[第1実施形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。まず、図1,2を用いて、本発明に係る第1実施形態の概略構成を説明する。図1は、本実施形態の手動変速装置の概略構成を示す図である。図2は、本実施形態において、入力軸の外側に配置される複数の入力側変速ギヤと、出力軸の外側に配置される複数の出力側変速ギヤとにより構成される複数の変速段の配置を示す模式図である。手動変速装置は、車両に搭載され、車両の変速装置の変速段を手動で切り換えるために使用する。図1に示すように、本実施形態の手動変速装置10は、変速機ケース12(図3等)に支持される操作レバー14と、複数のシフトフォーク軸である第1〜第4シフトフォーク軸16,18,20,22(22については図6、図9参照)と、シフトセレクト軸24と、反転軸支持部材であるインターロック部材26(図3等)と、反転レバー28とを備える。第1〜第4シフトフォーク軸16,18,20,22は、変速機ケース12内に互いに平行に配置されるとともにそれぞれ軸方向に移動可能に変速機ケース12に支持されている。シフトセレクト軸24は、変速機ケース12内に各シフトフォーク軸16,18,20,22に対し平行に配置されるとともに、軸方向の移動可能及び回動可能に変速機ケース12に支持されている。
なお、図1では、(前)(後)(右)(左)によりそれぞれ車両の前側、後側、右側、左側を示している(後述する図3、図6、図8〜10、図12で同様である。)。第1シフトフォーク軸16は1速(1st)及び2速(2nd)の変速段を選択する機能を有し、第2シフトフォーク軸18は3速(3rd)及び4速(4th)の変速段を選択する機能を有し、第3シフトフォーク軸20は5速(5th)及び6速(6th)の変速段を選択する機能を有する。また、第4シフトフォーク軸22は、後進ギヤを選択する機能を有する。なお、図1で、矢印で1st、2nd、3rd、4th、5th、6thを付したものは、それぞれ矢印方向に、対応するシフトセレクト軸24が移動した場合に、1速、2速、3速、4速、5速、6速のいずれか1つの変速段が選択されるように、後述するスリーブが対応する変速段のギヤに結合され、対応する変速が実行されることを表している(後述する図10、図12で同様である。)。なお、シフトフォーク軸は、変速段に応じて配置される数が決まるので、シフトフォーク軸は1つ以上であればよく、その配置の数は任意である。
操作レバー14は、車両の前後方向であるシフト方向と、車両の左右方向であるセレクト方向とに、それぞれ操作可能である。なお、図1では、操作レバー14の上側に、操作レバー14のシフトパターン30を図示している(後述する図10、図12で同様である。)。このシフトパターン30は実際には、操作レバー14の上端面やフロア側に設置された操作レバー14の移動を案内する案内部の近く等に表示されている。
操作レバー14は、球面部等の上側回転支持部32を介して変速機ケース12に回動可能に支持されている。操作レバー14の下端部はシフトセレクト軸24に設けられた下側回転支持部34を介してシフトセレクト軸24に接続されている。
シフトセレクト軸24は、操作レバー14にセレクト方向(図1の裏表方向)の操作入力が加わる、すなわち操作レバー14がセレクト動作されることにより軸心中心に回動し、操作レバー14にシフト方向の操作入力が加わる、すなわち操作レバー14がシフト動作されることにより軸方向に移動するように構成されている。
また、複数のシフトフォーク軸16,18,20,22には、それぞれ二股状のシフトフォーク35と断面がU字形のシフトヘッド36とが一体に設けられている。
図2に示すように、変速機ケース12の内側に入力軸38と出力軸40とが互いに平行に、かつ回転可能に支持されている。入力軸38の外側に1速から6速の入力側ギヤ42a〜42fと入力後進ギヤ43とが配置され、出力軸40の外側に1速から6速の出力側ギヤ44a〜44fと出力後進ギヤ46とが配置されている。入力側ギヤ42a〜42f及び出力側ギヤ44a〜44fの同じ変速段のギヤ同士は噛合している。これに対して、入力後進ギヤ43と出力後進ギヤ46とは互いに噛合せず、図示しないアイドラ後進ギヤが入力、出力両側の後進ギヤ43,46と噛合している。
また、入力側ギヤ42a〜42f及び出力側ギヤ44a〜44fの同じ変速段のギヤのうち、一方のギヤは入力軸38(または出力軸40)に一体形成されるか固定されており、他方のギヤは出力軸40(または入力軸38)に対して回転可能に設けられている。例えば、出力軸40(または入力軸38)の1速、2速の出力側ギヤ44a、44b(または入力側ギヤ42a、42b)の間に出力軸40(または入力軸38)と一体回転するスリーブを有する変速同期機構(図示せず)が配置される。第1シフトフォーク軸16(図1)に設けられたシフトフォーク35が係合するスリーブ(図示せず)が、1速ギヤ42a、44a側または2速ギヤ42b、44b側に移動することで対応するギヤと噛合し、入力軸38と出力軸40との間で1速または2速の変速が実行されつつ、エンジン側からの動力が車輪側に伝達される。
また、出力軸40(または入力軸38)の3速、4速の出力側ギヤ44c、44d(または入力側ギヤ42c、42d)の間に出力軸40(または入力軸38)と一体回転するスリーブを有する変速同期機構(図示せず)が配置される。第2シフトフォーク軸18(図1)に設けられたシフトフォーク35が係合するスリーブ(図示せず)が、3速ギヤ42c、44c側または4速ギヤ42d、44d側に移動することで対応するギヤと噛合し、入力軸38と出力軸40との間で3速または4速の変速が実行されつつ、エンジン側からの動力が車輪側に伝達される。
また、出力軸40(または入力軸38)の5速、6速の出力側ギヤ44e、44f(または入力側ギヤ42e、42f)の間に出力軸40(または入力軸38)と一体回転するスリーブを有する変速同期機構(図示せず)が配置される。第3シフトフォーク軸20(図1)に設けられたシフトフォーク35が係合するスリーブ(図示せず)が、5速ギヤ42e、44e側または6速ギヤ42f、44f側に移動することで対応するギヤと噛合し、入力軸38と出力軸40との間で5速または6速の変速が実行されつつ、エンジン側からの動力が車輪側に伝達される。
同様に入力後進ギヤ43及び出力後進ギヤ46のうち、一方のギヤは入力軸38(または出力軸40)に一体形成されるか固定されており、他方のギヤは出力軸40(または入力軸38)に対して回転可能に設けられている。そして出力軸40(または入力軸38)の後進ギヤ46(または43)から外れた部分に、出力軸40(または入力軸38)と一体回転するスリーブを有する変速同期機構(図示せず)が配置され、第4シフトフォーク軸22(図6、図9)に設けられたシフトフォークが係合するスリーブ(図示せず)が後進ギヤ46,43側に移動することで、入力軸38と出力軸40との間で、エンジン側からの動力がアイドラ後進ギヤを介して前進用に対して逆転されつつ車輪側に伝達される。
図1に戻って、シフトセレクト軸24には反転レバー28の一端部でありシフトセレクト軸側端部である上端部が接続されている。反転レバー28は、シフトセレクト軸24に軸方向の移動可能かつ回転可能に支持されかつケース等で軸方向固定された回動軸支持部材であるインターロック部材26(図3)に支持された反転軸48を中心に回動可能である。インターロック部材26は、変速機ケース12とは別の部材である。反転レバー28は、操作レバー14のセレクト動作により、シフトセレクト軸24が回動することで選択された1つのシフトフォーク軸18(または16,20,22のいずれか1つ)と、シフトセレクト軸24との間に接続される。反転レバー28は、シフトセレクト軸24の軸方向の移動により、回動中心軸である反転軸48の中心軸を中心に回動し、反転レバー28の他端部でありシフトフォーク軸側端部である下端部を、シフトセレクト軸24の移動方向とは逆方向の軸方向に移動させる。この構成により、反転レバー28は、選択された1つのシフトフォーク軸18(または16,20,22のいずれか1つ)を、シフトセレクト軸24の移動方向とは逆方向に移動させる。
次に、この反転レバー28と反転軸48とインターロック部材26とを含む反転機構50(図3)の詳しい構造を、図3〜9を用いて説明する。図3は、本実施形態の手動変速装置の主要部を示す断面図である。図4は、図3のA部拡大図である。図5は、一部を省略して示す、図4の矢印B方向に見た図である。図6は、図3のC−D−E−F断面図である。図7は、図4のG−G断面図である。図8は、操作レバー14が一方向にシフト動作された様子を示す、図3に対応する図である。図9は、操作レバー14が一方向にセレクト動作された様子を示す、図6に対応する図である。
図3に示すように、操作レバー14の下端部は、下側回転支持部34を介してシフトセレクト軸24に接続されている。これにより図8に示すように、操作レバー14がシフト方向の一方向(矢印P1方向)に操作されると、操作レバー14は変速機ケース12に固定された上側回転支持部32の中心を回転中心として回動する。このため、シフトセレクト軸24は、シフト方向の一方向とは逆方向である図8の矢印P2方向に移動する。また、図9に示すように、操作レバー14がセレクト方向の一方向(矢印q1方向)に操作されると、操作レバー14は上側回転支持部32(図3)の中心を回転中心として回動し、シフトセレクト軸24が、セレクト方向の一方向とは逆方向である図9の矢印q2方向に回動する。
図3〜7に示すように、シフトセレクト軸24には、インターロック部材26が支持されている。インターロック部材26は、前後方向(図3、図4の左右方向)に離れた部分に設けられた2つのガイド部である円形支持部52と、各円形支持部52同士を結合するように一体形成された互いに略平行な2つのインターロックプレート54,55とを含む。各円形支持部52は、シフトセレクト軸24の軸方向に対し直交する方向に設けられている。図7に示すように、各円形支持部52には、シフトセレクト軸24(図3等)を緩く貫通させる孔部56が設けられている。シフトセレクト軸24は各孔部56に軸方向の移動可能に挿入されている。このため、インターロック部材26は、シフトセレクト軸24に軸方向の移動可能に支持されている。
また、図6に示すように、各インターロックプレート54,55の前後方向(図6の表裏方向)中間部の下端部に突出部58が突出形成されている。各突出部58は各シフトフォーク軸16,18,20,22に設けられたシフトヘッド36の係止凹溝60(図4等)に挿入可能である。
また、各インターロックプレート54,55の前後方向中間部にシフトセレクト軸24の軸方向と平行な方向に対し直交する方向に円孔62が形成され、各円孔62に両端部を挿入するように回動軸である反転軸48が支持されている。そして、各インターロックプレート54,55同士の間に一部が挟まれるように反転レバー28が配置され、反転レバー28の中間部に回動軸の中間部が挿入され支持されている。このように反転レバー28の反転軸48は、インターロック部材26に支持されている。また、反転レバー28は、インターロック部材26において、シフトセレクト軸24の軸方向と平行な方向に対し直交する方向に支持された反転軸48回りに回動可能に支持されている。
図4に示すように、反転レバー28のシフトフォーク軸側端部である下端部も、各インターロックプレート54,55の突出部58と同様に、各シフトフォーク軸16,18,20,22に設けられたシフトヘッド36の係止凹溝60に挿入可能である。反転レバー28の下端部の前後方向長さd(図4)は、インターロック部材26の各突出部58(図6)の前後方向(図6の表裏方向)長さとほぼ一致させることができる。なお、図6に示すように、各突出部58の左右方向の厚さは、インターロックプレート54,55の他の部分の左右方向の厚さよりも大きくすることもできる。
また、図4、図5に示すように、シフトセレクト軸24は、各円形支持部52同士の間に配置される部分の外周面に形成された断面略矩形の係止溝64を含む。係止溝64に反転レバー28の上端部が係止されている。この状態で反転レバー28の上端部に設けられた平面部66は、係止溝64の底面である平面状のレバー対向面68に対向している。反転レバー28の平面部66とレバー対向面68とは常時接触させることもできる。このような構成により、インターロック部材26はシフトセレクト軸24に吊り下げ支持されている。
また、図4に示すように、変速機ケース12の内側に、インターロック部材26の各円形支持部52の軸方向外側面と対向するように、ストッパであり、2つの変位規制部であるシフトセレクト軸24の軸方向に向いた2つの軸方向規制面70,72が設けられている。各軸方向規制面70,72は、対応する円形支持部52に対してシフトセレクト軸24の軸方向に対向する。このため、変速機ケース12は、各軸方向規制面70,72により、インターロック部材26がシフトセレクト軸24の軸方向に移動することを阻止している。
手動変速装置10がこのように構成されるので、図9に示すように、操作レバー14のセレクト動作によりシフトセレクト軸24がいずれかの方向に回動すると、シフトセレクト軸24のレバー対向面68で反転レバー28の上端部が押圧され、反転レバー28がシフトセレクト軸24と同方向に回動する。そして複数のシフトフォーク軸16,18,20,22のうち、いずれか1つのシフトフォーク軸(図9の例ではシフトフォーク軸20)に設けられたシフトヘッド36の係止凹溝60(図4)に反転レバー28が挿入され、接続されることで、反転レバー28により1つのシフトフォーク軸20が選択される。
この状態で操作レバー14のシフト動作によりシフトセレクト軸24が軸方向(図9の表裏方向)のいずれかの方向に移動すると、図8に示すように、シフトセレクト軸24の係止溝64の軸方向内側面が反転レバー28の上端部を軸方向(図8の例では右方向)に押圧する。また、上記のように、変速機ケース12に対してインターロック部材26の前後方向に関する移動が阻止されている。このため、反転レバー28の上端部と反転軸48とが前後方向にずれることで反転レバー28が反転軸48を中心に回動する。このため、反転レバー28の下端部が前後方向に関して上端部と逆方向に移動する。例えば、図8のようにシフトセレクト軸24が矢印P2方向に移動すると、反転レバー28の下端部は矢印P2方向とは逆方向の矢印P3方向に移動する。この結果、反転レバー28の下端部に係止される係止凹溝60を有する1つのシフトフォーク軸20も矢印P3方向に移動するので、シフトフォーク軸16に対応する2つまたは1つの変速段のうち、いずれか1つの変速段が選択され、入力軸38と出力軸40との間で所望の変速が実行される。
また、選択された1つのシフトフォーク軸20に反転レバー28が接続された状態で、反転レバー28の左右方向両側に配置されるインターロック部材26の2つのインターロックプレート54,55の少なくとも一方のインターロックプレート(図9の例では54)の突出部58(図8、図9)は、選択されない別のシフトフォーク軸16,18,22に設けられたシフトヘッド36の係止凹溝に挿入される。選択された1つのシフトフォーク軸20が反転レバー28により押圧されて軸方向に移動する場合でも、インターロック部材26はシフトセレクト軸24の軸方向への移動が阻止されているので、選択されない別のシフトフォーク軸16,18,22が誤操作されて軸方向に移動し、複数の変速段が誤って二重に選択されることが阻止される。このようにインターロック部材26は、複数の変速段が誤って二重に選択される、いわゆる二重噛み合いを防止する。なお、操作レバー14が操作されない中立位置、すなわちニュートラル状態では、図3〜図6に示すように、別のシフトフォーク軸18の係止凹溝60に反転レバー28の下端部が挿入される。このため、この状態で操作レバー14をシフト動作させることでシフトフォーク軸18が軸方向に移動する。
本実施形態の手動変速装置10によれば、1つの反転機構50により多くの変速段のギヤ配置を逆にできる。より具体的には、変速段の2つで1組の複数組、すなわちすべての組のギヤ配置を逆にできる。また、反転機構50の回動軸である反転軸48を変速機ケース12に直接支持する必要がなくなる。これについて、比較例との比較で説明するために、まず、図10〜13を用いて本発明から外れる比較例の第1例及び第2例を説明する。
図10は、シフトセレクト軸24とシフトフォーク軸16,18,20との間に反転機構を設けない比較例の第1例の手動変速装置10の概略構成を示す図である。図11は、比較例の第1例において、入力軸38の外側に配置される複数の入力側ギヤ42a〜42fと、出力軸40の外側に配置される複数の出力側ギヤ44a〜44fとにより構成される複数の変速段の配置を示す模式図である。
図10、図11の比較例の第1例の手動変速装置では、シフトセレクト軸24とシフトフォーク軸16,18,20との間での操作力の伝達経路に反転機構を設けていない。このような構成では、シフトパターン30で示すように、車両の前側に操作レバー14を操作することで、1速、3速、5速及び後進変速段(R)のいずれか1つが選択され、車両の後側に操作レバー14を操作することで、2速、4速、6速の変速段のいずれか1つが選択される。これに対して、操作レバー14は、上側回転支持部32で変速機ケース12(図3参照)に支持されるので、操作レバー14の前後方向であるシフト方向に操作することで操作レバー14の下端部が上端部と逆方向に移動する。
一方、シフトセレクト軸24の下端部は、操作レバー14の左右方向のセレクト動作で選択された1つのシフトフォーク軸18(または16,20のいずれか1つ。以下代表して18とする。)に設けられたシフトヘッド36の係止凹溝60に接続される。このため、操作レバー14のシフト動作でシフトセレクト軸24が軸方向の一方向に移動することに伴って、選択された1つのシフトフォーク軸18もシフトセレクト軸24と同方向に移動する。この結果、図10、図11に示すように、2つで1組の変速段である、1速と2速、3速と4速、5速と6速の3組で、シフトパターン30の前後と変速段のギヤ配置の前後とが逆になる。その他の構成は、本実施形態と同様である。
図12は、シフトセレクト軸24に接続されるシフトアーム74と1つのシフトフォーク軸18との間に反転機構76を設ける比較例の第2例の手動変速装置10の概略構成を示す図である。図13は、比較例の第2例において、入力軸38の外側に配置される複数の入力側ギヤ42a〜42fと、出力軸40の外側に配置される複数の出力側ギヤ44a〜44fとにより構成される複数の変速段の配置を示す模式図である。
図12、図13に示す比較例の第2例の手動変速装置10では、シフトセレクト軸24に接続可能なシフトアーム74と1つのシフトフォーク軸18との間に1つの反転機構76が設けられている。このような構成では、上記の図10、図11に示した比較例の第1例に対して、2つのシフトフォーク軸16,20のシフトヘッド36間に1つのシフトアーム74に設けられるシフトヘッド36が配置され、シフトアーム74のシフトヘッド36とは反対側部分と、シフトフォーク35が接続された1つのシフトフォーク軸16との間に反転機構76が設けられている。反転機構76は、シフトアーム74に加わる軸方向の力を変換して、接続されたシフトフォーク軸16をシフトアーム74とは逆方向の軸方向に移動させる。このような構成では、図12、図13に示すように、1組の変速段である、3速と4速との組で、シフトパターン30の前後と変速段のギヤ配置の前後とが同じになる。その他の構成は、本実施形態と同様である。
図12、図13の比較例の第2例を利用して、すべてのシフトフォーク軸16,18,20毎にシフトアーム74(図12)を設けて、各シフトフォーク軸16,18,20と対応するシフトアーム74との間に反転機構76を設けることで、多くの変速段、例えばすべての変速段の組で、シフトパターン30の前後と変速段のギヤ配置の前後とを同じにすることも考えられる。ただし、この場合には、反転機構76を3個所または4個所等、多くの個所に設ける必要がある。このため、部品点数が過度に多くなり、コストが大幅に上昇し、装置全体が大型化する要因となる。
これに対して、本実施形態では、操作レバー14のセレクト動作で選択される1つのシフトフォーク軸16(または18,20,22のいずれか1つ)とシフトセレクト軸24との間に1つの反転機構50(図3)を設けるのみで、すべてのシフトフォーク軸16,18,20,22をシフトセレクト軸24の移動方向と逆方向に移動させることができる。このため、図1、図2に示すように、3組の変速段である、1速と2速、3速と4速、5速と6速の各組で、シフトパターン30の前後と変速段のギヤ配置の前後とを同じにすることができる。すなわち、1つの反転機構50により変速段の2つで1組のすべての組のギヤ配置を、反転機構50がない場合に比べて逆にできる。
さらに、反転機構50を構成する反転レバー28の回動軸である反転軸48は、シフトセレクト軸24に支持されたインターロック部材26に支持されるので、反転軸48を変速機ケース12に直接支持する必要がなくなる。このため、上記の特許文献1に記載された構成の場合と異なり、変速機ケース12に回動軸を固定するために大きく設計変更したり、回動軸に反転レバー28に相当する部材を軸方向の摺動可能に支持する必要がなくなり、摺動摩擦を低減でき、操作レバー14の操作性の大幅な悪化を防止できる。
また、反転レバー28は、インターロック部材26において、シフトセレクト軸24の軸方向と平行な方向に対し直交する方向の反転軸48回りに回動可能に支持されている。このため、反転レバー28により、シフト方向に対応するシフトセレクト軸24の軸方向の動作のみを反転してシフトフォーク軸16,18,20,22に操作力を伝達できる。
また、変速機ケース12内に、それぞれシフトセレクト軸24に対し平行でかつ軸方向の移動可能に配置された複数のシフトフォーク軸16,18,20,22を備えており、シフトセレクト軸24の回転により選択される1つのシフトフォーク軸18(または16,20,22のいずれか1つ)とシフトセレクト軸24との間に反転レバー28が接続される。このため、シフトフォーク軸16,18,20,22を複数備えている手動変速装置10であるのにもかかわらず、それぞれのシフトフォーク軸16,18,20,22に対して互いに別の反転機構を設ける必要がないので、部品点数を低減できる。
また、インターロック部材26は、シフトセレクト軸24に軸方向の移動可能に支持され、反転レバー28の反転軸48は、インターロック部材26に支持されている。このため、二重噛み合いを防止するためにシフトセレクト軸24に軸方向の移動可能に支持されるインターロック部材26を備えるが、反転レバーを持たない別の手動変速装置に対して、このインターロック部材26を利用して反転レバー28の支持部を設けることができる。このため、この別の手動変速装置を従来品として使用している場合に、この従来品の部品を有効利用でき、コストを低減できる。
図14は、本発明で適用可能な変速段の配置の別例を示す模式図である。図14の構成では、図示しない変速機ケースの内側に、入力軸38と出力軸40とが同軸上で、かつ独立して回転可能に支持されるとともに、入力軸38及び出力軸40と平行にカウンタ軸78が変速機ケース内に回転可能に支持されている。また、入力軸38の外側に1速から3速及び5速の入力側ギヤ42a〜42c、42eが配置され、カウンタ軸78の外側に1速から5速のカウンタギヤ80a〜80eが配置されている。入力側ギヤ42a〜42c、42e及びカウンタギヤ80a〜80eの同じ変速段のギヤ同士は噛合している。なお、図示は省略するが、入力軸38の外側に入力側後進ギヤが配置され、カウンタ軸78の外側にカウンタ後進ギヤが配置されており、入力側後進ギヤとカウンタ後進ギヤとは噛合せず、アイドラ後進ギヤに入力側、出力側の両方の後進ギヤが噛合している。また、出力軸40に4速の出力側ギヤ44dが固定され、カウンタ軸78に固定された4速のカウンタギヤ80dと噛合している。
カウンタ軸78の外側に配置される1〜3速、及び5速のカウンタギヤ80a〜80c、80eの構成は、上記の図2に示した出力軸40の外側に配置される1〜3速、及び5速の出力側ギヤ44a〜44c、44eの構成及び対応する変速機構の構成とギヤ配置が異なるだけで同様である。
また、3速の入力側ギヤ42cと4速の出力側ギヤ44dとの間に、入力軸38と一体回転するスリーブを有する変速同期機構(図示せず)が配置され、図示しない1つのシフトフォーク軸に設けられたシフトフォークが係合するスリーブが3速の入力側ギヤ42c側または4速の出力側ギヤ44d側に移動することで対応するギヤと噛合し、入力軸38と出力軸40との間で3速または4速の変速が実行されつつ、エンジン側からの動力が車輪側に伝達される。なお、図14の構成で4速の変速が実行されるとは、実際には、入力軸38と出力軸40とがスリーブを介して直結されるため、入力軸38と出力軸40とが同期回転することを意味する。
図14のようなギヤ配置の場合でも、本実施形態を適用でき、1つの反転機構により変速段の2つで1組のすべての組のギヤ配置を逆にでき、かつ、反転機構50(図3)の回動軸である反転軸48を変速機ケース12に直接支持する必要がなくなる。
[第2実施形態]
図15〜18は、本発明に係る第2実施形態の手動変速装置を示している。図15は、本実施の形態の変速装置を示す、図4に対応する図である。図16は、本実施形態において、変速機ケースに収容された部分をシフトセレクト軸に対し直交する平面で切断した図である。図17は、本実施形態において、変速機ケースに収容された部分をシフトセレクト軸に対し直交する平面で図16とは別の部分で切断した図である。図18は、本実施形態において、変速機ケース内に反転機構を配置する配置例の1例を示す、図14に対応する図である。なお、図15〜18では、空間上で互いに直交する3軸方向である、x軸方向、y軸方向、z軸方向のいずれか2つの方向を図示している。なお、z軸の矢印方向は上方向である。
図15に示すように、本実施形態の手動変速装置10は、変速機ケース12(図16、図17)に、軸方向(図15のx方向)の移動可能かつ回動可能に支持されるシフトセレクト軸24に、ボルト結合等により固定されるセレクトインナーレバー82を備えている。すなわち、セレクトインナーレバー82は、シフトセレクト軸24を挿入固定するための孔部を有する筒部84と、筒部84の長さ方向一端部で周方向一部の外周面からシフトセレクト軸24の径方向に突出するように一体形成されるレバー本体86とを有する。レバー本体86は、先端部に半球形状を有する押圧部88(図17)が設けられている。なお、押圧部88の形状は半球形状以外に、球体、半円柱、直方体等、種々の形状を採用できる。
また、図16、図17に示すように、シフトセレクト軸24に対して軸方向(図16、図17の表裏方向)の移動可能、かつ、シフトセレクト軸24の軸心回りの回動可能に反転軸支持部材である、インターロック部材90が支持されている。インターロック部材90は、上記の第1実施形態の場合のインターロック部材26(図3等参照)と同様に、2つの円形支持部52同士を結合し、互いに対向配置される2つのインターロックプレート54,55を含み、各インターロックプレート54,55に反転レバー28の反転軸48の両端部を支持する円孔62が設けられている。反転レバー28は、各インターロックプレート54,55に両端部が支持された反転軸48を中心に回動可能である。一方、セレクトインナーレバー82の筒部84の外周面に係止溝92が設けられており、反転レバー28のシフトセレクト軸側端部である一端部94が係止溝92に係合している。
また、インターロック部材90は、変速機ケース12の内側に設けられた2つの平面部等の規制部(図示せず)で両側から挟持される等により、シフトセレクト軸24の軸方向に関する移動が阻止されている。すなわち、変速機ケース12は、インターロック部材90が変速機ケース12に対しシフトセレクト軸24の軸方向に移動することを阻止している。また、インターロック部材90と、反転軸48と、反転レバー28とにより、反転機構50(図16)が構成されている。
また、シフトセレクト軸24の回動方向である、図17の矢印γ方向に関する押圧部88の両側面に、インターロック部材90に設けられた2つのインターロックプレート54,55の先端部が微小隙間を介してまたは接触して対向配置されている。
操作レバー14(図3参照)のセレクト動作に伴ってシフトセレクト軸24が一方向に回動すると、シフトセレクト軸24に固定されたセレクトインナーレバー82も同方向に回動する。すなわち、図17に示すように、インターロック部材90は、シフトセレクト軸24の回動に伴うセレクトインナーレバー82の矢印γ方向の回動により、レバー本体86の先端部の押圧部88により片側のインターロックプレート54(または55)が押されて、セレクトインナーレバー82と同方向に回動する。すなわち、インターロック部材90は、図16に示す矢印α、β方向であるシフトセレクト軸24の回動方向に回動する。この場合、インターロック部材90に反転軸48が支持されているので、図16に示す反転レバー28も同方向に回動し、複数のシフトフォーク軸16,18,20,22(16,22は図6参照)のうち、選択された1つのシフトフォーク軸18(または16,20,22のいずれか1つ。以下代表して18とする。)に設けられたシフトヘッド36の係止凹溝60に反転レバー28のシフトフォーク軸側端部である他端部96が挿入され、接続される。
この状態で反転レバー28の両側のインターロックプレート54,55のうち、少なくとも片側のインターロックプレート54,55に設けられた先端部は、選択された1つのシフトフォーク軸18とは別のシフトフォーク軸16,20,22のシフトヘッド36の係止凹溝60に挿入される。この状態で、操作レバー14がシフト動作されると、シフトセレクト軸24は軸方向に移動するが、インターロック部材90は、シフトセレクト軸24の軸方向に関する移動が阻止されているので、反転レバー28が反転軸48中心に回動する。このため、シフトセレクト軸24の軸方向の移動方向と逆方向に選択された1つのシフトフォーク軸18が移動し、対応する変速段のギヤが選択され、選択されたギヤでの変速が実行される。
このような構成によれば、操作レバー14をセレクト動作させる場合にセレクトインナーレバー82の回動方向に対し、レバー本体86の先端部の押圧部88とインターロック部材90とが押し付け合い、この回動方向の力を伝達する。このため、レバー本体86の回動中心O1(図17)からインターロック部材90に押し付ける部分までの距離La(図17)を大きくできる。レバー本体86とインターロックプレート54,55とは、押圧部88以外では回動方向には接触しない。したがって、レバー本体86の回動方向に対する角度的なガタを小さくでき、操作レバー14のセレクト方向のガタを小さくできる。また、操作レバー14にセレクト方向の荷重をかけながら操作レバー14をシフト動作させる場合、例えば1速または2速や、3速または4速のように操作レバー14を切り替える場合での、セレクトインナーレバー82の押圧部88とインターロック部材90との間での摩擦損失を小さくできる。このため、操作レバー14に加わるシフト動作時の荷重を出力側、すなわちシフトフォーク軸側に伝達する際の伝達効率を向上できる。その他の構成及び作用は、上記の第1実施形態と同様である。
図18に示すように、上記の各実施形態では、入力側のギヤ42a〜42c、42eの直径が小さくなる1速と2速とのギヤ42a、42bの上側の斜線部δで示した、変速機ケース内の空間に反転レバー28、反転軸48、インターロック部材26(または90)を含む反転機構50(図3、図16)を配置できる。この場合、変速機ケースを含む変速装置本体の体格を大きくすることなく反転機構50を設置できる。
なお、上記の各実施形態では、シフトセレクト軸24の軸方向の移動を反転レバー28で反転して、シフトフォーク軸16,18,20,22に伝達する構成を説明したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、本発明では、シフトセレクト軸24に支持された反転軸支持部材に反転軸を支持し、反転レバーを反転軸を中心に回動可能とすることで、シフトセレクト軸24の回動方向の移動により反転レバーを反転軸中心に回動させ、シフトセレクト軸24の回動方向の移動方向とは逆方向に、反転レバーのシフトフォーク軸側の端部を移動させる構成を採用することもできる。
[第3実施形態]
例えば、図19は、本発明に係る第3実施形態の手動変速装置の主要部の概略構成を示す図である。本実施形態では、操作レバー14(図3参照)の下端部に回動可能に反転レバー98の上端部を接続するとともに、シフトセレクト軸24にピン結合等で径方向にスライド可能に支持された軸支持プレート100の一端部に反転レバー98の下端部を接続している。また、シフトセレクト軸24に支持されるが、シフトセレクト軸24の回転時でも回転しないように変速機ケース12(図3等参照)で規制された反転軸支持部材104に反転レバー98の反転軸102の両端部を支持している。このような構成の場合も、1つの反転機構により多くの変速段のギヤ配置を逆にでき、かつ、セレクト方向の反転機構の回動軸である反転軸102の支持部を変速機ケース12に形成せずに済むという効果を得られる。