以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る変速機の変速操作機構について実施形態毎に説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態に係る変速機の変速操作機構40は、例えばFR車に搭載される縦置き式の手動変速機に設けられたものである。該手動変速機は、例えば前進6段、後退1段の変速段を有し、図1に示す変速機構4を備えている。
[変速機構]
図1に示すように、変速機構4は、車体前後方向に延びるメインシャフト5と、該メインシャフト5に平行に配置されたカウンタシャフト8とを備えている。カウンタシャフト8は、軸方向から見てメインシャフト5の斜め下方に配置されている(図11及び図12参照)。
メインシャフト5は、クラッチ199を介してエンジン出力軸198に連絡された入力軸6と、該入力軸6の車体後方側において入力軸6と同一軸線上に配置されて、駆動輪側に連絡された出力軸7とを備えている。出力軸7の前端部には、入力軸6の後端部に回転自在に嵌合された嵌合部7aが設けられている。
メインシャフト5とカウンタシャフト8との間には、常時噛み合い式の複数のギヤ列G0,G1,G2,G3,G4,G5,GRが設けられている。具体的に、メインシャフト5の入力軸6とカウンタシャフト8との間に、リバース用ギヤ列GR、1速用ギヤ列G1、2速用ギヤ列G2、3速用ギヤ列G3、4速用ギヤ列G4、5速用ギヤ列G5が車体前方側からこの順で設けられ、メインシャフト5の出力軸7とカウンタシャフト8との間に減速用ギヤ列G0が設けられている。
なお、変速機構4は6速直結タイプとされており、直結変速段では入力軸6と出力軸7が直結されることから、6速用ギヤ列は設けられていない。
上記のように減速用ギヤ列G0は出力軸7側に設けられており、これにより、所謂アウトプットリダクションタイプの変速機構4が構成されている。減速用ギヤ列G0は、カウンタシャフト8に固定されたドライブギヤ26と、出力軸7に固定されたドリブンギヤ16とを備えている。ドリブンギヤ16はドライブギヤ26よりも大径であり、これにより、直結変速段以外の変速段において、カウンタシャフト8の回転は、減速用ギヤ列G0を介して減速されて出力軸7に伝達される。
1速用及び2速用のギヤ列G1,G2は、入力軸6に固定されたドライブギヤ11,12と、カウンタシャフト8に遊嵌されたドリブンギヤ21,22とを備えている。3速用、4速用及び5速用のギヤ列G3,G4,G5は、入力軸6に遊嵌されたドライブギヤ13,14,15と、カウンタシャフト8に固定されたドリブンギヤ23,24,25とを備えている。
リバース用ギヤ列GRは、入力軸6に固定されたドライブギヤ10と、カウンタシャフト8に遊嵌されたドリブンギヤ20と、入力軸6及びカウンタシャフト8に平行に配置されたリバースシャフト9に遊嵌された中間ギヤ30とを備えている。リバース用ギヤ列GRでは、ドライブギヤ10とドリブンギヤ20との間に中間ギヤ30が介在することにより、前進時とは反対方向の回転がカウンタシャフト8及び出力軸7に伝達される。
また、カウンタシャフト8には、1速用、2速用及びリバース用のギヤ列G1,G2,GRのドリブンギヤ20,21,22とカウンタシャフト8の回転の同期を行う同期装置31,32が設けられ、入力軸6には、3速用、4速用及び5速用のギヤ列G3,G4,G5のドライブギヤ13,14,15又は出力軸7と、入力軸6との回転の同期を行う同期装置33,34が設けられている。
具体的には、カウンタシャフト8上において、後退変速段の形成に用いられるリバース用同期装置31が、リバース用ギヤ列GRのドリブンギヤ20の例えば車体前方側に隣接して設けられ、1速と2速の形成に兼用される1−2速用同期装置32が、1速用ギヤ列G1及び2速用ギヤ列G2のドリブンギヤ21,22間に設けられている。また、入力軸6上には、3速と4速の形成に兼用される3−4速用同期装置33が、3速用ギヤ列G3及び4速用ギヤ列G4のドライブギヤ13,14間に設けられ、5速と6速の形成に兼用される5−6速用同期装置34が、5速用ギヤ列G5のドライブギヤ15と出力軸7の嵌合部7aとの間に設けられている。
リバース用同期装置31の作動によってシンクロスリーブ31aが車体前方側へスライドされると、ドリブンギヤ20とカウンタシャフト8の回転が同期されて、後退変速段が形成される。また、1−2速用同期装置32の作動によって、シンクロスリーブ32aが車体前方側にスライドされると1速が形成され、車体後方側にスライドされると2速が形成される。
同様に、3−4速用同期装置33のシンクロスリーブ33aが車体前方側へスライドされると3速が形成され、車体後方側へスライドされると4速が形成される。また、5−6速用同期装置34のシンクロスリーブ34aが車体前方側へスライドされると5速が形成され、車体後方側へスライドされると、入力軸6と出力軸7の回転が同期されて、直結変速段である6速が形成される。
6速以外の変速段が形成されたときは、入力軸6から、動力伝達状態となったギヤ列G1,G2,G3,G4,G5,GRを介してカウンタシャフト8に動力が伝達されると共に、カウンタシャフト8から、減速用ギヤ列G0を介して出力軸7に動力が伝達される。6速が形成されたときは、入力軸6からカウンタシャフト8を経由することなく直接出力軸7に動力が伝達される。
[シフトパターン]
図2の平面図に示すように、チェンジレバー200のセレクト操作及びシフト操作は、所定のシフトパターン202に従って行われる。
図2に示されるシフトパターン202は、車体幅方向に延びるセレクトレーンLS、該セレクトレーンLSから車体前方側へ車体前後方向に延びるリバースシフトレーンLR、セレクトレーンLSから車体前方側及び車体後方側へ車体前後方向に延びる1−2速シフトレーンL12、3−4速シフトレーンL34、5−6速シフトレーンL56を備えている。このシフトパターン202におけるニュートラル位置は、セレクトレーンLSと3−4速シフトレーンL34とが交差する位置とされている。
このシフトパターン202によれば、チェンジレバー200のセレクト操作は、セレクトレーンLSに沿って車体幅方向右側又は左側に向かう方向へ行われ、シフト操作は、対応するシフトレーンLR,L12,L34,L56に沿って車体前方側又は車体後方側に向かう方向へ行われる。具体的に、リバース、1速、3速及び5速へのシフト操作方向は、車体前方側に向かう方向であり、2速、4速及び6速へのシフト操作方向は、車体後方側に向かう方向である。
[変速操作機構]
以下、変速操作機構40について説明する。
図3に示すように、変速操作機構40のチェンジレバー200は、回転可能に車体に支持された大球部200aと、大球部200aから上側へ延びる上側レバー部200bとを備え、上側レバー部200bの上端部に、運転者に握られるノブ200cが設けられている。
また、チェンジレバー200は、大球部200aから下側に延びる下側レバー部200dを備えている。チェンジレバー200は、セレクト操作又はシフト操作によって大球部200aの中心を支点として揺動し、チェンジレバー200が揺動するとき、下側レバー部200dの下端部200eは、常にノブ200cとは反対側へ移動する。
変速操作機構40は、変速機構4(図1参照)と共に変速機ケース1内に収容された第1及び第2コントロールロッド41,42を備えている。第1及び第2コントロールロッド41,42は、車体前後方向に延びるように相互に平行に配設されているとともに、後述する反転機構50を介して相互に連絡されている。
第1及び第2コントロールロッド41,42は、チェンジレバー200のセレクト操作に連動してそれぞれの軸心周りに回動し且つシフト操作に連動してそれぞれの軸方向に移動するようにチェンジレバー200に連絡されている。具体的には、第1コントロールロッド41の後端部が、チェンジロッド190を介してチェンジレバー200に連絡されている。
チェンジロッド190は、車体前後方向に延びるように配設されており、その後端部において、チェンジレバー200の下端部200eに係合されている。これにより、チェンジレバー200のノブ200cが車体幅方向の右側又は左側に倒されるようにセレクト操作が行われると、チェンジレバー200の下端部200eと共にチェンジロッド190の後端部が左側又は右側へ揺動されることで、チェンジロッド190がその軸心周りに回動され、チェンジレバー200のノブ200cが車体前方側又は後方側に倒されるようにシフト操作が行われると、チェンジロッド190は、チェンジレバー200の下端部200eと共に車体前方側又は後方側へ移動される。
第1コントロールロッド41は、変速機ケース1から車体後方側へ突出するように配設されており、第1コントロールロッド41の後端部は、継手192を介してチェンジロッド190の前端部に連結されている。
図4は、ニュートラル状態の変速操作機構40を示す展開図である。図4に示すように、継手192は、例えば、互いに直角な方向に延びる一対の支軸195,196を有する十字継手である。一対の支軸195,196はホルダ194に支持されている。一方の支軸195は、チェンジロッド190に直角な方向に沿って配置され、チェンジロッド190の前端部190aを貫通している。他方の支軸196は、第1コントロールロッド41に直角な方向に沿って配置され、第1コントロールロッド41の後端部41aを貫通している。
チェンジロッド190の前端部190aは、一方の支軸195の軸心周りに回転可能とされ、第1コントロールロッド41の後端部41aは、他方の支軸196の軸心周りに回転可能とされている。このような継手192を介した連結により、第1コントロールロッド41の軸方向D1に対するチェンジロッド190の傾きを許容しつつ、チェンジロッド190から第1コントロールロッド41への回転運動及び並進運動の伝達が可能となっている。
これにより、第1コントロールロッド41は、セレクト操作時においてチェンジロッド190の回動に連動して同じ方向に回動し、シフト操作時においてチェンジロッド190の車体前後方向の移動に連動して同じ方向に軸方向移動を行う。そして、このようなセレクト操作時及びシフト操作時の第1コントロールロッド41の運動は、後述する反転機構50を介して第2コントロールロッド42に伝達される。
第1コントロールロッド41の大部分と第2コントロールロッド42の全体を収容する変速機ケース1は、変速機構4(図1参照)を収容する第1ケース部材2と、クラッチ199(図1参照)を収容する第2ケース部材3とを備えている。第1ケース部材2は、車体前方側に開口している。第2ケース部材3は、第1ケース部材2の車体前方側に隣接して配置されており、第1ケース部材2の前端開口を塞いでいる。第1及び第2ケース部材2,3は、例えばボルトによって相互に結合されている。
第1コントロールロッド41は、変速機ケース1の第1ケース部材2を貫通して車体後方側へ突出するように配設されている。第1コントロールロッド41は、後端側において例えば金属製のブッシュ43を介して第1ケース部材2に回転自在かつ摺動自在に支持されており、前端側において例えば金属製のブッシュ44を介して第2ケース部材3に回転自在かつ摺動自在に支持されている。なお、第1ケース部材2において第1コントロールロッド41が貫通する部分は、シール部材49によってシールされている。
第2コントロールロッド42は、第1コントロールロッド41よりも長尺とされている。第2コントロールロッド42は、後端側において例えば金属製のブッシュ45を介して第1ケース部材2に回転自在かつ摺動自在に支持されており、前端側において例えば金属製のブッシュ46を介して第2ケース部材3に回転自在かつ摺動自在に支持されている。
第1及び第2コントロールロッド41,42は、シフト操作時に第2コントロールロッド42を第1コントロールロッド41の移動方向とは反対側へ軸方向D3に移動させる反転機構50を介して相互に連絡されている。
反転機構50は、第1コントロールロッド41に嵌合されたスリーブ部材70と、スリーブ部材70に取り付けられた支持軸58と、支持軸58に支持された反転レバー51とを備えている。反転レバー51は、一端側において、第1コントロールロッド41に設けられた第1レバーエンド60に係合され、他端側において、第2コントロールロッド42に設けられた第2レバーエンド80に係合されている。
図4〜図7に示すように、第1レバーエンド60は、第1コントロールロッド41に嵌合される筒状部材であり、例えばスプリングピン69によって第1コントロールロッド41に固定されている。これにより、第1レバーエンド60は、常に第1コントロールロッド41と共に回動及び軸方向移動を行う。第1レバーエンド60は、第1コントロールロッド41の例えば車体前方側の端部近傍に固定されている。
第1レバーエンド60は、径方向外側に突出する一対の突条61,62を備えている。これらの突条61,62は、軸方向D1に延びるように形成されている。
また、第1レバーエンド60の外周面には、軸方向D1に直角な接線方向に延びる係合溝63が設けられている。係合溝63は、一方の突条61を横切るように形成されており、これにより、該突条61は、軸方向D1に間隔を空けて並ぶ第1突条部61aと第2突条部61bとに分断されている。一方の突条61の第1突条部61aと他方の突条62には、上記のスプリングピン69が装着される貫通穴66が、径方向に貫通するように設けられている。
第1及び第2突条部61a,61bは、係合溝63の側壁を構成する側面部64,65を備えている。これらの側面部64,65は、軸方向D1に直角な面で構成されており、相互に対向している。
係合溝63は、反転レバー51の一端側が係合される第1係合部とされている。係合溝63は、一対の側面部64,65によって軸方向D1の両側から反転レバー51の一端部を挟み込むようにして、該反転レバー51に係合される。
スリーブ部材70は、第1レバーエンド60を介して第1コントロールロッド41を径方向外側から囲む周壁部72を備えている。周壁部72は、第1レバーエンド60の外周面の形状に合わせた筒状の内周面を有する。
周壁部72の内周面には、第1レバーエンド60の突条61,62が係合される溝部73,74が軸方向D1に延びるように設けられている。溝部73,74は、軸方向D1における周壁部72の一端から他端にかけて形成されており、軸方向D1の両側に開放されている。これにより、溝部73,74に係合された第1レバーエンド60の突条61,62は、溝部73,74に沿って軸方向D1に移動可能となっている。
周壁部72は、各溝部73,74に第1レバーエンド60の突条61,62が係合されるように、第1レバーエンド60の外側に嵌合される。これにより、スリーブ部材70は、第1コントロールロッド41及び第1レバーエンド60に対して、相対回転は規制されるが、軸方向D1には相対移動可能となっている。
周壁部72には、周方向の1箇所において切欠部75が形成されている。切欠部75は、軸方向D1に延びるように形成されている。切欠部75は、軸方向D1において周壁部72の一端から他端にかけて形成されており、軸方向D1の両側に開放されている。ただし、切欠部75は、軸方向D1の一端側が閉塞されたスリット状に形成されたり、軸方向D1の両側が閉塞されたスロット状に形成されたりしてもよい。
また、スリーブ部材70は、互いに対向する一対のプレート部76,77を備えている。プレート部76,77は、周壁部72から下方へ延びるように該周壁部72と一体に設けられている。一対のプレート部76,77は互いに平行に配置されており、一方のプレート部76は、周壁部72の切欠部75の近傍に配置されている。各プレート部76,77には、支持軸58を挿通させるための貫通穴78,79が設けられている。
図7に示すように、スリーブ部材70の周壁部72は、軸方向D1の一端側において、第1ケース部材2の内周面に設けられた段部2aに係合され、軸方向D1の他端側において、第2ケース部材3における第1ケース部材2との合わせ面3aに押し当てられている。このような周壁部72と変速機ケース1との係合により、スリーブ部材70は、軸方向D1の一方側への移動が第1ケース部材2により規制され、軸方向D1の他方側への移動が第2ケース部材3により規制されている。
したがって、スリーブ部材70は、セレクト操作時には第1コントロールロッド41の回動に連動して回動するが、シフト操作時には、変速機ケース1によって軸方向移動が規制されていることにより、第1コントロールロッド41の軸方向移動に対して非連動とされている。
なお、第2ケース部材3の合わせ面3aには、第1レバーエンド60に対向する部分に凹部3bが設けられている。したがって、第1コントロールロッド41及び第1レバーエンド60が図4及び図7の右側へ軸方向D1に移動するとき、第1レバーエンド60は、凹部3bに収容されることで、第2ケース部材3との干渉が回避される。
図6及び図7に示すように、支持軸58は、一対のプレート部76,77を貫通した状態でスリーブ部材70に取り付けられている。支持軸58は、スリーブ部材70に相対移動不能に取り付けられている。支持軸58は、第1コントロールロッド41に直角な方向に沿って配置されており、この位置関係は、スリーブ部材70の回動位置に関係なく常に一定に維持される。支持軸58の抜け止めは、例えば、その一端側に設けられた頭部58aと他端側に装着されたスナップリング59によって果たされている。
反転レバー51は、支持軸58に嵌合された筒状部52と、筒状部52から第1レバーエンド60に向かって延びる第1レバー部53と、筒状部52から第2レバーエンド80に向かって延びる第2レバー部55とを備えている。
筒状部52は、支持軸58に回動自在に支持されており、これにより、反転レバー51が支持軸58の軸心周りに揺動可能となっている。ただし、筒状部52は、支持軸58に固定されて該支持軸58と共に回動するように設けられてもよい。筒状部52は、スリーブ部材70の一対のプレート部76,77に挟み込まれており、これにより、支持軸58の軸方向への移動が規制されている。
第1レバー部53は、プレート部76,77に平行に配置されている。筒状部52の軸方向において、第1レバー部53は、第1コントロールロッド41からずれた位置に設けられている。第1レバー部53は、一方のプレート部76に近接して対向配置されている。
第1レバー部53は、スリーブ部材70の周壁部72の切欠部75を通って該周壁部72を貫通している。第1レバー部53の先端部は、周壁部72の内側において第1レバーエンド60の係合溝63に係合される係合部54とされている。係合部54は、例えば円板状に形成されている。係合部54は、反転レバー51の揺動角度に関わらず常に、係合溝63の側面部64,65に直角に配置される。
第2レバー部55は、筒状部52の軸方向中央部から径方向外側へ第1レバー部53とは反対側に延びるように設けられている。図7に示すように、第1レバー部53と第2レバー部55は、筒状部52の軸方向から見て同じ直線上に配置されている。第2レバー部55の先端部には、第2レバーエンド80に係合される球状部56が設けられている。
図6〜図8に示すように、第2レバーエンド80は、第2コントロールロッド42に嵌合されており、例えばスプリングピン81によって第2コントロールロッド42に固定されている。
第2レバーエンド80は、第2コントロールロッド42の径方向外側に延びるレバー部82を備えている。レバー部82は、例えば断面矩形とされている。レバー部82の先端の端面には、反転レバー51に係合される第2係合部としての穴83が設けられている。穴83は、例えば円筒状の有底穴である。穴83には、反転レバー51の球状部56が嵌合され、これにより、第2レバーエンド80と反転レバー51の第2レバー部55とが係合される。
なお、図7及び図8に示すように、第2レバーエンド80には、第2コントロールロッド42の外周面に対向配置されたガイドプレート84が一体に設けられている。ガイドプレート84には、シフトパターン202(図2参照)に対応して形成されたガイド穴85が形成されている。ガイド穴85には、変速機ケース1の第1ケース部材2に固定されたガイドピン86が挿通されており、ガイドピン86は、セレクト操作時及びシフト操作時に、ガイド穴85に沿って案内される。
図4に示すように、第2コントロールロッド42には、第1シフトフィンガセット(以下、「第1セット」という)91と、第2シフトフィンガセット(以下、「第2セット」という)92とが軸方向D3に間隔を空けて設けられている。第1セット91と第2セット92は、車体後方側からこの順で配置されており、いずれも、第2レバーエンド80よりも車体後方側に配置されている。
図9及び図10を参照しながら、第1セット91及び第2セット92の構成について説明する。なお、第1セット91と第2セット92は、第2コントロールロッド42上に設けられる軸方向位置が異なる点を除いて、全く同じ構成を有する。
図9及び図10に示すように、第1セット91及び第2セット92のそれぞれは、1つのシフトフィンガ93と、これに係合される1つのインターロック規制部材100とで構成されている。
シフトフィンガ93は、第2コントロールロッド42に嵌合される筒状部材である。シフトフィンガ93には貫通穴97が設けられており、該貫通穴97に差し込まれたスプリングピン98(図11及び図12参照)が第2コントロールロッド42を貫通することで、スプリングピン98を介してシフトフィンガ93が第2コントロールロッド42に固定される。これにより、シフトフィンガ93は、セレクト操作時には第2コントロールロッド42と共に回動し、シフト操作時には第2コントロールロッド42と共に軸方向D3に移動する。
シフトフィンガ93は、径方向外側に延びるレバー部94と、レバー部94とは異なる周方向位置において径方向外側に突出した一対の突出部95,96とを備えている。一対の突出部95,96は、互いに反対側に向かって突出している。各突出部95,96は、軸方向D3におけるシフトフィンガ93の全長に亘って設けられている。軸方向D3において、レバー部94の長さはシフトフィンガ93の全長よりも短く、レバー部94は、シフトフィンガ93の軸方向D3の中央部に設けられている。
インターロック規制部材100は、周方向の1箇所に切欠き105が設けられることで、軸方向D3から見てC字状の全体形状を有する。インターロック規制部材100は、シフトフィンガ93を包囲するように該シフトフィンガ93の径方向外側に装着される。
インターロック規制部材100は、シフトフィンガ93と略同じ軸方向D3長さを有する半筒状の本体部101と、該本体部101よりも軸方向D3に短い第1及び第2規制部103,104とを備えている。第1規制部103は、周方向D4(図4参照)において本体部101の一端部から延びるように設けられ、第2規制部104は、周方向D4において本体部101の他端部から延びるように設けられている。周方向D4における第1規制部103の先端と第2規制部104の先端とは、切欠き105を挟んで対向配置されている。
本体部101には、変速機ケース1の第1ケース部材2に固定された位置決めピン87,88(図4、図11及び図12参照)に係合される係合穴102が設けられている。該係合穴102に係合される位置決めピン87,88によって、インターロック規制部材100の軸方向D3の移動が規制される。係合穴102は、本体部101を厚み方向に貫通して設けられている。また、係合穴102は、周方向D4に延びる長穴とされており、これにより、位置決めピン87,88に対するインターロック規制部材100の周方向移動が所定範囲内で許容されている。
第1規制部103及び第2規制部104の内周面は、本体部101の内周面と同じ円筒面上に配置されている。シフトフィンガ93の外側にインターロック規制部材100が嵌合された状態において、本体部101、第1規制部103及び第2規制部104の内周面は、シフトフィンガ93の外周面に沿って配置され、これにより、シフトフィンガ93に対するインターロック規制部材100の径方向へのがたつきが抑制される。この嵌合状態において、シフトフィンガ93のレバー部94は、第1及び第2規制部103,104間の切欠き105に配置されることで、インターロック規制部材100との干渉が回避される。
インターロック規制部材100は、第1規制部103から軸方向D3両側に延びる一対の第1ガイド部106,107と、第2規制部104から軸方向D3両側に延びる一対の第2ガイド部108,109とを更に備えている。第1ガイド部106,107及び第2ガイド部108,109は、軸方向D3から見て扇状に形成されており、第1規制部103及び第2規制部104と比べて内径が等しく、外径が小さく形成されている。第1ガイド部106,107及び第2ガイド部108,109の内周面は、本体部101、第1規制部103及び第2規制部104の内周面と同じ円筒面上に配置されており、シフトフィンガ93の外周面に沿って配置され得る。
インターロック規制部材100の内周面には、本体部101と第1規制部103とに跨がる第1係合凹部110と、本体部101と第2規制部104とに跨がる第2係合凹部111とが設けられている。第1係合凹部110及び第2係合凹部111は、それぞれ軸方向D3に延びる溝状に形成されている。
シフトフィンガ93の外側にインターロック規制部材100が嵌合された状態において、インターロック規制部材100の第1及び第2係合凹部110,111にはシフトフィンガ93の突出部95,96が係合される。これにより、シフトフィンガ93に対するインターロック規制部材100の周方向移動が規制されるため、セレクト操作に連動してシフトフィンガ93が回動するとき、インターロック規制部材100も常に一体的に回動する。
このとき、インターロック規制部材100の係合穴102に係合された位置決めピン87,88は、周方向D4に長く形成された係合穴102内で周方向の移動が許容されるため、位置決めピン87,88によってインターロック規制部材100の回動が規制されることはない。
また、シフトフィンガ93とインターロック規制部材100の嵌合状態において、シフトフィンガ93の各突出部95,96は、インターロック規制部材100の第1及び第2係合凹部110,111に沿って軸方向D3に移動自在とされている。さらに、この嵌合状態において、シフトフィンガ93のレバー部94は、第1及び第2規制部103,104間の切欠き105に沿って軸方向D3に移動自在となっている。そのため、位置決めピン87,88によって軸方向D3の移動が規制されたインターロック規制部材100によって、シフトフィンガ93の軸方向D3の移動が規制されることはない。
図4に示すように、変速操作機構40は、変速機ケース1内において第2コントロールロッド42に平行に配置されたシフトロッド90を更に備えている。シフトロッド90は、軸方向D3から見て第2コントロールロッド42の斜め下方に配置されている(図12参照)。シフトロッド90の一端部は、例えば金属製のブッシュ47を介して変速機ケース1の第1ケース部材2に、シフトロッド90の他端部は、例えば金属製のブッシュ48を介して変速機ケース1の第2ケース部材3にそれぞれ摺動自在に支持されている。
また、変速操作機構40は、セレクト操作によってシフトフィンガ93に選択的に係合され且つシフト操作によって軸方向D3に移動されることで対応する同期装置31,32,33,34(図1参照)を作動させる複数のシフトフォーク132,144,154,164を備えている。具体的には、リバース用同期装置31を作動させるリバース用シフトフォーク132、1−2速用同期装置32を作動させる1−2速用シフトフォーク144、3−4速用同期装置33を作動させる3−4速用シフトフォーク154、5−6速用同期装置34を作動させる5−6速用シフトフォーク164が設けられている。
リバース用シフトフォーク132は、カウンタシャフト8に設けられたリバース用同期装置31のシンクロスリーブ31a(図1参照)に係合されるものであり、1−2速用シフトフォーク144は、同じくカウンタシャフト8に設けられた1−2速用同期装置32のシンクロスリーブ32a(図1参照)に係合されるものである。
一方、3−4速用シフトフォーク154は、メインシャフト5に設けられた3−4速用同期装置33のシンクロスリーブ33a(図1参照)に係合されるものであり、5−6速用シフトフォーク164は、同じくメインシャフト5に設けられた5−6速用同期装置34のシンクロスリーブ34a(図1参照)に係合されるものである。
いずれのシフトフォーク132,144,154,164も、係合されたシンクロスリーブ31a,32a,33a,34aを軸方向D3に移動させることで、対応する同期装置31,32,33,34を作動させる。
リバース用シフトフォーク132、1−2速用シフトフォーク144、3−4速用シフトフォーク154、5−6速用シフトフォーク164は、軸方向D3において車体後方側からこの順で並ぶように配置されている。
リバース用シフトフォーク132と1−2速用シフトフォーク144は、シフトロッド90に支持されており、3−4速用シフトフォーク154と5−6速用シフトフォーク164は、第2コントロールロッド42に遊嵌支持されている。
リバース用シフトフォーク132は、例えばスプリングピン131によってシフトロッド90に固定された筒状のシフトエンド130に一体に設けられている。シフトエンド130は、シフトロッド90の車体前方側の端部近傍に配置されている。リバース用シフトフォーク132は、シフトエンド130を介してシフトロッド90に固定されていることにより、該シフトロッド90と共に軸方向D3に移動するようになっている。
リバース用シフトフォーク132に対応するフォークゲート123(図12参照)は、第2コントロールロッド42上の第2セット92の周囲に配設されている。該フォークゲート123を一端部に有するゲートアーム122の他端部は、例えばスプリングピン121によってシフトロッド90に固定された筒状部120に一体に連なっている。これにより、ゲートアーム122は、シフトロッド90を介して間接的にシフトフォーク132に連絡されている。
1−2速用シフトフォーク144は、シフトロッド90に遊嵌された筒状のシフトエンド140に一体に設けられている。シフトエンド140は、リバース用の前記筒状部120とシフトエンド130との間の軸方向範囲においてシフトロッド90上を摺動可能とされている。1−2速用シフトフォーク144は、シフトエンド140を介してシフトロッド90に遊嵌支持されていることにより、シフトロッド90上をシフトエンド140と一体に軸方向D3に移動するようになっている。
1−2速用シフトフォーク144に対応するフォークゲート143は、第2コントロールロッド42上の第2セット92の周囲に配設されている。該フォークゲート143を一端部に有するゲートアーム142の他端部は、シフトエンド140に一体に連なっている。これにより、ゲートアーム142は、シフトロッド90を介することなくシフトフォーク144に直接的に連絡されている。
3−4速用シフトフォーク154は、第2コントロールロッド42に遊嵌された筒状のシフトエンド150に一体に設けられている。シフトエンド150は、第1セット91のシフトフィンガ93と第2セット92のシフトフィンガ93との間の軸方向範囲において第2コントロールロッド42上を摺動可能とされている。3−4速用シフトフォーク154は、シフトエンド150を介して第2コントロールロッド42に遊嵌支持されていることにより、第2コントロールロッド42に対して相対的に軸方向D3に移動可能となっている。
3−4速用シフトフォーク154に対応するフォークゲート153(図11参照)は、第2コントロールロッド42上の第1セット91の周囲に配設されている。該フォークゲート153を一端部に有するゲートアーム152の他端部は、シフトエンド150に一体に連なっている。これにより、ゲートアーム152は、シフトフォーク154に直接的に連絡されている。
5−6速用シフトフォーク164は、第2コントロールロッド42に遊嵌された筒状のシフトエンド160に一体に設けられている。シフトエンド160は、第1セット91のシフトフィンガ93よりも車体後方側において第2コントロールロッド42上を摺動可能とされている。5−6速用シフトフォーク164は、シフトエンド160を介して第2コントロールロッド42に遊嵌支持されていることにより、第2コントロールロッド42に対して相対的に軸方向D3に移動可能となっている。
5−6速用シフトフォーク164に対応するフォークゲート163は、第2コントロールロッド42上の第1セット91の周囲に配設されている。該フォークゲート163を一端部に有するゲートアーム162の他端部は、シフトエンド160に一体に連なっている。これにより、ゲートアーム162は、シフトフォーク164に直接的に連絡されている。
上述したフォークゲート123,143,153,163のシフトフィンガ93及びインターロック規制部材100に対する係合は、第1セット91と第2セット92に分担されている。具体的には、図11に示すように、3−4速用及び5−6速用のフォークゲート153,163が第1セット91に分担され、図12に示すように、リバース用及び1−2速用のフォークゲート123,143が第2セット92に分担されている。
図11及び図12に示すニュートラル状態において、シフトフィンガ93のレバー部94の周方向D4位置は、第1セット91と第2セット92のいずれにおいても同じであり、フォークゲート123,143,153,163は、全て異なる周方向D4位置に配置されている。具体的には、軸方向D3の車体後方側から見て、リバース用、1−2速用、3−4速用、5−6速用フォークゲート123,143,153,163が、反時計回り方向にこの順で並ぶように配置されている。
ニュートラル状態において、3−4速用フォークゲート153は、第1セット91のシフトフィンガ93のレバー部94に係合されており(図11参照)、3−4速用フォークゲート153よりも周方向D4の一方側に配置されたリバース用及び1−2速用のフォークゲート123,143は、第2セット92のインターロック規制部材100の第2規制部104に係合され(図12参照)、3−4速用フォークゲート153よりも周方向D4の他方側に配置された5−6速用フォークゲート163は、第1セット91のインターロック規制部材100の第1規制部103に係合されている(図11参照)。
以上のように構成された変速操作機構40は、チェンジレバー200(図3参照)のセレクト操作及びシフト操作に連動して、以下のような動作を行う。
先ず、ニュートラル状態を示す図6と、5−6速セレクト状態を示す図13とを比較して参照しながら、セレクト操作時における変速操作機構40の反転機構50の動作について説明する。
上述したように、第1レバーエンド60は第1コントロールロッド41に固定されており、スリーブ部材70は、第1レバーエンド60に対して相対回動が規制されている。また、スリーブ部材70に対する支持軸58及び反転レバー51の筒状部52の相対位置は一定である。
そのため、セレクト操作に連動して第1コントロールロッド41が回動されると、第1レバーエンド60、スリーブ部材70、支持軸58及び反転レバー51は、第1コントロールロッド41の軸心周りの周方向D2に該ロッド41と一体的に回動する。例えば、図13に示すように、5−6速セレクト操作が行われると、第1コントロールロッド41、第1レバーエンド60、スリーブ部材70、支持軸58及び反転レバー51は、第1コントロールロッド41の軸心周りに、車体後方側から見て時計回り方向に一体的に回動する。
このようにして第1コントロールロッド41の軸心周りに反転レバー51が回動すると、反転レバー51の第2レバー部55と第2レバーエンド80との係合部では、第2レバー部55の球状部56によって第2レバーエンド80の穴83の内周面が第2コントロールロッド42の周方向D4に押し込まれ、これにより、第2レバーエンド80及びこれが固定された第2コントロールロッド42は、該ロッド42の軸心周りの周方向D4に、第1コントロールロッド41とは反対方向に回動する。例えば、図13に示す5−6速セレクト操作時に、第2コントロールロッド42は車体後方側から見て反時計回り方向に回動する。
以上のようにして、セレクト操作時における第1コントロールロッド41の回転運動は、反転機構50を介して第2コントロールロッド42に伝達される。これにより、セレクト操作時において、第2コントロールロッド42は、第1コントロールロッド41の回動に連動して、該ロッド41の回動方向とは反対方向に回動する。
次に、ニュートラル状態を示す図11及び図12と、5−6速セレクト状態を示す図14及び図15とを比較して参照しながら、セレクト操作時における第2コントロールロッド42上の第1及び第2セット91,92の動作について説明する。
上記のようにセレクト操作に連動して第2コントロールロッド42が回動すると、第1及び第2セット91,92のシフトフィンガ93及びインターロック規制部材100も第2コントロールロッド42と共に回動し、上記のように配置されたフォークゲート123,143,153,163のうち、セレクト操作により選択されたセレクト位置に対応するフォークゲートに、第1又は第2セット91,92のいずれかのシフトフィンガ93のレバー部94が係合される。このとき、シフトフィンガ93に係合されたもの以外のフォークゲートには、インターロック規制部材100の第1又は第2規制部103,104が係合される。
例えば、図11に示すニュートラル状態において、シフトフィンガ93のレバー部94は3−4速用フォークゲート153に係合されるが、図14に示す5−6速セレクト状態では、レバー部94が5−6速用フォークゲート163に係合される。なお、5−6セレクト状態では、図14に示すように、3−4速用フォークゲート153は、第1セット91のインターロック規制部材100の第2規制部104に係合され、図15に示すように、リバース用及び1−2速用フォークゲート123,143は、第2セット92のインターロック規制部材100の第2規制部104に係合される。
続いて、ニュートラル状態を示す図7と、4速シフト状態を示す図16とを比較して参照しながら、シフト操作時における変速操作機構40の動作について説明する。
上記のように第1コントロールロッド41上の第1レバーエンド60に反転レバー51の第1レバー部53が係合されていることにより、シフト操作に連動して第1コントロールロッド41及びこれに固定された第1レバーエンド60が軸方向D1に移動すると、第1レバーエンド60の係合溝63の一対の側面部64,65のうちいずれか一方によって、第1レバー部53の係合部54が軸方向D1に押し込まれる。これにより、反転レバー51は、支持軸58の軸心周りの周方向D5に揺動される。
このように反転レバー51が揺動されると、該反転レバー51の第2レバー部55に係合された第2レバーエンド80は、第2レバー部55の球状部56によって穴83の内周面が第2コントロールロッド42の軸方向D3に押し込まれることで、第2レバーエンド80及びこれが固定された第2コントロールロッド42は、軸方向D3に移動される。
反転レバー51が揺動するとき、第2レバー部55の球状部56は、軸方向D3に関して、第1レバー部53の係合部54とは反対方向に移動する。したがって、シフト操作時において、第2コントロールロッド42は、第1コントロールロッド41とは反対方向に移動する。例えば、図16に示す4速シフト操作時には、第1コントロールロッド41は、軸方向D1の車体前方側へ移動し、第2コントロールロッド42は、軸方向D3の車体後方側へ移動する。
以上のようにして、シフト操作時における第1コントロールロッド41の並進運動は、反転機構50を介して第2コントロールロッド42に伝達される。これにより、シフト操作時において、第2コントロールロッド42は、第1コントロールロッド41の軸方向D1への移動に連動して、該ロッド41の移動方向とは反対側に向かって軸方向D3に移動する。
このようにしてシフト操作に連動して第2コントロールロッド42が軸方向D3に移動すると、図16に示すように、第2コントロールロッド42に固定された第1及び第2セット91,92のシフトフィンガ93、及び、一方のシフトフィンガ93に係合されたフォークゲート163も軸方向D3に移動する。例えば、4速シフト操作時には、第1セット91のシフトフィンガ93に係合された3−4速用フォークゲート153が車体後方側へ軸方向D3に移動し、これと一体に3−4速用シフトフォーク154も同方向へ移動することで、3−4速用同期装置33(図1参照)が作動されて、4速用ギヤ列G4が動力伝達状態となる。
このとき、シフトフィンガ93に係合されていない他のフォークゲート123,143,163は、インターロック規制部材100との係合によって軸方向D3への移動が規制されるため、同時に複数の同期装置が作動することが防止され、これにより、変速機構4のインターロックが回避される。
以上で説明した第1実施形態によれば、第1コントロールロッド41と第2コントロールロッド42との間に設けられた反転機構50によって、シフト操作時における第2コントロールロッド42の移動方向が第1コントロールロッド41の移動方向に対して反転される。
これにより、図2に示すシフトパターン202に従って車体前方側へのシフト操作が行われる1速、3速、5速、リバースへの変速操作時には、対応するシフトフォーク132,144,154,164及びシンクロスリーブ31a,32a,33a,34a(図1参照)も車体前方側へ移動することで、所望の変速段のギヤ列G1,G3,G5,GR(図1参照)を動力伝達状態とすることができる。
一方、車体後方側へのシフト操作が行われる2速、4速、6速への変速操作時には、対応するシフトフォーク144,154,164及びシンクロスリーブ32a,33a,34a(図1参照)が車体後方側へ移動することで、所望の変速段のギヤ列G2,G4,G6(図1参照)を動力伝達状態とすることができる。
したがって、上記のように反転機構50が設けられた変速操作機構40によって、図1に示すような並び順でギヤ列G0,G1,G2,G3,G4,G5,GR及び同期装置31,32,33,34が配置された変速機構4の変速を適正に実行できる。そして、このように変速機構4が構成されることで、最も大きなトルクがかかる1速用ギヤ列G1を2速用ギヤ列G2に比べて軸受17,27に近づけて配置できたり、直結変速段である6速のときに入力軸6に直結される出力軸7の嵌合部7aを他の全ての変速段のギヤ列G1,G2,G3,G4,G5,GRよりも車体後方側に配置できたり、これにより、使用頻度の高い6速を直結変速段としたアウトプットリダクションタイプの変速機構4を構築できたりするなどといった利点が得られる。
そして、上記の反転機構50によれば、全てのシフトフォーク132,144,154,164の移動方向を1つの反転レバー51によって反転させることができるため、仮に複数のシフトフォークの移動方向を反転させるためにシフトフォーク毎に反転レバーを設ける場合に比べて、反転レバー及びこれに付随する部品の点数を削減できると共に、変速操作機構40の軽量化を図ることができる。
また、反転レバー51を支持する支持軸58は、第1コントロールロッド41に嵌合されたスリーブ部材70に取り付けられているため、仮に変速機ケース1に支持軸58が取り付けられる場合に比べて、変速機ケース1に、支持軸58の端部を支持させるための取付穴やボス部を設ける必要がなく、簡素な構成で反転レバー51を支持することができる。
さらに、上記の反転機構50は、第1及び第2コントロールロッド41,42間でシフト操作時の移動方向を反転させる機能に加えて、第1及び第2コントロールロッド41,42間でセレクト運動の伝達を行う機能を兼ね備えているため、セレクト専用の伝達機構が省略されることで、部品点数の削減、並びに変速操作機構40の構成の簡素化、コンパクト化及び軽量化を図ることができる。
図6〜図8に示すように、このようにシフト運動の伝達とセレクト運動の伝達を両立させるための具体的な構成として、反転レバー51と第2レバーエンド80の係合が、第2レバーエンド80に設けられた穴83に対する反転レバー51の球状部56の嵌合によって果たされている。これにより、反転レバー51の球状部56によって、第2レバーエンド80及び第2コントロールロッド42を軸方向D3及び周方向D4のいずれにもスムーズに押し込むことができる。したがって、セレクト操作時及びシフト操作時のいずれにおいても、第1コントロールロッド41から反転機構50を介した第2コントロールロッド42への円滑な運動伝達を実現できる。
また、図7に示すように、上記の変速操作機構40によれば、変速機ケース1を構成する第1及び第2ケース部材2,3の結合部分を利用して、これらのケース部材2,3によって軸方向D1の両側からスリーブ部材70を強固に支持しつつ、スリーブ部材70の軸方向移動を規制できる。そのため、変速機ケース1に位置決め用の専用部品を取り付けたり、その取付け用の穴やボス部を変速機ケース1に設けたりする必要がなく、簡素な構成でスリーブ部材70の軸方向移動を規制できる。
さらに、上記の変速操作機構40によれば、反転レバー51の一端側の係合部54がスリーブ部材70の周壁部72の内側で第1レバーエンド60に係合されるため、仮に反転レバー51が周壁部72の外側で第1レバーエンド60に係合される場合に比べて、支持軸58を第1コントロールロッド41に近づけて配置させやすい。したがって、第1コントロールロッド41に対して第2コントロールロッド42を近づけて配置させやすくなり、これにより、変速操作機構40をコンパクトに形成しやすくなる。
[第2実施形態]
図17及び図18を参照しながら、第2実施形態に係る変速操作機構240について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、図17及び図18において同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
図17及び図18に示すように、第2実施形態に係る変速操作機構240では、スリーブ部材70の周壁部72における変速機ケース1との対向部に、軸方向D1に直角な方向に延びる係合溝250が設けられている。係合溝250は、変速機ケース1に向かって開放されており、該係合溝250に、変速機ケース1に固定された位置決めピン260が係合されている。この係合溝250と位置決めピン260の係合によって、スリーブ部材70の軸方向D1への移動が規制されている。
このように、第2実施形態では、変速機ケース1に取り付けられた位置決めピン260によってスリーブ部材70が軸方向D1に位置決めされているため、変速機ケース1を構成するケース部材同士の結合部分の位置に限らず、任意の位置にスリーブ部材70を配置及び位置決めできる。
なお、スリーブ部材70のその他の構成は第1実施形態と同様であり、セレクト操作時及びシフト操作時において、反転機構50は第1実施形態と同様の動作を行う。したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第3実施形態]
図19及び図20を参照しながら、第3実施形態に係る変速操作機構340について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、図17及び図18において同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
図19及び図20に示すように、第3実施形態に係る変速操作機構340では、反転機構350の構成の一部が第1実施形態と異なっている。
第3実施形態においても、反転機構350は、第1コントロールロッド41に固定された第1レバーエンド360、第1レバーエンド360を介して第1コントロールロッド41に嵌合されたスリーブ部材370、スリーブ部材370に支持された支持軸58、支持軸58の軸心周りに回転可能に該支持軸58に支持された反転レバー51、及び、第2コントロールロッド42に固定された第2レバーエンド80を備えており、反転レバー51は、一端側において第1レバーエンド360に係合され、他端側において第2レバーエンド80に係合されている。
第3実施形態では、反転レバー51と第1レバーエンド360との係合に関する構成が第1実施形態と異なっている。第3実施形態においても、第1レバーエンド360は、軸方向D1に延びる一対の突条361,362を備えているが、第1実施形態のような係合溝63(図5〜図7参照)は備えておらず、いずれの突条361,362も係合溝によって分断されることなく、軸方向D1に連続して形成されている。
第1レバーエンド360は、上記の係合溝63に代えて、第2コントロールロッド42に向かって突出した一対の突出部363,364を備えている。各突出部363,364は、軸方向D1に直角に配置されたプレート部で構成されており、軸方向D1において相互に間隔を空けて対向配置されている。
スリーブ部材370は、基本的には第1実施形態のスリーブ部材70と同様の構成を有するが、第1実施形態のスリーブ部材70において反転レバー51の第1レバー部53を挿通させるために設けられた切欠部75(図5〜図7参照)に代えて、第1レバーエンド360の一対の突出部363,364を挿通させるための切欠部375を備えている。切欠部375は、軸方向D1に延びるようにスリーブ部材370の周壁部72の全長に亘って形成されているが、軸方向D1の一端側が閉塞されたスリット状、又は、両端側が閉塞されたスロット状に形成されてもよい。
そして、第3実施形態では、一対の突出部363,364間に、反転レバー51の係合部54が軸方向D1の両側から挟み込まれるように配置されることで、反転レバー51と第1レバーエンド360が係合されている。このような係合により、シフト操作に連動して、第1コントロールロッド41及び第1レバーエンド360が軸方向D1に移動したとき、反転レバー51の係合部54が第1レバーエンド360の一方の突出部363,364によって軸方向D1の一方側へ押し込まれることで、第1実施形態と同様に反転レバー51が支持軸58の軸心周りの周方向D5に回転する。
これにより、第1コントロールロッド41の移動方向に対して第2コントロールロッド42の移動方向が反転するように、第1及び第2コントロールロッド41,42間でシフト運動の伝達が行われる。また、セレクト操作時には、第1実施形態と同様、第1レバーエンド360、スリーブ部材370、支持軸58及び反転レバー51が第1コントロールロッド41と一体的にその軸心周りの周方向D2に揺動することで、反転レバー51によって第2コントロールロッド42を回動させるように第1及び第2コントロールロッド41,42間でのセレクト運動の伝達が行われる。したがって、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第4実施形態]
図21〜図27を参照しながら、第4実施形態に係る変速操作機構440について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成要素については、図21〜図27において同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
図21に示すように、第4実施形態に係る変速操作機構440では、反転機構450の構成の一部が第1実施形態と異なっている。
第4実施形態においても、反転機構450は、第1コントロールロッド41に固定された第1レバーエンド460、第1コントロールロッド41に嵌合されたスリーブ部材470、スリーブ部材470に支持された支持軸58、支持軸58の軸心周りに回転可能に該支持軸58に支持された反転レバー51、及び、第2コントロールロッド42に固定された第2レバーエンド80を備えており、反転レバー51は、一端側において第1レバーエンド460に係合され、他端側において第2レバーエンド80に係合されている。第4実施形態では、第1レバーエンド460及びスリーブ部材470の構成が第1実施形態と異なっている。
図21及び図22に示すように、第1レバーエンド460は、第1コントロールロッド41に嵌合される筒状部材である。第1レバーエンド460には、該第1レバーエンド460を径方向に貫通する貫通穴466が設けられている。貫通穴466は、軸方向D1における第1レバーエンド460の後端近傍部に設けられている。第1レバーエンド460は、貫通穴466に装着されたスプリングピン469によって第1コントロールロッド41に固定されている。これにより、第1レバーエンド460は、常に第1コントロールロッド41と共に回動及び軸方向移動を行う。第1レバーエンド460は、第1コントロールロッド41の例えば車体前方側の端部近傍に固定されている。
第1レバーエンド460の外周面には、突起としてのレバー部461が設けられている。レバー部461は、第1レバーエンド460の外周面から接線方向に沿って延びている。レバー部461は、軸方向D1における第1レバーエンド460の後端近傍に設けられている。
また、第1レバーエンド460の外周面には、軸方向D1に直角な接線方向に延びる係合溝463が設けられている。係合溝463は、軸方向D1における第1レバーエンド460の中央から車体前方側にオフセットして設けられている。係合溝463は、レバー部461の長さ方向に平行に延びるように形成されている。係合溝463は、相互に対向し且つそれぞれ軸方向D1に直角に配置された一対の側面部464,465を備えている。
係合溝463は、反転レバー51の一端側が係合される第1係合部とされている。係合溝463は、一対の側面部464,465によって軸方向D1の両側から反転レバー51の一端部を挟み込むようにして、該反転レバー51に係合される。
スリーブ部材470は、軸方向D1に間隔を空けて配置された第1及び第2被規制部471,472と、第1及び第2被規制部471,472間を繋ぐ連絡部480とを備えている。
第1及び第2被規制部471,472は、第1レバーエンド460を挟んで相互に対向するプレート部である。第1及び第2被規制部471,472は、例えば、軸方向D1に直角に配置されている。
第1被規制部471及び第2被規制部472にはそれぞれ貫通穴473,474が設けられており、これらの貫通穴473,474に第1コントロールロッド41が挿通されている。これにより、スリーブ部材470は、第1コントロールロッド41に遊嵌支持されており、第1コントロールロッド41に対して軸方向D1に相対移動可能とされている。
連絡部480は、第1及び第2被規制部471,472間を繋ぐプレート部である。連絡部480は、例えば、軸方向D1に平行に配置されている。連絡部480の軸方向D1の両縁部は、第1被規制部471の縁部と第2被規制部472の縁部に一体に連なっており、第1被規制部471、連絡部480及び第2被規制部472は、全体としてコ字状に形成されている。
連絡部480には、係合穴482が設けられている。係合穴482は、軸方向D1に延びる長穴とされている。軸方向D1に直角な連絡部480の幅方向において、係合穴482は、連絡部480の中央からオフセットした位置に配置されている。
連絡部480は、第1コントロールロッド41の外周面及び第1レバーエンド460の外周面に対向配置されており、係合穴482には、第1レバーエンド460のレバー部461が係合される。そのため、第1コントロールロッド41と共に第1レバーエンド460が回動するとき、スリーブ部材470の連絡部480における係合穴482の側壁がレバー部461によって周方向D2に押し込まれ、これにより、スリーブ部材470は、第1コントロールロッド41と一体的に回動する。
また、スリーブ部材470は、連絡部480から第1コントロールロッド41とは反対側に延びる一対の突出部476,477を備えている。一対の突出部476,477は、連絡部480における軸方向D1に直角な幅方向の縁部に一体に連なっている。一対の突出部476,477は互いに平行に対向配置されている。一方の突出部476は、連絡部480の係合穴482の近傍に配置されている。各突出部476,477には、支持軸58を挿通させるための貫通穴478,479が設けられている。
図21に示すように、スリーブ部材470の第1被規制部471は、第1ケース部材2の内周面に設けられた段部2aに係合されている。第1被規制部471は、段部2aに当接することにより軸方向D1の車体後方側への移動が規制されている。第2被規制部472は、第2ケース部材3における第1ケース部材2との合わせ面3aに係合されている。第2被規制部472は、合わせ面3aに当接することにより軸方向D1の車体前方側への移動が規制されている。このようにして第1及び第2被規制部471,472が変速機ケース1に係合されていることにより、スリーブ部材470の軸方向D1への移動が規制されている。
したがって、スリーブ部材470は、セレクト操作時には第1コントロールロッド41の回動に連動して回動するが、シフト操作時には、変速機ケース1によって軸方向移動が規制されていることにより、第1コントロールロッド41の軸方向移動に対して非連動とされている。
図23に示すように、支持軸58は、一対の突出部476,477を貫通した状態でスリーブ部材470に取り付けられている。支持軸58は、スリーブ部材470に相対移動不能に取り付けられている。支持軸58は、第1コントロールロッド41に直角な方向に沿って配置されており、この位置関係は、スリーブ部材470の回動位置に関係なく常に一定に維持される。支持軸58の抜け止めは、例えば、その一端側に設けられた頭部58aと他端側に装着されたスナップリング59によって果たされている。
反転レバー51は、上記のようにスリーブ部材470に支持された支持軸58の軸心周りに揺動可能となっている。反転レバー51の筒状部52は、スリーブ部材470の一対の突出部476,477に挟み込まれており、これにより、支持軸58の軸方向における反転レバー51の移動が規制されている。
反転レバー51の第1レバー部53は、スリーブ部材470の連絡部480における係合穴482を通って該連絡部480を貫通している。第1レバー部53の先端部に設けられた係合部54は、第1レバーエンド460の係合溝463に係合されている。係合部54は、例えば円板状に形成されている。係合部54は、反転レバー51の揺動角度に関わらず常に、係合溝463の側面部464,465に直角に配置される。
反転レバー51の第2レバー部55の先端部に設けられた球状部56は、第1実施形態と同様に第2レバーエンド80に係合されている。
以上のような反転機構450を介して第1及び第2コントロールロッド41,42が相互に連絡されていることにより、例えば図24に示すように、シフト操作に連動して第1コントロールロッド41及び第1レバーエンド460が軸方向D1に移動したとき、スリーブ部材470及び支持軸58の軸方向D1移動が規制されると共に、反転レバー51の係合部54が第1レバーエンド460の係合溝463における一方の側面部464,465によって軸方向D1の一方側へ押し動かされることで、第1実施形態と同様に反転レバー51が支持軸58の軸心周りの周方向D5に回転する。
このように支持軸58の軸方向D1移動が規制された状態で、反転レバー51の一端側の係合部54が軸方向D1の一方側へ移動されることで、反転レバー51の他端側の球状部56を軸方向D3の他方側へ移動させることができる。これにより、第2レバーエンド80を介して反転レバー51の球状部56に係合された第2コントロールロッド42は、第1コントロールロッド41とは反対側へ軸方向D3に移動される。
このように、シフト操作時には、第1コントロールロッド41の移動方向に対して第2コントロールロッド42の移動方向が反転するように、第1及び第2コントロールロッド41,42間でシフト運動の伝達が行われる。
また、図25に示すように、セレクト操作時には、第1実施形態と同様、第1レバーエンド460、スリーブ部材470、支持軸58及び反転レバー51が第1コントロールロッド41と一体的にその軸心周りの周方向D2に揺動することで、反転レバー51によって第2コントロールロッド42を回動させるように第1及び第2コントロールロッド41,42間でのセレクト運動の伝達が行われる。
以上のように、第4実施形態においても、第1及び第2コントロールロッド41,42間で、反転機構450を介したシフト運動及びセレクト運動の伝達を行うことができるため、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第4実施形態におけるスリーブ部材470は、第1コントロールロッド41に嵌合される第1及び第2被規制部471,472間を連絡部480で繋ぐと共に、支持軸58を支持する一対の突出部476,477間を同じく連絡部480で繋ぐという簡素な構成とされている。また、スリーブ部材470を構成する第1及び第2被規制部471,472、一対の突出部476,477並びに連絡部480はいずれもプレート状とされているため、1枚の板材をプレス成形することによって、スリーブ部材470を簡単に形成することができると共に、スリーブ部材470の各部471,472,476,477,480が薄肉に形成されることで、スリーブ部材470の軽量化を図ることができる。
また、第4実施形態では、第1実施形態とは異なり、第1レバーエンド460の外側に筒状部材を嵌合させる必要がないため、第1レバーエンド460の外周面に、第1レバーエンド460の外径の寸法精度を高めるための仕上げ加工を施す必要がない。
第4実施形態における変速操作機構440は、以下のような手順で組み立てられる。
先ず、第1コントロールロッド41、第2コントロールロッド42及びシフトロッド90に、各ロッド41,42,90に対応する変速操作機構440の各種部品が組み付けられ、その後、これらのロッド41,42,90が変速機ケース1に組み付けられる。変速機ケース1にロッド41,42,90を組み付けるときは、合わせ面3aが上方を向く姿勢で載置された第2ケース部材3に対して、上方からロッド41,42,90を差し込んで組み付けた後、これらのロッド41,42,90に第1ケース部材2を上方から被せて、ロッド41,42,90の上端側を第1ケース部材2に組み付けると共に、第1ケース部材2の下端側を第2ケース部材3の合わせ面3aに結合する。
また、上記のように変速機ケース1に第1コントロールロッド41を組み付ける前に、第1コントロールロッド41に反転レバー51を予め組み付けるサブアセンブリ工程が行われる。サブアセンブリ工程は、例えば、図26に示す手順や、図27に示す手順で行われる。
図26に示す例では、先ず、スリーブ部材470に反転レバー51を組み付けた後、スリーブ部材470を第1コントロールロッド41に嵌合させる。
具体的には、図26(a)に示すように、スリーブ部材470の係合穴482に反転レバー51の第1レバー部53を差し込み、反転レバー51の筒状部52の内側及びスリーブ部材470の貫通穴478,479に支持軸58を差し込んで、支持軸58の先端部にスナップリング59を装着することで、スリーブ部材470に支持軸58及び反転レバー51を組み付ける。
続いて、図26(b)に示すように、スリーブ部材470の第1及び第2被規制部471,472間に第1レバーエンド460を差し込んで、該第1レバーエンド460の係合溝463に反転レバー51の係合部54を係合させながら、第1レバーエンド460のレバー部461をスリーブ部材470の係合穴482に差し込む。
その後、スリーブ部材470の第1及び第2被規制部471,472の貫通穴473,474及び第1レバーエンド460の内側に第1コントロールロッド41を嵌合させて、スプリングピン469(図21参照)によって第1レバーエンド460を第1コントロールロッド41に固定する。これにより、反転レバー51は、第1レバーエンド460を介して第1コントロールロッド41に係合された状態で、支持軸58、スリーブ部材470及び第1レバーエンド460を介して第1コントロールロッド41に組み付けられる。
このようにして第1コントロールロッド41に組み付けられた反転レバー51は、その球状部56において、予め第2コントロールロッド42に固定された第2レバーエンド80に係合される。これにより、反転レバー51は、第2レバーエンド80を介して第2コントロールロッド42に係合される。
なお、第2レバーエンド80に対する反転レバー51の係合は、変速機ケース1に対する第1及び第2コントロールロッド41,42の組み付けの前又は後のいずれに行ってもよい。
また、図27に示す例では、先ず、第1コントロールロッド41に第1レバーエンド460及びスリーブ部材470を組み付けた後、スリーブ部材470に反転レバー51を組み付ける。
具体的には、図27(a)に示すように、スリーブ部材470の係合穴482に第1レバーエンド460のレバー部461が係合された状態で、スリーブ部材470及び第1レバーエンド460を第1コントロールロッド41の外側に嵌合させ、スプリングピン469によって第1レバーエンド460を第1コントロールロッド41に固定する。
続いて、図27(b)に示すように、反転レバー51の第1レバー部53をスリーブ部材470の係合穴482及び第1レバーエンド460の係合溝463に差し込んで、第1レバーエンド460に反転レバー51を係合させ、この係合状態で、反転レバー51の筒状部52の内側及びスリーブ部材470の貫通穴478,479に支持軸58を差し込んで、支持軸58の先端部にスナップリング59を装着することで、スリーブ部材470に反転レバー51を組み付ける。これにより、反転レバー51は、第1レバーエンド460を介して第1コントロールロッド41に係合された状態で、支持軸58、スリーブ部材470及び第1レバーエンド460を介して第1コントロールロッド41に組み付けられる。
図26又は図27のいずれの組付け手順が採用される場合においても、予め反転レバー51が第1コントロールロッド41にサブアセンブリされた状態で、変速機ケース1に対して第1コントロールロッド41と共に反転レバー51を組み付けることができるため、反転レバー51を有する変速操作機構440の変速機ケース1への組付作業を簡素化できる。
[第5実施形態]
図28を参照しながら、第5実施形態に係る変速操作機構540について説明する。なお、第4実施形態と同様の構成要素については、図28において同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。
図28に示すように、第5実施形態に係る変速操作機構540の反転機構550は、第4実施形態の反転機構450と同様の第1レバーエンド460、スリーブ部材470、支持軸58、反転レバー51及び第2レバーエンド80を備えているが、第1レバーエンド460とスリーブ部材470が第2コントロールロッド42に設けられ、第2レバーエンド80が第1コントロールロッド41に設けられている点で、第4実施形態と異なっている。
第5実施形態において、第2レバーエンド80は、スプリングピン581によって第1コントロールロッド41に固定されており、これにより、第2レバーエンド80は、第1コントロールロッド41と共に軸方向移動及び回動を行う。
一方、第1レバーエンド460は、スプリングピン569によって第2コントロールロッド42に固定されており、これにより、第1レバーエンド460は、第2コントロールロッド42と共に軸方向移動及び回動を行う。
スリーブ部材470の第1被規制部471及び第2被規制部472は、第2コントロールロッド42の外側に遊嵌合されている。スリーブ部材470は、第4実施形態と同様に第1レバーエンド460のレバー部461に係合されており、これにより、スリーブ部材470は、第1レバーエンド460及び第2コントロールロッド42と共に回動可能となっている。
スリーブ部材470の第1被規制部471は、第2ケース部材3の合わせ面3aの車体後方側に隣接して配置されており、第1被規制部471の車体後方側には、例えばボルト592によって第2ケース部材3に固定された規制プレート590が隣接して配置されている。このように第1被規制部471が第2ケース部材3の合わせ面3aと規制プレート590によって軸方向D3の両側から挟み込まれることで、スリーブ部材470の軸方向D3への移動が規制されている。これにより、スリーブ部材470は、第2コントロールロッド42の軸方向移動に対して非連動とされている。
ただし、スリーブ部材470の軸方向D3の移動を規制するための構成はこれに限られるものでなく、例えば、第4実施形態のような第1ケース部材2の段部2a(図21参照)を第2コントロールロッド42の近傍に形成できる場合には、該段部2aに第2被規制部472を係合させるようにしてもよく、この場合、スリーブ部材470の軸方向D3車体後方側への移動を段部2aによって規制しつつ、車体前方側への移動を第2ケース部材3の合わせ面3aによって規制することができる。
支持軸58は、第4実施形態と同様にスリーブ部材470に取り付けられており、反転レバー51は、スリーブ部材470に支持された支持軸58の軸心周りに揺動可能となっている。また、第4実施形態と同様、反転レバー51は、第1レバー部53の係合部54において第1レバーエンド460に係合されており、第2レバー部55の球状部56において第2レバーエンド80に係合されている。
以上のような反転機構550を介して第1及び第2コントロールロッド41,42が相互に連絡されていることにより、シフト操作に連動して第1コントロールロッド41及び第2レバーエンド80が軸方向D1に移動したとき、スリーブ部材470及び支持軸58の軸方向D3移動が規制されると共に、反転レバー51の球状部56が第2レバーエンド80によって軸方向D1の一方側へ押し動かされることで、反転レバー51が支持軸58の軸心周りの周方向D5に回転する。
このように支持軸58の軸方向D3移動が規制された状態で、反転レバー51の一端側の球状部56が軸方向D1の一方側へ移動されることで、反転レバー51の他端側の係合部54を軸方向D3の他方側へ移動させることができる。これにより、第1レバーエンド460を介して反転レバー51の係合部54に係合された第2コントロールロッド42は、第1コントロールロッド41とは反対側へ軸方向D3に移動される。
また、セレクト操作時において、第1コントロールロッド41と共に第2レバーエンド80が周方向D2に回動すると、反転レバー51の球状部56が第2レバーエンド80によって周方向D2に押し込まれることで、反転レバー51、支持軸58、スリーブ部材470、第1レバーエンド460及び第2コントロールロッド42が一体的にその軸心周りの周方向D4に回動する。このとき、第2コントロールロッド42の回動方向は、第1コントロールロッド41の回動方向とは反対方向になる。
以上のように、セレクト操作時には、第1コントロールロッド41の回動方向に対して第2コントロールロッド42の回動方向が反転するように、第1及び第2コントロールロッド41,42間でのセレクト運動の伝達が行われ、シフト操作時には、第1コントロールロッド41の移動方向に対して第2コントロールロッド42の移動方向が反転するように、第1及び第2コントロールロッド41,42間でのシフト運動の伝達が行われる。したがって、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
第5実施形態における変速操作機構540の組み立てにおいては、第4実施形態と同様のサブアセンブリ工程において、第2コントロールロッド42に反転レバー51を予め組み付けておくことで、変速機ケース1に対して第2コントロールロッド42と共に反転レバー51を組み付けることができるため、反転レバー51を有する変速操作機構540の変速機ケース1への組付作業を簡素化できる。
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、チェンジレバー200がチェンジロッド190を介して第1コントロールロッド41に連絡される例を説明したが、本発明は、チェンジレバーと第1コントロールロッドが、チェンジロッドを介することなく直接的に連結される場合にも適用可能である。
また、本発明において、第2コントロールロッド42を複数のシフトフォークに選択的に係合させるための構成は、上記の構成に限定されるものでなく、種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、シフトフィンガセット91,92を2組設けて、それぞれのシフトフィンガセットに2本のシフトフォークが選択的に係合される例を説明したが、各シフトフィンガセットが分担するシフトフォークの本数や、シフトフィンガセットの組数は特に限定されるものでない。
さらに、本発明において、各シフトフォークを支持するための構成は上記の構成に限定されるものでなく、種々の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、第2コントロールロッド42に2本のシフトフォークが遊嵌支持され、シフトロッド90に2本のシフトフォークが固定又は遊嵌支持される例を説明したが、各シフトフォークはいずれのロッドに支持されてもよいし、シフトロッドの本数も限定されるものでなく、例えばシフトロッドを廃止して、全てのシフトフォークを第2コントロールロッド42に遊嵌支持させてもよい。
また、上述の第1〜第3実施形態において、スリーブ部材70,370は、第1コントロールロッド41に嵌合されているが、第2コントロールロッド42に嵌合されてもよい。
さらに、第1〜第3実施形態では、変速操作機構の組立方法についての説明を省略したが、これらの実施形態に係る変速操作機構についても、第4及び第5実施形態と同様、第1又は第2コントロールロッドに反転レバーを組み付けるサブアセンブリ工程が行われた後に、当該コントロールロッドが変速機ケースに組み付けられるようにすればよく、これにより、反転レバーを有する変速操作機構の変速機ケースへの組付作業が簡素化される。