JP7469665B2 - 電磁界解析装置、電磁界解析方法、およびプログラム - Google Patents

電磁界解析装置、電磁界解析方法、およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、電磁界解析装置、電磁界解析方法、およびプログラムに関し、特に、インバータ電源で駆動するモータにおける電磁界を解析するために用いて好適なものである。
電気自動車(EV(Electric Vehicle))やハイブリッド電気自動車(HEV(Hybrid Electric Vehicle))等で使用される可変速駆動のモータはインバータ電源で駆動することが多い。インバータとは、インバータ用半導体素子のスイッチング動作により直流電圧のオンオフを繰り返し、正弦波に近い電圧を与える電源回路である。近年、インバータ用半導体素子の特性の向上に伴いモータの駆動周波数が向上しており、高周波領域で顕著になる鉄損の解析手法のニーズが高まっている。
そこで、非特許文献1には、正弦波電流源非線形非定常有限要素法解析(Δt FEA)を実行することにより損失Wsinを導出し、PWM電圧波形の高調波成分を入力とする複素数近似有限要素法解析(jω FEA)を実行することによりキャリア損Wcarrierを導出し、これらの損失Wsin、Wcarrierの合計を全損失とすることが記載されている。
山崎克巳、飯田恭一著、「埋込磁石同期電動機におけるインバータキャリアを考慮した高速効率マップ算定法-磁束マップを用いる場合との比較-」、電気学会研究会資料、SA-19-86/RM-19-106、p.77-82、2019年9月13日 中田高義、高橋則雄著、「電気工学の有限要素法」、第2版、森北出版株式会社、1986年4月 回転機の三次元電磁界解析実用化技術調査専門委員会、「回転機の三次元電磁界解析実用化技術」、電気学会技術報告、第1296号、2013年
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では、PWM電圧波形の高調波成分による鉄損を算出するので、予め定められた周波数成分(変調波の整数倍の周波数成分)による鉄損しか導出することができない。従って、インバータ用半導体素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化(時間の経過に伴う大きさの変化)を正確に考慮することができない。このため、インバータ電源のスイッチング素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化を考慮するためには、高い時間分解能で非線形電磁界解析を実行する必要があり、計算負荷が高くなる。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、インバータ電源のスイッチング素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化を考慮した電磁界解析を短時間で実行することができるようにすることを目的とする。
本発明の電磁界解析装置は、インバータ電源から出力されるインバータ電圧に基づいて駆動するモータにおける電磁界を解析する電磁界解析装置であって、前記インバータ電圧が前記モータのステータコイルに印加された場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束であるインバータ励磁時鎖交磁束と、前記ステータコイルに目標励磁電流が流れた場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束である目標励磁時鎖交磁束との差に基づいて、補正電流を導出する補正電流導出手段と、前記補正電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記モータのステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出する線形電磁界解析手段と、を有し、前記補正電流は、前記目標励磁電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記ステータコアにおける磁束密度に対し、前記インバータ電源のスイッチング素子のスイッチング時に生じる磁束密度の時間変化を補うために前記ステータコイルに流す必要がある電流である。
本発明の電磁界解析方法は、インバータ電源から出力されるインバータ電圧に基づいて駆動するモータにおける電磁界を解析する電磁界解析方法であって、前記インバータ電圧が前記モータのステータコイルに印加された場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束であるインバータ励磁時鎖交磁束と、前記ステータコイルに目標励磁電流が流れた場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束である目標励磁時鎖交磁束との差に基づいて、補正電流を導出する補正電流導出工程と、前記補正電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記モータのステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出する線形電磁界解析工程と、を有し、前記補正電流は、前記目標励磁電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記ステータコアにおける磁束密度に対し、前記インバータ電源のスイッチング素子のスイッチング時に生じる磁束密度の時間変化を補うために前記ステータコイルに流す必要がある電流である。
本発明のプログラムは、前記電磁界解析装置の各手段としてコンピュータを機能させる。
本発明によれば、インバータ電源のスイッチング素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化を考慮した電磁界解析を短時間で実行することができる。
電磁界解析装置の機能的な構成の一例を示す図である。 IPMモータのモデルの一例を示す図である。 PWMインバータの動作の一例を説明する図である。 磁束密度の時系列波形の一例を示す図である。 線形非定常電磁界解析の際に用いる電源回路の一例を示す図である。 電磁界解析方法の一例を説明するフローチャートである。 磁束密度の時系列波形の計算例を示す図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
尚、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。
図1は、電磁界解析装置100の機能的な構成の一例を示す図である。電磁界解析装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のハードウェアを備える情報処理装置、または、専用のハードウェアを用いることにより実現される。
電磁界解析装置100は、インバータ電源から出力されるインバータ電圧に基づいて駆動するモータにおける電磁界を解析する。
<<IPM(Interior Permanent Magnet)モータ>>
本実施形態では、モータが、三相のIPMモータである場合を例示する。図2は、IPMモータのモデルの一例を示す図である。具体的に、図2は、IPMモータの回転軸に垂直な断面の1/4の領域を示す図である。IPMモータの回転軸に垂直な断面の1/4の領域とは、IPMモータの回転軸の中心を原点0とし、原点0からIPMモータの径方向に伸びる2つの仮想線であって、相互になす角度が90°となる2つの仮想線で区画される領域である。図2において、これら2つの仮想線はx軸およびy軸に対応する。IPMモータは4回対称となる構成を有し、IPMモータを90°回転させると回転前のものと重なる。従って、電磁界の解析の結果も4回対称の関係になる。よって、IPMモータの回転軸に垂直な断面の1/4の領域の電磁界を解析すれば、IPMモータの残りの領域の電磁界を導出することができる。尚、以下の説明では、IPMモータの径方向、IPMモータの周方向を、必要に応じて、径方向、周方向と略称する。
図2において、IPMモータは、ロータ201とステータ202とを有する。
ロータ201は、例えば、複数の電磁鋼板と永久磁石とを有する。複数の電磁鋼板は同一の形状を有する。複数の電磁鋼板には、永久磁石およびシャフト(回転軸)が配置されるようにするための穴が形成されている。複数の電磁鋼板を積み重ねたときに形成される貫通穴に永久磁石およびシャフトが配置される。
ステータ202は、ステータコアと、ステータコイルとを有する。ステータコアは、周方向に延在するヨーク部と、ヨーク部と磁気的に結合される複数のティース部とを有する。複数のティース部の先端面は、ロータ201と対向する位置に配置される。図2では、ロータ201がステータ202の内側に配置されるインナーロータ型であり、且つ、ロータ201とステータ202とのギャップがIPMモータの径方向に配置されるラジアルギャップ型であるIPMモータを例示する。従って、複数のティース部は、ロータ201の内周面からIPMモータの回転軸の方向に向かうように、IPMモータの周方向において等間隔に配置される。ステータコアは、例えば、複数の電磁鋼板を有する。複数の電磁鋼板は同一の形状を有する。複数の電磁鋼板の平面形状は、ヨーク部および複数のティース部の平面形状と同じである。複数の電磁鋼板を積み重ねることによりヨーク部および複数のティース部が形成される。尚、領域202a~202gは、ステータコアの他の領域よりも透磁率が低い領域である。このようにする理由については後述する。ステータコイルは、周方向で隣り合う2つのティース部の間の領域であるスロット内に配置され、ティース部に対して巻き回される。図2では、U+、U-と示されているスロットにU相のステータコイルが配置され、V-と示されているスロットにV相のステータコイルが配置され、W+と示されているスロットにW相のステータコイルが配置される場合を例示する。
尚、IPMモータ自体は、公知の技術で実現されるので、ここでは概略のみを説明し、詳細な説明を省略する。また、本実施形態では、公知の種々のIPMモータを適用することができ、本実施形態で適用されるIPMモータは、図2に示すものに限定されない。また、本実施形態で適用されるモータは、インバータ電源により駆動するモータであれば、IPMモータに限定されない。
<<インバータ電源>>
本実施形態では、励磁電源であるインバータ電源が、PWM(Pulse Width Modulation)インバータである場合を例示する。図3は、PWMインバータの動作の一例を説明する図である。
図3において、PWMインバータは、正相変調波310の大きさと搬送波320の大きさとを、各時刻において比較する。そして、PWMインバータは、正相変調波310の大きさが搬送波320の大きさよりも大きい場合に「1」を出力し、そうでない場合に「0(ゼロ)」を出力することを各時刻において行い、正相ノッチ波340を生成する。
また、PWMインバータは、正相変調波310の位相を180[°]ずらして負相変調波330を生成する。尚、正相変調波310に(-1)を掛けることにより、正相変調波310の位相を180[°]ずらすことができる。PWMインバータは、このようにして生成した負相変調波330の大きさと搬送波320の大きさとを、各時刻において比較する。そして、PWMインバータは、負相変調波330の大きさが搬送波320の大きさよりも大きい場合に「1」を出力し、そうでない場合に「0(ゼロ)」を出力することを各時刻において行い、負相ノッチ波350を生成する。
尚、図3では、変調波・搬送波の値を相対値で示す。
PWMインバータは、正相ノッチ波340から負相ノッチ波350を減算したパルス波において「1」を示す期間に、PWMインバータに供給された正の直流電圧に基づく電圧を出力する。また、PWMインバータは、正相ノッチ波340から負相ノッチ波350を減算したパルス波において「-1」を示す期間に、PWMインバータに供給された負の直流電圧に基づく電圧を出力する。また、PWMインバータは、正相ノッチ波340から負相ノッチ波350を減算したパルス波において「0(ゼロ)」を示す期間には、PWMインバータに供給された直流電圧に基づく電圧を出力しない。このようにして得られる電圧により構成されるパルス列(パルス波)がインバータ電圧360として、PWMインバータから出力される。図3では、インバータ電圧360の値を相対値で示す。
PWMインバータは、このようなインバータ電圧360を、U相、V相、W相のそれぞれについて生成して出力する。U相のステータコイルの両端、V相のステータコイルの両端、W相のステータコイルの両端のそれぞれに、U相のインバータ電圧360、V相のインバータ電圧360、W相のインバータ電圧360が印加される。
尚、以上のようなPWMインバータにおける変調動作を定めるパラメータには、変調率mとキャリア周波数fcとが含まれる。PWMインバータでは、変調率mは、正相変調波310および負相変調波330の振幅E0を、搬送波320の振幅Ecで割った値で表される(m=E0÷Ec)。キャリア周波数でfcは、搬送波320の周波数である。
PWMインバータとしては、公知の種々の方式で駆動するPWMインバータを適用することができ、図3に示す方式で駆動するものに限定されない。
<<非線形電磁界解析部101>>
非線形電磁界解析部101は、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく非線形電磁界解析を実行することにより導出する。本実施形態では、目標励磁電流IIの時系列波形が正弦波である場合を例示する。ただし、目標励磁電流IIの時系列波形は正弦波に限定されず、IPMモータの目標励磁電流の時系列波形として採用される各種の時系列波形の目標励磁電流IIを採用することができる。尚、目標励磁電流IIの時系列波形は、各時刻における目標励磁電流IIの値を示す情報である。このことは、目標励磁電流II以外の物理量の時系列波形についても同じである。目標励磁電流IIは、PWMインバータにおいてインバータ電圧360を生成する際の目標となる励磁電流であり、ステータコイルに流れる励磁電流が目標励磁電流IIに近づくように、インバータ電圧360が生成される。
本実施形態では、非線形電磁界解析部101は、非線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析を実行することにより、目標励磁電流IIがステータコイルに流れてステータコアが励磁された場合の、IPMモータのモデルに対して設定した要素(メッシュ)のそれぞれにおける磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを導出する。
有限要素法を用いた電磁界解析の手法としてA-φ法を用いる手法がある。この場合、電磁界解析を実行するための基礎方程式は、マクスウェルの方程式に基づき以下の(1)式~(4)式で与えられる。尚、各式において、→は、ベクトルであることを表す。
Figure 0007469665000001
(1)式~(4)式において、μは、透磁率であり、Aは、ベクトルポテンシャルであり、σは、導電率であり、J0は、励磁電流密度であり、Jeは、渦電流密度であり、Bは、磁束密度である。(1)式および(2)式を連立して解いて、ベクトルポテンシャルAとスカラーポテンシャルφを導出した後、(3)式および(4)式から磁束密度Bと、渦電流密度Jeを要素のそれぞれに対して導出する。尚、(1)式では、表記を簡素化するため、透磁率のx成分μx、y成分μy、z成分μzが等しい場合(μx=μy=μzの場合)の式を示す。尚、非線形電磁界解析においては、磁束密度Bと磁界強度Hとの関係は非線形の関係となるので、透磁率は磁束密度に応じて異なる値をとり得る。非線形非定常電磁界解析を実行する手法は、非特許文献1、2等に記載されているように一般的な手法であるので、その詳細な説明を省略する。
非線形電磁界解析部101は、時間ステップΔt1の時間隔の各時刻tにおいて、各要素における磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを相毎(即ち、U相、V相、W相毎)に導出する。時間ステップΔt1は、後述する線形電磁界解析部106で実行される線形電磁界解析における時間ステップΔt2よりも長い。時間ステップΔt1は、例えば、後述する線形電磁界解析における時間ステップΔt2よりも3倍以上長いのが好ましく、5倍以上長いのがより好ましく、10倍以上長いのがより一層好ましい。非線形電磁界解析における計算時間を短くすることができるからである。ただし、非線形電磁界解析における時間ステップΔt1は、線形電磁界解析における時間ステップΔt2より長くなくてもよく、例えば、非線形電磁界解析における時間ステップΔt1と、線形電磁界解析における時間ステップΔt2とを同じにしてもよい。
<<目標励磁電圧導出部102>>
目標励磁電圧導出部102は、非線形電磁界解析部101により導出された各時刻tにおける各要素の磁束密度Bに基づいて、目標励磁電流IIに対応する励磁電圧である目標励磁電圧VIを導出する。目標励磁電圧VIは、変調波(例えば正相変調波310)に相当するものである。本実施形態では、非線形電磁界解析部101により導出された各時刻tにおける各要素の磁束密度Bと、IPMモータの回路方程式とに基づいて、各時刻tにおける目標励磁電圧VIを導出する。以下に目標励磁電圧導出部102における処理の具体例を説明する。
まず、目標励磁電圧導出部102は、或る1つのティース部を径方向の所定の位置で径方向に対して垂直に切ったときの断面における或る1つの要素(メッシュ)の面積と、当該要素における時刻tでの磁束密度Bの径方向の成分との積を、当該時刻tにおける当該要素の磁束として導出することを相毎に実行する。そして、目標励磁電圧導出部102は、当該断面に含まれる全ての要素の磁束を積算した値を、当該時刻tにおいて当該ティース部に巻き回されたステータコイルに鎖交する磁束として導出することを相毎に実行する。更に、目標励磁電圧導出部102は、当該時刻tにおいてティース部に巻き回されたステータコイルに鎖交する磁束を全てのティース部について積算した値を、当該時刻tにおける目標励磁時鎖交磁束φIとして導出することを相毎に実行する。目標励磁電圧導出部102は、以上のような時刻tにおける各相の目標励磁時鎖交磁束φIの導出を、時間ステップΔt1の時間隔で実行する。
目標励磁電圧導出部102は、時刻tにおける各相の目標励磁時鎖交磁束φIと、時刻tにおける各相の目標励磁電流IIと、各相のステータコイルの直流抵抗Rと、各相のステータコイルの巻回数Nとに基づいて、IPMモータの回路方程式により、時刻tにおける各相の目標励磁電圧VIを導出する。ここで使用されるIPMモータの回路方程式は、例えば、以下の(5)式で表される。
Figure 0007469665000002
各相のステータコイルの直流抵抗Rと、各相のステータコイルの巻回数Nは、IPMモータの仕様から予め定められる。例えば、(5)式のdφI/dtを差分近似することにより、時刻tにおける各相の目標励磁電圧VIが導出される。差分近似は、前進差分であっても後退差分であっても中心差分であってもよい。尚、各相の目標励磁電圧VIも時間ステップΔt1の時間隔で導出される。
IPMモータの回路方程式は、IPMモータの磁気回路を表現する方程式である。(5)式は、ステータコイルに励磁電流を流した場合のステータコイルにおける電圧降下と、当該ステータコイルが巻き回されているティース部に鎖交する磁束の時間変化と当該ステータコイルの巻回数との積と、が等しいことを表す。尚、IPMモータの回路方程式は、相毎に用意される。
目標励磁電圧導出部102は、非線形電磁界解析部101により或る時刻tにおける磁束密度Bが導出される度に当該時刻tにおける各相の目標励磁電圧VIを導出しても、非線形電磁界解析部101により一周期分の各時刻tにおける磁束密度Bが導出された後に一周期分の各時刻tにおける各相の目標励磁電圧VIを纏めて導出してもよい。
本実施形態では以上のようにして、一周期分の各時刻tにおける各相の目標励磁時鎖交磁束φIおよび各相の目標励磁電圧VIが、時間ステップΔt1の時間隔で導出される。
非線形電磁界解析における時間ステップΔt1が、線形電磁界解析における時間ステップΔt2よりも長い場合、非線形電磁界解析部101は、時間ステップΔt1の時間隔の各時刻tにおける各要素(メッシュ)の磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを補間することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを相毎に導出する。また、非線形電磁界解析部101は、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bに対応する磁界強度Hを導出する。
また、目標励磁電圧導出部102は、時間ステップΔt1の時間隔の各時刻tにおける各相の目標励磁時鎖交磁束φIを補間することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁時鎖交磁束φIを導出する。同様に、目標励磁電圧導出部102は、時間ステップΔt1の時間隔の各時刻tにおける各相の目標励磁電圧VIを補間することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電圧VIを導出する。尚、各相の目標励磁電流IIが時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において定められていない場合には、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電流IIも導出される。
尚、非線形電磁界解析部101により一周期分の各時刻tにおける磁束密度Bが導出された後に一周期分の各時刻tにおける各相の目標励磁時鎖交磁束φI・目標励磁電圧VIを纏めて導出する場合、以下のようにしてもよい。即ち、非線形電磁界解析部101は、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bとして一周期分の磁束密度Bを導出する。目標励磁電圧導出部102は、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bを用いて(5)式の計算を行うことにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁時鎖交磁束φI・目標励磁電圧VIを導出する。このようにする場合、目標励磁電圧導出部102は、目標励磁時鎖交磁束φIおよび目標励磁電圧VIを、時間ステップΔt1の時間隔で導出する必要はない。
<<インバータ電圧導出部103>>
インバータ電圧導出部103は、目標励磁電圧導出部102により導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電圧VIに基づいて、各相の変調波(正相変調波310および負相変調波330)を導出する。そして、インバータ電圧導出部103は、変調波(正相変調波310および負相変調波330)と搬送波320とを比較した結果に基づいて、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相のインバータ電圧VINVを導出する。インバータ電圧VINVは、インバータ電圧360に相当するものである。インバータ電圧VINVを導出する手法の一例は、図3を参照しながら説明した通りである。本実施形態ではこのようにして、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相のインバータ電圧VINVが導出される。
<<インバータ励磁時鎖交磁束導出部104>>
インバータ励磁時鎖交磁束導出部104は、インバータ電圧導出部103により導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相のインバータ電圧VINVと、IPMモータの回路方程式とに基づいて、インバータ励磁時鎖交磁束φINVを導出する。インバータ励磁時鎖交磁束φINVは、インバータ電圧導出部103により導出された各相のインバータ電圧VINVがIPMモータの各相のステータコイルに印加された場合にステータコイルに鎖交する磁束である。ここで使用されるIPMモータの回路方程式は、例えば、以下の(6)式で表される。
Figure 0007469665000003
前述したように、各相のステータコイルの直流抵抗Rと、各相のステータコイルの巻回数Nは、IPMモータの仕様から予め定められる。また、前述したように、IPMモータの回路方程式は、相毎に用意される。インバータ励磁時鎖交磁束導出部104は、或る相の一周期分の各時刻における目標励磁電流IIと、当該相のステータコイルの直流抵抗Rと、当該相のステータコイルの巻回数Nと、当該相の一周期分の各時刻におけるインバータ電圧VINVとを用いて、(6)式により、当該相における一周期分の各時刻におけるインバータ励磁時鎖交磁束φINVを導出する。インバータ励磁時鎖交磁束導出部104は、このようなインバータ励磁時鎖交磁束φINVの導出を相毎において実行する。ここで、各時刻における各相のインバータ励磁時鎖交磁束φINVは積分を実行することにより導出される。この際、積分定数は、一周期における磁束の平均値が0(ゼロ)となるように定められる。本実施形態では以上のようにして、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において、各相におけるインバータ励磁時鎖交磁束φINVが導出される。
インバータ電圧VINVをステータコイルに印加することによりステータコイルに流れる励磁電流は、厳密には目標励磁電流IIと一致せずに歪んだ波形になる。しかしながら、モータのインピーダンスはインダクタンスが支配的であり、モータのインピーダンスに対する直流抵抗の寄与は小さい。従って、(6)式において、左辺(=NdφINV/dt)は、右辺第2項(=IIR)に比べて十分に大きい(NdφINV/dt≫IIR)。よって、インバータ励磁時鎖交磁束φINVの波形の形は、ほとんどインバータ電圧VINVの波形の形から定まる。このため、(6)式において、目標励磁電流IIを用いても、実用上要求される精度で、各相におけるインバータ励磁時鎖交磁束φINVを導出することができる。尚、このような観点から、(6)式の右辺第2項を省略してもよい。同様に、(5)式の右辺第2項を省略してもよい。
<<補正電流導出部105>>
補正電流導出部105は、目標励磁時鎖交磁束φIと、インバータ励磁時鎖交磁束φINVと、ステータコイルの巻回数Nと、ステータコアの磁気抵抗Rmとに基づいて、以下の(7)式により、補正電流I+を導出する。補正電流I+は、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において相毎に導出される。以下の(7)式において、磁気抵抗Rmは、以下の(8)式で表される。
Figure 0007469665000004
(8)式において、νhighは、磁気抵抗率である。本実施形態では、後述する線形電磁界解析部106における計算時間を短縮するため、ステータコアに流れる磁束の経路上の要素(メッシュ)の一部の透磁率を、電磁界解析においてステータコアの透磁率として想定される透磁率よりも十分に低い透磁率とする。以下の説明では、このような低い透磁率を有する要素を、必要に応じて低透磁率要素と称する。例えば、低透磁率要素の透磁率を、真空の透磁率以下の透磁率とするのが好ましく、真空の透磁率の1/2倍以下の透磁率とするのがより好ましい。(8)式における磁気抵抗率νhighは、低透磁率要素に対して設定される透磁率の逆数である。また、(8)式において、Lは、低透磁率要素の、磁束の進行方向の長さである。また、Aは、低透磁率要素の、磁束の進行方向に垂直な方向における断面積である。
本実施形態では以上のようにして、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において、各相における補正電流I+が導出される。
ここで、補正電流I+について説明する。図4は、ステータコアにおける磁束密度の時系列波形の一例を示す図である。図4(a)は、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形410の一例を概念的に示す図である。図4(b)は、インバータ電圧VINVがステータコイルに印加された場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形420の一例を概念的に示す図である。
図4(a)および図4(b)に示すように、インバータ電圧VINVがステータコイルに印加された場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形420では、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形410に対し、磁束密度の細かい段階的な時間変化が重畳されたものになる(磁束密度の時系列波形420の小さな凹凸の部分を参照)。このような磁束密度の細かい段階的な時間変化は、PWMインバータが備える半導体素子のスイッチング時のインバータ電圧VINVの立ち上がりおよび立ち下がりのために生じるものである。補正電流I+は、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度に対し、このような磁束密度の細かい段階的な時間変化を補うためにステータコイルに流す必要がある電流に対応する。このように補正電流I+は、磁束密度の細かい段階的な時間変化に対応する電流である。従って、細かい時間ステップ(即ち、高い時間分解能)で導出する必要がある。そこで、本実施形態では、補正電流I+を導出するために用いられる、目標励磁時鎖交磁束φIおよびインバータ励磁時鎖交磁束φINVを、非線形電磁界解析部101で実行される非線形電磁界解析における時間ステップΔt1よりも短い時間ステップΔt2の時間隔で導出する。このような観点から時間ステップΔt2は、1.0×10-5秒以下が好ましく、5.0×10-6秒以下がより好ましい。
<<線形電磁界解析部106>>
線形電磁界解析部106は、補正電流I+がステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出する。
本実施形態では、線形電磁界解析部106は、線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析を実行することにより、補正電流I+がステータコイルに流れてステータコアが励磁された場合の、IPMモータのモデルに対して設定した要素のそれぞれにおける磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを導出する。本実施形態では、説明を簡単にするため、線形電磁界解析部106により線形電磁界解析が実行される際に設定される要素は、非線形電磁界解析部101により非線形電磁界解析が実行される際に設定される要素と同じとする。ただし、線形電磁界解析部106により線形電磁界解析が実行される際に設定される要素と、非線形電磁界解析部101により非線形電磁界解析が実行される際に設定される要素とを異ならせてもよい。このようにする場合、例えば、一方の要素における磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを補間または補外することにより、他方の要素における磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを導出する。
図4(a)および図4(b)に示すように、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形410と、インバータ電圧VINVがステータコイルに印加された場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形420とは大きく異ならず、ステータコイルにおける磁束密度の分布は、何れの場合でも凡そ同等になることが想定される。つまり、各要素において磁束密度は大きく時間変化しない。このため、各要素における磁束密度が磁化曲線の接線に沿って時間変化すると近似して線形電磁界解析を実行しても、磁束密度Bおよび渦電流密度Jeは実用上要求される精度を満足することができる。
そこで、本実施形態では、線形電磁界解析部106は、非線形電磁界解析部101により導出された、時間ステップΔt2により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bに基づいて、時間ステップΔt2により定まる各時刻における各要素の微分透磁率(=dB/dH)を導出する。
尚、線形電磁界解析部106は、非線形電磁界解析部101により導出された、時間ステップΔt1により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bおよび磁界強度Hに基づいて、時間ステップΔt1により定まる各時刻における各要素の微分透磁率を導出し、導出した微分透磁率を補間することにより、時間ステップΔt2により定まる各時刻における各要素の微分透磁率を導出してもよい。線形電磁界解析部106は、線形非定常電磁界解析の際に、以上のようにして導出された微分透磁率を用いて係数マトリックスを導出する。
また、線形電磁界解析部106により導出する磁束密度は、図4を参照しながら説明したように磁束密度の細かい段階的な時間変化の部分だけである。即ち、線形電磁界解析部106で導出される磁束密度の時系列波形は、インバータ電圧VINVがステータコイルに印加された場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形420から、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度の時系列波形410を差し引いた磁束密度の時系列波形に対応するものである。従って、線形電磁界解析部106により導出される磁束密度の大きさは、ステータコアにおける実際の磁束密度の大きさに比べて小さい。よって、図5に示すように、各相(U相、V相、W相)のステータコイル511、512、513が相互に電気的に接続されず、且つ、各相のステータコイル511、512、513のそれぞれに個別に電流源521、522、523が直接接続されるものとして電磁界解析を実行しても、磁束密度Bおよび渦電流密度Jeは実用上要求される精度を満足することができると考えられる。
そこで、本実施形態では、線形電磁界解析部106は、相互に未結線の電流源521、522、523からステータコイル511、512、513に各相の補正電流I+が流れるものとして線形非定常電磁界解析を実行する。尚、図5において、ステータコイル511、512、513は、電気的には接続されないが、ステータコア530により磁気的に結合される。
また、前述したように、ステータコアに流れる磁束の経路上の要素の一部を低透磁率要素とする。低透磁率要素は、電磁界解析においてステータコアの透磁率として想定される透磁率よりも十分に低い透磁率を有する。例えば、図2において、ステータコアのティース部の先端側(IPMモータの回転軸側)の領域と基端側(ヨーク部側)の領域とを区分けするように、各ティース部の、径方向の中央付近の領域であって、周方向に沿う領域202a~202gを低透磁率要素とする。領域202a~202gの径方向の長さは、例えば、ティース部の径方向の長さの2%以上3%以下である。このようにすることによって、ステータコアにおける磁気抵抗が、領域202a~202gにおける透磁率によって定められるようにすることができる。従って、ステータコアの磁束密度に関わらず、IPMモータの磁気回路の磁気抵抗を、領域202a~202gにおける磁気抵抗に近似することができる。よって、微分透磁率の空間分布に影響されずに、励磁電流と磁束との関係を線形に近似することができる。このため、線形電磁界解析部106における計算時間を短縮することができる。そして、線形電磁界解析部106により導出される磁束密度の大きさは、ステータコアにおける実際の磁束密度の大きさに比べて小さく、また、低透磁率要素の面積はステータコア全体の面積に対して十分に小さいため、このようにして電磁界解析を実行しても、磁束密度Bおよび渦電流密度Jeは実用上要求される精度を満足することができると考えられる。
尚、領域202a~202gを低透磁率要素とする場合、(8)式において、Lは、低透磁率要素の径方向の長さになり、Aは、低透磁率要素の径方向に垂直な方向における断面積になる。
その他の線形電磁界解析部106における処理は、一般的な線形非定常電磁界解析の手法と同じ手法で実現することができる。線形非定常電磁界解析を実行する手法は、非特許文献2等に記載されているように一般的な手法であるので、その詳細な説明を省略する。以上のようにして、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において、各相のステータコイルに各相の補正電流I+が流れた場合の各要素の磁束密度Bおよび渦電流密度Jeが相毎に導出される。
<<損失導出部107>>
損失導出部107は、線形電磁界解析部106により導出されたステータコアにおける磁束密度に基づいて、ステータコアにおける損失を導出する。本実施形態では、目標励磁電流IIと補正電流I+とを合わせた電流がステータコイルに流れた場合のステータコアにおける損失を導出する場合を例示する。
そこで、損失導出部107は、非線形電磁界解析部101により導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bと、線形電磁界解析部106により導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bとを、要素毎、相毎、および時刻毎に加算する。これにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において、目標励磁電流IIと補正電流I+とを合わせた電流が各相のステータコイルに流れた場合の各要素の磁束密度Bが相毎に導出される。以下の説明では、このようにして導出される磁束密度Bを、必要に応じて全体磁束密度Bと称する。
また、損失導出部107は、非線形電磁界解析部101により導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の渦電流密度Jeと、線形電磁界解析部106により導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の渦電流密度Jeとを、要素毎、相毎、および時刻毎に加算する。これにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において、目標励磁電流IIと補正電流I+とを合わせた電流が各相のステータコイルに流れた場合の各要素の渦電流密度Jeが相毎に導出される。以下の説明では、このようにして導出される渦電流密度Jeを、必要に応じて全体渦電流密度Jeと称する。
損失導出部107は、ステータコアの各要素における全体磁束密度Bおよび全体渦電流密度Jeを用いて、IPMモータ(ステータコア)のヒステリシス損および渦電流損(古典的渦電流損)を導出する。
例えば、損失導出部107は、各要素の全体磁束密度Bの一周期における最大値と最小値との差Bmを導出し、以下の(9)式により、各要素のヒステリシス損Whを導出する。
Figure 0007469665000005
(9)式において、fは、励磁周波数(目標励磁電圧VIおよび目標励磁電流IIの電気周波数)であり、Khは、ヒステリシス損係数であり、βは定数(例えば、1.6または2)である。ヒステリシス損係数Khは、例えば、二周波法により予め求められるものである。
損失導出部107は、以上のヒステリシス損Whの導出を全ての要素および全ての相に対して行い、全ての要素および全ての相におけるヒステリシス損Whの総和をIPMモータ(ステータコア)のヒステリシス損として導出する。尚、ヒステリシス損は、公知の方法で導出することができ、各要素の磁束密度を用いて導出する方法であれば、どのような方法で導出してもよい。
また、損失導出部107は、各要素の全体渦電流密度Jeから、以下の(10)式により、各要素の渦電流損We(古典的渦電流損)を導出する。
Figure 0007469665000006
(10)式において、vは、要素の大きさであり、Tは、目標励磁電圧VIおよび目標励磁電流IIの電気一周期に相当する時間である。要素の大きさは、二次元解析を実行する場合には面積、三次元解析を実行する場合には体積の大きさになる。
損失導出部107は、以上の渦電流損Weの導出を全ての要素および全ての相に対して行い、全ての要素および全ての相の渦電流損Weの総和をIPMモータ(ステータコア)の渦電流損として導出する。尚、渦電流損は、公知の方法で導出することができ、各要素の渦電流密度を用いて導出する方法であれば、どのような方法で導出してもよい。
そして、損失導出部107は、IPMモータのヒステリシス損と渦電流損の和を、IPMモータの鉄損として導出する。
<<出力部108>>
出力部108は、損失導出部107により導出されたIPMモータ(ステータコア)の損失に関する情報を出力する。IPMモータの損失に関する情報には、例えば、IPMモータのヒステリシス損、IPMモータの渦電流損、およびIPMモータの鉄損のうち、少なくとも1つを示す情報が含まれる。出力の形態として、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、外部装置への送信、および電磁界解析装置100の内部または外部の記憶媒体への記憶のうち、少なくとも1つを採用することができる。
<<フローチャート>>
次に、図6のフローチャートを参照しながら、電磁界解析装置100による電磁界解析方法の一例を説明する。
まず、ステップS601において、非線形電磁界解析部101は、非線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析を実行することにより、各相のステータコイルに各相の目標励磁電流IIが流れてステータコアが励磁された場合の各要素の磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを導出する。ここでは、非線形電磁界解析部101は、後述するステップS607で実行される線形非定常電磁界解析における時間ステップΔt2よりも長い時間ステップΔt1の時間隔の各時刻tにおいて、各要素における磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを相毎に導出するものとする。尚、各相の目標励磁電流IIは、ステップS601の処理が開始される前に、電磁界解析装置100に設定される。
次に、ステップS602において、目標励磁電圧導出部102は、ステップS601で導出された、各時刻tにおける各要素の磁束密度Bと、IPMモータの回路方程式((5)式)とに基づいて、目標励磁時鎖交磁束φIおよび目標励磁電圧VIを導出する。ここでは、目標励磁電圧導出部102は、時間ステップΔt1の時間隔の各時刻tにおいて、各相の目標励磁時鎖交磁束φIおよび各相の目標励磁電圧VIを導出するものとする。
尚、ステップS601、S602において、それぞれ電気周期の一周期分の値が導出しても、時間ステップΔt1の時間隔の時刻t毎に、ステップS601およびステップS602の処理を繰り返すことにより、一周期分の値を導出してもよい。
次に、ステップS603において、非線形電磁界解析部101は、ステップS601で導出した各時刻tにおける各要素の磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを補間することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを相毎に導出する。また、ステップS601で実行される非線形非定常電磁界解析における励磁条件として、時間ステップΔt1の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電流IIが設定されている場合、非線形電磁界解析部101は、時間ステップΔt1の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電流IIを補間することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電流IIを導出する。また、目標励磁電圧導出部102は、ステップS602で導出した各時刻tにおける各相の目標励磁時鎖交磁束φIを補間することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁時鎖交磁束φIを導出する。同様に、目標励磁電圧導出部102は、ステップS602で導出した各時刻tにおける各相の目標励磁電圧VIを補間することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電圧VIを導出する。
次に、ステップS604において、インバータ電圧導出部103は、ステップS603で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁電圧VIに基づいて、変調波(例えば正相変調波310および負相変調波330)を導出する。そして、インバータ電圧導出部103は、変調波(正相変調波310および負相変調波330)と搬送波320とを比較した結果に基づいて、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相のインバータ電圧VINVを導出する。
次に、ステップS605において、インバータ励磁時鎖交磁束導出部104は、ステップS604で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相のインバータ電圧VINVと、IPMモータの回路方程式((6)式)とに基づいて、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相のインバータ励磁時鎖交磁束φINVを導出する。
次に、ステップS606において、補正電流導出部105は、ステップS603で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の目標励磁時鎖交磁束φIと、ステップS605で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相のインバータ励磁時鎖交磁束φINVと、各相のステータコイルの巻回数Nと、ステータコアの磁気抵抗Rmとに基づいて、(7)式により、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各相の補正電流I+を導出する。尚、ステータコイルの巻回数Nおよびステータコアの磁気抵抗Rmは、ステップS606の処理が開始される前に、電磁界解析装置100に設定される。
次に、ステップS607において、線形電磁界解析部106は、線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析を実行することにより、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻において、各相のステータコイルに各相の補正電流I+が流れてステータコアが励磁された場合の各要素の磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを相毎に導出する。
本実施形態では、線形電磁界解析部106は、線形非定常有限要素法による電磁界解析を実行する前に、ステップS601の非線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析の結果に基づいて、時間ステップΔt2により定まる各時刻における各要素の微分透磁率を導出する。そして、ステップS607において、線形電磁界解析部106は、このようにして導出した微分透磁率を用いて、線形非定常有限要素法による電磁界解析を実行する。
また、本実施形態では、線形電磁界解析部106は、電流源521、522、523からステータコイル511、512、513に、各相の補正電流I+が流れるものとして、線形非定常有限要素法による電磁界解析を実行する。
また、本実施形態では、線形電磁界解析部106は、領域202a~202gに対応する要素の透磁率をステータコアの他の領域に対応する要素の透磁率よりも十分に低い透磁率として、線形非定常有限要素法による電磁界解析を実行する。
次に、ステップS608において、損失導出部107は、ステップS603で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bと、ステップS607で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bとに基づいて、各要素の全体磁束密度Bを相毎に導出する。ステップS603で導出される各要素の磁束密度Bは、各相のステータコイルに各相の目標励磁電流IIが流れてステータコアが励磁された場合の各要素の磁束密度Bである。ステップS607で導出される各要素の磁束密度Bは、各相のステータコイルに各相の補正電流I+が流れてステータコアが励磁された場合の各要素の磁束密度Bである。全体磁束密度Bは、目標励磁電流IIと補正電流I+とを合わせた電流が各相のステータコイルに流れた場合の時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の磁束密度Bである。
また、損失導出部107は、ステップS603で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の渦電流密度Jeと、ステップS607で導出された、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の渦電流密度Jeとに基づいて、各要素の全体渦電流密度Jeを相毎に導出する。ステップS603で導出される各要素の渦電流密度Jeは、各相のステータコイルに各相の目標励磁電流IIが流れてステータコアが励磁された場合の各相の目標励磁電流IIである。ステップS607で導出される各要素の渦電流密度Jeは、各相のステータコイルに各相の補正電流I+が流れてステータコアが励磁された場合の各要素の渦電流密度Jeである。全体渦電流密度Jeは、目標励磁電流IIと補正電流I+とを合わせた電流が各相のステータコイルに流れた場合の時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻における各要素の渦電流密度Jeである。
次に、ステップS609において、損失導出部107は、ステップS608で導出された、各要素の全体磁束密度Bおよび各要素の全体渦電流密度Jeを用いて、IPMモータ(ステータコア)の各要素のヒステリシス損Whおよび渦電流損Weを導出する。損失導出部107は、IPMモータの各要素および各相のヒステリシス損Whの総和を、IPMモータのヒステリシス損として導出する。また、損失導出部107は、IPMモータの各要素および各相の渦電流損Weの総和を、IPMモータの渦電流損として導出する。そして、損失導出部107は、IPMモータのヒステリシス損と渦電流損の和を、IPMモータの鉄損として導出する。
次に、ステップS610において、出力部108は、ステップS609で導出された、IPMモータの損失に関する情報を出力する。
図6のフローチャートによる処理は、ステップS610の処理が終了すると終了する。
<<計算例>>
次に、計算例を示す。本計算例では、非特許文献3に記載されているD1モータをIPMモータのモデルとして用いて電磁界解析を実行した。本計算例では、変調波の周波数を1kHz、目標励磁電流IIの振幅を20A、進角を0°、キャリア周波数を20kHz、直流電圧を500Vとして、PWMインバータによりIPMモータを励磁した場合の電磁界解析を実行した。その結果を表1に示す。
Figure 0007469665000007
表1において、PWM解析は、比較例の1つであり、各相のステータコイルにインバータ電圧VINVが印加された場合のIPMモータの鉄損を、非線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析を実行することにより導出したことを示す。PWM解析では、高い時間分解能(時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻)で、磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを導出した。
発明例は、本実施形態で説明した手法でIPMモータの鉄損を導出したことを示す。
電流源解析は、比較例の1つであり、各相のステータコイルに目標励磁電流IIが流れた場合のIPMモータの鉄損を、非線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析を実行することにより導出したことを示す。電流源解析では、低い時間分解能(時間ステップΔt1の時間隔により定まる各時刻)で、磁束密度Bおよび渦電流密度Jeを導出した。
表1では、PWM解析、発明例、および電流源解析の各手法で導出されたIPMモータの鉄損および計算時間を、PWM解析で導出された鉄損および計算時間を100%とした場合の相対的な値で示す。
図7は、磁束密度の時系列波形の計算例を示す図である。尚、図7は、同一の要素における磁束密度の時系列波形である。また、本計算例では、変調波の周波数を1kHzとしているので、図7の横軸の電気角(=θ)は、θ(°)÷(360(°)×1×103(Hz))の計算を実行することにより、図7の横軸の0を基準時刻とする時刻(秒)に換算される。
比較例であるPWM解析では、各相のステータコイルにインバータ電圧VINVが印加された場合のIPMモータの鉄損を、非線形非定常電磁界解析により高い時間分解能で導出する。このため、IPMモータの鉄損を高精度に導出することができるが、計算時間が長くなる。
また、比較例である電流源解析では、PWMインバータが備える半導体素子のスイッチング時のインバータ電圧VINVの立ち上がりおよび立ち下がりのために生じる、磁束密度の細かい段階的な時間変化を考慮していない。このため、図7に示す電流源解析の磁束密度の時系列波形のように、磁束密度の細かい段階的な時間変化が表現されない。この結果、電流源解析では、表1に示すように、IPMモータの鉄損が、PWM解析で導出されたものと大きく異なる。
これに対し、図7に示す発明例の磁束密度の時系列波形では、磁束密度の細かい段階的な時間変化が表現されており、PWM解析の磁束密度の時系列波形に近い時系列波形になる。この結果、表1に示すように、発明例では、IPMモータの鉄損をPWM解析で導出されたものと同等にすることができる。また、発明例では、計算時間をPWM解析よりも大幅に短縮することができる。
<<まとめ>>
以上のように本実施形態では、電磁界解析装置100は、インバータ励磁時鎖交磁束φINVと目標励磁時鎖交磁束φIとの差φINV-φIに基づいて、補正電流I+を導出する。そして、電磁界解析装置100は、補正電流I+がステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出する。従って、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度に対し、インバータ用半導体素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化を補うためにステータコイルに流す必要がある電流を補正電流I+として導出することができる。補正電流I+の大きさは小さいため、線形電磁界解析を実行しても計算精度は大きく低下しない。従って、インバータ用半導体素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化を考慮した電磁界解析を短時間で実行することができる。
また、本実施形態では、電磁界解析装置100は、インバータ電圧VINVとIPMモータの回路方程式((5)式)とに基づいて、インバータ励磁時鎖交磁束φINVを導出する。従って、インバータ励磁時鎖交磁束φINVを測定しなくても、各種のインバータ励磁時鎖交磁束φINVを用いて電磁界解析を実行することができる。
また、本実施形態では、電磁界解析装置100は、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく非線形電磁界解析を実行することにより導出する。そして、電磁界解析装置100は、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度と、IPMモータの回路方程式とに基づいて目標励磁電圧VIを導出し、目標励磁電圧VIに基づいてインバータ電圧VINVを導出する。従って、インバータ電源から実際に出力されるインバータ電圧VINVを測定しなくても、各種のインバータ電圧VINVを用いて電磁界解析を実行することができる。また、インバータ電源から実際に出力されるインバータ電圧VINVとは異なるインバータ電圧INVを用いることができ、所望の特性のモータを得るために必要なインバータ電圧INVを調査することができる。これにより、例えば、このようなインバータ電圧INVを出力することができるインバータ電源の開発に役立てることができる。
また、本実施形態では、電磁界解析装置100は、線形電磁界解析において導出される磁束密度の時間分解能を、非線形電磁界解析における磁束密度の時間分解能よりも高くする。そして、電磁界解析装置100は、非線形電磁界解析における磁束密度に基づいて、線形電磁界解析において導出される磁束密度の時間分解能に対応する各時刻における磁束密度を導出する。また、電磁界解析装置100は、線形電磁界解析において導出される磁束密度の時間分解能に対応する各時刻における目標励磁電圧VI・インバータ電圧VINV・インバータ励磁時鎖交磁束φINVを導出する。尚、本実施形態で説明した例では、線形電磁界解析において導出される磁束密度の時間分解能に対応する各時刻は、時間ステップΔt2の時間隔により定まる各時刻である。従って、線形電磁界解析においては、時間分解能を高くすることにより、インバータ用半導体素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化に追従するように磁束密度を導出することができる。一方、非線形非定常電磁界解析においては、磁束密度の時系列データは比較的滑らかに変化することから、時間分解能を低くすることにより、実用的な精度を確保しつつ計算時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、電磁界解析装置100は、磁束が通る領域の一部の領域202a~202gの透磁率を、その他の領域の透磁率よりも低くした状態のステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出する。そして、電磁界解析装置100は、磁束が通る領域の一部の領域202a~202gの透磁率を用いて、補正電流I+を導出する。従って、微分透磁率の空間分布に影響されずに、励磁電流と磁束との関係を線形に近似することができる。よって、線形電磁界解析部106における計算時間を短縮することができる。尚、磁気抵抗率は透磁率の逆数であるので、透磁率を用いることと磁気抵抗率を用いることとは等価である。
また、本実施形態では、電磁界解析装置100は、各相のステータコイル511、512、513に対し、他の相の電流源521、522、523と未結線の電流源521、522、523が、補正電流I+を出力する電流源として接続されているものとして線形電磁界解析を実行する。従って、線形電磁界解析における電源回路の構成を簡素化することができる。よって、線形電磁界解析部106における計算時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、電磁界解析装置100は、線形電磁界解析の結果に基づいて、IPMモータの各種の損失を導出する。従って、インバータ用半導体素子のスイッチング時に生じる細かい段階的な磁束密度の時間変化を考慮してIPMモータの損失を導出することができる。
<<変形例>>
本実施形態では、(8)式により磁気抵抗Rmを導出する場合を例示した。しかしながら、磁気抵抗Rmを導出する手法は、このような手法に限定されない。例えば、線形電磁界解析部106により実行される線形非定常有限要素法を用いた電磁界解析と同様の電磁界解析を一ステップのみ実行し、1つの時刻において、ステータコアを通る磁束を導出する。このようにする場合、励磁電流は補正電流I+でなくてよく、任意の値の電流でよい。また、このようにする場合、透磁率として低透磁率要素における透磁率(=1/νhigh)を用いる。そして、このようにして導出した磁束と、当該磁束を導出したときに用いた励磁電流と、ステータコイルの巻回数とに基づいて、磁気抵抗Rmを導出する。
本実施形態では、各ティース部の、径方向の中央付近の領域であって、周方向に沿う領域202a~202gを低透磁率要素とする場合を例示した。しかしながら、補正電流I+と、補正電流I+がステータコイルに流れた場合にステータコアに流れる磁束とが比例関係に近似されるように、ステータコアの磁束が通る領域の一部の領域の透磁率をステータコアの他の領域の透磁率よりも低い透磁率としていれば、低透磁率要素とする領域は、領域202a~202gに限定されない。例えば、ヨーク部の、各スロットの周方向における中央付近の領域であって、径方向に沿う領域を低透磁率要素としてもよい。
本実施形態では、目標励磁電流IIがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける磁束密度に基づいて目標励磁電圧VIを導出し、目標励磁電圧VIに基づいてインバータ電圧VINVを導出する場合を例示した。しかしながら、インバータ電圧VINVをこのようにして導出しなくてもよい。例えば、PWMインバータから実際に出力されるインバータ電圧の時系列波形を測定し、測定したインバータ電圧の時系列波形を示すデータを電磁界解析装置100に入力し、当該データをインバータ電圧VINVとして用いてもよい。このようにする場合、例えば、PWMインバータで使用される変調波のデータを電磁界解析装置100に入力し、当該データを目標励磁電圧VIのデータとして用いる。また、PWMインバータで使用される変調波をステータコイルに印加した場合にステータコイルに流れる磁束を測定し、測定した磁束のデータを電磁界解析装置100に入力し、当該データを目標励磁時鎖交磁束φIとして用いる。また、線形電磁界解析において使用される微分透磁率は、例えば、ステータコアを構成する電磁鋼板の磁化特性(BH曲線)に基づいて定められる。
本実施形態では、インバータ電圧VINVと、IPMモータの回路方程式とに基づいて、インバータ励磁時鎖交磁束φINVを導出する場合を例示した。しかしながら、インバータ励磁時鎖交磁束φINVをこのようにして導出しなくてもよい。例えば、PWMインバータからステータコイルに実際にインバータ電圧を印加した場合にステータコイルに鎖交する磁束を測定し、測定した磁束のデータを電磁界解析装置100に入力し、入力したデータをインバータ励磁時鎖交磁束φINVとして用いてもよい。
本実施形態では、ステータコアにおける損失として、目標励磁電流IIと補正電流I+とを合わせた電流がステータコイルに流れた場合のステータコアにおける損失を導出する場合を例示した。また、ステータコアにおける損失として、ヒステリシス損、渦電流損、および鉄損を導出する場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、鉄損を導出しなくてもよい。また、ヒステリシス損および渦電流損の一方のみを導出してもよい。また、補正電流I+のみがステータコイルに流れた場合のステータコアにおける損失として、ヒステリシス損、渦電流損、および鉄損の少なくとも1つを導出してもよい。また、例えば、磁束密度のみを評価対象とし、損失を評価対象としない場合には、ステータコアにおける損失を導出する必要はない。
本実施形態では、インバータ電源がPWMインバータである場合を例示した。しかしながら、インバータ電源はPWMインバータに限定されない。例えば、PAM(pulse Amplitude Modulation)インバータをインバータ電源としてもよい。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
100 電磁界解析装置
101 非線形電磁界解析部
102 目標励磁電圧導出部
103 インバータ電圧導出部
104 インバータ励磁時鎖交磁束導出部
105 補正電流導出部
106 線形電磁界解析部
107 損失導出部
108 出力部
201 ロータ
202 ステータ
202a~202g 透磁率が低い領域
310 正相変調波
320 搬送波
330 負相変調波
340 正相ノッチ波
350 負相ノッチ波
360 インバータ電圧
410 目標励磁電流で励磁した場合の磁束密度の時系列波形
420 インバータ電圧で励磁した場合の磁束密度の時系列波形
511~513 ステータコイル
521~523 電流源
530 ステータコア

Claims (11)

  1. インバータ電源から出力されるインバータ電圧に基づいて駆動するモータにおける電磁界を解析する電磁界解析装置であって、
    前記インバータ電圧が前記モータのステータコイルに印加された場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束であるインバータ励磁時鎖交磁束と、前記ステータコイルに目標励磁電流が流れた場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束である目標励磁時鎖交磁束との差に基づいて、補正電流を導出する補正電流導出手段と、
    前記補正電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記モータのステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出する線形電磁界解析手段と、を有し、
    前記補正電流は、前記目標励磁電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記ステータコアにおける磁束密度に対し、前記インバータ電源のスイッチング素子のスイッチング時に生じる磁束密度の時間変化を補うために前記ステータコイルに流す必要がある電流である、電磁界解析装置。
  2. 前記インバータ電圧と、前記モータの回路方程式とに基づいて、前記インバータ励磁時鎖交磁束を導出するインバータ励磁時鎖交磁束導出手段を更に有する、請求項1に記載の電磁界解析装置。
  3. 前記目標励磁電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記ステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく非線形電磁界解析を実行することにより導出する非線形電磁界解析手段と、
    前記非線形電磁界解析手段により導出された前記磁束密度と、前記モータの回路方程式とに基づいて、前記目標励磁電流に対応する励磁電圧である目標励磁電圧を導出する目標励磁電圧導出手段と、
    前記目標励磁電圧導出手段により導出された前記目標励磁電圧に基づいて、前記インバータ電圧を導出するインバータ電圧導出手段と、を更に有し、
    前記インバータ励磁時鎖交磁束導出手段は、前記インバータ電圧導出手段により導出されたインバータ電圧と、前記モータの回路方程式とに基づいて、前記インバータ励磁時鎖交磁束を導出し、
    前記線形電磁界解析手段は、前記非線形電磁界解析手段により導出された前記磁束密度に基づく磁化特性を用いて前記線形電磁界解析を実行する、請求項2に記載の電磁界解析装置。
  4. 前記線形電磁界解析手段により導出される磁束密度の時間分解能は、前記非線形電磁界解析手段により導出される磁束密度の時間分解能よりも高く、
    前記非線形電磁界解析手段により導出された前記磁束密度に基づいて、前記線形電磁界解析手段により導出される磁束密度の時間分解能に対応する各時刻における前記磁束密度が導出され、
    前記線形電磁界解析手段により導出される磁束密度の時間分解能に対応する各時刻における前記目標励磁電圧が導出され、
    前記線形電磁界解析手段により導出される磁束密度の時間分解能に対応する各時刻における前記インバータ電圧が導出され、
    前記線形電磁界解析手段により導出される磁束密度の時間分解能に対応する各時刻における前記インバータ励磁時鎖交磁束が導出される、請求項3に記載の電磁界解析装置。
  5. 前記線形電磁界解析手段は、磁束が通る領域の一部の領域の透磁率を、その他の領域の透磁率よりも低くした状態の前記ステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出し、
    前記補正電流導出手段は、前記磁束が通る領域の一部の領域の透磁率を用いて前記補正電流を導出する、請求項1~4の何れか1項に記載の電磁界解析装置。
  6. 前記線形電磁界解析手段は、各相の前記ステータコイルに対し、他の相の前記ステータコイルに接続される電流源と未結線の電流源が、前記補正電流を出力する電流源として接続されているものとして前記線形電磁界解析を実行する、請求項1~5の何れか1項に記載の電磁界解析装置。
  7. 前記線形電磁界解析手段により導出された前記ステータコアにおける磁束密度に基づいて、前記ステータコアにおける損失を導出する損失導出手段を更に有する、請求項1~6の何れか1項に記載の電磁界解析装置。
  8. 前記損失導出手段は、前記目標励磁電流と前記補正電流とを合わせた電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記ステータコアにおける損失を導出する、請求項7に記載の電磁界解析装置。
  9. 前記損失は、渦電流損と、ヒステリシス損と、渦電流損およびヒステリシス損の和との何れかである、請求項7または8に記載の電磁界解析装置。
  10. インバータ電源から出力されるインバータ電圧に基づいて駆動するモータにおける電磁界を解析する電磁界解析方法であって、
    前記インバータ電圧が前記モータのステータコイルに印加された場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束であるインバータ励磁時鎖交磁束と、前記ステータコイルに目標励磁電流が流れた場合に前記ステータコイルに鎖交する磁束である目標励磁時鎖交磁束との差に基づいて、補正電流を導出する補正電流導出工程と、
    前記補正電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記モータのステータコアにおける磁束密度を、マックスウェルの方程式に基づく線形電磁界解析を実行することにより導出する線形電磁界解析工程と、を有し、
    前記補正電流は、前記目標励磁電流が前記ステータコイルに流れた場合の前記ステータコアにおける磁束密度に対し、前記インバータ電源のスイッチング素子のスイッチング時に生じる磁束密度の時間変化を補うために前記ステータコイルに流す必要がある電流である、電磁界解析方法。
  11. 請求項1~9の何れか1項に記載の電磁界解析装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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