JP6377912B2 - 建築物 - Google Patents
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Description
また、対象構造体が、比較的剛性が高い面状構造体である場合には、緊結支承手段を一つのみ設けることで、対象構造体に限界以上の歪みを生じさせるようなことを防止でき、建築物に変形等を生じさせる可能性を低減することが可能になる。
また、対象構造体が、比較的剛性が低い環状構造体である場合には、緊結支承手段を複数設けた場合においても、複数の緊結支承手段の相互間において対象構造体に限界以上の歪みを生じさせるようなことを防止でき、複数の緊結支承手段によって対象構造体を一層確実に支持しつつ、建築物に変形等を生じさせる可能性を低減することが可能になる。
また、対象構造体が中空空間部を囲繞する平面環状の構造体であるので、地震時に複数の支持土台が接近、又は離間した場合でも、環状構造体を構成する各部材に歪みを分散吸収させて変形を許容することが可能になる。
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。本実施の形態は、地震動による揺れを吸収して地震動による被害を低減する建築物に関する。ここで、この建築物の利用目的は任意であり、例えば飲食施設、娯楽施設、又は居住施設等として利用することができるが、本実施の形態においては商業施設として利用するものとして説明する。なお、この建築物を利用する者(例えば商業施設の来訪者や管理者等)を、以下では「利用者」と称して説明する。また、本実施の形態においては、建築物の構成として公知の点については適宜説明を省略する。
次に、本実施の形態の具体的内容について説明する。
最初に、本実施の形態に係る建築物1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る建築物1の外観を概略的に示す平面図である。また、図2は、図1におけるA−A矢視断面図である。また、図3は、図1におけるB−B矢視断面図である。ここで、以下では、必要に応じて、これら図1から図3におけるX−X’方向を「幅方向」と称し、特にX方向を「右方向」、X’方向を「左方向」と称する。また、Y−Y’方向を「奥行き方向」と称し、特にY方向を「後方向」、Y’方向を「前方向」と称する。また、Z−Z’方向を「高さ方向」と称し、特にZ方向を「上方向」、Z’方向を「下方向」と称する。また、後述する対象構造体20の環状部21における平面環状中心位置から当該環状部21の各部に至る方向を「径方向」と称する。
支持土台10は、設置面上(本実施の形態においては、地盤面上)に配置されて、対象構造体20を支持するための対象構造体支持手段である。この支持土台10は、地上において相互に所定の間隔を置いて4か所に設けられており、それぞれが任意の利用態様(本実施の形態においては、商業施設)により利用者によって利用される建築物である。ここで、各支持土台10を特に区別して説明がある場合には、それぞれ、「支持土台11」、「支持土台12」、「支持土台13」、又は「支持土台14」、のように区別して称し、区別して説明する必要が無い場合には、単に「支持土台10」と称して説明する。ここで、各支持土台10の形状や構造については任意であり、各支持土台10はそれぞれ相互に異なる形状や構造にて構成することができる。例えば、本実施の形態においては、支持土台11、支持土台12、及び支持土台13は、それぞれが相互に異なる略多角柱形状に形成された公知の鉄筋コンクリート造の建屋である。また、支持土台14は、図2に示すように、建屋と、この建屋の側方に独立して設置された支持柱を備えて構成されており、これらの建屋及び支持柱はいずれも鉄筋コンクリート造にて構成されている。この支持土台14の一部である支持柱のように、支持土台10は必ずしも任意の利用態様により利用者に利用される建築物でなくても構わず、例えば単なる柱のように対象構造体20を支持する機能のみを有する構造体であって、利用者により利用されない構造体であっても良い。また、支持土台10は例えば略円柱形状に構成されても良く、また鉄骨造や木造の建築物であっても構わない。なお、図1においては、各支持土台10の二階床面を「2F」、三階床面を「3F」と図示している。
対象構造体20は、支持土台10によって支持される構造体であって、環状部21を備えている。この環状部21とは、中空空間部26を囲繞する平面環状の構造体であって、支持土台10の上面に対して緊結支承部30及び摺動支承部40を介して接続されることにより、各支持土台10の上方の位置に水平に配置されている。なお、この環状部21の具体的な形状等については任意であるが、本実施の形態における環状部21は、鉛直断面の形状が所定長さ(例えば、5000mm)の長辺及び所定長さの短辺(例えば、150mm)から成る長方形となっている平面略楕円環状の構造体であり、鉄筋コンクリートにより形成されている。
図5に示すように摺動支承部40は、支持土台10と環状部21とを、地震時において異なる方向に水平変位可能となるように接続(このような接続を、以下では必要に応じて「変動接続」と称する)する摺動支承手段である。「異なる方向に水平変位」とは、地震時において、支持土台10の変位方向とは全く関係なく、対象構造体20を支持する支承手段が、水平方向に変位することを意味する。地震動に起因して支持土台10と環状部21が水平面内に沿って変位する場合において、これら支持土台10と環状部21が、変位方向又は変位量の少なくとも一方において異なる変位を行うことを意味する。「変位可能」とは、地震動に起因して支持土台10と環状部21が異なる変位を行う場合の他、同じ変位を行う場合や、地震動があっても小さい等のために支持土台10と環状部21が変位しない場合を含む意味である。なお、変位可能な方向に関しては、水平面内に沿った任意の方向に変位可能とすることが好ましいが、特定方向のみに沿って変位可能としてもよい。ここで、この摺動支承部40の設置位置は、支持土台10と環状部21との間にある限りにおいて任意であるが、本実施の形態においては、支持土台12と環状部21との間に、及び支持土台14と環状部21との間に、それぞれ複数台の摺動支承部40が介装されているものとして説明する。また、摺動支承部40は各設置位置において、径方向に沿って二台一組で配置されているものとし、以下では特記する場合を除いて、これら一組の摺動支承部40を単に摺動支承部40と称して説明する。このように、緊結支承部30と異なり摺動支承部40を二台一組で配置する理由は、これら一組の摺動支承部40の並設方向に沿って長期的な荷重が偏在するような場合であっても、摺動支承部40が転倒することを防止するためである。
次に、上記のように構成された建築物1における、地震時の挙動について説明する。図6は、建築物1の挙動を概略的に示す平面図である。図6(a)は、地震動が発生していない場合(以下、必要に応じて「通常時」と称する)の建築物1であって、地震動に基づく変形が生じていない建築物1を示し、図6(b)は、地震動が発生している場合(以下、必要に応じて「地震時」と称する)の建築物1であって、地震動に基づく変形が生じている建築物1を示す。なお、図6(b)においては、地震時における建築物1の位置を実線で示し、通常時における建築物1の位置を点線で示している。
次に、緊結支承部30及び摺動支承部40の設置位置について説明する。
これらの設置位置の決定手順について説明する。まず、緊結支承部30の設置位置の決定手順は、環状部21の一部分であって、緊結支承部30を設置する位置の目安となる部分となる「第一環状部」を決定する。この第一環状部は環状部21における一部分である限り任意の位置に決定して良いが、本実施の形態においては、第一環状部として環状部21における地点P1を決定したものとして説明する(図6(a)参照)。次に、同じく環状部21の一部分であって、緊結支承部30を設置する位置の目安となる部分となる「第二環状部」を決定する。この第二環状部についても環状部21における一部分である限り任意の位置に決定して良いが、本実施の形態においては、第二環状部として環状部21における地点P2を決定したものとして説明する。ちなみに、地点P1、P2を決定する目的は、後述する建築物1が地震時に受ける水平面内での部材角θを特定する根拠となっている。
次に、緊結支承部30及び摺動支承部40の設置位置を最適化するための工夫について説明する。なお、「設置位置の最適化」とは、対象構造体20に生じる部材角を許容値内とすることにより、建築物1の耐震性能を維持させることが可能となるように、設置位置を決定することを意味する。
θ≒tanθ
=|d1−d3|/s・・・(1)
ここで、例えば、許容値として部材角θは、下記式(2)を満たすことが望ましい。
θ≦1/200・・・(2)
例えば、d1=50mm、d2=−50mm、s=54000mmとなるように建築物1を構成した場合、
θ=|50−(−50)|/54000
=(1/540)<(1/200)
となるため、上記式(2)を満たす。
このように、本実施の形態1に係る建築物1によれば、複数の支持土台10と対象構造体20を緊結支承部30と摺動支承部40で接続したので、地震時に、複数の支持土台10の各々が、これら複数の支持土台10の水平面内における様々な方向に沿って異なる挙動で変位した場合であっても、対象構造体20の重量を緊結支承部30を介して支持土台10で支持しつつ、対象構造体20を摺動支承部40を介して異なる方向に水平変位可能とするので、建築物に変形等を生じさせる可能性を低減することが可能になる。
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、耐震性能が従来と同程度に留まる場合であっても、従来と異なる手段によって対象構造体20の地震時において生じる部材角を許容値内とすることができている場合には、本発明の課題は解決されている。
発明の詳細な説明や図面で説明した建築物1の各部の寸法、形状、比率等は、あくまで例示であり、その他の任意の寸法、形状、比率等とすることができる。
上記実施の形態においては、摺動支承部40は滑り支承であるものとして説明したが、これに限定されず、例えば免震ゴム支承や転がり支承であっても構わない。
上記実施の形態においては、支持土台10は複数配置されるものとして説明したが、実質的に複数配置されていればよく、見掛け上単一であってもよい。例えば、単一の支持土台10における各部が地震時において異なる方向に水平変位する場合には、当該各部のそれぞれに対して本実施の形態と同様に緊結支承部30又は摺動支承部40を介して対象構造体20を接続しても良い。図7は、変形例に係る建築物の外観を概略的に示す平面図である。この図7において、対象構造体20Aを支持する支持土台10Aは、見掛け上は単一の支持土台10Aであるが、実質的には、その第1棟10A1、第2棟10A2、第3棟10A3が、それぞれの棟間をエキスパンジョンジョイントにて連結しているので、地震時において異なる方向に水平変位するため、支持土台10Aが実質的に複数配置されていると言える。
上記実施の形態においては、対象構造体20はその上面を移動可能な通路であって軸心方向における両端部に手摺27が配置されているものとして説明したが、対象構造体20の具体的な構成については任意であり、例えば対象構造体20は側壁や天井を備える構造体であっても良いし、複数の階を有する構造体であっても良い。
また、対象構造体20の平面形状は任意であり、本実施の形態に示す長円環状の他にも、正円環状、正方形環状等といった任意の構造により構成することが可能である。さらに、対象構造体20は、環状構造体に限定されず、中空空間部26がない面状構造体であってもよい。そして、このような対象構造体20の形状によって、緊結支承部30や摺動支承部40の設置数や設置位置を変更することができる。図8は、他の変形例に係る建築物の外観を概略的に示す平面図である。この図8において、4つの支持土台10Bは、菱形の4つの頂点の各々にほぼ対応する位置に配置されている。対象構造体20Bは、平面形状をやや横長の楕円形状とするものであって、中空空間部26がない面状構造体である。この対象構造体20Bは、4つの支持土台10Bのうちの一つの支持土台10B(図8における最上部の支持土台10B)と緊結支承部30で接続されており、4つの支持土台10Bのうちの他の3つの支持土台10と摺動支承部40で接続されている。このように、緊結支承部30と摺動支承部40は、対象構造体20Bと、相互に異なる支持土台10Bとを接続するものであって、それぞれ少なくとも1つ設けられていれば、その設置数や設置位置は任意である。特に、対象構造体20Bが面状構造体であるために、その剛性が比較的高い場合には、図8のように、緊結支承部30は1箇所にのみ設けることで、対象構造体20Bに限界以上の歪みを生じさせるようなことを防止することが可能になる。一方、図1のように、対象構造体20が環状構造体等であるために、その剛性が比較的低い場合には、緊結支承部30を複数箇所に設けても、複数の緊結支承部30の相互間において対象構造体に限界以上の歪みを生じさせるようなことを防止でき、複数の緊結支承手段30によって対象構造体20を一層確実に支持しつつ、建築物1に有害な変形等を生じなくすることができる。
緊結支承部30や摺動支承部40の具体的な構造は、公知の構造を採用することができる。図9は、変形例に係る緊結支承部50の要部の斜視図である。この図9に示すように、緊結支承部50は、一対の固定台51の各々にH型鋼52を立設し、これらH型鋼52の上端にH型鋼53を敷設し、このH型鋼53の上面にスライドレール54を敷設し、さらにスライドレール54に一対のスライドブロック55を配置して構成されている。このスライドブロック55は、スライドレール54に沿ってスライド可能であり、このスライドブロック55の上面に対象構造体20(図9において図示省略)を接続することで、対象構造体20をスライドレール54に方向に沿って変位可能としている。これによって、特に中空空間部26を有する対象構造体20の場合、図1に示す支持土台11、又は支持土台13の緊結支承部30を、図9に示す前記緊結支承部50に置換し、スライドレール54の材軸方向をY−Y’方向とすることで、奥行き方向は摺動自在(スライド)となり、支持土台11と支持土台13とが相対的に接近、または離間する際の変位を許容し、幅方向は実施の形態で説明したと同様に部材角θを許容することで、建築物1により有害な変形等を生じなくすることができる。なお、変形例に係る緊結支承部50と環状部21の歪みを分散吸収させる方法を併用しても好適に実施できる。
本実施の形態では、部材角θは、上記式(2)(θ≦1/200)を満たすことが望ましいとして説明したが、これは許容値として単なる例示に過ぎず、環状部21の具体的な形状や素材に応じて他の条件(例えば、θ≦1/300)を用いても良い。
付記1に記載の建築物は、設置面上に配置される複数の支持土台と、前記複数の支持土台によって支持される対象構造体と、前記対象構造体と、前記複数の支持土台のうち少なくとも一つの緊結用支持土台とを、地震時において双方が同一の方向に水平変位可能となるように接続する緊結支承手段と、前記対象構造体と、前記複数の支持土台における前記第一支持土台とは異なる支持土台である変動用支持土台とを、地震時において双方が異なる方向に水平変位可能となるように接続する摺動支承手段とを備える。
付記1に記載の建築物によれば、複数の支持土台と対象構造体を緊結支承手段と摺動支承手段で接続したので、地震時に、複数の支持土台の各々が、これら複数の支持土台の水平面内における様々な方向に沿って異なる挙動で変位した場合であっても、対象構造体の重量を緊結支承手段を介して支持土台で支持しつつ、対象構造体を摺動支承手段を介して異なる方向に水平変位可能とするので、建築物に変形等を生じさせる可能性を低減することが可能になる。
10、10A、10B、11、12、13、14 支持土台
20、20A、20B 対象構造体
21 環状部
22 前部
23 後部
24 右部
25 左部
26 中空空間部
27 手摺
30、30a〜h、50 緊結支承部
31、41、51 固定台
32、43 ベースプレート
33 角型鋼
34、45 無収縮モルタル
40、40a〜h 摺動支承部
42 滑面板
43a ルーズ孔
44、52、53 H型鋼
54 スライドレール
55 スライドブロック
θ 部材角
d1 支持土台11の変位量
d3 支持土台13の変位量
P1、P2 地点
s 相互間距離
Claims (2)
- 設置面上に配置される複数の支持土台と、
前記複数の支持土台によって支持される対象構造体と、
前記対象構造体と、前記複数の支持土台のうち少なくとも一つの緊結用支持土台とを、地震時において、双方が同一の方向に水平変位可能となるように、かつ、前記対象構造体と前記緊結用支持土台を結ぶ軸線周りに回転不能となるように、接続する緊結支承手段と、
前記対象構造体と、前記複数の支持土台における前記第一支持土台とは異なる支持土台である変動用支持土台とを、地震時において双方が異なる方向に水平変位可能となるように接続する摺動支承手段とを備え、
前記対象構造体は、中空空間部を持たない面状構造体であり、
前記緊結支承手段を一つのみ設けた、
建築物。 - 設置面上に配置される複数の支持土台と、
前記複数の支持土台によって支持される対象構造体と、
前記対象構造体と、前記複数の支持土台のうち少なくとも一つの緊結用支持土台とを、地震時において双方が同一の方向に水平変位可能となるように接続する緊結支承手段と、
前記対象構造体と、前記複数の支持土台における前記第一支持土台とは異なる支持土台である変動用支持土台とを、地震時において双方が異なる方向に水平変位可能となるように接続する摺動支承手段とを備え、
前記対象構造体は、中空空間部と、当該中空空間部を挟んで相互に対向する前記第一環状部及び前記第二環状部と、を備える環状構造体であり、
前記緊結支承手段として、
前記対象構造体における前記第一環状部と、前記複数の支持土台のうち前記第一環状部に対応する支持土台とを接続する緊結支承手段と、
前記対象構造体における前記第二環状部と、前記複数の支持土台のうち前記第二環状部に対応する支持土台とを接続する緊結支承手段とを設けた、
建築物。
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