<自動取引装置の全体構成の一例>
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。図1は、自動取引装置1の全体構成の一例を示している。自動取引装置1は、図1の例には限定されない。自動取引装置1は、金融取引を行う装置として、例えば銀行や店舗等に設置されている。
自動取引装置1は、通帳挿入部2とカード挿入部3と硬貨投入出口4と紙幣投入出口5とタッチパネルディスプレイ6とを備えている。通帳挿入部2は、通帳を挿入するための挿入口である。
カード挿入部3は、キャッシュカードやクレジットカード等のカード媒体を挿入および返却するための部位である。以下、実施形態では、カード媒体を単にカードと称し、当該カードはキャッシュカードであるものとして説明する。
硬貨投入出口4は、硬貨の投入および取り出しを行うための部位である。紙幣投入出口5は、紙幣の投入および取り出しを行うための部位である。タッチパネルディスプレイ6は、自動取引装置1を用いて取引を行う者(以下、利用者と称する)が、金融取引のための所定の操作を行うための装置である。
タッチパネルディスプレイ6は、表示機能および入力機能を有する。タッチパネルディスプレイ6には所定の情報が表示され、利用者は、表示された情報に基づいて、タッチパネルディスプレイ6をタッチ(押下)することで、金融取引の操作を行う。
<自動取引装置の内部構成の一例>
図2は、自動取引装置1の内部構成の一例を示す。図2の例の自動取引装置1は、第1のスタッカー11と第2のスタッカー12と第1の紙幣カセット13と第2の紙幣カセット14とリジェクトボックス(RJ)15と鑑別部16と制御部20と搬送路18と入出金部19とを備える。なお、図2の入出金部19は、図1の紙幣投入出口5と同じ部位を示す。
第1のスタッカー11(図2では、スタッカーAと示している)は紙幣を収納する。第2のスタッカー12(図2では、スタッカーBと示している)は紙幣を収納する。第1のスタッカー11と第2のスタッカー12とでは、収納する紙幣の金種が異なる。すなわち、1つのスタッカーには同じ金種が収納される。実施形態では、第1のスタッカー11は万券を収納し、第2のスタッカー12は千券を収納するが、第1のスタッカー11が千券を収納してもよいし、第2のスタッカー11が万券を収納してもよい。
第1のスタッカー11および第2のスタッカー12は、出金時には、収納している紙幣を繰り出し、入金時には入金された紙幣を収納する。第1のスタッカー11および第2のスタッカー12は、第1の収納庫の一例である。
第1の紙幣カセット13は、紙幣を収納している。第1の紙幣カセット13は、収納している紙幣を第1のスタッカー11に補充する。従って、第1の紙幣カセット13の紙幣と第1のスタッカー11の紙幣とは同じ金種(例えば、万券)である。
第2の紙幣カセット14は、紙幣を収納している。第2の紙幣カセット14は、収納している紙幣を第2のスタッカー12に補充する。従って、第2の紙幣カセット14の紙幣と第2のスタッカー12の紙幣とは同じ金種(例えば、千券)である。
リジェクトボックス15は、多重に繰出された紙幣や不良券(金種等が識別できない紙幣)等を収納する。リジェクトボックス15は、多重に繰出された紙幣や不良券等の鑑別不良となった紙幣を収納する箱であり、内部に収納されている紙幣を繰り出す手段を有していない。以下、リジェクトボックス15に収納される紙幣をリジェクト紙幣と称する。リジェクトボックス15は、第2の収納庫の一例である。
鑑別部16は、鑑別対象の紙幣が正常であるか否かを鑑別する。鑑別部16は、鑑別対象の紙幣が正常でないと鑑別した場合には、該紙幣をリジェクトボックス15に収納するリジェクト紙幣と鑑別する。また、鑑別部16は、鑑別対象の紙幣の金種の鑑別(例えば、万券であるか、または千券であるかの鑑別)を行う。
また、鑑別部16は、鑑別対象の紙幣が裏の状態であるか、表の状態であるかの鑑別を行う。鑑別部16は、鑑別結果に基づいて、紙幣の表裏の情報(以下、表裏情報と称する)を取得する。
また、鑑別部16は、鑑別対象の紙幣の向きが、上方向であるか下方向であるかを鑑別する。紙幣には、上方向と下方向とがある。例えば、紙幣に印刷されている顔の方向によって、上方向と下方向とを定めてもよい。鑑別部16は、鑑別結果に基づいて、紙幣が上方向あるか下方向であるかの情報(以下、向き情報と称する)を取得する。
搬送路18は、紙幣が搬送される経路である。図2の例では、入金される紙幣の流れを実線で示し、出金される紙幣の流れを破線で示している。入出金部19は、入金された紙幣または出金される紙幣を一時的に収納する。
<制御部の一例>
図3は、自動取引装置1の制御部20の一例を示している。制御部20は、実施形態の制御を行う。制御部20は、自動機制御部21と繰出制御部22と鑑別情報取得部23と記憶部24と特定部25と通信部26とを備える。
自動機制御部21は、自動取引装置1の全体の制御を行う。制御部20の機能は、例えば、自動取引装置1の全体の制御を行う自動機制御部21が各部を制御して処理を実行してもよい。繰出制御部22は、第1のスタッカー11または第2のスタッカー12に対して、収納している紙幣を搬送路18に繰出すように制御する。
鑑別情報取得部23は、鑑別部16が鑑別した紙幣に関する情報(以下、鑑別情報と称する)を取得する。鑑別情報は、鑑別した紙幣が正常であるか否かの情報、表裏情報、向き情報および金種情報等を含む。鑑別情報取得部23は、鑑別部16が鑑別した順番で鑑別情報を取得する。従って、鑑別情報と鑑別した順番に関する情報(以下、順番情報と称する)とを対応付ける。
記憶部24は、収納順情報および繰出順情報を記憶する。収納順情報は、第1のスタッカー11または第2のスタッカー12に収納されている紙幣の鑑別情報と順番情報とを対応付けた情報である。収納順情報は、第1の情報の一例である。記憶部24は、収納順情報をスタッカーごとに記憶する。
繰出順情報は、第1のスタッカー11または第2のスタッカー12から所定枚数の紙幣を繰出したときに鑑別部16が鑑別した鑑別情報と順番情報とを対応付けた情報である。繰出順情報は、第2の情報の一例である。記憶部24は、繰出順情報をスタッカーごとに記憶する。
特定部25は、収納順情報および繰出順情報に基づいて、リジェクトボックス15に収納されている紙幣の金種ごとの枚数を特定する。また、特定部25は、紙幣の繰り出しを行ったスタッカーを認識する(図2の例の場合、紙幣の繰り出しは、第1のスタッカー11と第2のスタッカー12との何れから行われたかを認識する)。通信部26は、外部との通信を行う。通信部26は、ネットワーク30を介して、ホストコンピュータ31と通信可能に接続されている。
<補充処理の一例>
次に、図4に一例として示すフローチャートを参照して、補充処理について説明する。なお、以下の例では、第1の紙幣カセット13から第1のスタッカー11に紙幣を補充する処理について説明するが、第2の紙幣カセット14から第2のスタッカー12に紙幣を補充する処理も同様である。
第1の紙幣カセット13から第1のスタッカー11に紙幣を補充する操作は、通常は、利用者ではなく、係員が行う。例えば、自動取引装置1に不図示の係員キーが設けられている場合、係員キーは通常の利用者により操作がされない場所に配置される。
自動機制御部21は、係員キーが操作されたか否かを判定する(ステップS1)。係員キーが操作されない場合は、自動機制御部21は、タッチパネルディスプレイ6に取引選択画面を表示して、利用者による金融取引の選択を可能にする。自動機制御部21は、係員キーが操作されると、係員処理のメニュー表示を行う(ステップS2)。例えば、自動機制御部21は、タッチパネルディスプレイ6に係員処理のメニュー表示を行ってもよい。
例えば、係員処理のメニューには、「精査」や「補充」、「回収」等の項目が含まれる。自動機制御部21は、係員処理のメニューのうち「補充」が選択されたか否かを判定する(ステップS3)。「補充」が選択されていない場合(ステップS3でNO)、「補充」以外の他の処理が行われる(ステップS4)。そして、処理は、ステップS2に戻る。
一方、「補充」が選択された場合(ステップS3でYES)、自動機制御部21は、第1の紙幣カセット13が装填されているか否かを判定する(ステップS5)。第1の紙幣カセット13が装填されているか否かは、例えば、不図示のセンサ等が検出してもよい。
第1のスタッカー11に対する紙幣の補充は、第1の紙幣カセット13から行われる。従って、第1の紙幣カセット13が装填されていない場合(ステップS5でNO)、処理は次のステップに進まない。
一方、第1の紙幣カセット13が装填されている場合(ステップS5でYES)、自動機制御部21は、第1の紙幣カセット13に紙幣が収納されているか否かを判定する(ステップS6)。つまり、自動機制御部21は、第1の紙幣カセット13が空であるか否かを判定する。
第1の紙幣カセット13が空であるか否かは、例えば不図示のセンサ等が第1の紙幣カセット13の紙幣を検出するか否かに基づいて判定してもよい。ただし、第1の紙幣カセット13が空であるか否かの検出は、センサによる検出には限定されない。
第1の紙幣カセット13に紙幣が空でないと判定された場合(ステップS6でNO)、繰出制御部22は、第1の紙幣カセット13が紙幣を繰出すように制御を行う(ステップS7)。
繰出制御部22は、鑑別部16が紙幣を鑑別する箇所を紙幣が通過するように搬送路18の搬送制御を行う。第1の紙幣カセット13から第1のスタッカー11に紙幣を補充するときには、多くの紙幣が補充される。
従って、鑑別部16は、多くの紙幣を鑑別して、鑑別情報を得る(ステップS8)。実施形態では、紙幣の表裏情報、向き情報および金種情報が含まれるものとする。ただし、鑑別情報は他の情報を含んでいてもよい。なお、金種情報は、紙幣の金種に関する情報であり、例えば、金種情報は、万券であるか、千券であるかの情報を含む。
第1の紙幣カセット13の紙幣は、最上部の紙幣から順番に繰出される。従って、第1のスタッカー11には第1の紙幣カセット13に収納されていた紙幣の順番とは逆の順番で紙幣が収納される。
鑑別情報取得部23は、鑑別部16が1枚の紙幣を鑑別するごとに、鑑別情報を取得する。そして、鑑別情報取得部23は、鑑別情報と順番情報とを対応付けた収納順情報を記憶部24に記憶し、図5の例の収納順情報の比較ポインタを1つ上げる。(ステップS9)。図5の例は、収納順情報の一例を示す。
図5の例の収納順は、順番情報である。また、図5の例では、鑑別情報は表裏情報であり、収納順に表裏情報が対応付けられている。図5の例では、第1のスタッカー11が空であるときに、補充がされた場合を示している。第1のスタッカー11に紙幣が収納されている場合には、既に記憶されている収納順情報に新たな収納順情報が追加される。
図5の例で、収納順が1番の表裏情報は表になっている。つまり、第1のスタッカー11のうち最下部に収納されている紙幣は表であることを示す。また、図5の例で、収納順が500番の表裏情報は裏になっている。従って、第1のスタッカー11のうち最上部に収納されている紙幣は裏であることを示す。
比較ポインタは、第1のスタッカー11のうち最上部を示している。記憶部24は、第1のスタッカー11が収納可能な紙幣の枚数の上限値までの表裏情報と収納順とを対応付けた収納順情報を記憶することができる。図5の例の収納順情報は、第1のスタッカー11の最大収納可能枚数が1000枚であることを示しており、そのうち500枚の紙幣が収納されていることを示している。
搬送路18を搬送される紙幣は、第1のスタッカー11に収納される(ステップS10)。そして、処理は、ステップS6に戻り、第1の紙幣カセット13が空になるまで、ステップS7からS10までの処理が繰り返される。第1の紙幣カセット13が空になったとき(ステップS6でYES)、補充処理は終了する。
第2の紙幣カセット14が第2のスタッカー12に対して紙幣を補充する補充処理も同様の処理が行われる。これにより、第2のスタッカー12についての収納順情報が記憶部24に記憶され、比較ポインタも紙幣の枚数に応じて加算される。従って、実施形態では、第1のスタッカー11と第2のスタッカー12とのそれぞれについての収納順情報が記憶される。
<出金取引の一例>
次に、出金取引の一例について、図6乃至図8を参照して説明する。出金取引は、利用者に対して預金の支払いを行う処理である。タッチパネルディスプレイ6は、取引種別選択画面を表示する(ステップS11)。
取引種別選択画面は、「出金」や「入金」、「預入」、「残高照会」等の各種の金融取引を選択するための取引キーを表示する画面である。これらの取引キーは、金融取引を行う利用者が選択してタッチするためのキーである。自動機制御部21は、何れかの取引キーがタッチされたか否かを判定する(ステップS12)。
取引キーがタッチされない場合(ステップS12でNO)、処理は次のステップには進まない。取引キーがタッチされた場合(ステップS12でYES)、自動機制御部21は、タッチされた取引種別のキーを判定する(ステップS13)。
取引種別が出金でない場合(ステップS13でNO)、他の取引種別の処理が行われる(ステップS14)。そして、処理は、1番からステップS11の取引種別選択画面表示に戻る。
一方、タッチされた取引種別が出金である場合(ステップS13でYES)、自動機制御部21は、カード挿入部3からカードが挿入されているか否かを判定する(ステップS15)。カードが挿入されていない場合(ステップS15でNO)、処理は次のステップには進まない。
カードが挿入されている場合(ステップS15でYES)、例えば、自動機制御部21は、タッチパネルディスプレイ6に暗証番号の入力を促す画面を表示する。利用者は、タッチパネルディスプレイ6を用いて、暗証番号の入力を行う。自動機制御部21は、入力された暗証番号を認識する(ステップS16)。
自動機制御部21は、タッチパネルディスプレイ6に出金金額の指定を促す画面を表示する。利用者は、タッチパネルディスプレイ6を用いて、出金金額の指定を行う。自動機制御部21は、出金金額を認識する(ステップS17)。
タッチパネルディスプレイ6に表示されている画面は、指定された出金金額の情報を確定するキーを含む。実施形態では、このキーを確認キーとする。自動機制御部21は、確認キーがタッチされたか否かを判定する(ステップS18)。
確認キーがタッチされなければ(ステップS18でNO)、処理は次のステップに進まない。一方、確認キーがタッチされると(ステップS18でYES)、処理は2番に進む。2番以降の処理は図7に示す。
確認キーがタッチされると、自動機制御部21は、出金取引電文を生成する(ステップS19)。出金取引電文は、カードに記憶されている口座情報と入力された暗証番号や指定された出金金額等の情報を含む。自動機制御部21は、通信部26を制御する。通信部26は、ネットワーク30を介して、出金取引電文をホストコンピュータ31に送信する(ステップS20)。
ホストコンピュータ31は、カードに記憶されている口座情報に対応する口座元帳等を参照して出金取引を許可するか否かを判定する。ホストコンピュータ31は、応答電文を生成する。出金取引が許可される場合には、出金取引許可の情報が応答電文に含まれる。
出金許可が許可されない場合には、出金取引不可の情報が応答電文に含まれる。実施形態では、出金取引は許可されるものとする。従って、ホストコンピュータ31は、出金取引を許可する応答電文を生成し、生成した応答電文を自動取引装置1に送信する。
通信部26が応答電文を受信しない場合(ステップS21でNO)、処理は次のステップには進まない。通信部26が応答電文を受信した場合(ステップS21でYES)、繰出制御部22は、応答電文に含まれる出金金額に応じて、第1のスタッカー11、第2のスタッカー12の最上部の紙幣から順番に紙幣を繰出す制御を行う(ステップS22)。
例えば、応答電文に含まれる出金金額が「3万8千円」である場合、繰出制御部22は、第1のスタッカー11の最上部から3枚の万券を繰出し、第2のスタッカー12の最上部から8枚の千券を繰出す制御を行う。
例えば、応答電文に含まれる出金金額が「5万円」である場合、繰出制御部22は、第1のスタッカー11の最上部から5枚の万券を繰出す制御を行うが、第2のスタッカー12から千券を繰出す制御は行わない。
例えば、応答電文に含まれる出金金額が「6千円」である場合、繰出制御部22は第2のスタッカー12から6枚の千券を繰出す制御を行うが、第1のスタッカー11から万券を繰出す制御は行わない。
繰出制御部22は、第1のスタッカー11と第2のスタッカー12とのうち一方または両方から繰出された紙幣を鑑別部16が鑑別する箇所を通過するように搬送する。このとき、鑑別部16は、繰出された紙幣を順番に鑑別する(ステップS23)。
鑑別部16は、鑑別した紙幣が正常であるか否かを鑑別する(ステップS24)。紙幣が正常である場合(ステップS24でYES)、情報(収納順情報および比較ポインタ)の更新が行われる(ステップS24−1)。
特定部25は、ステップS22で繰出した紙幣のスタッカーを認識している。ステップS24で繰出された紙幣が正常と鑑別されると、特定部25は、繰出し元のスタッカーの収納順情報を更新し、比較ポインタをずらす。
自動機制御部21は、出金要求紙幣の繰出しが完了したか否かを判定する(ステップS24−2)。繰出しが完了していないと判定された場合(ステップS24−2でNO)、処理は、ステップS22に戻り、再び紙幣の繰出しが行われる。
例えば、第1のスタッカー11から6枚の万券が繰出されると、特定部25は、第1のスタッカー11から紙幣が繰出されたことを認識する。繰出された6枚の万券が正常であると鑑別された場合、特定部25は、収納順情報を更新し、比較ポインタを6つ下げる。
自動機制御部21が、繰出しの完了を判定した場合(ステップS24−2でYES)、繰出された紙幣は入出金部19に収納される(ステップS25)。そして、自動機制御部21は、入出金部19の紙幣シャッタをオープンにして、利用者は、入出金部19に収納されている紙幣を取り出す。
自動機制御部21は、紙幣投入出口5から紙幣が取り出されたか否かを判定する(ステップS25−1)。紙幣が入出金部19から取り出されていない場合(ステップS25−1でNO)、処理は次のステップに進まない。この場合、入出金部19に紙幣が収納されている状態である。従って、自動機制御部21は、所定時間紙幣が取り出されない場合、スピーカ等を制御して、警告音を鳴動させてもよい。
紙幣が取り出されると、自動機制御部21は、カード挿入部3からカードを返却する処理を行う(ステップS26)。自動機制御部21は、カード挿入部3からカードが抜き取られたか否かを判定する(ステップS27)。
カードがカード挿入部3から抜き取られていない場合(ステップS27でNO)、処理は次のステップに進まない。この場合、カード挿入部3からカードが排出されている状態である。従って、自動機制御部21は、所定時間カードが抜き取られない場合、スピーカ等を制御して、警告音を鳴動させてもよい。
カードがカード挿入部3から抜き取られた場合(ステップS27でYES)、出金取引は正常に終了する。そして、処理は1番からステップS1に戻る。以上は、正常に出金取引が行われた場合のフローである。
上述したように、ステップS24において、鑑別部16は全ての紙幣が正常であるか否かの鑑別を行う。そして、鑑別部16が多重繰出しや不良券等の紙幣の異常を鑑別した場合(ステップS24でNO)、処理は3番に進む。
3番以降の処理について、図8の例を参照して説明する。鑑別部16が異常と鑑別した紙幣はリジェクトボックス15に搬送され、収納される(ステップS28)。繰出制御部22は、異常と鑑別した紙幣を繰出したスタッカー(第1のスタッカー11、または第2のスタッカー12)から所定枚数の紙幣を繰出す(ステップS29)。
このときに繰出される紙幣の所定枚数は、1回の金融取引で、第1のスタッカー11、第2のスタッカー12から出金できる最大枚数以上に設定してもよい。ステップS29で繰出しを行う紙幣の所定枚数は特に限定されない。
鑑別部16は、第1のスタッカー11、または第2のスタッカー12から繰出された所定枚数の紙幣を順番に鑑別する(ステップS30)。鑑別情報取得部23は、鑑別部16から鑑別情報を取得し、鑑別情報と繰出順とを対応付けた情報(以下、繰出順情報と称する)をスタッカーごとに記憶部24に記憶する(ステップS31)。
鑑別情報取得部23は、第1のスタッカー11、または第2のスタッカー12から繰出された紙幣の繰出順情報を記憶部24に記憶する。つまり、鑑別情報取得部23は、異常と鑑別した紙幣を繰出したスタッカーの繰出順情報を記憶部24に記憶する。記憶部24には、スタッカーごとに繰出順情報が記憶される。
図9に、繰出順情報の一例を示す。なお、図9の繰出順情報は、万券(つまり、第1のスタッカー11)の繰出順情報であるとするが、千券(つまり、第2のスタッカー12)の繰出順情報であってもよい。図9の繰出順情報は、所定枚数として6枚の万券を繰出した場合の例を示している。この繰出順情報は、鑑別情報の表裏情報が繰出順と対応付けられている。
特定部25は、不図示の枚数カウンタを有する。枚数カウンタは、カウンタの一例である。特定部25は、枚数カウンタをゼロにすることで、初期化する(ステップS32)。特定部25は、記憶部24に記憶されている収納順情報と繰出順情報とを比較する(ステップS33)。
図9の収納順情報は、第1のスタッカー11から繰出された万券の収納順情報であるとするが、千券の収納順情報であってもよい。この収納順情報は、図5の例で示したものである。比較ポインタは、現在の、収納順情報の値が入力されているうち最上部を指している。
特定部25は、収納順情報(第1の情報)と繰出順情報(第2の情報)との比較を行う。特定部25は、比較ポインタが指す収納順から収納順情報と繰出順情報との比較を行う。つまり、特定部25は、収納順情報の一部と繰出順情報との比較を行う。
従って、特定部25は、収納順情報の収納順が500番から495番までの表裏情報と繰出順情報の繰出順が1番から6番までの表裏情報とを比較する。特定部25は、比較した表裏情報が全て一致するか否かを鑑別する(ステップS34)。
図9の場合、例えば、収納順情報の収納順が500番の表裏情報は裏であり、繰出順情報の繰出順が1番の表裏情報は表である。よって、両者は一致しない(ステップS34でNO)。また、他の収納順においても、表裏情報が一致しない場合がある。この場合、特定部25は、枚数カウンタをインクリメントする(ステップS35)。
特定部25は、比較ポインタを1つずつずらす(ステップS36)。そして、処理はステップS33に戻る。実施形態では、特定部25は、比較ポインタを1つ下げる。比較ポインタを1つ下げた例を図10に示す。図10の例では、比較ポインタは収納順情報のうち収納順が499番を指している。また、ステップS35で枚数カウンタはインクリメントされたので、枚数カウンタの値は「1」になっている。
特定部25は、収納順情報の収納順が499番から494番までの表裏情報と繰出順情報の繰出順が1番から6番までの表裏情報とを比較する。特定部25は、比較した表裏情報が全て一致するか否かを鑑別する。
図10の例の場合、例えば、収納順情報が499番の表裏情報は裏であり、繰出順情報が1番の表裏情報は表である。よって、両者は一致しない。また、他の表裏情報も一致しない。従って、特定部25は、枚数カウンタをインクリメントし、比較ポインタを1つ下げる。
比較ポインタを1つ下げた例を図11に示す。図11の例では、比較ポインタは収納順情報のうち498番を指している。また、枚数カウンタはインクリメントされため、枚数カウンタの値は「2」になっている。
特定部25は、収納順情報の収納順が498番から493番までの表裏情報と繰出順情報の繰出順が1番から6番までの表裏情報とを比較する。図11の例に示すように、両者は全て一致している。
特定部25は、収納順情報(第1の情報)と繰出順情報(第2の情報)とが全て一致しているため(ステップS34でYES)、リジェクト枚数を枚数カウンタとする(ステップS37)。図9乃至図11の例の場合、枚数カウンタの値は「2」になる。よって、特定部25は、リジェクトボックス15に収納されているリジェクト金種は万券で、リジェクト枚数を2枚として特定する。
そして、特定部25は、記憶部24に記憶されている収納順情報のうち、異常と鑑別した紙幣を繰出したスタッカーに対応する収納順情報と、比較ポインタを更新する(ステップS38)。
例えば、図11の場合、リジェクトボックス15に収納された2枚の紙幣に、ステップS29において繰出した6枚の紙幣を加えた8枚の紙幣に基づいて、特定部25は、収納順が500番〜493番の表裏情報を削除し、ステップS29において繰出した6枚の紙幣に基づいて、比較ポインタを6つ下げる。
これにより、記憶部24に記憶されている収納順情報および比較ポインタは、最新の情報となる。その後、処理は4番からステップS22に戻り、出金金額に満たない紙幣の繰出しを継続する。
収納順情報は、第1のスタッカー11に収納されている紙幣に関する情報であり、出金時に、多重繰出しや不良券等がなければ、比較ポインタが収納順情報の収納順の最上部(500番)を指しているときに、収納順情報と繰出順情報とが一致する。
しかし、多重繰出しや不良券等の紙幣の異常が発生すると、収納順情報と繰出順情報とが一致しなくなる。そこで、特定部25は、収納順情報と繰出順情報とが一致するまで、比較箇所を1つずつずらして枚数カウンタをインクリメントすることで、正常でない紙幣の枚数を特定できる。
つまり、特定部25は、収納順情報の一部(繰出順情報の数の分の収納順情報)と繰出順情報との比較箇所をずらしていき、収納順情報の一部と繰出順情報とが完全に一致したか否かを判定する。特定部25は、完全に一致したときの収納順情報の収納順に基づいて、正常でない紙幣の枚数を金種ごとに特定する。
従って、リジェクトボックス15に特別な機構を設けることなく、制御部20により、リジェクトボックス15に収納されている紙幣の金種ごとの枚数を自動的に特定することができる。これにより、人手によりリジェクトボックス15に収納されている紙幣の金種ごとの枚数を特定しなくてもよいことから、リジェクトボックス15に紙幣が収納されていても、遠隔操作により精査を行うリモート精査が可能になる。
<入金取引の一例>
次に、図12乃至図14の例を参照して、入金取引について説明する。図12の例に示すように、タッチパネルディスプレイ6は、取引種別選択画面を表示する(ステップS41)。
自動機制御部21は、何れかの取引キーがタッチされたか否かを判定する(ステップS42)。取引キーがタッチされない場合(ステップS42でNO)、処理は次のステップには進まない。
取引キーがタッチされた場合(ステップS42でYES)、自動機制御部21は、タッチされた取引種別のキーを判定する(ステップS43)。取引種別が入金でない場合(ステップS43でNO)、他の取引種別の処理が行われる(ステップS44)。そして、処理は、5番からステップS41の取引種別選択画面表示に戻る。
一方、タッチされた取引種別が入金である場合(ステップS43でYES)、自動機制御部21は、カード挿入部3からカードが挿入されているか否かを判定する(ステップS45)。カードが挿入されていない場合(ステップS45でNO)、処理は次のステップには進まない。
カードが挿入されている場合(ステップS45でYES)、自動機制御部21は、入出金部19に紙幣を収納するための紙幣シャッタをオープンにする(ステップS46)。自動機制御部21は、入出金部19に紙幣が挿入されたか否かを判定する(ステップS47)。
入出金部19に紙幣が挿入されていない場合(ステップS47でNO)、処理は次のステップには進まない。入出金部19に紙幣が挿入された場合(ステップS47でYES)、自動機制御部21は、紙幣シャッタをクローズする(ステップS48)。
紙幣シャッタがクローズされると、自動機制御部21は、入出金部19が空か否かを判定する(ステップS49)。入出金部19が空でない場合(ステップS49でNO)、処理は6番に進む。6番以降の処理を図13の例に示す。
繰出制御部22は、入出金部19に挿入された紙幣を順番に繰出すように制御する(ステップS50)。繰出された紙幣は、鑑別部16が鑑別する箇所を通過する。鑑別部16は、紙幣の鑑別を順番に行う(ステップS51)。
上述したように、鑑別部16は、紙幣の表裏情報、向き情報および金種情報を鑑別する。鑑別情報取得部23は、鑑別情報を鑑別部16から取得する。そして、鑑別情報取得部23は、鑑別情報と順番情報とを関連付けた収納順情報をスタッカーごとに記憶部24に記憶する(ステップS52)。
記憶部24に収納順情報が記憶されている場合、鑑別情報取得部23は、既に記憶部24に記憶されている収納順情報に入金時の収納順情報を追加して記憶してもよい。鑑別情報取得部23は、鑑別部16が鑑別した紙幣の金種情報に対応するスタッカーの収納順情報の最上部に鑑別情報を追加して記憶してもよい。
鑑別部16は、入金された紙幣の金種情報を鑑別している。よって、鑑別部16が鑑別した鑑別情報に基づいて、万券は第1のスタッカー11に収納され、千券は第2のスタッカー12に収納される(ステップS53)。
ステップS53の処理が終了した後、処理は7番からステップS49に戻る。入出金部19が空になるまで、ステップS50〜S53の処理が行われる。入出金部19に挿入された紙幣が空になったとき(ステップS49でYES)、処理は8番に進む。
図14は、8番からの処理の一例を示す。自動機制御部21は、入金した金額を確認する画面をタッチパネルディスプレイ6に表示する(ステップS54)。自動機制御部21は、確認キーがタッチされたか否かを判定する(ステップS55)。
確認キーがタッチされなければ(ステップS55でNO)、処理は次のステップに進まない。一方、確認キーがタッチされると(ステップS55でYES)、自動機制御部21は、入金取引電文を生成する(ステップS56)。
入金取引電文は、カードに記憶されている口座情報と入力された暗証番号や入金された金額等の情報を含む。自動機制御部21は、通信部26を制御する。通信部26は、ネットワーク30を介して、入金取引電文をホストコンピュータ31に送信する(ステップS57)。
ホストコンピュータ31は、カードに記憶されている口座情報に対応する口座元帳等を参照して入金取引を許可する応答電文を自動取引装置1に送信する。なお、入金取引が許可されない場合、応答電文には入金不可の情報が含まれる。
通信部26が応答電文を受信しない場合(ステップS58でNO)、処理は次のステップには進まない。通信部26が応答電文を受信した場合(ステップS58でYES)、
自動機制御部21は、カード挿入部3からカードを返却する処理を行う(ステップS59)。自動機制御部21は、カード挿入部3からカードが抜き取られたか否かを判定する(ステップS60)。
カードがカード挿入部3から抜き取られていない場合(ステップS60でNO)、処理は次のステップに進まない。この場合、カード挿入部3からカードが排出されている状態である。従って、自動機制御部21は、所定時間カードが抜き取られない場合、スピーカ等を制御して、警告音を鳴動させてもよい。
カードがカード挿入部3から抜き取られた場合(ステップS60でYES)、入金取引は正常に終了する。そして、処理は5番から図12のステップS41に戻る。以上により、入金取引が終了する。
図15は、入金取引がされた後の収納順情報の一例を示す。図5の例(補充処理がされた後の収納順情報の例)では、収納順情報は、収納順が500番までの表裏情報を含んでいた。この収納順情報は既に記憶部24に記憶されている。
図15の例では、既に記憶部24に記憶されている収納順情報に対して、入金された2枚の収納順情報が追加されている。入金された紙幣は、第1のスタッカー11(第2のスタッカー12も同様)に順番に収納される。
入金された2枚の紙幣のうち、鑑別部16が最初に鑑別した紙幣の表裏情報が表であり、次に鑑別した紙幣の表裏情報が裏であるとする。鑑別情報取得部23は、入金された紙幣についての収納順情報を501番と502番とに順番に追加する。また、鑑別情報取得部23は、比較ポインタを入金された2枚の紙幣に基づいて、収納順が500番から2つ上げて502番に更新する。
これにより、第1のスタッカー11に収納されている紙幣の表裏情報が認識される。比較ポインタは、収納順情報のうち、表裏情報の値が記憶されている最上部を指すため、図15の例では、比較ポインタは収納順が502番を指している。また、記憶部24が記憶する収納順情報は、入金取引を反映した最新の情報となる。
<変形例>
次に、変形例について説明する。図9乃至図11に示した例では、収納順情報の表裏情報と繰出順情報の表裏情報とが一致するか否かに基づいて、リジェクト枚数をカウントしていた。
表裏情報は、表または裏の二値であるため、表裏情報の比較数が少ないと、表裏情報に偶然の一致が生じる可能性がある。そのため、表裏情報の1種類に基づいた比較の場合、カウントしたリジェクト枚数に誤りを生じる可能性がある。
従って、上述した実施形態の場合、表裏情報の比較数を多くすることが好ましい。ただし、比較数が多くなると、その分だけ、処理工程が増えることになる。このため、処理速度の低下等が生じる。
そこで、変形例では、図16の例に示すように、特定部25は、表裏情報と向き情報との両者が一致するか否かに基づいて、リジェクト枚数を特定する。図16は、比較ポインタが収納順「500番」を指している例を示している。
図16の例では、比較の対象となる繰出順情報の繰出順は3つである。よって、比較の対象となる繰出順の数は、図9乃至図11に示した例と比較して、半分になっている。このため、図8のステップS29で繰出す紙幣の所定枚数は、上述した実施形態の半分でよい。これにより、紙幣の繰り出し処理も軽減される。
図16の例では、比較ポインタが指す収納順が500番の表裏情報および向き情報と繰出順情報の繰出順が1番の表裏情報および向き情報とは一致しない。よって、収納順情報と繰出順情報とが全て一致しない。このため、特定部25は、枚数カウンタをインクリメントし、比較ポインタを1つ下げる。
図17の例では、比較ポインタが指す収納順が499番の向き情報は一致するが、表裏情報は一致しない。よって、収納順情報と繰出順情報とが全て一致しない。このため、特定部25は、枚数カウンタをインクリメントし、比較ポインタを1つ下げる。
図18の例では、繰出順が1番〜3番の全てについて、収納順情報の498番〜496番と表裏情報および向き情報が一致する。従って、特定部25は、収納順情報(第1の情報)と繰出順情報(第2の情報)とが一致するため、リジェクト枚数を枚数カウンタの値とする。
図18の場合、リジェクト枚数は2枚に特定される。これにより、リジェクトボックス15に収納されているリジェクト枚数は2枚であることが特定される。従って、リジェクトボックス15に特別な機構を設けることなく、リジェクトボックス15に収納されている紙幣の枚数を自動的に特定することができる。
また、変形例の場合、収納順情報と繰出順情報との比較の対象を、表裏情報と向き情報との組み合わせにしたため、紙幣を繰り出す所定枚数を少なくすることができる。これにより、繰出順の数が少なくても、高い精度でリジェクト枚数を特定することができる。
<自動取引装置のハードウェア構成の一例>
次に、図19を参照して、自動取引装置1のハードウェア構成の一例を説明する。図19の例に示すように、バス100に対して、プロセッサ111とRAM(Random Access Memory)112とROM(Read Only Memory)113と補助記憶装置114と媒体接続部115と通信インタフェース116と入出力インタフェース117とが接続されている。
プロセッサ111はCPU(Central Processing Unit)のような任意の処理回路である。プロセッサ111はRAM112に展開されたプログラムを実行する。実行されるプログラムとしては、実施形態の処理を行うプログラムを適用することができる。ROM113はRAM112に展開されるプログラムを記憶する不揮発性の記憶装置である。
補助記憶装置114は、種々の情報を記憶する記憶装置であり、例えばハードディスクドライブや半導体メモリ等を補助記憶装置114に適用することができる。媒体接続部115は、可搬型記録媒体118と接続可能に設けられている。入出力インタフェース117は、タッチパネルディスプレイ6等とデータの入出力を行うインタフェースである。
可搬型記録媒体118としては、可搬型のメモリや光学式ディスク(例えば、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等)を適用することができる。この可搬型記録媒体118に実施形態の処理を行うプログラムが記録されていてもよい。通信インタフェース116は、外部との通信を行うときのインタフェースである。
図3で示した自動機制御部21、繰出制御部22、鑑別情報取得部23、特定部25の機能は、プロセッサ111により実現されてもよい。記憶部24は、RAM112や補助記憶装置114等により実現されてもよい。通信部27は通信インタフェース116により実現されてもよい。
RAM112、ROM113および補助記憶装置114は、何れもコンピュータ読み取り可能な有形の記憶媒体の一例である。これらの有形な記憶媒体は、信号搬送波のような一時的な媒体ではない。
<その他>
開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。