本実施形態に係る光反射体用熱硬化性樹脂組成物(以下、組成物という)は、光反射体1を製造するために用いられる。この組成物は、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、白色顔料、並びに下記式(1)で表される化合物を含有する。また、この組成物は、射出成形法で光反射体1を製造するために用いられる。
式(1)中、Y及びZの各々は、独立に、水素、ハロゲン又はアルキル基である。Rの各々は、独立に、アルキル基である。Y及びZの各々は、独立に、水素、ハロゲン又は低級アルキル基であることが好ましい。Rの各々は、独立に、低級アルキル基であることが好ましい。
この組成物は、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有し、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を含有し、更に硬化促進剤として式(1)で表される化合物を含有するため、加熱されても、100℃前後では硬化反応は進行しにくい。すなわち、100℃前後では、組成物の良好な流動性が維持される。このため、組成物が射出成形されても、金型内での樹脂詰まりが生じにくい。従って、この組成物を射出成形することで、光反射体1を製造することが可能である。
更に、組成物が熱硬化性樹脂を含有するため、その硬化物からなる光反射体1の耐熱変色性が高い。更に、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が使用されているため、光反射体1と金属との密着性が高い。
本実施形態に係る組成物について、更に詳しく説明する。
組成物に含まれるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する適宜の化合物を含有することができる。尚、本実施形態において、エポキシ樹脂に含まれる化合物は、低分子であっても高分子であってもよい。例えばエポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンとビスフェノールA、各種ノボラック類等とから合成される樹脂、脂環式エポキシ樹脂等を含有することができる。特に、エポキシ樹脂のエポキシ当量が100〜300の範囲内、その軟化点が60〜110℃の範囲内であることが好ましい。また、射出成形性向上のためには、エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂とのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。また、光反射体1の着色抑制のためには、エポキシ樹脂が、トリグリシジルイソシアヌレートを含有することが好ましい。
エポキシ樹脂が、下記式(3)で示される化合物を含有することも好ましい。この場合、光反射体の耐熱変色性が特に向上すると共に、光反射体用樹脂成形材料の保存安定性が向上する。また、組成物が式(3)で示される化合物を含有する場合、組成物の調製時に事前混合を不要とすることもできる。
フェノールノボラック樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる。フェノールノボラック樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとを反応させて得られる樹脂と、その変性体とからなる群から選択される一種以上の樹脂を含有することができる。変性体としては、例えばエポキシ化されたフェノールノボラック樹脂及びブチル化されたフェノールノボラック樹脂が挙げられる。また、フェノールノボラック樹脂の軟化点は60〜110℃の範囲内であることが好ましい。
組成物中のフェノールノボラック樹脂の量は、射出成形時に組成物が良好な硬化性能を有するように適宜調整される。特にエポキシ樹脂のエポキシ当量に対するフェノールノボラック樹脂の水酸基当量の比の値が、0.5〜2.0の範囲内であることが好ましい。
組成物は硬化促進剤を含有し、硬化促進剤は上記式(1)で表される化合物を含有する。式(1)で表される化合物は、例えば1,1’−フェニレン−ビス(3,3−ジメチルウレア)及び1,1’−(4−メチル−m−フェニレン)−ビス(3,3−ジメチルウレア)のうち少なくとも一方を含有することができる。
特に、式(1)で表される化合物が、下記式(2)で示される化合物、すなわち、2,4−トリレンジイソシアネートのジメチルアミン付加物(1,1’−(4−メチル−m−フェニレン)−ビス(3,3−ジメチルウレア))を、含有することが好ましい。
組成物中のエポキシ樹脂に対する式(1)で表される化合物の割合は、3〜20質量%の範囲内であることが好ましい。この割合が3質量%以上であると、射出成形時の組成物の良好な硬化性が保たれ、成形サイクルの短縮化が可能となる。また、この割合が20質量%以下であると、100℃前後における組成物の流動性が特に良好になり、このため組成物の射出成形性が特に良好になる。
組成物中の硬化促進剤は、式(1)で表される化合物のみを含有することが好ましい。但し、良好な射出成形性が確保されるならば、硬化促進剤が、式(1)で表される化合物以外の化合物を含有してもよい。例えば、硬化促進剤が、シクロアミジン化合物/4級ホウ素化合物錯塩、テトラ−n−ブチルホスホニウム o,o−ジエチルホスホロジトネート、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ジアザビシクロウンデセンン、トリフェニルホスフィン、及び2−メチルイミダゾールから選択される一種以上を含有してもよ。
組成物中の全硬化促進剤に対する式(1)で表される化合物の割合は、50質量%以上であることが好ましい。
組成物中の熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂及びその硬化剤であるフェノールノボラック樹脂のみを含有してもよい。また、熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂及びその硬化剤であるフェノールノボラック樹脂以外の樹脂を更に含有してもよい。この場合、光反射体1と金属との間の密着性を特に高く維持するためには、熱硬化性樹脂に対するエポキシ樹脂及びその硬化剤であるフェノールノボラック樹脂の合計量の割合は、20質量%以上であることが好ましい。
熱硬化性樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂を更に含有してもよい。尚、本実施形態における不飽和ポリエステル樹脂とは、不飽和ポリエステルと架橋剤とで構成される樹脂である。この場合、射出成形時の組成物の流動性が適度に抑制されることで、光反射体1にバリが生じにくくなる。本実施形態では、組成物がエポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、並びに式(1)で表される化合物を含有することで、射出成形時の組成物の流動性が良好であり、そのため成形性が良好であるが、その反面、成形時に組成物がパーティング面に侵入することでバリが生じやすくなる。しかし、熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂を含有すると、組成物の流動性が適度に抑えられることで、成形時に組成物がパーティング面に侵入にくくなって、光反射体1にバリが生じにくくなる。また、不飽和ポリエステル樹脂が用いられると、組成物の製造コストの低減も可能である。
不飽和ポリエステル樹脂が用いられる場合、熱硬化性樹脂中の不飽和ポリエステル樹脂の割合は5〜40質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物の良好な成形性が確保されつつ、組成物の流動性が適度に制御されることで、バリの発生が特に抑制される。
熱硬化性樹脂が不飽和ポリエステル樹脂を含有する場合、不飽和ポリエステルは、結晶性不飽和ポリエステルと非晶性不飽和ポリエステルのうち、少なくとも一方を含有することができる。特に不飽和ポリエステルが結晶性不飽和ポリエステルを含有する場合、組成物の保存安定性が高くなると共に、射出成形時の組成物の流動性が特に高くなる。更に、不飽和ポリエステルが結晶性不飽和ポリエステルを含有すると、光反射体1の光反射性が特に高くなると共に、この高い光反射性が長時間持続しうる。
不飽和ポリエステルは、50℃以下で固体状であることが好ましい。その場合、組成物の保存形状安定性、取り扱い性、及び作業性が向上する。特に不飽和ポリエステルが常温以上50℃以下の範囲内で固体状であると、組成物の粉砕加工及び押出しペレット加工が容易になる。不飽和ポリエステルは80℃以下で固体であってもよい。その場合、粉体混合で組成物を調製することが可能になる。
不飽和ポリエステルの軟化開始温度は、50℃以上であることが好ましい。この場合、組成物の射出成形性が更に向上する。この軟化開始温度は200℃以下であってもよい。不飽和ポリエステルの軟化開始温度は、より好ましくは60〜150℃の範囲内であり、さらに好ましくは80〜130℃の範囲内である。不飽和ポリエステルの溶融粘度は、1000〜2500cPの範囲内であることが好ましい。この溶融粘度は不飽和ポリエステルが軟化して溶融したときの温度における粘度である。不飽和ポリエステルは、5〜40mg−KOH/gの範囲内の酸価を有してもよい。不飽和ポリエステルは不飽和アルキッド樹脂と呼ばれるものであってよい。
不飽和ポリエステルは、例えば不飽和多塩基酸類を含む多塩基酸類とグリコール類とが脱水縮合反応することで合成される。
不飽和多塩基酸類は、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、及びグルタコン酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に不飽和多塩基酸類が、フマル酸を含有することが好ましい。この場合、組成物の射出成形性及び光反射体1の耐熱変色性が特に向上する。
多塩基酸類は、不飽和多塩基酸と飽和多塩基酸とを含有してもよい。飽和多塩基酸類は、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、及びテトラブロム無水フタル酸からなる群から選択される少なくとも一種を含有することができる。特に飽和多塩基酸が、イソフタル酸とテレフタル酸とのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、組成物の射出成形性及び光反射体1の耐熱変色性が特に向上する。
グリコール類は、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、シクロヘキサンジメタノール、及びジブロムネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することができる。特にグリコールが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有することが好ましい。この場合、組成物の射出成形性及び光反射体1の耐熱変色性が特に向上する。
架橋剤は、不飽和ポリエステルと反応することで不飽和ポリエステルの鎖間に架橋構造を構築する成分である。架橋剤は、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等の、ビニル系の重合性モノマー;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどの重合性モノマー;並びにこれらの重合性モノマーのうち一種以上の化合物が重合して成るプレポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に架橋剤が、ジアリルフタレートプレポリマー、ジアリルフタレートモノマー、及びスチレンモノマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することが好ましい。
不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量に対する架橋剤の割合は、適宜設定されるが、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、5〜55質量%の範囲内であればより好ましく、10〜50質量%の範囲内であれば更に好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂が用いられる場合、組成物は、硬化触媒を含有してもよい。この場合、不飽和ポリエステルと架橋剤との反応により、架橋構造が効率よく構築される。このため、組成物の成形性と光反射体1の形状安定性とが高まる。硬化触媒は、例えば硬化促進剤と重合開始剤かなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
重合開始剤は、例えば加熱分解型の有機過酸化物を含有することができる。有機過酸化物は、例えばt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、及びジクミルパーオキサイドからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。有機過酸化物が、10時間半減期温度が100℃以上の化合物を含有することが好ましい。具体的には、有機過酸化物が、特にジクミルパーオキサイドを含有することが好ましい。
組成物が不飽和ポリエステル樹脂を含有する場合、組成物は、硬化条件を調整するための重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤は、例えばハイドロキノン、モノメチルエーテルハイドロキノン、トルハイドロキノン、ジ−t−4−メチルフェノール、モノメチルエーテルハイドロキノン、フェノチアジン、t−ブチルカテコール、パラベンゾキノン、ピロガロール等のキノン類、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレンービス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
白色顔料は、組成物から作製される光反射体1に、光反射性を付与する。白色顔料は、例えば酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸バリウムからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
特に、白色顔料が、酸化チタン、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、及び硫化亜鉛からなる群から選択される一種以上の材料を含有することが好ましい。また、白色顔料が、熱伝導率の高い酸化アルミニウムを含有することも好ましい。
白色顔料が酸化チタンを含有する場合、酸化チタンは、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、及びブルサイト型酸化チタンから選択される一種以上の材料を含有することができる。特に、ルチル型酸化チタンは熱安定性に優れているため、酸化チタンが、ルチル型酸化チタンを含有することが好ましい。
白色顔料の表面には、脂肪酸、カップリング剤等で表面処理されていてもよい。この場合、白色顔料の凝集、吸油等が抑制され、組成物内での白色顔料の充填性が高くなる。
白色顔料の平均粒径は、2.0μm以下であることが好ましい。また、この平均粒径は、0.01μm以上であることが好ましい。この平均粒径は、0.03〜1.0μmの範囲内であることも好ましく、0.1〜0.7μmの範囲内であることも好ましく、0.2〜0.5μmの範囲内であることも好ましい。尚、白色顔料の平均粒径は、レーザー回折散乱法で測定される。
組成物中の熱硬化性樹脂100質量部に対する白色顔料の量は、100質量部以上であることが好ましい。この場合、光反射体1の耐熱変色性が特に高くなると共に、光反射体1の光反射性も特に高くなる。また、この白色顔料の量は、300質量部以下であることが好ましい。この場合、組成物の成形性が特に高くなる。この白色顔料の量が150〜250質量部の範囲内であれば、特に好ましい。
組成物は、白色顔料を除く無機充填材を更に含有してもよい。この場合、光反射体1の光反射性が更に高くなると共に、光反射体1の形状安定性が更に高くなる。また、無機充填材は、光反射体1の熱伝導率を高めることができる。それにより、光反射体1の熱による変色、劣化等が、更に抑制される。
無機充填材は、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、及びマイカからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
無機充填材は、特にシリカを含有することが好ましい。この場合、光反射体1の光反射性が更に高まると共に、光反射体1の形状安定性が更に高まる。シリカは、例えば、溶融シリカ粉末、球状シリカ粉末、破砕シリカ粉末、及び結晶シリカ粉末から選択される一種以上の材料を含有することができる。特にシリカが溶融シリカを含有することが好ましい。
無機充填材が、熱伝導性無機充填材を含有することも好ましい。この場合、光反射体1の熱伝導性が特に高くなり、このため光反射体1の熱による変色、劣化等が、更に抑制される。熱伝導性無機充填材は、例えば結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の熱伝導性フィラーからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。
熱伝導性無機充填材は、金属含有充填材を含有することが好ましく、特にアルミニウム含有充填材を含有することが好ましい。アルミニウム含有充填材は、例えば水酸化アルミニウムを含有することができる。
無機充填材は、無機発泡粒子、シリカバルーン等の中空粒子を含有してもよい。
無機充填材の表面には、脂肪酸、カップリング剤等で表面処理されていてもよい。この場合、白色顔料の凝集、吸油等が抑制され、組成物内での無機充填材の充填性が高くなる。
無機充填材の平均粒径は、100μm以下であることが好ましい。この場合、組成物の成形性が特に良好になると共に、光反射体1の耐熱変色性及び耐湿性が特に高くなる。この平均粒径は、0.1μm以上であることが好ましい。この場合、組成物の取扱い性が良好になる。無機充填材の平均粒径は、80μm以下であればより好ましく、50μm以下であれば更に好ましい。また、無機充填材の平均粒径は、0.3μm以上であればより好ましい。更に、無機充填材の平均粒径が8〜20μmの範囲内であれば、組成物の射出成形性が特に良好になる。尚、無機充填材の平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定される。
組成物中の熱硬化性樹脂100質量部に対する無機充填材の量は、40質量部以上であることが好ましい。この場合、光反射体1の形状安定性が特に高くなる。この無機充填材の量は、300質量部以下であることが好ましい。この場合、組成物の成形性が特に高くなる。この無機充填材の量が50〜250質量部の範囲内であれば、特に好ましい。
無機充填材が熱伝導性無機充填材を含有する場合、無機充填材全体に対する熱伝導性無機充填材の割合は30質量%以上であることが好ましい。この場合、光反射体1の熱伝導性が特に高くなる。
組成物全体に対する、白色顔料と無機充填材との合計量の割合は、40〜80質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、組成物の成形性が特に高くなると共に、光反射体1の耐熱変色性及び光反射性が特に高くなる。この割合が50〜70質量%の範囲内であれば、特に好ましい。
組成物中の白色顔料と無機充填材との合計量に対する白色顔料の割合は、30質量%以上であることが好ましい。この場合、光反射体1の光反射性が特に高くなる。この割合は、95質量%以下であることが好ましい。この割合は、35〜90質量%の範囲内であればより好ましく、40〜85質量%の範囲内であれば更に好ましい。
組成物中の熱硬化性樹脂100質量部に対する、白色顔料と無機充填材との合計量は、500質量部以下であることが好ましい。この場合、射出成形時の組成物の流動性が特に高くなる。この白色顔料と無機充填材との合計量は、100質量部以上であることが好ましい。この場合、光反射体1の光反射性が特に高くなる。この白色顔料と無機充填材との合計量は、100〜400質量部の範囲内であればより好ましく、200〜300質量部の範囲内であれば更に好ましい。
組成物は、補強材を含有してもよい。この場合、組成物の成形時の硬化収縮が抑制されると共に、光反射体1の強度が高くなり、更に光反射体1の寸法安定性が高くなる。補強材は、例えばBMC(バルク・モールディング・コンパウンド)、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)等のFRP(ファイバー・レインフォースド・プラスチックス)の補強のために適用されている適宜の材料を含有することができる。
補強材は、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカー、及びハイドロタルサイトから選択される一種以上の材料を含有することができる。特に、補強材が、ガラス繊維を含有することが好ましい。
ガラス繊維は、例えば珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。ガラス繊維は、長繊維(ロービング)であっても、短繊維(チョップドストランド)であってもよい。ガラス繊維には表面処理が施されていてもよい。特に、ガラス繊維が、繊維径10〜15μmの範囲内のEガラス繊維が酢酸ビニル等の収束剤で収束され、続いてシランカップリング剤で表面処理された後、長さ3〜6mmの範囲内にカットされてなるチョップドストランドを含有することが好ましい。
組成物中の熱硬化性樹脂100質量部に対する補強材の量は、10〜200質量部の範囲内であることが好ましい。この場合、成形時に組成物の硬化収縮が特に抑制されると共に、光反射体1の強度が特に高くなる。この補強材の量は、20〜100質量部の範囲内であればより好ましく、30〜80質量部の範囲内であれば更に好ましい。
組成物は、離型剤を含有してもよい。離型剤は、一般に用いられる脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、鉱物系等のワックス類からなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。特に、離型剤は、耐熱変色性に優れた脂肪酸系の材料及び脂肪酸金属塩系の材料からなる群から選択される一種以上の材料を含有することが好ましい。
離型剤は、特にステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、及びステアリン酸カルシウムからなる群から選択される一種以上の材料を含有することが好ましい。
組成物中の熱硬化性樹脂100質量部に対する離型剤の量は、1〜15質量部の範囲内であることが好ましい。この場合、成形時の光反射体1の良好な離型性と、光反射体1の優れた外観とが両立すると共に、光反射体1の光反射性が特に高くなる。
組成物は、溶融粘度調整のために、増粘剤を含有してもよい。増粘剤は、例えばナノシリカを含有することができる。この場合、ナノシリカは、無機充填材の少なくとも一部を兼ねてもよい。ナノシリカの具体例として、トクヤマ株式会社が販売するレオロシールCP−102が挙げられる。組成物中の増粘剤の割合は、0.15体積%以下であることが好ましい。この場合、組成物の溶融時の良好な流動性が確保される戸と共に、光反射体1の良好な強度が確保される。
増粘剤の中心粒径は1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましい。中心粒径が1nm以上であると、組成物中の増粘剤の分散性が良好である。また、中心粒径が1000nm以下であると、光反射体1のバリが抑制される。増粘剤の中心粒径が10nm〜1000nmの範囲内であれば、より好ましい。
組成物は、酸化防止剤を含有してもよい。組成物が酸化防止剤を含有すると、光反射体1の光反射率の経時的な低下が更に抑制される。また、酸化防止剤を含むことにより、組成物の保存安定性が高くなる。
酸化防止剤は、例えばフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に酸化防止剤が、リン系酸化防止剤を含有することが好ましい。リン系酸化防止剤は、例えば9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、及びジフェニルイソデシルホスファイトからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。酸化防止剤が、ヒンダードフェノールを含有してもよい。
エポキシ樹脂100質量部に対する酸化防止剤の量が、1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。この酸化防止剤の量が1質量部以上であると、十分な酸化防止効果が得られる。またこの酸化防止剤の量が20質量部以下であると、光反射体1がより変色しにくくなる。すなわち、酸化防止剤の量が1〜20質量部の範囲内であると、光反射体1の光反射率の経時的な低下が、より生じにくくなる。この酸化防止剤の量は、3〜18質量部の範囲内であればより好ましく、5質量部以上であれば更に好ましい。
組成物は、蛍光増白剤を含有してもよい。組成物が蛍光増白剤を含有すると、光反射体1の光反射率がより高くなる。蛍光増白剤は、例えばベンゾオキサゾール誘導体、クマリン誘導体、イミダゾール誘導体、及びスチルベン誘導体からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に、蛍光増白剤が、ベンゾオキサゾール誘導体を含有することが好ましい。組成物中の蛍光増白剤の割合は、0.001〜1質量%の範囲内であることが好ましい。この場合、光反射体1の光反射率が、より高くなる。
尚、組成物は、上記成分以外の添加剤、例えば着色剤、難燃剤及び可撓性付与剤からなる群から選択される一種以上の化合物を、含有してもよい。
組成物は、固体状であってよい。この場合、組成物の保存安定性及びハンドリング性が高くなる。例えば組成物は、粒状、粉末状等であってよい。特に組成物が、30℃以下で固体であることが好ましい。この場合、粉砕加工、押出しペレット加工等で、組成物が粒状に容易に加工されうる。組成物が、50℃以下で保形性を有することも好ましい。この場合、組成物の取扱い性、及び組成物を使用する場合の作業性が、特に高くなる。
組成物は、無溶媒で調製されることができる。この場合、固体状の樹脂組成物が容易に得られる。
組成物の調製にあたっては、例えばまず上記のような原料が、所定の割合で、適宜の順序で配合され、ミキサー、ブレンダー等の混合機で混合されることで、混合物が得られる。原料が固形状である場合、原料が混合機で容易に混合されうる。この混合物が加熱加圧可能な混練機、押出機等で混練される。混練機として、例えば加圧ニーダー、熱ロール、エクストルーダー等が用いられる。続いて混合物のバルク体が、粉砕・整粒され、或いは更に必要に応じて造粒されることで、組成物が得られる。組成物は、例えば粒状、粉末状又はペレット状である。
組成物が射出成形されることで、発光装置6に適用される光反射体1が作製される。射出成形条件は適宜設定されるが、例えば樹脂温度は60〜120℃の範囲内、金型温度は150〜180℃の範囲内、充填圧力は7.8〜24.5MPa(80〜250kgf/cm2)の範囲内、硬化時間は30〜300秒の範囲内であることが好ましい。
本実施形態で得られる光反射体1は、エポキシ樹脂を含有する組成物から作製されるため、金属製の部材と高い密着性を有する。このため、例えば光反射体1に金属製リードフレーム2が埋め込まれていても、光反射体1から金属製リードフレーム2が脱離しにくい。
図1及び図2に、光反射体1、金属製リードフレーム2及び発光素子3を備える発光装置6の例を示す。本例では、光反射体1に金属製リードフレーム2が埋め込まれている。
光反射体1は、ベース部11と、このベース部11の上面から突出する突出部12とを備える。突出部12には、その上面で開口する凹所13が形成されている。金属製リードフレーム2は、ベース部11に埋め込まれている。金属製リードフレーム2は、第一のリード21と第二のリード22とを備える。第一のリード21と第二のリード22の各々は、凹所13の底面で凹所13内に露出している。第一のリード21と第二のリード22は、ベース部11内で間隔をあけて配置されることで、第一のリード21と第二のリード22との間が電気的に絶縁されている。第一のリード21と第二のリード22は、ベース体の下面でも外部に露出している。ベース部11の下面上に、第一のリード21上から第二のリード22上に亘る位置に絶縁性の部材5が設けられ、この部材5が、第一のリード21と第二のリード22との間の短絡を抑制する。
発光素子3として、例えば発光ダイオードが用いられるが、これに限られない。発光素子3は、凹所13内で第一のリード21上に実装されている。更に凹所13内で、発光素子3と第一のリード21とが第一のワイヤ41で電気的に接続されると共に、発光素子3と第二のリード22とが第二のワイヤ42で接続されている。
この光反射体1の凹所13の内周面14は、凹所13の内径が開口側ほど大きくなるように傾斜している。このため、発光素子3から発せられる光が、光反射体1における凹所13の内周面14で反射しやすくなり、その結果、発光装置6からの光の取り出し効率が高くなる。
この発光装置6において、必要により、凹所13内が透明な樹脂で封止されてもよく、凹所13の開口が透明なカバーで覆われてもよい。
このような金属製リードフレーム2が埋め込まれている光反射体1は、例えばインサート成形法で製造される。すなわち、例えば射出成形金型の内部に金属製のリードを配置し、この状態で射出成形金型内で組成物を射出成形することで、光反射体1が作製される。
[実施例1〜13、比較例1〜3]
表1及び2に示す原料を混合し、シグマブレンダーにて均一に混合した後、100℃に加熱した熱ロールで混練することで、シート状の混練物を得た。この混練物を冷却してから粉砕・整粒することで、粒状の組成物を得た。
[実施例14〜25]
表3,4に示す不飽和ポリエステル、架橋剤、硬化触媒、白色顔料及び無機充填剤を混合し、得られた混合物をシグマブレンダーにて均一に混合した後、100℃に加熱した熱ロールで混練することで、シート状の混練物を得た。この混練物を冷却してから粉砕・整粒することで、粒状の不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。
この不飽和ポリエステル樹脂組成物と、表3,4に示すエポキシ樹脂配合品とを、シグマブレンダーにて均一に混合した後、100℃に加熱した熱ロールで混練することで、シート状の混練物を得た。この混練物を冷却してから粉砕・整粒することで、粒状の組成物を得た。
尚、表中のエポキシ樹脂配合品のうち、「エポキシ樹脂組成物A」は実施例1の組成物、「エポキシ樹脂組成物B」は実施例7の組成物、「エポキシ樹脂組成物C」は実施例8の組成物である。
[比較例4,5]
4に示す不飽和ポリエステル、架橋剤、硬化触媒、白色顔料及び無機充填剤を混合し、得られた混合物をシグマブレンダーにて均一に混合した後、100℃に加熱した熱ロールで混練することで、シート状の混練物を得た。この混練物を冷却してから粉砕・整粒することで、粒状の組成物を得た。
[評価試験]
(射出成形性評価)
射出成形機として松田製作所製の150トン熱硬化性射出成形機を用い、金型温度180℃、硬化時間180秒の条件で、各実施例及び比較例で得られた組成物を射出成形した。これにより、JISK6911に準拠したテストピースを作製した。
この射出成形を、同じ射出成形金型を用いて繰り返しおこない、射出成形金型に樹脂詰まりが生じるまでの成形回数を、連続成形性の指標とした。その結果を後掲の表に示す。尚、「>100」は、射出成形を100回繰り返しても樹脂詰まりが生じないことを示す。
(流動性評価)
各実施例及び比較例で得られた組成物のスパイラルフロー長さを測定した。この場合、射出成形機として松田製作所製の150トン熱硬化性射出成形機を用い、金型温度180℃、硬化時間180秒の条件で測定した。その結果を後掲の表に示す。
(バリ評価)
各実施例及び比較例につき、上記「射出成形性評価」で得られたテストピースに生じたバリの最大突出寸法を測定した。その結果を後掲の表に示す。
(密着性評価)
12mm×49mm×1.5mmの寸法の、銀メッキ銅基板からなる基材7を用意した。各実施例及び比較例で得られた組成物を射出成形(インサート成形)することで、図3に示すように、基材7に重なる12mm×49mm×3mmの寸法の成形体8を作製した。基材7と成形体8との重なり幅は、12mmである。射出成形条件は、射出成形機として松田製作所製の150トン熱硬化性射出成形機を用い、金型温度180℃、硬化時間180秒の条件である。この基材7と成形体8の各々に、図3中の矢印方向の応力をかけることで、剪断密着強度を測定した。
(不良率評価)
実施例14〜25及び比較例4,5につき、組成物を射出成形することで、評価用サンプルを作製した。尚、射出成形条件は、金型温度180℃、硬化時間180秒とした。この場合、銀メッキが施された銅フレーム(インサート部分:幅0.6mm×厚み0.25mm)を用いたインサート成形をおこなった。
得られた100個の評価用サンプルを観察し、評価用サンプルと銅フレームとの間の剥離が認められた場合を不良と評価して、不良の発生数をカウントした。
(光反射率評価)
射出成形機として松田製作所製の150トン熱硬化性射出成形機を用い、金型温度160℃、硬化時間60秒の条件で、各実施例及び比較例で得られた組成物を射出成形した。これにより、50mm×50mm×1mmの寸法の、板状のテストピースを得た。
テストピースを成形してから、速やかに、このテストピースの光反射率を、反射率測定器(日本電色製、型番SD6000)を用いて測定した。
続いて、テストピースを150℃の温度で1000時間加熱してから、このテストピースの光反射率を測定した。
これらの結果を、後掲の表に示す。