(A)第1の実施形態
以下、本発明による現金処理装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。この実施形態では、本発明の現金処理装置を、現金管理装置に適用した例について説明する。
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、現金管理装置1の機能的構成を示すブロック図である。図2は、現金管理装置1の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、現金管理装置1は、大別して、主制御部10、記憶部20、表示部30、カードリーダ40、入力部50、印刷部60、紙幣部100及び硬貨部200を有する。また、図2に示すように、現金管理装置1は、硬貨入金口214、硬貨リジェクト212、紙幣入出金口113、紙幣部100及び硬貨部200を有する。
主制御部10は、記憶部20に格納された制御プログラムに基づいて、現金管理装置1全体の処理を制御するものである。主制御部10は、つり銭出金処理や入金処理を行う入出金処理機能や、つり銭有高を管理するつり銭有高管理機能を有する。
記憶部20は、主制御部10の処理で利用される種々のデータを記憶する記憶手段である。図1では、記憶部20に記憶されるデータとして、金額管理テーブルTと、後述する未移動売上金カウンタC及び閾値Nとを図示している。金額管理テーブルTでは、少なくとも、現金管理装置1で保持している全ての現金の金額(以下、「有高」と呼ぶ)と、現金管理装置1で保持している売上金の合計額と、現金管理装置1で保持している釣銭準備金の合計額とが管理されているものとする。記憶部20は、その他にも種々の情報を記憶する入金・出金処理履歴、回収庫交換履歴、釣銭収納庫入出金履歴、回収庫入金履歴等を記憶している。さらに、記憶部20は、主制御部10が実行する制御プログラムや処理結果等も記憶するものとする。
紙幣部100は、紙幣を金種別に収納・管理するものである。
紙幣部100は、入金処理時に投入される紙幣を一括して受け入れると共に出金処理時に釣銭としての紙幣を排出する紙幣入出金口113と、この紙幣入出金口113に受け入れた紙幣を1枚ずつ分離して、紙幣の金種等を鑑別すると共に鑑別した紙幣を金種毎に計数する紙幣認識部114と、この紙幣認識部114で鑑別計数された紙幣を集積して一時保留する紙幣一時保留部115と、釣銭準備金(売上金を含む)を金種(この実施形態では、千円券、五千円券、一万円券を区別しているものとする)別に収納する釣銭用紙幣収納庫116と、売上金として計上する入金紙幣を金種別に収納する紙幣回収庫111と、紙幣リジェクト112と、紙幣を搬送する紙幣搬送路117、制御プログラムに基づいて紙幣部200全体の動作制御を行う制御部110を少なくとも有して構成される。
ここで、例えば、紙幣一時保留部115には紙幣を繰出す繰出し手段が設けられている。また例えば、釣銭用紙幣収納庫116にも紙幣の集積手段が紙幣を紙幣搬送路117に繰り出す繰出し手段と共に設けられている。
硬貨部200は、硬貨を金種別に収納・管理するものである。
硬貨部200は、投入される硬貨を一括して受け入れる硬貨入金口214と、この硬貨入金口214に受け入れた硬貨を1枚ずつ分離して、硬貨の金種等を鑑別すると共に鑑別した硬貨を金種毎に計数する硬貨認識部216と、この硬貨認識部216で鑑別計数された硬貨を一時保留する硬貨一時保留部217と、銭準備金(売上金を含む)を金種(この実施形態では、一円硬貨、五円硬貨、十円硬貨、五十円硬貨、百円硬貨、五百円硬貨を区別しているものとする)別に収納する釣銭用硬貨収納庫213、売上金として計上する入金硬貨を金種別に収納する硬貨回収庫211と、つり銭用の硬貨を出金するための硬貨出金口215と、硬貨リジェクト212と、硬貨を搬送する硬貨搬送路218、制御プログラムに基づいて硬貨部200全体の動作制御を行う制御部210を有する。
例えば、硬貨一時保留部217、釣銭用硬貨収納庫213、硬貨回収庫211、及び硬貨出金口215は、金種毎に分けて硬貨を集積、収納できるように内部が区切られている。
また例えば、硬貨入金口214と硬貨認識部216との間には、分離部により分離された硬貨を搬送する搬送ベルト等による硬貨搬送路218が設けられている。また、釣銭用硬貨収納庫213と硬貨回収庫211及び硬貨出金口215との間には、釣銭用硬貨収納庫213から排出される硬貨を硬貨回収庫211と硬貨出金口215のいずれかに導く振分け手段と、通過する硬貨を金種毎に計数する計数手段とが設けられている。
なお、紙幣部100の制御部110及び硬貨部200の制御部210は、主制御部10の指示により紙幣部100及び硬貨部200を制御する。
以上のように、現金管理装置1では、釣銭用紙幣収納庫116及び釣銭用硬貨収納庫213により、釣銭準備金及び売上金(後に回収対象となる売上金)を収納する収納庫(第1の現金収納庫)が構成されている。また、現金管理装置1では、紙幣回収庫111及び硬貨回収庫211により、回収用の売上金を収納する収納庫(第2の現金収納庫)が構成されている。以下では、紙幣回収庫111及び硬貨回収庫211を総称して「売上金回収庫」とも呼ぶものとする。また、以下では、釣銭用紙幣収納庫116及び釣銭用硬貨収納庫213を総称して「釣銭収納庫」と呼ぶものとする。
表示部30は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等により、現金管理装置1の各種処理操作の案内、入力画面、入力情報、金種別の入金金額又は出金金額等を表示する表示手段である。
カードリーダ40は、利用者が使用するIDカードに格納されている情報を読み取り、主制御部10に読み取り情報を与えるものである。これにより、IDカードに格納されている担当者識別情報が読み取られ、入金データ及び出金データを担当者識別情報に対応付けて管理することができる。なお、担当者識別情報については、カードリーダ40による読み取りではなく、利用者が、後述する入力部50を介して自身の担当者識別情報を入力するようにしても良い。
入力部50は、利用者が操作するものであり、例えば、キーボードやテンキーなどの物理的な入力手段や、表示部30上に配置されたタッチパネル等の入力手段を適用することができる。
印刷部60は、紙幣部100や硬貨部200で行われた入金処理又は出金処理の金額、金種別枚数等を伝票に記録して出力するものである。印刷部60は、例えば、プリンタ等を適用することができる。
主制御部10が行う現金管理の詳細について説明する。
主制御部10は、金額管理テーブルTを用いて、現金管理装置1の有高、売上金及び釣銭準備金を管理している。主制御部10は、出金取引(釣銭準備金の出金)を行うごとに、金額管理テーブルTで管理する釣銭準備金を減算する処理を行う。また、主制御部10は、入金取引を行うごとに、入金される現金(紙幣入出金口113及び硬貨入金口214に投入された現金)を、売上金と釣銭に分類して、金額管理テーブルTで管理する釣銭及び売上金の額を加算する処理を行う。主制御部10が、入金を受付けた現金のうち売上金を認識する処理については限定されないものである。例えば、主制御部10は、店員等に売上金の額を手動入力させて認識してもよいし、店員ごと(IDカードごと)に出金した釣銭の額を保持しておき、入金取引の際に入金される金額から釣銭を差し引いた金額を売上金として認識するようにしてもよい。
この実施形態では、主制御部10は、入金取引で入金された現金(釣銭及び売上金を含む現金)を、一旦釣銭収納庫に収納し、その後売上金の分の現金を売上金回収庫に移動させる制御処理を行うものとする。
また、主制御部10は、未移動売上金カウンタCを用いて、現金管理装置1で保持する売上金のうち、未だ売上金回収庫に移動・収納されていない現金(以下、「未移動売上金」と呼ぶものとする)の金額を管理する。すなわち、未移動売上金カウンタCの値は現在の未移動売上金の金額を示すことになる。
そして、主制御部10は、未移動売上金カウンタCと閾値Nとの比較結果に基づいて釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動を行う。閾値Nには、現金管理装置1で処理するいずれかの金種の貨幣の金額が設定される。第1の実施形態では、閾値Nには、現金管理装置1で処理する紙幣のうち最も高額な紙幣である一万円券の額面(10000)が設定されるものとして説明する。そして、主制御部10は、閾値Nに対応する金種以上の貨幣単位で、釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動を行う。すなわち、主制御部10は、未移動売上金カウンタCの値が閾値N以上の場合にのみ、未移動売上金カウンタCの値の範囲内で、閾値Nに対応する金種以上の貨幣単位で、釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動を行う。そして、主制御部10は、釣銭収納庫から売上金回収庫へ移動した金額分だけ未移動売上金カウンタCを減算する処理を行う。ここで、閾値N=10000とした場合、主制御部10は、未移動売上金カウンタCが10000以上の場合に、未移動売上金カウンタCの範囲内において、一万円券単位で釣銭収納庫(釣銭用紙幣収納庫116)から売上金回収庫(紙幣回収庫111)への一万円券の移動を行う。未移動売上金カウンタCが10000(N)で割り切れる値の場合は、主制御部10は、未移動売上金カウンタCの値に対応する全ての売上金について、釣銭収納庫から売上金回収庫に移動することになる。一方、未移動売上金カウンタCが10000(N)で割り切れない値である場合には、未移動売上金カウンタCの一部の値に対応する売上金ついて、釣銭収納庫から売上金回収庫に移動することになる。この場合、未移動売上金カウンタCを10000(N)で割った余り(端数)が、未移動売上金として未移動売上金カウンタCで管理されることになる。
以上のように、主制御部10は、入金取引の度に、未移動売上金カウンタCと閾値Nとの比較結果に基づいて釣銭収納庫から売上金回収庫へ現金を移動させることにより、入金された高額紙幣(この実施形態では一万円券)を優先的に移動(釣銭収納庫から売上金回収庫へ移動)する処理を行う。
以上のように、現金管理装置1は、紙幣搬送路117と硬貨搬送路218により現金を搬送する搬送手段が実現されている。また、現金管理装置1は、主制御部10と記憶部20により売上金を管理する売上金管理手段が実現されている。
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する現金管理装置1の動作について説明する。
まず、現金管理装置1が入金取引(釣銭及び売上金を含む現金の入金を受付ける取引)を行う際の動作について図3を用いて説明する。
現金管理装置1では、入金取引の前提として、利用者としての店員(当該現金管理装置1が設置されている店舗のレジスタ担当の店員)とIDカードを用いた出金取引を行い、釣銭を出金するが、この出金取引の内容については種々の現金管理装置(現金入出金装置)と同様の処理を適用することができるため詳しい説明を省略する。そして、図3では、出金取引を行った店員(IDカードと現金を所持した店員)から現金(釣銭及びレジスタの売上金を含む現金)の入金取引を受付ける際の現金管理装置1の動作について示している。
店員によりIDカードがカードリーダ40に挿入され、パスワードが入力されると、これを受付けて現金管理装置1の主制御部10は、IDカード情報を読取る(S101、S102)。
IDカード情報を読取った主制御部10は、IDカードの正当性を判定し、IDカードが正当である場合はIDカードコードにより入金を許可されている有資格者であることを判定して後述するステップS104へ移行する(S103)。なお、図3で図示を省略しているが、IDカードが正当でない、または入金の有資格者でないと判定した場合は、その旨を表示部30に表示して入金処理を終了させることになる。
入金を行う店員から入金処理が選択されたものとすると、主制御部10は、表示部30に現金の投入を促す旨の文言を表示すると共に、紙幣入出金口113のシャッタおよび硬貨入金口214のシャッタを開放して店員からの現金の投入を受付ける(S104)。
続いて、店員により持参した入金のための現金を紙幣と硬貨に区別して紙幣入出金口113と硬貨入金口214へ投入されると、主制御部10は、紙幣入出金口113へ投入された紙幣を紙幣認識部114へ搬送し、その紙幣の真偽、金種等を鑑別して金種毎に計数し、鑑別された紙幣を紙幣一時保留部115へ搬送し金種別に一時保管する(S105)。また、主制御部10は、硬貨入金口214へ投入された硬貨を硬貨鑑別部216へ搬送し、その硬貨の真偽、金種等を鑑別して金種毎に計数し、鑑別された硬貨を硬貨一時保留部217へ搬送して金種別に一時保管する。なお、図3では図示を省略しているが、偽券等の不良紙幣と鑑別された紙幣は紙幣入出金口113へ搬送されて店員に返却される。同様に、偽硬貨等の不良硬貨と鑑別された硬貨は硬貨リジェクト212へ搬送されて店員に返却される。
現金の計数を終えた主制御部10は、表示部30に金種毎の計数結果とその確認を促す旨の文言を表示した計数結果確認画面を表示し、取引の続行又は中止を受け付ける(S106)。
主制御部10は、取引の続行が受け付けられた場合には、計数結果が確定されたと認識して後述するステップS109へ移行し、一方、取引の中止が受け付けられた場合には、これを返却要求と認識して後述するステップS108へ移行する(S107)。
ステップS107の処理で中止処理が実行された場合において、返却要求を認識した主制御部10は、紙幣一時保留部115に一時保管した紙幣を紙幣入出金口113へ、硬貨一時保留部217に一時保管した硬貨を硬貨出金口215搬送して投入された現金を店員に返却し、店員の受取りを確認して入金処理を終了する(S108)。
ステップS107の処理で続行処理が実行された場合において、計数結果(入金金額)が確定されたことを認識した主制御部10は、入金金額を記憶部20に記憶してステップS110へ移行する(S109)。
そして、主制御部10は、一時保留部に一時保留されている現金の中で、すなわち、紙幣一時保留部115に一時保留されている紙幣を紙幣認識部114へ再度搬送し、その紙幣の金種等を鑑別して金種毎に計数し、釣銭用紙幣収納庫116に収納し、また、硬貨一時保留部217に金種別に一時保留されている硬貨を硬貨一時保留部217からそれぞれの金種の釣銭用硬貨収納庫213へ放出して金種別に収納する(S110)。
そして、主制御部10は今回入金された現金(釣銭収納庫に収納された現金)を売上金と釣銭に分類し、金額管理テーブルT等の情報更新を行う(S111)。主制御部10が、入金された現金を売上金と釣銭に分類する処理については、上述の通り、手動処理(店員から売上金の金額の入力を受付ける処理)で行うようにしてもよいし、自動処理(入金された現金の金額から出金した釣銭の金額を差し引いて売上金を取得する処理)で行うようにしてもよい。
次に、主制御部10は、今回入金された現金のうち売上金の分だけ未移動売上金カウンタCを加算し、未移動売上金カウンタCを更新する処理を行う(S112)。
主制御部10は、未移動売上金カウンタCを参照し、未移動売上金カウンタCが閾値N(この実施形態では、「10000」)以上である場合には、次のステップS114を実行し、閾値N未満である場合には、後述するステップS116を実行する(S113)。
主制御部10は、釣銭用紙幣収納庫116に保留されている現金うち、未移動売上金カウンタCに記憶される金額(10000単位)に相当する紙幣(一万円券単位)を紙幣認識部114へ再度搬送し、その紙幣の金種等を鑑別して金種毎に計数し、紙幣回収庫111に移動・収納する(S114)。なお、主制御部10は、上記処理において、回収する紙幣(例えば、一万円券)が存在しない場合には、未移動売上金カウンタCが閾値N以上となったとしても回収予定紙幣を紙幣回収庫111に移動しないように制御してもよい。
主制御部10は、回収した金額分(紙幣回収庫111に移動した金額分)だけ未移動売上金カウンタCを減算する(S115)。
主制御部10は、IDカード情報や入金された金種毎の枚数とその合計金額等の実行した入金処理の内容を記載した伝票(レシート)を印刷部60により印刷して発行し処理を終了する(S116)。
次に、現金管理装置1が回収取引(売上金を売上金回収庫に移動して、売上金を回収させる処理)を行う際の動作について図4を用いて説明する。
図4は、現金管理装置1による売上金回収取引の動作を示すフローチャートである。
現金管理装置1は、上述の図3の処理により現金の入金が行われた後、回収取引の担当者(例えば、店舗において責任のある「店長」等の利用者)と回収取引を行う。現金管理装置1では、売上金回収庫(紙幣回収庫111、及び硬貨回収庫211)は着脱自在となっている。回収取引において、現金管理装置1は、売上金回収庫(紙幣回収庫111、及び硬貨回収庫211)に、全ての売上金(未移動売上金)を移動して、売上金回収庫を回収取引の担当者である店長に回収させるものとする。
まず、現金管理装置1では、店長の操作に応じて回収取引が開始されたものとする(S201〜S204)。ステップS201〜S204の処理は選択される取引が異なること以外は上述のステップS101〜S104の処理と同様であるため詳しい説明については省略する。
回収取引を開始すると、主制御部10は、未移動売上金カウンタCを参照し、未移動売上金カウンタCの値が「0」(C=0)の場合には、後述するステップS208を実行し、未移動売上金カウンタCが0以上(C≧0)の場合には、後述するステップS206を実行する(S205)。
未移動売上金カウンタCが0以上(C≧0)の場合、主制御部10は、未移動売上金カウンタCの値に相当する金額を回収する処理(売上金回収庫に移動する処理)を実行する(S206)。具体的には、主制御部10は、釣銭用紙幣収納庫116で収納している現金のうち、未移動売上金に相当する紙幣(未移動売上金カウンタCの1000未満の値を切り捨てた値に相当する紙幣)を紙幣認識部114へ再度搬送し、その紙幣の金種等を鑑別して金種毎に計数し、紙幣回収庫111に収納する。さらに、主制御部10は、釣銭用硬貨収納庫213で収納している現金のうち、未移動売上金に相当する硬貨(未移動売上金カウンタCの1000未満の値に相当する硬貨)を硬貨認識部216へ再度搬送し、その硬貨の金種等を鑑別して金種毎に計数し、硬貨回収庫211に収納する。
次に、主制御部10は、上述のステップS206で回収した金額分(釣銭収納庫から売上金回収庫に移動した金額分)だけ未移動売上金カウンタCを減算する処理を行う(S207)。このとき、釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動が問題なく完了した場合、未移動売上金カウンタCの値は0(C=0)となる。
次に、主制御部10は、今回の回収取引に伴う種々の情報について更新(記憶部20の情報更新)を行う(S208)。
次に、主制御部10は、印刷部60を制御して、今回の回収取引の取引結果について印刷させて排出させる(S209)。
次に、現金管理装置1(主制御部10)が、図3のフローチャートの動作に従って入金取引及び逐次現金を回収する処理を行った場合の具体例について図5を用いて説明する。
例えば、第1の実施形態の現金管理装置1(主制御部10)で、図5に示す3つの入金取引(図5に示す取引番号1〜3の入金取引)が、取引番号1、2、3の順序で行われたものとする。
図5では、取引番号1の入金取引は、入金金額8,000円(釣銭金額5,000円、売上金額3,000円)について、千円券×8枚の構成で入金された取引であることを示している。図5では、取引番号2の入金取引は、入金金額8,000円(釣銭金額5,000円、売上金額3,000円)について、千円券×8枚の構成で入金された取引であることを示している。図5では、取引番号3の入金取引は、入金金額10,000円(釣銭金額5,000円、売上金額5,000円)について、一万円券×1枚の構成で入金された取引であることを示している。
そして、図5では、各取引番号の入金取引後の釣銭回収庫の収納状況(収納金額及び収納している現金の構成)、売上金回収庫の収納状況(収納金額及び収納している現金の構成)、及び未移動売上金カウンタCの更新値についても示している。
図5に示す通り、取引番号1の入金取引後の未移動売上金カウンタCの値は3,000(10000未満)であるため、売上金の移動(釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動)は行われない。また、図5に示す通り、取引番号2の入金取引後の未移動売上金カウンタCの値は6,000(10000未満)であるため、売上金の移動(釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動)は行われない。さらに、図5に示す通り、取引番号2の入金取引後の未移動売上金カウンタCの値は1,3000(10000以上)であるため、売上金の移動(釣銭収納庫から売上金回収庫への一万円券の移動)が行われる。この時、未移動売上金カウンタCの値は、3,000に更新されることになる。
(A−3)第1の実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
現金管理装置1では、主制御部10が、未移動売上金カウンタCと閾値N(この実施形態では10000)とを比較し、閾値N以上となった場合のみ釣銭用紙幣収納庫116から高額紙幣(この実施形態では一万円券)を紙幣回収庫111へ優先移動することで、釣銭として利用させる紙幣(例えば、千円券)の回収を抑制することができる。これにより、現金管理装置1の釣銭(例えば、千円券)が不足する事態が避けることが可能となり店舗の円滑な運営をすることができる。
また、現金管理装置1では、高額紙幣を優先移動することになるので、必然的に現金を移動(釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動)する頻度と、1回あたりに移動する現金の量(紙幣の枚数)が減少し、より効率的な現金の移動処理を行うことができる。特に、釣銭用紙幣収納庫116から紙幣を紙幣回収庫111へ移動する場合には、紙幣認識部114で紙幣の鑑別を行うため、単に現金を搬送する時間以上の処理時間短縮を実現することができる。
(B)第2の実施形態
以下、本発明による現金処理装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。この実施形態では、本発明の現金処理装置を、現金管理装置に適用した例について説明する。
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の現金管理装置1の構成についても、第1の実施形態と同様に図1、図2を用いて示すことができる。
以下では、第2の実施形態の現金管理装置1の構成について、第1の実施形態との差異について説明する。
第1の実施形態の現金管理装置1では、閾値Nとして現金管理装置1で処理する紙幣のうちもっとも金額の高い一万円券の金額(N=10000)としていた。これに対して、第2の実施形態では、閾値Nとして現金管理装置1で処理する紙幣のうちもっとも金額の低い一千円券の金額(N=1000)が設定されている点で第1の実施形態と異なる。
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態に係る現金管理装置1の動作を説明する。
第2の実施形態の現金管理装置1の動作も、第1の実施形態と同様に図3を用いて説明することができる。上述の通り、第2の実施形態の現金管理装置1では、ステップS113の処理で適用される閾値Nが1000に変更されている点で第1の実施形態と異なる。また、第2の実施形態の現金管理装置1では、ステップS114の処理で、閾値Nに対応する金種(一千円券)以上の額面の金種単位(一千円券、五千円券、及び一万円券)で現金の移動処理(釣銭収納庫から売上金回収庫に移動する処理)を行うことになる。
次に、第2の実施形態の現金管理装置1(主制御部10)が、図3のフローチャートの動作に従って入金取引及び逐次現金を回収する処理を行った場合の具体例について図6を用いて説明する。
例えば、第1の実施形態の現金管理装置1(主制御部10)で、図6に示す3つの入金取引(図6に示す取引番号1〜3の入金取引)が、取引番号1、2、3の順序で行われたものとする。
図6では、取引番号1の入金取引は、入金金額6,520円(釣銭金額5,000円、売上金額1,520円)について、千円券×6枚、五百円硬貨×1枚、十円硬貨×2枚の構成で入金された取引であることを示している。図6では、取引番号2の入金取引は、入金金額5,300円(釣銭金額5,000円、売上金額300円)について、千円券×5枚、100円硬貨×3枚の構成で入金された取引であることを示している。図6では、取引番号3の入金取引は、入金金額7,480円(釣銭金額5,000円、売上金額2,480円)について、千円券×7枚、100円硬貨×4枚、十円硬貨×8枚の構成で入金された取引であることを示している。
そして、図6では、各取引番号の入金取引後の釣銭回収庫の収納状況(収納金額及び収納している現金の構成)、売上金回収庫の収納状況(収納金額及び収納している現金の構成)、及び未移動売上金カウンタCの更新値についても示している。
図6に示す通り、取引番号1の入金取引後の未移動売上金カウンタCの値は1,520(1000以上)であるため、売上金の移動(釣銭収納庫から売上金回収庫への一千円券の移動)が行われる。この時、未移動売上金カウンタCの値は、520に更新されることになる。また、図6に示す通り、取引番号2の入金取引後の未移動売上金カウンタCの値は820(1000未満)であるため、売上金の移動(釣銭収納庫から売上金回収庫への現金の移動)は行われない。さらに、図6に示す通り、取引番号3の入金取引後の未移動売上金カウンタCの値は3,300(1000以上)であるため、売上金の移動(釣銭収納庫から売上金回収庫への一千円券の移動)が行われる。この時、未移動売上金カウンタCの値は、300に更新されることになる。
(B−3)第2の実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
現金管理装置1では、主制御部10が、未移動売上金カウンタCと閾値N(この実施形態では1000)とを比較し、閾値N以上となった場合のみ釣銭用紙幣収納庫116から紙幣(この実施形態では千円券)を紙幣回収庫111へ優先移動することで、釣銭として利用させる硬貨の回収を抑制することができる。これにより、現金管理装置1の釣銭硬貨が不足する事態が避けることが可能となり店舗の円滑な運営をすることができる。
また、現金管理装置1では、千円券を優先移動することになるので、必然的に硬貨を回収する機会と量が少なくなる。釣銭用硬貨収納庫213から硬貨を硬貨回収庫211へ回収する場合には、硬貨認識部216で硬貨の鑑定を行うが、鑑定する硬貨の機会と量が少なくなったことにより、紙幣認識部114で紙幣の鑑定をする時間を短縮することができる。
(C)他の実施形態
上記の各実施形態に加えて、さらに、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
(C−1)上記の各実施形態では、売上金回収庫に紙幣回収庫111及び硬貨回収庫211が含まれ、釣銭収納庫に釣銭用紙幣収納庫116及び釣銭用硬貨収納庫213が含まれるものとして説明したが、これ以外に、紙幣リジェクト112や硬貨リジェクト212等の本来他の機能に係る収納庫を釣銭収納庫又は売上金回収庫として流用するようにしてもよい。例えば、一万円券については、釣銭用紙幣収納庫116に収納せず、紙幣リジェクト112に収納する構成(紙幣リジェクト112を釣銭収納庫としても利用する構成)としてもよい。
(C−2)上記の各実施形態において、主制御部10は、未移動売上金について直接的に未移動売上金カウンタCを用いて管理しているが、未移動売上金カウンタCを用いずに、保持している売上金合計額と、売上金回収庫に収納している金額との差分に基づいて算出し、間接的に未移動売上金を認識するようにしてもよい。すなわち、主制御部10において、未移動売上金を認識する具体的な算出方法については限定されないものである。