・・(6)
尚、本実施形態では、リング試料Rと同じ材質の磁性材料におけるBH曲線を関数として取得する場合を例に挙げて説明する。しかしながら、BH曲線を必ずしも関数として取得する必要はなく、例えば、テーブルとして取得してもよい。
磁化力導出部506は、磁束密度導出部503により導出された「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)」を、前記(6)式に代入することにより、「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁化力Hi(t)」を導出する。この「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁化力Hi(t)」は、リング試料Rと材質が同じ磁性材料の初磁化特性において、磁束密度導出部503により導出された「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)」に対応するものである。磁化力導出部506は、一周期における全てのサンプリングタイミングにおける磁化力Hi(t)を導出する。これにより、波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁化力Hi(t)が一周期分得られる。
目標磁化力導出部507は、目標磁束密度取得部501により取得(記憶)された「リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)」を、前記(6)式に代入することにより、リング試料Rの目標磁化力Href(t)を導出する。この「リング試料Rの目標磁化力Href(t)」は、リング試料Rと材質が同じ磁性材料の初磁化特性において、目標磁束密度取得部501により取得(記憶)された「リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)」に対応するものである。目標磁化力導出部507は、一周期における全てのサンプリングタイミングにおける目標磁化力Href(t)を導出する。これにより、リング試料Rの目標磁化力Href(t)が一周期分得られる。
励磁電圧修正量導出部508は、収束判定部504が、磁束密度導出部503により導出された「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)」が収束していないと判定した場合に起動する。
励磁電圧修正量導出部508は、磁化力導出部506により導出された「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁化力Hi(t)」と、目標磁化力導出部507により導出された「リング試料Rの目標磁化力Href(t)」と、「波形制御回数iにおける目標励磁電圧(今回の制御における目標励磁電圧)Vref,i(t)」とを、以下の(7)式に代入することにより、前記(3)式に示した励磁電圧の修正量ΔVi+1(t)を導出する(目標励磁電圧導出部502の欄を参照)。
鉄損導出部509は、収束判定部504が、磁束密度導出部503により導出された「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)」が収束したと判定した場合に起動する。
鉄損導出部509は、前記収束した「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁束密度Bi(t)、Bi(t−1)」と、「波形制御回数iにおけるリング試料Rの磁化力Hi(t)」とを、以下の(8)式に代入することにより、リング試料Rの鉄損W[W/kg]を導出する。
鉄損導出部509は、リング試料Rの鉄損Wを示す情報を出力する。リング試料Rの鉄損Wを示す情報の出力形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、可搬型記憶媒体や磁気特性測定装置500の内部の記憶媒体への記憶、および外部装置への送信の少なくとも1つを採用することができる。
次に、図4のフローチャートを参照しながら、磁気特性測定装置500の処理の一例を説明する。尚、ここでは、図4のフローチャートが開始される前に、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)と、リング試料Rと同じ材質の磁性材料におけるBH曲線((6)式を参照)とが取得され、磁気特性測定装置500の内部に記憶されている場合を例に挙げて説明する。
次に、ステップS403において、目標励磁電圧導出部502は、前記(2)式の計算を行って、最初の制御(波形制御回数i=1)における目標励磁電圧Vref,i(t)を(一周期分)導出する。目標励磁電圧導出部502は、導出した「最初の制御(波形制御回数i=1)における目標励磁電圧Vref,i(t)」を励磁電源100に出力する。励磁電源100は、「最初の制御(波形制御回数i=1)における目標励磁電圧Vref,i(t)」を有する励磁電圧を生成して出力する。これにより、Bコイル300に誘導起電力が発生する。
次に、ステップS405において、磁束密度導出部503は、サンプリングタイミングを特定する変数tに初期値(=1)を設定する。これにより、最初のサンプリングタイミングが指定される。
次に、ステップS407において、磁束密度導出部503は、サンプリングタイミングを特定する変数tが最大値cであるか否かを判定する。この判定の結果、サンプリングタイミングを特定する変数tが最大値cでない場合には、ステップS408に進む。
次に、ステップS410において、収束判定部504は、リング試料Rの磁束密度Bi(t)が収束したか否かを判定する。前述したように本実施形態では、リング試料Rの磁束密度Bi(t)の誤差率εが2[%]以下である場合に、リング試料Rの磁束密度Bi(t)が収束したと判定する(前記(5)式を参照)。
次に、ステップS413にいて、目標励磁電圧導出部502は、前記(3)式の計算を行うことにより、次回の制御(波形制御回数i+1)における目標励磁電圧Vref,i+1(t)を導出する。すなわち、目標励磁電圧導出部502は、目標励磁電圧(の現在値)Vref,i(t)を更新して、次回の制御における目標励磁電圧Vref,i+1(t)を導出する。目標励磁電圧導出部502は、導出した「次回の制御における目標励磁電圧Vref,i+1(t)」を励磁電源100に出力する。励磁電源100は、「次回の制御における目標励磁電圧Vref,i+1(t)」を有する励磁電圧を生成して出力する。これにより、更新された目標励磁電圧を有する励磁電圧に基づいてリング試料Rが励磁され、Bコイル300に誘導起電力が発生する。
次に、本実施形態の実施例を説明する。
本実施例では、前述した本実施形態の手法(本手法)と、非特許文献1に記載のように磁束密度および磁化力の関係の非線形性を考慮せずに、磁束密度をフィードバックする手法(比較法)とのそれぞれにおける実験を、以下の条件で行った。
励磁コイル200の巻き数=300[回]
Bコイル300の巻き数=100[回]
励磁周波数=50[Hz]
図2に示すように、目標磁束密度Bref(t)では、磁束密度が大きい領域が多く、磁束密度の偏差に対する目標励磁電圧の指令値の非線形性が高い領域が続くため、磁束密度の制御が難しい。そのため、図5に示すように、比較法では、供試材の磁束密度Bi(t)が収束するまでに4回の制御が必要であった。これに対し、本手法では、2回の制御で供試材の磁束密度Bi(t)が収束した。したがって、本手法では比較法に比べ、制御回数・測定時間を半減させることができる。
以上のように本実施形態では、目標励磁電圧Vref,i(t)でリング試料Rを励磁した際のBコイル300の誘導起電力V2,i(t)から、リング試料Rの磁束密度Bi(t)を導出する。そして、リング試料Rと同じ材質の磁性材料におけるBH曲線を表す関数から、リング試料Rの磁束密度Bi(t)に対応する磁化力Hi(t)を導出する。また、リング試料Rと同じ材質の磁性材料におけるBH曲線を表す関数から、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)に対応する目標磁化力Href(t)を導出する。そして、磁化力Hi(t)と目標磁化力Href(t)との誤差の割合に、目標励磁電圧Vref,i(t)を乗算した値を、励磁電圧の修正量ΔVi+1(t)として導出する。そして、リング試料Rの目標磁束密度Bref(t)と、リング試料Rの磁束密度Bi(t)との誤差が低減するように、励磁電圧の修正量ΔVi+1(t)を用いて、目標励磁電圧Vref,i(t)を変更することにより、次回の制御における目標励磁電圧Vref,i+1(t)を導出する。以上の計算を、リング試料Rの磁束密度Bi(t)が収束するまで行う。
本実施形態のように、BH関係取得部505により、リング試料Rと同じ材質の磁性材料におけるBH曲線のうち、初磁化特性のみを表す情報(関数やテーブル)を取得する構成にすれば、同一の磁束密度Bに対する磁化力Hの値が1つになる。したがって、リング試料Rの磁束密度Bi(t)の制御が複雑になることを抑制することができるので好ましい。しかしながら、必ずしも初磁化特性のみを表す関数を取得する必要はない。例えば、図3に示すBH曲線のうち、破線で示す部分(初磁化特性31以外の部分)を表す情報(関数やテーブル)を取得してもよい。このようにした場合には、同一の磁束密度Bに対する磁化力Hの値が2つになる。そこで、例えば、前回のサンプリングタイミングの磁束密度Bi(t−1)を記憶し、今回のサンプリングタイミングの磁束密度Bi(t)との大小関係を比較することにより、前記2つの磁化力Hのうちの何れかを、今回のサンプリングタイミングの磁束密度Bi(t)として特定すればよい。
また、ステップS410の収束の判定のタイミングは、次回の制御(波形制御回数i+1)における目標励磁電圧Vref,i+1(t)を励磁電源100に出力する前のタイミングであれば、ステップS409の次のタイミングに限定されない。例えば、ステップS412の次のタイミングでステップS410の収束の判定を行うようにしてもよい。
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、BH関係取得部505は、BH曲線を表す関数として、測定で得られた範囲での初磁化特性の関数を取得する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、BH関係取得部505は、初磁化特性として、測定で得られた範囲に加えて、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が大きい範囲での初磁化特性を取得する。このように本実施形態と第1の実施形態とは、BH関係取得部505が取得する初磁化特性が異なるだけである。したがって、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図5に付した符号と同一の符号を付すなどして詳細な説明を省略する。
第1の例では、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの値を用いて線形外挿することにより、測定で得られた範囲よりも大きい範囲の磁束密度Bpおよび磁化力Hpの組を導出する。
本実施形態では、例えば、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの値のうち、最も大きな値(磁束密度Bqおよび磁化力Hq)と、2番目に大きな値(磁束密度Bq-1および磁化力Hq-1)とを用いて、以下の(10)式により、測定で得られた範囲よりも大きい範囲の磁束密度Bpおよび磁化力Hpの組を導出する。このようにした場合には、例えば、測定で得られた範囲よりも大きい範囲の磁束密度Bpおよび磁化力Hpの組を用いて線形補間を行うことにより、測定で得られた範囲よりも大きい範囲での初磁化特性の関数を導出する。
第2の例では、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの値のうち、(当該測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hから得られる)比透磁率が最大値となるときの磁束密度Brおよび磁化力Hr以上の値を用いて、磁束密度Bおよび磁化力Hとの関係を、以下の(11)式に近似する。
B=α×Hβ ・・・(11)
ただし、α>0、0<β<1
(11)式の近似の方法(係数α、βを導出する方法)としては、例えば、最小二乗法を採用することができる。ただし、(11)式の近似の方法は、最小二乗法に限定されるものではなく、その他の公知の方法を採用することができる。
その他、測定で得られた範囲よりも大きい範囲では、磁化力Hの増加量に対する磁束密度Bの増加量の割合(傾き)が真空の透磁率μ0であるものとして、測定で得られた範囲よりも大きい範囲の磁束密度Bpおよび磁化力Hpの組を導出してもよい。
次に、本実施形態の実施例を説明する。
本実施例では、前述した本実施形態の第1の例、第2の例、およびその他の例の手法と、非特許文献1に記載のように磁束密度および磁化力の関係の非線形性を考慮せずに、磁束密度をフィードバックする手法(比較法)とのそれぞれにおける実験を、以下の条件で行った。
励磁コイル200の巻き数=300[回]
Bコイル300の巻き数=100[回]
励磁周波数=50[Hz]
表1において、「真空透磁率にて外挿」は、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が大きい範囲での初磁化特性を前記その他の例で導出したことを示す。「線形で外挿」は、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が大きい範囲での初磁化特性を前記第1の例で導出したことを示す。「指数関数で外挿」は、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が大きい範囲での初磁化特性を前記第2の例で導出したことを示す。「外挿なし(比較法)」は、非特許文献1に記載のように磁束密度および磁化力の関係の非線形性を考慮せずに、磁束密度をフィードバックする手法を用いたことを示す。
以上のように本実施形態では、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの組のうち少なくとも2つの組の値を用いて外挿を行うことにより、測定で得られた範囲よりも大きい範囲の初磁化特性の関数を導出する。したがって、目標磁束密度Bref(t)が、リング試料Rの材質では通常は使用されない高磁束密度領域を含む場合でも、当該目標磁束密度Bref(t)で磁性材料を励磁することを高速に且つ高精度に実現することができる。
本実施形態でも第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。例えば、前記関数の代わりにテーブルを取得してもよい。また、これらの関数やテーブルを、磁気特性測定装置500が予め取得しても、磁気特性測定装置500が導出してもよい。また、初磁化特性に加えてまたは代えて初磁化特性以外のBH曲線を用いてもよい。
次に、第3の実施形態を説明する。第2の実施形態では、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が大きい範囲での初磁化特性を取得する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、BH関係取得部505は、初磁化特性として、測定で得られた範囲に加えて、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が小さい範囲での初磁化特性を取得する。このように本実施形態と第1および第2の実施形態とは、BH関係取得部505が取得する初磁化特性が異なるだけである。したがって、本実施形態の説明において、第1および第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図5に付した符号と同一の符号を付すなどして詳細な説明を省略する。
第1の例では、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの値のうち、(当該測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hから得られる)比透磁率が最大値となるときの磁束密度Brおよび磁化力Hr以下の値を用いて、磁束密度Bおよび磁化力Hとの関係を、以下の(12)式に近似する。
B=α×Hβ ・・・(12)
ただし、α>0、β<0
(12)式の近似の方法(係数α、βを導出する方法)としては、例えば、最小二乗法を採用することができる。ただし、(12)式の近似の方法は、最小二乗法に限定されるものではなく、その他の公知の方法を採用することができる。
その他、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの値と原点(磁束密度Bおよび磁化力Hとが共に0(ゼロ)の点)を用いて線形内挿(線形補間)することにより、測定で得られた範囲よりも大きい範囲の磁束密度Bpおよび磁化力Hpの組を導出してもよい。具体的には、例えば、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの値のうち、最も小さな値(磁束密度B1および磁化力H1)を用いて、以下の(13)式により、測定で得られた範囲よりも小さい範囲の磁束密度Bpおよび磁化力Hpの組を導出する。
次に、本実施形態の実施例を説明する。
本実施例では、前述した本実施形態の第1の例およびその他の例の手法と、非特許文献1に記載のように磁束密度および磁化力の関係の非線形性を考慮せずに、磁束密度をフィードバックする手法(比較法)とのそれぞれにおける実験を、以下の条件で行った。
励磁コイル200の巻き数=300[回]
Bコイル300の巻き数=100[回]
励磁周波数=50[Hz]
表2において、「線形で内挿」は、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が小さい範囲での初磁化特性を前記その他の例で導出したことを示す。「指数関数で内挿」は、測定で得られた範囲よりも磁束密度および磁界が小さい範囲での初磁化特性を前記第1の例で導出したことを示す。「内挿なし(比較法)」は、非特許文献1に記載のように磁束密度および磁化力の関係の非線形性を考慮せずに、磁束密度をフィードバックする手法を用いたことを示す。
以上のように本実施形態では、測定で得られた磁束密度Bおよび磁化力Hの組のうち少なくとも1つの組の値と原点とを用いて内挿を行うことにより、測定で得られた範囲よりも小さい範囲の初磁化特性の関数を導出する。したがって、励磁コイル200への励磁電圧が定格値に対して非常に小さくなり電圧制御が困難になることや、Bコイル300に発生する誘導起電力の信号が微弱になるためBコイル300に発生する誘導起電力の測定精度が低下することにより、BH曲線が得られない低磁束密度における初磁化特性を得ることができる。よって、目標磁束密度Bref(t)が、低磁束密度領域を含む場合でも、当該目標磁束密度Bref(t)で磁性材料を励磁することを高速に且つ高精度に実現することができる。
本実施形態でも第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。例えば、前記関数の代わりにテーブルを取得してもよい。また、これらの関数やテーブルを、磁気特性測定装置500が予め取得しても、鉄損Wの測定に際して磁気特性測定装置500が導出してもよい。また、初磁化特性に加えてまたは代えて初磁化特性以外のBH曲線を用いてもよい。
また、前述した第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせて、測定で得られた範囲よりも大きい範囲と小さい範囲の双方の初磁化特性の関数やテーブルを取得してもよい。
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (9)
- 磁性材料に対する目標励磁電圧に従って前記磁性材料に巻き回された励磁コイルに励磁電圧を印加することによって励磁された前記磁性材料の磁束密度を導出する磁束密度導出工程と、
前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係を示す情報と、前記磁束密度導出工程により導出された前記磁性材料の磁束密度とに基づいて、前記磁性材料の磁化力を導出する磁化力導出工程と、
前記磁化力導出工程により導出された前記磁性材料の磁化力と、前記磁性材料の目標磁束密度に対応する目標磁化力と、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の現在値とに基づいて、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の修正量を導出する励磁電圧修正量導出工程と、
前記磁束密度導出工程により導出された前記磁性材料の磁束密度と、前記磁性材料の目標磁束密度とを比較した結果に基づいて、前記磁束密度導出工程により導出された前記磁性材料の磁束密度が収束したか否かを判定する収束判定工程と、
前記励磁電圧修正量導出工程により導出された前記磁性材料に対する目標励磁電圧の修正量を用いて、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の現在値を更新する目標励磁電圧導出工程と、
前記磁性材料の磁束密度が収束していない場合に、前記目標励磁電圧導出工程により更新された前記磁性材料に対する目標励磁電圧に従って前記励磁コイルに励磁電圧を印加することによって前記磁性材料を励磁する励磁工程と、を有することを特徴とする磁気特性測定方法。 - 前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係を示す情報は、前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における初磁化特性を示す情報であることを特徴とする請求項1に記載の磁気特性測定方法。
- 前記目標励磁電圧導出工程は、前記励磁電圧修正量導出工程により導出された前記磁性材料に対する目標励磁電圧の修正量に、0を上回り且つ1を下回る係数である緩和係数を乗算した値を用いて、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の現在値を更新することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気特性測定方法。
- 前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係であって、測定で得られた磁束密度および磁化力よりも大きい値を有する磁束密度および磁化力の関係を示す情報を導出するBH関係導出工程をさらに有し、
前記BH関係導出工程は、前記測定で得られた磁束密度および磁化力を用いて線形外挿を行うことにより、前記測定で得られた磁束密度および磁化力よりも大きい値を有する磁束密度および磁化力の関係を示す情報を導出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気特性測定方法。 - 前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係であって、測定で得られた磁束密度および磁化力よりも大きい値を有する磁束密度および磁化力の関係を示す情報を導出するBH関係導出工程をさらに有し、
前記BH関係導出工程は、前記測定で得られた磁束密度および磁化力のうち、比透磁率が最大値となるときの磁束密度および磁化力以上の磁束密度B[T]および磁化力H[A/m]を用いて、以下の(A)式における係数αおよび係数βを導出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気特性測定方法。
B=α×Hβ ・・・(A)
ただし、α>0、0<β<1 - 前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係であって、測定で得られた磁束密度および磁化力よりも小さい値を有する磁束密度および磁化力の関係を示す情報を導出するBH関係導出工程をさらに有し、
前記BH関係導出工程は、前記測定で得られた磁束密度および磁化力のうち、比透磁率が最大値となるときの磁束密度および磁化力以下の磁束密度B[T]および磁化力H[A/m]を用いて、以下の(B)式における係数αおよび係数βを導出することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の磁気特性測定方法。
B=α×Hβ ・・・(B)
ただし、α>0、β<0 - 前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係を示す情報と、前記磁性材料の目標磁束密度とに基づいて、前記磁性材料の目標磁束密度に対応する目標磁化力を導出する目標磁化力導出工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の磁気特性測定方法。
- 磁性材料に対する目標励磁電圧に従って前記磁性材料に巻き回された励磁コイルに励磁電圧を印加することによって励磁された前記磁性材料の磁束密度を導出する磁束密度導出手段と、
前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係を示す情報と、前記磁束密度導出手段により導出された前記磁性材料の磁束密度とに基づいて、前記磁性材料の磁化力を導出する磁化力導出手段と、
前記磁化力導出手段により導出された前記磁性材料の磁化力と、前記磁性材料の目標磁束密度に対応する目標磁化力と、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の現在値とに基づいて、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の修正量を導出する励磁電圧修正量導出手段と、
前記磁束密度導出手段により導出された前記磁性材料の磁束密度と、前記磁性材料の目標磁束密度とを比較した結果に基づいて、前記磁束密度導出手段により導出された前記磁性材料の磁束密度が収束したか否かを判定する収束判定手段と、
前記励磁電圧修正量導出手段により導出された前記磁性材料に対する目標励磁電圧の修正量を用いて、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の現在値を更新する目標励磁電圧導出手段と、
前記磁性材料の磁束密度が収束していない場合に、前記目標励磁電圧導出手段により更新された前記磁性材料に対する目標励磁電圧に従って前記励磁コイルに励磁電圧を印加することによって前記磁性材料を励磁する励磁手段と、を有することを特徴とする磁気特性測定システム。 - 磁性材料に対する目標励磁電圧に従って前記磁性材料に巻き回された励磁コイルに励磁電圧を印加することによって励磁された前記磁性材料の磁束密度を導出する磁束密度導出工程と、
前記磁性材料または前記磁性材料と同じ材質の磁性材料における磁束密度および磁化力の関係を示す情報と、前記磁束密度導出工程により導出された前記磁性材料の磁束密度とに基づいて、前記磁性材料の磁化力を導出する磁化力導出工程と、
前記磁化力導出工程により導出された前記磁性材料の磁化力と、前記磁性材料の目標磁束密度に対応する目標磁化力と、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の現在値とに基づいて、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の修正量を導出する励磁電圧修正量導出工程と、
前記磁束密度導出工程により導出された前記磁性材料の磁束密度と、前記磁性材料の目標磁束密度とを比較した結果に基づいて、前記磁束密度導出工程により導出された前記磁性材料の磁束密度が収束したか否かを判定する収束判定工程と、
前記励磁電圧修正量導出工程により導出された前記磁性材料に対する目標励磁電圧の修正量を用いて、前記磁性材料に対する目標励磁電圧の現在値を更新する目標励磁電圧導出工程と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
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