JP6798385B2 - 磁気特性解析システムおよび磁気特性解析方法 - Google Patents

磁気特性解析システムおよび磁気特性解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気特性解析システムおよび磁気特性解析方法に関し、特に、磁性材料の磁気特性を解析するために用いて好適なものである。
電気機器の鉄心(コア)に使用される電磁鋼板等の磁性材料を設計するため等の目的で、磁性材料の磁気特性(例えば、磁束密度、磁界強度、および鉄損)を測定することが行われている。非特許文献1、2には、電磁鋼板からなる試験片に発生する磁束密度の波形が正弦波に近くなる条件で試験片の磁気特性を測定することが記載されている。
しかしながら、実際の電気機器の磁性材料に発生する磁束密度の波形は、高調波成分を含む波形となっており、正弦波にならない。例えば、インバータで駆動されるモータにおいては、モータに使用されるコア(ステータコアおよびロータコア)の形状、モータの極数、およびインバータの駆動条件等に起因して、コアに発生する磁束密度の波形は、高調波成分を含む複雑な波形になる。
そこで、目標磁束密度が正弦波以外であっても、当該目標磁束密度に近い条件で磁性材料を励磁する技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、磁性材料の磁束密度を測定し、測定した磁性材料の磁束密度に対応する磁界強度を導出する。そして、導出した磁界強度と、目標磁界強度との誤差の割合に、目標励磁電圧を乗算した値を、励磁電圧の修正量とする。また、磁性材料の磁束密度と目標磁束密度とを比較した結果に基づいて磁性材料の磁束密度が収束しているか否かを判定する。この判定の結果、磁性材料の磁束密度が収束していない場合に、前記修正量を用いて更新された目標励磁電圧で磁性材料を励磁する。このような動作を、磁性材料の磁束密度が収束するまで繰り返し行う。
特開2016−114387号公報
JIS C 2550−1:2011「電磁鋼帯試験方法 第1部 エプスタイン試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法」 JIS C 2556:2015「単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法」 中田高義、高橋則雄著、「電気工学の有限要素法 第2版」、森北出版株式会社、1986年4月 北尾 純士、外6名、「プレイモデルのヒステリシス磁界解析への適用に関する検討」、電気学会 静止器・回転機合同研究会資料、SA‐12−16、RM−12−16、p.89−p.94、2012年 JIS C 2552:2014「無方向性電磁鋼帯」
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、鉄損の内訳としてヒステリシス損と渦電流損との比率を求めることができない。また、磁束密度と目標磁束密度との差の絶対値を用いた誤差率の、一周期にわたる全てのサンプリングタイミングにおける算術平均値が閾値以下である場合に、磁性材料の磁束密度が収束したと判定する。この場合、磁束密度と目標磁束密度との差の絶対値が平均化されるため、目標磁束密度の波形の形によっては、磁束密度を高精度に目標磁束密度に近づけることが容易ではない。このため、磁性材料に発生する磁束密度が正弦波でない場合に、当該磁性材料の鉄損の内訳(ヒステリシス損および渦電流損)を精度よく導出することができない慮がある。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、磁性材料に発生する磁束密度が正弦波でない場合でも当該磁性材料のヒステリシス損および渦電流損を高精度に導出することができるようにすることを目的とする。
本発明の磁気特性解析システムは、磁性材料からなる測定試料を励磁するための励磁コイルに励磁電圧を印加する印加手段と、前記測定試料が励磁されることにより第1のコイルに誘起される誘起電圧を検出する検出手段と、前記誘起電圧の目標波形を取得する取得手段と、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束していないと判定されると、前記誘起電圧の測定波形と、前記誘起電圧の目標波形との差に基づいて、前記励磁電圧を修正する修正手段と、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束しているときに前記修正手段により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁した場合の、前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を導出し、導出した数値解に基づいて、前記測定試料におけるヒステリシス損および渦電流損を特定する情報を導出する解析手段と、を有し、前記印加手段は、前記修正手段により前記励磁電圧が修正されると、当該修正された前記励磁電圧を前記励磁コイルに印加し、前記判定手段により、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したと判定されるまで、前記修正手段による前記励磁電圧の修正と、前記印加手段による前記励磁電圧の印加と、前記検出手段による前記誘起電圧の検出とが繰り返し行われ、前記判定手段は、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値、または、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、複数の周波数成分のそれぞれにおける振幅の差に基づいて、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定することを特徴とする。
本発明の磁気特性解析方法は、磁性材料からなる測定試料を励磁するための励磁コイルに励磁電圧を印加する印加工程と、前記測定試料が励磁されることにより第1のコイルに誘起される誘起電圧を検出する検出工程と、前記誘起電圧の目標波形を取得する取得工程と、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定する判定工程と、前記判定工程により、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束していないと判定されると、前記誘起電圧の測定波形と、前記誘起電圧の目標波形との差に基づいて、前記励磁電圧を修正する修正工程と、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束しているときに前記修正工程により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁した場合の、前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を導出し、導出した数値解に基づいて、前記測定試料におけるヒステリシス損および渦電流損を特定する情報を導出する解析工程と、を有し、前記印加工程は、前記修正工程により前記励磁電圧が修正されると、当該修正された前記励磁電圧を前記励磁コイルに印加し、前記判定工程により、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したと判定されるまで、前記修正工程による前記励磁電圧の修正と、前記印加工程による前記励磁電圧の印加と、前記検出工程による前記誘起電圧の検出とが繰り返し行われ、前記判定工程は、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値、または、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、複数の周波数成分のそれぞれにおける振幅の差に基づいて、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定することを特徴とする。
本発明によれば、磁性材料に発生する磁束密度が正弦波でない場合の当該磁性材料のヒステリシス損および渦電流損を高精度に導出することができる。
磁気特性解析システムの構成の第1の例を示す図である。 磁気特性解析方法の構成の第1の例を説明するフローチャートである。 PWMインバータの出力電圧の波形の一例を示す図である。 磁束密度の波形の一例を示す図である。 異なる変調率でPWMインバータを動作した場合の鉄損を比較した結果の一例示す図である。 磁気特性解析システムの構成の第2の例を示す図である。 磁気特性解析方法の構成の第2の例を説明するフローチャートである。 IPMモータの構成の一例を示す図である。 発明例における、誘起電圧の測定波形と目標波形の一例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態を説明する。
図1は、磁気特性解析システムの構成の一例を示す図である。図2は、磁気特性解析システムを用いた磁気特性解析方法の一例を説明するフローチャートである。本実施形態の磁気特性解析システムは、電気機器のコアを励磁する励磁巻線に所定の励磁電圧を印加した場合に当該コアの所定の領域(位置)に生じる磁束密度が、測定試料Sに発生するように測定試料Sを励磁する。測定試料Sとして用いられる磁性材料と電気機器のコアに使用される磁性材料は、同じ種類の磁性材料である。すなわち、製造工程において不可避的に発生するばらつきを除いて、同じ成分の原材料から同じ製造工程を経て製作されたもので、両者の違いは電気機器のコア形状に成形されているか、測定システムに応じた形状に成形されているか、のみである。従って、両者は同じ磁気特性を有する。特に、電気機器のコアに使用される磁性材料を板状とする場合、測定試料Sとして用いられる磁性材料の板厚と電気機器のコアに使用される磁性材料の板厚とを同じにする。
尚、電気機器は、例えば、モータに代表される回転電機や、変圧器や、変流器や、変成器や、リアクトル等、動作の際にコアが励磁される電気機器であれば、どのような電気機器であってもよい。また、本実施形態では、磁性材料が電磁鋼板である場合を例に挙げて説明する。ただし、磁性材料は、電磁鋼板に代表される軟磁性材料等、コアとして使用される磁性材料であればどのようなものであってもよい。
本実施形態では、磁束密度の目標波形(目標となる波形(磁束密度と時間との関係))と測定波形(測定された波形)とを比較し、測定波形が目標波形に合うように測定試料Sを励磁する。
測定試料Sの形状は、電気機器のコアを構成する磁性材料よりも単純な形状であるとする。例えば、非特許文献1に記載のエプスタイン試験器にセットされる試験片、非特許文献2に記載の単板試験器にセットされる試験片、またはリング状の試料を、測定試料Sとすることができる。
図1において、磁気特性解析システムは、励磁電源101と、励磁コイル102と、サーチコイル103と、電圧計104と、演算装置110と、を有する。
励磁電源101は、励磁電圧を励磁コイル102に印加する。励磁電圧の波形は、後述する演算装置110内の波形修正部114により決定された一周期分の波形を周期的にくり返す波形である。この励磁電圧により励磁コイル102には、励磁電流が流れる。励磁電源101は、例えば、任意波形発生器と、パワーアンプとを用いて構成される。
励磁コイル102は、測定試料Sを励磁するためのコイルであり、励磁コイル102は、測定試料Sを囲むように巻き回される。なお、測定試料Sが単板である場合、励磁コイル102は、測定試料Sと磁気的に結合されるヨークを囲むように巻き回しても良い。
サーチコイル103は、いわゆるBコイルと称されるものであり、測定試料Sが励磁されることにより誘起される誘起電圧を検出するためのコイルである。サーチコイル103は、測定試料Sを囲むように巻き回される。すなわち、サーチコイル103は、測定試料Sが励磁されることにより発生する磁束を囲むように巻き回される。
電圧計104は、サーチコイル103の両端の電圧(誘起電圧)を測定する。
演算装置110は、電圧計104で測定された誘起電圧を、所定のサンプリング周期に基づいて時系列データとして取得する。また、演算装置110は、励磁電圧の波形を生成して励磁電源101に指示すると共に測定試料Sの磁気特性(ヒステリシス損および渦電流損を特定する情報)を導出する。
(演算装置110の構成および磁気特性解析方法)
以下に、演算装置110が有する機能の一例を説明する。演算装置110のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置や、専用のハードウェアを用いることにより実現される。
<目標波形取得部111、S201>
目標波形取得部111は、誘起電圧の目標波形(誘起電圧の各時刻における目標値)として一周期分の目標波形を取得する。さらに、目標波形取得部111は、磁束密度の目標波形(磁束密度の各時刻における目標値)として一周期分の目標波形を取得する。誘起電圧および磁束密度の目標波形を取得する方法の一例として、以下の2つの方法を説明する。
まず、第1の方法について説明する。
磁気特性を解析したい電気機器のコアの所定の領域(磁気特性を解析したい領域)にサーチコイルを巻き回す。そして、電気機器のコアを励磁する励磁巻線に所定の励磁電圧を印加することにより当該サーチコイルに誘起される誘起電圧(当該サーチコイルの両端の電圧)を測定する。尚、サーチコイルを巻き回す領域は、磁気特性を解析したい領域と厳密に一致している必要はない。例えば、電気機器の構造上、磁気特性を解析したい領域と厳密に一致する領域にサーチコイルを巻き回すことができないことがあるからである。この場合、磁気特性を解析したい領域に可及的に近い領域にサーチコイルを巻き回す。
ここで、誘起電圧をV(t)[V]とする。サーチコイルの巻回数をN[回]とする。磁束をφ(t)[wb]とする。磁束密度をB(t)[T]とする。サーチコイル内の電磁鋼板の断面積をS[m2]とする。そうすると、以下の(1)式および(2)式が成り立つ。
V(t)=−N×dφ(t)/dt ・・・(1)
φ(t)=B(t)×S ・・・(2)
ここで、測定試料Sに対するサーチコイル103と、電気機器に対するサーチコイルとでは、巻回数および面積が異なる(場合が多い)。従って、この違いに応じて、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧の各時刻における値を、測定試料Sに対するサーチコイル103に誘起される誘起電圧の各時刻における値に換算する必要がある。具体的には、測定試料Sに対するサーチコイル103の巻回数、サーチコイル103内の電磁鋼板の断面積をそれぞれNA、SAとする。電気機器に対するサーチコイルの巻回数、サーチコイル内の電磁鋼板の断面積をそれぞれNM、SMとする。電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧をVM(t)とする。そうすると、誘起電圧の目標波形VA(t)は、以下の(3)式により算出される。
A(t)={(NA×SA)÷(NM×SM)}×VM(t) ・・・(3)
尚、電磁鋼板の断面積は、サーチコイルの軸の方向(測定試料Sが励磁されることにより測定試料Sに発生する磁束による磁路の方向)に垂直な方向に電磁鋼板を切った断面の面積である。
また、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧をV(t)とし、電気機器に対するサーチコイルの巻回数をNとして、電気機器に対するサーチコイル内の電磁鋼板の断面積をSとして、(1)式および(2)式により、電気機器のコアの所定の領域における磁束密度の目標波形B(t)を一周期分求め、磁束密度の目標波形とする。
尚、電磁鋼板の断面積は、サーチコイルの軸の方向(測定試料Sが励磁されることにより測定試料Sに発生する磁束による磁路の方向)に垂直な方向に電磁鋼板を切った断面の面積である。
ここで、測定時のノイズを低減するため、以上のようにして演算された誘起電圧に含まれる高次の高調波成分を除去した上で(3)式による計算を行うのが好ましい。例えば、以上のようにして演算された誘起電圧の波形に対して高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。これにより、誘起電圧の目標波形に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。さらに、磁束密度の目標波形に含まれる高次の高調波成分を除去した上で(1)式および(2)式の計算を行ってもよい。
目標波形取得部111は、例えば、このようにして誘起電圧および磁束密度の目標波形を演算する外部の演算装置から、誘起電圧および磁束密度の目標波形を受信することにより、誘起電圧および磁束密度の目標波形を取得することができる。また、目標波形取得部111は、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧を入力して、誘起電圧および磁束密度の目標波形を演算することにより、誘起電圧および磁束密度の目標波形を取得することもできる。この他、目標波形取得部111は、誘起電圧および磁束密度の目標波形のデータを記憶する記憶媒体から、誘起電圧および磁束密度の目標波形のデータを読み出すことにより、誘起電圧および磁束密度の目標波形を取得することもできる。
次に、第2の方法について説明する。
磁気特性を解析したい電気機器のコアを励磁する励磁巻線に所定の励磁電圧を印加することにより当該コアの所定の領域に発生する磁束密度ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく二次元数値解析(コアを構成する電磁鋼板の板面に平行な方向の面に対する数値解析(即ち、二次元空間における数値解析))を実行することにより求める。尚、このようにして求められる磁束密度ベクトルは、コアを構成する電磁鋼板の板面方向の成分を有し、板厚方向の成分を有しない。数値解析は、コンピュータにより実行される。
数値解析としては、例えば、有限要素法を用いることができる。例えば、電磁鋼板の形状、微小領域(いわゆるメッシュ)の大きさ、B−H曲線(磁束密度Bと磁界強度Hとの関係を表す曲線)のデータ、および励磁条件(例えば、各時刻における励磁電圧の大きさ)を、数値解析の解を求めるための物理量のパラメータとして採用される。即ち、これらのパラメータを考慮に入れて、マックスウェルの方程式の数値解として、微小領域ごとに磁束密度ベクトルが得られる。
磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeを計算するための基礎方程式は、一般に、以下の(4)式〜(7)式で与えられる。
Figure 0006798385
(4)式〜(7)式において、μは、透磁率[H/m]であり、Aは、ベクトルポテンシャル[T・m]であり、σは、導電率[S/m]であり、J0は、励磁電流密度[A/m2]であり、φは、スカラーポテンシャル[V]である。
(4)式および(5)式を連立して解いて、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルφを求めた後、(6)式、(7)式から、磁束密度ベクトルBと渦電流ベクトルJeが計算される。
尚、このようにして磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを求める方法は、非特許文献3に記載されているように公知の技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
そして、以上のようにして得られた電気機器のコアの所定の領域における一周期分の磁束密度ベクトルから、(1)式および(2)式に基づいて、誘起電圧の一周期分の波形を求め、求めた波形を、誘起電圧の目標波形とする。
ここで、丸め誤差等の数値解析時の誤差を低減するため、以上のようにして演算された誘起電圧の目標波形に含まれる高次の高調波成分を除去したものを(正式な)誘起電圧の目標波形とするのが好ましい。例えば、以上のようにして演算された誘起電圧の目標波形に対して高速フーリエ変換を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。このようにすることにより、以上のようにして演算された誘起電圧の目標波形に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。さらに、磁束密度の目標波形に含まれる高次の高調波成分を除去したものを(正式な)磁束密度の目標波形としてもよい。
目標波形取得部111は、以上のようにして誘起電圧および磁束密度の目標波形を演算することにより、誘起電圧および磁束密度の目標波形を取得することができる。この他、目標波形取得部111は、前述した方法と同様の方法で誘起電圧および磁束密度の目標波形を演算する外部の演算装置から送信された誘起電圧および磁束密度の目標波形のデータを受信することにより、誘起電圧および磁束密度の目標波形を取得することもできる。また、目標波形取得部111は、誘起電圧および磁束密度の目標波形のデータを記憶する記憶媒体から、誘起電圧および磁束密度の目標波形のデータを読み出すことにより、誘起電圧および磁束密度の目標波形を取得することもできる。
<目標波形記憶部112、S202>
目標波形記憶部112は、目標波形取得部111により取得された誘起電圧および磁束密度の目標波形を記憶する。
<磁束密度導出部113、S203>
磁束密度導出部113は、電圧計104で測定された誘起電圧をV(t)とし、サーチコイル103の巻回数をNとし、サーチコイル103内の電磁鋼板の断面積をSとして、(1)式および(2)式に基づく計算を一周期分行うことにより、測定試料Sにおける磁束密度の測定波形(一周期分のB(t))を導出する。
磁束密度導出部113は、測定時のノイズを低減するため、以上のようにして演算された磁束密度の測定波形に含まれる高次の高調波成分を除去したものを(正式な)磁束密度の測定波形とするのが好ましい。例えば、以上のようにして演算された磁束密度の測定波形に対して高速フーリエ変換を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。このようにすることにより、以上のようにして演算された磁束密度の測定波形に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。
<波形修正部114、S204>
波形修正部114は、電圧計104で測定された誘起電圧の測定波形に含まれる高次の高調波成分を除去する。例えば、誘起電圧の測定波形に対して高速フーリエ変換を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。これにより、測定試料Sに対するサーチコイル103に誘起される誘起電圧に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。次に、波形修正部413は、高調波成分を除去した誘起電圧の測定波形の或る時刻の値を、目標波形記憶部112に記憶された誘起電圧の目標波形の当該時刻に対応する時刻の値から減算した値を、一周期における各時刻において求める(以下、このようにして求めた値を差分と称する)。そして、波形修正部114は、或る時刻に対して求めた差分に緩和係数を乗算した値を、現在の励磁電圧の波形の当該時刻に対応する時刻の値に加算する。波形修正部114は、このような加算による修正を、一周期における各時刻において行う。緩和係数は、励磁電圧のハンチングを抑制するためのものであり、0(ゼロ)を上回り、1を下回る値を有する。例えば、緩和係数として0.2〜0.3の値を採用することができる。また、緩和係数を1として、現在の励磁電圧の波形に差分をそのまま加算してもよい。ここで、誘起電圧の測定波形からあらかじめ高調波成分を除去しておくことで、緩和係数を用いても抑止不可な励磁電圧の指示波形のハンチングを抑制することができる。
測定開始時には、誘起電圧の測定波形が存在しない。そこで、波形修正部114は、励磁電圧の指示波形の初期値として、目標波形記憶部112に記憶された誘起電圧の目標波形を採用する。このようにすれば、測定当初から、目標とする波形と同じ形の波形の励磁電圧が励磁電源101から出力され、後述する収束判定部115により、磁束密度が収束したと判定されるまでの時間が早まるので好ましい。ただし、励磁電圧の指示波形の初期値は、誘起電圧の目標波形に限定されず、任意の波形でよい。
<収束判定部115、S203〜S205>
収束判定部115は、磁束密度導出部113により導出された磁束密度の測定波形が、目標波形記憶部112に記憶された磁束密度の目標波形に収束したか否かを判定する。本実施形態では、収束判定部115は、磁束密度の目標波形と測定波形との相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を用いて、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定する。具体的には、磁束密度の目標波形をBA(t)とし、磁束密度の測定波形をBP(t)とし、一周期の開始、終了の時刻をそれぞれts、teとすると、収束判定部115は、以下の(8)式を満たす場合に、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したと判定し、そうでない場合に磁束密度の測定波形が目標波形に収束していないと判定する。また、収束判定部115は、(8)式に替えて以下の(9)式を用いてもよい。
Figure 0006798385
(8)式は、磁束密度の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を、そのまま用いる場合の例である。(9)式は、磁束密度の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を、磁束密度の目標波形の値の絶対値の、一周期分の積算値に対する割合として表した場合の例である。
波形修正部114は、収束判定部115により、磁束密度の測定波形が目標波形に収束していないと判定された場合に、前述した励磁電圧の指示波形の修正を行う。即ち、波形修正部114は、収束判定部115により、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したと判定されるまで、前述した励磁電圧の指示波形の修正を繰り返し行う。
<解析部116、S206>
解析部116は、磁束密度の測定波形が目標波形に収束しているときに波形修正部114で修正された(最新の)励磁電圧の指示波形を励磁コイル102に印加することにより測定試料Sに発生する磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく三次元数値解析((即ち、三次元空間における磁束密度)の数値解析)を実行することにより求める。尚、このようにして求められる磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルは、コアを構成する電磁鋼板の板面方向の成分と板厚方向の成分とを有する。前述したように数値解析は、コンピュータにより実行される。数値解析としては、例えば、有限要素法を用いることができる。
解析部116は、例えば、或る微小領域における磁束密度ベクトルBと当該磁束密度ベクトルBに対応する磁界ベクトルHの一周期における波形から、当該微小領域における磁気ヒステリシス特性を導出する。そして、解析部116は、例えば、以下の(10)式の計算を行って、当該導出した磁気ヒステリシス特性の面積を、当該微小領域におけるヒステリシス損whaとして計算する。また、解析部116は、例えば、或る微小領域における渦電流ベクトルJeと、当該微小領域の体積と、電磁鋼板の導電率σに基づいて、以下の(11)式の計算を行って、当該微小領域における渦電流損we0を導出する。(11)式において、Tは、渦電流ベクトルJeの周期である。解析部116は、解析部116は、以上のような計算を、全ての微小領域について行う。
Figure 0006798385
そして、解析部116は、全ての微小領域におけるヒステリシス損whaの総和を、測定試料Sのヒステリシス損として導出する。また、解析部116は、全ての微小領域における渦電流損we0の総和を、測定試料Sの渦電流損として導出する。また、解析部116は、同一の微小領域におけるヒステリシス損whaおよび渦電流損we0の和を当該微小領域の鉄損wとして導出することを全ての微小領域について行い、全ての微小領域の鉄損wの総和を、測定試料Sの鉄損として導出する。尚、以下の説明では、測定試料Sのヒステリシス損、渦電流損、および鉄損を、必要に応じて、測定試料Sの磁気特性と称する。
尚、三次元数値解析により、ヒステリシス損および渦電流損を算出する手法としては、非特許文献4に記載されているように公知の技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。また、鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損との和で表されるので、解析部116は、鉄損、ヒステリシス損、および渦電流損の何れか2つのみを、測定試料Sの磁気特性として導出してもよい。また、解析部116は、鉄損と、鉄損に対するヒステリシス損または渦電流損の割合とを、測定試料Sの磁気特性として導出してもよい。
<出力部117、S207>
出力部117は、解析部116で導出された測定試料Sの磁気特性の情報を出力する。出力の形態としては、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および演算装置110の外部または内部の記憶媒体への記憶の少なくとも何れか1つを採用することができる。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、電気機器のコアを所定の励磁条件で励磁したときの当該コアの所定の領域において検出される誘起電圧の波形を誘起電圧の目標波形とし、同じ所定の領域における磁束密度の波形を磁束密度の目標波形とする。波形修正部114は、測定試料Sにおける誘起電圧の測定波形と目標波形との差に応じて励磁電圧の指示波形を修正することを、収束判定部115により磁束密度の測定波形が目標波形に収束したと判定されるまで繰り返し行う。収束判定部115は、磁束密度の測定波形と目標波形との各時刻における値の差の絶対値の、一周期分の積算値を用いた値が基準値以下である場合に、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したと判定する。そして、解析部116は、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したときに波形修正部114により修正された励磁電圧の指示波形を励磁コイル102に印加することにより測定試料Sに発生する磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく三次元数値解析を実行することにより求める。このように、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定する際に、平均化した値を用いないので、磁束密度の目標波形に高調波成分が含まれる場合でも、磁束密度の測定波形を目標波形に高精度に収束させることができる。従って、電気機器のコアの局所的な領域における磁束密度が正弦波でない場合でも、当該領域におけるヒステリシス損および渦電流損を高精度に導出することができる。また、測定試料Sに対して三次元数値解析を行うので、電気機器に対して三次元数値解析を行う場合よりも計算負荷を軽減することができる。よって、現実的な時間内で、電気機器のコアの局所的な領域における磁気特性(ヒステリシス損および渦電流損)を導出することができる。
(変形例)
本実施形態では、収束判定部115は、磁束密度の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を用いて、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。収束判定部115は、磁束密度の目標波形と測定波形の同一の周波数成分の振幅の差(の絶対値)を複数の周波数成分のそれぞれについて求めた結果を用いて、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定してもよい。例えば、収束判定部115は、磁束密度の目標波形と測定波形とのそれぞれに対して高速フーリエ変換を行い、複数の周波数成分ごとのスペクトル(振幅)を求める。そして、収束判定部115は、同一の周波数成分のスペクトルの差の絶対値を、複数の周波数成分のそれぞれについて求める。尚、複数の周波数成分としては、基本波の周波数成分と、2〜n次高調波(nは3以上の整数)に対応する周波数成分とを採用することができる。そして、収束判定部115は、或る周波数成分のスペクトルの差の絶対値が、当該周波数成分に対して予め設定された基準値以下であるか否かを判定することを、複数の周波数成分のそれぞれについて行う。そして、収束判定部115は、複数の周波数成分の全てについて、スペクトルの差の絶対値が、当該周波数成分に対して予め設定された基準値以下である場合に、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したと判定し、そうでない場合に、磁束密度の測定波形が目標波形に収束していないと判定する。
また、演算装置110の各部が複数の装置で構成されていてもよい。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を説明する前に、本発明者らが得た知見について説明する。
図3は、PWM(Pulse Width Modulation)インバータの出力電圧の波形(電圧と時間との関係)の一例を示す図である。図3において、電圧301は、電圧302よりも小さい変調率でPWMインバータを駆動させた場合のPWMインバータの出力電圧である。このような電圧301、302で同一のモータをそれぞれ駆動した。尚、電圧301、302の実効値は同じであり、モータの回転数とトルクも同じである。
図4は、電圧301、302でモータを駆動したときのステータコアの同一箇所における磁束密度の波形(磁束密度と時間との関係)の一例を示す図である。図4に示すように、何れの電圧301、302でモータを駆動しても、ステータコアの磁束密度401、402は、略同じになった。このときのモータ鉄損(ステータコアおよびロータコアで発生する鉄損の合計)を、モータに投入される電力から機械出力と銅損を減算して求めた。
図5は、その結果を示す図である。図5において、Aは、電圧301でモータを駆動したことを示し、Bは、電圧302でモータを駆動したことを示す。また、鉄損比は、電圧301でモータを駆動した場合のステータコアの鉄損を「1」とした場合の鉄損の相対的な値を示す。図5に示すように、電圧302でモータを駆動した場合(B)の方が、電圧301でモータを駆動した場合(A)よりも鉄損が大幅に低減することが分かる。なお、AよりBの方が、モータ効率は約5%、インバータ効率は約7%、それぞれ向上することを確認している。
このように、本発明者らは、磁性材料に発生する磁束密度が同じであっても励磁電圧の波形(励磁電圧と時間との関係)が異なると当該磁性材料の鉄損が異なるという知見を得た。これは、励磁電圧に含まれる高調波の違いがコアを構成する磁性材料に引き起こされる渦電流の違いとなり、鉄損の違いになっていると考えられる。一方で、磁性材料を励磁することにより誘起される誘起電圧を積分して当該磁性材料に発生する磁束密度を求めるため、この積分により、誘起電圧に含まれていた高周波成分の信号が磁束密度の波形に含まれなくなるため、磁束密度は同じになると考えられる。そこで、本発明者らは、磁束密度ではなく、磁性材料を励磁することにより誘起される誘起電圧の目標波形(目標となる波形)と、当該誘起電圧の測定波形(測定された波形)とを比較することを着想した。本発明の第2の実施形態は、以上のような知見および着想に基づいてなされたものである。
以下、本発明の第2の実施形態を説明する。ここで、前述した第1の実施形態では、磁束密度の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定する。これに対し、本実施形態では、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定する。このように本実施形態と第1の実施形態とでは、磁束密度に替えて誘起電圧を用いることによる構成および処理が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図2に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
図6は、磁気特性解析システムの構成の一例を示す図である。図7は、磁気特性解析システムを用いた磁気特性解析方法の一例を説明するフローチャートである。
(磁気特性解析システムの構成)
図6において、磁気特性解析システムは、励磁電源101と、励磁コイル102と、サーチコイル103と、電圧計104と、演算装置610と、を有する。
演算装置610は、電圧計104で測定された誘起電圧を所定のサンプリング周期に基づいて時系列データとして取得する。また、演算装置610は、励磁電圧の波形を生成して励磁電源101に指示すると共に測定試料Sの磁気特性(ヒステリシス損および渦電流損を特定する情報)を導出する。
(演算装置610の構成および磁気特性解析方法)
以下に、演算装置610が有する機能の一例を説明する。演算装置610のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置や、専用のハードウェアを用いることにより実現される。
<目標波形取得部611、S701>
目標波形取得部611は、誘起電圧の目標波形(誘起電圧の各時刻における目標値)として一周期分の目標波形を取得する。誘起電圧の目標波形を取得する方法の一例として、以下の2つの方法を説明する。
まず、第1の方法について説明する。
磁気特性を解析したい電気機器のコアの所定の領域(磁気特性を解析したい領域)にサーチコイルを巻き回す。そして、電気機器のコアを励磁する励磁巻線に所定の励磁電圧を印加することにより当該サーチコイルに誘起される誘起電圧(当該サーチコイルの両端の電圧)を測定する。尚、サーチコイルを巻き回す領域が、磁気特性を解析したい領域と厳密に一致している必要はないことは、第1の実施形態の<目標波形取得部111、S201>の項で説明した通りである。
ここで、測定試料Sに対するサーチコイル103と、電気機器に対するサーチコイルとでは、巻回数および面積が異なる(場合が多い)。従って、この違いに応じて、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧の各時刻における値を、測定試料Sに対するサーチコイル103に誘起される誘起電圧の各時刻における値に換算する必要がある(第1の実施形態で説明した(1)式および(2)式を参照)。具体的には、測定試料Sに対するサーチコイル103の巻回数、サーチコイル103内の電磁鋼板の断面積をそれぞれNA、SAとする。電気機器に対するサーチコイルの巻回数、サーチコイル内の電磁鋼板の断面積をそれぞれNM、SMとする。電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧をVM(t)とする。そうすると、誘起電圧の目標波形VA(t)は、以下の(12)式により算出される。
A(t)={(NA×SA)÷(NM×SM)}×VM(t) ・・・(12)
尚、電磁鋼板の断面積は、サーチコイルの軸の方向(測定試料Sが励磁されることにより測定試料Sに発生する磁束による)に垂直な方向に電磁鋼板を切った断面の面積である。
ここで、測定時のノイズを低減するため、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧に含まれる高次の高調波成分を除去した上で(12)式の計算を行うのが好ましい。例えば、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧の波形に対して高速フーリエ変換を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。これにより、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。
目標波形取得部611は、例えば、このようにして誘起電圧の目標波形を演算する外部の演算装置から、誘起電圧の目標波形を受信することにより、誘起電圧の目標波形を取得することができる。また、目標波形取得部611は、電気機器に対するサーチコイルに誘起される誘起電圧を入力して、誘起電圧の目標波形を演算することにより、誘起電圧の目標波形を取得することもできる。この他、目標波形取得部611は、誘起電圧の目標波形のデータを記憶する記憶媒体から、誘起電圧の目標波形のデータを読み出すことにより、誘起電圧の目標波形を取得することもできる。
次に、第2の方法について説明する。
磁気特性を解析したい電気機器のコアを励磁する励磁巻線に所定の励磁電圧を印加することにより当該コアの所定の領域に発生する磁束密度ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく二次元数値解析(コアを構成する電磁鋼板の板面に平行な方向の面上の数値解析(即ち、二次元空間におけるの数値解析))を実行することにより求める。尚、このようにして求められる磁束密度ベクトルは、コアを構成する電磁鋼板の板面方向の成分を有し、板厚方向の成分を有しない。尚、磁束密度ベクトルを求める方法は、第1の実施形態の目標波形取得部111の項で説明した第2の方法と同じであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
そして、以上のようにして得られた電気機器のコアの所定の領域における一周期分の磁束密度ベクトルから、(1)式および(2)式に基づいて、誘起電圧の一周期分の波形を求め、求めた波形を、誘起電圧の目標波形とする。
目標波形取得部611は、丸め誤差等の数値解析時の誤差を低減するため、以上のようにして演算された誘起電圧の目標波形に含まれる高次の高調波成分を除去したものを(正式な)誘起電圧の目標波形とするのが好ましい。例えば、目標波形取得部611は、以上のようにして演算された誘起電圧の目標波形に対して高速フーリエ変換を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。このようにすることにより、以上のようにして演算された誘起電圧の目標波形に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。
目標波形取得部611は、以上のようにして誘起電圧の目標波形を演算することにより、誘起電圧の目標波形を取得することができる。この他、目標波形取得部611は、前述したのと同様にして誘起電圧の目標波形を演算する外部の演算装置から送信された誘起電圧の目標波形のデータを受信することにより、誘起電圧の目標波形を取得することもできる。また、目標波形取得部611は、誘起電圧の目標波形のデータを記憶する記憶媒体から、誘起電圧の目標波形のデータを読み出すことにより、誘起電圧の目標波形を取得することもできる。
<目標波形記憶部612、S702>
目標波形記憶部612は、目標波形取得部611により取得された誘起電圧の目標波形を記憶する。
<波形修正部613、S703>
波形修正部613は、電圧計104で測定された誘起電圧の測定波形に含まれる高次の高調波成分を除去する。例えば、誘起電圧の測定波形に対して高速フーリエ変換を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。これにより、測定試料Sに対するサーチコイル103に誘起される誘起電圧に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。次に、波形修正部613は、高調波成分を除去した誘起電圧の測定波形の或る時刻の値を、目標波形記憶部612に記憶された誘起電圧の目標波形の当該時刻に対応する時刻の値から減算した値を、一周期における各時刻において求める(以下、このようにして求めた値を差分と称する)。そして、波形修正部613は、或る時刻に対して求めた差分に緩和係数を乗算した値を、現在の励磁電圧の波形の当該時刻に対応する時刻の値に加算する。波形修正部613は、このような加算による修正を、一周期における各時刻において行う。緩和係数は、励磁電圧のハンチングを抑制するためのものであり、0(ゼロ)を上回り、1を下回る値を有する。例えば、緩和係数として0.2〜0.3の値を採用することができる。また、緩和係数を1として、現在の励磁電圧の波形に差分をそのまま加算してもよい。ここで、誘起電圧の測定波形からあらかじめ高調波成分を除去しておくことで、緩和係数を用いても抑止不可な励磁電圧指示波形のハンチングを抑制することができる。
測定開始時には、誘起電圧の測定波形が存在しない。そこで、波形修正部613は、励磁電圧の指示波形の初期値として、目標波形記憶部612に記憶された誘起電圧の目標波形を採用する。このようにすれば、測定当初から、目標とする波形と同じ形の波形の励磁電圧が励磁電源101から出力され、後述する収束判定部614により、誘起電圧が収束したと判定されるまでの時間が早まるので好ましい。ただし、励磁電圧の指示波形の初期値は、誘起電圧の目標波形に限定されず、任意の波形でよい。
<収束判定部614、S703〜S704>
収束判定部614は、電圧計104で測定された誘起電圧の測定波形が、目標波形記憶部612に記憶された誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定する。本実施形態では、収束判定部614は、誘起電圧の目標波形と測定波形との相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を用いて、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定する。具体的には、誘起電圧の目標波形をVA(t)とし、誘起電圧の測定波形をVP(t)とし、一周期の開始、終了の時刻をそれぞれts、teとすると、収束判定部614は、以下の(13)式を満たす場合に、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したと判定し、そうでない場合に誘起電圧の測定波形が目標波形に収束していないと判定する。また、収束判定部614は、(13)式に替えて(14)式を用いてもよい。
Figure 0006798385
(13)式は、誘起電圧の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値をそのまま用いる場合の例である。(14)式は、誘起電圧の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を、誘起電圧の目標波形の値の絶対値の一周期分の積算値に対する割合として表した場合の例である。
収束判定部614は、測定時のノイズを低減するため、測定試料Sに対するサーチコイル103に誘起される誘起電圧に含まれる高次の高調波成分を除去した上で(13)式または(14)式の計算を行うのが好ましい。例えば、収束判定部614は、測定試料Sに対するサーチコイル103に誘起される誘起電圧の波形に対して高速フーリエ変換を行い、例えば20次以上の高調波成分のスペクトルを除去した上で、フーリエ逆変換を行う。このようにすることにより、測定試料Sに対するサーチコイル103に誘起される誘起電圧に含まれる高次の高調波成分を除去することができる。
波形修正部613は、収束判定部614により、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束していないと判定された場合に、前述した励磁電圧の指示波形の生成を行う。即ち、波形修正部613は、収束判定部614により、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したと判定されるまで、前述した励磁電圧の指示波形の生成を繰り返し行う。
<解析部116、出力部117、S705、S706>
解析部116は、収束判定部614により、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したと判定されると、測定試料Sの磁気特性を導出する。解析部116および出力部117は、第1の実施形態のものと同じであるので、ここではその詳細な説明を省略する。
(まとめ)
以上のように本実施形態では、波形修正部613は、測定試料Sに誘起される誘起電圧の測定波形と目標波形との差に応じた励磁電圧の指示波形を生成することを、収束判定部614により誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したと判定されるまで繰り返し行う。収束判定部614は、誘起電圧の測定波形と測定波形との各時刻における値の差の絶対値の、一周期分の積算値を用いた値が基準値以下である場合に、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したと判定する。従って、第1の実施形態で説明した効果に加え、励磁電圧に高調波成分が含まれており、測定試料Sにおける磁束密度に高調波成分が含まれている場合でも、その高調波成分を抽出することができるという効果を奏する。よって、電気機器のコアの局所的な領域における磁束密度が正弦波でない場合でも、当該領域における磁気特性(ヒステリシス損および渦電流損)をより一層高精度に導出することができる。
(変形例)
本実施形態では、収束判定部614は、誘起電圧の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を用いて、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定する。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。収束判定部614は、誘起電圧の目標波形と測定波形の同一の周波数成分の振幅の差(の絶対値)を複数の周波数成分のそれぞれについて求めた結果を用いて、誘起電圧の測定波形が目標波形に収束したか否かを判定してもよい。尚、このようにして行われる判定の具体例は、第1の実施形態の(変形例)の項で説明したのと同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
[実施例]
次に、実施例を説明する。
図8は、磁気特性の解析対象となる電気機器であるIPM(Interior Permanent Magnet)モータ800の構成の一例を示す図である。図8(a)は、IPMモータ800を、その回転軸に垂直な方向に沿って切った断面を示し、図8(b)は、図8(a)の破線の領域を拡大して示す図である。以下に、本実施例で使用したIPMモータ800の仕様の概略を示す。
相数:3
極数:4
ステータの外径:φ112[mm]
ステータのスロット数:24
ロータの外径:φ55[mm]
ロータの積厚:60[mm]
ステータコアおよびロータコアの材質:35A300
ここで、35A300は非特許文献5に記載の無方向性電磁鋼板である。
図8(b)に示すように、IPMモータ800のステータコアのティースの先端の領域801における磁気特性(ヒステリシス損および渦電流損)を第1の発明例の手法と第2の発明例の手法とのそれぞれで求めた。第1の発明例の手法は、第1の実施形態で説明した手法である。第2の発明例の手法は、第2の実施形態で説明した手法である。
第1の発明例および第2の発明例の何れにおいても、鉄損に占めるヒステリシス損の割合は79[%](渦電流損の割合は21[%])となり、ヒステリシス損と渦電流損とを導出することができた。尚、この場合、ヒステリシス損の比率の方が渦電流損の比率よりも大きいため、結晶方位を制御する等してヒステリシス損を低減した電磁鋼板を用いてステータコアを構成すると、IPMモータ800の損失を低減することができることが分かる。
図9は、誘起電圧の測定波形と目標波形の一例を示す図である。図9(a)は第1の発明例を示し、図9(b)は第2の発明例を示す。
図9(a)および図9(b)に示すように、第2の発明例の方が第1の発明例よりも誘起電圧の測定波形がより目標波形に近いことが分かる。そして、第1の発明例で求めた測定試料Sの鉄損は、第2の発明例で求めた測定試料Sの鉄損よりも2[%]程度低い値になった。これは、第1の発明例では、誘起電圧の測定波形と目標波形とのずれにより、誘起電圧の目標波形に対応する励磁電流が得られていない為に磁界強度にずれが生じていることに加え、誘起電圧に含まれていた高調波成分が磁束密度の波形に含まれていないことによると考えられる。
[請求項との関係]
以下に、請求項と実施形態の対応関係の一例を説明する。尚、請求項の記載が実施形態の記載に限定されないことは、変形例などに記載した通りである。
<請求項1、8、9>
印加手段は、例えば、励磁電源101を用いることにより実現される。
第1のコイルは、例えば、サーチコイル103を用いることにより実現される。
検出手段は、例えば、電圧計104を用いることにより実現される。
取得手段は、例えば、目標波形取得部611を用いることにより実現される。
判定手段は、例えば、収束判定部614を用いることにより実現される。
修正手段は、例えば、波形修正部613を用いることにより実現される。
解析手段は、例えば、解析部116を用いることにより実現される。
前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束しているときに前記修正手段により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁した場合の、前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を導出することは、例えば、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束しているときに波形修正部114で修正された励磁電圧の指示波形を励磁コイル102に印加することにより測定試料Sに発生する磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく三次元数値解析を実行することにより求められる。
前記測定試料におけるヒステリシス損および渦電流損を特定する情報は、例えば、ヒステリシス損および渦電流損と、鉄損、ヒステリシス損、および渦電流損の何れか2つと、鉄損と、鉄損に対するヒステリシス損または渦電流損の割合と、の何れかにより実現される。
前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値は、例えば、誘起電圧の目標波形と測定波形との相互に対応する時刻における差(の絶対値)をそのまま用いるか、誘起電圧の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を、誘起電圧の目標波形の値の絶対値の一周期分の積算値に対する割合をとることにより実現される((13)の左辺、(14)式の左辺を参照)。
前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、複数の周波数成分のそれぞれにおける振幅の差は、例えば、誘起電圧の目標波形と測定波形とのそれぞれから複数の周波数成分のスペクトルを求め、誘起電圧の目標波形および測定波形における同一の周波数成分のスペクトルの差(の絶対値)を複数の周波数成分のそれぞれについてとることにより実現される(第2の実施形態の(変形例)の項を参照)。
<請求項2>
取得手段は、例えば、目標波形取得部111を用いることにより実現される。
判定手段は、例えば、収束判定部115を用いることにより実現される。
修正手段は、例えば、波形修正部114を用いることにより実現される。
解析手段は、例えば、解析部116を用いることにより実現される。
前記測定試料における磁束密度の測定波形が前記測定試料における磁束密度の目標波形に収束しているときに前記修正手段により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁した場合の、前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を導出することは、例えば、前記磁束密度の測定波形が前記磁束密度の目標波形に収束しているときに波形修正部114で修正された励磁電圧の指示波形を励磁コイル102に印加することにより測定試料Sに発生する磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく三次元数値解析を実行することにより求められる。
前記測定試料における磁束密度の測定波形および前記測定試料における磁束密度の目標波形の、相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値は、例えば、磁束密度の目標波形と測定波形との相互に対応する時刻における差(の絶対値)をそのまま用いるか、磁束密度の目標波形と測定波形の相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値を、磁束密度の目標波形の値の絶対値の一周期分の積算値に対する割合をとることにより実現される((8)の左辺、(9)式の左辺を参照)。
前記測定試料における磁束密度の測定波形および前記測定試料における磁束密度の目標波形の、複数の周波数成分のそれぞれにおける振幅の差は、例えば、磁束密度の目標波形と測定波形とのそれぞれから複数の周波数成分のスペクトルを求め、磁束密度の目標波形および測定波形における同一の周波数成分のスペクトルの差(の絶対値)を複数の周波数成分のそれぞれについてとることにより実現される(第1の実施形態の(変形例)の項を参照)。
<請求項3、6>
前記コアの前記所定の領域に巻き回された第2のコイルに誘起される誘起電圧の波形に基づいて導出される磁束密度の波形は、例えば、電気機器のコアの所定の領域(磁気特性を測定したい領域)に巻き回したサーチコイルに誘起される誘起電圧の波形から、(1)式および(2)式により、電気機器のコアの所定の領域における磁束密度の目標波形B(t)を一周期分求めることにより実現される。
前記コアの二次元空間における磁束密度ベクトルの数値解に基づいて求められた前記コアの前記所定の領域における磁束密度の波形は、電気機器のコアを励磁する励磁巻線に所定の励磁電圧を印加することにより当該コアの所定の領域に発生する磁束密度ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく二次元数値解析を実行することにより一周期分求めることにより実現される。
<請求項4、6>
前記コアの前記所定の領域に巻き回された第2のコイルに誘起される誘起電圧の波形は、例えば、電気機器のコアの所定の領域(磁気特性を測定したい領域)に巻き回したサーチコイルに誘起される誘起電圧の波形を用いることにより実現される。
前記コアの二次元空間における磁束密度ベクトルの数値解に基づいて求められた前記コアの前記所定の領域における磁束密度に基づいて導出される誘起電圧の波形は、例えば、電気機器のコアを励磁する励磁巻線に所定の励磁電圧を印加することにより当該コアの所定の領域に発生する磁束密度ベクトルを、マックスウェルの方程式に基づく二次元数値解析を実行することにより一周期分求め、求めた電気機器のコアの所定の領域における一周期分の磁束密度ベクトルから、(1)式および(2)式に基づいて、誘起電圧の一周期分の波形を求めることにより求められる。
<請求項5、6>
前記コアの二次元空間における磁束密度の数値解は、前記磁性材料の板面方向の成分を有し、前記磁性材料の板厚方向の成分を有していないことは、例えば、磁束密度ベクトルが、コアを構成する電磁鋼板の板面方向の成分を有し、板厚方向の成分を有しないことに対応する。
<請求項7>
前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解は、前記磁性材料の板面方向の成分と、前記磁性材料の板厚方向の成分とを有することは、例えば、前述した磁束密度ベクトルが、コアを構成する電磁鋼板の板面方向の成分と、板厚方向の成分とを有することに対応する。
101:励磁電源、102:励磁コイル、103:サーチコイル、104:電圧計、110、610:演算装置、111、611:目標波形取得部、112、612:目標波形記憶部、113:磁束密度導出部、114、613:波形修正部、115、614:収束判定部、116:解析部、117:出力部、S:測定試料

Claims (10)

  1. 磁性材料からなる測定試料を励磁するための励磁コイルに励磁電圧を印加する印加手段と、
    前記測定試料が励磁されることにより第1のコイルに誘起される誘起電圧を検出する検出手段と、
    前記誘起電圧の目標波形を取得する取得手段と、
    前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段により、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束していないと判定されると、前記誘起電圧の測定波形と、前記誘起電圧の目標波形との差に基づいて、前記励磁電圧を修正する修正手段と、
    前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束しているときに前記修正手段により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁した場合の、前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を導出し、導出した数値解に基づいて、前記測定試料におけるヒステリシス損および渦電流損を特定する情報を導出する解析手段と、を有し、
    前記印加手段は、前記修正手段により前記励磁電圧が修正されると、当該修正された前記励磁電圧を前記励磁コイルに印加し、
    前記判定手段により、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したと判定されるまで、前記修正手段による前記励磁電圧の修正と、前記印加手段による前記励磁電圧の印加と、前記検出手段による前記誘起電圧の検出とが繰り返し行われ、
    前記判定手段は、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値、または、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、複数の周波数成分のそれぞれにおける振幅の差に基づいて、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定することを特徴とする磁気特性解析システム。
  2. 前記取得手段は、前記測定試料における磁束密度の目標波形を更に取得し、
    前記判定手段は、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定することに替えて、前記測定試料における磁束密度の測定波形が前記測定試料における磁束密度の目標波形に収束したか否かを判定し、
    前記修正手段は、前記判定手段により、前記測定試料における磁束密度の測定波形が前記測定試料における磁束密度の目標波形に収束していないと判定されると、前記誘起電圧の測定波形と、前記誘起電圧の目標波形との差に基づいて、前記励磁電圧を修正し、
    前記解析手段は、前記測定試料における磁束密度の測定波形が前記測定試料における磁束密度の目標波形に収束しているときに前記修正手段により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁した場合の、前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を導出し、
    前記判定手段は、前記測定試料における磁束密度の測定波形および前記測定試料における磁束密度の目標波形の、相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値、または、前記測定試料における磁束密度の測定波形および前記測定試料における磁束密度の目標波形の、複数の周波数成分のそれぞれにおける振幅の差に基づいて、前記測定試料における磁束密度の測定波形が、前記測定試料における磁束密度の目標波形に収束したか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の磁気特性解析システム。
  3. 前記取得手段は、前記測定試料を構成する磁性材料と同じ種類の磁性材料を用いて構成されたコアを有する電気機器の当該コアを所定の励磁条件で励磁した場合の当該コアの所定の領域における磁束密度の波形を、前記測定試料における磁束密度の目標波形として取得し、
    前記測定試料における磁束密度の目標波形は、前記コアの前記所定の領域に巻き回された第2のコイルに誘起される誘起電圧の波形に基づいて導出される磁束密度の波形、または、前記コアの二次元空間における磁束密度ベクトルの数値解に基づいて求められた前記コアの前記所定の領域における磁束密度の波形であることを特徴とする請求項2に記載の磁気特性解析システム。
  4. 前記取得手段は、前記測定試料を構成する磁性材料と同じ種類の磁性材料を用いて構成されたコアを有する電気機器の当該コアを所定の励磁条件で励磁した場合の当該コアの所定の領域における前記誘起電圧の波形を、前記誘起電圧の目標波形として取得し、
    前記誘起電圧の目標波形は、前記コアの前記所定の領域に巻き回された第2のコイルに誘起される誘起電圧の波形、または、前記コアの二次元空間における磁束密度ベクトルの数値解に基づいて求められた前記コアの前記所定の領域における磁束密度に基づいて導出される誘起電圧の波形であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の磁気特性解析システム。
  5. 前記コアは、相互に積み重ねられた複数の板状の磁性材料を有し、
    前記測定試料を構成する磁性材料の形状は、板状であり、
    前記コアの二次元空間における磁束密度ベクトルの数値解は、前記磁性材料の板面方向の成分を有し、前記磁性材料の板厚方向の成分を有していないことを特徴とする請求項3または4に記載の磁気特性解析システム。
  6. 前記取得手段は、前記電気機器の前記コアを所定の励磁条件で励磁したときに前記コアの二次元空間に発生する磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を、マックスウェルの方程式に基づく数値解析を行うことにより求め、当該求めた磁束密度ベクトルの数値解に基づく磁束密度の波形を、前記測定試料における磁束密度の目標波形として取得することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の磁気特性解析システム。
  7. 前記コアは、相互に積み重ねられた複数の板状の磁性材料を有し、
    前記測定試料を構成する磁性材料の形状は、板状であり、
    前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解は、前記磁性材料の板面方向の成分と、前記磁性材料の板厚方向の成分とを有することを特徴とする請求項3〜6の何れか1項に記載の磁気特性解析システム。
  8. 前記解析手段は、前記測定波形が前記目標波形に収束しているときに前記修正手段により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁したときに前記測定試料の三次元空間に発生する磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を、マックスウェルの方程式に基づく数値解析を行うことにより求めることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の磁気特性解析システム。
  9. 前記修正手段は、前記検出手段により検出された前記誘起電圧の測定波形に含まれる高次の高調波成分を除去した上で、前記誘起電圧の目標波形との差に基づいて、前記励磁電圧を修正することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の磁気特性解析システム。
  10. 磁性材料からなる測定試料を励磁するための励磁コイルに励磁電圧を印加する印加工程と、
    前記測定試料が励磁されることにより第1のコイルに誘起される誘起電圧を検出する検出工程と、
    前記誘起電圧の目標波形を取得する取得工程と、
    前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程により、前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束していないと判定されると、前記誘起電圧の測定波形と、前記誘起電圧の目標波形との差に基づいて、前記励磁電圧を修正する修正工程と、
    前記誘起電圧の測定波形が前記誘起電圧の目標波形に収束しているときに前記修正工程により修正されている前記励磁電圧で前記測定試料を励磁した場合の、前記測定試料の三次元空間における磁束密度ベクトルおよび渦電流ベクトルの数値解を導出し、導出した数値解に基づいて、前記測定試料におけるヒステリシス損および渦電流損を特定する情報を導出する解析工程と、を有し、
    前記印加工程は、前記修正工程により前記励磁電圧が修正されると、当該修正された前記励磁電圧を前記励磁コイルに印加し、
    前記判定工程により、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したと判定されるまで、前記修正工程による前記励磁電圧の修正と、前記印加工程による前記励磁電圧の印加と、前記検出工程による前記誘起電圧の検出とが繰り返し行われ、
    前記判定工程は、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、相互に対応する時刻における差の絶対値の、一周期分の積算値、または、前記誘起電圧の測定波形および前記誘起電圧の目標波形の、複数の周波数成分のそれぞれにおける振幅の差に基づいて、前記誘起電圧の測定波形が、前記誘起電圧の目標波形に収束したか否かを判定することを特徴とする磁気特性解析方法。
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