JP6373615B2 - 窒化アルミニウム結晶の製造方法及び製造装置 - Google Patents

窒化アルミニウム結晶の製造方法及び製造装置 Download PDF

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本発明は、液相成長法(LPE)によりAlNをエピタキシャル成長させる窒化アルミニウム結晶の製造方法及び窒化アルミニウム結晶の製造装置に関する。
紫外発光素子は、蛍光灯の代替、高密度DVD、生化学用レーザ、光触媒による公害物質の分解、He−Cdレーザ、水銀灯の代替など、次世代の光源として幅広く注目されている。この紫外発光素子は、ワイドギャップ半導体と呼ばれるAlGaN系窒化物半導体からなり、表1に示すようなサファイア、4H−SiC、GaN、AlNなどの異種基板上に積層される。
しかしながら、サファイアは、AlGaNとの格子不整合が大きいため、多数の貫通転位が存在してしまい、非発光再結合中心となって内部量子効率を著しく低下させてしまう。また、4H−SiC及びGaNは、格子整合性は高いが、高価である。また、4H−SiC及びGaNは、それぞれ波長380nm及び365nm以下の紫外線を吸収してしまう。
これに対して、AlNは、AlGaNと格子定数が近く、200nmの紫外領域まで透明であるため、発光した紫外線を吸収することなく、紫外光を効率よく外部へ取り出すことができる。つまり、紫外光発光素子を作製する場合には、AlN単結晶を基板として用いてAlGaN系発光素子を準ホモエピタキシャル成長させることにより、結晶の欠陥密度を低く抑えた紫外光発光素子を作製することができる。
現在、AlNのバルク単結晶の作製は、HVPE法(ハイドライド気相成長法)、液相成長法、昇華再結晶法などの方法により試行されている。例えば、特許文献1には、III族窒化物結晶の液相成長法において、フラックスへの窒素の溶解量を増加させるために圧力を印加し、ナトリウム等のアルカリ金属をフラックスに添加することが開示されている。また、特許文献2には、Al融液に窒素原子を含有するガスを注入して、AlN微結晶を製造する方法が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1、2の技術を用いてAlN結晶を製造する場合には、高い成長温度が必要となり、コスト及び結晶品質に関して満足するものが得られない。
これに対し、本件発明者らの一部は、上記問題に応えるものとして、液相成長法におけるフラックスとしてGa−Al合金融液を用いることにより、低温でのAlNの結晶成長が可能であり、基板表面の結晶性を引き継ぎかつAl極性を有する良好なAlN結晶が得られることを見出した(例えば、特許文献3参照。)。
具体的に、特許文献3では、Ga−Al合金融液中の種結晶基板(以下、シード基板という)上にAlN結晶をエピタキシャル成長させるにあたり、シード基板として窒化サファイア基板を用いる。特許文献3に記載の方法は、Ga−Al合金融液にN原子を含有するガスを、ガス導入管を通して導入し、Ga−Al合金融液内に窒素含有ガスを溶存させ、そのGa−Al合金融液にシード基板を浸漬させる。これにより、特許文献3に記載の方法では、窒化サファイア基板表面に形成された窒素極性の窒化アルミニウム膜上に、表面の良好な結晶性を引き継いだAl極性の窒化アルミニウム結晶をエピタキシャル成長させることができる。
しかしながら、この方法では、シード基板を大口径化した場合、AlN結晶膜の厚みが薄く、シード基板全面に均一に生成せず、デバイス化をする上で課題になっていた。
また、特許文献4及び5に記載されている窒化アルミニウム結晶の製造装置は、シード基板より下側から窒素含有ガスを供給して、Ga−Al合金融液内を循環させてAlN結晶を育成するものである。このような装置による窒化アルミニウム結晶の製造方法では、液相成長させる際、Ga−Al合金融液内に供給した窒素含有ガスのほとんどが上方に抜けてしまい、シード基板に十分に窒素を供給することができない場合がある。
なぜなら、図5に示す窒化アルミニウム結晶の製造装置100は、坩堝101内のGa−Al合金融液102中に、ガス導入管103の供給口103a側に設けた保持プレート104を浸漬させ、シード基板105が上側を向くように保持プレート104が保持している。この窒化アルミニウム結晶の製造装置100では、下側から窒素含有ガスがGa―Al合金融液102内を回って、シード基板105に窒素含有ガスが供給されるようになっている。しかしながら、窒化アルミニウム結晶の製造装置100では、窒素含有ガスが上へ抜けてしまい、シード基板105に十分に窒素が供給されず、AlN結晶膜の成長速度が不十分となる。
また、図6に示す窒化アルミニウム結晶の製造装置200は、坩堝201内のGa―Al合金融液202中に、ガス導入管203の供給口203a側に設けた保持プレート204を浸漬させ、シード基板205が下側を向くように保持プレート204を逆さにして設けている。このため、この窒化アルミニウム結晶の製造装置200では、シード基板205に窒素含有ガスが直接供給されるようになる。しかしながら、このような窒化アルミニウム結晶の製造装置200では、AlN結晶の成長が得られるが、窒素含有ガスがシード基板205に付着したままになってしまうと、AlN結晶表面の平坦性が悪く、エピタキシャル成長のための表面加工が難しくなってしまう。
特開2004−224600号公報 特開平11−189498号公報 国際公開第2012/008545号公報 特開2012−167001号公報 特開2013−173638号公報
本発明は、Ga−Al合金融液を用いて種結晶基板上にAlN結晶をエピタキシャル成長させる液相成長法において、種結晶基板の口径を大きくした場合であっても全面に結晶成長がなされ、安定して良質な窒化アルミニウム結晶を得ることができる窒化アルミニウム結晶の製造方法及び窒化アルミニウム結晶の製造装置を提供することを目的とする。
本件発明者らは、Ga−Al合金融液を用いて種結晶基板上にAlN結晶をエピタキシャル成長させる液相成長法について鋭意検討を重ねた結果、Ga−Al合金融液に浸漬させる種結晶基板の育成面を窒素含有ガスの供給口近くに配置することにより、シード基板表面の良好な結晶性を引き継ぎかつAl極性を有し、表面が平坦で良好なAlN結晶を安定して形成できることを見出した。
すなわち、本発明に係る窒化アルミニウム結晶の製造方法は、Ga−Al合金融液を収容した坩堝と、先端の供給口がGa−Al合金融液に挿入され、Ga−Al合金融液N原子を含有するガスを供給するガス導入管と、ガス導入管の供給口を囲み、供給口と対向する位置シード基板を保持プレートの上面に配置して保持し、供給口から供給されたガスを一時的に供給口とシード基板との間のGa−Al合金融液に滞留させガスを直接シード基板上に当てるガス滞留部とを有する窒化アルミニウム結晶の製造装置を用いた窒化アルミニウム結晶の製造方法であって、ガス滞留部でガスを一時的に滞留させてシード基板上に窒化アルミニウム結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とする。
本発明に係る窒化アルミニウム結晶の製造装置は、Ga−Al合金融液を収容した坩堝と、先端の供給口がGa−Al合金融液に挿入され、Ga−Al合金融液N原子を含有するガスを供給するガス導入管と、ガス導入管の供給口を囲み、供給口と対向する位置シード基板を保持プレートの上面に配置し保持し、供給口から供給されたガスを一時的に供給口とシード基板との間のGa−Al合金融液に滞留させガスを直接シード基板上に当てるガス滞留部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、シード基板近くのGa−Al合金融液への窒素溶存量を増やし、シード基板の口径を大きくした場合であっても基板全面に窒化アルミニウム結晶膜を従来よりも厚く、安定した良質な窒化アルミニウム結晶膜を育成することが可能になる。また、本発明では、シード基板上にAlN結晶を低温で安定して成長させることが可能である。したがって、本発明により得られる良好な結晶性を有するAlN結晶を備えた基板を用いることにより、この基板上に転位密度の低いAlGaN系半導体膜をMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等によりエピタキシャル成長させることが可能となり、AlGaN系半導体膜で構成される半導体素子の高性能化が図れる。
AlN結晶製造装置の構成例を示す図である。 同装置における保持治具が固定されたガス導入管の先端側の一部拡大図である。 図3(A)は、固定プレートの平面図であり、図3(B)は、保持プレートの平面図である。 エピタキシャル成長後のシード基板の断面を示すSEM観察写真である。 従来のAlN結晶製造装置の構成例を示す図である。 従来のAlN結晶製造装置の構成例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態における窒化アルミニウム結晶の製造方法及び窒化アルミニウム結晶の製造装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
図1は、窒化アルミニウム結晶の製造装置1(以下、AlN結晶製造装置1という)の構成例を示す図である。AlN結晶製造装置1は、ガス導入管2と、坩堝3と、坩堝3内に配置される種結晶基板4(以下、シード基板4という)と、シード基板4を保持する保持治具5と、Ga−Al合金融液6を加熱するヒータ7と、ガス排出管8と、熱電対9とを備える。
ガス導入管2は、坩堝3内のGa−Al合金融液6にN原子を含有するガス(以下、窒素含有ガスという。)を供給するものである。ガス導入管2は、管部2aの後端から送り込まれた窒素含有ガスを先端側に設けられ、Ga−Al合金融液6に窒素含有ガスを供給する供給口2bから排出する。AlN結晶製造装置1では、Ga−Al合金融液6にガス導入管2から窒素含有ガスを供給することでバブリングすることができる。
また、ガス導入管2は、Ga−Al合金融液6に窒素含有ガスを供給するだけではなく、保持治具5がGa−Al合金融液6内で浮いたり、動いたりしないように保持治具5を保持する役割も有している。ガス導入管2は、管部2aの先端側に、管部2aの断面よりも広い断面を有し、例えば円盤状の保持部2cを有する。保持部2cには、上面に保持治具5の固定プレート22が置かれ、後述するようにボルト10とナット11とにより保持治具5が一体となるように固定されている。
坩堝3は、耐高温性のものが用いられ、例えばアルミナ、ジルコニアなどのセラミックを用いることができる。
シード基板4は、AlN結晶と格子不整合率が小さい格子整合基板であり、例えば、AlN薄膜を表面に形成した窒化サファイア基板、SiC基板、GaN基板などが用いられる。AlN結晶製造装置1では、この中でも窒化サファイア基板を用いることにより、表面の良好な結晶性を引き継いだ窒化アルミニウム結晶(AlN結晶)をホモエピタキシャル成長させることができる。
窒化サファイア基板は、例えば、特開2005−104829号公報、特開2006−213586号公報、特開2007−39292号公報などに開示されている方法により得ることができる。具体的には、例えばc面サファイア基板を窒素分圧0.9atm/CO分圧0.1atm、温度1500℃で1時間保持した後、窒素分圧1.0atmで5時間保持することにより、AlN薄膜の結晶性に優れた窒化サファイア基板を得ることができる。この窒化サファイア基板は、表面のAlN膜がc軸配向単結晶膜である。
シード基板4の口径は、特に限定されないが、例えば25mm〜65mm程度のものを用いることができる。AlN結晶製造装置1では、後述するようにシード基板4を保持プレート23の上面に配置し、窒素含有ガスが供給されるガス導入管2の供給口2bと対向させる。シード基板4は、保持治具5内で窒素含有ガスが滞留するため、窒素含有ガスが溶存したGa−Al合金融液6と表面が接するようになる。これにより、このAlN結晶製造装置1では、図6に示すようにシード基板を供給口側に設けた場合と比べて、シード基板4が窒素含有ガスで覆われず、シード基板4と窒素含有ガスとの間にGa−Al合金融液6を介在させることができる。これにより、図6のようにシード基板を供給口側に設けた場合よりも、AlN結晶を低温で安定に形成でき、更に大口径のシード基板4であっても全面に結晶成長させることができ、安定して表面が平坦な良質のAlN結晶を得ることができる。
また、シード基板4に窒化サファイア基板を用いる場合は、予め900℃以上1500℃以下の温度で窒化サファイア基板のアニール処理を行うことが望ましい。シード基板4は、窒化サファイア基板にアニール処理を行うことで、AlN薄膜に回転ドメインが存在した場合であっても、ドメインの再配列が促され、c軸配向したシングルドメインとなる。
シード基板4を保持する保持治具5は、ガス導入管2の先端に設けられ、供給口2bを囲むようにガス導入管2に取り付けられている。保持治具5は、供給口2bとシード基板4との間のGa−Al合金融液6に窒素含有ガスを一時的に滞留させるガス滞留部21を形成するものである。保持治具5は、図1に示すように、水平に設けられている。即ち保持治具5は、ガス導入管2と直角となるように設けられている。
保持治具5は、ガス導入管2の先端に固定される固定プレート22と、固定プレート22に対向して設けられ、シード基板4を保持する保持プレート23と、固定プレート22と保持プレート23と間に介在する支柱24とを有する。保持治具5は、固定プレート22と保持プレート23との間に支柱24を介在させ、固定プレート22、保持プレート23及び支柱24にボルト25を通し、ボルト25とナット26によって、固定プレート22と保持プレート23と支柱24が図2に示すように組み合わされてなる。
保持治具5は、固定プレート22と保持プレート23と支柱24とによって囲まれた空間内のGa−Al合金融液6に窒素含有ガスを滞留させる。保持治具5は、支柱24間が開いているため、窒素含有ガスが内部でこもることなく、一時的に滞留した後、排出され、新鮮な窒素含有ガスが内部に供給される。
保持治具5は、耐高温性のものが用いられ、例えばアルミナ、ジルコニアなどのセラミックを用いることができる。
固定プレート22は、図1及び図2に示すように、ガス導入管2の保持部2c上に置かれ、保持治具5をガス導入管2に固定するものである。固定プレート22は、少なくともシード基板4全体を覆うことができる大きさであればよく、形状は限定されない。固定プレート22は、図3(A)に示すように、例えば円盤状に形成され、中心にガス導入管2を貫通させるガス用貫通孔22aを有し、このガス用貫通孔22aの周囲に保持部2cと接続するためのボルト10を貫通させるためのボルト用貫通孔22bを複数有する。更に、固定プレート22は、外周側の端部に支柱24中を通したボルト25を貫通させるボルト用貫通孔22cを複数有する。なお、固定プレート22の形状や貫通孔22a〜22cの形状、数等については、図(3)Aに示すものに限定されず、保持治具5の大きさやシード基板4の形状等に合わせて適宜変更することができる。
保持プレート23は、図1及び図2に示すように、固定プレート22に対向して設けられ、上面にシード基板4が置かれ、シード基板4を保持する。保持プレート23は、図3(B)に示すように、例えば、円盤状に形成され、中央にシード基板4を配置し、シード基板4が外れないように複数の押さえ部材27で固定している。押さえ部材27は、例えばL字状に形成され、保持プレート23との間でシード基板4を挟んでいる。シード基板4を固定する方法については、シード基板4の端部を押さえてシード基板4が外れなければ良いので、この構造に限定されず、他の構造のものであってもよい。また、AlN結晶製造装置1では、シード基板4の大口径化、複数枚を保持して製造ができるため、この形態に限定されない。また、保持プレート23には、外周側の端部に支柱24中を通したボルト25を貫通させるボルト用貫通孔23aを複数有する。
支柱24は、図1及び図2に示すように、固定プレート22と保持プレート23との間に介在し、固定プレート22と保持プレート23とが所定の距離をもって対向するようにする。支柱24の位置や本数は、図1乃至3に示すものに限定されず、シード基板4、固定プレート22及び保持プレート23の大きさや形状等に応じて適宜変更することができる。
以上のような構成からなる保持治具5は、図1及び図2に示すように、ガス導入管2と一体となった固定プレート22を上部とし、固定プレート22と保持プレート23で支柱24を挟み、ボルト25とナット26とで固定プレート22と保持プレート23が一体になるように組み立ててなる。
AlN結晶製造装置1では、シード基板4上にAlN結晶をエピタキシャル成長させる上で、窒素含有ガスとシード基板4の間に常にGa−A合金融液6が存在しなければ、AlN結晶を安定して形成することができない。このため、保持治具5では、窒素含有ガスとシード基板4との間にGa−Al合金融液6が存在し、かつそのGa−Al合金融液6中に窒素含有ガスが溶解しているように、供給口2bとシード基板4との距離を調整する。この保持治具5では、支柱24の長さ及びボルト25の長さを変更することで、供給口2bとシード基板4との距離を適宜調整することができる。
供給口2bとシード基板4との距離は、5mmより大きく、20mm未満であること好ましい。供給口2bとシード基板4との距離を5mmより大きく、20mm未満とすることで、窒素含有ガスが溶存したGa−A合金融液6をシード基板4に確実に接触させることができる。距離が5mm以下の場合には、供給口2bとシード基板4との距離が近すぎるため、シード基板4が窒素含有ガスで覆われてしまい、AlN結晶表面の平坦性が悪くなってしまう。一方、距離が20mm以上の場合には、窒素含有ガスが十分に供給されず、AlN結晶膜の成長速度が不十分となってしまう。
この保持治具5は、固定プレート22と、保持プレート23と、複数の支柱24とによって囲まれた空間内に、Ga−Al合金融液6と、ガス導入管2の供給口2bと、シード基板4とが存在するように設けられている。
保持治具5では、保持プレート23を供給口2bの下に配置することにより、ガス導入管2の供給口2bから供給された窒素含有ガスが保持治具5内に供給される。保持治具5では、供給口2bより上に固定プレート22があることにより、固定プレート22と、保持プレート23と、複数の支柱24とによって囲まれたGa−Al合金融液6中に窒素含有ガスを一時的に滞留させることができる。これにより、保持治具5では、シード基板4の近傍のGa−Al合金融液6に窒素を多く溶解させることができ、Ga−Al合金融液6中の窒素溶存量を増やすことができる。したがって、保持治具5は、窒素含有ガスが十分に溶存したGa−Al合金融液6とシード基板4との接触をより確実にし、接触を増やすようにすることができる。
なお、保持治具5は、固定プレート22とシード基板4との間のGa−Al合金融液6中に窒素含有ガスを滞留させることができれば良いため、図1及び図2に示す構造に限られない。例えば、上述した保持治具5としては、ガス導入管2と固定プレート22とが異なる部材のものであったが、このことに限定されず、ガス導入管2と固定プレート22とが一体に形成され、シード基板4が落ちないように保持プレート23が取り付けられたものであってもよい。
Ga−Al合金融液6は、GaとAlとのモル比率が99:1〜1:99の範囲のものを用いることができる。Ga−Al合金融液6としては、この中でも、低温成長及び結晶性の観点から、GaとAlとのモル比率が98:2〜40:60の範囲のものが好ましく、さらに好ましくは98:2〜50:50の範囲のものである。
窒素含有ガスとしては、N、NH等を用いることができるが、安全性の観点からNを用いることが好ましい。また、窒素含有ガスの圧力は、通常0.01MPa以上1MPa以下である。
以上のような構成からなるAlN結晶製造装置1は、図1に示すように、坩堝3内のGa−Al合金融液6中に挿入されたガス導入管2の供給口2bが固定プレート22よりも低い位置にあり、供給口2b側にシード基板4が向くように保持治具5を設ける。
このAlN結晶製造装置1では、ガス導入管2の供給口2bを囲む保持治具5内に窒素含有ガスを供給することで、窒素含有ガスをシード基板4の近傍で一時的に滞留させることができ、窒素含有ガスを十分に溶存したGa−Al合金融液6とシード基板4との接触を増やすことができる。これにより、このAlN結晶製造装置1では、Ga−Al合金融液6中のシード基板4上にAlN結晶をエピタキシャル成長させることができ、シード基板4の表面に良好な結晶性を引き継ぎかつAl極性を有するAlN結晶を低温でも安定に形成することができる。また、このようなAlN結晶製造装置1では、窒素含有ガスが溶解したGa−Al合金融液6とシード基板4とを確実に接触させることができるため、表面が平坦なAlN結晶を成長させることができる。更に、このようなAlN結晶製造装置1では、シード基板4を大口径した場合であっても全面に結晶成長がなされ、安定して良質なAlN結晶を得ることができる。例えばシード基板4を65mm程度の大口径にした場合であっても安定して良質なAlN結晶を得ることができる。
続いて、AlN結晶の製造方法について説明する。上述したようなAlN結晶製造装置1において、先ず、保持部2cに保持治具5の固定プレート22を取り付け、保持プレート23にシード基板4をセットし、支柱24、ボルト24、ナット26を用いて保持治具5を組み立て、先端に保持治具5が固定されたガス導入管2をGa−Al合金融液6上に待機させる。
次に、窒素ガス、アルゴンガスなどの雰囲気中でGa−Al合金融液6の昇温を開始し、Alの融点に達した後、供給口2bから窒素含有ガスを供給させつつGa−Al合金融液6中に保持治具5を浸漬する。
次に、坩堝3内のGa−Al合金融液6の温度をヒータ7で更に昇温させ、1000℃以上1500℃以下の目標温度に保持した状態で保持治具5内のGa−Al合金融液6に窒素含有ガスを一時的に滞留させて、シード基板4上にAlN結晶を生成させる。尚、浸漬するタイミングは、目標温度に達してからでも良い。
AlN結晶の製造方法では、この際に、図1に示すように、保持治具5によりシード基板4が供給口2b側に向くように上向きに配置されているため、Ga−Al合金融液6中でバブリングされた窒素含有ガスを直接シード基板4に当てることによってAlN結晶の成長を促進させることができる。
また、上述のAlN結晶の製造方法において、シード基板4に窒化サファイア基板を用いる場合には、ガス導入管2に固定した保持治具5に取り付けた窒化サファイア基板をGa−Al合金融液6中に浸漬する直前に、Ga−Al合金融液6の直上で保持することで、窒化サファイア基板のアニール処理をAlN結晶製造装置1内で行うことができる。アニール処理時のシード基板温度は、窒化サファイア基板がGa−Al合金融液6の直上で保持されているため、Ga−Al合金融液6の温度と同等になる。
シード基板4上にAlN結晶を生成させる際のGa−Al合金融液6の温度は、1000℃以上とすることが好ましい。これにより、注入された窒素とGa−Al合金融液6中のガリウム及びアルミニウムのそれぞれとが化合して生成されたGaN及びAlNの微結晶のうち、GaN微結晶が解離し、ガリウムと窒素に分解するため、AlN結晶成長の阻害を防ぐことができる。なお、AlN結晶の融点は2000℃以上であり、1500℃以下では安定である。
また、AlN結晶は、1気圧の常圧条件でも成長させることができ、窒素の溶解度が小さい場合には加圧してもよい。
そして、所定時間が経過した後、シード基板4をGa−Al合金融液6から取り出して、徐冷を行う。
以上説明したように、AlN結晶の製造方法では、Ga−Al合金融液6を用いてシード基板4上にAlN結晶をエピタキシャル成長させる方法において、保持治具5内のGa−Al合金融液6に一時的に窒素含有ガスを滞留させることで、シード基板4と窒素含有ガスが溶存したGa−Al合金融液6とをより確実に接触させることができるため、シード基板4の表面に良好な結晶性を引き継ぎかつAl極性を有し、表面が平坦で良質なAlN結晶を低温でも安定に形成することができる。また、このAlN結晶の製造方法では、シード基板4を大口径とした場合であっても全面に結晶成長がなされ、安定して良質なAlN結晶を得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
実施例では、先ず、c面サファイア基板を窒素分圧0.9atm/CO分圧0.1atm、温度1500℃で1時間保持した後、窒素分圧1.0atmで5時間保持し、窒化サファイア基板を得た。
次に、ガリウムとアルミニウムのモル比率が60:40のGa−Al合金融液からなるフラックスを窒素ガス中で昇温させた。アルミニウムの融点に達した後、フラックス中に0.1MPaの窒素ガスを100cc/minの流速で吹き込んだ。ジルコニア式酸素センサーで測定したところ、酸素分圧は1.58×10−6atmであった。
そして、坩堝内のフラックスの温度を1300℃に保ち、常圧で窒化アルミニウム薄膜が形成された窒化サファイア基板が上向きとなるように配置し、保持プレートが水平となるようにガス導入管の保持部に保持治具を取り付けてフラックス中に浸漬させた(図1参照)。
次に、5時間経過した後、窒化アルミニウム基板をフラックス中から取り出して徐冷を行い、AlN結晶を生成させた。この際、窒素含有ガスの供給口とシード基板との距離は7mmで行った。
その結果、実施例では、AlN結晶はサファイア基板上に均一に成長して、AlN結晶の膜厚は3μmであった。また、実施例では、窒化サファイア基板上の窒化アルミニウム膜の品質を受け継いだ配向性が高く、表面が平坦な良好のAlN結晶をエピタキシャル成長させることが確認できた。
図4に、実施例のエピタキシャル成長後のサファイア基板断面を示すSEM観察写真を示す。
[比較例1]
比較例1では、図5に示すAlN結晶製造装置を用いたこと以外は、実施例と同様にしてAlN結晶を生成させた。その結果、AlN結晶はシード基板上に平坦性の良いものは出来たが、膜厚が1μm程度と薄いものであった。
[比較例2]
比較例2では、図6に示すAlN結晶製造装置を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてAlN結晶を生成させた。その結果、AlN結晶はシード基板上に3.8μm成長していたが、AlN結晶表面の平坦性が悪かった。
以上の実施例及び比較例の結果から、シード基板となるサファイア基板を上向きし、窒素含有ガスの供給口をシード基板の近くに設け、窒素含有ガスを溶存したGa−Al合金融液をサファイア基板に接触させた実施例では、AlN結晶をエピタキシャル成長させることができ、膜厚が厚く、平坦性が良い、良質なAlN結晶を得ることができた。
一方、シード基板が上側となるように配置し、下側から窒素含有ガスを直接当てていない比較例1では、AlN結晶の成長が十分ではなく、膜厚が実施例よりも薄くなった。更に、シード基板を下向きにして、窒素含有ガスを直接当てた比較例2では、AlN結晶は実施例より成長していたが、平坦性が良いAlN結晶を得ることができなかった。
したがって、実施例のように、シード基板を上側となるように配置して、更に窒素含有ガスを溶存させたGa−Al合金融液をシード基板に接触させることにより、膜厚が厚く、平坦性の良い、良質なAlN結晶が得られることがわかる。
1 AlN晶製造装置、2 ガス導入管、2a 管部、2b 供給口、2c 保持部、3 坩堝、4 シード基板、5 保持治具、6 Ga−Al溶融液、7 ヒータ、8 ガス排出管、9 熱電対、10 ボルト、11 ナット、21 ガス滞留部、22 固定プレート、23 保持プレート、24 支柱、25 ボルト、26 ナット、27 押さえ部材

Claims (6)

  1. Ga−Al合金融液を収容した坩堝と、先端の供給口が上記Ga−Al合金融液に挿入され、該Ga−Al合金融液N原子を含有するガスを供給するガス導入管と、上記ガス導入管の上記供給口を囲み、該供給口と対向する位置シード基板を保持プレートの上面に配置して保持し、該供給口から供給されたガスを一時的に該供給口と該シード基板との間の上記Ga−Al合金融液に滞留させ上記ガスを直接上記シード基板上に当てるガス滞留部とを有する窒化アルミニウム結晶の製造装置を用いた窒化アルミニウム結晶の製造方法であって、
    上記ガス滞留部で上記ガスを一時的に滞留させて上記シード基板上に窒化アルミニウム結晶をエピタキシャル成長させることを特徴とする窒化アルミニウム結晶の製造方法。
  2. 上記ガスの上記供給口と上記シード基板との距離が5mmより大きく、20mm未満であることを特徴とする請求項1に記載に窒化アルミニウム結晶の製造方法。
  3. Ga−Al合金融液を収容した坩堝と、先端の供給口が上記Ga−Al合金融液に挿入され、該Ga−Al合金融液N原子を含有するガスを供給するガス導入管と、上記ガス導入管の上記供給口を囲み、該供給口と対向する位置シード基板を保持プレートの上面に配置し保持し、該供給口から供給されたガスを一時的に該供給口と該シード基板との間の上記Ga−Al合金融液に滞留させ上記ガスを直接上記シード基板上に当てるガス滞留部とを有することを特徴とする窒化アルミニウム結晶の製造装置。
  4. 上記ガス滞留部は、上記ガス導入管の先端に固定される固定プレートと、該固定プレートに対向して設けられ、上記シード基板を保持する保持プレートと、該固定プレートと該保持プレートと間に介在する支柱とによって形成され、該固定プレートと該保持プレートと該支柱とによって囲まれた上記Ga−Al合金融液中に上記ガスを滞留させることを特徴とする請求項3に記載の窒化アルミニウム結晶の製造装置。
  5. 上記ガスの供給口と上記シード基板との距離が5mmより大きく、20mm未満であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の窒化アルミニウム結晶の製造装置。
  6. 上記ガス滞留部の保持プレートには、1以上のシード基板を保持することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の窒化アルミニウム結晶の製造装置。
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