JP2012026960A - 鉄損の推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】モータ鉄心などに生じる鉄損を短時間に精度よく推定する。
【解決手段】 電気機器を構成する軟磁性材料の偏磁状態下における磁気特性データに基づいて、偏磁量、振幅及び周波数を用いた鉄損関数を設定する。基本周波数の一周期分を所定の単位時間で分割して、この分割された単位時間毎の磁束密度の値を導出し、この磁束密度の値と鉄損関数とに基づいて単位時間鉄損値を求める。単位時間鉄損値を基本波半周期の整数倍分合計して一周期分の時間平均値を求め、これを軟磁性材料のキャリア損の値として得る。
【選択図】図7

Description

本発明は、キャリア高調波が重畳した磁束密度波形下において、モータ等に使用される軟磁性材料の鉄損を推定する方法に関する。
近年の環境問題を背景として、エネルギーロスの少ない高効率モータが注目を集めている。モータにおけるエネルギーロスには、大きく分けて鉄損、銅損、機械損の3種があり、それぞれを低減するための様々な工夫が提案されている。このような工夫を行うためには、まずこれらの損失の値を正確に把握する必要がある。特に、モータの試作回数を減らして、効率よく最適なモータを設計するためには、実際に試作、測定をせずとも損失の値をなるべく正確に推定することが求められる。
ところが、上記の損失の中でも、鉄損は、使用する軟磁性材料の特性や使用条件に大きく依存するため、その値を正確に推定することは難しい。実際にカタログに記載されているデータから直接計算した鉄損の値に対し、実測値は数倍になることもある。このような誤差を生じさせる具体的な原因として、(1)モータ内部の磁束分布の偏り、(2)回転磁界による影響、(3)磁束密度の高調波成分の重畳、(4)焼きばめなどに伴う応力やコアの打抜き時の歪に起因する素材特性劣化、などが考えられている。
特に、(3)の磁束密度の高調波成分の重畳は、近年におけるインバータの使用と強く関係している。すなわち、インバータを使用すると、例えば10kHzといった高い周波数の成分が磁束密度波形に重畳して、B−H平面上に多数のマイナーループができた状態、すなわち、PWM等の変調に伴って発生するキャリア高調波が重畳した状態でモータを駆動するケースが増えることから、これによる鉄損への影響分を補正する方法の考案が必要となってきている。
最も簡単な補正方法として、磁束密度の波形をフーリエ変換して、周波数ごとの振幅を算出し、それらの振幅とカタログデータとからその周波数ごとの鉄損値を求めて、それらの和を補正項として用いる、という方法がある。このような方法は、キャリア高調波に由来する成分の鉄損が、マイナーループの位置によらず振幅と周波数のみで決定される、という仮定に基づくものである。しかし実際には、マイナーループの位置が高磁束密度域である場合においては、低磁束密度域である場合よりも鉄損が大きいということが、偏磁状態での磁気特性測定によって知られてきている。そのため、このような方法は、簡便であり計算時間も短いという利点を持つ一方で、計算精度があまり高くないという問題点がある。
この方法に対して、最も単純にマイナーループの位置を考慮する方法として次のようなものが考えられる。まず、偏磁状態での磁気特性を測定しておく。次に、磁束密度の波形をフーリエ変換して算出された、周波数ごとの振幅を求める。そして、周波数ごとに、マイナーループの中心位置を偏磁量とみなして、偏磁状態での磁気特性測定結果から各マイナーループの鉄損値を計算し、それらの和を補正項として求める。
このような方法の一例が非特許文献1によって提案されている。この提案では、基本波に高調波成分が一つだけ重畳したケースに対して鉄損値の計算が行われている。しかし、一般的にキャリア高調波は複数の周波数成分からなることが多く、これらの周波数が近いと“干渉”を起こす。例えば、基本波が50Hzの波形に対し、キャリア周波数を10kHzに設定すると、9950Hzと10050Hzの成分が有限の振幅を持つ。このような場合、基本波1周期内において、お互いの成分が打ち消す時と増幅させる時が存在する(“干渉”)。この干渉の例を図8に示す。このような場合において、周波数ごとにマイナーループの位置を考慮するだけでは、この干渉の影響が取り込まれず、算定精度はあまり向上しない。
そこで、フーリエ変換を用いずに、直接的にマイナーループの位置を考慮する鉄損算定の方法として、非特許文献2による方法や特許文献1による方法などが提案されている。
非特許文献2による方法では、まず降圧チョッパ回路を用いて、さまざまなB−H平面上における位置でのマイナーループによる鉄損を測定し、これらをデータベースとする。そして、実際の波形における各マイナーループに対し、その偏磁量と振幅をもとにデータベースから鉄損値を求め、それらの鉄損の和を取ることでキャリア高調波により増加する鉄損を計算している。
一方、特許文献1の方法では、実際にインバータ駆動した時の磁束密度波形をコアに与え、データ解析を行うことで、キャリア高調波により増加する鉄損を計算している。
なお、偏磁量という用語とバイアス量という用語は同等な意味を持つものであるが、本明細書では、鉄損関数において偏磁量という表現を用い、実際に鉄損を推定したい磁束密度波形においてバイアス量という表現を用いることにする。
特開2008-122210号公報
電気学会マグネティクス研究会資料 MAG-05-43 電気学会論文誌D127巻3号P217−225
しかし、非特許文献2の方法では、実際の波形におけるすべてのマイナーループに対して、そのマイナーループの描き始めと終わりの時刻を求め、その時間内での振幅によるデータベースの参照によって求めるため、計算に多大な時間を要する。
また、特許文献1の方法では、一度の測定作業で鉄損値を求めることができるため、非特許文献2の方法よりは計算時間が短縮されるものの、主な用途がインバータのフィルタリアクトルなどにおける鉄損計算、つまり、コア内部で波形が均一であるとみなしてよいケースでの鉄損計算に限定される。
一方、モータ鉄心における鉄損計算のように、電磁界解析により、各メッシュ部分の磁束密度波形が個別に算出されてくる場合においては、各メッシュ部分に対する鉄損値をすべて計算しなくてはならない。このような場合、上記のどちらの方法を用いても、数千以上にも上るメッシュに対してそれぞれ計算を行うことは実際上困難である。
本発明は、上記のような状態を省み、モータ鉄心などに生じる鉄損を短時間に精度よく推定することが可能な鉄損推定方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では、フーリエ変換を使用して計算時間の増大を防ぐとともに、高調波相互の干渉の影響を考慮することによって高精度化を図るようにしている。
すなわち、本発明は、軟磁性材料を用いた電気機器における鉄損推定方法であって、前記軟磁性材料の偏磁状態下における磁気特性データに基づいて、偏磁量、振幅及び周波数を用いた鉄損関数を設定するステップと、基本周波数及びこの基本周波数よりも周波数の高いキャリア周波数でスイッチング動作する電力変換装置によって前記電気機器を駆動する場合の前記軟磁性材料中の磁束密度の実測波形もしくは解析計算波形をフーリエ変換して、少なくとも基本周波数成分及びキャリア高調波成分を含む複数の周波数成分についての振幅値と位相角を求めるステップと、前記各周波数成分における振幅値と位相角から、前記キャリア高調波成分以外の前記磁束密度と、前記キャリア高調波成分の前記磁束密度とを表す関係式を生成するステップと、前記基本周波数の一周期分を所定の単位時間で分割して、この分割された単位時間毎の磁束密度の値を前記関係式を用いて導出し、この磁束密度の値と前記鉄損関数とに基づいて単位時間鉄損値を求めるステップと、前記単位時間鉄損値を基本波半周期の整数倍分合計して一周期分の時間平均値を求め、これを前記軟磁性材料のキャリア損の値として得るステップと、を含むものである。
前記複数の周波数成分中に低次高調波成分を含ませることにより、より精度の高い鉄損推定が可能になる。
また、必要に応じて、前記関係式にバイアス量の絶対値の項を含ませることができる。
前記関係式は、前記電力変換装置における基本周波数をf〔Hz〕、キャリア周波数をf〔Hz〕とし、n(n=1,2,・・・,k、ただし、kは自然数)に対し、すべてのm(m=0,1,2,・・・,l、ただし、lは自然数)についてのnf±mf〔Hz〕の成分の和を
nsin(2πft+θ1,n)×sin(2πnft+θ2,n)
(ただし、Bnは上記成分の振幅、θ1,n及びθ2,nは基本波に対する、高調波成分の周波数fで変化する項と周波数fで変化する項の位相角)としたものであって良い。
そして、前記時間平均値には、前記nf±mf〔Hz〕で表される2周波数の成分の振幅の平均値を使用することができる。
前記電力変換装置の基本周波数をf〔Hz〕、キャリア周波数をf〔Hz〕とし、すべてのnについてのnf±mf〔Hz〕(m=1,3,5)の成分の和を下式(A)で表したとき、前記磁束密度の振幅は下式(B)で求めることができる。
Figure 2012026960
Figure 2012026960
前記電力変換装置の基本周波数をf〔Hz〕、キャリア周波数をf〔Hz〕とし、n=1,3についてのnf±mf〔Hz〕(m=1,3,5)〔Hz〕の成分の和を下式(C)で表したとき、前記磁束密度の振幅を下式(D)で求め、n=2,4に対しては、nf±mf〔Hz〕(m=0,2,4)〔Hz〕の成分の和を下式(E)で表したとき、前記磁束密度の振幅は下式(F)で求めることができる。
Figure 2012026960
Figure 2012026960
Figure 2012026960
Figure 2012026960
前記軟磁性材料としては、偏磁量B、周波数f、振幅値Bから下式(G)によって一義的に導かれる鉄損値Wを有することができる。
Figure 2012026960
ただし、a(B)、b(B)、c(B)は、鉄損値をフィッティングして求めた任意関数である。
本発明によれば、数式化した偏磁状態での磁気特性(データベース)をもとに、ある時刻における鉄損値が計算され、その時間平均をとることによって鉄損が算定される。この時の計算は、鉄損が関数として定義されることから、表計算として行うことが可能である、従って、各マイナーループに対する振幅をいちいち計算し、その振幅によるデータベースの参照によって鉄損値を求める従来の方法に比して、鉄損の算出時間を大きく短縮することができ、従って、特にインバータ駆動されるモータの鉄心の鉄損を求める手法として有効である。
また、本発明によれば、高調波相互の干渉の影響を考慮するので、鉄損の算出精度を高めることができる。
偏磁量依存性関数と偏磁量との関係を3次関数によりフィッティングした結果を示すグラフである。 キャリア高調波が重畳した時の磁束密度波形のFFT結果(振幅のみ)の第1例を示すグラフである。 低次高調波とキャリア高調波が重畳した時の磁束密度波形のFFT結果(振幅のみ)を例示したグラフである。 キャリア高調波が重畳した時の磁束密度波形のFFT結果(振幅と位相)の第2例を示すグラフである。 キャリア高調波が重畳した時の磁束密度波形のFFT結果(振幅と位相)の第3例を示すグラフである。 鉄損計算を表計算によって実行している様子を示す説明図である。 本発明に従った鉄損推定プロセスを概念的に示す流れ図である。 磁束密度波形に重畳された複数の高周波成分相互の干渉形態を例示したグラフである。
本発明の一実施形態に係る鉄損推定方法は、4つのプロセス(I)〜(IV)を含んでいる。以下、これらのプロセス(I)〜(IV)の最良の形態について説明する。
[I]偏磁状態での鉄損値のデータベース化
以下に、このプロセスの具体例を示す。
まず、軟磁性材料を用いた電気機器の偏磁状態での磁気特性を磁気特性測定装置によって測定し、その測定データ(鉄損についてのデータ)をもとに、鉄損を偏磁量B、振幅B及び周波数fの関数として定義する。
上記関数は、実際の偏磁状態での磁気特性をうまく表現できれば何でもよいが、計算時間短縮の観点から、以下で述べるように一つの数式として表現されていることが好ましい。
第1の例においては、鉄損はスタインメッツの式
Figure 2012026960


をもとに表現する。ここで、a',c'は定数である。この式(1)において、第一項はヒステリシス損に対応し、第二項は渦電流損に対応する。
この式(1)を偏磁下でも適用できるようにするためには、下式(2)のように、定数を偏磁量Bの関数として拡張することが考えられる。
Figure 2012026960


この式(2)は、スタインメッツの式である式(1)にそのまま偏磁量依存性を持たせたものであり、圧粉磁心のように表皮効果があまり顕著でない素材に対して使用することができる。
ここで、a(B),b(B),c(B)は、上記測定データをフィッティングすることによって求めた関数であり、実際の測定結果をうまく表現できるような数式となっていれば何でもよい。この関数a(B),b(B),c(B)を多項式として近似した場合には、それぞれの多項式の係数を材料データとして保存しておけばよい。
第2の例として、鉄損を
Figure 2012026960

のように表すことが考えられる。電磁鋼板のような磁性材料は、キャリア周波数が10kHz程度の場合、渦電流損の割合が高く、しかも表皮効果の影響が強い。この式(3)は、この電磁鋼板のような磁性材料に対してよく当てはまる。
図1に、周波数fと振幅Bを固定した際の関数a(B)の偏磁量依存性を模式的に示す。関数a(B)の偏磁量依存性がこのような形状を示す場合、この偏磁量依存性については例えば3次関数で表現することが可能である。また、式(3)におけるγは、偏磁量にほとんど依存せず、1.6〜2.0程度の定数となる。この具体的数値についても、振幅依存性に対するフィッティングにより容易に求めることができる。
上記のように鉄損関数を設定すると、この鉄損関数によって任意のバイアスB、振幅B、周波数fにおける鉄損値が求められる状態となる。
このような鉄損関数を作成することにより、任意のバイアスB、振幅B、周波数fのデータ列が与えられた時に、表計算により鉄損値を一度に計算することが可能になる。
[II]高速フーリエ変換(以下、FFTと略称する)による各周波数成分の計算
このプロセスでは、上記電気機器を電力変換器(インバータ)で駆動し、その際、電磁界解析によって計算された前記軟磁性材料中の磁束密度波形に対してFFTを行う。電磁界解析は、JMAGなどの一般的ソフトウェアにおいて形状や電流条件などを入力することで行うことができる。
インバータ駆動を行った場合、有意な大きさの振幅を持つキャリア高調波成分の周波数はnf±mfHzである。ここで、fHzは基本周波数、fHzは設定キャリア周波数、nは自然数、mは0以上の整数である。例として磁束密度波形にFFTを行った結果のうち、振幅についての結果を図2に示す。この図2は、f=50Hz、f=1000Hzの場合のものであり、(n,m)の組み合わせが、(1,1),(1,3),(2,1),(2,3)のときに有意な振幅をもつキャリア高調波成分が存在している。
ところで、実際の機器における前記軟磁性材料中の磁束密度波形は、図2のように基本波成分とキャリア高調波成分のみからなるわけではなく、図3に示すようにmfHzの成分が含まれることがある。これは、インバータによって駆動したことに由来するものではなくて、低次高調波成分と呼ばれるものである。つまり、この低次高調波成分とは、150,250,350Hzの成分のことである。
ここで、100Hzの成分について考察する。f=50Hz,f=1000Hzの場合、100Hzの成分は、mfHzの式においてm=2とした場合の低次高調波成分としての要件を満たす。しかし、nf±mfHzの式においてマイナスの符号を取ってn=1,m=18とすると、100Hzの成分がキャリア高調波成分としての要件も満たしてしまうことになる。このように、100Hzの成分については、低次高調波成分として扱うべきなのか、キャリア高調波成分として扱うべきなのかについて曖昧さを生じてしまう可能性がある。このような曖昧さを生じないためには、以下のようにすればよい。
例えば、図3に示すように、500〜700Hz付近の成分の振幅がほとんどゼロである場合、この周波数領域の周波数成分が鉄損の推定計算に及ぼす影響はほとんどない。これは、この周波数領域の周波数成分の振幅をゼロと見做し、該周波数領域のどこか1点を境界として2つの周波数帯域に分けることが可能であることを意味している。
そこで、上記の境界に対して低周波側の成分を低次高調波成分、高周波側の成分をキャリア高調波成分と決めることができる。なお、キャリア周波数fを低く設定すると、振幅がほぼゼロである周波数領域がほとんど存在しなくなるため、低次高調波成分とキャリア高調波成分の区別が難しくなる場合もありうる。このような場合は、例えば(f/2)Hzなどの一つの境界周波数を決め、これを境に、低周波側の成分を低次高調波成分、高周波側の成分をキャリア高調波成分とすると決めることで区別が可能となる。
上記キャリア高調波成分のうち、実際に有意な大きさを持つものは、インバータが単相であるか三相であるかによって異なる。
単相の場合は、n<5となるすべてのnに対して、m=1,3,5である。三相の場合は、n<5の中でnが奇数の場合にm=1,3,5、nが偶数の場合にm=0,2,4である。そこで、これらの高周波成分に対応する振幅を波形データとして保存する。このように、単相か三相かによって有意な大きさの振幅をもつ成分が異なるため、次のプロセス[III]では単相、三相を別々に考えなければならない。
なお、nをn<5としたのは、本実施形態における鉄損推定対象電気機器が電動機であるからである。電動機においては、一般にnをn<5としても鉄損の推定結果に大きな影響を受けない。
[III]nfHzの一周期程度の時間範囲での偏磁量と振幅の計算
このプロセスでは、プロセス(IV)で使用する数式が具体的に求められる。
(A)単純な例
キャリア高調波重畳時の波形の式を単純化して、磁束密度を
Figure 2012026960

と表した場合について考える。ここで、Bは基本波の振幅、fは基本波の周波数、Bは2つのキャリア高調波の振幅、f+f、f−fは2つのキャリア高調波の周波数、θ、θはこの2つのキャリア高調波の位相角である。
図4の(a)、(b)は、式(4)で表される磁束密度波形をFFT処理して得られた振幅特性、位相特性をそれぞれ例示したものである。なお、式(4)の右辺第二項と第三項の振幅は同一の値としてあるが、実際にはほぼ同じであるものの、厳密に同じとはならない。そこで、FFTの結果のうち、第二項と第三項の成分についての振幅の平均値をBとすればよい。このような変更を行っておくと、以降で示すように式の展開がしやすくなる。
式(4)のように、2つの周波数成分を含む場合は、両者が干渉してキャリア高調波成分の振幅が一定でなくなってしまう。そこでこの式(4)を次のように変形する。
Figure 2012026960
この式(5)の第二項は、周波数fでゆっくり変化する項と周波数fで早く変化する項との積で表現されている。第二項の一周期程度の時間領域において、第一項はほぼ一定とみなせるので、この第一項を第二項における「周波数fで早く変化する項」の振幅と近似することができる。
ここで、高周波成分に対応する部分である
Figure 2012026960
において、
Figure 2012026960
と置き換えれば、Bnsin(2πft+θ1,n)×sin(2πnft+θ2,n)の式におけるn=1の場合に対応していることが確認できる。
この近似のもとでの高調波成分の磁束密度は、時刻tの付近において以下のような振幅、周波数及び偏磁量を持つものとみなすことが可能である。
Figure 2012026960
そして、この振幅、周波数及び偏磁量を例えば前記式(1)あるいは式(2)または式(3)に適用することによって鉄損をきわめて容易に算定することができる。
(B)拡張その1 -バイアス量と低次高調波の取り込み-
上の例は、基本波のみにキャリア高調波が重畳しているケースであるが、実際には磁束密度波形にバイアス量や低次高調波の成分が重畳する。この場合、磁束密度波形は、例えば
Figure 2012026960
と表される。そして、磁束密度波形がこの式(7)で表される場合は、式(6)に対して単純に偏磁量を下式(8)に示すように変更すればよい。
Figure 2012026960

ここで、
Figure 2012026960
は基本波に対する3次の高調波(低次高調波)である。
(C)拡張その2 -m<6のすべての成分の取り込み-
波形の高調波成分が
Figure 2012026960
となっている場合、すなわち、前記m=1,3,5であるf±f,f±3f,f±5fの周波数成分が存在する場合を考える。図5の(a)、(b)は、この場合の磁束密度波形をFFT処理することによって得られた振幅特性、位相特性をそれぞれ例示したものである。
この式(9)に対し前記と同様の式変形を行い、展開すると
Figure 2012026960

となる。この式(10)で表される波形は、前記と同様の時間領域においてほぼ正弦波であり、その振幅は
Figure 2012026960
である。
また、前記m=0,2,4であるf,f±2f,f±4fの周波数成分が存在する場合は、その波形の高調波成分を
Figure 2012026960
とすれば、この波形も同様の時間領域においてほぼ正弦波であり、その振幅は
Figure 2012026960
となる。
以上のことから、多数の周波数成分を含む場合には振幅の式を修正すればよいことがわかる。
(D)拡張その3 -n<5のすべての成分の取り込み-
nの異なる周波数成分は、それぞれ少なくともfHz程度離れているので、相互の干渉による影響はさほど深刻ではない。そこで、複数存在するnに対しては、以下で述べるプロセス[IV]の計算を個別に行うことで対処する。
(E)拡張その4 -一般化-
以上を完全に一般化して記述すると以下のようになる。
まず、磁束密度波形は、
Figure 2012026960
と表す。この時、偏磁量は、
Figure 2012026960
とすればよい。
次に、振幅は次のようにして求める。キャリア高調波成分は、
Figure 2012026960
であり、この式は、式(4)を式(5)に変換したように、
nsin(2πft+θ1,n)×sin(2πnft+θ2,n)
の形に変形することができる。
ただし、Bnは上記成分の振幅、θ1,n及びθ2,nは基本波に対する、高調波成分の周波数fで変化する項の位相角及び周波数fで変化する項の位相角である。
そして、この形に変更した際の
nsin(2πft+θ1,n)
が、各nに対する振幅である。周波数は各nに対して、nfである。
[IV]偏磁量と振幅からの鉄損値の対応付けとその時間平均
このプロセスは、プロセス[III]において求めた数式を用いてどのように鉄損を計算するかを示している。
前節の議論から、あるnに対し、ある時刻の近傍でのマイナーループは、偏磁量と振幅とが数式により表現された正弦波のループであるとみなしてよい、ということがわかった。
そこで、基本波の1周期分の時間を、例えば100〜1000程度の数の均等な時間幅の区間によって刻む。そして、刻まれた各時刻において、数式で表現された偏磁量、振幅及び周波数nfHzをもとに、プロセス(I)で求めた材料パラメータ(鉄損関数)を参照して鉄損値を計算し、それらの鉄損値の和をとる。この鉄損値の和は、1周期分の鉄損の平均値とすることができるので、これをすべてのnに対して行えばよい。ここで、単相の場合と三相の場合とで使用する式が異なることに注意しなければならない。
ここで、上記時間幅について説明する。上記時間幅は、磁束密度の時間変化を基準として決定することができる。すなわち、例えば、キャリア周波数が10kHzのであるとすると、nをn<5まで考慮するので、磁束密度が時間変化する有意な高調波成分は40kHzまで存在することになる。基本波の周波数を50Hzとすると、周波数40kHzはこの基本波周波数50Hzの800倍である。従って、基本波の1周期の時間を800あるいは800よりも大きい数で区切った時間を上記刻み時間幅として決定すれば、周波数40kHzの1周期における磁束密度変化を上記時間幅に含めることができ、これによって、鉄損の推定精度が限界まで高められる。
なお、鉄損の推定計算に要する時間は、上記時間幅を大きく設定するほどを短縮することができる。そこで、上記時間幅は、推定計算時間や要求される鉄損推定精度等を勘案して適宜設定する。
以上のようなプロセスにより鉄損を計算することができる。この方法では、プロセス(III)で求めた式を利用した計算を、基本波の1周期分の時間を刻んだ数だけ行うことで鉄損を求めること、つまり、表計算などの計算処理によって鉄損を求めることができる。このような計算の様子を図6に示す。
この計算の処理時間は、通常のパソコンにおいて瞬時である。これに対して、前記非特許文献2による方法では、計算処理時間として数分程度を要することが知られている。したがって、本発明による方法は、計算時間が大幅に短縮され、その結果、従来、多大な時間を要したモータ等の鉄心の鉄損の計算を短時間で処理することができる。
図7は、鉄損を求めるための上述したプロセスを概念的に示した流れ図である。

Claims (8)

  1. 軟磁性材料を用いた電気機器における鉄損推定方法であって、
    前記軟磁性材料の偏磁状態下における磁気特性データに基づいて、交番磁界の偏磁量値、振幅値及び周波数を用いた鉄損関数を設定するステップと、
    基本周波数及びこの基本周波数よりも周波数の高いキャリア周波数でスイッチング動作する電力変換装置によって前記電気機器を駆動する場合の前記軟磁性材料中の磁束密度の実測波形もしくは解析計算波形をフーリエ変換して、少なくとも基本周波数成分及びキャリア高調波成分を含む複数の周波数成分についての振幅値と位相角を求めるステップと、
    前記各周波数成分における振幅値と位相角から、前記キャリア高調波成分以外の前記磁束密度と、前記キャリア高調波成分の前記磁束密度とを表す関係式を生成するステップと、
    前記基本周波数の一周期分を所定の単位時間で分割して、この分割された単位時間毎の磁束密度の値を前記関係式を用いて導出し、この磁束密度の値と前記鉄損関数とに基づいて単位時間鉄損値を求めるステップと、
    前記単位時間鉄損値を基本波半周期の整数倍分合計して一周期分の時間平均値を求め、これを前記軟磁性材料のキャリア損の値として得るステップと、
    を含むことを特徴とする鉄損推定方法。
  2. 前記複数の周波数成分中に低次高調波成分を含ませたことを特徴とする請求項1に記載の鉄損推定方法。
  3. 前記関係式にバイアス量の絶対値の項を含ませたことを特徴とする請求項1に記載の鉄損推定方法。
  4. 前記関係式は、前記電力変換装置における基本周波数をf〔Hz〕、キャリア周波数をf〔Hz〕とし、n(n=1,2,・・・,k、ただし、kは自然数)に対し、すべてのm(m=0,1,2,・・・,l、ただし、lは自然数)についてのnf±mf〔Hz〕の成分の和を
    nsin(2πft+θ1,n)×sin(2πnft+θ2,n)
    (ただし、Bnは上記成分の振幅、θ1,n及びθ2,nは基本波に対する、高調波成分の周波数fで変化する項と周波数fで変化する項の位相角)としたものである請求項1に記載の鉄損推定方法。
  5. 前記時間平均値は、前記nf±mf〔Hz〕で表される2周波数の成分の振幅の平均値であることを特徴とする請求項2に記載の鉄損推定方法。
  6. 前記電力変換装置の基本周波数をf〔Hz〕、キャリア周波数をf〔Hz〕とし、すべてのnについてのnf±mf〔Hz〕(m=1,3,5)の成分の和を下式(A)で表したとき、前記磁束密度の振幅を下式(B)で求めることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の鉄損推定方法。
    Figure 2012026960
    Figure 2012026960
  7. 前記電力変換装置の基本周波数をf〔Hz〕、キャリア周波数をf〔Hz〕とし、n=1,3についてのnf±mf〔Hz〕(m=1,3,5)〔Hz〕の成分の和を下式(C)で表したとき、前記磁束密度の振幅を下式(D)で求め、n=2,4に対しては、nf±mf〔Hz〕(m=0,2,4)〔Hz〕の成分の和を下式(E)で表したとき、前記磁束密度の振幅を下式(F)で求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄損推定方法。
    Figure 2012026960
    Figure 2012026960
    Figure 2012026960

    Figure 2012026960
  8. 前記軟磁性材料は、偏磁量B、周波数f、振幅値Bから下式(G)によって一義的に導かれる鉄損値Wを有するものである請求項1に記載の鉄損推定方法。
    Figure 2012026960
    ただし、a(B)、b(B)、c(B)は、鉄損値をフィッティングして求めた任意関数である。







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