JP6178171B2 - 既存構造物における既存基礎の補強構造 - Google Patents

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本発明は既存構造物の耐震性を向上させるために既存構造物を耐震補強等する場合に、既存構造物内での生活や業務に影響を与えることなく既存基礎を補強した既存構造物における既存基礎の補強構造に関するものである。
既存構造物の耐震性を向上させる目的で既存構造物を耐震補強等する上で、新設杭の増設を要する場合に、既存構造物(上部構造)を既存の状態のまま残す場合、既存構造物内から地中に新設杭を設置することは不可能に近いため、新設杭の配置領域は実質的に既存構造物の平面外に制限される。既存構造物内での生活や業務に支障を与えずに施工を遂行する観点からも、新設杭は既存構造物の平面を外した領域に設置されることが適切である。耐震補強等には既存構造物の内部、もしくは外部に耐震補強架構を付加することの他、既存構造物の内部、もしくは外部に制震装置付き補強架構を付加する制震補強と、免震装置を付加する免震構造化が含まれる。
新設杭を設置する方法では基本的には既存構造物の外周側に新設杭を設置し、新設杭と既存基礎との間に既存構造物の荷重を新設杭に伝達するためのつなぎ梁やフーチング等の新設基礎を構築することが行われる(特許文献1〜5参照)。
特許文献1、2では既存構造物を使用状態に置き、既存構造物内での生活や業務を継続させたまま新設杭を配置するために、既存構造物を包囲するように既存構造物の周囲に沿い、周方向に均等(等間隔)に新設杭を配置している。この方法は既存構造物に水平力に対する抵抗力を水平2方向に同等に確保することができるように見えるが、地震時等の転倒モーメント等に対する安定性を考慮すれば、後述のように必ずしも効率的な新設杭の配置方法とは言えない。
特許文献3では既存杭の外周側に増設杭を設置し、増設杭の上に増設基礎(下部基礎本体)を構築しているが(段落0010〜0012)、増設基礎の上に免震装置を設置し、免震装置の上に既存基礎に一体化する上部基礎を構築することで、新設杭上に構築される新設基礎を含めて既存構造物全体を免震構造化している(請求項1、段落0009〜0016)。この例では新設基礎が負担する水平力を新設杭に伝達する訳ではなく、免震装置の介在によって新設基礎と新設杭間での水平力の伝達を遮断し、新設杭への負担を軽減しているため、既存構造物に付加すべき新設杭の設置によって既存構造物を補強する場合の効率的な新設杭の配置状態を示してはいない。
特開昭63−171924号公報(第2頁上右欄第8行〜下左欄第7行、第3図、第4図) 特開2006−291607号公報(段落0010〜0013、図1〜図4) 特開平9−228392号公報(請求項1、段落0009〜0023、図1、図2) 特開平5−17959号公報(段落0012、図2) 特開2009−144494号公報(請求項1、段落0026〜0033、図1、図2)
特許文献4では既存構造物の周囲の複数箇所に新設杭の設置領域(増設フーチング)を集約させ、各設置領域に複数本の新設杭を配置しているため、既存構造物の周方向に均等に配置する特許文献1、2の方法より効率的に新設杭を配置できる可能性があると考えられる。
特許文献4では既存構造物の外形線(平面形状)が円形の場合に平面上、中心を通り、中心角を均等に分割する直線と外形線(円形)との交点の位置に新設杭の設置領域を配置している(図2、図8)。但し、既存構造物の外形線が多角形状の場合の外形線と新設杭の配置領域との関係が明らかにされていないため、地震時等に既存構造物に作用する水平2方向の転倒モーメントと捩りモーメントに対する有効な新設杭の配置領域の位置を特定することができているとは言えない。
例えば特許文献4において既存構造物の外形線が多角形状になった場合に、新設杭の設置領域を多角形状のどの位置に配置することが適切であるのかの規則性が示されていないため、転倒モーメントと捩りモーメントに対して有効な位置は特許文献4からは必ずしも導出されない。
特許文献5では既存基礎の隅角部の外周側に新設基礎(新設基礎躯体)を構築し、新設基礎の下に新設杭を設置している(請求項1、段落0026、図2−(2))。しかしながら、特許文献3と同じく、新設基礎上の新設杭上方に免震装置を設置することで既存構造物全体を免震構造化し(請求項1、段落0026)、新設基礎と新設杭間での水平力の伝達を遮断し、新設杭への負担を軽減しているため、既存構造物の周囲に付加される新設杭の設置によって既存構造物を補強する場合の効率的な新設杭の配置状態を提示するには至っていない。
本発明は上記背景より、既存構造物の外形線が多角形状の場合に既存構造物に作用する水平2方向の転倒モーメントと捩りモーメントに対する有効な新設杭の設置領域を特定する既存構造物における既存基礎の補強構造を提案するものである。
請求項1に記載の発明の既存構造物における既存基礎の補強構造は、多角形状の平面形状を持つ既存構造物の平面上、外周側に位置する既存基礎の内、前記多角形のいずれか複数の頂点に相当する隅角部を含む隅角部領域において、前記既存構造物の平面の外側に、前記既存基礎に一体化する新設基礎が構築され、この各1個の新設基礎の下に複数本の新設杭が集中的に配置され、この複数本の新設杭の頭部は前記新設基礎内にあることを構成要件とする。
「多角形状」とは、既存構造物の平面形状の外形線が細部を除き、全体として多角形状をしていることであり、多角形の頂点に相当する隅角部が明確な角をなしていない場合のように、細部が完全な多角形をなしていない形状も含まれる。多角形状の「多角形」は凸多角形と凹多角形を含む。「多角形」は既存構造物の平面形状を指す多角形状の形自体を指し、隅角部領域となる「多角形のいずれか複数の頂点」は凹多角形状の場合も凸多角形状の場合も、多角形の全頂点に相当する隅角部である場合と、一部の頂点に相当する隅角部である場合がある。「頂点に相当する隅角部」とは、多角形の頂点である場合と、明確な角をなしていない場合の角部と見なし得る隅角部を指す。「隅角部領域」とは、多角形の頂点に相当する隅角部を含み、平面上、複数本の新設杭を包囲し得る平面積を持った領域を指す。
後述のように既存構造物に作用する、偏心に起因する捩りモーメントに対する抵抗力を新設杭に期待する上では、新設杭が配置される隅角部領域が捩りモーメントの中心である剛心から遠い位置にある程、新設杭から受ける反力が大きく、効果が大きいから、凸多角形状であるか凹多角形状であるかを問わず、隅角部領域は多角形の中心から遠い頂点に相当する隅角部を含む領域であることが有利である(請求項2)。但し、隅角部領域が多角形の中心から遠い頂点に相当する隅角部を含む領域であることは、多くの場合、既存構造物の平面形状が凸多角形の場合に当てはまる。多角形の中心は多角形の平面上の中心であり、重心になるが、既存構造物に偏心が存在する場合には剛心に近い点として剛心からの距離が大きい隅角部領域を特定するための基準点になる。
一方、既存構造物に作用する転倒モーメントに対する抵抗力を確保する上では、隅角部領域が多角形状の中心から遠い頂点を含む領域である必要はないため、凸多角形状であるか凹多角形状であるかを問わず、基本的には多角形の全頂点を含む領域が「隅角部領域」になる。凹多角形状の場合、多角形の凹の頂点は必ずしも多角形の中心から遠い位置にはならないため、捩りモーメントに対する抵抗力を高める上では、凹の頂点は新設杭が配置される隅角部領域にならないこともある。凸多角形状の場合は、基本的に全頂点が中心から遠い位置になるが、頂点の数が多い場合には必ずしも全頂点を含む領域が「隅角部領域」になるとは限らない。
新設基礎は既存構造物の平面形状に沿って構築されている既存基礎(多角形状)の前記隅角部領域に構築され、その下方に複数本の新設杭が設置される。新設基礎は原則として新設杭の設置後に、または新設杭の設置と並行して構築され、既存基礎に一体化させられる。新設杭の頭部は新設基礎内に取り込まれる。新設杭は既製杭の埋設により、または現場で構築(造成)されることにより地中に設置される。
新設基礎は既存構造物の外形線が形成する多角形の頂点に相当する隅角部とそれを挟む両側の辺に沿った隅角部領域に配置され、隅角部領域以外には配置されないため、請求項1における「新設基礎の下に複数本の新設杭が集中的に配置されている」とは、新設杭が新設基礎の下にのみ、集中的に配置され、新設基礎以外の、隣接する新設基礎間の区間には新設杭が配置されないことを言う。
新設杭に作用する荷重には新設基礎と新設杭の自重を含む軸力NL、すなわち常時鉛直荷重DLと、地震時の水平地震力によって引き起こされる転倒モーメントMと、上下地震力によって生じる鉛直荷重NSがある。鉛直荷重NSは地震時変動軸力DSと言い換えられる。転倒モーメントMと地震時変動軸力DSは地震力の向きに応じて正負(±)があるため、それぞれ±M、±DSと表される。これらの荷重から全新設杭に作用する応力度σを新設杭の断面積A、断面二次モーメントI、断面係数Zを用いて表すと、長期応力度σL=DL/A、短期応力度σs=(DL±DS)/A±M/Zとなる。ここで、上下地震力は震度k(=DS/DL)を用いて示されるから、σs=(1±k)NL/A±M/Zとも表される。
新設杭は上記の軸力を負担しながら、地震時の水平力によるせん断力を負担することから、複合応力状態になるため、新設杭に対しては複合応力を前提にした断面設計が行われる。ここで、既存構造物の周囲に配置される全新設杭の負担σsを軽減する上では、想定される外力(荷重)と仮定する新設杭の断面積Aは一定であると考えることができ、複数本の新設杭の配置状態に応じて変化する断面係数Zのみが変更し得る要因になるため、断面係数Zにのみ着目し、短期応力度σsを低減するための最も合理的な新設杭の配置状態を検証する。
そこで、既存構造物(既存基礎)の平面形状が正方形状である場合を例に取り、図2−(a)〜(c)に示す3通りの新設杭5の配置状態での新設杭5全体の断面係数Zを算出する。図2−(a)は新設杭5を既存構造物1の隅角部(既存基礎2の頂点)に配置しながら、合計24本の新設杭5を既存構造物1の外周に沿って周方向に均等(等間隔)に配置した場合、(b)は隅角部を除き、24本の新設杭5を既存構造物1の外周に沿って周方向に均等(等間隔)に配置した場合、(c)は隅角部を除き、24本の新設杭5を隅角部領域付近に集中的に配置した場合である。
図2−(a)の場合の新設杭5全体の、黒塗りの矢印で示すX1方向の断面二次モーメントIは各方向に配列する、隣接する新設杭5、5間距離を2L、1本の新設杭5の断面積をAとすれば、I=2A×0+2×2A×(2L)+2×2A×(4L)+2×2A×(6L)=584ALであり、断面係数ZはZ=I/6L=97.3ALである。同様に図2−(b)の場合の新設杭5全体のX1方向の断面二次モーメントIはI=572AL、断面係数ZはZ=I/6L=95.3ALであり、断面係数Zは(a)の断面係数Zの98%(2%減)である。(c)の場合の新設杭5全体のX1方向の断面二次モーメントIはI=632AL、断面係数ZはZ=I/6L=105.3ALであり、断面係数Zは(a)の断面係数Zの108%(8%増)で、(b)の断面係数Zの110%(10%増)である。
図2−(a)〜(c)に示す例での破線の矢印で示すY1方向の断面二次モーメントと断面係数はX1方向の断面二次モーメントと断面係数と同じであるから、図2−(a)〜(c)の中では(c)がX1方向及びY1方向の水平力に対する断面性能が最も高い配置状態であることになる。
次に図2−(a)〜(c)に示す3通りの配置状態の場合に、図3−(a)〜(c)に示すように黒塗りの矢印で示すX2方向の新設杭5全体の断面二次モーメントIと断面係数を算出する。X2方向はX1方向に対して45度、傾斜した方向である。図3−(a)の場合、X2方向に隣接する新設杭5、5間距離は√2Lであるから、I=2A×0+2×2A×(√2L)+2×2A×(2√2L)+2×2A×(3√2L)+2×2A×(4√2L)+2×2A×(5√2L)+2×2A×(6√2L)=584ALであり、断面係数ZはZ=I/6√2L=68.8ALである。
図3−(b)の場合の新設杭5全体のX2方向の断面二次モーメントIはI=572AL、断面係数ZはZ=I/(√2/2+5√2)L=73.5ALであり、断面係数Zは(a)の断面係数Zの107%(7%増)である。(c)の場合の新設杭5全体のX2方向の断面二次モーメントIはI=686AL、断面係数ZはZ=I/(5√2/2+3√2)L=88.2ALであり、断面係数Zは(a)の断面係数Zの128%(28%増)で、(b)の断面係数Zの120%(20%増)である。破線の矢印で示すY2方向の断面二次モーメントと断面係数はX2方向の断面二次モーメントと断面係数と同じである。
よって図2−(a)〜(c)の中では(c)がX2方向及びY2方向の水平力に対する断面性能が最も高い配置状態であることになる。新設杭5全体のX1方向とY1方向、及びX2方向とY2方向の断面性能が最も高いことは、既存構造物1に作用するこれら水平2方向(X1方向とX2方向)とそれに45度、傾斜した方向(Y1方向とY2方向)の転倒モーメントに対する安定性が高いことを意味する。すなわち、(c)の配置状態が多角形の中心を通り、多角形のいずれかの辺に平行な方向の転倒モーメントに対する安定性と、その方向に対して45度、傾斜した方向の転倒モーメントに対する安定性が高いことになる。
また新設杭5設置後の既存構造物1に偏心が存在し、偏心が許容偏心率内にある場合の捩りモーメントに対する抵抗力(安定性)は剛心から各新設杭5の中心までのx方向及びy方向の距離の二乗の和として評価され、その値が大きい程、抵抗力が大きい。ここで、図2−(c)(図3−(c))に示す例における剛心が平面上の中心に位置していると仮定すれば、図2−(c)では全新設杭5が、剛心からの距離が大きい既存構造物1の隅角部領域に集中していることで、(a)、(b)に示す配置例より剛心から各新設杭5の中心までのx方向及びy方向の距離の二乗の和が大きくなるため、図2−(c)に示す新設杭の配置状態が既存構造物1に作用する捩りモーメントに対する高い抵抗力を得られることが言える。
以上のことから、既存構造物1の外形線が多角形状である場合、多角形の複数の頂点に相当する隅角部を含む隅角部領域3に新設基礎4を構築し、新設基礎4に複数本の新設杭5を集中的に配置すること(請求項1)が、既存構造物1に作用する水平2方向の転倒モーメントに対する有効な新設杭5の配置状態であると言える。特に隅角部領域3が多角形の中心から遠い頂点に相当する隅角部を含む領域である場合(請求項2)が既存構造物1に作用する捩りモーメントに対する有効な新設杭5の配置状態であると言える。
結果として、特許文献4、5では特定されていない、多角形状の平面形状を持つ既存構造物1の周囲に新設杭5を設置する上での、転倒モーメントと捩りモーメントに対する効率的な配置領域が特定されたことになる。「効率的な配置状態」とは、既存構造物1の周囲に一定本数の新設杭5を設置する上で、複数本の新設杭5を転倒モーメント等に対する抵抗要素として機能させるための使用効率が高いことを言う。
新設杭5の配置領域が多角形状の隅角部領域3に集約されることで、既存構造物1の全周に分散する場合との対比では、限られた領域に対して集中的に新設杭5を設置すればよくなるため、既存構造物1の全周において新設杭5を設置する場合より既存構造物1内への影響が低減される。また新設杭5の設置が既存構造物1の外部において行えるため、既存構造物1内での生活や業務に影響を与えることなく、新設杭5の設置作業を遂行することが可能になる。併せて既存構造物1の全周に十分な敷地が確保されない場合にも、少なくとも隅角部領域3に敷地が確保されれば新設杭5を新たに設置することが可能になる。
転倒モーメントと捩りモーメントに対して有効である図2−(c)に示す新設杭5の配置例の場合、複数本の新設杭5を網羅する新設基礎4は図1に示すように既存構造物1の外形線が形成する多角形状の頂点に相当する隅角部とそれを挟む両側の2辺等に沿った隅角部領域3に構築されるため、新設基礎4は図1、図4に示すように既存基礎2の隅角部を多角形の2辺等を含む水平2方向から挟み込む等、既存基礎2に、その外周側から水平2方向に係止した状態で構築される形になる(請求項3)。この場合、既存構造物1に捩りモーメントが作用したときに、正負の向きの捩りモーメントを既存基礎2の全隅角部領域3において既存基礎2から新設基礎4に伝達し易くなるため、新設基礎4を介し、複数本の新設杭5に分散させて捩りモーメントを負担させることが可能になる。
「水平2方向に係止」とは、新設基礎4が既存基礎2の隅角部を外周側から水平2方向に包囲し、既存基礎2が既存構造物1の剛心の回りに捩り変形しようとするときに、既存基礎2が隅角部において新設基礎4に前記したX1(X2)方向とY1(Y2)方向等、互いに異なる方向を向く2方向に係止することを言う。図1に示す例のように多角形の頂点に相当する隅角部を含む既存基礎2の外周側の線(外形線)が2方向の線(辺)を持つ場合には、新設基礎4はこの2方向の各線に直交する方向に係止し、図4に示す例のように既存基礎2の多角形の頂点に相当する隅角部が複数の直線や曲線から構成されるよう場合には、これらの線を包囲するように外接することで、既存基礎2に2方向に係止する。
多角形状の複数の頂点を含む隅角部領域に新設基礎を構築し、新設基礎に複数本の新設杭を集中的に配置することで、新設杭全体の水平2方向(X1方向とX2方向)の断面性能を最も高めることができるため、既存構造物に作用する水平2方向(X1方向とX2方向)の転倒モーメントに対する安定性が高い状態に複数本の新設杭を設置することが可能である。
また隅角部領域が多角形状の中心から遠い頂点を含む領域である場合には、全新設杭が、剛心からの距離が大きい既存構造物の隅角部領域に集中していることで、剛心から各新設杭の中心までのx方向及びy方向の距離の二乗の和が大きくなるため、既存構造物に作用する捩りモーメントに対する高い抵抗力を得ることができる。
既存構造物の外形線が方形状である場合の、既存基礎を含む既存構造物と新設基礎及び新設杭の関係を示した斜視図である。 (a)〜(c)は既存構造物の周囲への複数本の新設杭の配置例であり、平面上の中心を通り、いずれかの辺に平行な方向の、全新設杭の断面二次モーメントの算出の様子を示した平面図である。 (a)〜(c)は図2−(a)〜(c)に示す新設杭の配置例における、既存構造物の平面上の対角線方向の全新設杭の断面二次モーメントの算出の様子を示した平面図である。 (a)は具体的な既存構造物下の既存杭の配置状態と新設杭の配置状態との関係を示した平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図1は多角形状の平面形状を持つ既存構造物1の平面上、外周側に位置する既存基礎2の内、多角形のいずれか複数の頂点に相当する隅角部を含む隅角部領域3に新設基礎4を構築し、各新設基礎4の下に複数本の新設杭5を集中的に配置してある既存基礎2の補強構造の施工例を示す。
図1は既存構造物1(既存基礎2)の平面形状が正方形等、方形状である場合の例を示しているが、既存構造物1の平面形状は多角形状であれば、一切、問われない。多角形をなす外形線の頂点、もしくは頂点に相当する隅角部は凸多角形の場合には外周側に向かって凸の形状をし、凹多角形の場合には内周側に向かって凹の形状をするため、いずれの場合も既存基礎2の隅角部に構築される新設基礎4は既存基礎2の水平2方向の外形線に接触し、既存基礎2の外周側から水平2方向に係止する形になる。凸の頂点に相当する隅角部に配置される新設基礎4の平面形状と、凹の頂点に相当する隅角部に配置される新設基礎4の平面形状は隅角部の外形線に沿ったL字形等になる。
図1に示すように既存基礎2の隅角部の平面形状が2方向を向く線(辺)から構成される場合、新設基礎4はその2方向の線に接触した状態で構築され、既存基礎2に一体化する。既存基礎2と新設基礎4の一体化は例えばコンクリートの斫りにより既存基礎2内から露出させた鉄筋に新設基礎4の鉄筋を連結する等により連係させ、両鉄筋を同時に包囲するようにコンクリート等を打設する等により行われる。新設基礎4はその領域内に設置される新設杭5の設置後に、または新設杭5の設置と並行して構築され、複数本の新設杭5の頭部を包囲することにより複数本の新設杭5を新設基礎4に接合する。新設杭5の種類(形態)と設置方法は問われない。
新設基礎4が既存基礎2の頂点(隅角部)を含み、既存基礎2の外周側から水平2方向に係止した状態で構築されることで、既存基礎2に捩り変形が発生しようとするときに、全新設基礎4が既存基礎2の捩り変形を阻止するように働くため、新設基礎4は既存基礎2に作用する捩りモーメントに対する抵抗力を発揮しながら、捩りモーメントを新設杭5に伝達する働きをする。
既存基礎2(既存構造物1)の平面形状が凸多角形状の場合も、凹多角形状の場合も既存構造物1に作用する捩りモーメントに対する抵抗力をより大きく確保する上では、新設基礎4が構築される隅角部領域3は多角形の中心から遠い頂点に相当する隅角部になる。既存基礎2の平面形状が凸多角形状の場合には、基本的に全隅角部領域3が多角形の中心から遠い頂点に相当する隅角部になる。
1箇所の新設基礎4に配置される新設杭5の本数は、例えば既存構造物1を補強する上で必要とされる新設杭5の本数を複数の隅角部領域3の数で分割した数になり、1箇所の新設基礎4はその複数本の新設杭5を包囲するだけの平面積を持つ。
1箇所の新設基礎4に接合される新設杭5の本数と配置状態は特に問われないが、1箇所の新設基礎4内に配置される新設杭5の本数は例えば、既存基礎2の外周に沿って周方向に均等に、ある設定された断面積Aを持つ複数本の新設杭5を配置すると仮定したときに使用される合計本数を複数の新設基礎4の数で割った本数が目安になる。図2に示す例で言えば、(a)のように既存基礎2の外周に新設杭5を周方向に均等に配置したときに24本の新設杭4を必要とする場合に、4箇所の隅角部領域3の新設基礎4に複数本の新設杭5を集約させたときに、1箇所の新設基礎4には6本の新設杭5が配置されることになる。
新設基礎4はこの既存構造物1の補強に要する、断面積Aを持つ全新設杭5の本数を新設基礎4の設置個数で分割した数の新設杭5が互いに接触することなく納まるだけの平面積を持つ。1箇所の新設基礎4内に設置される複数本の新設杭5は周面摩擦力を得る必要から、互いに隣接する新設杭5、5間に適度な間隔が確保されるが、間隔の大きさは特定されない。
図1は既存基礎2の周囲に新設基礎4を構築しながら、既存基礎2を地上構造物である上部構造22から分離させて下部構造21として整備し、上部構造22と下部構造21との間に免震装置6を介在させた場合の例を示しているが、地震等に備えた既存構造物1に対する補強工事としては既存構造物1の内部、もしくは外部に耐震(制震)補強架構を付加することもある。図1の例では既存基礎2は下部構造21になり、分離した下部構造21の上面と上部構造22の下面との間に免震装置6が挿入される。免震装置6は上部構造22の柱の下方等に配置され、免震装置6の下方に既存杭7が位置する。
図4は図1の具体例として既存構造物1下の既存杭7の配置状態と新設杭5の配置状態との関係を示す。図4では長方形(正方形)状の外形線を持つ既存基礎2の4箇所ある隅角部が、長方形の辺をなす2直線とこの2直線に交差する直線の3直線から構成されているが、この隅角部の形状に応じ、新設基礎4を既存基礎2の隅角部を取り込みながら隅角部に一体化する多角形状の平面形状に形成している。
図4においても下部構造21と上部構造22との間に免震装置6が介在しているが、免震装置6は既存基礎2の下に配置されている既存杭7の配置状態に応じ、平面上、2方向に格子状に配列し、下部構造21を構成する地中梁21a、21aの交点位置に構築されたフーチング21bと、上部構造22の下面側に形成され、フーチング21bと対になるフーチング22aとの間に配置される。
既存基礎2の外周側には、既存基礎2の外周寄りに位置するフーチング21bを既存基礎2の外周側から包囲するように地中梁21a、もしくは擁壁が連続して敷設され、既存基礎2の隅角部の位置では既存基礎2の外周寄りで連続する地中梁21a(擁壁)が外形線を区画している。新設基礎4はこの地中梁21aが区画する隅角部の外形線の外周側に構築される。
図4では(a)に示すように新設基礎4を例えば既存基礎2外周寄りの、各隅角部付近に位置する2個のフーチング21b、21bに跨る幅を持って構築している。この場合、既存基礎2の各隅角部付近に位置する2個のフーチング21b、21bとその下に配置されている複数本の既存杭7を新設基礎4が取り込む形になるため、これらのフーチング21bと既存杭7を新設基礎4に一体化させ、新設基礎4と一体的に挙動させることが可能になる。既存杭7を含む既存基礎2と新設基礎4との一体化は上記の要領で行われる。
図4では既存基礎2の外周寄りに位置し、新設基礎4に取り込まれる2個のフーチング21b、21bと、その内周側で格子状に配列する地中梁21a、21の交点に位置するフーチング21b、21bとの間に、既存基礎2の外形線がなす多角形の辺に交差する方向(対角線方向)につなぎ梁21dを架設し、既存基礎2の外周寄りのフーチング21bと内周寄りのフーチング21bとの一体性を確保している。
図4ではまた、(b)に示すように新設基礎4に、既存基礎2(下部構造21)の底版(基礎スラブ)21cの底面、もしくはその付近から地中梁2aの天端、もしくはその付近までに亘る高さ(厚さ)を与えることで、新設基礎4の剛性を特に高め、新設基礎4自体に新設基礎4に伝達された地震力の負担能力と、地盤への伝達能力を高めている。
各新設基礎4に配置される複数本の新設杭5は既存基礎2(既存構造物1)の外形線がなす多角形の辺に対して傾斜した方向に直交する方向の転倒モーメントに対する抵抗力と、捩りモーメントに対する抵抗力を高める上では、新設基礎4の平面上、多角形の対角線方向等、多角形の辺に対して傾斜した方向の直線に関して対称に配置されることが適切である。既存構造物1(既存基礎2)の平面形状が正方形状、もしくはそれに近い形状の図1、図4の例では各新設基礎4に接合される複数本の新設杭5が正方形の対角線に関して対称に配置される形になる。
1……既存構造物、2……既存基礎、
21……下部構造、21a……地中梁、21b……フーチング、21c……底版、21d……つなぎ梁、
22……上部構造、22a……フーチング、
3……隅角部領域、4……新設基礎、
5……新設杭、6……免震装置、7……既存杭。

Claims (3)

  1. 多角形状の平面形状を持つ既存構造物の平面上、外周側に位置する既存基礎の内、前記多角形のいずれか複数の頂点に相当する隅角部を含む隅角部領域において、前記既存構造物の平面の外側に、前記既存基礎に一体化する新設基礎4が構築され、この各1個の新設基礎4の下に複数本の新設杭5が集中的に配置され、この複数本の新設杭5の頭部は前記新設基礎4内にあることを特徴とする既存構造物における既存基礎の補強構造。
  2. 前記隅角部領域は前記多角形の中心から遠い頂点に相当する隅角部を含む領域であることを特徴とする請求項1に記載の既存構造物における既存基礎の補強構造。
  3. 前記新設基礎は前記既存基礎に、その外周側から水平2方向に係止した状態で構築されていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載の既存構造物における既存基礎の補強構造。
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