以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず図1を用いて、本実施の形態の電力変換装置の回路図の一例について説明する。図1を参照して、本実施の形態の電力変換装置は、入力側駆動回路1と、出力側駆動回路2と、トランス10とを主に有している。
入力側駆動回路1は、4つのスイッチング素子31A,31B,31C,31Dと、コンデンサ32Aとを有している。出力側駆動回路2は、4つの整流素子31E,31F,31G,31Hと、コンデンサ32Bと、コイル33とを有している。トランス10は、一次側巻線15と、二次側巻線16とを有している。
入力側駆動回路1においては、4つのスイッチング素子31A,31B,31C,31Dが図1のように接続されている。具体的には直列に接続されたスイッチング素子31A,31Cと、直列に接続されたスイッチング素子31B,31Dとが、並列に接続されている。スイッチング素子31Aとスイッチング素子31Cとの間には接続点11Aが、スイッチング素子31Bとスイッチング素子31Dとの間には接続点11Bが存在する。接続点11Aと接続点11Bとの間に、一次側巻線15が接続されている。なおスイッチング素子31A,31B,31C,31Dは、トランス10の一次側巻線15に正負の電圧を発生させるために交互にオンオフするよう制御されるMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子である。トランス10の一次側巻線15に発生される正負の電圧は、コンデンサ32Aに印加される入力電圧Vinにより決定される。
出力側駆動回路2においては、4つの整流素子31E,31F,31G,31Hが図1のように接続されている。具体的には直列に接続された整流素子31E,31Gと、直列に接続された整流素子31F,31Hとが、並列に接続されている。整流素子31E,31F,31G,31Hはたとえば一般公知のダイオードであり、図1においては整流素子31Eのアノードと整流素子31Gのカソードとが、また整流素子31Fのアノードと整流素子31Hのカソードとが、それぞれ接続されている。
整流素子31Eと整流素子31Gとの間には接続点12Aが、整流素子31Fと整流素子31Hとの間には接続点12Bが存在する。接続点12Aと接続点12Bとの間に、第二の巻線12が接続されている。したがって整流素子31E,31F,31G,31Hは、トランス10の二次側巻線16に発生した電圧を整流する機能を有している。また出力側駆動回路2にはコイル33およびコンデンサ32Bが接続されているが、これらは整流素子31E,31F,31G,31Hにより整流された電圧を平滑する機能を有している。具体的には、コイル33の一方端は整流素子31E,31Fのカソードに、コイル33の他方端はコンデンサ32Bの一方端に接続されている。またコンデンサ32Bの他方端は整流素子31G,31Hのアノードに接続されている。
コンデンサ32Bに印加される出力電圧Voutは、トランス10を構成する一次側巻線15と二次側巻線16との巻数比と、スイッチング素子31A,31B,31C,31Dのオンオフ時間とにより、入力電圧Vinに対し高くしたり(昇圧)または低くしたり(降圧)の制御がなされる。
次に、図2〜図8を用いて、本実施の形態の電力変換装置の具体的な構成について説明する。
図2を参照して、本実施の形態の第1例の電力変換装置100は上記のトランス10を含んでいる。トランス10は、たとえば1対の磁性コアであるI型磁性コア21およびE型磁性コア22と、複数の巻線である第一の巻線11および第二の巻線12とを主に有している。
I型磁性コア21およびE型磁性コア22は、磁性部品としてのトランス10(図1参照)を構成するために設けられた、磁性を有する部材である。I型磁性コア21はE型磁性コア22と平面視(図2の上方から見た態様)において重畳するように載置されている。
本実施の形態においては、第一の巻線11は図1の一次側巻線15に、第二の巻線12は図1の二次側巻線16に相当する。なお後述の実施の形態において、磁性部品がトランス10ではなく第一の巻線11および第二の巻線12が必ずしもトランス10の一次側巻線15および二次側巻線16に相当しない場合がある。このため本明細書においては内容統一の観点から、すべての実施の形態において、図1の一次側巻線15および二次側巻線16のそれぞれを(トランス10の構成要素でない場合も含み得る用語である)第一の巻線11および第二の巻線12と表記している。
たとえば図3および図4(C)を参照して、ここではI型磁性コア21は矩形の平板形状を有するいわゆるI型コアであり、E型磁性コア22は外足22A,22Bと中足22Cとコア連結部22Dとを含むいわゆるE型コアである。たとえば図4(C)において外足22A,22Bおよび中足22Cは図の上下方向に延び、コア連結部22Dは図の左右方向に延びる。中足22Cは外足22Aおよび外足22Bの間に挟まれるように、かつ外足22Aおよび外足22Bのそれぞれと互いに間隔をあけるように、配置されている。コア連結部22Dは外足22A,22Bおよび中足22Cと一体となっており、かつこれらに直交している。
図2および図3(A),(B)を参照して、複数(ここでは2つ)の巻線である第一の巻線11および第二の巻線12は、ここでは特にE型磁性コア22の一部である中足22Cの外側に巻回されている。図3においては一例として、第一の巻線11および第二の巻線12ともに4ターンとなっているが、第一の巻線11および第二の巻線12のターン数は任意である。
第一の巻線11および第二の巻線12は、いずれも中足22Cの外側に対する各ターン同士が互いに間隔をあけて巻回されている。そして第一の巻線11および第二の巻線12の当該各ターンにより形成される平面に重畳するように、絶縁部材63が設けられている。
なお図2に示すように、ここでは一例として第一の巻線11の方が第二の巻線12よりも図2における上側(I型磁性コア21側)に巻回されているが、このような態様に限らず、たとえば第二の巻線12の方が第一の巻線11よりも図2の上側に巻回されてもよい。いずれにせよ、複数の巻線同士の間すなわち第一の巻線11(一方の巻線)と第二の巻線12(他方の巻線)との間に挟まれた領域には、絶縁部材63が挟まれている。ここでの絶縁部材63は、第一の巻線11と第二の巻線12との双方に接している。
図3(A),(B)は、図中の一点鎖線F1および点線F2において屈曲される前の(すなわち中足22Cの外側に巻回されたのみの)第一の巻線11および第二の巻線12の状態を示している。すなわち図4(A)を参照して、たとえば第一の巻線11のうち図3(A)の左右方向に延びる部分は、その真上にI型磁性コア21が、その真下にE型磁性コア22のコア連結部22Dが(互いに間隔をあけて)配置された態様となっている。また第一の巻線11のうち図の左右方向に延びる部分の左右両端部は、屈曲されていない状態においてはその真上および真下にI型磁性コア21およびE型磁性コア22が配置されていない。また図4(B)を参照して、図3(A)の第一の巻線11が上下方向に延びる部分は、I型磁性コア21とE型磁性コア22とが互いに重畳される領域の外側の領域に配置されている。ここでは第一の巻線11についてのみ図示および説明したが、第二の巻線12についても基本的に上記と同様である。
図5および図6を参照して、図3および図4に示す第一の巻線11および第二の巻線12が、図3および図5の一点鎖線F1において紙面奥向きに、図3および図5の点線F2において紙面手前向きに屈曲される。ここでは、たとえば図3(A)の一点鎖線F1の左側および点線F2の右側の領域は、一点鎖線F1と点線F2とに挟まれた領域に対して互いにほぼ直交するように屈曲される。
その結果、特に図6(A)に示すように、屈曲前に図3(A)において一点鎖線F1の左側および点線F2の右側にあった第一の巻線11の領域は、磁性コアの延びる方向すなわちE型磁性コア22の中足22Cの延びる図の上下方向に沿うように延びる領域を、図6(A)の左右側に有することになる。また特に図6(B)に示すように、第一の巻線11は4ターン巻回されているため、当該断面図においては互いに間隔をあけて各ターンの第一の巻線11が図の上下方向に並んでいる。また第一の巻線11のE型磁性コア22側には、絶縁部材63の層が配置される態様となっている。
以上のように、本実施の形態の第一の巻線11、第二の巻線12およびI型磁性コア21、E型磁性コア22は図3〜図6に示す態様を有するため、正確にはいずれの断面においても図2に示す態様とはなっていない。図2に示す態様は、図3(A)および図5(A)中の矢印IIに示す位置から当該矢印の方向に見た側面図に近い。しかし本明細書においては、第一の巻線11、第二の巻線12およびI型磁性コア21、E型磁性コア22の位置関係を見やすくかつわかりやすくする観点から、以降の各実施の形態においても、図2に示す側面図のような擬似的な断面図を用いて、電力変換装置100の構成を説明することとする。
再度図2を参照して、図5および図6に示すように一点鎖線F1および点線F2において2本の第一の巻線11および第二の巻線12が屈曲される。これにより、第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれの一方の端部すなわち図2における最下部と一点鎖線F1による第1の屈曲部との間の第1の部分、および上記の各巻線の他方の端部すなわち図2における最上部と点線F2による第2の屈曲部との間の第2の部分は、磁性コア21,22の延びる図2の上下方向に沿って延びる。また上記の第1の屈曲部から第1の部分は図2の下側に延びているのに対し、第2の屈曲部から第2の部分は図2の上側に延びている。すなわち第1の部分と第2の部分とは互いに反対方向に延びている。したがって図2においては、2本の第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれは、いわゆるS字形状となるように屈曲されている。また第一の巻線11および第二の巻線12の屈曲に伴い、これらの間に挟まれる絶縁部材63も、第1および第2の屈曲部に対応する位置において屈曲している。
なおここでは、図2のような断面図における第一の巻線11の、磁性コア21,22の延在方向(図2の上下方向)に沿ってみたときの最下部11E1を一方の端部、最上部11E2を他方の端部と定義する。また図2の断面図における第一の巻線11の、最下部11E1に近い側の屈曲部を第1の屈曲部11T1、最上部11E2に近い側の屈曲部を第2の屈曲部11T2と定義する。最下部11E1と第1の屈曲部11T1との間の領域が第1の部分であり、第2の屈曲部11T2と最上部11E2との間の領域が第2の部分である。同様にここでは、図2のような断面図における第二の巻線12の、磁性コア21,22の延在方向(図2の上下方向)に沿ってみたときの最下部12E1を一方の端部、最上部12E2を他方の端部と定義する。また図2の断面図における第二の巻線12の、最下部12E1に近い側の屈曲部を第1の屈曲部12T1、最上部12E2に近い側の屈曲部を第2の屈曲部12T2と定義する。最下部12E1と第1の屈曲部12T1との間の領域が第1の部分であり、第2の屈曲部12T2と最上部12E2との間の領域が第2の部分である。
図2に示すように、S字形状となるように屈曲されることにより、第一の巻線11(一方の巻線)の第1の部分は第二の巻線12(他方の巻線)の第1の部分よりも磁性コア21,22に対して外側に配置されている。また第二の巻線12の第2の部分は第一の巻線11の第2の部分よりも磁性コア21,22に対して外側に配置される。このように、複数の巻線11,12のいずれもが、それら複数の巻線11,12すべての中で、I型磁性コア21およびE型磁性コア22に対して最も外側に配置される領域を含むように屈曲されている。
第一の巻線11および第二の巻線12ともに、たとえば図2などに示されないプリント基板を貫通することにより、当該プリント基板(に形成された電極パッドなど)と電気的に接続されている。第一の巻線11および第二の巻線12がプリント基板に向けて延びる部分は、引出し部13,14として他の素子などに電気的に接続可能となっている。第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれの引出し部13,14は、たとえば図3(A),(B)を再度参照して、中足22Cの周りを巻回するように延びる第一の巻線11および第二の巻線12と短絡することなく交差可能とすべく設けられた絶縁部材65により形成可能となっている。なお絶縁部材65は、たとえばポリエステルまたはポリイミド材料による絶縁性のテープ、またはシリコーン材料などの絶縁性のシートにより形成されることが好ましい。
図2を再度参照して、第一の巻線11の第二の巻線12と対向する側と反対側の表面と、磁性コア(I型磁性コア21およびE型磁性コア22)との間には、絶縁部材61が配置されている。絶縁部材61は第一の巻線11と磁性コア(I型磁性コア21およびE型磁性コア22)との双方に接している。また第二の巻線12の第一の巻線11と対向する側と反対側の表面と、磁性コア(E型磁性コア22)との間には、絶縁部材62が配置されている。絶縁部材62は第二の巻線12とE型磁性コア22との双方に接している。
絶縁部材61,62は絶縁部材63と同一の絶縁材料により形成されている。具体的には、絶縁部材61,62,63は、アミラド紙などの絶縁紙を屈曲させたものであってもよい。あるいは絶縁部材61,62,63は、ポリフェニレンサルファイドまたはポリブチレンテレフタレートなどの樹脂材料を成形することにより形成されたものであってもよい。
なお実際には図6(A),(B)などに示すように、断面図においては第一の巻線11および第二の巻線12はそれぞれのターン数に応じて複数互いに間隔をあけて視認可能な態様となる。しかし図2においては簡略化の観点からそのような態様の図示を省略し、その延びる方向において連続的に配置されるものとしている。
また図2においてはI型コアとしてのI型磁性コア21がE型コアとしてのE型磁性コア22よりも図の上下方向の寸法が小さい(厚みが薄い)ことを考慮して、図2の左右方向に延びる第一の巻線11および第二の巻線12よりも上側の領域までE型磁性コア22が延びるように図示がなされている。しかしこのような態様に限らず、たとえば図7を参照して、本実施の形態の第2例としての電力変換装置101は、図2の左右方向に延びる第一の巻線11および第二の巻線12の上側全体にI型磁性コア21が、下側全体にE型磁性コア22が配置される態様であってもよい。図7においては、E型磁性コア22の中足22Cの最も上側の領域の周囲に巻線11,12および絶縁部材61,62,63が巻回されることになる。しかし図7の電力変換装置101は、上記以外の点においては基本的に図2の本実施の形態の第1例としての電力変換装置100と同様であるため、同一の構成要素には同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
ここで図8の分解斜視図を用いて、図2に示す電力変換装置100の組み立て方法の概略を説明する。図8を参照して、上下方向に積層される各構成部材のうち最下層として、E型磁性コア22が準備される。E型磁性コア22は、コア連結部22Dが最下部となり、その上側に外足22A,22Bおよび中足22Cが突起するように載置されることが好ましい。
次に、上記のように所望の第1および第2の屈曲部(たとえば一点鎖線F1および点線F2)においていわゆるS字形状となるようにあらかじめ屈曲された状態で、中足22Cの外側に巻回されるように、絶縁部材62、第二の巻線12、絶縁部材63、第一の巻線11および絶縁部材61がこの順に積層される。ここで、絶縁部材62、第二の巻線12、絶縁部材63、第一の巻線11、絶縁部材61のそれぞれには、中足22Cを貫通させるための貫通孔のような開口部62C,12C,63C,11C,61Cが形成されている。これらの開口部62C,12C,63C,11C,61Cを中足22Cが貫通する態様となっている。なお磁性部品がトランス10(図1参照)である場合、第一の巻線11は一次側巻線15(図1参照)に、第二の巻線12は二次側巻線16(図1参照)に、それぞれ相当する。
以上の図8においては、絶縁部材61,62,63が互いに別個の部材として準備されている。しかしながら、たとえばS字形状に屈曲された第一の巻線11および第二の巻線12が、絶縁性の高いポリフェニレンサルファイドなどの樹脂材料によりインサートモールドされることにより、絶縁部材61,62,63が一体の部材として供給され、それらが図2と同様に第一の巻線11および第二の巻線12に重畳された構成とされてもよい。
その後、絶縁部材61の上方から、E型磁性コア22の外足22A,22Bおよび中足22Cを跨ぎこれらに重畳するように、平板矩形状のI型磁性コア21が載置される。
なお図8においては、たとえば絶縁部材61および第一の巻線11などの屈曲により図の上下方向に延びる部分の上下方向に関する寸法が、図2などに比べて非常に短く示されている。これは絶縁部材63,62、第二の巻線12などの多くの部材を上下方向に重ねて図示するために上下方向の寸法を調整しているためである。つまり短くはなっているが図8の巻線11,12などが上下方向に延びる部分は、図2における巻線11,12などが上下方向に延びる部分に相当する。したがって実際は図2に示すように、たとえば第一の巻線11の上側に向けて延びる部分の上下方向の寸法は、巻線11,12の上方に配置されるプリント基板を貫通可能な程度に長くなっている。他の部材の上下方向の寸法についても同様に、実際は図8に示すよりも長くなっている。
次に、本実施の形態の電力変換装置の作用効果について説明する。
以上に説明したように、本実施の形態の磁性コア21,22を含む電力変換装置100は、複数の巻線すなわち第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれがS字形状を有するように屈曲されている。これにより、第1の屈曲部から延びる第1の部分と、第2の屈曲部から延びる第2の部分とを、磁性コア21,22の延びる方向に沿って延びるようにトランス10を小型化することができる。つまり第一の巻線11および第二の巻線12を含む電力変換装置100の全体を、I型磁性コア21とE型磁性コア22とを重畳した構造物と同程度にまで、小型化することができる。
また本実施の形態においては、第一の巻線11と第二の巻線12とのいずれもが、巻線11,12の中で磁性コア21,22に対して最も外側に配置される領域を含むように屈曲されている。具体的には上記のように、第一の巻線11は第1の部分が、第二の巻線12は第2の部分が、磁性コア21,22に対して(他方の巻線よりも)外側に配置され外側に露出している。このため、巻線11,12のいずれもその発熱をこの外側に露出している部分から外部の大気中に高効率に放熱することができる。
また図2などにおいては、I型磁性コア21の左側の表面およびE型磁性コア22の右側の表面が外側に露出している。またI型磁性コア21の最上面およびE型磁性コア22の最下面も外側に露出している。このように磁性コア21,22の表面の少なくとも一部が、外側に露出する部分を有している。このため、磁性コア21,22のいずれもその発熱をこの外側に露出している部分から外部の大気中に高効率に放熱することができる。
さらに本実施の形態においては、第一の巻線11と第二の巻線12との間、および巻線11,12と磁性コア21,22との間に絶縁部材61,62,63が挟まれるように配置される。このため、第一の巻線11と第二の巻線12との間の電気的な絶縁状態、および巻線11,12と磁性コア21,22との間の電気的な絶縁状態を確保することができる。
以上により、本実施の形態の電力変換装置100は、トランス10の小型化と、巻線11,12間の絶縁性と、巻線11,12および磁性コア21,22の発熱に対する高い放熱性とを兼ね備えることができる。
次に本実施の形態における、特にトランス10の各構成部品の電気的な絶縁性について説明する。図2を再度参照して、本実施の形態の電力変換装置100においては、E型磁性コア22とS字形状の第二の巻線12との間にはL字形状に屈曲された絶縁部材62が挟まれている。これによりE型磁性コア22と第二の巻線12とは、互いに電気的に絶縁される。ともにS字形状を有する第二の巻線12と第一の巻線11との間にはS字形状の絶縁部材63が挟まれており、これにより第二の巻線12と第一の巻線11とは互いに電気的に絶縁される。また図2の左右方向に延びる巻線11,12の真上の部分のE型磁性コア22またはI型磁性コア21と、S字形状の第一の巻線11との間には、図2においてL字形状に屈曲された絶縁部材61が挟まれている。これにより第一の巻線11とその真上の磁性コア21,22とは、互いに電気的に絶縁される。絶縁部材61,62,63のそれぞれの材質および厚みを制御することにより、第一の巻線11、第二の巻線12、I型磁性コア21およびE型磁性コア22の各部材間に必要な絶縁性能を満足させることができる。絶縁性能は、たとえば第一の巻線11と第二の巻線12との間の絶縁耐圧として2000Vの電圧を1分間印加可能な耐圧として規定されている。このため、たとえば絶縁部材61,62,63が10kV/mm以上の絶縁耐圧特性を有する樹脂材料からなる場合には、(特に第一の巻線11と第二の巻線12との間の絶縁部材63の)厚みを0.2mm以上とすれば、所望の絶縁耐圧特性を得ることができる。
次に本実施の形態における、特にトランス10の各構成部品の放熱性について説明する。基本的に第一の巻線11、第二の巻線12、I型磁性コア21およびE型磁性コア22の発熱は、その外側に向けて露出している表面から大気中に放熱される。したがって、たとえば発熱する2つの部材間に挟まれた領域などは、その表面が外側に向けて露出しないため、放熱性が低下する。
したがって再度図2を参照して、たとえば第一の巻線11は、上記の第2の部分はI型磁性コア21と第二の巻線12とに挟まれているため放熱しにくいが、上記の第1の部分は表面が外側に向けて露出しておりこの部分からの放熱性が高い。したがって特に第一の巻線11は第1の部分から高効率に放熱可能である。同様に、たとえば第二の巻線12は、上記の第1の部分はE型磁性コア22と第一の巻線11とに挟まれているため放熱しにくいが、上記の第2の部分は表面が外側に向けて露出しておりこの部分からの放熱性が高い。したがって特に第二の巻線12は第2の部分から高効率に放熱可能である。このため第一の巻線11および第二の巻線12の双方が高効率に放熱可能な外部に向けて露出した領域を有していることになり、巻線11,12の双方が良好な放熱性を有することとなる。
実施の形態2.
図9〜図10を用いて、本実施の形態の第1例の電力変換装置の具体的な構成について説明する。
図9を参照して、本実施の形態の第1例の電力変換装置200は、実施の形態1の電力変換装置100に対して、プリント基板41、筐体42、側壁43,44、高放熱性絶縁部材64などをさらに有する点で異なっている。
本実施の形態においては、複数の側壁43,44は、筐体42の一部として配置されており、言い換えれば、筐体42と複数の側壁43,44とは一体として形成されている。側壁43は図9における磁性コア21,22および巻線11,12などの外側(右側)に、I型磁性コア21およびE型磁性コア22と同じく図9の上下方向(鉛直方向)に支柱状に延びる領域である。同様に、側壁44は図9における磁性コア21,22および巻線11,12などの外側(左側)に、I型磁性コア21およびE型磁性コア22と同じく図9の上下方向(鉛直方向)に支柱状に延びる領域である。図9中の点線が、筐体42における側壁43,44とそれ以外の領域との境界となる。筐体42は、たとえばアルミニウム製のダイキャストを用いて、側壁43,44と一体となるように形成することができる。
プリント基板41は、電力変換装置100全体に含まれる回路および素子などを載置および実装するための土台となる平板状の部材である。すなわちプリント基板41には、図1に示されるスイッチング素子31A〜31D、整流素子31E〜31Hなどの半導体素子が電気的に接続されている。またプリント基板41には、図9では図示省略されているが図1に示されるコンデンサ32A,32B、および他の電子部品なども、電気的に接続されている。より具体的には、スイッチング素子31A〜31Dおよび整流素子31E〜31Hは、ネジ51により筐体42に固定され、配線53によりプリント基板41と電気的に接続される。またプリント基板41はネジ52により筐体42の特に図9においては側壁43,44に固定されている。このことから側壁43,44は、プリント基板41をネジ52で筐体42に固定するための支柱として機能する。
本実施の形態の第1例においては、E型磁性コア22は筐体42の一部の領域の上に載置されており、I型磁性コア21はE型磁性コア22と平面視(図9の上方から見た態様)において重畳するように載置されている。
この、側壁43,44以外の筐体42の部分は、放熱器として機能する。すなわち筐体42の一部の領域の上にE型磁性コア22などが載置されることにより、E型磁性コア22は、その延びる方向(図9における上下方向)に関する一方の(図9の下側の)端面に接するように配置される。筐体42は、たとえばその下側の領域が空冷または水冷により冷却されることにより、これが接するトランス10の構成部品およびスイッチング素子31A〜31Dなどの発熱を高効率に外部に放熱することができる。
ただし上記のように複数の側壁43,44は筐体42と一体として形成される。このため側壁43,44も基本的にアルミニウムなどの金属製であり放熱性を有している。
なお上記の第1の部分は図9におけるE型磁性コア22の左側に、上記の第2の部分は図9におけるE型磁性コア22およびI型磁性コア21の右側に、それぞれ配置されている。また第一の巻線11および第二の巻線12ともに、上記の第2の部分はプリント基板41を貫通することにより、プリント基板41(に形成された図示されない電極パッドなど)と電気的に接続されている。
本実施の形態においても図9に示すように、S字形状となるように屈曲されることにより、第一の巻線11の第1の部分は第二の巻線12の第1の部分よりも磁性コア21,22に対して外側に配置されている。また第二の巻線12の第2の部分は第一の巻線11の第2の部分よりも磁性コア21,22に対して外側に配置される。
第一の巻線11および第二の巻線12が巻回された磁性コア21,22は、筐体42上の、特に支柱としての1対の側壁43,44の間に挟まれた領域に載置されている。ここで、複数の側壁43,44のそれぞれと第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれとの双方に接するように、複数の巻線(第一の巻線11および第二の巻線12)の外側には、高放熱性絶縁部材64が配置されている。このようになっているため、2つの巻線のそれぞれにおいて、互いに他方よりも外側に配置される領域(第一の巻線11の第1の部分および第二の巻線12の第2の部分)が、その外側の高放熱性絶縁部材64に接している。
高放熱性絶縁部材64は、I型磁性コア21および(第一の巻線11および第二の巻線12が水平に延びる領域の上側での)E型磁性コア22と、その左側の側壁44との間の領域、および(第一の巻線11および第二の巻線12が水平に延びる領域の下側での)E型磁性コア22とその右側の側壁43との間の領域に配置されている。すなわち高放熱性絶縁部材64は、側壁43,44と磁性コア21,22との双方の少なくとも一部に接するように両者の間に挟まるように配置されている。
また高放熱性絶縁部材64は、第一の巻線11の第1の部分とその外側すなわち左側の側壁44との間の領域、および第二の巻線12の第2の部分とその外側すなわち右側の側壁43との間の領域に配置されている。すなわち高放熱性絶縁部材64は、側壁43,44と巻線11,12との双方の少なくとも一部に接するように両者の間に挟まるように配置されている。
言い換えれば、複数の巻線11,12のそれぞれにおける最も外側に配置される領域は、高放熱性絶縁部材64を介して放熱器としての筐体42(側壁43,44)に接触されている。ここで第一の巻線11の最も外側に配置される領域とは上記の第1の部分であり、第二の巻線12の最も外側に配置される領域とは上記の第2の部分である。
さらに言い変えれば、高放熱性絶縁部材64は、第一の巻線11、第二の巻線12および磁性コア21,22のそれぞれの外側のみに配置されている。なおここで第一の巻線11、第二の巻線12の外側とは、当該第一の巻線11、第二の巻線12と図9の上下方向に関する位置(座標)が等しい位置において、第一の巻線11、第二の巻線12よりも磁性コア21,22に対して外側の位置に高放熱性絶縁部材64が配置されることを意味するものとする。たとえば第1の部分に対して図9の真上の領域においては、第一の巻線11および第二の巻線12よりもやや内側に高放熱性絶縁部材64が配置される場合もあるが、これについては第一の巻線11および第二の巻線12よりも内側に高放熱性絶縁部材64が配置されるものとは考えないものとする。そして第1および第2の屈曲部を有する2本の第一の巻線11、第二の巻線12のいずれもが、それぞれの一部において高放熱性絶縁部材64に接するように配置されている。すなわち第一の巻線11はその第1の部分が、第二の巻線12はその第2の部分が、高放熱性絶縁部材64に接するように配置されている。
高放熱性絶縁部材64は、絶縁部材61,62,63よりも熱伝導率が高い。具体的には、たとえば絶縁部材61,62,63として上記の樹脂材料が用いられる場合、その熱伝導率は一般的に0.3W/mK以下とされる。高放熱性絶縁部材64はそれよりも高い熱伝導率であり、特に0.5W/mK以上の熱伝導率を有することが好ましい。
また高放熱性絶縁部材64は、高い絶縁性能とともに、基本的にたとえば第一の巻線11と側壁43との隙間を埋めるように供給可能な流動性を有する材質により形成されることが好ましい。すなわち高放熱性絶縁部材64は、以上の熱伝導性、絶縁性および流動性を満足するエポキシ系樹脂またはシリコーン系樹脂と、絶縁性のフィラーとを混合した組成物により形成されることが好ましい。
ここで図10の分解斜視図を用いて、図9に示す電力変換装置200の組み立て方法の概略を説明する。図10を参照して、互いに対向する一対の側壁43,44は、筐体42(の側壁43,44以外の領域)の上に載置され、これらの側壁43,44と、平面視において側壁43,44に直交する方向に延びる互いに対向する一対の他の壁面とが、後述するコア21,22などを四方から囲む領域として形成される。この四方から囲む領域と、筐体42(の側壁以外の領域)とが一体となるように形成される。
次に、側壁43,44を含む壁面に四方から囲まれる領域内に、たとえばE型磁性コア22が入れられる。E型磁性コア22は、コア連結部22Dが最下部となり、その上側に外足22A,22Bおよび中足22Cが突起するように載置されることが好ましい。
以降は実施の形態1と同様に、中足22Cの外側に巻回されるように、あらかじめ屈曲された絶縁部材62、第二の巻線12、絶縁部材63、第一の巻線11および絶縁部材61がこの順に積層される。ここでも開口部62C,12C,63C,11C,61Cを中足22Cが貫通する態様となっている。
その後、絶縁部材61の上方から、E型磁性コア22の外足22A,22Bおよび中足22Cを跨ぎこれらに重畳するように、平板矩形状のI型磁性コア21が載置される。その後、図示されないが上記の高い熱伝導性、絶縁性および流動性を満足する材質としての高放熱性絶縁部材64が、側壁43,44を含む壁面に四方から囲まれる領域内に供給される。これにより当該四方から囲まれる領域内の隙間が高放熱性絶縁部材64で埋められ、図9に示す態様となる。
次に、図10中に示されないがたとえば図9に示すプリント基板41が、ネジ52により側壁43,44に固定される。また第一の巻線11がプリント基板41を貫通してその上方に引き出されることにより引出し部13が、第二の巻線12がプリント基板41を貫通してその上方に引き出されることにより引出し部14が、それぞれ形成される。引出し部13,14は一般公知のはんだ付け等によりプリント基板41に固定される。さらに図9に示すように、スイッチング素子31A〜31Dなどから延びる配線53などが、プリント基板41を貫通しはんだ付け等されることにより、プリント基板41に固定される。
以上の各点において、本実施の形態の第1例の電力変換装置200は実施の形態1の電力変換装置100と異なっているが、これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じである。このため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の第1例の電力変換装置の作用効果について説明する。本実施の形態においては実施の形態1と同様の作用効果の他、下記の作用効果を奏する。
本実施の形態においては、実施の形態1において第一の巻線11および第二の巻線12の磁性コア21,22に対して(他方の巻線よりも)外側に配置され外側に露出している部分(最も外側に配置される領域)が、高放熱性絶縁部材64を介して放熱器としての筐体42(側壁43,44)に接触されている。このため、巻線11,12の発熱を高放熱性絶縁部材64から側壁43,44に高効率に放熱することができる。側壁43,44は筐体42と一体として形成されているため、筐体42と同様に放熱器として機能する。高放熱性絶縁部材64の熱伝導率を0.5W/mK以上とすることにより、高放熱性絶縁部材64から側壁43,44への放熱性を確実に向上させることができる。巻線11,12の外側のみに高放熱性絶縁部材64が配置され、巻線11,12のいずれもがその少なくとも一部(互いに他方の巻線12,11に対して外側に配置される第1または第2の部分)において高放熱性絶縁部材64に接するように配置される。このように本実施の形態においては巻線11,12のいずれもが他方よりも外側に配置される領域を有し、その外側に接するように放熱性の高い部材が配置される構成となっていることにより、巻線11,12の発熱を高放熱性絶縁部材64から側壁43,44に高効率に放熱することができる。
また本実施の形態においては特に、高放熱性絶縁部材64が巻線11,12のたとえば第1および第2の部分の外側のみに配置されている。すなわちコア21,22に対して巻線11,12の第1の部分の外側のみに高放熱性絶縁部材64が配置され、たとえば巻線11,12の第1の部分の内側(コア21,22側)には高放熱性絶縁部材64が配置されていない。巻線11,12の第2の部分についても同様にその外側のみに高放熱性絶縁部材64が配置されている。これにより、第1および第2の部分の内側にも高放熱性絶縁部材64を配置する場合に比べて高放熱性絶縁部材64の材料費による製造コストを削減することができる。
また特にE型磁性コア22は、その延びる方向に関する一方(下側)の端部が放熱器としての筐体42に接するように配置されている。このため、E型磁性コア22はその一部が直接筐体42に接するため、E型磁性コア22から筐体42への放熱効率が高められる。なおI型磁性コア21およびE型磁性コア22の一部は高放熱性絶縁部材64を挟んで側壁43,44に接続されている。このため磁性コア21,22の発熱の一部を、高放熱性絶縁部材64を介して速やかに側壁43,44へ放熱させることもできる。
さらに本実施の形態の第1例においては側壁43,44が筐体42と一体として形成されている。このため側壁43,44から筐体42への熱伝導がより容易になり、巻線11,12の放熱性をさらに向上することができる。
以上により、本実施の形態の電力変換装置100,101は、トランス10の小型化と、巻線11,12間の絶縁性と、巻線11,12および磁性コア21,22の発熱に対する高い放熱性とを兼ね備えることができる。
次に、本実施の形態の第1例におけるトランス10の各構成部品の電気的な絶縁性について説明する。E型磁性コア22は、その下側の端部が筐体42に接触しており、筐体42と同電位となる。また本実施の形態においても実施の形態1と同様に、絶縁部材61,62,63により、第一の巻線11、第二の巻線12、I型磁性コア21およびE型磁性コア22の各部材間に必要な絶縁性能を満足させることができる。
再度図9を参照して、図の左右方向に延びる絶縁部材61の最も左側の端部61Aは、第一の巻線11の第1の部分よりも図9の左側に延びるように形成されている。また図の左右方向に延びる絶縁部材62の最も右側の端部62Aは、第二の巻線12の第2の部分よりも図9の右側に延びるように形成されている。さらに図の上下方向に延びる絶縁部材62の最も下側の端部62Aは、第二の巻線12の第1の部分の最下部よりも図9の下側に延びるように形成されている。さらに図の上下方向に延びる絶縁部材63の最も下側の端部63Aは、第二の巻線12の第1の部分の最下部よりも図9の下側に延びるように形成されている。
このように巻線11,12に対して突起した端部61A,62A,63Aを有するため、これらの端部61A,62A,63Aとそれらが隣り合う巻線11,12との間に隙間が形成される。この隙間は、トランス10を構成する巻線11,12などの各部材が側壁43,44に囲まれた領域内に入れられた後に、高放熱性絶縁部材64を構成する流動性に優れた材料の供給により充填される。高放熱性絶縁部材64は放熱性とともに絶縁性を有するため、これが挟まれたたとえば第一の巻線11と側壁44との間の領域などは、高い放熱性とともに高い電気的絶縁性を確保することができる。この隙間に供給される高放熱性絶縁部材64の厚みは、上記の端部61A,62A,63Aが図9において絶縁部材61,62,63の延びる方向に沿う寸法にほぼ等しくなる。したがって、当該端部61A,62A,63Aの延びる長さを制御することにより、高放熱性絶縁部材64の厚みを制御することができ、高放熱性絶縁部材64による絶縁性を制御することができる。
次に、本実施の形態の第1例におけるトランス10の各構成部品の放熱性について説明する。E型磁性コア22は、筐体42と接触する下面から筐体42へ直接放熱する経路と、高放熱性絶縁部材64を介して側壁43へ放熱する経路とを有している。I型磁性コア21は、高放熱性絶縁部材64を介して側壁44へと放熱する経路を有している。磁性部品を構成するI型磁性コア21およびE型磁性コア22の発熱は体積に比例する。このため、放熱経路が1つのみであるI型磁性コア21をI型コアとし、放熱経路が2つ存在するE型磁性コア22をE型コアとすることにより、放熱経路が2つ存在するE型磁性コア22の体積を放熱経路が1つのみであるI型磁性コア21の体積よりも大きくすることができる。
第一の巻線11は、図9の左下の第1の部分から高放熱性絶縁部材64を介して側壁44に放熱され、第二の巻線12は、図9の右上の第2の部分から高放熱性絶縁部材64を介して側壁43に放熱される。側壁43は、図9の上下方向に関する寸法が比較的長い。このため、たとえば第二の巻線12の第2の部分からの発熱をより優先的に側壁43から放熱する効率をより高める観点により、側壁43は、特に下方(図9の左右方向に延びる巻線11,12よりも下側の領域)において上方よりも図の左右方向の幅が広くなるように形成されていてもよい。一方、図9の側壁44はこのような構成とされていない。このようにすれば、第2の部分からの第二の巻線12の発熱を側壁43を介してその下側の筐体42に達するように放熱する効率をいっそう高めることができる。
さらに、絶縁部材61,62,63は高放熱性絶縁部材64よりも放熱性(熱伝導率)が低い。絶縁部材61,62,63には高放熱性絶縁部材64のような高い放熱性は要求されないため、その材料の選択の自由度を高めることができる。したがって、絶縁部材61,62,63を高放熱性絶縁部材64よりも低コストな材料により形成することができ、電力変換装置200全体のコストを低減させることができる。また絶縁部材61,62,63の材料の選択の自由度を高めることにより、たとえば巻線11,12および磁性コア21,22と絶縁部材61,62,63との密着性を高める工夫が必ずしも要求されなくなり、両者を密着させるための接着剤などを用いる必要がなくなる。
次に図11〜図12を用いて、本実施の形態の第2例の電力変換装置の具体的な構成について説明する。
図11を参照して、本実施の形態の第2例の電力変換装置201は、基本的には第1例の電力変換装置200と同様の構成を有している。しかし電力変換装置201においては、筐体42と側壁43,44とが一体ではなく、これらは互いに別体となっている。すなわち放熱器としての筐体42は、E型磁性コア22よりも図11の下側に配置される領域のみに配置されている。ここへ図11の上下方向に延びる側壁43,44のそれぞれの、当該延びる方向に関する一方(下側)の端面が接するように配置される。筐体42上の側壁43,44は、ネジ51により筐体42の最上面上に固定されている。
側壁43は、第1例と同様に、特に高放熱性絶縁部材64と互いに接する領域よりも図11の下側の領域において、他の領域よりも図の左右方向に関する幅が広くなっている。しかし図11においては、側壁44も側壁43と同様に図11の下側の領域の幅が広くなっている。
すなわち第2例においては、E型磁性コア22および複数の側壁43,44の延びる図11の上下方向に関する一方(下側)の端面に接するように、放熱器としての筐体42が配置されている。また複数の側壁43,44は、最下部の筐体42と接する部分において、最下部以外の領域に比べて、その延びる方向(上下方向)に交差する方向(図11の左右方向)に拡がる態様の接合部43C、44Cを有している。
また第2例においては、第1例において高放熱性絶縁部材64が配置される、第1の部分における(第二の巻線12より外側の)第一の巻線11と側壁44との間の領域に、高放熱性絶縁部材としての絶縁部材シート66が配置されている。同様に、第2例においては、第1例において高放熱性絶縁部材64が配置される、第2の部分における(第一の巻線11よりも外側の)第二の巻線12と側壁43との間の領域に、高放熱性絶縁部材としての絶縁部材シート66が配置されている。すなわち第2例においては、複数の側壁43,44のそれぞれと、複数の巻線11,12のそれぞれとの双方に接するように、複数の巻線11,12の外側に配置された絶縁部材シート66を有している。
絶縁部材シート66は、絶縁部材61,62,63よりも熱伝導率が高い、柔らかいシートタイプの部材である。
なお第1例においては、図9の左右方向に延びる巻線11,12よりも上方の領域において、I型磁性コア21およびE型磁性コア22の一部と側壁44との間に挟まれる領域に高放熱性絶縁部材64が配置されている。同様に第1例においては、図9の左右方向に延びる巻線11,12よりも下方の領域において、E型磁性コア22の一部と側壁43との間に挟まれる領域にも高放熱性絶縁部材64が配置されている。しかしながら第2例においては、これらの領域には高放熱性絶縁部材64および絶縁部材シート66のいずれも配置されておらず、隙間が形成されている。
以上の各点において、第2例の電力変換装置201は第1例の電力変換装置200と異なっているが、これ以外の第2例の構成は、第1例の構成とほぼ同じである。このため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
ここで図12の概略断面図を用いて、図11に示す電力変換装置201の組み立て方法の概略を説明する。図12を参照して、まず筐体42の最上面上の一部にE型磁性コア22が、コア連結部22Dが最下部となり、その上側に外足22A,22Bおよび中足22Cが突起するように載置される。
次に、実施の形態1などと同様に所望の第1および第2の屈曲部(たとえば一点鎖線F1および点線F2)においていわゆるS字形状となるようにあらかじめ屈曲された状態で、中足22Cの外側に巻回されるように、絶縁部材62、第二の巻線12、絶縁部材63、第一の巻線11および絶縁部材61がこの順に積層される。ここで実施の形態1などと同様に、中足22Cが開口部62C,12C,63C,11C,61Cのそれぞれを貫通する態様となる。その後、絶縁部材61の上方から、E型磁性コア22の外足22A,22Bおよび中足22Cを跨ぎこれらに重畳するように、平板矩形状のI型磁性コア21が載置される。
次に、図12に示すように一方の面(最終的にセットされた後における内側の面)の一部の領域(側壁44は下側の領域、側壁43は上側の領域)に絶縁部材シート66が貼り付けられた側壁44,43が、筐体42の最上面上の一部に、ネジ51(図11参照)により固定される。このとき、先に載置された第一の巻線11の第1の部分の表面上、および第二の巻線12の第2の部分の表面上に絶縁部材シート66が図中の矢印の方向に押しつけられ接触するように、側壁43,44が筐体42に固定される。
絶縁部材シート66を構成する材料は、熱伝導性が(絶縁部材61,62,63よりも)高く柔らかいシート状の部材であり、熱伝導率および絶縁耐圧の特性により選定される。たとえば絶縁部材シート66は、熱伝導率が1.8W/mK以上であり、絶縁耐圧が22kV/mm以上である低高度放熱シリコーンゴムにより形成される。あるいは絶縁部材シート66は、たとえば熱伝導率が1W/mK以上、絶縁耐圧が10kV/mm以上の放熱スペーサにより形成されてもよい。
さらに図12に示すように側壁44,43の上面上にプリント基板41が載置され、ネジ52(図11参照)により固定される。このとき第一の巻線11および第二の巻線12の最上部がプリント基板41を貫通してプリント基板41の上方に引出し部13,14として突き出し可能な構成となることが好ましい。
なお図12においては、当初から(筐体42上へのセットの時点で)第一の巻線11の第1の部分(左下部)と第二の巻線12の第2の部分(右上部)とが、筐体42の主表面に対してほぼ垂直な方向に(図12の上下方向に)延びるようにされている。しかしたとえば、側壁43,44を巻線11,12に押しつける前においては第一の巻線11の第1の部分(左下部)と第二の巻線12の第2の部分(右上部)とが筐体42の主表面に対して斜め方向に(それぞれが対向する側壁43,44側に傾くように)延び、その後巻線11,12が垂直方向に延びるように側壁43,44を押し付ける方法を用いてもよい。このようにすれば、絶縁部材シート66を押し付ける側壁43,44からの接触圧力をより強くすることができる。このため、絶縁部材シート66の側壁43,44と接触する面、および絶縁部材シート66の第一の巻線11および第二の巻線12と接触する面での接触熱抵抗をより低減させることができる。
次に、本実施の形態の第2例の電力変換装置の作用効果について説明する。
以上に示すように、第2例においては、第1例の高放熱性絶縁部材64の代わりに高放熱性の絶縁部材シート66により、巻線11,12から側壁43,44への伝熱がなされる。このため第1例と同様に、巻線11,12の発熱を側壁43,44から速やかに放熱する効果が確保される。
また第2例においても第1例と同様に巻線11,12が屈曲され、かつ巻線11,12間には絶縁部材63が配置される。以上により第2例においても、トランスの小型化と、絶縁性と、放熱性とのすべてを兼ね備える構成とすることができる。
第2例においては、側壁43,44が筐体42とは別体となっているが、側壁43,44の最下部において、他の領域よりも図11の左右方向に拡がった接合部43C,44Cを有している。これにより、側壁43,44と筐体42との接合部の面積をより広くすることができるため、側壁43,44の発熱を効率的に筐体42に伝えることができる。
さらに第2例においては、I型磁性コア21、E型磁性コア22と側壁43,44との間には高放熱性絶縁部材64および高放熱性の絶縁部材シート66が配置されずに隙間となる。第2例においては特に巻線11,12を優先的に放熱可能とするために巻線11,12の双方が絶縁部材シート66を介して側壁43,44と接触されている。このようにすれば、第1例に比べて、放熱性の高い高放熱性絶縁部材64または絶縁部材シート66の量を減らすことができるため、製造コストを削減することができる。
次に、第2例におけるトランス10の各構成部品の電気的な絶縁性について説明する。
図11を参照して、第2例においても、図の左右方向に延びる絶縁部材61の最も左側の端部61Aは、第一の巻線11の第1の部分よりも図11の左側に延びるように形成されている。また図の左右方向に延びる絶縁部材62の最も右側の端部62Aは、第二の巻線12の第2の部分よりも図11の右側に延びるように形成されている。さらに図の上下方向に延びる絶縁部材62の最も下側の端部62Aは、第二の巻線12の第1の部分よりも図11の下側に延びるように形成されている。さらに図の上下方向に延びる絶縁部材63の最も下側の端部63Aは、第二の巻線12の第1の部分よりも図11の下側に延びるように形成されている。これらの端部61A,62A,63Aとそれらが隣り合う巻線11,12との間に隙間が形成される。この隙間は第1例においては高放熱性絶縁部材64により充填されているのに対し、第2例においては当該隙間には何も供給されず、隙間の距離により絶縁性能が満足されている。
第一の巻線11の第1の部分(左下側)と側壁44との間、および第二の巻線12の第2の部分(右上側)と側壁43との間には、絶縁部材シート66が挟まれている。絶縁部材シート66が第一の巻線11と側壁44との双方に接触することにより、第一の巻線11と側壁44との間を絶縁している。また絶縁部材シート66が第二の巻線12と側壁43との双方に接触することにより、第二の巻線12と側壁43との間を絶縁している。
ここで上記のように、図の左右方向に延びる絶縁部材61の最も左側の端部61Aが、第一の巻線11の第1の部分よりも図11の左側に延びるように形成されている。このため絶縁部材シート66が形成された側壁44を第一の巻線11の第1の部分に押しつけることにより、側壁44が絶縁部材61の端部61Aに接触し、端部61Aの長さ分だけの絶縁部材シート66の厚みを確保可能としている。
他に、図の左右方向に延びる絶縁部材62の最も右側の端部62Aが、第二の巻線12の第2の部分よりも図11の右側に延びるように形成されている。このため絶縁部材シート66が形成された側壁43を第二の巻線12の第2の部分に押しつけることにより、側壁43が絶縁部材62の端部62Aに接触し、端部62Aの長さ分だけの絶縁部材シート66の厚みを確保可能としている。
次に、第2例におけるトランス10の各構成部品の放熱性について説明する。第1例においては、筐体42および側壁43,44とトランス10の各構成要素との隙間が高放熱性絶縁部材64により埋められている。このため第1例においては、E型磁性コア22およびI型磁性コア21は、高放熱性絶縁部材64を介して側壁43,44へ放熱する経路が存在する。
これに対して第2例においては、E型磁性コア22と側壁43との間、およびI型磁性コア21またはE型磁性コア22と側壁44との間の領域には高放熱性絶縁部材64などが埋められることなく、当該領域には隙間が形成される。このため第2例においては、磁性コア21,22の放熱性は第1例に比べて劣る。
しかしながらI型磁性コア21およびE型磁性コア22における磁束密度の変化量が小さい場合、または磁束密度の変化の頻度が低い場合には、I型磁性コア21およびE型磁性コア22の損失が小さい。このため図11に示すような隙間を有する構成を用いることができる。
また図11に示すように、第2例においては側壁43,44が筐体42と別体であり、両者が放熱グリス43A,44Aにより互いに接合されている。放熱グリス43A,44Aは、たとえば側壁43,44の幅が広くなった接合部43C,44Cの最下部と筐体42とが接合される箇所に塗布により供給されることが好ましい。放熱グリス43A,44Aが供給されることにより、接合部43C,44Cと筐体42との境界における接触熱抵抗を低減し、放熱性の劣化を抑制することができる。
なお側壁43,44の下方の筐体42を空冷または水冷により冷却する代わりに、たとえば側壁43,44の巻線11,12が配置される側と反対側の表面上に風を送ることにより側壁43,44を直接冷却(空冷)することもできる。
実施の形態3.
図13〜図15を用いて、本実施の形態の電力変換装置の具体的な構成について説明する。
図13を参照して、本実施の形態の電力変換装置300は、実施の形態1,2の電力変換装置に対して、第一の巻線11、第二の巻線12、絶縁部材61,62,63の屈曲される形状および配置が異なっている。具体的には、屈曲された巻線11,12などが図13の断面図における一方および他方の端部側において延びる方向が、実施の形態1などと異なっている。
ここで2本の第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれの一方の端部すなわち図13の磁性コア21,22の左側における端部と磁性コア21,22の左側における第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれの屈曲部(第1の屈曲部)との間の領域を第1の部分とする。また第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれの上記一方の端部と反対側の他方の端部すなわち図13の磁性コア21,22の右側における端部と磁性コア21,22の右側における第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれの屈曲部(第2の屈曲部)との間の領域を第2の部分とする。なお上記の第1の屈曲部は、図14(A),(B)における磁性コア22の左側の一点鎖線F2に相当し、上記の第2の屈曲部は、図14(A),(B)における磁性コア22の右側の一点鎖線F2に相当する。
このとき、本実施の形態においては、第一の巻線11の上記の第1の屈曲部からの第1の部分と、上記の第2の屈曲部からの第2の部分とが、ともに図13の上側に延びている。また第二の巻線12の上記第1の屈曲部からの第1の部分と、上記の第2の屈曲部からの第2の部分とが、ともに図13の下側に延びている。すなわち第1の部分と第2の部分とが互いに同じ方向に延びている。このように図13においては、2本の第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれは、いわゆるC字形状となるように屈曲されている。なお他の実施の形態と同様に、第1および第2の部分の延びる方向は、I型磁性コア21およびE型磁性コア22の延びる方向(図13の上下方向)に沿っている。
またここで、第一の巻線11、第二の巻線12ともに、第1および第2の部分に挟まれた部分(第1の屈曲部と第2の屈曲部との間の領域)を第3の部分とする。このとき、第一の巻線11の第3の部分と、第二の巻線12の第3の部分とが互いに図13の上下方向に重畳された構成を有している。また第一の巻線11の第1の部分と第二の巻線12の第1の部分とは図13の上下方向に延びる同一の平面上に並んでいる。同様に、第一の巻線11の第2の部分と第二の巻線12の第2の部分とは図13の上下方向に延びる同一の平面上に並んでいる。
なおここでは、図13のような断面図における第一の巻線11の、磁性コア21,22の延在方向(図13の上下方向)に沿ってみたときの最上部11E3を一方の端部、最上部11E4を他方の端部と定義する。また図13の断面図における第一の巻線11の、最上部11E3に近い側の屈曲部を第1の屈曲部11T3、最上部11E4に近い側の屈曲部を第2の屈曲部11T4と定義する。最上部11E3と第1の屈曲部11T3との間の領域が第1の部分であり、第2の屈曲部11T4と最上部11E4との間の領域が第2の部分である。同様にここでは、図13のような断面図における第二の巻線12の、磁性コア21,22の延在方向(図13の上下方向)に沿ってみたときの最下部12E3を一方の端部、最下部12E4を他方の端部と定義する。また図13の断面図における第二の巻線12の、最下部12E3に近い側の屈曲部を第1の屈曲部12T3、最下部12E4に近い側の屈曲部を第2の屈曲部12T4と定義する。最下部12E3と第1の屈曲部12T3との間の領域が第1の部分であり、第2の屈曲部12T4と最下部12E4との間の領域が第2の部分である。
図13の断面図の形状は、図14(A),(B)の平面図における一点鎖線F1および点線F2において巻線11,12が屈曲された態様に対応する。このため巻線11,12の第3の部分すなわち磁性コア21,22とほぼ重なる部分においては第一の巻線11および第二の巻線12のなす平面(各巻線の各ターンにより形成される平面)は互いにほぼ重なっている。しかし巻線11,12の第1および第2の部分においては第一の巻線11および第二の巻線12のなす平面は同一平面上に並んでいるものの、これらの平面は互いに重なってはいない。つまり図13の断面図において、第一の巻線11と第二の巻線12とは、それぞれの第3の部分において互いに背中合わせとなるように重畳されている。
このように第一の巻線11と第二の巻線12との各ターンにより形成される平面同士が、部分的に重なっていない領域を有している。この点において本実施の形態は、第一の巻線11と第二の巻線12との各ターンにより形成される平面同士がそのほぼ全体において重なるように屈曲されている実施の形態1,2と異なっている。
実施の形態1,2の第一の巻線11および第二の巻線12は図1のトランス10(一次側巻線15および二次側巻線16)を構成している。この場合には図13などのように第一の巻線11と第二の巻線12との各ターンによる平面同士が重なる(対向する)部分の面積が大きい方が入力側駆動回路1と出力側駆動回路2との間の電力変換の効率の低下が抑制される。
しかし本実施の形態においては、第一の巻線11および第二の巻線12として、図1のトランス10の一次側巻線15および二次側巻線16とは別のコイルが想定されている。この場合、広範囲にわたって第一の巻線11および第二の巻線12を対向させれば巻線11,12の間に寄生コンデンサが生じるため、両者を対向させる面積を小さくすることが好ましい。このため上記のように、巻線11,12の第1および第2の部分においては第一の巻線11および第二の巻線12のなす平面は同一平面上に並んでいるものの、これらの平面は互いに重なってはいない。
絶縁部材61,62,63の配置される位置は、基本的に実施の形態1と同様である。つまり第一の巻線11と第二の巻線12との間に挟まれた領域には絶縁部材63が設けられている。また第一の巻線11と磁性コア(I型磁性コア21およびE型磁性コア22)との間には絶縁部材61が配置されており、第二の巻線12と磁性コア(E型磁性コア22)との間には絶縁部材62が配置されている。したがってE型磁性コア22(E型コア)の中足22C(図4(C)参照)の外側に巻回されるように、絶縁部材62、第二の巻線12、絶縁部材63、第一の巻線11および絶縁部材61がこの順に積層される。ただし絶縁部材63は図13の断面図において左右方向に延びる部分のみを有しており屈曲されていない。また絶縁部材61は第一の巻線11と同様に、絶縁部材62は第二の巻線12と同様に、図13の断面図においてC字形状となるように屈曲されている。
図13および図14(A),(B)を参照して、本実施の形態における第一の巻線11および第二の巻線12が中足22Cの外側で巻回される態様は基本的に図2および図3(A),(B)に示す実施の形態1の巻回態様と同様である。しかし本実施の形態においては第一の巻線11および第二の巻線12が上記の第1および第2の屈曲部において屈曲される方向が実施の形態1とは異なっている。具体的には、図14に示す第一の巻線11および第二の巻線12が、図14の一点鎖線F1において紙面奥向きに、図14の点線F2において紙面手前向きに屈曲される。これにより巻線11,12の第1の部分と第2の部分とが互いに同じ方向に延びる(C字形状となる)。
ただし、第一の巻線11および第二の巻線12からの引出し部13,14となる部分については、上側から見た図14(A)において紙面手前向きに、下側から見た図14(B)において紙面奥向きに屈曲される。この結果、図15を参照して、引出し部13および引出し部14はともにたとえば図13における上方に延びる態様となり、図示されないたとえばプリント基板の上方に向けて引出すことが可能となる。なお引出し部13,14の形成のために、中足22Cの周りを巻回するように延びる第一の巻線11および第二の巻線12と短絡することなく交差可能とすべく絶縁部材65が設けられている。
以上の各点において、本実施の形態の電力変換装置300は実施の形態1の電力変換装置100と異なっているが、これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態1の構成とほぼ同じである。このため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の電力変換装置の作用効果について説明する。
本実施の形態の電力変換装置300は、複数の巻線すなわち第一の巻線11および第二の巻線12のそれぞれがC字形状を有するように屈曲されている。この場合においても、電力変換装置100のようにS字形状に屈曲される場合と同様に、第1の屈曲部から延びる第1の部分と、第2の屈曲部から延びる第2の部分とを、磁性コア21,22の延びる方向に沿って延びるようにトランス10を小型化することができる。つまり第一の巻線11および第二の巻線12を含む電力変換装置300の全体を、I型磁性コア21とE型磁性コア22とを重畳した構造物と同程度にまで、小型化することができる。
また本実施の形態においては、第一の巻線11と第二の巻線12とのいずれもが、巻線11,12の中で磁性コア21,22に対して最も外側に配置される領域を含むように屈曲されている。具体的には上記のように、第一の巻線11、第二の巻線12ともに、第1の部分および第2の部分が、磁性コア21,22に対して外側に配置され外側に露出している。このため、巻線11,12のいずれもその発熱をこの外側に露出している部分から外部の大気中に高効率に放熱することができる。
第一の巻線11の第1の部分と第二の巻線12の第1の部分とが同一平面上に並び、かつ第一の巻線11の第2の部分と第二の巻線12の第2の部分とが同一平面上に並ぶことから、たとえば後述の実施の形態のように絶縁部材シート66を、第一の巻線11の第1の部分と第二の巻線12の第1の部分との双方に接触させることが容易となる。
なお図13においては、図2などのように第一の巻線11の第1の部分と重なるように(図13の第一の巻線11と上下方向に関する位置(座標)が等しい位置において)第二の巻線12が配置されているわけではない。しかしこのように外側および内側を対比する巻線が配置されない場合についても、ここでは「すべての複数の巻線の中で」磁性コアに対して最も外側に配置される、と表現することとする。図13においては第一の巻線11と第二の巻線12との上下方向に延びる領域がいずれも磁性コア21,22に対して(図13の左右方向に関して)同じ位置(座標)に配置されており、巻線11,12の外側には巻線11,12は存在しない。このため、第一の巻線11と第二の巻線12とのいずれもが磁性コア21,22に対して最も外側に配置されるといえる。
また図13などにおいては、I型磁性コア21の最上面およびE型磁性コア22の最下面が外側に露出している。このため、磁性コア21,22のいずれもその発熱をこの外側に露出している部分から外部の大気中に高効率に放熱することができる。
さらに本実施の形態においても、第一の巻線11と第二の巻線12との間、および巻線11,12と磁性コア21,22との間に絶縁部材61,62,63が挟まれるように配置される。このため、第一の巻線11と第二の巻線12との間の電気的な絶縁状態、および巻線11,12と磁性コア21,22との間の電気的な絶縁状態を確保することができる。
以上により、本実施の形態の電力変換装置100は、トランス10の小型化と、巻線11,12間の絶縁性と、巻線11,12および磁性コア21,22の発熱に対する高い放熱性とを兼ね備えることができる。
次に、本実施の形態における各構成部品の電気的な絶縁性について説明する。実施の形態1,2と基本的に同様に、絶縁部材61,62,63により各巻線間などが絶縁されている。なお再度図13を参照して、本実施の形態においては、たとえば磁性コア21,22の左側での絶縁部材61の最も上側の端部61Aが、第一の巻線11の第1の部分よりも図13の上側に延びるように形成されていてもよい。またたとえば磁性コア21,22の左側での絶縁部材62の最も下側の端部62Aが、第二の巻線12の第1の部分よりも図13の下側に延びるように形成されていてもよい。さらにたとえば絶縁部材63の最も左側の端部63Aが、第一の巻線11および第二の巻線12の第1の部分よりも図13の左側に延びるように形成されていてもよい。これにより、第一の巻線11、第二の巻線12、I型磁性コア21およびE型磁性コア22の各部材間に必要な絶縁性能を満足させることができる。
次に、本実施の形態における各構成部品の放熱性について説明する。再度図13を参照して、本実施の形態においては、たとえば第一の巻線11および第二の巻線12は、第1および第2の部分の表面が各部材間で最も外側に配置され、外側に向けて露出している。このため、巻線11,12のいずれもその発熱をこの外側に露出している部分から外部の大気中に高効率に放熱することができる。またI型磁性コア21の最上面およびE型磁性コア22の最下面も外側に露出している。このため、磁性コア21,22のいずれもその発熱を、上記外側に露出している部分から外部の大気中に高効率に放熱することができる。
実施の形態4.
図16を参照して、本実施の形態の第1例の電力変換装置の具体的な構成について説明する。
図16を参照して、本実施の形態の第1例の電力変換装置400は、実施の形態3の電力変換装置300に対して、筐体42、側壁43,44、絶縁部材シート66などをさらに有する点で異なっている。
図16における筐体42および側壁43,44の形状等は、基本的に実施の形態2の第2例すなわち図11の電力変換装置201における筐体42および側壁43,44の形状等と同様である。
図16においては、たとえば実施の形態2の第2例すなわち図11の電力変換装置201と同様に、複数の側壁43,44は筐体42と互いに別体となっている。しかし本実施の形態においてはたとえば図9の電力変換装置200と同様に、筐体42と側壁43,44とが一体となっていてもよい。なお図16においては側壁43,44と筐体42とを互いに接合するネジおよび放熱グリスの図示が省略されているが、図11と同様にネジ51および放熱グリス43A,44Aによりこれらが互いに接合されていてもよい。
本実施の形態の第1例における磁性コア21,22、巻線11,12および絶縁部材61,62,63の組み立て方法は基本的に実施の形態3と同様である。またこれらと筐体42、側壁43,44との組み立て方法は基本的に実施の形態2の第2例と同様である。そのためここでは当該組み立て方法の説明を省略する。
ただし実施の形態2の第2例においては、第一の巻線11の第1の部分、および第二の巻線12の第2の部分のみが他の巻線に対して外側に配置され外側に露出する構成である。このためこれらの巻線11,12の外側を向くように配置される部分に接触可能とする観点から、側壁44の内側の面の(左右方向に延びる巻線11,12よりも)下方の領域、および側壁43の内側の面の(左右方向に延びる巻線11,12よりも)上方の領域のみに、絶縁部材シート66が貼り付けられている。
これに対して本実施の形態においては、第一の巻線11、第二の巻線12ともに、第1の部分および第2の部分の双方が磁性コア21,22に対して外側を向く構成となっている。このためこれらの巻線11,12の外側を向く部分に接触可能とする観点から、側壁43,44のそれぞれの内側の面の、(左右方向に延びる巻線11,12よりも)上方および下方の領域の双方に、絶縁部材シート66が貼り付けられている。これにより第一の巻線11および第二の巻線12の第1および第2の部分が、絶縁部材シート66と絶縁部材61,62との双方に接触するように挟まれている。なお絶縁部材シート66の材質等については実施の形態2と同様である。
以上の各点において、本実施の形態の第1例の電力変換装置400は実施の形態2,3の電力変換装置201,300と異なっているが、これ以外の本実施の形態の構成は、実施の形態2,3の構成とほぼ同じである。このため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の第1例の電力変換装置の作用効果について説明する。
本実施の形態の第1例においては、実施の形態3において外部に向けて露出している第一の巻線11および第二の巻線12の第1および第2の部分に相当する部分が、側壁43,44に貼り付けられた高放熱性の絶縁部材シート66に接触している。言い換えれば、第一の巻線11および第二の巻線12の第1および第2の部分が、絶縁部材シート66を介して放熱器としての筐体42(側壁43,44)に接触されている。このため、巻線11,12の第1および第2の部分の発熱を外部に高効率に放出する代わりに、高放熱性の絶縁部材シート66から側壁43,44に高効率に放熱することができる。側壁43,44は筐体42と接合されている(または一体として形成されている)放熱器であるため、側壁43,44に伝わった熱は速やかに筐体42に伝えられる。
先述のように、上記第1例のような構成は、第一の巻線11の第1の部分と第二の巻線12の第1の部分とが同一平面上に並び、かつ第一の巻線11の第2の部分と第二の巻線12の第2の部分とが同一平面上に並ぶことにより容易に実現できる。たとえば第一の巻線11の第1の部分に接する絶縁部材シート66と、第二の巻線12の第1の部分に接する絶縁部材シート66とを同一平面上(側壁44の内側の面上)に形成することができるためである。
また特にE型磁性コア22の最下面が筐体42に直接接触しているため、磁性コア21,22の発熱は筐体42へ高効率に放熱される。
したがって、本実施の形態においても他の実施の形態と同様に、小型化、絶縁性、および放熱性をすべて兼ね備える電力変換装置400を提供することができる。
上記第1例における構成要素の絶縁性、および放熱経路については基本的に上記の他の実施の形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
次に図17を用いて、本実施の形態の第2例の電力変換装置の具体的な構成について説明する。
図17を参照して、本実施の形態の第2例の電力変換装置401は、基本的には第1例の電力変換装置400と同様の構成を有している。しかし電力変換装置401においては、巻線11,12のそれぞれの、絶縁部材シート66と接触する側と反対側(磁性コア21,22側すなわち内側)の面が、絶縁部材シート67に接触する構成となっている。この点において電力変換装置401は、巻線11,12のそれぞれの、絶縁部材シート66と接触する側と反対側(磁性コア21,22側すなわち内側)の面が、C字形状を有する絶縁部材61,62の一部分と接触している電力変換装置400と構成上異なっている。
つまり電力変換装置401においては、巻線11,12の第1および第2の部分と磁性コア21,22との間の領域に、絶縁部材61,62の代わりに絶縁部材シート67が(巻線11,12と磁性コア21,22との双方に接するように)挟まれた構成となっている。このため絶縁部材61,62は屈曲したC字形状を有しておらず、絶縁部材63と同様に図17の左右方向に延びる部分のみを有している。
絶縁部材シート67は絶縁部材シート66と同様の材質により構成されている。すなわち絶縁部材シート67は絶縁部材シート66と同様に、高放熱性絶縁部材として配置されており、絶縁部材61,62,63よりも熱伝導率が高い、柔らかいシートタイプの部材である。
以上の各点において、第2例の電力変換装置401は第1例の電力変換装置400と異なっているが、これ以外の第2例の構成は、第1例の構成とほぼ同じである。このため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の第2例の電力変換装置の作用効果について説明する。
当該第2例の作用効果は、基本的に第1例および上記の他の各実施の形態と同様であり、当該第2例においても、小型化、絶縁性、および放熱性をすべて兼ね備える電力変換装置401を提供することができる。
なお各構成要素の絶縁性に関しては、たとえば図17において、絶縁部材61,62の左右方向の長さよりも第一の巻線11および第二の巻線12の左右方向に延びる部分の長さの方が長く形成されている。これにより、絶縁部材シート67の(図17の左右方向の)厚みを確保することができ、その絶縁性を確保することができる。
さらに各構成要素の放熱性に関しては、たとえば第1例の電力変換装置400においては、I型磁性コア21の発熱は、外側に露出している最上面からのみ良好に放熱可能である。これに対して第2例の電力変換装置401においては、I型磁性コア21はその一部の表面が絶縁部材シート67に接しており、絶縁部材シート67は巻線11,12の第1および第2の部分に接しており、また当該第1および第2の部分は絶縁部材シート66に接している。さらに絶縁部材シート66は側壁43,44に接している。したがって電力変換装置401のI型磁性コア21は絶縁部材シート67を介した良好な放熱経路を有するため、電力変換装置400のI型磁性コア21よりも放熱性が向上される。E型磁性コア22についても同様に、絶縁部材シート67と接することから、電力変換装置401においては電力変換装置400よりも放熱性が向上される。
次に図18を用いて、本実施の形態の第3例の電力変換装置の具体的な構成について説明する。
図18を参照して、本実施の形態の第3例の電力変換装置402は、第1例および第2例と同様に、磁性コア21,22の外側に巻線11,12および絶縁部材61,62,63が巻回されている。しかし電力変換装置402においては、磁性コア21および磁性コア22が、筐体42の磁性コア21,22などが載置される表面に沿う方向に関して並ぶように配置されている。言い換えれば図17以前の各例においてはI型磁性コア21とE型磁性コア22とが各図の鉛直方向に並んでいるのに対し、図18においてはI型磁性コア21とE型磁性コア22とが水平方向に並んでいる。この点において当該第3例は、他の各例と構成上異なっている。すなわち図18においては、他の各例におけるI型磁性コア21、E型磁性コア22および絶縁部材61,62,63からなる構成を約90°回転させた態様となっている。
磁性コア21,22に対して巻線11,12および絶縁部材61,62,63の配置される位置、形状および組み立て方法は、基本的に実施の形態3および実施の形態4の第1例と同様であり、断面図においていわゆるC字形状となるように屈曲されている。すなわち第一の巻線11と第二の巻線12との間に挟まれた領域には絶縁部材63が設けられている。また第一の巻線11と磁性コア(I型磁性コア21およびE型磁性コア22)との間には絶縁部材61が配置されており、第二の巻線12と磁性コア(E型磁性コア22)との間には絶縁部材62が配置されている。
これにより、図18の磁性コア21,22の上方に配置され図の左右方向に延びる巻線11,12の部分のそれぞれは、更に上方に向けて屈曲することにより引出し部13,14を形成している。巻線11,12のこの部分は外側に向けて露出している。また図18の磁性コア21,22の下方に配置され図の左右方向に延びる巻線11,12の部分のそれぞれと筐体42との間には、絶縁部材シート68が配置されている。すなわち絶縁部材シート68は巻線11,12および筐体42の双方に接するように挟まれた構成となっている。
絶縁部材シート68は絶縁部材シート66と同様の材質により構成されている。すなわち絶縁部材シート68は絶縁部材シート66と同様に、高放熱性絶縁部材として配置されており、絶縁部材61,62,63よりも熱伝導率が高い、柔らかいシートタイプの部材である。
以上の各点において、第3例の電力変換装置402は第1例および第2例の電力変換装置400,401と異なっているが、これ以外の第3例の構成は、第1例および第2例の構成とほぼ同じである。このため同一の要素については同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
次に、本実施の形態の第3例の電力変換装置の作用効果について説明する。
当該第3例の作用効果は、基本的に第1例、第2例および上記の他の各実施の形態と同様であり、当該第3例においても、小型化、絶縁性、および放熱性をすべて兼ね備える電力変換装置402を提供することができる。
なお各構成要素の絶縁性に関しては、たとえば図18において、絶縁部材63の上下方向の長さを第一の巻線11および第二の巻線12の上下方向に延びる部分の長さよりも長く形成している。特に絶縁部材63の最下部が第一の巻線11および第二の巻線12の最下部よりも下方まで延びるように形成されている。これにより、絶縁部材シート68の(図18の上下方向の)厚みを確保することができ、その絶縁性を確保することができる。
さらに各構成要素の放熱性に関しては、たとえば第一の巻線11および第二の巻線12の最下部が絶縁部材シート68に接しており、これにより巻線11,12の発熱が絶縁部材シート68を介して筐体42に高効率に放熱される。またI型磁性コア21の発熱は図18における最も左側の露出した表面から高効率に放熱され、E型磁性コア22の発熱は図18における最も右側の露出した表面から高効率に放熱される。また図示されないが、I型磁性コア21の左側およびE型磁性コア22の右側に、たとえば図16および図17と同様に高放熱性の絶縁部材シート66を挟むように側壁44,43が配置されてもよい。このときの絶縁部材シート66は、側壁44,43および磁性コア21,22の双方に接触するように配置される。
以上の各実施の形態に示す構成上の特徴は、技術的に矛盾のない範囲内で適宜組み合わせてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。