JP2941516B2 - 直流重畳の鉄損計算装置 - Google Patents

直流重畳の鉄損計算装置

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JP2941516B2
JP2941516B2 JP3258845A JP25884591A JP2941516B2 JP 2941516 B2 JP2941516 B2 JP 2941516B2 JP 3258845 A JP3258845 A JP 3258845A JP 25884591 A JP25884591 A JP 25884591A JP 2941516 B2 JP2941516 B2 JP 2941516B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばスイッチング電
源の平滑チョークのように直流電流に交流電流が重畳し
た電流で励磁された磁性材料の鉄損を計算する装置に関
する。
【0002】
【従来技術】磁界の計算は、マックスウェル方程式をも
とに差分法や有限要素法による近似を行い、計算の対象
となる磁性部品を微小領域に分割して計算を行ってい
た。
【0003】ここで差分法および有限要素法について説
明する。なお、「電気工学の有限要素法」(中田高義,
高橋則雄 著,森北出版)を参考文献とした。
【0004】磁界計算を行うためには以下に示す基礎方
程式のうち(1)式を解く必要がある。一般的には変数
の扱いを容易にするため(2)式,及び(3)式を加え
て(4)式を解くことが多い。
【0005】rotH=J・・・(1) H:磁界強度(A/m),J:電流密度(A/m2) なお、H,Jはベクトルを表す。
【0006】B=μH・・・(2) B:磁束密度(Wb/m2),μ:透磁率 なお、B,Hはベクトルを表す。
【0007】B=rotA・・・(3) A:ベクトルポテンシャル(Wb/m) なお、B,Aはベクトルを表す。
【0008】 (rotν・rotA)=J・・・(4) ν(=1/μ):磁気抵抗率 なお、A,Jはベクトルを表す。
【0009】しかし、(4)式は偏微分方程式であるた
め、これを直接解くことは極めて困難である。そこで何
らかの近似を用いて解くことになりその方法として差分
法あるいは有限要素法がある。以下これらの近似法の具
体的な説明を行う。なお、簡単にするため(4)式を2
次元場(x,y座標のみ)で取り扱う。
【0010】(4)式の2次元場での方程式は、
【0011】
【数1】
【0012】となり、2次元場では磁束密度はBX,BY
しか存在しないように仮定しているためベクトルポテン
シャルはAZ成分しかもたない。また電流はZ方向に無
限長に流れている状態である。以後の説明ではAZを単
にAと書く。
【0013】「差分法」差分法は、図11に示すように
計算の対象とする領域を格子状に分割し、各格子点でベ
クトルポテンシャルAZをテイラー展開して(5)式に
示す方程式を近接する格子点のポテンシャルの関係式に
して数値計算する方法である。具体的には図11に示す
点(i,j)のまわりで2次のテイラー展開を行うと、
【0014】
【数2】
【0015】となる。ここでhx,hyは格子間の距離で
ある。(5)式,(6)式を用いるとi,jに関して、
【0016】
【数3】
【0017】という方程式が得られる。J(i,j),
x,hy,νy(=1/μy),νx(=1/μx)は計算
条件として与えられるため残りのAに関する値が未知数
となる。同様な手段で各格子点について(7)式の方程
式をたてれば格子点の総数の元数を持つ連立方程式がで
きる。しかし、実際には電流源の遠方にある端の境界部
分の格子点はA=0とおき既知の値として扱うため元数
が多少減った連立方程式を解くことになる。
【0018】以上の手続きの内、格子状に分割する手続
き,連立方程式を計算する手続き,求まったAの値から
(2)式および(3)式でH,Bを求める手続きはコン
ピュータで行い既知のAの値のインプット,材料定数で
あるνx,νy,電流条件などはオペレータによる。
【0019】「有限要素法」有限要素法は、計算の対象
とする領域を要素と呼ばれる微小領域に分割し要素内の
ベクトルポテンシャルAの分布を単純な関数で近似して
解析を行う方法である。要素の形状についての制限はな
いが、例えば図12に示すような三角形がよく用いられ
る。三角形の各頂点を節点と呼び連続した番号がつけら
れ、要素にも連続した番号がつけられる。
【0020】今、(5)式を
【0021】
【数4】
【0022】とおくと、Aが方程式を満す真の解であれ
ば、 f(A)=0 となる。なお、Aはベクトルを表す。Aが近似解A′で
あったとすると f(A′)=R となる。なお、A′はベクトルを表す。このRの計算対
象領域全体にわたる積分(和)である ∬Rdxdy が最小になるようにA′を求めれば、A=A′とするこ
とができる。そこで各要素に関する重み関数を導入して
重みつき積分を行うようにすると実際の演算操作が可能
となり定量的にA′を求めることができる。
【0023】∬R・Wdxdy=0・・・(8) この重み関数Wに補間関数と呼ばれるものを導入したの
が一般に有限要素法と呼ばれている。要素内の任意の点
のポテンシャルはそれらの節点のポテンシャルの関数と
して
【0024】
【数5】
【0025】と表現でき、この場合のNiが補間関数で
ある。図12に示した三角形要素であると、例えば節点
iに関しては、 Ni=(1/2S)×(bi+cix+diy) S:三角形の面積 bi=xjk−xkji=yj−yki=xk−xj ・・・(10) で定義される。そして(8)式は具体的に、
【0026】
【数6】
【0027】となり、(11)式を部分積分すると、
【0028】
【数7】
【0029】となる。この(12)式において、
【0030】
【数8】
【0031】のように補間関数の微分に置き換えられ
る。補間関数の微分は(10)式により容易に求めら
れ、 ∂Ni/∂x=ci/2S ∂Ni/∂y=di/2S となる。このようにして(12)式より1つの要素に関
し、その要素を構成する節点の数だけ連立方程式をたて
ることができる。各々の要素に関して(12)式に基づ
く連立方程式を立て近接する要素間で共用される節点に
関して重ね合わされて最終的には節点の総数の元数を持
つ連立方程式ができる。この連立方程式を解くことによ
り近似解A′を求めることができる。しかし、実際には
電流源の遠方にある端の境界部分の節点のポテンシャル
はA=0とおき既知の値として扱うため元数が多少減っ
た連立方程式を解くことになる。
【0032】以上の手続きの内、要素に分割する手続
き,連立方程式を計算する手続き,求まったAの値から
(2)式および(3)式でH,Bを求める手続きはコン
ピュータで行い既知のAの値のインプット,材料定数で
あるνx,νy,電流条件などはオペレータによる。
【0033】以上、差分法,有限要素法を2次元場にお
いて説明したが、3次元場においても同様な手続きによ
り解くことが可能である。
【0034】この方法を用いて、図13に示すような直
流電流に交流電流が重畳(直流重畳)した電流で励磁さ
れた磁性部品の磁界計算を行うには電流の変化を微小な
時間間隔で分割し、時々刻々と変化する電流値に応じて
計算するのが一般的な方法である。これは、直流重畳電
流の交流成分により、磁性材料内部に発生する渦電流の
影響を考慮して計算する必要があるからである。その
際、磁性部品の磁気特性は直流重畳状態では一般にはヒ
ステリシスを有し非線形である。そのため微小時間毎に
計算された磁界強度または磁束密度に応じて磁気特性の
修正を行い、同じ電流値に対し反復計算を行わなければ
ならなかった(例えば、電気学会論文誌A,109巻6
号 頁247〜254 平成元年「有限要素法によるヒス
テリシス損失の解析」榎園正人,池下浩二著および特開
平2−232773号公報)。つまり、材料の非線形性
に関する反復計算と、電流が時間変化を行うことに関す
る反復計算が必要であり、直流重畳状態の計算による模
擬を行うために必要な総反復計算数はおよそ次に示す、 総反復計算数=(非線形に関する反復計算数)×(電流
の時間変化に関する反復計算数) のように見積もられる。
【0035】
【発明が解決しようとする課題】上記の方法を用いてあ
る磁性材料の鉄損を計算する場合、例えば非線形に関す
る反復計算数を10回,電流の時間変化に関する反復計
算数を12回とすると、総反復計算数は120回(=1
0×12)となる。この120回という総反復計算数は
一般的な回数であり特に多いものではない。
【0036】また鉄損計算においては直流成分値を複数
想定した計算を必要とするのが普通であり、この場合
は、総計算量はさらに増し、直流電流値の想定数に上記
反復計算を乗じた値になる。このように磁界計算を用い
るには、多量の計算が必要となる問題があった。
【0037】従って、このような計算を小型の計算機で
短時間に行うことは極めて困難であるため大型で高速処
理計算しうる計算機を必要としていた。一方、磁界計算
を行わずに鉄損を得ようとすると類似の形状をした磁性
部品の測定値から推定するか、少なくとも一個の試作品
の製作を余儀なくされていた。また、その試作品が所望
の鉄損値を有しない場合には試作を重ねる必要があり、
そのための期間および費用は膨大なものであった。
【0038】本発明は、上記問題点を解決するため特に
試作品を製作することなく、かつ少ない計算量で磁性部
品の鉄損を算定する鉄損計算装置を提供することを目的
とする。
【0039】
【課題を解決するための手段】本発明は、直流電流に交
流電流が重畳した電流で励磁された磁性部材の鉄損を算
出する鉄損計算装置において、磁性部材(30)と同一
材質で反磁界係数が極小である形状をした磁性材料(4
0)を用いて測定した初磁化特性に基づいて磁性部材の
直流電流成分に対する磁束密度(BDC)を算出する第1
磁束密度算出手段(1); 第1磁束密度算出手段(1)が算出した磁束密度
(BDC)と磁性材料(40)を用いて測定した増分透磁
率(μ)に基づいて材料定数(μZi)を決定する定数決
定手段(1); 材料定数(μZi)に基づいて磁性部材(30)の交流電
流成分に対する磁束密度(BAC)を算出する第2磁束密
度算出手段(1);および、 第2磁束密度算出手段(1)が算出した磁束密度
(BAC)と磁性材料(40)を用いて測定した増分鉄損
値(W′)に基づいて磁性部材(30)の鉄損(W)を
算出する計算手段(1);を備える。なお、カッコ内の
記号は、図面に示し後述する実施例の対応要素又は対応
事項を示す。
【0040】
【作用】これによれば、定数決定手段(1)は磁性部材
(30)と同一材質で反磁界係数が極小である形状をし
た磁性材料(40)の初磁化特性から算出された磁性部
材の直流電流成分に対する磁束密度(BDC)と磁性材料
(40)の増分透磁率(μ)に基づいて材料定数
(μZi)を決定し、計算手段(1)は材料定数(μZi
から算出された磁性部材(30)の交流電流成分に対す
る磁束密度(BAC)と磁性材料(40)の増分鉄損値
(Wi)に基づいて磁性部材(30)の鉄損(W)を算
出する。
【0041】従って、1個の磁性材料(40)により任
意の形状をした磁性部材(30)の鉄損(W)を特に磁
性部材(30)を試作することなく精度よく算出するの
で、試作費用および試作期間が短縮される。
【0042】また、1回の計算が小型計算機でも比較的
短時間に行えるため複数の材質特性,形状に関して計算
水準を設けることができ機器の設計上、必要とされる所
定の直流重畳特性に対し最適な材質,形状を決定しう
る。本発明の他の目的および特徴は図面を参照した以下
の実施例の説明により明らかになろう。
【0043】
【実施例】図1に、本発明の一実施例の計算機10の構
成概要を示す。計算機10は、全体の制御を行うCPU
1,制御プログラムが格納されているROM2,制御プ
ログラムが一時的に使用するRAM3,各装置間のデー
タのやりとりを行う内部システム・バス4,各種情報を
記憶するメモリ5,対話型グラフィック端末機20とシ
ステム・バス4を接続するI/F(インタフェース)
6,およびオペレータからの指示を入力し所定の情報を
表示する操作表示部7等から構成されている。図2に、
計算の対象となる磁性部品30を示す。この磁性部品3
0は、スイッチング電源に用いられているチョークコア
と呼ばれるものである。符号31および32はフェライ
トでできた磁性部材であり、符号33は導線で磁性部材
31に巻線を施したコイル部分である。また、符号34
は磁性部材31および32の間にギャップを設けるため
に挿入された非磁性のスペーサーである。このスペーサ
ー34の厚さを変えることにより、直流重畳を可変し線
形領域での使用が可能となる。
【0044】図3に、CPU1のフローチャートを示
し、磁性部品(チョークコア)30の直流重畳特性を算
出する処理動作を説明する。
【0045】電源が投入されると処理モード等を初期化
して(ステップ1:以下カッコ内ではステップという語
を省略する)、入力を読み込む(2)。読み込まれる入
力は、磁性部品(チョークコア)30と同一材質からな
るリング状の試料40の初磁化特性,増分透磁率,増分
鉄損および直流重畳電流の直流成分値,交流成分値等で
ある。
【0046】リング状の試料40の初磁化特性は、図4
に示すような直流磁気測定装置を用いて測定する。すな
わち電界強度H(A/m)は、 H=NI/l・・・(13) N:導線の巻数,I:DC電源による直流電流値,l:
試料40の磁路長より求まり、磁束密度B(wb/
2)は測定電圧を積分回路で積分した出力値より求ま
る。この初磁化特性(電界強度Hと磁束密度Bの関係)
の測定結果を図5に示す。
【0047】次にリング状の試料40の増分透磁率の測
定について説明する。まず、JIS(C−2514)に
記載されている直流重畳特性測定装置(図示しない)を
用いてリング状の試料40の直流重畳特性を測定する。
その測定結果を図6に示す。縦軸はインダクタンスL
(μH),横軸は直流重畳電流の直流成分の値I
DC(A)を示している。なお、本実施例で測定した際の
直流重畳電流の交流成分の実効値は1.0mAであり周
波数は1.0kHZであった。このインダクタンスLの
値から増分透磁率μZを計算により求める。すなわち、
増分透磁率μZは、 μZ=π×R×L/(μ0×N2×Ae)・・・(14) π:円周率,R:リング試料40の平均直経(m), μ0:真空の透磁率(H/m),N:導線の巻数 Ae:リング試料40の断面積(m2) となる。さらに、直流重畳の直流成分の値IDCから次式
により直流電流成分により生じるリング試料40内の磁
界強度H(A/m)は、 H=N×IDC/(π×R)・・・(15) となる。この磁界強度の値から先に測定した初磁化特性
の磁界強度と磁束密度の関係からIDCは、磁束密度Bへ
変換される。この結果を図7に示す。この磁束密度の値
は直流重畳電流の直流成分によりリング試料40内に発
生した磁束密度を意味している。
【0048】なお、計算により増分透磁率や磁束密度が
求められるのは試料がリング状で反磁界係数が無視でき
るためであり、磁性部品(チョークコア)30のような
形状をしたものから測定すると大きな測定誤差を伴う。
【0049】次に、リング状の試料40の増分鉄損の測
定について説明する。図8に示すような装置(JIS規
定)により測定し、直流電流IDC′に対する鉄損W′お
よび磁束密度BAC′を得る。この結果を図9(a)に示
す。
【0050】再度、図3のフローチャートに戻る。入力
を読み込むと、オペレータによりスタート指示があるま
で、その他のモード処理を行う(3,4)。その他のモ
ード処理には後述するメッシュ分割の際の範囲指定等が
含まれる。スタート指示があると対話型グラフィック端
末機20を用いて磁性部品(チョークコア)30を微小
領域に分割した幾何学情報を読み込み、メモリ5に記憶
する(5,6)。この分割は、本実施例では磁界計算に
有限要素法を用いるので図10に示すようなメッシュと
呼ばれる三角形要素に分割を行う。図10は、図2のC
−C断面図であり磁性部品(チョークコア)30を囲む
空間P1−P2−P3−P4−P1内のおける分割情報
が読み込まれる。磁性部品(チョークコア)30を囲む
空間は操作表示部7により指定される。なお、磁界計算
に差分法を用いるならば差分格子と呼ばれる等間隔分割
を行う。
【0051】次に、この幾何学情報とステップ2で得た
初磁化特性および直流重畳電流の直流成分値に基づいて
磁界計算を行う(7)。この場合用いる初磁化特性は図
5に示したように磁界強度に対して非線形性を有するた
め、磁界計算は、幾何学情報による微小領域に対して有
限要素法による非線形磁界解析、すなわちニュートン・
ラプソン法(前述の「電気工学の有限要素法」200頁
(中田高義,高橋則雄著,森北出版)記載)のような非
線形反復計算を行う。これは、適当な初期透磁率値μか
ら出発して磁界強度,磁束密度値を求め図5に示した値
と一致した場合は計算を終了するが、一致しない場合に
は材料定数である透磁率値μを変えて所望の精度に落ち
着くまで反復計算を行う。本実施例では10回の反復計
算で収束した。これにより直流電流成分に対する各微小
領域の磁束密度BDCが計算される。
【0052】次に、得られた磁性部品(チョークコア)
30内部の各微小領域の磁束密度BDCから図7に示す増
分透磁率μZと磁束密度の関係を用いて、各微小領域の
増分透磁率μZiを決定する(8)。具体的にはステップ
2の入力読込で得られた増分透磁率μZと磁束密度の結
果を予め適当な関数で近似して記憶し、ステップ7で得
られた各微小領域の磁束密度BDCからつきつぎにこの関
数により増分透磁率μZiを決定する。本実施例では3次
関数により近似した。
【0053】次に、各微小領域の増分透磁率μZiとステ
ップ5で得られた幾何学情報およびステップ2で読み込
まれた直流重畳電流の交流電流成分値からステップ7で
行ったと同じ磁界計算法を用いて計算を1回だけ行う
(9)。計算が1回でよい理由は増分透磁率μZiの値
に、交流電流成分により発生する渦電流の影響が加味さ
れているからである。従って、ここでは磁性部品(チョ
ークコア)30に印加する直流重畳電流の交流成分の実
効値と周波数は、リング試料40の増分透磁率の測定し
た際の直流重畳電流の交流成分の実効値(1.0mA)
および周波数(1.0kHZ)と測定条件を一致させて
いる。この結果、交流電流成分に対応した磁束密度BAC
と磁界強度HACが得られる。
【0054】次に、交流電流成分に対応した磁束密度B
ACおよびステップ2で入力読込したリング状の試料40
の鉄損W′に対応する直流電流IDC′を変換した磁束密
度BDC′から磁性部品(チョークコア)30の鉄損Wを
算出する(10)。なお、直流電流IDC′から磁束密度
DC′への変換は(15)式より磁界強度を求め、この
値から先に測定した初磁化特性の磁界強度と磁束密度の
関係から磁束密度BDC′が求まる。磁束密度BDC′とリ
ング状の試料40の鉄損W′の関係を図9(b)に示
す。
【0055】各微小領域の鉄損Wiは次式に示すように
磁束密度BDC′と磁束密度BACの関数から求まり、 Wi=F(BDC′,BAC)・・・(16) 磁性部品(チョークコア)30の鉄損Wは、 W=∫Widv・・・(17) dv:磁性部品(チョークコア)30領域内の各要素の
体積 より求まる。
【0056】次に、反復計算の指示すなわちステップ2
で入力された直流重畳電流の直流成分の数だけ反復計算
したか否かをチェックし(11)、直流電流成分の数に
達してないとステップ5に戻り以下の処理(5〜11)
を実行し直流電流成分の数だけ反復計算すると結果を操
作表示部7に表示する(12)。
【0057】この実施例ではステップ7で行った磁界計
算の反復計算は10回で、ステップ9で行った磁界計算
は1回であり、1つの直流重畳電流の直流成分に関し
て、計11回の磁界計算で鉄損が求められた。
【0058】
【発明の効果】本発明の直流重畳の鉄損計算装置によれ
ば、1個の磁性材料(40)により任意の形状をした磁
性部材(30)の鉄損(W)を特に磁性部材(30)を
試作することなく精度よく算出するので、試作費用およ
び試作期間が短縮される。
【0059】また、1回の計算が小型計算機でも比較的
短時間に行えるため複数の材質特性,形状に関して計算
水準を設けることができ機器の設計上、必要とされる所
定の直流重畳特性に対し最適な材質,形状を決定しう
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の鉄損計算機10の構成を
示すブロック図である。
【図2】 計算の対象となる磁性部品(チョークコア)
30を示す拡大斜視図である。
【図3】 図1に示すCPU1の処理動作を示すフロー
チャートである。
【図4】 リング状の試料40の初磁化特性を測定する
直流磁気測定装置の構成概要を示すブロック図である。
【図5】 図4に示す直流磁気測定装置で測定された初
磁化特性(電界強度Hと磁束密度Bの関係)を示すグラ
フである。
【図6】 リング状の試料40の直流重畳特性の測定結
果を示すグラフであり、縦軸はインダクタンスL(μ
H),横軸は直流重畳電流の直流成分の値IDC(A)を
示す。
【図7】 リング状の試料40の磁束密度Bに対する増
分透磁率(μ)の関係を示すグラフである。
【図8】 リング状の試料40の増分鉄損(W′)を測
定する装置の構成概要を示すブロック図である。
【図9】 (a)は直流電流IDC′に対する鉄損W′の
関係を示すグラフであり、(b)は磁束密度BDC′に対
する鉄損W′の関係を示すグラフである。
【図10】 メッシュ分割された、図2に示す磁性部品
(チョークコア)30のC−C断面図である。
【図11】 差分法による分割の一例を示す平面図であ
る。
【図12】 有限要素法による分割の一例を示す平面図
である。
【図13】 直流電流に交流電流が重畳した状態を示す
タイミングチャートである。
【符号の説明】
1:CPU(第1磁束密度算出手段,第2磁束密度算出
手段,定数決定手段,計算手段) 2:ROM 3:RAM 4:システム・バス 5:メモリ 6:I/F 7:操作表示部 10:計算機 20:対話型グラフ
ィック端末機 30:磁性部品(磁性部材) 40:リング試料(磁性材料)
フロントページの続き (72)発明者 梅 津 健 司 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社 技術開発本部内 (72)発明者 金 子 博 夫 相模原市淵野辺5−10−1 新日本製鐵 株式会社 エレクトロニクス研究所内 (56)参考文献 特開 平2−232773(JP,A) 特開 平3−41380(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01R 33/00 - 33/18

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】直流電流に交流電流が重畳した電流で励磁
    された磁性部材の鉄損を算出する鉄損計算装置におい
    て、 磁性部材と同一材質で反磁界係数が極小である形状をし
    た磁性材料を用いて測定した初磁化特性に基づいて磁性
    部材の直流電流成分に対する磁束密度を算出する第1磁
    束密度算出手段; 第1磁束密度算出手段が算出した磁束密度と前記磁性材
    を用いて測定した増分透磁率に基づいて材料定数を決
    定する定数決定手段; 材料定数に基づいて磁性部材の交流電流成分に対する磁
    束密度を算出する第2磁束密度算出手段;および、 第2磁束密度算出手段が算出した磁束密度と前記磁性材
    を用いて測定した増分鉄損値に基づいて磁性部材の鉄
    損を算出する計算手段; を備えることを特徴とする、直流重畳の鉄損計算装置。
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