<実施形態1>
1.表面実装機の全体構成
表面実装機1は、図1に示すように、基台11と、プリント基板Uを搬送する搬送コンベア20と、電子部品Bを吸着保持する吸着部74と、吸着部74を基台11上にて移動させる駆動部30とを備えている。尚、以下の説明において、基台11の長手方向(図1の左右方向であって、プリント基板Uの搬送方向)をX軸方向と呼ぶものとし、基台11の奥行方向(図1の上下方向であって、X軸方向に直交する方向)をY軸方向、図3の上下方向をZ軸方向とする。
搬送コンベア20は、基台11の中央に配置されている。搬送コンベア20はX軸方向に循環駆動する一対の搬送ベルト21を備えており、搬送ベルト21上のプリント基板Uを、ベルトとの摩擦によりX軸方向に搬送する。
本実施形態では、図1に示す左側が入り口となっており、プリント基板Uは、図1に示す左側より搬送コンベア20を通じて機内へと搬入される。搬入されたプリント基板Uは、搬送コンベア20により基台中央の作業位置まで運ばれ、そこで停止される。
一方、基台11上には、作業位置の周囲を囲むようにして、部品供給部13が4箇所設けられている。これら各部品供給部13には、電子部品Bを供給するフィーダ15が横並び状に多数設置されている。また、基台11上には、廃棄ボックス18が2つ配置されている。廃棄ボックス18は、吸着不良の電子部品Bの廃棄用であり、本例では、搬送コンベア20の両外側であって、X軸方向に並ぶ2つの部品供給部13の間に配置されている。
そして作業位置では、上記フィーダ15を通じて供給された電子部品Bを、プリント基板U上に実装する実装処理が、ヘッドユニット60に搭載された吸着部74により行われるとともに、その後、実装処理を終えたプリント基板Uはコンベア20を通じて図1における右方向に運ばれ、機外に搬出される構成になっている。
駆動部30は、大まかには一対の支持脚41、ヘッド支持体51、Y軸ボールネジ45、Y軸モータ47、X軸ボールネジ55、X軸モータ57、ヘッドユニット60、複数本(本例では10本)のヘッド軸73、Z軸モータ75、R軸モータ78から構成される。
具体的に説明してゆくと、図1に示すように基台11上には一対の支持脚41が設置されている。両支持脚41は作業位置の両側に位置しており、共にY軸方向にまっすぐに延びている。
両支持脚41にはY軸方向に延びるガイドレール42が支持脚上面に設置されると共に、これら左右のガイドレール42に長手方向の両端部を嵌合させつつヘット支持体51が取り付けられている。
また、右側の支持脚41にはY軸方向に延びるY軸ボールねじ45が装着され、更にY軸ボールねじ45にはボールナット(不図示)が螺合されている。そして、Y軸ボールねじ45にはY軸モータ47が付設されている。
Y軸モータ47を通電操作すると、Y軸ボールねじ45に沿ってボールナットが進退する結果、ボールナットに固定されたヘッド支持体51、ひいては次述するヘッドユニット60がガイドレール42に沿ってY軸方向に移動する(Y軸サーボ機構)。尚、Y軸ボールねじ45、ボールナット、Y軸モータ47が本発明の「直線移動部(Y軸方向の直線移動部)」に相当する。
ヘッド支持体51は、X軸方向に長い形状である。ヘッド支持体51には、ヘッドユニット60が、X軸方向に沿って移動自在に取り付けられている。このヘッド支持体51には、X軸方向に延びるX軸ボールねじ55が内蔵されており、更にX軸ボールねじ55にはボールナット(図外)が螺合されている。
そして、X軸ボールねじ55にはX軸モータ57が付設されており、同モータ57を通電操作すると、X軸ボールねじ55に沿ってボールナットが進退する結果、ボールナットに固定されたヘッドユニット60がヘッド支持体51に沿ってX軸方向に移動する(X軸サーボ機構)。尚、X軸ボールねじ55、ボールナット、X軸モータ57が本発明の「直線移動部(X軸方向の直線移動部)」に相当する。
従って、X軸モータ57、Y軸モータ47を複合的に制御することで、基台11上において、ヘッドユニット60及びヘッドユニット60に搭載された複数本(本例では10本)の吸着部74を平面方向(XY軸方向)に移動操作出来る構成となっている。
ヘッドユニット60は、図3、図4に示すように、支持フレーム61と、支持フレーム61に対して固定されたユニット本体70とを備える。支持フレーム61は、ヘッド支持体51に対してX軸方向に移動自在に取り付けられている。ユニット本体70は、中間フレーム71と、中間フレーム71に対して上下移動可能に取り付けられた複数本(本例では10本)のヘッド軸73と、Z軸モータ75と、R軸モータ78とを備える。
各ヘッド軸73は、図3に示すように、中間フレーム71に対してX軸方向に一列状に配列されている。各ヘッド軸73は、上下方向に長い中空の軸状であり、下部には吸着部74が設けられている。各ヘッド軸73には、図外の負圧手段から負圧が供給される構成になっている。そのため、各ヘッド軸73の先端に設けられた吸着部74に対して、負圧による吸引力が生じるようになっている。
Z軸モータ75は、各ヘッド軸73の上部側に設けられている。Z軸モータ75は、リニアモータであり、各ヘッド軸73を個別に昇降させる構造になっている。尚、Z軸モータ75が、本発明の「直線移動部(Z軸方向の直線移動部)」に相当する。
また、ユニット本体70の下部には、2台のR軸モータ78が搭載されている。そして、R軸モータ78のモータ軸とヘッド軸73のプーリとの間にはベルト79が掛けられている。そのため、R軸モータ78を駆動することで、モータの動力がベルト79を介して伝達され、ヘッド軸73を軸回りに回転させることが出来る。尚、本例では、1本のベルト79を5本のヘッド軸73に掛け渡しており、図3の左側のR軸モータ78を駆動すると、左側5本のヘッド軸73が同時回転し、図3の右側のR軸モータ78を駆動すると、右側5本のヘッド軸73が同時回転する構成になっている。尚、ベルト79、R軸モータ78が本発明の「回転移動部」に相当する。
このような構成とすることで、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ75を所定のタイミングで作動させることにより、ヘッドユニット60に搭載された各吸着部74を基台11上において、3軸方向(X軸、Y軸、Z軸)方向に移動させることが可能となる。そのため、フィーダ15を通じて供給される電子部品Bを吸着部74により取り出して、プリント基板U上に実装する処理を実行することが出来る。また、R軸モータ78を所定のタイミングで作動させることにより、ヘッド軸73を回転させ、吸着部74によりとり出された電子部品Bの姿勢(角度)を調整することが出来る。
また、ヘッドユニット60には、図4に示すように、スキャンユニット80が着脱可能に取り付けられている。スキャンユニット80は、図5に示すように、スキャンカメラ81と、スキャンカメラ81をX軸方向にスライドさせるスライド装置90と、ハーネスユニット100とを備える。
スキャンカメラ81はY軸方向に長い形状をしている。スキャンカメラ81は、前部側に撮影部82、中間にフレーム84、後部側にカメラ本体85を配置している。前部側の撮影部82は、被写体(本例では、電子部品B)が通過するU字溝83を有している。U字溝83の底面には、入光窓が形成されており、被写体からの光は、入光窓から取り込まれた後、フレーム84内を後方に進んでカメラ本体85に入光する構造になっている。
スキャンユニット80をヘッドユニット60に組み付けた状態では、図6に示すように、スキャンカメラ81の撮影部82が、ヘッドユニット60の下方に位置し、撮影部82のU字溝83の中心が、吸着部74の中心と一致する。そのため、スライド装置90を駆動して、スキャンユニット80をヘッドユニット60に対してX軸方向に相対移動させると、吸着部74に吸着保持された電子部品Bが、U字溝83の内部を通過するため、吸着保持された電子部品Bをスキャンカメラ81により撮影することが出来る。
また、ヘッドユニット60の左右両側には、基板認識カメラ170が取り付けられている。基板認識カメラ170は、ヘッドユニット60に対して撮像面を下に向けた状態で固定されており、ヘッドユニット60とともに一体的に移動する構成とされている。基板認識カメラ170は、作業位置上にあるプリント基板Uを画像認識するために設けられている。
2.表面実装機1の電気的構成
表面実装機1は、コントローラ200を備えている。コントローラ200は、図7に示すように制御部210、記憶部220を備えている。記憶部220には、電子部品Bを実装する実装プログラムや、後述する速度制御パターンPに関するデータなど、電子部品Bの実装処理や、吸着不良品の廃棄処理に必要となる各データが記憶されている。
コントローラ200には、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ75、R軸モータ78が接続されている。また、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ75、R軸モータ78の回転状態(回転位置、回転角度、回転速度、回転数)を検出するエンコーダ等の検出器(図略)が接続されている。
制御部210は、記憶部220に記憶された実装プログラムや各検出器の出力に基づいて、各軸モータ57、47、75、78を制御することにより、プリント基板Uに対して電子部品Bを実装する実装処理を実行する。また、後述するように、吸着不良を起こした電子部品(以下、吸着不良品とも言う)Bの廃棄処理を行う。
また、コントローラ200には、スキャンカメラ81、基板認識カメラ170がそれぞれ接続されており、スキャンカメラ81、基板認識カメラ170から取り込まれる画像に基づいて、吸着部74に吸着保持された電子部品Bを画像認識する処理や、プリント基板上に付された位置マークを認識する処理を実行する。また、コントローラ200には、吸着部74の圧力を検出する圧力センサ180が接続されている。
3.吸着不良の検出と電子部品Bの落下抑制
吸着部74が電子部品Bを吸着する時に、吸着不良が起きる場合がある。吸着不良としては、例えば、吸着部74に対して位置(X軸方向やY軸方向の位置)がずれた状態で電子部品Bが吸着された場合や、Z軸方向に傾いた状態で電子部品Bが吸着された場合等がある。
一方、基台11上で吸着部74をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動する場合の加速度や減速度は、電子部品Bの大きさや吸着部74の吸引力に基づいて、決定されており、電子部品Bが正常に吸着されている場合、移動に伴って、電子部品Bが落下しないように設定されている。しかし、吸着不良が発生した場合、正常時と同じように、基台11上で吸着部74を移動操作すると、加速時や減速時に、電子部品Bが吸着部74から落下する場合がある。こうした電子部品の落下は、加速時や減速時に、電子部品に対して加速度や減速度に比例した大きさの慣性力が加わるためと考えられる。
そのため、表面実装機1は、吸着不良を検出した場合、吸着部74の速度特性(加速度、減速度、目標速度)を変更して、電子部品Bに作用する慣性力を小さくすることにより、電子部品Bが吸着部74から落下することを抑制する。
具体的に説明すると、表面実装機1は、電子部品Bの吸着状態に応じて、吸着部74の速度制御パターンPを、複数パターン設定している。例えば、図8に示すように、電子部品Bの吸着状態は「正常」、「吸着不良(レベル小)」、「吸着不良(レベル大)」の3つの状態が設定されている。そして、吸着部74のX軸方向の速度制御パターンは、これら3つの状態に応じて、3つの速度制御パターン「Px0」〜「Px2」が設けられている。
図9に示すように、吸着不良時の速度制御パターン「Px1」、「Px2」は、加速域、減速域のグラフの傾きが、正常時の速度制御パターン「Px0」に比べて緩やかに設定されており、加速度、減速度が、正常時の速度制御パターン「Px0」に比べて小さな値に設定されている。そのため、吸着不良が発生している場合、X軸方向への加速時や減速時に、電子部品Bに作用する慣性力が正常時に比べて小さくなり、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
また、吸着不良時の速度制御パターン「Px1」、「Px2」の目標速度「Vx1」、「Vx2」は、正常時の速度制御パターン「Px0」の目標速度「Vx0」に比べて小さな値に設定されている。そのため、X軸方向に目標速度「Vx1」、「Vx2」で定速移動中も、空気抵抗が小さくなり、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
尚、吸着不良発生時の速度制御パターンとして「Px1」、「Px2」の2パターンを設けている理由は、電子部品Bの吸着不良レベルを判定し、その結果に応じて、速度制御パターンを選択するためである。
すなわち、電子部品Bの吸着不良レベルが低い場合は、速度制御パターン「Px1」を選択し、電子部品Bの吸着不良レベルが高い場合は、速度制御パターン「Px2」を選択する。速度制御パターン「Px2」は、速度制御パターン「Px1」に比べて、加速度、減速度が小さな値に設定されている。そのため、吸着不良レベルが高く電子部品Bが特に落下し易い場合でも、電子部品Bの落下を抑制することが可能である。
また、吸着部74の速度特性は、図8に示すように、X軸方向に加えて、Y軸方向、Z軸方向についても、電子部品Bの吸着状態に応じて、3つの速度制御パターン「Py0〜Py2」、「Pz0〜Pz2」が設定されている。
吸着不良時の速度制御パターン「Py1」、「Py2」は、図9に示すX軸方向の速度制御パターンと同様に、加速域、減速域のグラフの傾きが、正常時の速度制御パターン「Py0」に比べて緩やかに設定されており、加速度、減速度が、正常時の速度制御パターン「Py0」に比べて小さな値に設定されている。そのため、吸着不良が発生している場合、Y軸方向への加速時や減速時に、電子部品Bに作用する慣性力が正常時に比べて小さくなり、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
また、吸着不良時の速度制御パターン「Py1」、「Py2」の目標速度「Vy1」、「Vy2」は、図9に示すX軸方向の速度制御パターンと同様に、正常時の速度制御パターン「Py0」の目標速度「Vy0」に比べて小さな値に設定されている。そのため、Y軸方向に目標速度「Vy1」、「Vy2」で定速移動中も、空気抵抗が小さくなり、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
吸着不良時の速度制御パターン「Pz1」、「Pz2」は、図9に示すX軸方向の速度制御パターンと同様に、加速域、減速域のグラフの傾きが、正常時の速度制御パターン「Pz0」に比べて緩やかに設定されており、加速度、減速度が、正常時の速度制御パターン「Pz0」に比べて小さな値に設定されている。そのため、吸着不良が発生している場合、Z軸方向への加速時や減速時に、電子部品Bに作用する慣性力が正常時に比べて小さくなり、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
また、吸着不良時の速度制御パターン「Pz1」、「Pz2」の目標速度「Vz1」、「Vz2」は、図9に示すX軸方向の速度制御パターンと同様に、正常時の速度制御パターン「Pz0」の目標速度「Vz0」に比べて小さな値に設定されている。
以上のことから、X軸方向だけでなく、Y軸方向やZ軸方向についても、加速時や減速時に、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
また、表面実装機1には、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に加えて、回転方向(R軸モータ78による回転方向)ついても、電子部品Bの吸着状態に応じて、複数の角速度制御パターン「Pr」が設定されている。
吸着不良時の角速度制御パターン「Pr1」、「Pr2」は、図9に示すX軸方向の速度制御パターンと同様に、角加速域、角減速域のグラフの傾きが、正常時の角速度制御パターン「Pr0」に比べて緩やかに設定されており、角加速度、角減速度が、正常時の角速度制御パターン「Pr0」に比べて小さな値に設定されている。そのため、吸着不良が発生している場合、回転方向への角加速時や角減速時に、電子部品Bに作用する慣性力が正常時に比べて小さくなり、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
また、角速度制御パターン「Pr1」、「Pr2」の目標角速度「Vr1」、「Vr2」は、図9に示すX軸方向の速度制御パターンと同様に、角速度制御パターン「Pr0」の目標角速度「Vr0」に比べて小さな値に設定されているので、目標角速度「Vr1」、「Vr2」で定速回転中も、遠心力が小さくなり、吸着部74から吸着不良の電子部品Bが落下し難くなる。
尚、記憶部220には、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、回転方向への移動に関する速度制御パターンのデータ(図8のデータテーブル)が予め記憶されており、制御部210は、記憶部220にアクセスすることで、これらのデータを読み出すことが出来る。
4.コントローラ200により実行される電子部品Bの実装シーケンス
以下、コントローラ200の制御部210により実行される、電子部品Bの実装シーケンスを説明する。尚、ここでは、上位装置から基台10上にプリント基板Uが既に搬入されているものとして説明を行う。
電子部品Bの実装シーケンスがスタートすると、制御部210は、記憶部220にアクセスして、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、回転方向について、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pz0、Pr0(総称してP0)」のデータを読み出す処理を行う(S10)。
その後、制御部210は、X軸モータ57、Y軸モータ47を駆動して、ヘッドユニット60をフィーダ上方に移動させる処理(S20)を行う。そして、ヘッドユニット60の移動中(吸着部74の移動中)、制御部210は、吸着部74のX軸方向、Y軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、正常時の速度制御パターン「Px0」、「Py0」に従うように、X軸モータ57、Y軸モータ47を制御する。
ヘッドユニット60がフィーダ上方まで移動すると、次に、制御部210は、各Z軸モータ75を駆動して、ヘッドユニット60に搭載された各吸着部74を所定高さに下降させる処理を行う。これにて、各吸着部74により電子部品Bを吸着することが出来る(S30)。そして、吸着部74の下降中、制御部210は、吸着部74のZ軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、正常時の速度制御パターン「Pz0」に従うように、Z軸モータ75を制御する。
そして、ヘッドユニット60に搭載された10本の吸着部74が電子部品Bを吸着すると、次に、制御部210は、実装処理を行うため、X軸モータ57、Y軸モータ47を駆動して、ヘッドユニット60をプリント基板Uの上方に向って移動させる(S40)。そして、ヘッドユニット60の移動中(吸着部74の移動中)、制御部210は、吸着部74のX軸方向、Y軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、正常時の速度制御パターン「Px0」、「Py0」に従うように、X軸モータ57、Y軸モータ47を制御する。
また、制御部210は、ヘッドユニット60の移動と並行して、各吸着部74に吸着保持された電子部品Bを撮影する処理を実行する。具体的には、制御部210はスライド装置90を制御して、スキャンカメラ81を図3に示す初期位置からX軸方向(図中の右方向)に移動させる。
そして、スキャンカメラ81が各吸着部74の真下に到達するタイミングに合わせて撮影を行う。これにより、スキャンカメラ81により、各吸着部74に保持された電子部品Bの下面画像を撮影することが出来る。そして、スキャンカメラ81により撮影された各電子部品Bの画像は、コントローラ200に転送され、記憶部220に保存される。
その後、制御部210は、各吸着部74に吸着された電子部品Bについて吸着不良の有無を判断する処理を行う(S50)。具体的に説明すると、制御部210は、スキャンカメラ81により撮影された電子部品Bの画像から、吸着部74の中心O1と電子部品Bの中心O2のずれ量Kを検出する。そして、検出した中心O1、O2のずれ量Kを第1閾値と比較し、ずれ量Kが第1閾値より小さい場合には「正常」と判定し、ずれ量Kが第1閾値より大きい場合は「不良」と判断する。
尚、図11Aは、吸着部74に対して電子部品Bが位置ずれしていない場合(正常吸着時)を示しており、図11Bは、吸着部74に対して電子部品Bが位置ずれしている場合(吸着不良時)を示している。図中、電子部品Bは外形のみ実線で示している。
本例では、ヘッドユニット60に10本の吸着部74を搭載しているので、制御部210は、各吸着部74に吸着保持された10個の電子部品Bについて、吸着不良の有無を判断する処理を行う。そして、10個の電子部品Bが、全て正常である場合(ずれ量Kが第1閾値より小さい場合)は、S50の判定処理で、吸着不良なしと判定される(S50:NO)。尚、S50の処理は、本発明の「検出処理」に相当する。
電子部品Bの吸着不良がない場合、制御部210は、吸着保持した10個の電子部品Bを、プリント基板U上に実装する処理を行う(S60)。具体的には、制御部210は、X軸モータ57、Y軸モータ47を駆動して、ヘッドユニット60を基台上で平面方向(XY軸方向)に移動させることにより、電子部品Bを目標となるプリント基板U上の実装位置に移動させる。そして、ヘッドユニット60の移動中(吸着部74の移動中)、制御部210は、吸着部74のX軸方向、Y軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、正常時の速度制御パターン「Px0」、「Py0」に従うように、X軸モータ57、Y軸モータ47を制御する。
また、吸着した電子部品Bに角度のずれがある場合、制御部210は、実装位置への移動中に、R軸モータ78を駆動して、ヘッド軸73を軸回りに回転させることにより、電子部品Bの角度のずれを修正する。そして、ヘッド軸73の回転中(吸着部74の回転中)、制御部210は、吸着部74の回転方向の角速度特性(角加速度、角減速度、目標角速度)が、正常時の速度制御パターン「Pr0」に従うように、R軸モータ78を制御する。
そして、電子部品Bが実装位置の上方に到達すると、その後、制御部210は、Z軸モータ75を駆動して、ヘッド軸73を下降させる。そして、ヘッド軸73の下降中(吸着部74の下降中)、制御部210は、吸着部74のZ軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、正常時の制御パターン「Pz0」に従うように、Z軸モータ75を制御する。
そして、制御部210は、吸着部74の下降タイミングに合わせて、実装する電子部品Bを保持している吸着部74に対する負圧の供給を停止する。これにより、電子部品Bをプリント基板上に実装することが出来る。
そして、吸着保持した10個の電子部品Bについて、プリント基板Uへの実装処理が終了すると、その後、S150に移行し、制御部210は、プリント基板Uに対して、実装予定の電子部品Bを全点実装したか判定する処理を行う。
未実装の電子部品Bが有る場合(S150:NO)は、S20に戻って、S20以降の処理を順に行う。そして、実装予定の電子部品Bを、全点実装し終わると、S150に判定処理にてYES判定され、一連の部品実装処理は終了する。
次に、S50の判定処理で、吸着保持された10個の電子部品Bの一部が、吸着不良と判定された場合について説明を行う。電子部品Bの一部が吸着不良と判定された場合(S50:YES)、その後、制御部210は、吸着不良のレベルに応じて、駆動部30の速度制御パターンPを変更する処理を行う(S70)。
具体的には、まず、吸着不良と判定された電子部品Bの中心のずれ量Kを、第2閾値(第1閾値よりも値の大きい閾値)と比較して、吸着不良のレベルを判定する。すなわち、吸着不良と判定された電子部品Bのずれ量Kが第2閾値より大きい場合は、吸着不良レベルは「高い」と判定し、電子部品Bのずれ量Kが第2閾値より小さい場合は、吸着不良レベルは「低い」と判定する。
そして、制御部210は、記憶部220にアクセスして、X軸方向、Y軸方向、回転方向について、吸着不良レベルに応じたデータ、すなわち速度制御パターンPのデータを読み出す処理を行う。すなわち、吸着不良レベルが「低い」場合は、図8に示す、速度制御パターン「Px1、Py1、Pr1」のデータを読み出す。また、吸着不良レベルが「高い」場合は、図8に示す、速度制御パターン「Px2、Py2、Pr2」のデータを読み出す。
そして、制御部210は、X軸方向、Y軸方向、回転方向について、吸着部74の速度制御パターンPx、Py、Prを、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pr0」から、読み出した速度制御パターン「Px1、Py1、Pr1」又は「Px2、Py2、Pr2」に変更する処理を行う。ここでは、速度制御パターン「P」は、吸着不良レベル「高」に対応する制御パターン「Px2、Py2、Pr2」に変更されたものとする。
その後、制御部210は、X軸方向、Y軸方向、回転方向の3方向について、変更後の速度制御パターン「Px2、Py2、Pr2」を適用して、吸着不良と判定されなかった電子部品Bを、プリント基板U上に実装する処理を行う(S80)。具体的には、制御部210はX軸モータ57、Y軸モータ47を駆動して、ヘッドユニット60を基台上で平面方向(XY軸方向)に移動させることにより、吸着不良と判定されなかった電子部品Bを、目標となるプリント基板U上の実装位置に移動させる。そして、ヘッドユニット60の移動中(吸着部74の移動中)、制御部210は、吸着部74のX軸方向、Y軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、変更後の速度制御パターン「Px2」、「Py2」に従うように、X軸モータ57、Y軸モータ47を制御する。
また、吸着不良と判定されなかった実装対象の電子部品Bに角度のずれがある場合、制御部210は、実装位置への移動中に、R軸モータ78を駆動して、ヘッド軸73を軸回りに回転させることにより、電子部品Bの角度のずれを修正する。そして、ヘッド軸73の回転中(吸着部74の回転中)、制御部210は、吸着部74の回転方向の角速度特性(角加速度、角減速度、目標角速度)が、変更後の速度制御パターン「Pr2」に従うように、R軸モータ78を制御する。
そして、吸着不良と判定されなかった電子部品Bが実装位置の上方に到達すると、その後、制御部210は、Z軸モータ75を駆動して、ヘッド軸73を下降させる。また、制御部210は、ヘッド軸73の下降中(吸着部74の下降中)、吸着部74のZ軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、正常時(初期)の制御パターン「Pz0」に従うように、Z軸モータ75を制御する。尚、Z軸方向について、速度制御パターン「Pz2」を適用しない理由は、本構成では、各ヘッド軸73に対して個々にZ軸モータ75を設けているため、正常な部品を実装しようとしてヘッド軸73をZ軸方向に動かしても、他のヘッド軸73は動かない、すなわち吸着不良と判断された電子部品を保持した吸着部74は、Z方向に動かないからである。
その後、制御部210は、下降タイミングに合わせて、実装するべき電子部品Bを保持した吸着部74に対する負圧の供給を停止する。これにより、吸着不良と判定されなかった電子部品Bをプリント基板上に実装することが出来る。
そして、吸着不良と判定されなかった全ての電子部品B(例えば、10本の吸着部74の保持された全10個の電子部品Bのうち、9個の電子部品B)について、プリント基板Uへの実装処理が終了すると、その後、S90に移行し、制御部210は、吸着不良と判定された電子部品B(例えば、10本の吸着部74の保持された全10個の電子部品Bのうち、1個の電子部品B)を、変更後の速度制御パターンPx2、Py2を適用して、廃棄する処理を行う(S90)。
具体的には、制御部210は、X軸モータ57、Y軸モータ47を駆動して、ヘッドユニット60を基台上で平面方向(XY軸方向)に移動させることにより、吸着不良と判定された電子部品Bを廃棄ボックス18の上方の廃棄位置に移動させる。そして、ヘッドユニット60の移動中(吸着部74の移動中)、制御部210は、吸着部74のX軸方向、Y軸方向の速度特性(加速度、減速度、目標速度)が、変更後の速度制御パターン「Px2」、「Py2」に従うように、X軸モータ57、Y軸モータ47を制御する。
そして、吸着不良と判定された電子部品Bが廃棄ボックス18の上方の廃棄位置に到達すると、制御部210は、吸着不良と判定された電子部品Bを保持している吸着部74に対する負圧の供給を停止する。これにより、吸着不良と判定された電子部品Bを廃棄ボックス18に廃棄できる。
このように、吸着不良の電子部品Bが存在する場合、正常な電子部品Bを実装する間と、吸着不良品を廃棄する間は、X軸方向、Y軸方向、回転方向の3方向について、吸着部74の速度制御パターン「Px、Py、Pr」を、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pr0」から、速度制御パターン「Px1、Py1、Pr1」又は、「Px2、Py2、Pr2」に変更する。速度制御パターン「Px1、Py1、Pr1」、「Px2、Py2、Pr2」は、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pr0」よりも、加速度や減速度が小さい値に設定されているので、正常な電子部品Bの実装動作中や、吸着不良品の廃棄動作中に、電子部品Bに作用する慣性力が小さくなる。従って、吸着不良の電子部品Bが、吸着部74から外れて基台11上に落下し難くなる。
また、速度制御パターン「Px1、Py1、Pr1」、「Px2、Py2、Pr2」は、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pr0」よりも、目標速度Vが小さい値に設定されている。そのため、正常な電子部品Bの実装動作中や、吸着不良品の廃棄動作中に、電子部品Bに作用する空気抵抗や遠心力が小さくなる。従って、吸着不良の電子部品Bが、吸着部74から外れて基台11上に落下し難くなる。
尚、S70〜S90の処理により、本発明の「前記検出処理にて吸着不良を検出した場合に、前記吸着部の移動に伴って、前記電子部品に作用する慣性力が、吸着不良が発生していない場合と比べて小さくなるように前記駆動部の制御を変更」が実現されている。
そして、吸着不良と判定された電子部品Bを廃棄ボックス18に廃棄する処理が完了すると、制御部210は、X軸方向、Y軸方向、回転方向の3方向について、吸着部74の速度制御パターン「Px、Py、Pr」を、正常時の制御パターン「Px0、Py0、Pr0」に変更する処理を行う(S100)。
その後、制御部210は、プリント基板Uに対して実装予定の電子部品Bを全点実装したか判定する処理を行う(S150)。未実装の電子部品Bが有る場合(S150:NO)はS20に戻る。そして、制御部210は、正常時の制御パターン「Px0、Py0、Pz0、Pr0」を適用して、X軸モータ57、Y軸モータ47、Z軸モータ75、R軸モータ78を制御しつつ、S20以降の処理を順に行う。そして、実装すべき電子部品Bを全点実装し終わると、S150に判定処理にてYES判定され、一連の部品実装処理は終了する。
5.効果説明
以上説明したように、表面実装機1は、吸着不良に伴う、電子部品Bの落下を抑制することが可能である。
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図12によって説明する。
実施形態1では、図10を参照して説明を行ったように、吸着不良の電子部品Bが検出された場合(S50)、X軸方向、Y軸方向、回転方向の3方向について、吸着部74の速度制御パターン「Px、Py、Pr」を正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pr0」から吸着不良のレベルに応じた速度制御パターン「Px1、Py1、Pr1」又は、「Px2、Py2、Pr2」に変更した(S60)。
その後、X軸方向、Y軸方向、回転方向の3方向について、変更した制御パターン「Px1、Py1、Pr1」又は、「Px2、Py2、Pr2」を適用して、電子部品Bの実装処理(S80)を行い、その後、吸着不良品の廃棄処理(S90)を行った。そして、廃棄処理後に、吸着部74の速度制御パターン「P」を、吸着不良のレベルに応じた速度制御パターン「Px1、Py1、Pr1」又は、「Px2、Py2、Pr2」から、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pr0」に変更する処理を行った。
実施形態2は、実施形態1に対してS80〜S100の処理の順番を入れ替えた点が相違しており、それ以外の処理(S10〜S70、S150)は、実施形態1と同じである。具体的に説明すると、実施形態2では、図12に示すように吸着不良の電子部品Bが検出された場合(S50:YES)、X軸方向、Y軸方向、の2方向について、吸着部74の速度制御パターン「Px、Py」を、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0」から、吸着不良のレベルに応じた速度制御パターン「Px1、Py1」又は「Px2、Py2」に変更する(S70)。
その後、X軸方向、Y軸方向について、変更した速度制御パターン「Px1、Py1」又は、「Px2、Py2」を適用して、まず、吸着不良品の廃棄処理(S110)を行う。そして、廃棄処理後に、X軸方向、Y軸方向の2方向について、吸着部74の速度制御パターン「P」を、吸着不良のレベルに応じた速度制御パターン「Px1、Py1」又は、「Px2、Py2」から、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0」に変更する処理を行う(S120)。その後、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、回転方向について、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pz0、Pr0」を適用して、吸着不良と判定されなかった電子部品Bの実装処理(S130)を行う。
上記のように、処理の順番を入れ替えた場合も、吸着不良品を廃棄する間は、X軸方向、Y軸方向の2方向について、吸着不良のレベルに応じた速度制御パターン「Px1、Py1」又は「Px2、Py2」が適用される。従って、吸着不良品の廃棄動作中に、電子部品Bに作用する慣性力が小さくなる。そのため、吸着不良の電子部品Bが、吸着部74から外れて基台11上に落下し難くなる。
また、処理の順番を入れ替えた場合、吸着不良品を廃止した後に、吸着不良と判定されなかった電子部品Bを実装する処理を行うことになるので、S130では、吸着不良と判定されなかった電子部品Bの実装処理を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、回転方向について、正常時の速度制御パターン「Px0、Py0、Pz0、Pr0」を適用して、行うことが出来る。
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図13ないし図14によって説明する。
実施形態1では、吸着不良の電子部品Bが検出された場合、まず、吸着不良と判断されなかった電子部品Bの実装処理(S80)を行い、その後、吸着不良品Bの廃棄処理(S90)する処理を行った。
一方、実施形態2では、吸着不良の電子部品Bが検出された場合、まず、吸着不良品Bの廃棄処理(S110)を行い、その後、吸着不良と判断されなかった電子部品Bの実装処理(S130)を行った。
このように、吸着不良の電子部品Bが検出された場合、ヘッドユニット60に搭載した吸着部74にて吸着済みの電子部品Bを処理する方法には、以下の2つのパターンがある。
(A)吸着不良と判断されなかった電子部品を実装処理してから、吸着不良品を廃棄するパターン(実施形態1)
(B)吸着不良品を廃棄してから、吸着不良と判断されなかった電子部品を実装処理するパターン(実施形態2)
実施形態3では、制御部210にて、上記の2パターンについて、吸着済みの電子部品Bを処理するのに必要な処理時間を比較する処理を行い、処理時間の短い方のパターンを選択して吸着済みの電子部品を処理する。
尚、吸着済みの電子部品を処理するのに必要な「処理時間」とは、「吸着不良と判断されなかった電子部品Bを実装するのに必要な実装時間」と「吸着不良品Bを廃止するのに必要な廃棄時間」を合計した時間である。
「実装時間」は、吸着部74が、吸着不良と判断されなかった電子部品Bを実装するために移動する移動距離と、移動時に適用される吸着部74の速度特性(速度制御パターンPx、Py、Pz)から算出することが出来る。また、「廃棄時間」は、吸着部74が、吸着不良品Bを廃棄するために移動する移動距離と、移動時に適応される吸着部の速度特性(速度制御パターンPx、Py、Pz)から算出することが出来る。
以下、図13、図14を参照して、処理時間の算出例を説明する。尚、部品実装に伴って行われるZ軸方向への移動は、2パターンのどちらの場合も、正常時の速度制御パターンPz0を適用して行うことになり、2パターン間でZ軸方向の移動に要する時間に差が出来ることはない。そのため、ここでは、吸着部74の3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の移動のうち、ヘッドユニット60と一体的に移動するX軸方向、Y軸方向の移動だけを考慮し、Z軸方向への移動については考慮しないものとする。
また、この算出例では、図13に示す「A1」の位置で、全10個の電子部品Bの吸着処理を完了した後、ヘッドユニット60は、プリント基板U上の実装位置A2に向かって移動し、その途中の「A3」の位置にて、制御部210が、吸着した一部の電子部品Bの吸着不良を検出したものとする。
(A)パターンは、吸着不良と判断されなかった電子部品Bを先に実装処理するため、吸着不良検出時の位置A3を初期位置として、吸着不良と判断されなかった電子部品Bの実装処理が行われる。そのため、吸着不良検出時の位置A3を初期位置として、ヘッドユニット60が、吸着不良と判断されなかった電子部品Bを実装するのに伴って、移動する移動距離を求める。そして、求めた移動距離と、移動時に適用されるヘッドユニット60の速度特性(例えば、速度制御パターンPx2、Py2)から「実装時間」を算出することが出来る。
次に、吸着不良品の廃棄処理は、ヘッドユニット60を、実装処理終了時点の位置から、廃棄ボックス18の上方の廃棄位置に移動させて行う処理となる。そのため、図14に示すように、例えば、実装処理終了時のヘッドユニット60の位置が「A4」で、廃棄位置が「A5」の場合、位置「A4」から位置「A5」までの移動距離と、移動時に適用されるヘッドユニット60の速度特性(例えば、速度制御パターンPx2、Py2)に基づいて「廃棄時間」を算出する。あとは、求めた「実装時間」と「廃棄時間」を合計することで、(A)パターンの「処理時間」が得られる。
尚、ヘッドユニット60が、どのタイミングで、基台11上のどの位置にあるかは、例えば、X軸モータ57やY軸モータ47の回転状態(回転位置、回転角度、回転速度、回転数)を検出する検出器の出力に基づいて、特定することが出来る。また、実装プログラムには、電子部品の実装位置や実装順のデータが含まれているので、これらのデータを参照することにより、実装処理に伴うヘッドユニットの移動距離(移動経路)を求めることが出来る。
(B)パターンは、吸着不良品Bを先に廃棄する。そのため、吸着不良検出時の位置を初期位置として、ヘッドユニット60を、廃棄ボックス18の上方の廃棄位置に移動させて行う処理となる。図15に示すように、例えば、吸着不良検出時の位置が「A3」で、廃棄位置が「A6」の場合、位置「A3」から位置「A6」までのヘッドユニット60の移動距離と、移動時に適用されるヘッドユニット60の速度特性(例えば、速度制御パターンPx2、Py2)に基づいて「廃棄時間」を算出することが出来る。
次に、廃棄処理後に行う実装処理は、廃棄処理終了時のヘッドユニット60の位置「A6」を初期位置として、吸着不良と判断されなかった電子部品を実装する処理となる。そのため、位置「A6」を初期位置として、ヘッドユニット60が、吸着不良と判断されなかった電子部品Bを実装するのに伴って、移動する移動距離を求める。そして、求めた移動距離と、移動時に適用されるヘッドユニット60の速度特性(例えば、速度制御パターンPx0、Py0)から「実装時間」を算出することが出来る。あとは、「廃棄時間」と「実装時間」を合計することで、(B)パターンの「処理時間」が得られる。
実施形態3では、制御部210が上記の要領に従って、2パターンの処理時間を算出する。そして、制御部210は、処理時間が短い方のパターンを選択して、吸着済みの電子部品Bを処理する。すなわち、(A)パターンの方が処理時間が短い場合には、吸着不良と判断されなかった電子部品Bを実装してから、吸着不良品Bを廃棄する。一方、(B)パターンの方が処理時間が短い場合には、吸着不良品Bを廃棄してから、吸着不良と判断されなかった電子部品Bを実装する。このように、実施形態3では、吸着不良品(吸着不良の電子部品B)が検出された場合、制御部210が処理時間の短いパターンを選択して、吸着済みの電子部品Bを処理するため、タクトタイム(プリント基板の生産に要する作業時間)を短くすることが可能となる。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1〜3では、ヘッドユニット60に対して複数の吸着部74を一例状に配置した表面実装機1を例示したが、本発明を、回転するヘッドユニットに複数の吸着部を環状配置したロータリーヘッドタイプの表面実装機に適用することも可能である。
(2)実施形態1〜3では、電子部品Bの吸着不良を、吸着部74に対する電子部品Bのずれ量Kに基づいて判定した。吸着不良の判定方法は、上記方法の他に、圧力センサ180を用いて吸着時の負圧レベルを検出する方法や、流量センサを用いて吸着時における吸引エアの流量レベルを検出する方法も可能である。また、それ以外に、電子部品の側面画像から、吸着部74に対する電子部品の傾きを認識して判定することも可能である。
(3)実施形態1〜3では、電子部品Bの下面画像を、ヘッドユニット60に搭載してスキャンカメラ81により撮影した例を示したが、例えば、基台上に固定した固定カメラを利用して撮影するようにしてもよい。
(4)実施形態1〜3では、X軸方向、Y軸方向の2方向について、吸着部74に作用する「加速度」、「減速度」を、吸着不良時は、正常時よりも小さな値に設定した。また、「目標速度」についても、吸着不良時は、正常時よりも小さな値に設定した。吸着不良品の落下を抑制するには、電子部品に作用する慣性力が小さくなるように設定されていればよい。そのため、X軸方向、Y軸方向の2方向だけを考えると、少なくとも、吸着不良時は、正常時に比べて「加速度」と「減速度」は小さくすることが好ましいが、「目標速度」は、正常時の「目標速度」と同じでもよい。一方、回転方向は、電子部品Bに対して遠心力(慣性力)が働く。従って、「角加速度」や「角減速度」に加えて、吸着不良時は正常時に比べて「目標角速度」も小さくするとよい。また、遠心力の影響が特に懸念される場合であれば、「角加速度」や「角減速度」は正常時と同じ設定とし、「目標角速度」だけを小さくしてもよい。
(5)実施形態1では、各ヘッド部73がZ軸方向に独立して移動する構造となっていた事から、S80にて、吸着不良と判断されなかった電子部品Bを、実装するに伴って、Z軸方向に移動する時、正常時の速度制御パターンPz0を適用した。例えば、ヘッド部73をZ軸方向に移動させる機構は、実施形態1で例示した独立動作タイプだけでなく、各ヘッド部73をZ軸方向に独立して移動させる機構に加えて、ヘッドユニット60の全体をZ軸方向に移動させる機構を持ち、双方の機構を複合的に動作させることにより、各ヘッド部73をZ軸方向に移動させるようにすることも出来る。上記のように、Z軸方向に全ヘッド73軸を一体的に移動させる機構を備える場合、S80にて吸着不良と判断されなかった電子部品Bを実装するに伴って、全ヘッド軸を一体的に移動させる機構を動作させると、吸着不良と判断された電子部品Bも、Z軸方向に移動する。従って、全ヘッド軸をZ軸方向に一体的に移動させる間は、吸着不良時の速度制御パターンPz1、Pz2を適用するとよい。