JP6375264B2 - 制振用ダンパー - Google Patents

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本発明は、主としてビル等の構造物に使用する制振用ダンパーに関するものである。
従来、制振用ダンパー、例えばオイルを使用する制振用オイルダンパーは、ピストンにより区画したシリンダー内の第1シリンダー室と第2シリンダー室とにオイルを封入し、第1シリンダー室と第2シリンダー室とを連通するオイル流路の途中に減衰弁やオリフィス等の絞りを設け、ピストンロッドを通じて外力が入力した際に一方のシリンダー室から他方のシリンダー室にオイルが逃げるときに発生する絞り抵抗により反力を得て、振動を減衰している。
このような制振用オイルダンパーを設置対象物である構造物へ設置する手段としてボールジョイントが挙げられる。そして、ボールジョイントのうちシリンダー側に装着した球体内にピストンロッドの端部を移動可能な状態で挿通して、制振用オイルダンパー(油圧緩衝器)の取付長を短くすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許第5112609号公報
ところで、上記特許文献に記載のボールジョイントでは、球体と該球体をシリンダー側へ接続する軸部とが一体的に形成されている。このため、シリンダーと球体(ボール部)との離間距離を所望の長さに設定する度に、球体と軸部との一体構造部品(ボールスタッド)を改めて設計および製造し直さなければならない。また、ピストンロッドのうち球体内を移動可能な端部の外観を点検(例えば、外周面に異物が付着していないかの点検)を行うには、ボールジョイント全体をシリンダーから外さなければならない。さらに、制振用ダンパーおよびボールジョイントが大型である場合には、ピストンロッドの点検の前後に重量物であるボールジョイントの着脱作業を行う必要があり、作業者に大きな負担が掛かってしまう。
そこで、本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボールジョイントの一部をシリンダーとボール部との離間距離に拘らず共通に使用することができ、また、ピストンロッドの点検作業における負担の軽減を図ることができる制振用ダンパーを提供しようとするものである。
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、両端が蓋部材により閉成されたシリンダーと、該シリンダー内に移動可能な状態で嵌装されるピストンと、該ピストンに接続され、蓋部材を貫通してシリンダーの外方へ延出されたピストンロッドと、を備えた制振用ダンパーにおいて、
前記蓋部材には、当該制振用ダンパーを設置対象物へ接続するボールジョイントを備え、
該ボールジョイントは、
前記蓋部材に一端部を螺合して接続され、ピストンロッドの端部が内部に形成された移動空部内を移動可能なスリーブ部と、
該スリーブ部の他端部を螺合して前記スリーブ部に着脱可能な状態で接続されたボール部と、
該ボール部を回動可能な状態で保持するボール受部と、を備え、
前記ボール部には、スリーブ部の移動空部に連通する連通開口を、ピストンロッドの端部が移動可能な大きさで開設し、
前記ボール部をスリーブ部から脱離した状態では、ピストンロッドの端部がスリーブ部の外部から見えるようにしたことを特徴とする制振用ダンパーである。
請求項2に記載のものは、前記ボール受部においては、ボール部を収納空間部内に収納する受部本体と、該受部本体との間にボール部を挟持するボールストッパーと、を備え、
前記受部本体にボールストッパーを螺合して装着することを特徴とする請求項1に記載の制振用ダンパーである。
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、請求項1の発明によれば、シリンダーとボール部との離間距離をスリーブ部の長さの設定により容易に変更することができ、さらには、ボール部およびボール受部を前記離間距離に拘らず共通に使用することができる。したがって、制振用ダンパーを新たに設計する度にボールジョイントの全体を改めて設計する必要がなくなり、制振用ダンパーの製造コストの低減を図ることができる。また、ボールジョイントの一部をシリンダー側に残した状態でもピストンロッドの端部を露出させることができ、ピストンロッドの点検作業における負担の軽減を図ることができる。
また、請求項2の発明によれば、ボール部を収納空間部内に収納する受部本体と、該受部本体との間にボール部を挟持するボールストッパーと、を備えてボール受部を構成し、受部本体にボールストッパーを螺合して装着するので、ボールストッパーの締め込み具合を調整することでボール部の挟持具合、ひいてはボール部の回動の固さを容易に調整することができる。
制振用ダンパーの構成を説明する断面図である。 架橋の間柱に制振用ダンパーを取り付けた概略図である。
以下、代表的な制振用ダンパーである制振用オイルダンパーを例に挙げて、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
制振用オイルダンパー1は、図1に示すように、筒状のシリンダー本体2の両端を各蓋部材3,4により閉成して構成されたシリンダー5と、該シリンダー5内に移動可能な状態で嵌装されるピストン7と、該ピストン7に接続され、各蓋部材3,4を貫通してシリンダー5の外方へ延出されたピストンロッド8とを備えて構成されている。また、ピストン7の外周部にはシール部材9を設けてシリンダー5の内周面に液密状態であり、且つ摺動可能な状態で密着可能とし、このピストン7によりシリンダー5内を第1シリンダー室11と第2シリンダー室12とに区画し、各シリンダー室11,12内にオイルを封入している。
さらに、ピストン7には、第1シリンダー室11と第2シリンダー室12とを連通するオイル流路(図示せず)を設け、該オイル流路の途中にはリリーフバルブやオリフィス等の絞り(図示せず)を設けている。そして、各蓋部材3,4のうちピストンロッド8が貫通する貫通孔3a,4aの内周面にはシール部材15およびダストシール16をそれぞれ設け、シール部材15によりピストンロッド8を貫通孔3a,4aの内周面に液密状態であり、且つ摺動可能な状態で密着可能とし、ダストシール16により異物がシール部材15に到達したりシリンダー室11,12内に侵入したりすることを防止している。
また、制振用オイルダンパー1の一端(図1中、左端)に位置するピストンロッド8の端部にはロッド側ボールジョイント20を備え、制振用オイルダンパー1の他端(図1中、右側)に位置する蓋部材4にはシリンダー側ボールジョイント21(本発明におけるボールジョイントに相当)を備え、各ボールジョイントを介して制振用オイルダンパー1を設置対象物Sへ回動可能な状態で接続するように構成されている。例えば、図2に示すように、設置対象物Sが柱と梁で構成された架構23であり、該架構23に設けられた間柱24の上下分割箇所に制振用オイルダンパー1を配置する場合には、間柱24の分割箇所の一方にロッド側ボールジョイント20を接続し、他方にシリンダー側ボールジョイント21を接続する。この状態で架構23に発生した振動に起因して、制振用オイルダンパー1が長手方向に沿って外力(制振用オイルダンパー1を伸縮する外力)を受けると、ピストン7がシリンダー5内を移動するとともにオイルがオイル流路を通って一方のシリンダー室から他方のシリンダー室に逃げる。このとき、オイル流路内の絞りにより絞り抵抗が発生するため、制振用オイルダンパー1がこの絞り抵抗に基づき外力に抗する反力を得て、振動を減衰するように構成されている。
次に、シリンダー側ボールジョイント21について説明する。
シリンダー側ボールジョイント21は、図1に示すように、蓋部材4に着脱可能な状態で接続される円筒状のスリーブ部26と、該スリーブ部26に着脱可能な状態で接続されるボール部27と、該ボール部27を回動可能な状態で保持するボール受部28とを備えて構成されている。
具体的に説明すると、蓋部材4の貫通孔4aにスリーブ部26の一端部(図1中、左端部)を螺着して、ピストンロッド8のうち貫通孔4aから突出した端部が当該スリーブ部26の内部に形成された移動空部26a内を移動できるように構成されている。また、設置対象物Sに接続されるボール受部28を受部本体29とボールストッパー30とで構成し、受部本体29の内部には収納空間部29aをシリンダー5側(図1中、左側)および設置対象物S側(図1中、右側)へそれぞれ開放した状態で形成している。
そして、この収納空間部29a内にボール部27を回動可能な状態で収納し、ボール部27のうち収納空間部29aのシリンダー側開口29bから臨ませた箇所にスリーブ部26の他端部(図1中、右端部)を螺合して接続している。さらに、収納空間部29aの設置対象物側開口29cにはボールストッパー30を螺合して装着し、該ボールストッパー30と受部本体29との間にボール部27を挟持してボール部27の収納空間部29aからの脱落を阻止している。なお、ボール部27のうちボールストッパー30に対向する箇所には、スリーブ部26の内部に連通する連通開口27aを開設(具体的には、図1に示すように、スリーブ部26の内部と同じ開口径にしてピストンロッド8の端部が移動可能な大きさで開設)している。
このような部材で構成されるシリンダー側ボールジョイント21においては、シリンダー5とボール部27との離間距離をスリーブ部26の長さの設定により容易に変更することができる。例えば、予め異なる長さで製作された複数のスリーブ部26の中から適切な長さのものを選択して使用したり、あるいはスリーブ部26と蓋部材4との螺合長さやスリーブ部26とボール部27との螺合長さを調整したりすることで、シリンダー5とボール部27との離間距離を容易に変更することができる。さらに、ボール部27およびボール受部28をシリンダー5とボール部27との離間距離に拘らず共通に使用することができる。したがって、制振用オイルダンパー1を新たに設計する度にシリンダー側ボールジョイント21の全体を改めて設計する必要がなくなり、制振用オイルダンパー1の製造コストの低減を図ることができる。
また、ボール受部28に保持された状態のボール部27をスリーブ部26から脱離した状態では、ピストンロッド8の端部がスリーブ部26の外部から見えるようになる。したがって、シリンダー側ボールジョイント21の一部(具体的にはスリーブ部26)をシリンダー5側に残した状態でもピストンロッド8の端部を視認することができ、ピストンロッド8の点検作業における負担の軽減を図ることができる。特に、大型の制振用オイルダンパー1の製造工程においては、最終組み立てを行う直前まで蓋部材4にシリンダー側ボールジョイント21のうちスリーブ部26のみを装着し、ボール部27およびボール受部28を未装着の状態にしておけば、重量物であるボール部27およびボール受部28を外した分だけ制振用オイルダンパー1が軽くなって取扱い易くなり、製造作業者の負担を軽減することができる。また、スリーブ部26の移動空部26aに位置するピストンロッド8の端部の表面状態をいつでも目視して異常の有無を確認することができ、それだけではなく、スリーブ部26がピストンロッド8の端部を囲む保護材として機能して、ピストンロッド8が不用意に損傷する虞をなくそうとすることができる。
さらに、ボール受部28においては、受部本体29にボールストッパー30を螺合して装着するので、ボールストッパー30の締め込み具合を調整することでボール部27の挟持具合、ひいてはボール部27の回動の固さを容易に調整することができる。なお、ボール部27に連通開口27aを開設しているため、ボールストッパー30を緩めて受部本体29から外せば、連通開口27aが設置対象物側開口29cに露出し、移動空部26a内のピストンロッド8の端部を視認することができる。
ところで、上記実施形態においては、ボール部27をスリーブ部26から脱離すると移動空部26aが外方へ開放されるように構成したが、本発明はこれに限定されない。要は、ボール部をスリーブ部から脱離した状態でピストンロッドの端部がスリーブ部の外部から視認できればよい。例えば、上記実施形態において、移動空部26aの開口端部を透視可能な部材(例えば、透明なフィルムや板材)で閉成すれば、ピストンロッド8の端部を視認できるだけではなく、ピストンロッド8に異物が付着したり、ピストンロッド8が不用意に損傷したりする不都合を避けることができて好適である。
また、シリンダー側ボールジョイント21が接続される蓋部材4をシリンダー本体2とは別個の部材として構成したが、本発明はこれに限定されない。要は、シリンダー5の端部を閉成するものであれば、どのような構成の蓋部材であってもよい。例えば、シリンダー本体に一体成形されて端部を閉成する蓋部材でもよい。また、スリーブ部26にボール部27を螺合したが、本発明ではこれに限定されない。要は、ボール部をスリーブ部に着脱可能な状態で接続できれば、どのような接続構造を採用してもよい。
さらに、上記実施形態では、制振用ダンパーの例示として制振用オイルダンパーを挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。要は、両端が蓋部材により閉成されたシリンダーと、該シリンダー内に移動可能な状態で嵌装されるピストンと、該ピストンに接続され、蓋部材を貫通してシリンダーの外方へ延出されたピストンロッドと、を備えた制振用ダンパーであれば、どのようなものであってもよい。例えば、オイルをシリンダー室に封入しない制振用ダンパーであってもよい。
1 制振用オイルダンパー
2 シリンダー本体
3 蓋部材
3a 貫通孔
4 蓋部材
4a 貫通孔
5 シリンダー
7 ピストン
8 ピストンロッド
9 シール部材
11 第1シリンダー室
12 第2シリンダー室
15 シール部材
16 ダストシール
20 ロッド側ボールジョイント
21 シリンダー側ボールジョイント
23 架構
24 間柱
26 スリーブ部
26a 移動空部
27 ボール部
27a 連通開口
28 ボール受部
29 受部本体
29a 収納空間部
29b シリンダー側開口
29c 設置対象物側開口
30 ボールストッパー

Claims (2)

  1. 両端が蓋部材により閉成されたシリンダーと、該シリンダー内に移動可能な状態で嵌装されるピストンと、該ピストンに接続され、蓋部材を貫通してシリンダーの外方へ延出されたピストンロッドと、を備えた制振用ダンパーにおいて、
    前記蓋部材には、当該制振用ダンパーを設置対象物へ接続するボールジョイントを備え、
    該ボールジョイントは、
    前記蓋部材に一端部を螺合して接続され、ピストンロッドの端部が内部に形成された移動空部内を移動可能なスリーブ部と、
    該スリーブ部の他端部を螺合して前記スリーブ部に着脱可能な状態で接続されたボール部と、
    該ボール部を回動可能な状態で保持するボール受部と、を備え、
    前記ボール部には、スリーブ部の移動空部に連通する連通開口を、ピストンロッドの端部が移動可能な大きさで開設し、
    前記ボール部をスリーブ部から脱離した状態では、ピストンロッドの端部がスリーブ部の外部から見えるようにしたことを特徴とする制振用ダンパー。
  2. 前記ボール受部は、ボール部を収納空間部内に収納する受部本体と、該受部本体との間にボール部を挟持するボールストッパーと、を備え、
    前記受部本体にボールストッパーを螺合して装着することを特徴とする請求項1に記載の制振用ダンパー。
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