一般に、フロントエンジン・リヤドライブ方式の自動車(FR車)に搭載される手動変速機は、クラッチを介してエンジンの出力軸に連絡された入力軸と、該入力軸に平行に配置されたカウンタシャフトと、入力軸と同じ軸線上に配置され、プロペラシャフトを介して駆動輪側に連絡された出力軸とを有する。入力軸と出力軸は、相対回転可能に相互に嵌合されることでメインシャフトを構成している。
メインシャフトとカウンタシャフトとの間には、複数の前進用ギヤ列、通常は1つのリバース用ギヤ列、及び1つの減速用ギヤ列が設けられる。前進用ギヤ列及び減速用ギヤ列は、一般に常時噛合い式とされており、リバース用ギヤ列は常時噛み合い式又は選択摺動式とされる。
減速用ギヤ列は、メインシャフトとカウンタシャフトとの間で回転を減速させて伝達する一対の固定ギヤからなり、変速段に関係なく常に動力伝達状態とされる。
前進用ギヤ列は、メインシャフト又はカウンタシャフトの一方に固定された固定ギヤと、他方のシャフトに遊嵌されて固定ギヤに常時噛み合う遊嵌ギヤとを備えており、同期装置によって遊嵌ギヤとシャフトの回転が同期されることで、このギヤ列での動力伝達状態が円滑に実現される。なお、入力軸と出力軸を直結させる直結変速段にはギヤ列が設けられず、直結変速段の実現は、同期装置によって入力軸と出力軸の回転が同期されることでなされる。
リバース用ギヤ列は、常時噛み合い式とされる場合、メインシャフト又はカウンタシャフトの一方に設けられた固定ギヤと、他方のシャフトに設けられた遊嵌ギヤと、これらのギヤ間に介在することで回転方向を反転させる反転ギヤとを備え、同期装置によって遊嵌ギヤとシャフトの回転が同期されることで動力伝達状態となる。
これらのギヤ列は軸方向(車体前後方向)に並べて配置されるが、減速用ギヤ列は、通例、最もエンジン側(車体前方側)又は最も駆動輪側(車体後方側)に配置される。減速用ギヤ列が最も前方側に配置された変速機構はインプットリダクションタイプと呼ばれ、このタイプでは、エンジン側から入力軸に入力された回転は、先ず減速用ギヤ列において減速されてカウンタシャフトに伝達され、カウンタシャフトから所望の変速段に対応するギヤ列を介して出力軸に伝達される。一方、減速用ギヤ列が最も後方側に配置された変速機構はアウトプットリダクションタイプと呼ばれ、このタイプでは、入力軸に入力された回転は、先ず所望の変速段に対応するギヤ列を介してカウンタシャフトに伝達されて、カウンタシャフトの回転が減速用ギヤ列において減速されて出力軸に伝達される。また、いずれのタイプにおいても、直結変速段では、入力軸と出力軸が直結されることから、いずれのギヤ列も経由することなく入力軸の回転が出力軸へ直接伝達される。
この種の変速機構に設けられる同期装置は、通常、軸方向に摺動可能なように遊嵌ギヤと同軸上に隣接して配置されたシンクロスリーブを備え、同期装置の作動によってシンクロスリーブが軸方向の一方側にスライド移動されると、この一方側に隣接したギヤ列の遊嵌ギヤがシャフトに固定されて、該ギヤ列が動力伝達状態となる。
同期装置は、シャフト上において両側に隣接する2つのギヤ列に兼用されることがあり、例えば、前進6段の手動変速機の場合、1速と2速に兼用される1−2速用、3速と4速に兼用される3−4速用、5速と6速に兼用される5−6速用の各同期装置が設けられることがある。
なお、フロントエンジン・フロントドライブ方式の自動車(FF車)等、FR車以外の車両に搭載される手動変速機の変速機構も、2本の平行なシャフト間に常時噛み合い式のギヤ列が変速段毎に設けられ、同期装置によって各ギヤ列の遊嵌ギヤの回転がシャフトの回転に同期可能とされている点で同様の構成を有する。
以上のような変速機構を備えた手動変速機において、変速操作機構は、運転者によるチェンジレバーのシフト操作力を同期装置のシンクロスリーブに伝達するように構成され、シンクロスリーブの移動方向は、シフト操作の方向によって決まる。
一方、シフト操作の方向は、シフトパターンに従って変速段毎に決まっており、前進段においては、通常、奇数段への変速は前方へのシフト操作によって行われ、偶数段への変速は後方へのシフト操作によって行われる。したがって、変速機構における各変速段のギヤ列とこれに対応する同期装置の並び順は、シフト操作方向を考慮して決められる。例えば、上記のような1−2速用、3−4速用、5−6速用の同期装置を備えた変速機構では、シフト操作方向のみを考慮すれば、各同期装置に対して、奇数段のギヤ列を軸方向の一方側に配置し、偶数段のギヤ列を軸方向の他方側に配置するようなレイアウトが採用されることになる。
さらに、各変速段のギヤ列及び同期装置のレイアウト設計においては、シフト操作方向の他にも、上述したインプットリダクションタイプ又はアウトプットリダクションタイプの選択に応じたレイアウト設計を行うこと、潤滑のために変速機ケースの底部に溜まったオイルの掻き上げが行われる場所に大径のギヤを配置すること、大きなトルクがかかる低変速段のギヤ列を軸受の近くに配置することなど、種々の条件が考慮される。
例えば、1−2速用、3−4速用、5−6速用の同期装置を備えたインプットリダクションタイプの変速機構において、直結変速段が6速である場合には、入力軸と出力軸の嵌合部の後方側に隣接して5−6速用同期装置を配置し、さらにこの後方側に隣接して5速のギヤ列を配置することなどが行われる。この場合、5−6速用同期装置のシンクロスリーブは、6速への変速時には前方側へスライドし、5速への変速時には後方側へスライドすることになることから、他の同期装置のシンクロスリーブも偶数段への変速時に前方側へスライドさせ、奇数段への変速時に後方側へスライドさせるためには、1−2速用同期装置の前方側に隣接して2速のギヤ列、後方側に隣接して1速のギヤ列をそれぞれ配置し、3−4速用同期装置の前方側に4速のギヤ列、後方側に3速のギヤ列をそれぞれ配置すればよい。
ところで、このように構成された6速直結でインプットリダクションタイプの変速機構が量産されている場合において、この変速機構の直結変速段を6速から5速に変更した5速直結タイプのものを製品化しようとする場合、5速のギヤ列が廃止される代わりに6速のギヤ列が設けられ、車体前方側から、入力軸と出力軸の嵌合部、5−6速用同期装置、6速のギヤ列の順で配置されることになる。そして、5速及び6速への変速時において、5−6速用同期装置のシンクロスリーブのスライド方向は、上記の6速直結タイプに対して反転されて、5速への変速時に前方側へスライドし、6速への変速時に後方側へスライドすることになる。
この場合において、1速〜4速の各ギヤ列や1−2速用及び3−4速用の同期装置の配置を6速直結タイプと共通化しようとすれば、1−2速用及び3−4速用の同期装置のシンクロスリーブは、奇数段への変速時に後方側へスライドし、偶数段への変速時に前方側へスライドすることになり、この点で、5−6速用同期装置と一致しなくなる。したがって、シフトパターンに従ったシフト操作方向とシンクロスリーブの移動方向との間に一定の関係を築けなくなる。
このような場合には、例えば特許文献1に開示された変速操作機構のように、所定の変速段のシフト方向を反転させてシンクロスリーブ側へ伝達させる反転機構が設けられることがあり、これにより、シフト操作方向とシンクロスリーブの移動方向との関係を他の変速段に合わせることが可能になる。
具体的に、特許文献1に開示された手動変速機の変速機構では、5速とリバースで同期装置が兼用されていることから、5速への変速時とリバースへの変速時とでは、シンクロスリーブのスライド方向が反対となる。これに対して、シフトパターンは、5速及びリバースへのシフト操作方向がいずれも前方へ向かう方向となるように構成されていることから、いずれか一方のシフト操作方向を反転させてシンクロスリーブへ伝達させる必要がある。
そこで、特許文献1の変速操作機構には、5速へのシフト操作に連動して軸方向に移動する第1シフトロッドと、該第1シフトロッドに平行に配置された第2シフトロッドとの間に、5速へのシフト操作方向を反転させる反転機構が設けられており、第2シフトロッドに固定されたシフトフォークに、5速−リバース用同期装置のシンクロスリーブが係合されている。
具体的に、特許文献1の反転機構は、第1及び第2シフトロッド間にこれらのロッドに直角な方向に延びる支持軸と、該支持軸に回転自在に支持されたレバー部材とを備えている。レバー部材は、支持軸から径方向に延びる第1レバー部と、支持軸から第1レバー部とは反対側に向かって径方向に延びる第2レバー部とを備えており、第1レバー部の先端部は、第1シフトロッドの係合凹部に係合され、第2レバー部の先端部は、第2シフトロッドの係合凹部に係合されている。
そして、リバースへのシフト操作が行われるときは、このシフト操作力が第1シフトロッドを介することなく直接第2シフトロッドに伝達されて、該第2シフトロッドと共にシフトフォークが軸方向の一方側へスライドされることで、同期装置のシンクロスリーブが同じ方向にスライドされて、リバースのギヤ列が動力伝達状態となる。
一方、5速へのシフト操作が行われるときは、このシフト操作力が先ず第1シフトロッドに伝達されて、該第1シフトロッドが軸方向の前記一方側へスライドされると共に、該第1シフトロッドに係合された反転機構のレバー部材が支持軸周りに回動することで、該レバー部材に係合された第2シフトロッドと共にシフトフォークが軸方向の他方側へスライドされる。これにより、同期装置のシンクロスリーブがリバースへの変速時とは反対側へスライドされて、5速のギヤ列が動力伝達状態となる。
なお、同様の反転機構は、フロントエンジン・フロントドライブ方式の自動車(FF車)等、FR車以外の車両に搭載される手動変速機の変速操作機構にも同様に設けることが可能である。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る変速操作機構60は、例えばFR車に搭載される縦置き式の手動変速機に設けられたものである。該手動変速機は、例えば前進6段、後退1段の変速段を有し、図1に示す変速機構2を備えている。
[変速機構]
図1に示すように、変速機構2は、車体前後方向に延びるメインシャフト6と、該メインシャフト6に平行に配置されたカウンタシャフト9とを備えている。メインシャフト6は、クラッチ5を介してエンジン出力軸4に連絡された入力軸7と、該入力軸7の車体後方側において入力軸7と同一軸線上に配置されて、駆動輪側に連絡された出力軸8とを備えている。入力軸7の後端部には、出力軸8の前端部に回転自在に嵌合された嵌合部7aが設けられている。
メインシャフト6とカウンタシャフト9との間には、常時噛み合い式の複数のギヤ列G0,G1,G2,G3,G4,G6,GRが設けられている。具体的に、メインシャフト6の入力軸7とカウンタシャフト9との間に減速用ギヤ列G0が設けられ、メインシャフト6の出力軸8とカウンタシャフト9との間に、6速用ギヤ列G6、2速用ギヤ列G2、1速用ギヤ列G1、4速用ギヤ列G4、3速用ギヤ列G3、リバース用ギヤ列GRが車体前方側からこの順で設けられている。
なお、変速機構2は5速直結タイプとされており、直結変速段では入力軸7と出力軸8が直結されることから、5速用ギヤ列は設けられていない。
上記のように減速用ギヤ列G0は入力軸7側に設けられており、これにより、所謂インプットリダクションタイプの変速機構2が構成されている。減速用ギヤ列G0は、入力軸7に固定されたドライブギヤ11と、カウンタシャフト9に固定されたドリブンギヤ21とを備えている。ドリブンギヤ21はドライブギヤ11よりも大径であり、これにより、直結変速段以外の変速段において、入力軸7の回転は、減速用ギヤ列G0を介して減速されてカウンタシャフト9に伝達される。
各前進変速段のギヤ列G1,G2,G3,G4,G6は、カウンタシャフト9に固定されたドライブギヤ22,23,24,25,26と、出力軸8に遊嵌されたドリブンギヤ12,13,14,15,16とを備えている。リバース用ギヤ列GRは、カウンタシャフト9に固定されたドライブギヤ27と、出力軸8に遊嵌されたドリブンギヤ17と、カウンタシャフト9及び出力軸8に平行に配置されたリバースシャフト10に遊嵌された中間ギヤ18とを備えている。リバース用ギヤ列GRでは、ドライブギヤ27とドリブンギヤ17との間に中間ギヤ18が介在することにより、前進時とは反対方向の回転が出力軸8に伝達される。
出力軸8には、各ギヤ列G1,G2,G3,G4,G6,GRのドリブンギヤ12,13,14,15,16,17と出力軸8の回転の同期、又は、入力軸7と出力軸8の回転の同期を行って、対応する変速段を形成する同期装置31,32,33,34が設けられている。
具体的には、出力軸8上において、5速と6速の形成に兼用される5−6速用同期装置31が、入力軸7の嵌合部7aと6速用ギヤ列G6のドリブンギヤ12との間に設けられ、1速と2速の形成に兼用される1−2速用同期装置32が、2速用ギヤ列G2及び1速用ギヤ列G1のドリブンギヤ13,14間に設けられ、3速と4速の形成に兼用される3−4速用同期装置33が、4速用ギヤ列G4及び3速用ギヤ列G3のドリブンギヤ15,16間に設けられ、後退変速段の形成に用いられるリバース用同期装置34が、リバース用ギヤ列GRのドリブンギヤ17の例えば車体後方側に隣接して設けられている。
5−6速用同期装置31の作動によってシンクロスリーブ31aが車体前方側へスライドされると、入力軸7と出力軸8の回転が同期されて、直結変速段である5速が形成される。これにより、入力軸7から出力軸8へ動力が直接伝達される。逆に、5−6速用同期装置31のシンクロスリーブ31aが車体後方側へスライドされると、6速用ギヤ列G6のドリブンギヤ12と出力軸8の回転が同期されることで6速用ギヤ列G6が動力伝達状態となって、6速が形成される。
同様に、1−2速用同期装置32のシンクロスリーブ32aが車体前方側にスライドされると2速が形成され、車体後方側にスライドされると1速が形成される。また、3−4速用同期装置33のシンクロスリーブ33aが車体前方側へスライドされると4速が形成され、車体後方側へスライドされると3速が形成される。リバース用同期装置34のシンクロスリーブ34aは、車体後方側へスライドされることにより、ドリブンギヤ17と出力軸8の回転を同期させて、後退変速段を形成する。
5速以外の変速段が形成されたときは、入力軸7から減速用ギヤ列G0を介してカウンタシャフト9に動力が伝達されると共に、該カウンタシャフト9から、動力伝達状態となったギヤ列G1,G2,G3,G4,G6,GRを介して出力軸8に動力が伝達される。
[変速操作機構]
以下、図2〜図7を参照しながら、変速操作機構60について説明する。
変速操作機構60は、チェンジレバー200のセレクト操作及びシフト操作に連動して動作するように該チェンジレバー200に連絡されている。チェンジレバー200のセレクト操作及びシフト操作は、所定のシフトパターン202に従って行われる。
図5の平面図に示すように、シフトパターン202は、車体幅方向に延びるセレクトレーンLS、該セレクトレーンLSから車体前方側へ車体前後方向に延びるリバースシフトレーンLR、セレクトレーンLSから車体前方側及び車体後方側へ車体前後方向に延びる1−2速シフトレーンL12、3−4速シフトレーンL34、5−6速シフトレーンL56を備えている。このシフトパターン202におけるニュートラル位置は、セレクトレーンLSと3−4速シフトレーンL34とが交差する位置とされている。
このシフトパターン202によれば、チェンジレバー200のセレクト操作は、セレクトレーンLSに沿って車体幅方向右側又は左側に向かう方向へ行われ、シフト操作は、対応するシフトレーンLR,L12,L34,L56に沿って車体前方側又は車体後方側に向かう方向へ行われる。具体的に、リバース、1速、3速及び5速へのシフト操作方向は、車体前方側に向かう方向であり、2速、4速及び6速へのシフト操作は、車体後方側に向かう方向である。
図2は、変速機構2がニュートラル状態であるときの変速操作機構60を示す展開図である。図2に示すように、変速操作機構60は、変速機ケース40内において互いに平行に配置された複数のシフトロッド61,62,63,64,65(61〜65)を備えている。各シフトロッド61〜65は、変速機構2の同期装置31,32,33,34(図1参照)に対応して設けられている。
具体的に、変速操作機構60は、リバース用同期装置34に対応するリバース用シフトロッド61、1−2速用同期装置32に対応する1−2速用シフトロッド62、3−4速用同期装置33に対応する3−4速用シフトロッド63、並びに、5−6速用同期装置31に対応する5−6速用シフトロッド64,65を備えている。5−6速用シフトロッドは、後述する反転機構80を介して連絡された第1シフトロッド64と第2シフトロッド65とに分割されている。
変速機ケース40は、第1ハウジング41、該第1ハウジング41よりも車体後方側に配置された第2ハウジング42、第1ハウジング41と第2ハウジング42との間に介装された中間ハウジング50を備えている。
第1ハウジング41は、車体前方側の端部を塞ぐ端面部41aを備えている。端面部41aには、軸方向D2に延びる筒状のボス部41b,41cが例えば2つ設けられている。各ボス部41b,41cの前端開口部は、ブラインドプラグ38,39によって塞がれている。
第2ハウジング42は、車体前後方向に延びる筒状に形成されている。第2ハウジング42の軸方向中間部には、第2ハウジング42で包囲された空間を軸方向D2に仕切るように配置された縦壁部42aを備えている。
中間ハウジング50は、変速機ケース40内の空間を車体前後方向に仕切る縦壁部として機能するものであり、上述の変速機構2の出力軸8及びカウンタシャフト9(図1参照)の中間部は、軸受(図示せず)を介して中間ハウジング50に支持されている。中間ハウジング50は、その前面側において第1ハウジング41の後端の合わせ面に結合され、後面側において第2ハウジング42の前端の合わせ面に結合されている。
中間ハウジング50には、軸方向D2に延びる第1〜第5貫通穴51,52,53,54,55(51〜55)が設けられており、各貫通穴51〜55にシフトロッド61〜65が通されている。また、中間ハウジング50には、反転機構80、インターロック防止機構90及びディテント機構100が設けられるが、これらの機構については後に説明する。
リバース用シフトロッド61は、その前端部が中間ハウジング50の第1貫通穴51に摺動自在に支持されている。また、リバース用シフトロッド61は、第2ハウジング42の縦壁部42aよりも車体後方側に突出して配置されており、その後端近傍部が例えば金属製ブッシュ44を介して縦壁部42aに摺動自在に支持されている。
リバース用シフトロッド61の後端部にはリバース用ゲートスリーブ61aが嵌合されている。リバース用ゲートスリーブ61aは、例えばスプリングピン71によってシフトロッド61に固定されている。また、ゲートスリーブ61aには、リバース用同期装置34のシンクロスリーブ34a(図1参照)に係合されるリバース用シフトフォーク61dが一体に設けられている。これにより、リバース用シフトフォーク61dは、ゲートスリーブ61aを介してリバース用シフトロッド61に固定されている。
1−2速用シフトロッド62は、リバース用シフトロッド61よりも長尺とされており、中間ハウジング50及び第2ハウジング42の縦壁部42aを貫通するように設けられている。1−2速用シフトロッド62は、その前端部において、例えば金属製ブッシュ47を介して第1ハウジング41のボス部41bに摺動自在に支持されており、中間部において中間ハウジング50の第2貫通穴52に摺動自在に支持され、後端近傍部において第2ハウジング42の縦壁部42aに摺動自在に支持されている。なお、1−2速用シフトロッド62の後端近傍部と縦壁部42aとの間には例えば金属製のブッシュが介装されてもよい。
1−2速用シフトロッド62には、中間ハウジング50よりも車体前方側に配置された筒状の1−2速用シフトエンド62cが嵌合されており、該シフトエンド62cは、例えばスプリングピン75によってシフトロッド62に固定されている。シフトエンド62cには、1−2速用同期装置32のシンクロスリーブ32a(図1参照)に係合される1−2速用シフトフォーク62dが一体に設けられている。これにより、1−2速用シフトフォーク62dは、シフトエンド62cを介して1−2速用シフトロッド62に固定されている。
1−2速用シフトロッド62の後端部には1−2速用ゲートスリーブ62aが嵌合されている。1−2速用ゲートスリーブ62aは、例えばスプリングピン72によってシフトロッド62に固定されている。
3−4速用シフトロッド63の前端部は、中間ハウジング50の第3貫通穴53に摺動自在に支持されている。3−4速用シフトロッド63は、第2ハウジング42の縦壁部42aよりも車体後方側へ突出して設けられており、その後端近傍部において、例えば金属製のブッシュ45を介して縦壁部42aに摺動自在に支持されている。
3−4速用シフトロッド63には、軸方向D2において中間ハウジング50と縦壁部42aとの間に配置された筒状の3−4速用シフトエンド63cが嵌合されており、該シフトエンド63cは、例えばスプリングピン76によってシフトロッド63に固定されている。シフトエンド63cには、3−4速用同期装置33のシンクロスリーブ33a(図1参照)に係合される3−4速用シフトフォーク63dが一体に設けられている。これにより、3−4速用シフトフォーク63dは、シフトエンド63cを介して3−4速用シフトロッド63に固定されている。
3−4速用シフトロッド63の後端部には3−4速用ゲートスリーブ63aが嵌合されている。3−4速用ゲートスリーブ63aは、例えばスプリングピン73によってシフトロッド63に固定されている。
5−6速用の第1シフトロッド64の前端部は、中間ハウジング50の第4貫通穴54に摺動自在に支持されている。第1シフトロッド64は、第2ハウジング42の縦壁部42aよりも車体後方側へ突出して設けられており、その後端近傍部において、例えば金属製のブッシュ46を介して縦壁部42aに摺動自在に支持されている。
第1シフトロッド64の後端部には5−6速用ゲートスリーブ64aが嵌合されている。5−6速用ゲートスリーブ64aは、例えばスプリングピン74によってシフトロッド64に固定されている。なお、第1シフトロッド64にはシフトフォークが設けられていない。
5−6速用の第2シフトロッド65の前端部は、例えば金属製ブッシュ48を介して、第1ハウジング41のボス部41cに摺動自在に支持されている。第2シフトロッド65の後端部は、中間ハウジング50の第5貫通穴55に摺動自在に支持されている。
第2シフトロッド65には、1−2速用シフトエンド62cよりも車体前方側に配置された5−6速用シフトエンド65cが嵌合されており、該シフトエンド65cは、例えばスプリングピン77によってシフトロッド65に固定されている。シフトエンド65cには、5−6速用同期装置31のシンクロスリーブ31a(図1参照)に係合される5−6速用シフトフォーク65dが一体に設けられている。これにより、5−6速用シフトフォーク65dは、シフトエンド65cを介して第2シフトロッド65に固定されている。
図4の断面図に示されるように、以上のシフトロッド61〜65のうち、リバース用シフトロッド61、1−2速用シフトロッド62、3−4速用シフトロッド63及び5−6速用の第1シフトロッド64は、軸方向D2から見ると、車体幅方向の外側に向かって下方に傾斜した所定の傾斜方向D4に延びる一直線上に、上側からこの順に並べて配置されている。これらの隣接するシフトロッド61,62,63,64間の間隔は、例えばシフトロッド61,62,63,64の直径よりも小さい。
5−6速用の第2シフトロッド65は、第1シフトロッド64の真下に配置されている。第1及び第2シフトロッド64,65間の間隔は、例えば、シフトロッド64,65の直径と同程度か又は僅かに大きく、該直径の2倍よりも小さい。
このように、全てのシフトロッド61〜65が軸方向D2から見て密に配置されていることにより、変速機ケース40内における変速操作機構60の占有スペースの縮小が図られている。
図3に示すように、変速操作機構60は、シフトロッド61〜65に平行に配置されたコントロールロッド95を更に備えている。コントロールロッド95は、第2ハウジング42の縦壁部42a(図2参照)よりも車体後方側に配置されている。コントロールロッド95は、セレクト操作に連動して軸心周りに矢印D1方向に回動し且つシフト操作に連動して軸方向D2に移動するようにチェンジレバー200に連絡されている。
コントロールロッド95の前端部には、筒状のシフトフィンガ96が嵌合されており、該シフトフィンガ96は、例えばスプリングピン99によってコントロールロッド95に固定されている。シフトフィンガ96は、径方向外側に延びるレバー部97を一体に備えている。
上記のように縦壁部42a(図2参照)よりも車体後方側においてシフトロッド61,62,63,64の後端部に固定された各ゲートスリーブ61a,62a,63a,64aには、フォークゲート61b,62b,63b,64bが一体に設けられている。これらのフォークゲート61b,62b,63b,64bは、シフトフィンガ96の周囲において周方向D1に並べて配置されている。
具体的には、リバース用シフトロッド61を介してリバース用シフトフォーク61d(図2参照)に連絡されたリバース用フォークゲート61b、1−2速用シフトロッド62を介して1−2速用シフトフォーク62d(図2参照)に連絡された1−2速用フォークゲート62b、3−4速用シフトロッド63を介して3−4速用シフトフォーク63d(図2参照)に連絡された3−4速用フォークゲート63b、第1シフトロッド64、後述の反転機構80及び第2シフトロッド65を介して5−6速用シフトフォーク65d(図2参照)に連絡された5−6速用フォークゲート64bが、軸方向D2の車体後方側から見て反時計回り方向にこの順で並べて配置されている。
チェンジレバー200のセレクト操作が行われると、これに連動して、シフトフィンガ96は、コントロールロッド95と共に回動する。シフトフィンガ96のレバー部97は、上記のように配置されたフォークゲート61b,62b,63b,64bのうち、チェンジレバー200のセレクト位置に対応するフォークゲートに係合される。
チェンジレバー200のシフト操作が行われると、これに連動して、シフトフィンガ96は、コントロールロッド20と共に軸方向D2に移動する。具体的には、リバース、1速、3速又は5速へのシフト操作が行われたとき、シフトフィンガ96は軸方向D2の車体後方側へ移動し、2速、4速又は6速へのシフト操作が行われたとき、シフトフィンガ96は軸方向D2の車体前方側へ移動する。
シフト操作に連動してシフトフィンガ96が軸方向D2に移動されると、該シフトフィンガ96に係合されたフォークゲート61b,62b,63b,64bと、これに連絡された対応するシフトフォーク61d,62d,63d,64d(図2参照)も軸方向D2に移動されることで、対応する同期装置31〜34(図1参照)が作動されて、所望の変速段が形成される。
例えば、1速へのシフト操作が行われると、これに連動して、シフトフィンガ96及び1−2速用フォークゲート62bは軸方向D2の車体後方側へ移動し、1−2速用シフトロッド62を介して1−2速用フォークゲート62bに一体化された1−2速用シフトフォーク62dも車体後方側へ移動し(図2参照)、該シフトフォーク62dに係合された1−2速用同期装置32のシンクロスリーブ32aも車体後方側へ移動されて、これにより、1速用ギヤ列G1が動力伝達状態となる(図1参照)。
また、例えば、4速へのシフト操作が行われたときは、これに連動して、シフトフィンガ96及び3−4速用フォークゲート63bが軸方向D2の車体前方側へ移動し、3−4速用シフトロッド63を介して3−4速用フォークゲート63bに一体化された3−4速用シフトフォーク63dも車体前方側へ移動し(図2参照)、該シフトフォーク63dに係合された3−4速用同期装置33のシンクロスリーブ33aも車体前方側へ移動されて、これにより、4速用ギヤ列G4が動力伝達状態となる(図1参照)。
さらに、リバースへのシフト操作が行われたときは、これに連動して、シフトフィンガ96及びリバース用フォークゲート61bは軸方向D2の車体後方側へ移動し、リバース用シフトロッド61を介してリバース用フォークゲート61bに一体化されたリバース用シフトフォーク61dも車体後方側へ移動し(図2参照)、該シフトフォーク61dに係合されたリバース用同期装置34のシンクロスリーブ34aも車体後方側へ移動されて、これにより、リバース用ギヤ列GRが動力伝達状態となる(図1参照)。
このように、1速〜4速及び後退変速段の形成時における変速操作機構60の動作では、シフトフィンガ96の移動方向と、シフトフォーク61d,62d,63d及びシンクロスリーブ32a,33a,34aの移動方向が一致する。
これに対して、5速を形成するためには、図1に示すように、5−6速用同期装置31のシンクロスリーブ31a及びこれに係合される5−6速用シフトフォーク65d(図2参照)を軸方向D2の車体前方側へ移動させる必要があるのに対して、シフトフィンガ96及び5−6速用フォークゲート64b(図3参照)は、5速へのシフト操作に連動して車体後方側へ移動する。また、6速を形成するためには、シンクロスリーブ31a及びシフトフォーク65dを車体後方側へ移動させる必要があるのに対して、シフトフィンガ96及びフォークゲート64bは、6速へのシフト操作に連動して車体前方側へ移動する。
このように、5速及び6速の形成時における変速操作機構60の動作では、シフトフィンガ96及びフォークゲート64bの移動方向と、シフトフォーク65d及びシンクロスリーブ31aの移動方向が反対方向となる。
そこで、本実施形態では、5−6速用フォークゲート64bが設けられた第1シフトロッド64と、5−6速用シフトフォーク65dが設けられた第2シフトロッド65との間に、第1及び第2シフトロッド64,65の移動方向が互いに反対の方向となるように該シフトロッド64,65間を連絡させる反転機構80を設けることで、フォークゲート64bの移動方向に対してシフトフォーク65dの移動方向を反転させている。反転機構80の構成については後に説明する。
[インターロック防止機構]
図2及び図4に示すように、変速操作機構60は、同時に複数の同期装置31〜34が作動することで変速機構2がインターロックすることを防止するためのインターロック防止機構90を備えている。インターロック防止機構90は、変速機ケース40の中間ハウジング50に設けられている。
図4に示すように、インターロック防止機構90は、前記傾斜方向D4に延びるように中間ハウジング50に設けられた連絡穴56を利用して構成されている。連絡穴56は、リバース用シフトロッド61、1−2速用シフトロッド62、3−4速用シフトロッド63、及び5−6速用第1シフトロッド64が通される第1〜第4貫通穴51〜54を相互に連絡するように設けられている。具体的に、連絡穴56は、第1貫通穴51から第4貫通穴54にかけてこれらの貫通穴51,54に直角な方向に延びて、第2貫通穴52及び第3貫通穴53を貫通するように設けられている。
連絡穴56には、その長さ方向D4に隣接するシフトロッド61〜64間にそれぞれ介装される3つのカム部材93が装着されている。カム部材93は、連絡穴56において長さ方向D4に摺動可能とされ、その両端において、シフトロッド61〜64の外周面に形成された凹状のカム面91に係合されている。
1−2速用シフトロッド62及び3−4速用シフトロッド63にはそれぞれピン92が貫通されており、ピン92の両端はカム面91に臨むように配置されている。ピン92は、連絡穴56の長さ方向D4に摺動可能なように、該長さ方向D4に沿って配置されている。
以上のように構成されたインターロック防止機構90が設けられていることにより、いずれかの変速段へのシフト操作が行われたとき、これに連動して、リバース用シフトロッド61、1−2速用シフトロッド62、3−4速用シフトロッド63、又は5−6速用第1シフトロッド64のいずれか1つが軸方向D2に移動すると、残り3つのシフトロッドの軸方向D2の移動が、それぞれのカム面91とカム部材93との係合によってロックされる。
例えば、3速又は4速へのシフト操作に連動して3−4速用シフトロッド63が軸方向D2に移動すると、該シフトロッド63のカム面91との係合が外れた2つのカム部材93が、シフトロッド63の外周面によって連絡穴56の長さ方向D4の一方側(斜め上方)と他方側(斜め下方)にそれぞれ押し出される。斜め下方に押し出されたカム部材93は、5−6速用第1シフトロッド64のカム面91に係合されることで、該シフトロッド63の軸方向D2移動をロックする。一方、斜め上方に押し出されたカム部材93は、1−2速用シフトロッド62のカム面91に係合されることで、該シフトロッド62の軸方向D2移動をロックすると共に、該シフトロッド62に取り付けられたピン92を介して、該ピン92の更に斜め上方に設けられたカム部材93を斜め上方へ押し込み、これにより、該カム部材93がリバース用シフトロッド61のカム面91に係合して、該シフトロッド61の軸方向D2移動もロックされる。
このように、所望の変速段に対応するシフトロッド61〜64が軸方向D2に移動すると、残り3本のシフトロッドの軸方向D2移動が連鎖的にロックされることで、所望の変速段に対応する同期装置31〜34(図1参照)のみを作動させることができ、これにより、変速機構2のインターロックが防止される。
[ディテント機構]
図2及び図4に示すように、変速操作機構60は、リバース用シフトロッド61、1−2速用シフトロッド62、3−4速用シフトロッド63、及び5−6速用第1シフトロッド64を軸方向D2に位置決めするためのディテント機構100を更に備えている。ディテント機構100も、中間ハウジング50に設けられている。
ディテント機構100は、上記の各シフトロッド61〜64の外周面に設けられた凹部101と、該凹部101に係合可能なディテントボール102と、該ディテントボール102をシフトロッド61〜64に向かって押し付ける弾性部材103とを備えている。
各シフトロッド61〜64の外周面において、凹部101は軸方向D2に間隔を空けて複数設けられている。具体的に、リバース用シフトロッド61には、リバースシフト位置及びニュートラルシフト位置に対応する2つの凹部101が、1−2速用シフトロッド62には、1速シフト位置、ニュートラルシフト位置及び2速シフト位置に対応する3つの凹部101が、3−4速用シフトロッド63には、3速シフト位置、ニュートラルシフト位置及び4速シフト位置に対応する3つの凹部101が、5−6速用第1シフトロッド64には、5速シフト位置、ニュートラルシフト位置及び6速シフト位置に対応する3つの凹部101が、それぞれ車体前方側からこの順で並ぶように設けられている。
以上のように構成されたディテント機構100が設けられていることにより、各シフトロッド61〜64では、その外周面に複数設けられた凹部101のいずれか1つに選択的にディテントボール102が係合される。したがって、シフト操作が行われていない状態では、各シフトロッド61〜64を軸方向D2におけるニュートラルシフト位置に確実に位置決めすることができ、所望の変速段へのシフト操作が完了した状態では、これに連動した軸方向D2移動を完了したシフトロッド61〜64を、軸方向D2において所望の変速段に対応するシフト位置に確実に位置決めできる。
なお、ディテント機構100は、5−6速用第2シフトロッド65には設けられておらず、これにより、5速又は6速へのシフト操作時における第2シフトロッド65の摺動抵抗の軽減が図られている。
[反転機構]
図2及び図4に示すように、反転機構80は、5−6速用第1シフトロッド64の外周面に形成された第1ラック部86と、5−6速用第2シフトロッド65の外周面に形成された第2ラック部88と、第1及び第2ラック部86,88に係合されたギヤ82とを備えている。
第1及び第2ラック部86,88は、それぞれのシフトロッド64,65において中間ハウジング50に支持される部分に設けられている。各ラック部86,88は、軸方向D2に一定間隔を空けて列設された複数の歯部で構成されている。第1ラック部86は、下方を向くように配置されており、第2ラック部88は、上方を向くように配置されている。これにより、第1及び第2ラック部86,88は、互いに間隔を空けて対向配置されている。
ギヤ82は、変速機ケース40の中間ハウジング50に設けられた取付穴57に収容されており、支持軸59を介して中間ハウジング50に取り付けられている。取付穴57は、一端側に開口部57aを有する例えば筒状の有底穴である。
図4に示すように、取付穴57の底部には、支持軸59の一端部を支持する凹部58が形成されている。取付穴57の開口部57aは、例えばボルト78によって中間ハウジング50に固定された蓋部材79によって塞がれている。
取付穴57は、中間ハウジング50に設けられた上記の第4貫通穴54の一部と第5貫通穴55の一部に連なるように設けられている。これにより、第1シフトロッド64の一部と第2シフトロッド65の一部は、取付穴57に臨むように配置され、取付穴57の内部に、第1ラック部86の一部と第2ラック部88の一部が配置されることになる。
支持軸59の一端部は中間ハウジング50の前記凹部58に支持され、支持軸59の他端部は蓋部材79に支持されている。支持軸59は、中間ハウジング50又は蓋部材79の少なくとも一方に固定されてもよいし、これらに対して回転自在に支持されてもよい。
支持軸59の外側にはスリーブ81が嵌合されている。スリーブ81は、支持軸59に遊嵌されており、支持軸59に対して回転自在とされている。ただし、支持軸59が中間ハウジング50及び蓋部材79に対して回転自在とされる場合、スリーブ81は、支持軸59に固定ないし一体化されてもよい。スリーブ81の一端と取付穴57の底部との間、及び、スリーブ81の他端と蓋部材79との間には、それぞれワッシャ83,84が介装されており、摩耗の軽減が図られている。
ギヤ82は、スリーブ81の一端部に嵌合されており、例えば圧入によりスリーブ81に固定されている。これにより、ギヤ82は、スリーブ81と一体に、支持軸59の軸心周りに矢印D3方向に回転可能とされている。ギヤ82は、その上部側において第1ラック部86に噛み合っており、下部側において第2ラック部88に噛み合っている。これにより、2組のラックアンドピニオン機構が構成されている。
ただし、ギヤ82は、スリーブ81と一体に設けられてもよい。また、支持軸59が中間ハウジング50及び蓋部材79に対して回転自在とされる場合は、スリーブ81を省略して、支持軸59とギヤ82を一体に設けてもよい。
ギヤ82の組み付けは、変速操作機構60の他の部品の組み付けが完了した状態で行われる。具体的には、予めスリーブ81に一体化されたギヤ82を、変速機ケース40の外側から中間ハウジング50の開口部57aを通して取付穴57に挿入し、既に変速機ケース40に組み付けられた第1及び第2シフトロッド64,65の第1及び第2ラック部86,88にギヤ82を噛み合わせる。
このとき、取付穴57の内部における第1及び第2ラック部86,88に対するギヤ82の噛み合わせ部分を、取付穴57の開口部57aを通して変速機ケース40の外側から目視できるため、第1及び第2ラック部86,88の歯に対してギヤ82の歯を位相合わせしやすくなっている。
また、このとき、第1及び第2シフトロッド64,65を軸方向D2の所定位置に位置決めしておくことで、更に位相合わせしやすくなる。この点に関して、第1シフトロッド64は、上述のディテント機構100によってニュートラルシフト位置に位置決めされている。一方、第2シフトロッド65にはディテント機構100が適用されていないことから、ディテント機構100による位置決めを行えない。
そこで、図7に示すように、上述した変速機ケース40のボス部41cに、例えば樹脂製の位置決めプラグ150を予め装着しておき、該位置決めプラグ150に第2シフトロッド65の前端部を押し付けることで、第2シフトロッド65もニュートラルシフト位置に位置決めすることができる。
このように第1及び第2シフトロッド64,65が軸方向D2に位置決めされた状態でギヤ82を組み付けることで、第1及び第2ラック部86,88に対するギヤ82の位相合わせを容易に行うことができる。
また、図7に示すように、第2シフトロッド65又は第1シフトロッド64の少なくとも一方の外周面において、組み付け時にギヤ82の歯に噛み合う歯溝部分にペイント140を予め付しておいてもよく、これにより、更に位相合わせをしやすくなる。
ギヤ82の組み付けが完了した後、位置決めプラグ150は変速機ケース40のボス部41cから取り外されて、代わりに上述のブラインドプラグ39(図2参照)が取り付けられる。
以上のように構成された反転機構80が設けられていることにより、5速又は6速へのシフト操作に連動して第1シフトロッド64が軸方向D2に移動するとき、第2シフトロッド65は、第1シフトロッド64とは反対方向に移動する。
具体的に、図6に示すように、5速へのシフト操作によって、シフトフィンガ96及び5−6速用フォークゲート64bと共に、第1シフトロッド64が軸方向D2の車体後方側へ移動されると、これに係合された反転機構80のギヤ82が図6における周方向D3の時計回り方向に回転することで、該ギヤ82に係合された第2シフトロッド65は、軸方向D2の車体前方側へ移動する。これにより、第2シフトロッド65に固定された5−6速用シフトフォーク65d及びこれに係合された5−6速用同期装置31のシンクロスリーブ31aも車体前方側へ軸方向D2に移動し、入力軸7が出力軸8に直結されて、直結変速段である5速が形成される(図1参照)。
逆に、6速へのシフト操作に連動して第1シフトロッド64が軸方向D2の車体前方側へ移動したときは、反転機構80のギヤ82が図6における反時計回り方向に回転することで、第2シフトロッド65は軸方向D2の車体後方側へ移動し、これにより、シフトフォーク65d及びシンクロスリーブ31aも車体後方側へ移動して、6速用ギヤ列G6が動力伝達状態となる(図1参照)。
以上で説明した本実施形態によれば、5−6速用シフトロッド64,65の移動方向を反転させる反転機構80が、ギヤ82と第1及び第2ラック部86,88とを備えたラックアンドピニオン機構で構成されているため、第1ラック部86及び第2ラック部88に対するギヤ82の噛み合い代は、シフトロッド64,65のストローク量やギヤ82の回転量に関係なく一定である。
そのため、反転機構80のギヤ82を小径化させても、所要の噛み合い代を安定的に確保できることから、反転機構80の確実な係合を果たしつつ、該反転機構80のギヤ82を効果的に小径化させることができ、これにより、第1及び第2シフトロッド64,65間の距離が短縮されることで、変速操作機構60のコンパクト化を図ることができる。
また、反転機構80のギヤ82は、インターロック防止機構90及びディテント機構100が設けられた中間ハウジング50を利用して、該中間ハウジング50に取り付けられているため、変速機ケース40に専用のギヤ取付部を設ける場合に比べて、変速機ケース40の大型化を抑制できる。
さらに、高い剛性を有する中間ハウジング50に支持された支持軸59によって、ギヤ82を安定的に支持することが可能であるため、第1及び第2ラック部86,88に対して、ギヤ82を精度よく噛み合わせることができる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、5−6速用のシフトフォークの移動方向を反転させる反転機構を例に挙げて説明したが、本発明において、反転機構によってシフトフォークの移動方向が反転される変速段は特に限定されるものでない。
また、上述の実施形態では、反転機構のギヤが取り付けられる変速機ケースの縦壁部が、変速機ケースを構成する筒状のハウジングとは別体である中間ハウジング50で構成される例を説明したが、本発明では、筒状のハウジングと一体の縦壁部に反転機構のギヤが取り付けられてもよい。
さらに、上述の実施形態では、FR車に搭載される手動変速機を例に挙げて説明したが、本発明は、FF車等、FR車以外の車両に搭載される手動変速機の変速操作機構にも適用可能である。