JP6578845B2 - 電磁場解析装置、電磁場解析方法、およびプログラム - Google Patents
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Description
このような数値解析を行う際に、磁性材料の磁気特性を初磁化特性とする手法がある。しかしながら、実際の磁性材料の磁気特性は、磁気ヒステリシス特性を有する。このため、複雑な励磁条件で生じる電磁場を解析するためには、磁性材料の磁気ヒステリシス特性を考慮した数値解析を行う必要がある。特に、磁性材料の磁気特性として初磁化特性を用いると、電気機器のコイルに流れる電流の値の計算値の精度が低下し、電気機器の銅損の推定や、鉄心(コア)内の磁界の推定を高精度に行うことができなくなる場合がある。
そこで、本発明は、交流磁界が印加される場合の電磁場の解析を高精度に行うことを目的とする。
本発明者は、特願2014−177105号において、直流磁気ヒステリシス特性を、異常渦電流による影響が反映されるように補正した補正直流磁気ヒステリシス特性を導出することを提案した。そして、特願2014−177105号では、補正直流磁気ヒステリシス特性に基づいて、磁束密度と磁界との関係が定式化されたモデルとして、例えば、非特許文献1、2等に記載されているプレイヒステリシスモデル(形状関数)を同定し、このモデルを、ニュートンラプソン法における反復計算を行う際に用いて、マックスウェルの方程式に基づき、磁束密度ベクトルと渦電流ベクトルとを導出する。
(電磁場解析装置100の構成)
図1は、電磁場解析装置100の機能的な構成の一例を示す図である。本実施形態では、電磁鋼板を積層した鉄心(コア)を備える電気機器における電磁場を解析する場合を例に挙げて説明する。以下、電磁鋼板と称する場合には、電磁場の解析の対象となる電磁鋼板そのもの、または、電磁場の解析の対象となる電磁鋼板と同じ種類の電磁鋼板を指す。ただし、電磁場の解析対象は、磁性材料(例えば強磁性材料)であれば、電磁鋼板に限定されない。
電磁場解析装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置や、専用のハードウェアを用いることにより実現することができる。
直流ヒステリシスデータ入力部101は、電磁場の解析の対象となる電磁鋼板の直流磁気ヒステリシス特性のデータを入力する。直流磁気ヒステリシス特性とは、時間的にゆっくり変化する磁束密度と磁界とに基づく磁気ヒステリシス特性をいう。本実施形態では、このような磁気ヒステリシス特性であって、メジャーループに相当する部分の磁気ヒステリシス特性を、直流磁気ヒステリシス特性とする。
直流磁気ヒステリシス特性のデータの入力形態は、特に限定されない。例えば、電磁場解析装置100のユーザインターフェースに対するオペレータによる操作に基づく形態でも、外部装置から送信されたデータを入力する形態でも、電磁場解析装置100に電気的に接続された可搬型の記憶媒体からデータを読み出す形態でもよい。このことは、以下に説明する磁束密度条件入力部102、異常渦電流損係数導出部103、磁性材料条件入力部104、初磁化特性入力部107、および電磁場解析条件入力部108における入力形態についても同じである。
直流ヒステリシスデータ入力部101は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、およびデータの入力形態に対応するインターフェースを用いることにより実現できる。
磁束密度条件入力部102は、磁束密度条件を入力する。磁束密度条件は、磁束密度の波高値と周波数と波形(時間の経過に伴う磁束密度ベクトルの大きさの変化の概形)を含む情報である。磁束密度の周波数は、例えば、電磁場を解析する際の励磁条件に応じて決定することができる。なお、磁束密度の波高値は、直流ヒステリシスデータ入力部101により入力される直流ヒステリシス特性のデータからも得られるので、必ずしも、磁束密度条件入力部102により入力する必要はない。
磁束密度条件入力部102は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、およびデータの入力形態に対応するインターフェースを用いることにより実現できる。
異常渦電流損係数導出部103は、異常渦電流損係数κ[−]を導出する。異常渦電流損係数κは、例えば、以下の(1)式で表される。
We=Ke・f2・|B|2 ・・・(2)
(2)式において、Weは、渦電流損[W/kg]であり、fは、周波数[Hz]であり、|B|は、磁束密度ベクトルBの大きさ[T]である。
まず、磁性材料についてのB−Wデータを、例えば規格標準で定められたエプスタイン測定法や単板試験測定法等の公知の測定法による磁気測定の測定値を用いて導出することを、複数の周波数のそれぞれにおいて行う。B−Wデータは、磁束密度ベクトルBの大きさと鉄損Wの大きさとの関係を示す曲線のデータである。
次に、大きさが同じである磁束密度ベクトルBに対応する鉄損Wの大きさをB−Wデータから抽出し、抽出した鉄損Wの大きさを、当該B−Wデータが属する周波数fで割った値である単位周波数当たりの鉄損の大きさW/fを導出する。
次に、W/f−fデータから、最も低い周波数f(例えば50[Hz])と、それよりも高い基本波の周波数f(例えば100[Hz])とに対応する「単位周波数当たりの鉄損の大きさW/f」の値を通る直線の切片(周波数fの値が0(ゼロ)のときの単位周波数当たりの鉄損の大きさW/f)を、直流での単位周波数当たりの鉄損の大きさWh0として導出する。
次に、以下の(3)式に、周波数fとして、W/f−fデータにおける最も低い周波数f(例えば50[Hz])を代入し、ヒステリシス損Whとして、前述したようにして導出したヒステリシス損Whfを代入し、磁束密度ベクトルの大きさBとして、ヒステリシス損Whfを導出する際に使用した「W/f−fデータ」が属する磁束密度ベクトルBの大きさを代入する。これにより、ある磁束密度ベクトルBの大きさであるときのヒステリシス損スタインメッツ係数Khが得られる。
Wh=Kh・f・B1.6 ・・・(3)
次に、当該ヒステリシス損スタインメッツ係数Khと、当該ヒステリシス損スタインメッツ係数Khが属する磁束密度ベクトルBの大きさと、前述したようにして抽出した鉄損Wの大きさと、当該鉄損Wの大きさに対応する周波数fを、前述した(2)式および(3)式、ならびに、以下の(4)式に代入する。
W=We+Wh ・・・(4)
これにより、ある磁束密度ベクトルBの大きさ、ある周波数fであるときの渦電流損スタインメッツ係数Keが得られる。
前述したように、直流ヒステリシスデータ入力部101は、磁束密度の複数の波高値のそれぞれについて、直流磁気ヒステリシス特性のデータを入力する。また、磁束密度条件入力部102により、磁束密度ベクトルの周波数が入力される。
異常渦電流損係数導出部103は、これらの波高値および周波数に対応する渦電流損スタインメッツ係数Keを入力する。
尚、このように、波高値および周波数に対応する渦電流損スタインメッツ係数Keを入力すれば、異常渦電流損係数κを導出することができるので好ましい。しかしながら、簡易的に、波高値および周波数に依存しない渦電流損スタインメッツ係数Keを入力してもよい。
そして、異常渦電流損係数導出部103は、(1)式の計算を行って、異常渦電流損係数κを導出する。
異常渦電流損係数導出部103は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、およびデータの入力形態に対応するインターフェースを用いることにより実現できる。尚、ここでは、電磁場解析装置100において異常渦電流損係数κを導出するようにした。しかしながら、外部装置等で別途導出された異常渦電流損係数κを入力してもよい。
磁性材料条件入力部104は、磁性材料条件を入力する。磁性材料条件は、電磁鋼板の板厚h[m]と電磁鋼板の固有抵抗率ρ[Ω・m]とを含む情報である。
磁性材料条件入力部104は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、およびデータの入力形態に対応するインターフェースを用いることにより実現できる。尚、異常渦電流損係数導出部103により、電磁鋼板の板厚hと電磁鋼板の導電率σを入力する場合には、これらを磁性材料条件とすることができる。すなわち、磁性材料条件入力部104を省略することができる。
補正直流磁気ヒステリシス特性導出部105は、磁束密度条件入力部102により入力された磁束密度条件(磁束密度ベクトルの周波数)と、異常渦電流損係数導出部103により導出された異常渦電流損係数κと、磁性材料条件入力部104により入力された磁性材料条件(電磁鋼板の板厚h・固有抵抗率ρ)とに基づいて、直流ヒステリシスデータ入力部101により入力された直流磁気ヒステリシス特性のデータにおける磁界ベクトルの大きさ[A/m]を補正したデータである補正直流磁気ヒステリシス特性のデータを導出する。補正直流磁気ヒステリシス特性のデータは、異常渦電流による影響を反映した直流ヒステリシスデータである。
本実施形態では、異常渦電流損係数κの導出に用いるB−Wデータとして、規格標準で定められた励磁条件である、磁束密度ベクトルの大きさが正弦波で変化する条件下で測定されたものを利用する。また、本実施形態では、補正直流磁気ヒステリシス特性導出部105は、以下の(5)式の計算を行うことにより、補正直流磁気ヒステリシス特性のデータを計算する。
B[i]は、磁束密度条件入力部102により入力された波高値および周波数の正弦波で時間変化する磁束密度ベクトルの大きさであって、時刻ステップt[i]における磁束密度ベクトルの大きさである。B[i−1]は、磁束密度条件入力部102により入力された波高値および周波数の正弦波で時間変化する磁束密度ベクトルの大きさであって、時刻ステップt[i−1]における磁束密度ベクトルの大きさである。Hh[i]は、直流磁気ヒステリシス特性において、磁束密度ベクトルの大きさB[i]に対応する磁界ベクトルの大きさである。κは、当該波高値および励磁条件に示される周波数における異常渦電流損係数である。
鉄損Wは、ヒステリシス損Whと、渦電流損Weとの和で表され、渦電流損Weは、異常渦電流損Weaと、古典的渦電流損We0との和で表されるので、以下の(6)式が得られる。
W=Wh+We=Wh+Wea+We0 ・・・(6)
電磁鋼板の板厚方向において磁束密度ベクトルBが均一である場合、古典的渦電流損We0は、以下の(7)で表される。
We=κ・We0 ・・・(8)
したがって、(6)式〜(8)式より、異常渦電流損Weaは、以下の(9)式で表される。
補正直流磁気ヒステリシス特性導出部105は、例えば、CPU、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現できる。
モデル同定部106は、補正直流磁気ヒステリシス特性導出部105により計算された、磁束密度の波高値ごとの補正直流磁気ヒステリシス特性のデータに基づいて、磁束密度と磁界との関係が定式化されたモデル(磁束密度と磁界との関係を示す計算式のパラメータ)を同定する。
等方性ベクトルプレイヒステリシスモデルでは、磁界ベクトルH[A/m]は、例えば、以下の(14)式、(15)式のように表される。
(15)式において、pζ(|B|)は、磁束密度ベクトルB[T]に対するプレイヒステロンの値[T]である。pζ 0は、1つ前の時刻のプレイヒステロンpζの値である。max(|B−pζ 0|/ζ,1)は、|B−pζ 0|/ζと、1とのうち、大きい方の値を採用することを示す。ζは、プレイヒステロンの幅を与えるパラメータ[T]である。pζ/|pζ|は、プレイヒステロンpζの単位ベクトルである。尚、非特許文献1に記載されているように、(14)式、(15)式において、方向を一方向とすれば、スカラプレイヒステリシスモデルとなるので、(14)式、(15)式は、スカラプレイヒステリシスモデルにも適用できる。
非特許文献1に示される等方性ベクトルプレイヒステリシスモデルでは、このような性質を有するプレイヒステロンpζを用いて、磁界ベクトルHを(14)式のようにして表現する。
(14)式において、f(ζ,pζ(B))は、形状関数[A/(m・T)]である。この形状関数は、プレイヒステロンの幅ζと、プレイヒステロンpζ(B)の関数で表現される。プレイヒステリシスモデルを同定することは、この形状関数を同定することと同義である。
モデル同定部106は、例えば、CPU、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現できる。
初磁化特性入力部107は、電磁場の解析の対象となる電磁鋼板の初磁化特性のデータを入力する。
図2は、B−H曲線の一例を示す図である。尚、図2において、Bは磁束密度であり、Hは磁界である。
初磁化特性は、初磁化曲線とも称されるものであり、図2において、点0と点aとを始点・終点とする曲線をいう。すなわち、磁性材料が磁化されていない状態から磁束密度の飽和が(最初に)生じるまでの、磁束密度と磁界との関係が初磁化特性となる。
初磁化特性は、例えば、電磁場の解析の対象となる電磁鋼板と同種の試験片を用いて、規格標準で定められたエプスタイン測定法や単板試験測定法等の公知の測定法による磁気測定を行うことにより得ることができる。
初磁化特性入力部107は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、およびデータの入力形態に対応するインターフェースを用いることにより実現できる。
電磁場解析条件入力部108は、電磁場解析条件を入力する。電磁場解析条件は、後述する電磁場解析部109による計算に必要な情報である。本実施形態では、有限要素法を用いて電磁場を解析する。したがって、電磁場解析条件は、例えば、微小領域(メッシュ)の分割条件(分割位置の座標情報)、鉄心(コア)の形状、鉄心(コア)を励磁するときの条件(励磁条件)、及び各種の初期値等である。励磁条件は、磁束密度条件と同様に、磁束密度の波高値と周波数と波形を含む情報である。
電磁場解析条件入力部108は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、およびデータの入力形態に対応するインターフェースを用いることにより実現できる。
電磁場解析部109は、電磁場解析条件入力部108により入力された電磁場解析条件に基づいて、各微小領域(メッシュ)における磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeを計算する。本実施形態では、マックスウェルの方程式に基づき、有限要素法を用いて、各微小領域における磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeを計算する。有限要素法により電磁場の解析を行う手法は、非特許文献4等に詳細に記載されているように、一般的な手法である。尚、各微小領域における磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeを計算することができれば、有限要素法以外の方法(差分法等)を用いてもよい。
(16)式および(17)式を連立して解いて、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルφを求めた後、(18)式、(19)式から、磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeが計算される。
電磁場解析部109は、例えば、CPU、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現できる。
微小領域内ヒステリシス損計算部110は、ある微小領域について電磁場解析部109により解析された磁束密度ベクトルBと当該磁束密度ベクトルBに対応する磁界ベクトルHの一周期における波形から、当該微小領域における磁気ヒステリシス特性を導出する。そして、微小領域内ヒステリシス損計算部110は、以下の(20)式の計算を行って、当該導出した磁気ヒステリシス特性の面積を、当該微小領域におけるヒステリシス損whaとして計算する。
微小領域内ヒステリシス損計算部110は、以上のような計算を、全ての微小領域について行う。
微小領域内ヒステリシス損計算部110は、例えば、CPU、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現できる。
微小領域内渦電流損計算部111は、ある微小領域について電磁場解析部109により解析された渦電流ベクトルJeと、当該微小領域の体積と、電磁鋼板の導電率σに基づいて、以下の(21)式の計算を行って、当該微小領域における古典的渦電流損we0を導出する。
微小領域内渦電流損計算部111は、以上のような計算を、全ての微小領域について行う。
微小領域内渦電流損計算部111は、例えば、CPU、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現できる。
鉄損総和部112は、以下の(22)式に示す計算を行って、同一の微小領域におけるヒステリシス損whaおよび古典的渦電流損we0の和を当該微小領域の鉄損wとして導出し、以下の(23)式の計算を行って、全ての微小領域の鉄損wの総和を、電磁場の解析対象である鉄心(コア)全体の鉄損Wとして導出する。
w=wha+we0 ・・・(22)
W=Σw ・・・(23)
鉄損総和部112は、例えば、CPU、ROM、RAM、およびHDDを用いることにより実現できる。
鉄損出力部113は、鉄損総和部112で計算された、鉄心(コア)全体の鉄損Wを出力する。鉄心(コア)全体の鉄損Wの出力形態は、特に限定されない。例えば、電磁場解析装置100の内部の記憶媒体や電磁場解析装置100に接続された可搬型の記憶媒体へ記憶する形態でも、コンピュータディスプレイへ表示する形態でも、外部装置へ送信する形態でもよい。
鉄損出力部113は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、およびデータの出力形態に対応するインターフェースを用いることにより実現できる。
次に、図3のフローチャートを参照しながら、電磁場解析装置100の処理の一例を説明する。図3のフローチャートは、例えば、CPUが、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
まず、ステップS301において、直流ヒステリシスデータ入力部101は、電磁場の解析の対象となる電磁鋼板の直流磁気ヒステリシス特性のデータを入力する。
次に、ステップS302において、磁束密度条件入力部102は、磁束密度条件(磁束密度の波高値、周波数および波形)を入力する。
次に、ステップS304において、磁性材料条件入力部104は、磁性材料条件(電磁鋼板の板厚hと電磁鋼板の固有抵抗率ρ)を入力する。
次に、ステップS306において、モデル同定部106は、補正直流磁気ヒステリシス特性のデータを用いて、形状関数f(ζ,pζ(B))を同定することにより、プレイヒステリシスモデルを同定する。
次に、ステップS308において、電磁場解析条件入力部108は、電磁場解析条件(微小領域(メッシュ)の設定方法、鉄心(コア)の形状、鉄心(コア)を励磁するときの条件(励磁条件)、及び各種の初期値等)を入力する。
次に、ステップS312において、鉄損総和部112は、(22)式および(23)式の計算を行って、鉄心全体の鉄損Wを導出する。
次に、ステップS313において、鉄損出力部113は、鉄心(コア)全体の鉄損Wを出力する。
次に、実施例を説明する。
図4は、本実施例で解析を行うIPM(Interior Permanent Magnet Motor)モータのモデルの一例を示す図である。具体的に、図4は、IPMモータの回転軸の中心を原点0とし、原点0から径方向に伸びる2つの線であって、相互になす角度が90[°]となる2つの線でIPMモータを切ったときの、IPMモータの回転軸に垂直な方向の面を示す図である。
本実施例では、励磁条件として、励磁電圧の周波数を50[Hz]、波高値を18[V]、波形を正弦波とする条件を採用した。
これらの励磁条件に従ってIPMモータのモデルを励磁した場合の、位置412における周方向θの磁束密度ベクトルBおよび磁界ベクトルHを、本実施形態の手法と、特願2014−177105号に記載の手法とのそれぞれで計算した結果を、それぞれ、図5、図6に示す。
本実施例では、励磁条件として、励磁電圧の周波数を400[Hz]、波高値を135V、波形を正弦波とする条件と、337[V]の直流電圧を、変調率を0.4としてパルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)した電圧を励磁電圧とする条件とのそれぞれにおいて、位置411、412における周方向θおよび径方向Rの磁束密度ベクトルBおよび磁界ベクトルHを、本実施形態の手法と、特願2014−177105号に記載の手法とのそれぞれで計算した。尚、ここでは、励磁電圧の波高値として、IPMモータのトルクが2.8[Nm]になるような波高値を設定した。
以上の2つの励磁条件に従ってIPMモータのモデルを励磁した場合の、本実施形態の手法における計算の結果を図7〜図10に示す。尚、以下の説明では、前述した2つの励磁条件のうち、励磁電圧を正弦波とする条件を必要に応じて正弦波電圧駆動と称し、励磁電圧をパルス幅変調した電圧とする条件を必要に応じてPWMインバータ駆動と称する。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
Claims (6)
- 磁性材料の直流磁気ヒステリシス特性を補正した補正直流磁気ヒステリシス特性を導出する補正直流磁気ヒステリシス特性導出手段と、
前記補正直流磁気ヒステリシス特性導出手段により導出された、補正直流磁気ヒステリシス特性のデータを用いて、前記磁性材料における、磁束密度と磁界との関係が定式化されたモデルを同定するモデル同定手段と、
前記磁性材料を励磁するときの条件である励磁条件と、前記磁性材料の初磁化特性と、を用いて、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルと渦電流ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づき、複数の微小領域ごとに計算する電磁場解析手段と、
前記電磁場解析手段で得られた磁束密度ベクトルと、前記モデル同定手段で同定されたモデルとを用いて、前記磁性材料におけるヒステリシス損を計算するヒステリシス損計算手段と、を有し、
前記補正直流磁気ヒステリシス特性導出手段は、以下の(A)式に基づく計算を行って、磁束密度ベクトルの大きさB[i][T]に対応する補正後の磁界ベクトルの大きさHha[i][A/m]を導出し、導出した磁束密度ベクトルの大きさB[i]に対応する補正後の磁界ベクトルの大きさHha[i]を用いて、前記補正直流磁気ヒステリシス特性を導出することを特徴とする電磁場解析装置。
(A)式において、iは、時刻ステップを特定するための変数であり、i−1は、変数iで特定される時刻ステップの1つ前の時刻ステップを特定するための変数であり、Hh[i]は、前記直流磁気ヒステリシス特性のデータにおいて磁束密度ベクトルの大きさB[i]に対応する磁界ベクトルの大きさ[A/m]であり、t[i]は、変数iに対応する時間ステップであり、κは、前記磁性材料の全渦電流損を表現する際に古典的渦電流損に乗算される係数である異常渦電流損係数[−]であり、ρは、前記磁性材料の固有抵抗率[Ω・m]であり、hは、前記磁性材料の厚み[m]である。
- 磁束密度の波高値が異なる複数の前記直流磁気ヒステリシス特性のデータを入力する直流磁気ヒステリシス特性入力手段と、
磁束密度の周波数および波形を含む磁束密度条件を入力する磁束密度条件入力手段と、 前記異常渦電流損係数κを導出する異常渦電流損係数導出手段と、
前記磁性材料の厚みhと前記磁性材料の固有抵抗率ρとを含む磁性材料条件を入力する磁性材料条件入力手段と、を有し、
前記補正直流磁気ヒステリシス特性導出手段は、前記磁束密度条件により定まる磁束密度の各時間ステップにおける大きさB[i]に対応する補正後の磁界ベクトルの大きさHha[i]を導出することを、前記波高値の磁束密度のそれぞれについて行うことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁場解析装置。 - 磁性材料の直流磁気ヒステリシス特性を補正した補正直流磁気ヒステリシス特性を導出することを補正直流磁気ヒステリシス特性導出手段により行う補正直流磁気ヒステリシス特性導出工程と、
前記補正直流磁気ヒステリシス特性導出工程により導出された、補正直流磁気ヒステリシス特性のデータを用いて、前記磁性材料における、磁束密度と磁界との関係が定式化されたモデルを同定することをモデル同定手段により行うモデル同定工程と、
前記磁性材料を励磁するときの条件である励磁条件と、前記磁性材料の初磁化特性と、を用いて、当該磁性材料が励磁されたときに当該磁性材料に発生する磁束密度ベクトルと渦電流ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づき、複数の微小領域ごとに計算することを電磁場解析手段により行う電磁場解析工程と、
前記電磁場解析工程で得られた磁束密度ベクトルと、前記モデル同定工程で同定されたモデルとを用いて、前記磁性材料におけるヒステリシス損を計算するヒステリシス損計算工程と、を有し、
前記補正直流磁気ヒステリシス特性導出工程は、以下の(A)式に基づく計算を行って、磁束密度ベクトルの大きさB[i][T]に対応する補正後の磁界ベクトルの大きさHha[i][A/m]を導出し、導出した磁束密度ベクトルの大きさB[i]に対応する補正後の磁界ベクトルの大きさHha[i]を用いて、前記補正直流磁気ヒステリシス特性を導出することを特徴とする電磁場解析方法。
(A)式において、iは、時刻ステップを特定するための変数であり、i−1は、変数iで特定される時刻ステップの1つ前の時刻ステップを特定するための変数であり、Hh[i]は、前記直流磁気ヒステリシス特性のデータにおいて磁束密度ベクトルの大きさB[i]に対応する磁界ベクトルの大きさ[A/m]であり、t[i]は、変数iに対応する時間ステップであり、κは、前記磁性材料の全渦電流損を表現する際に古典的渦電流損に乗算される係数である異常渦電流損係数[−]であり、ρは、前記磁性材料の固有抵抗率[Ω・m]であり、hは、前記磁性材料の厚み[m]である。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の電磁場解析装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
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