以下、本発明の実施形態にかかる流体加熱装置ついて、図面を参照しつつ詳細に説明する。流体加熱装置は、熱交換器とも称され、内部に流入された流体を所定温度に加熱し、外部に供給するものである。本発明の各実施形態にかかる流体加熱装置においては、加熱される流体は水であり、温水洗浄便座等の衛生洗浄装置に備えられて、人体局部を洗浄するための温水を供給する。流体加熱装置が温水洗浄便座に備えられる場合、適宜バルブ等を介して、公共水道等の水源から流体加熱装置に冷水が流入され、流体加熱装置によって加熱された温水が、適宜バルブや流量調節手段等を介して局部洗浄用ノズルから吐出される。
(第一の実施形態)
図1〜3は、本発明の第一の実施形態にかかる流体加熱装置10を示す図である。なお、図示した方向は、衛生洗浄装置において流体加熱装置10が配置される方向とは必ずしも対応しないが、以下の説明においては、便宜的に図1(a)における方向に従って、上下の方向を指定する場合がある。
本流体加熱装置10は、筒状部11を有している。筒状部11は、外筒11aと内筒11bよりなる二重管構造を有している。外筒11aおよび内筒11bはそれぞれ、中空の略円筒形状を有しており、内筒11bの外径は、外筒11aの内径よりも小さくなっている。内筒11bは、外筒11aの中空部内に同軸状に配置され、全体を外筒11a内に収容されている。
外筒11aと内筒11bの間には、第一区画壁12aおよび第二区画壁12bが設けられている。2つの区画壁12a,12bは、平板状の部材であり、外筒11aと内筒11bの間の空間に、外筒11aの内壁面と内筒11bの外壁面を連結するように、筒状部11の軸方向に沿って略全域にわたって設けられている。第一区画壁12aは内筒11bの下方に設けられ、第二区画壁12bは内筒11bの上方に設けられており、2つの区画壁12a,12bは内筒11bを挟んで対称に配置されている。外筒11aと内筒11bの間の空間は、これらの区画壁12a,12bによって、2つの空間に等分されて区画されており、それぞれの空間が、第一流路13aおよび第二流路13bとなっている。なお、外筒11aと内筒11bの間を分割して流路を形成する数は、2つに限られず、例えば、外筒11aと内筒11bの間の空間を3〜8個に分けるように、3〜8枚の区画壁(不図示)を、内筒11bを中心として対称に、あるいは非対称に配置してもよい。
外筒11a、内筒11bおよび2つの区画壁12a,12bは、全て同一の金属材料よりなり、押出し成形などによって一体に成形されている。本実施形態においては、これらの部材を構成する金属材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である。
筒状部11の軸方向両端部近傍には、中空の流入継手15および流出継手16がそれぞれ上方に突出して設けられている。流入継手15および流出継手16の中空部はそれぞれ、基端部の開口である流入口15aおよび流出口16aにおいて、筒状部11の外筒11aと内筒11bの間の空間と連通している。なお、図1〜3に示す限りにおいては、流体加熱装置10の形状は、筒状部11の軸方向に沿って対称であり、流入口15aおよび流出口16aは形状において区別されないが、便宜的に、図示したように区別するものとする。
図2(a)〜(c)に示すように、流入継手15および流出継手16の中心軸は、内筒11bの中心軸と第二区画壁12bを結ぶ直線の延長に配置されている。そして、流入口15aおよび流出口16aに面する部位において、第二区画壁12bの外側(上側)の端縁12b1は、外筒11aの内壁面よりも内側(下側)に入った位置に設けられている。これにより、流入口15aおよび流出口16aはそれぞれ、第一流路13aおよび第二流路13bの両方に通じている。
筒状部11の内筒11bの中空部には、略円柱状の加熱部を有するシーズヒータ(加熱手段)14が挿入されている。シーズヒータ14は、通電によって発熱する発熱線の周囲が金属よりなる略円柱状の外壁に囲まれた構造を有している。発熱線と外壁の間には、酸化マグネシウム等の高熱伝導率を有する絶縁性物質が充填されている。シーズヒータ14の外壁は、多くの場合、銅または銅合金よりなる。シーズヒータ14の外径は、内筒11bの内径と略等しく、シーズヒータ14は内筒11bの中空部内に圧着もしくは締まり嵌めで圧入され、シーズヒータ14の金属よりなる外壁が内筒11bの内壁面に接触している。
図2(a)に示されるように、筒状部11の軸方向両端部において、第一流路13aおよび第二流路13bは、円環状のキャップ部材20によって水密に閉塞されている。キャップ部材20は、流路13a,13bに面して平面状の内側面を有し、区画壁11a,11bの端縁は、キャップ部材20の内側面に水密に接触している。キャップ部材20および上述の流入継手15および流出継手16は、筒状部11とは別部材として構成され、溶接、ろう付け、接着剤による接着等によって、筒状部11に接合されている。キャップ部材は、外筒11aに、嵌入、外嵌め、突き当て等して、接合すればよい。なお、区画壁11a,11bとキャップ部材20の内側面の間は、溶接、ろう付け、接着等されていても、これらによる接合が施されず、単に区画壁11a,11bがキャップ部材20の内側面に水密に当接しているだけでもよい。
流体加熱装置10は他に、サーモスタット17および温度ヒューズ18を有する。サーモスタット17は、流体加熱装置10が空焚き状態となることで、その温度が所定値を超えた際に、シーズヒータへの通電を停止する。また、温度ヒューズ18は、流体加熱装置10が異常に加熱された際に、シーズヒータ14への電源入力を遮断する。
本流体加熱装置10においては、外筒11aと内筒11bの間の空間が第一流路13aと第二流路13bに等分されており、流入口15aの中心が第一流路13aと第二流路13bを区画する第二区画壁12bの中心に設けられていることで、流入口15aから筒状部11に水Wが流入すると、水Wは、図2(b)中に矢印で示したように、第一流路13aと第二流路13bに均等に分配されて流入する。第一流路13a、第二流路13bそれぞれに流入した水Wは、筒状部11の軸方向に沿って、流出口16aが設けられた位置まで流れ、その間に、内筒11bの壁面を介して伝達されたシーズヒータ14からの熱によって加熱を受ける。
そして、加熱されながら第一流路13aおよび第二流路13bをそれぞれ流れた水Wは、図2(c)中に矢印で示したように、第二区画壁12bの端縁12b1と流出口16aの間で合流し、流出口16aから流出する。この合流によって、水Wは撹拌を受ける。加熱された水Wが撹拌されることで、流出口16aから流出する温水の温度にむらが生じにくくなり、水温が安定化される。
以上のように、本実施形態にかかる流体加熱装置10においては、水を加熱するシーズヒータ14が、内筒11bの中空部に収容されており、第一流路13aおよび第二流路13bを流れる水に直接接触していない。シーズヒータ14が水に直接接触している場合には、特に加熱の初期においてシーズヒータ14の出力が高くなる際に、局所的に水が加熱されることで、シーズヒータ14の表面に気泡が発生することがある。このような気泡は、シーズヒータ14から水への熱伝達を妨げるので、加熱に際しての熱効率が悪くなってしまう。また、気泡が発生することで、水温が不安定化する可能性がある。しかし、上記のようにシーズヒータ14が直接水に接触していないことで、気泡の発生が抑えられ、熱効率が向上されるとともに、水温の安定性が高められる。
さらに、シーズヒータ14が水に接触していないことにより、シーズヒータ14の寿命が長く保たれやすい。また、シーズヒータ14の外壁ではなく、シーズヒータ14を収容している内筒11bの壁面が水と接触していることにより、流路13a,13b内での金属の腐食の発生を抑制することができる。上記のように、シーズヒータ14の外壁は、銅や銅合金より構成されることが多いが、銅や銅合金は、水との接触によって腐食(錆)を発生しやすい。これに対し、内筒11bの壁面を構成しているアルミニウムやアルミニウム合金は、非常に機械的強度および化学的安定性の高い酸化被膜(不働態膜)を表面に有するため、高い耐食性を有する。このような内筒11bの壁面が、シーズヒータ14の外壁の代わりに水と接触することで、シーズヒータ14が水と接触している場合と比較して、流路13a,13b内で腐食が発生するのが抑制される。流路13a,13b内で腐食が発生すると、加熱効率の低下や、下流での水流路の目詰まり等を引き起こす可能性がある。
シーズヒータ14の外壁を構成する金属材料は、銅または銅合金に限定されるものではなく、内筒11bを構成する金属材料もアルミニウムまたはアルミニウム合金に限定されるものではないが、シーズヒータ14の外壁を構成する金属材料よりも高い耐食性を有する金属材料より内筒11b(および内筒11bと一体に形成される外筒11aおよび区画壁12a,12b)を構成すれば、シーズヒータ14が直接水に接触する場合よりも腐食の発生を抑制することができる。アルミニウムおよびアルミニウム合金以外に、内筒11bを構成するのに好適な金属材料としては、銅、銅合金、マグネシウム合金等を挙げることができる。アルミニウムおよびアルミニウム合金は、耐食性が高い点に加え、高い熱伝導率を有し、シーズヒータ14の熱を高効率で水に伝達できるという点においても、内筒11bを構成する材料として特に好適である。
本流体加熱装置10に使用される加熱手段は、シーズヒータに限られるものではないが、シーズヒータ14を用いる場合に、上記のような腐食抑制の効果が有効に利用される。衛生洗浄装置に備えられる流体加熱装置においては、例えば特開2001−132061号公報にあるように、加熱手段として、しばしばセラミックヒータが用いられる。しかし、シーズヒータは、セラミックヒータと比較して高い機械的強度を有しており、流体加熱装置10の輸送中に物理的衝撃を受けたり、使用中に熱衝撃を受けたりしても、割れ等の損傷を生じにくい。また、シーズヒータ14は、セラミックヒータと比較して安価である。
また、本流体加熱装置10においては、シーズヒータ14が金属よりなる内筒11bの中空部に圧入され、内筒11bの内壁面に密着している。これにより、シーズヒータ14の熱が効率的に水に伝達される。その結果として、シーズヒータ14が内筒11bの内壁面に密着していない場合と比較して、所定の温度にまで水を加熱するためにシーズヒータ14に入力する電力が少なくて済み、省電力化に資するとともに、シーズヒータ14の寿命を長く維持することができる。内筒11bの内径と略等しい外径を有するシーズヒータ14を内筒11bの中空部に締まり嵌めで圧入する方法としては、内筒11bを加熱して金属材料を熱膨張させた状態でシーズヒータ14を挿入してから内筒11bを冷却して収縮させる、いわゆる焼嵌めの手法を用いることができる。焼嵌めを用いると、シーズヒータ14と内筒11bの内壁面の間に空気の層が介在されないため、シーズヒータ14から内筒11bへ効率よく熱を伝達することが可能になる。さらに、焼嵌めを用いることで、シーズヒータ14を内筒11bの中空部に挿入しやすくすることが可能になる。焼嵌め以外の方法として、例えば、シーズヒータ14を内筒11bの中空部に挿入し、区画壁12a,12bが位置する箇所で、スポット状に数点、またはライン状にかしめてもよい。
ただし、シーズヒータ14が内筒11bの中空部に圧入されて内筒11bの内壁面に直接接触しているのではなく、シーズヒータ14と内筒11bの内壁面の間に媒体が介在される場合にも、その媒体の熱伝導率に応じて、シーズヒータ14の熱を水に伝達することができる。例えば、シーズヒータ14と内筒11bの内壁面の間の空隙に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等、高い熱伝導率と耐熱性を有する樹脂材料を充填する形態を挙げることができる。
シーズヒータ14から水への熱伝達の効率は、流路13a,13bの配置によっても高められている。つまり、流路13a,13bが、シーズヒータ14を収容している内筒11bの全外周を覆うように配置されていることにより、シーズヒータ14の熱が、無駄に散逸されることなく、水に伝達されやすくなっている。
さらに、本実施形態にかかる流体加熱装置10においては、上記のように、内筒11bと外筒11aの間の空間として設けられた流路が区画壁12a,12bによって2つの流路13a,13bに分割され、流入口15aおよび流出口16aがそれら両方の流路に通じるように配置されていることで、加熱された水の撹拌が促進される。ここで、流入口15aおよび流出口16aを含む流入継手15および流出継手16は、この種の流体加熱装置に一般的に設けられる部材であり、水の撹拌の促進のために新たに設けられている部材は、区画壁12a,12bのみである。なお、区画壁の数および流路の分割数は、2つに限られず、任意の複数の区画壁によって流路を分割することができる。
特許文献1においては、ヒータとケースの間の流路に、流速変換手段として螺旋コイルを設けており、この螺旋コイルが、流路を流れる水を撹拌する効果を有すると考えられる。しかし、この場合には、複雑な形状を有する螺旋コイルを、ケースとは別の部材として形成し、流路内に配置しなければならない。これに対し、本実施形態にかかる流体加熱装置10においては、上記のように、水の撹拌の促進のために設けられる部材は、平板状の区画壁12a,12bのみであり、簡素な構成で、水の撹拌の促進を図ることができる。特に、次に述べるように、区画壁12a,12bを外筒11aおよび内筒11bとともに一体に成形する場合には、流体加熱装置10の外郭を構成する部材と独立した部材を水の撹拌のために設ける必要がなく、水の撹拌を図るための部材の構成が一層簡素なものとなる。
以上のような外筒11a、内筒11b、区画壁12a,12bは、それぞれ別部材として構成してから接合することもできるが、構成および製造方法の簡便性そして経済性の観点から、同一の金属材料より、一体として形成することが好ましい。本流体加熱装置10においては、外筒11aおよび内筒11bがそれぞれ略円筒形状を有し、二重管状に配置されており、かつ、区画壁12a,12bが外筒11aおよび内筒11bの軸方向に沿った平板状部材として構成されていることから、外筒11a、内筒11b、および区画壁12a,12bを、押出し成形によって全て一体に形成することができる。外筒11a、内筒11b、区画壁12a,12bの具体的な形状は、上記のものには限られないが、それぞれ筒状部11の軸方向に沿って同一の断面形状を有するものであれば、押出し成形によって一体に形成することができる。外筒11a、内筒11b、区画壁12a,12bを押出し成形によって製造した後、内筒11bの中空部にシーズヒータ14を挿入するとともに、別部材として形成した流入継手15、流出継手16、キャップ部材20を、ろう付け、接着、溶接等の方法で所定の位置に取り付ければよい。
なお、上記のように、内筒11bは熱伝導率の高い金属材料より形成されることが好ましいが、流体加熱装置10の熱効率を高める観点からは、外筒11aは熱伝導率が低い材料よりなることが好ましい。外筒11aを内筒11bとともに一体成形する場合には通常、外筒11aも内筒11bと同じ金属材料より構成されることになるが、外筒11aからの放熱を抑えるために、適宜外筒11aの外周に断熱材(不図示)を配置してもよい。
さらに、本第一の実施形態にかかる流体加熱装置10の変形形態として、以下のようなものが挙げられる。図4(a)に示した第一の変形形態にかかる流体加熱装置10Aにおいては、内筒11bの外壁面から外側に向かって、複数のフィン11cが放射状に形成されている。フィン11cによって、内筒11bの外壁面の表面積が大きくなり、流路13a,13bを流れる水との接触面積が増すので、シーズヒータ14の熱が一層高効率で流路13a,13bを流れる水に伝達されるようになる。フィン11cも、外筒11a、内筒11b、および区画壁12a,12bとともに、押出し成形によって一体に形成することが可能である。
また、図4(b)に示した第二の変形形態にかかる流体加熱装置10Bにおいては、外筒11aを円筒形状とする代わりに、側方部11a1,11a1を、上方部11a2および下方部11a3よりも内側に配置した形状としている。これにより、第一流路13aおよび第二流路13bに、外筒11aと内筒11bの間の空間が狭くなった狭窄部13a1,13b1がそれぞれ形成されている。狭窄部13a1,13b1を通ることで、水の流速が速められるので、水の撹拌効果が一層高められる。本変形形態にかかる流体加熱装置10Bの内筒11bに、第一の変形形態にかかる流体加熱装置10Aに設けられたようなフィン11cをさらに設けてもよい。
また、図示は省略するが、第三の変形形態にかかる流体加熱装置として、区画壁が平板状に形成されるかわりに、筒状部11の中心軸に沿って螺旋状に湾曲した板として形成される形態を挙げることができる。この場合には、流路を通る水の撹拌が一層促進される。このような区画壁を形成するには、区画壁を外筒11aおよび内筒11bとともに押出し成形するに際に、被成形体を中心軸の周りに回転させながら、押出しを行えばよい。
(第二の実施形態)
次に、図5〜7に基づき、本発明の第二の実施形態にかかる流体加熱装置30について説明する。第二の実施形態にかかる流体加熱装置30は、上記第一の実施形態にかかる流体加熱装置10と同様に、二重管状の外筒および内筒よりなる筒状部を有し、内筒内にシーズヒータが挿入されるともに、外筒と内筒の間の空間が区画壁によって複数の流路に区画された構成を有するが、流路を流れる水が異なる方式によって撹拌される。第一の実施形態にかかる流体加熱装置10と共通する点については説明を省略し、異なる点を中心に説明を行う。
第二の実施形態にかかる流体加熱装置30においては、外筒31aと内筒31bの間の空間が、4つの区画壁32a〜32dによって、4つに分割され、4つの流路33a〜33dが形成されている。4つの区画壁32a〜32dは、筒状部31の中心軸に対して、放射状に、相互に対して90度の角度を有して配置されている。4つの流路33a〜33dは、筒状部31の周方向に沿って、第一流路33a、第二流路33b、第三流路33c、第四流路33dの順に相互に隣接して配置されている。
本実施形態においては、流入継手35および流出継手36はともに、筒状部31の軸方向に沿った一方の端部である第一端部31c近傍に設けられている。そして、流入継手35の基端部の開口である流入口35aは、4つの流路33a〜33dのうち、第一流路33aにつながっている。一方、流出継手36の基端部の開口である流出口36aは、第一の流路33dと第一区画壁32aを介して隣接する第四流路33dに通じている。
図5(a)および図7(a),(b)に示されるように、第一流路33aと第二流路33bとの間を区画する第二区画壁32bには、第一端部31cと反対側に位置する第二端部31d側の端縁32b2に、切欠き(スリット)39bが形成されている。第二区画壁32bの端縁32b2のうち、切欠き39bが形成されている部位以外は、第二端部31dを閉塞するキャップ部材40に水密に接触している。これにより、第二区画壁32bの第二端部31d側に、第一流路33aと第二流路33bを連通する連通口が貫通孔として形成された状態となる。同様に、第三流路33cと第四流路33dとの間を区画している第四区画壁32dの第二端部31d側の端縁32d2にも、切欠き39dが形成されており、第三流路33cと第四流路33dを連通する連通口を構成している。
一方、第一端部31cの側においては、図5(b)に示すように、第二流路33bと第三流路33cの間を区画する第三区画壁32cの端縁32c1に、上記と同様の切欠き39cが形成されており、第二流路33bと第三流路33cの間を連通する連通口を構成している。本実施形態においては、図7(a),(b)に示すように、各切欠き39b〜39dは、各区画壁32b〜32dの内筒31b側の端縁に面して、長方形の切欠きとして形成されている。
4つの区画壁32a〜32dの第一端部31c側および第二端部31d側の各端縁のうち、上記の各切欠き39b〜39dが設けられた端縁32b2,32c1,32d2以外の端縁は、キャップ部材40に接しており、相互に隣接する流路を連通させることなく区画している。つまり、各流路33a〜33dは、各切欠き39b〜39dを介してのみ、連通されている。これにより、第一流路33a、第二流路33b、第三流路33c、第四流路33dが、筒状部31の軸方向に沿った折り返し構造(往復構造)をとって、この順に連通された状態となっている。
このような流路33a〜33dの状態を、図10(a)に模式的に示す。図10(a)に示されるように、水Wは、(1)第一端部31c側に設けられた流入口35aから第一流路33aに流入され、(2)第二端部31d側で切欠き39bを通って第二流路33bに流入されて第一端部31c側に折り返し、(3)第一端部31c側で切欠き39c通って第三流路33cに流入されて第二端部31d側に折り返し、(4)第二端部31d側で切欠き39dを通って第四流路33dに流入されて第一端部31c側に折り返し、(5)流出口36aから流出する。水Wは、4つの流路33a〜33dのそれぞれを通る間に、内筒31bの壁面を介してシーズヒータ34によって加熱される。
このように、各流路33a〜33dが折り返し状に連通されていることで、第一端部31cおよび第二端部31dにおいて、水流が、キャップ部材40の内面に衝突し、かつ狭い切欠き39b〜39dを通って流速を速められた状態で、折り返される。これにより、折り返しの際に、水が撹拌を受け、その結果、水温が安定化される。また、外筒31aと内筒31bの間が複数の流路33a〜33dに分割され、各流路の断面積が小さくなっていることで、各流路33a〜33dを流れる水の流速が、流路が分割されていない場合よりも速くなっている。これによっても、水の撹拌効率が向上し、シーズヒータ34から流路を流れる水への熱伝達効率が向上されるので、水温が安定化される。
さらに、流路33a〜33dを筒状部31の軸方向に沿って折り返し状に設けていることで、シーズヒータ34において、長手方向に沿った温度差を小さくすることができる。水に直接接触しないことに加え、この温度差の低減によっても、シーズヒータ34の寿命を長く維持することができる。
第一の実施形態における区画壁12a,12bと同様に、本実施形態においても、水の撹拌を促すための区画壁32a〜32dは、外筒31aと内筒31bを区画する平板状の簡素な部材として形成されており、外筒31aおよび内筒31bとともに、押出し成形によって一体に形成することができる。なお、切欠き39b〜39dは、押出し成形後に、切削等の機械加工によって、形成することができる。
上記で説明した形態においては、切欠き39b〜39dは、長方形の形状を有していたが、切欠きの具体的な形状は特に限定されない。図7(c)〜(f)に切欠き形状の変形例を列挙する。図7(c)は長方形の角が丸められた形状、図7(d)は円弧状の部位を有する形状、(e)は切欠きが2つに分割された形状、(f)は三角形の形状を示している。これらの中で、(b),(e),(f)のように、切欠きが角部を有する形態は、切欠きを通過する水流に乱流が形成されやすく、撹拌効果に優れるという点において好適である。また、(b)〜(f)のいずれにおいても、切欠きは、内筒31bの外壁面に接する位置に設けられており、外筒31a側や、外筒31aと内筒31bの間の部位に設けられる場合と比較して、切欠きを通過する水に大きな遠心力が印加される。これにより、水を効率的に撹拌することができ、水温の安定化に高い効果を有する。
本実施形態にかかる流体加熱装置30おいては、区画壁が4つ設けられ、流路が4つに分割されたが、流路の分割数は、4つに限られず、2つ以上の任意の数とすることができる。区画壁の数を多くし、流路を多数に分割するほど、折り返し回数が多くなり、また1つずつの流路の断面積が狭くなって、水の流速が早められるので、撹拌効果が向上する。
また、本実施形態の場合のように、流路が4つに分割されている場合には、折り返し回数が3回となるので、流入口35aと流出口36aが筒状部31の軸方向の同じ側(第一端部31c)に設けられることになる。4つに限らず、流路が偶数個に分割されている場合は同様である。一方、流路が奇数個に分割されている場合には、流入口35aと流出口36aは筒状部の軸方向の反対側に設けられることになる。次に、第三の実施形態として、そのような例を説明する。
(第三の実施形態)
図8,9,10(b)に、第三の実施形態にかかる流体加熱装置50の構成を示す。ここでは、外筒51aと内筒51bの間の空間が、3枚の区画壁52a〜52cによって、3つの流路53a〜53cに区画されている。そして、流入口55aが、第一流路53aにつながっており、流出口56aが第三流路53cにつながっている。
流入口55aを備える流入継手55は、筒状部51の第一端部51c側に設けられ、流出口56aを備える流出継手56は、第二端部51dに設けられている。
そして、図8(a)に示されるように、第一流路53aと第二流路53bを区画する第二区画壁52bには、第二端部51d側の端縁に、切欠き59bが形成されている。一方、図8(b)に示されるように、第二流路53bと第三流路53cを区画する第三区画壁52cには、第一端部51c側の端縁に、切欠き59cが形成されている。これにより、図10(b)に示すように、各流路53a〜53cは、2回折り返して連通され、第一端部51c側の流入口55aから流入した水Wが、第二端部51d側の流出口56aから流出する。
このように、流路を奇数個に分割することで、流入口55aと流出口56aは筒状部51の軸方向の反対側に設けることができる。第二の実施形態のように、流路を偶数個に分割して流入口と流出口を筒状部の同じ側に設けるか、第三の実施形態のように、流路を奇数個に分割して、流入口と流出口を筒状部の反対側に設けるかは、流体加熱装置と、周囲の他の部材や水源等との位置関係に応じて、流体加熱装置の配置と水流路の構築に有利なように、適宜選択すればよい。なお、キャップ部材は、流路の分割数に応じた特定の構造を有さないので、流路の分割数によらず、同じキャップ部材を使用することができる。
(第四の実施形態)
以上の各実施形態においては、区画壁が筒状部の一方端から他方端にわたって連続的に形成され、両端部でキャップ部材の平面状の内側面に水密に接触していた。そして、区画壁の両端部において、第一の実施形態では、流入口および流出口を2つの流路とつなげるために、区画壁の外側端縁が内側に入り込んだ構造が形成され、第二および第三の実施形態では、2つの流路を連通する連通口が形成されていた。区画壁を外筒および内筒と一体に押出し成形によって形成する場合、これらの構造を区画壁の端部に形成するためには、押出し成形後に、別途機械加工を施す必要がある。これに対し、区画壁にこれらの構造を別途形成しなくて済むようにし、代わりにキャップ部材の側にこれらの構造を形成することが考えられる。その一例が、次に説明する第四の実施形態にかかる流体加熱装置70である。なお、ここでは、筒状部71が角筒状に形成されている場合を説明するが、上記各実施形態の場合と同様に、円筒状に形成されていてもよい。
図11〜13に、第四の実施形態にかかる流体加熱装置70の構成を示す。本実施形態にかかる流体加熱装置70は、4つに分割された流路73a〜73dが連通口89b〜89dによって折り返し状に連通された構成を有しており、筒状部71の両端部71c,71dおよびキャップ部材80,82の構造を除き、第二の実施形態にかかる流体加熱装置30と同様の構成を有する。第二の実施形態にかかる流体加熱装置30と共通する点については説明を省略し、異なる点を中心に説明を行う。
本実施形態にかかる流体加熱装置70においては、筒状部71の軸方向に沿って、内筒71bおよびそこに挿入されるシーズヒータ74の加熱部よりも、外筒71aが短く形成されている。そして、図11(b),(d),図12(b)に示されるように、4枚の内側区画壁72a〜72dが、外筒71aと同じ長さで形成されており、外筒71aの端面71eの位置と、内側区画壁72a〜72dの端面72eの位置が揃っている。内側区画壁72a〜72dは、第二の実施形態にかかる流体加熱装置30における区画壁32a〜32dと同様に、外筒71aおよび内筒71bと一体に押出し成形されており、外筒71aおよび内筒71bに固定されている。
内側区画壁72a〜72dは外筒71aと内筒71bの間を、4つの流路73a〜73dに区画している。外筒71aの第一端部71c側の部位には、第一流路73aに通じる貫通孔として、流入口75aが形成され、第四流路73dに通じる貫通孔として、流出口76aが形成されている。流入口75aおよび流出口76aは、外筒71aの平面部に設けられている。
図13(a),14(a)に、筒状部71の第二端部71dを閉塞する第二キャップ部材82を内側面82c側から見た図を示す。第二キャップ部材82の中央部には、内筒71bの外径と略等しい内径を有する内筒挿通孔82bが設けられている。第二キャップ部材82の外縁部82aは、外筒71aの端面71eと略同形状の端面を有し、内側面82cの外周に立設されている。これにより、第二キャップ部材82を筒状部71の第二端部71dに取り付けると、図11(b)のように、第二キャップ部材82の外縁部82aの端面を、外筒の端面71eに水密に突き当てることができる。
第二キャップ部材82の内側面82cには、4つの外側区画壁83a〜83dが、外縁部82aと同じ高さで立設されている。内側面82cにおける外側区画壁83a〜83dの立設位置は、筒状部71の断面における内側区画壁72a〜72dの位置と一致している。これにより、第二キャップ部材82を筒状部71の第二端部71dに取り付けると、外側区画壁83a〜83dを、それぞれ、内側区画壁72a〜72dと水密に突き当てることができる。
4つの外側区画壁83a〜83dのうち、第一流路73aと第四流路73dを区画する第一内側区画壁72aに対応する(=突き当てられる;以下同様)第一外側区画壁83a、および第二流路73bと第三流路73cを区画する第三内側区画壁72cに対応する第三外側区画壁83cは、それぞれ、内筒挿通孔82bと外縁部82aの間に、連続した1枚の板状部材として形成されている。一方、第一流路73aと第二流路73bを区画する第二内側区画壁72bに対応する第二外側区画壁83bは、2つの離間した板状部材83b1,83b2よりなり、それらの間の空間が、連通口89bとなっている。同様に、第三流路73cと第四流路73dを区画する第四内側区画壁72dに対応する第四外側区画壁83dは、2つの離間した板状部材83d1,83d2よりなり、それらの間の空間が、連通口89dとなっている。このような第二キャップ部材82を筒状部71の第二端部71dに取り付け、各外側区画壁83a〜83dを内側区画壁72a〜72dと突き当てると、第二端部71dにおいて、第一流路73aと第四流路73dの間、そして第二流路73bの第三流路73cの間が水密に区画され、第一流路73aと第二流路73bの間、そして第三流路73cと第四流路73dの間が、それぞれ連通口89b,89dによって連通された状態となる。
一方、図13(b)に、筒状部71の第一端部71cに取り付けられる第一キャップ部材80を示す。第一キャップ部材80も、第二キャップ部材82と同様の構成を有し、連通口の配置において第二キャップ部材82と異なる。つまり、第一キャップ部材80において、第一、第二、第四内側区画壁72a,72b,72dに対応する第一、第二、第四外側区画壁81a,81b,81dは、それぞれ連続した1枚の板状部材として形成され、連通口を有さない。そして、第二流路73bと第三流路73cを区画する第三内側区画壁72cに対応する第三外側区画壁81cは、2つの離間した板状部材81c1,81c2よりなり、それらの間の空間が連通口89cとなっている。第一キャップ部材80を筒状部71の第一端部71cに取り付け、各外側区画壁81a〜81dを内側区画壁72a〜72dに突き当てると、第二流路73bと第三流路73cの間が連通口89cによって連通される。それ以外の流路の間は、水密に区画される。
筒状部71の両端部71c,71dに第一キャップ部材80と第二キャップ部材82をそれぞれ嵌め、外筒71aの端面71eにキャップ部材80,82の外縁部80a,82aの端面を突き当てて水密に接合することで、図10(b)に示す第二の実施形態にかかる流体加熱装置30の場合と同様に、4つの流路73a〜73dが、順に連通口89b〜89cによって折り返し状に連通された構造が形成される。
以上のように、本実施形態においては、流路73a〜73dを区画する区画壁が、筒状部71側に固定された内側区画壁72a〜72dと、キャップ部材80,82の内側面80c,82cに固定された外側区画壁81a〜81d,83a〜83dとに3分割されてなり、隣接する流路を連通する連通口89b〜89dが内側区画壁72a〜72dではなく、外側区画壁81a〜81d,83a〜83dの側に設けられている。これにより、第二の実施形態にかかる流体加熱装置30の場合に、外筒31aおよび内筒31bと一体に押出し成形した区画壁32a〜32dに、別途機械加工によって切欠き39b〜39dを設けなければならないのとは異なり、内側区画壁72a〜72dを外筒71aおよび内筒71bと一体に押出し成形した後、別体として形成しておいた第一キャップ部材80および第二キャップ部材82を筒状部71の第一端部71cおよび第二端部71dに接合することで、内側区画壁72a〜72d側には別途加工を施すことなく、連通口89b〜89dを形成することができる。これにより、流体加熱装置の製造工程を簡便化することができる。
キャップ部材80,82は、金属または樹脂より成形しておけばよい。そして、外縁部80a,82aの端面を外筒71aの端面71eと突き合せた状態で、継手75,76とともに、溶接、ろう付け、接着剤による接着等によって、外筒71aに接合し、水密に封止すればよい。
このように、連通口89b〜89dを筒状部71側に設けず、キャップ部材80,82側に設ける構成としておくことで、同一の筒状部71を用いて、流路73a〜73dの連通の形態が異なる流体加熱装置を構築することもできる。つまり、流路間の連通を所望する部位に連通口が形成されたキャップ部材を用いることで、種々の形態で流路を連通することができる。例えば、上記の第一キャップ部材80および第二キャップ部材82の両方において、第一流路73aと第二流路73bを区画する第二外側区画壁81b,83bを除去しておき、上記のように4枚の内側区画壁72a〜72dを有する筒状部71に取り付ければ、あたかも第一流路72aと第二流路72bが広い断面積の1つの流路になったような状態となる。そして、連通口、流入口、流出口をそれぞれ適宜配置することにより、4つの流路72a〜72dを有する筒状部71を、3つの流路を有する流体加熱装置として利用することが可能となる。
第二の実施形態にかかる流体加熱装置30と第四の実施形態にかかる流体加熱装置70とを比較すると、第四の実施形態にかかる流体加熱装置70においては、上記のように、筒状部の構成が簡素になるとともに、流路の分割数や連通の形態が異なる場合にも、同じ筒状部を適用することが可能となる。その反面、キャップ部材の構成が複雑となるとともに、筒状部の両端に異なるキャップ部材を使用する必要が生じる。一方、第二の実施形態にかかる流体加熱装置30においては、筒状部の構成が複雑になるとともに、同一の筒状部を流路の分割数や連通の形態が異なる場合に適用することはできない。その反面、キャップ部材の構成が簡素になるとともに、筒状部の両側に同一のキャップ部材を使用することができ、また流路の分割数や連通の形態が異なる筒状部に対しても、同一のキャップ部材を使用することができる。流路の分割数や改造の可能性等を勘案して、適宜いずれかの形態を選択すればよい。
次に、上記第四の実施形態にかかる流体加熱装置70における、キャップ部材80,82の変形形態を示す。まず、第二キャップ部材82の構成を簡素化した第一の変形形態にかかる第二キャップ部材82Aの構成を図14(b)に示す。ここでは、第二外側区画壁83bと第四外側区画壁83dを、それぞれ2つの離間した平板状部材の組83b1,83b2および83d1,83d2より構成し、間に連通口89b,89dを設ける代わりに、第二外側区画壁83bおよび第四外側区画壁83dに相当する部材を設けていない。この第二キャップ部材82Aを筒状部71に取り付けると、第二内側区画壁72bと第二キャップ部材82Aの内側面82cの間の空間全体が、第一流路73aと第二流路73bの間の連通口となり、第四内側区画壁72dと第二キャップ部材82Aの内側面82cの間の空間全体が、第三流路73cと第四流路73dの間の連通口となる。このように、第二キャップ部材82Aの構成を簡素化することができる。第一キャップ部材80Aにおいても、図示は省略するが、同様に、第三外側区画壁81cを設けないようにすればよい。ただし、このように、内側区画壁72b〜72dとキャップ部材80A,82Aの内側面80c,82cの間の空間として連通口を設ける場合には、上記のキャップ部材80,82のように2つの板状部材の間の空間としてスリット状の連通口8db〜89dを設ける場合よりも、連通口の断面積が大きくなるので、連通口を通過する際の水の撹拌効率は若干低下する。
さらに、第二の変形形態として、外筒71aへのキャップ部材の取付け方法が異なる例を図15,16に示す。上記図11〜13の実施形態においては、キャップ部材80,82の外縁部80a,82aの端面が、外筒71aの端面71eに突き当てられて、外筒71aに接合されたが、図16に示すキャップ部材80B,82Bは、外筒71aの内側形状と略同一の外側形状を有し、外筒71aの内側に嵌入されて、外筒71aに接合されている。
この場合には、図15(b)、(d)に示されるように、筒状部71の軸方向に沿って、内側区画壁72a〜72dが、外筒71aよりも短く形成されており、内側区画壁72a〜72dの端面72eが、外筒71aの端面71eの位置よりも、軸方向内側に下がった位置に配置されている。そして、キャップ部材80B,82Bには、外周に外縁部が立設されておらず、平面状の内側面80c,82cに、外側区画壁81a〜81d,83a〜83dのみ立設されている。
そして、筒状部71の両端部71c,71dにおいて、外筒71aの内側にキャップ部材80B,82Bをそれぞれ嵌め込むと、外側区画壁81a〜81d,83a〜83dの端面が、内側区画壁72a〜72dの端面72eに突き当たる。この際、キャップ部材80B,82Bの外側面80d、82dが、外筒71aの端面71eと略同一面上に配置される。あるいは、キャップ部材80B,82Bの外側面80d,82dが、外筒71aの端面71eよりも内側に入った位置に配置される(不図示)。これらの状態で、キャップ部材80B,82Bを、外筒71aに対して、溶接、ろう付け、接着剤による接着等によって、接合すればよい。
キャップ部材を外筒71aに取り付ける方法としては、上記第四の実施形態におけるキャップ部材80,82のように、突き当てによる方法や、第二の変形形態におけるキャップ部材80B,82Bのように、嵌入による方法以外に、外嵌めによる方法を用いてもよい。つまり、図示は省略するが、キャップ部材の外縁部の内側形状を、外筒71aの外側形状と略同一かそれよりも大きく形成し、外筒71aの外側にキャップ部材を被せるように取り付ければよい。
(第五の実施形態)
以上の実施形態にかかる流体加熱装置は全て、略円柱状のシーズヒータを1本のみ有し、その周囲に複数の流路が配置されているものであった。このような流体加熱装置を複数用い、流路を直列に連結することで、複数のシーズヒータを備え、それぞれのシーズヒータの周囲に流路を有する流体加熱装置を構築することができる。以上で説明したいずれの実施形態にかかる流体加熱装置を用いても、そのような流体加熱装置を構築することができるが、ここでは代表例として、第四の実施形態にかかる流体加熱装置70が2つ連結された形態に対応する例を示す。
図17〜20に示す第五の実施形態にかかる流体加熱装置90は、第四の実施形態にかかる流体加熱装置70とほぼ同様の形状を有する第一加熱ユニット170と第二加熱ユニット270とを有する。第一加熱ユニット170と第二加熱ユニット270は、軸方向を平行に揃えて隣接して配置されている。ただし、2つの加熱ユニット170,270は、独立した2つの部材として形成されているのではなく、外壁面が一体に連続している。つまり、流体加熱装置90は、軸方向に沿って長方形の断面を有する扁平な角筒として形成された外筒91を有している。そして、仕切壁91aによって、断面の長方形の長辺を二分するように、外筒91内の空間が2つに区画されている。仕切壁91aによって区画されてできた2つの断面略正方形の空間に、第一加熱ユニット170と第二加熱ユニット270がそれぞれ形成されている。
上記のように、2つの第二加熱ユニット170,270は、第四の実施形態にかかる流体加熱装置70と同様の構成を有しており、図20に示すように、流路の折り返し方向が揃うように並列に配置されている。つまり、図17のように、外筒91にそれぞれ貫通孔として設けられた、第一加熱ユニット170の流入口175aと、第二加熱ユニット270の流出口276aとが、軸方向の同じ側の端部(第一端部90a)に配置されている。そして、図18(c)のように、第一加熱ユニット170と第二加熱ユニット270が、相互に90°回転した状態で配置され、第一加熱ユニット170の第四流路173dと第二加熱ユニット270の第一流路273aとが、仕切壁91aを隔てて隣接されている。また、第一加熱ユニット170の流入口175aと第二加熱ユニット270の流出口276aが、外筒91の同じ面に並んで配置されている。なお、本実施形態においては、第一加熱ユニット170の流出口176aおよび第二加熱ユニット270の流入口275aは、外筒91に貫通孔として設けられるのではなく、後述するように、第一キャップ部材92に設けられる連絡口92bの開口部として設けられる。
外筒91の端部を閉塞するとともに流路間に連通を形成するキャップ部材も、2つの加熱ユニット170,270にそれぞれに独立して設けられるのではなく、図17に示すように、1つの第一キャップ部材92が第一端部90aを一括して閉塞し、1つの第二キャップ部材93が、第二端部90bを一括して閉塞している。図18(b)、図19(b)に示すように、第二キャップ部材93は、図14(b)に示す第四の実施形態の変形形態にかかる第二キャップ部材82Aを2つつなげたような形状を有しており、中央部が、外筒91に取り付けた際に仕切壁91aに突き当たる第二キャップ中央壁93aによって分割されている。そして、第一加熱ユニット170の内側区画壁172a,172cに突き当たる第一外側区画壁183aおよび第三外側区画壁183cの組が、中央壁93aの一方側に配置されている。そして、それらから90°回転して、中央壁93aの他方側に、第二加熱ユニット270の内側区画壁272a,272cに突き当たる第一外側区画壁283aおよび第三外側区画壁283cの組が配置されている。
一方、図18(a)、図19(a)に示すように、第一キャップ部材92も、外筒91の仕切壁91aに突き当たる第一キャップ中央壁92aによって分割されている。そして、第一加熱ユニット170の内側区画壁172a,172b,172dに突き当たる第一外側区画壁181a、第二外側区画壁181b、第四外側区画壁181dが、中央壁92aの一方側に配置されている。そして、それらから90°回転して、第二加熱ユニット270の内側区画壁272a,272b,272dに突き当たる第一外側区画壁281a、第二外側区画壁281b、第四外側区画壁281dが、中央壁92aの他方側に配置されている。さらに、第一キャップ中央壁92aは、中央部で分断され、間に、中央壁92a両側の空間を連通する連絡口92bを有している。
第一キャップ部材92を第一端部90aにおいて外筒91に取り付け、第一キャップ中央壁92aを仕切壁91aに突き当てると、この連絡口92bによって、第一加熱ユニット170の第四流路173dと第二加熱ユニット270の第一流路273aとが連通される。つまり、連絡口92bの第一加熱ユニット170側の開口が第一加熱ユニット170の流出口176aとなり、第二加熱ユニット270側の開口が第二加熱ユニット270の流入口275aとなる。そして、それらが連絡口92bによって接続された状態となる。さらに第二キャップ部材93も外筒91に取り付けると、図20のように、2つの加熱ユニット170,270の流路が折り返し状に連通される。つまり、水Wが、第一加熱ユニット170の流入口175a→第一流路173a→第二流路173b→第三流路173c→第四流路173d→流出口176a→連絡口92b→第二加熱ユニット270の流入口275a→第一流路273a→第二流路273b→第三流路273c→第四流路273d→流出口276aと、第一端部90aから入って4往復にわたって折り返されて、再度第一端部90aから流出される。
第一加熱ユニット170の内筒171bには、第一シーズヒータ174が挿通され、第一加熱ユニット170の流路173a〜173dを流れる水Wを加熱する。そして、第二加熱ユニット270の内筒271bには、第二シーズヒータ274が挿通され、第二加熱ユニット270の流路273a〜273dを流れる水Wを加熱する。
このように、2本のシーズヒータ174,274を並べて用い、それぞれの周囲に配置された流路を直列に接続することで、シーズヒータを1本のみ使用する場合と比較して、シーズヒータの加熱部の総長は同じでも、それぞれのシーズヒータ174,274を短くすることがきる。これにより、十分な加熱効率を確保しながら、流体加熱装置90の全長を短くすることができる。すると、流体加熱装置90を配置できる空間の自由度が高くなる。
接続される加熱ユニットの数は、2つに限られず、いくつでもよい。また、各加熱ユニットの形状も、角筒状に限られず、円筒状等でもよいが、上記のように、角筒状にすることで、各加熱ユニットの外筒を連続して形成し、それらの間を仕切壁で仕切ることで、簡便に複数の外筒に分割することができる。また、その仕切壁に突き当てられるキャップ部材の壁状部材(中央壁)に連絡口を設けることで、簡便に、2つの隣接する加熱ユニットの一方の流出口と他方の流入口を接続することができる。このような連絡口を利用する以外の加熱ユニットの接続方法としては、一方の流出口と他方の流入口の間を、パイプ等の部材を用いて接続する方法を挙げることができるが、連絡口を用いる場合と比較して、構成が煩雑になるとともに、流体加熱装置全体をコンパクトに構成することが困難になる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。