本発明の光反射体用不飽和ポリエステル樹脂組成物は、不飽和ポリエステル、架橋剤、及び、白色顔料を含有している。この不飽和ポリエステル樹脂組成物では、架橋剤は芳香環を含まない化合物で構成されている。
不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、従来、架橋剤として芳香環を含む化合物が用いられている。本発明者は、架橋剤の中に芳香環が含まれると、熱による変色が高くなる傾向があるという知見を得た。そこで、架橋剤として芳香環を含まない化合物を用いることに着目した。芳香環が含まれると、芳香環が変色の起点となって、熱により変性して黄色がかった色に変色しやすくなる。いわゆる黄変が生じる。しかしながら、架橋剤として芳香環が含まれないものを用いると、芳香環に由来する変色を抑えることができるため、光反射体の熱による劣化を抑制することができ、長期にわたって高い光反射率を維持することができる。そのため、光反射性の優れた光反射体を得ることができる。
ここで、上記の特許文献1及び2では、芳香環を有さない架橋剤も多数列挙された中に例示されてはいるが、実施例ではスチレンモノマーやジアリルフタレートなどが用いられており、架橋剤を芳香環を有さない化合物のみで構成した樹脂組成物は記載されていない。本発明では、不飽和ポリエステル樹脂組成物において、架橋剤中に芳香環を含まないようにすることに着目したのである。
不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、芳香環は架橋剤に含まれていなければよく、不飽和ポリエステル中には、芳香環が含まれていてもよいし、芳香環が含まれていなくてもよい。架橋剤中に芳香環が含まれないことにより、芳香環に起因した変色を抑制することができるからである。もちろん、不飽和ポリエステルに芳香環が含まれていなければ、変色をさらに抑制できる可能性がある。したがって、不飽和ポリエステルとして芳香環を含まないものを用いることが好ましい一態様である。また、同様に、不飽和ポリエステル樹脂組成物における不飽和ポリエステル及び架橋剤以外の成分中に、芳香環を含む化合物が含まれないことが好ましい一態様である。また、同様に、不飽和ポリエステル樹脂組成物における全成分中に、芳香環を含む化合物が含まれないことが好ましい一態様である。
不飽和ポリエステルとしては、結晶性不飽和ポリエステル及び非晶性不飽和ポリエステルのいずれを用いてもよい。また、結晶性不飽和ポリエステルと非晶性不飽和ポリエステルとを混合したものを用いてもよい。
不飽和ポリエステルは、結晶性不飽和ポリエステルを含むことが好ましい。それにより、保存安定性を高めることができるとともに、成形の際の流動性を高めることができる。また、結晶性の不飽和ポリエステルを用いると、反射率を高めることができるとともに、高い反射率をより維持することができる。
結晶性不飽和ポリエステルと非晶性不飽和ポリエステルとの違いを以下に述べる。不飽和ポリエステルは、共重合性単量体(架橋剤)と混合されてこの混合物により不飽和ポリエステル樹脂が形成され得る。この不飽和ポリエステル樹脂の性状において、結晶性と非晶性(非結晶性)とで違いが見られる。
結晶性不飽和ポリエステルと常温にて液体状の共重合性単量体からなる結晶性不飽和ポリエステル樹脂は、常温にて固体状であり、結晶性不飽和ポリエステル樹脂の融点以上で低粘度な液体状である。一方、非晶性不飽和ポリエステルと常温にて液体状の共重合性単量体からなる非晶性不飽和ポリエステル樹脂は、常温にて液体状である。この性状の大きな違いは、初期反射率、耐熱性、保存形状安定性等の、かなり数多くの有利な効果を樹脂組成物、粒状物、ひいては光反射体にもたらすことになる。
結晶性不飽和ポリエステルは、アセトン、スチレンモノマー等との相溶性が常温においてない。結晶性不飽和ポリエステルは、常温において結晶性不飽和ポリエステルにアセトン、スチレンモノマー等を加えても、結晶性不飽和ポリエステルが溶解しない性状を有する。一方、非晶性不飽和ポリエステルは、アセトン、スチレンモノマー等と相溶性が有り、常温において非晶性不飽和ポリエステルにアセトン、スチレンモノマー等を加えると液体状となる性状を有する。結晶性不飽和ポリエステルと共重合性単量体及び/又は共重合性多量体とを配合した混合物からなる不飽和ポリエステル樹脂は、常温において固体状の結晶性不飽和ポリエステル樹脂となりやすい。一方、非晶性不飽和ポリエステルと共重合性単量体及び/又は共重合性多量体とを配合した混合物からなる不飽和ポリエステル樹脂は、常温において液状の樹脂となりやすい。
結晶性不飽和ポリエステルに、架橋剤及び白色顔料を配合した結晶性不飽和ポリエステル樹脂組成物は、融点未満の温度範囲において保存形状安定性を有し、作業性を高めることができる。
結晶性不飽和ポリエステルは、光反射体の成形時の樹脂組成物可塑化温度領域において低粘度となるため、樹脂組成物の粘度が高くなる小粒子径の白色顔料や無機充填剤をより多く使用することができる。そのため、光反射特性及び熱特性を高めることが可能である。小粒子径の白色顔料を使用した場合、白色顔料の表面積が広くなり、不飽和ポリエステル樹脂と白色顔料との界面における反射面積が広くなる。その結果、白色顔料を使用する割合が少なくなった場合でも、所望の初期反射率を得ることが可能である。また、小粒径の無機充填剤を使用した場合、無機充填剤の表面積が広くなり、不飽和ポリエステル樹脂と無機充填剤との界面における接触面積が広くなる。その結果、無機充填剤を使用する割合が少なくなった場合でも、所望の反射率、安定性及び熱伝導性を得ることが可能である。
結晶性不飽和ポリエステル樹脂は、樹脂溶融時に低粘度であるため耐熱性に優れた白色顔料、無機充填剤を高充填できる。つまり、熱によって酸化着色する有機物の樹脂含有量を低くすることができるため、耐熱試験後の反射率を高くすることができる。
不飽和ポリエステルにおける結晶性と非晶性の違いは、上記特許文献2にも説明されている。本明細書では、その記載が準用される。
不飽和ポリエステルは、50℃以下の温度範囲において固体状であることが好ましい。その場合、保存形状安定性、取り扱い性、作業性を高めることができる。常温以上、50℃以下の温度において固体状であると、粉砕加工や押出しペレット加工が容易になる。50℃以下の温度範囲において固体状である不飽和ポリエステルは、結晶性ポリエステル樹脂により容易に得られる。もちろん、50℃以下の温度範囲において固体状である非晶性の不飽和ポリエステルを用いることもできる。また、不飽和ポリエステルは80℃以下の温度で固体であってもよい。その場合、粉体混合によって樹脂組成物を調製することが可能になる。
不飽和ポリエステルは、50℃以上の温度で軟化を開始することが好ましい。それにより、成形性を高めることができる。不飽和ポリエステルの軟化開始温度は200℃以下であってよい。不飽和ポリエステルの軟化開始温度は、より好ましくは60〜150℃の範囲であり、さらに好ましくは80〜130℃の範囲である。
不飽和ポリエステルは、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸及びグリコール類から、脱水縮合反応によって得ることができる。不飽和ポリエステルは、5〜40mg−KOH/gの酸価を有するものであってよい。不飽和ポリエステルは不飽和アルキッド樹脂と呼ばれるものであってよい。不飽和ポリエステルの製造において、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸の酸成分の選択や組合せ、及びグリコール類の選択や組合せ、それらの配合割合等を適宜選択することにより、結晶性を有する不飽和ポリエステルを得ることができる。
不飽和多塩基酸類としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、グルタコン酸等を挙げることができる。
飽和多塩基酸類としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等を挙げることができる。
グリコール類としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、シクロヘキサンジメタノール、ジブロムネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
不飽和ポリエステルにおいては、不飽和多塩基酸としてフマル酸が好適である。また、飽和多塩基酸としてイソフタル酸やテレフタル酸が好適である。また、グリコールとして主成分にエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールが好適である。これらを使用すると、成形性及び耐熱変色性に優れた不飽和ポリエステル樹脂組成物を容易に得ることができる。また、これらを使用すると、結晶性不飽和ポリエステルが得やすくなる。
また、不飽和ポリエステルとしては、溶融粘度1000〜2500cPのものを好適に用いることができる。この溶融粘度は不飽和ポリエステルが軟化して溶融したときの温度における粘度である。
架橋剤は、硬化の際に不飽和ポリエステルを架橋する成分である。架橋剤は、共重合性を有する成分であることが好ましく、不飽和結合を有することが好ましい。架橋剤は、単重合性単量体、共重合性多量体から選ばれる1種以上により構成され得る。このとき、架橋剤は、芳香環を含まない共重合性単量体や、芳香環を含まない共重合性多量体によって構成され得る。共重合性単量体は、いわゆるモノマーであってよい。共重合性多量体は、いわゆるプレポリマーであってよい。したがって、架橋剤を構成する化合物は、モノマー又はプレポリマーにより構成され得る。
ここで、芳香環とは、炭化水素基により構成された共役不飽和環構造のことをいう。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが例示される。
架橋剤としては、不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物、ビスマレイミド化合物、及び、多官能(メタ)アクリレート化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。それにより、耐熱変色性を向上させることができる。また、これらの化合物を用いると、白色度を向上させることができ、初期の反射率を高めることができる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートのことである。(メタ)アクリル基は、アクリル基及び/又はメタクリル基のことである。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物は、含窒素複素環式化合物に不飽和結合を有する官能基が置換基として導入された構造を有する。含窒素複素環式化合物においては、四員環、五員環、六員環、七員環、八員環、九員環、十員環など、環を構成する原子数はいずれであってもよい。このうち、六員環が、取り扱いが容易であり好ましい。含窒素複素環式化合物においては、環内に含まれる窒素原子の数は、一つ、二つ、三つ、四つ、五つなどのいずれであってもよい。このうち、窒素原子の数が三つであることが、取り扱いが容易であり好ましい。特に、六員環であり、窒素原子の数が三つであり、この窒素原子が炭素原子と交互に配置した含窒素複素環構造を有することが好ましい。このような構造として、イソシアヌル環構造、トリアジン環構造、ヒドロ化トリアジン環構造などが挙げられる。含窒素複素環構造は、共役不飽和環構造を有していないことが好ましい。それにより、変色をさらに抑制することができる。
不飽和官能基は、炭素−炭素二重結合などの不飽和結合を有する官能基である。不飽和官能基としては、(メタ)アクリル基を有する官能基、アリル基を有する官能基などを好ましく用いることができる。なお、(メタ)アクリル基を2以上有する場合、その化合物は、多官能(メタ)アクリレート化合物にも該当することになる。
イソシアヌル環構造を有する化合物の一般式を以下に示す。
上式において、R1、R2及びR3のいずれか一つ以上は不飽和結合を有する有機基である。R1、R2及びR3は同じであっても異なっていてもよい。R1、R2及びR3のうちの一つが不飽和結合を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちの二つが不飽和結合を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちの全部(三つ)が不飽和結合を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちのいずれか一つ以上は(メタ)アクリル基を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちのいずれか一つ以上はエポキシ基を有していてもよい。なお、R1、R2及びR3が水素である化合物はイソシアヌル酸である。
ヒドロ化トリアジン環構造を有する化合物の一般式を以下に示す。
上式において、R1、R2及びR3のいずれか一つ以上は不飽和結合を有する有機基である。R1、R2及びR3は同じであっても異なっていてもよい。R1、R2及びR3のうちの一つが不飽和結合を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちの二つが不飽和結合を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちの全部(三つ)が不飽和結合を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちのいずれか一つ以上は(メタ)アクリル基を有していてもよい。R1、R2及びR3のうちのいずれか一つ以上はエポキシ基を有していてもよい。なお、R1、R2及びR3が水素である化合物はヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンである。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物の具体例を以下に示す。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。この化合物は、TAICとして日本化成株式会社から市販されている。トリアリルイソシアヌレートの構造式を下記に示す。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、トリメタリルイソシアヌレートが挙げられる。この化合物は、TMAICとして日本化成株式会社から市販されている。トリメタリルイソシアヌレートの構造式を下記に示す。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、トリアリルイソシアヌレートのプレポリマーを用いてもよい。トリアリルイソシアヌレートのプレポリマーは、トリアリルイソシアヌレートが重合したポリマーである。ただし、プレポリマーであり、不飽和結合が残存しているため、架橋剤として機能する。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、トリメタリルイソシアヌレートのプレポリマーを用いてもよい。トリメタリルイソシアヌレートのプレポリマーは、トリメタリルイソシアヌレートが重合したポリマーである。ただし、プレポリマーであり、不飽和結合が残存しているため、架橋剤として機能する。
含窒素複素環式化合物として、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。この化合物は、TEICAとして第一工業製薬株式会社から市販されている。また、この化合物は、製品名A−9300として新中村化学工業株式会社から市販されている。トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの別名は、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートである。この化合物は、3官能のアクリレート化合物でもある。トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの構造式を下記に示す。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。この化合物は、製品名A−9300−1CLとして新中村化学工業株式会社から市販されている。この化合物は、3官能のアクリレート化合物でもある。ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートの構造式を下記に示す。
上記の式において、l、m、nは0又は正の整数である。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、トリアリルシアヌレートが挙げられる。この化合物は、TACとして株式会社武蔵野化学研究所から市販されている。トリアリルシアヌレートの構造式を下記に示す。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、トリアクリルホルマールが挙げられる。この化合物は、TAFとしてダイトーケミックス株式会社から市販されている。トリアクリルホルマールの別名は、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジンである。この化合物は、3官能のアクリレート化合物でもある。トリアクリルホルマールの構造式を下記に示す。
不飽和官能基を有する含窒素複素環式化合物として、下記の化学式に示すイソシアヌル酸誘導体「MeDAIC」、「DA−MGIC」、「MA−DGIC」、「AcDGIC」及び「McDGIC」のいずれか1つ以上が挙げられる。これらの化合物は、四国化成株式会社から市販されている。
ビスマレイミド化合物は、マレイミド骨格を分子内に2個有する化合物である。硬化時にはマレイミド骨格中の二重結合が架橋剤として機能する。
ビスマレイミド化合物は、ジアミン化合物とマレイン酸無水物との反応により得ることができる。ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物や脂環式ジアミン化合物を用いることができる。脂環式ジアミン化合物としては、例えば、ジアミノシクロヘキサン、ジアミノメチルシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビスアミノプロピルテトラオキサスピロウンデカンなどが例示される。また、脂環式ジアミン化合物として、前記の脂環式ジアミン化合物の水素の一部又は全部がメチル基又はエチル基などの炭化水素基に置換した化合物が例示される。脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ヘキサメチレンジアミンなどが例示される。また、脂環式ジアミン化合物として、前記の脂肪族ジアミン化合物の水素の一部又は全部がメチル基又はエチル基などの炭化水素基に置換した化合物が例示される。これらのジアミン化合物は1種又は2種以上を用いることができる。これらのうち、脂環式ジアミン化合物としては、1,3−ジアミノメチルシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。
ビスマレイミド化合物は、脂環式炭化水素に複数のマレイミド基が結合した化合物であることが好ましい一態様である。例えば、炭素数6の脂環式炭化水素(シクロヘキサン)を基本骨格として、この基本骨格中の2個の水素がマレイミド基に置換された化合物などが例示される。その際、前記基本骨格中の1個又は複数個の水素が、メチル基やエチル基などの炭化水素基に置換されていてもよい。
ビスマレイミド化合物は、脂肪族骨格に複数のマレイミド基が結合した化合物であることが好ましい一態様である。例えば、炭素数6の炭化水素(ヘキサン)を基本骨格として、この基本骨格中の2個の水素がマレイミド基に置換された化合物などが例示される。その際、前記基本骨格中の1個又は複数個の水素が、メチル基やエチル基などの炭化水素基に置換されていてもよい。
ビスマレイミド化合物として、具体例では、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンが挙げられる。この化合物は、BMI−TMHとして大和化成工業株式会社から市販されている。この化合物は脂肪族ビスマレイミド化合物である。1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンの別名は、1,1’−(2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイル)ビス(1H−ピロール−2,5−ジオン)である。1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンの構造式を下記に示す。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有する化合物である。分子内の(メタ)アクリル基の数は2個であってもよいし、3個であってもよいし、4個であってもよい。もちろん、分子内の(メタ)アクリル基の数は5個以上であってもよいが、入手の容易性の観点からは4個以下であってよい。硬化時には(メタ)アクリル基が架橋剤として機能する。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族骨格を含有するものが好ましい一態様である。例えば、炭素数6の炭化水素(ヘキサン)を基本骨格として、この基本骨格中の2個以上の水素が(メタ)アクリレート基に置換された化合物などが例示される。その際、前記基本骨格中の1個又は複数個の水素が、メチル基やエチル基などの炭化水素基に置換されていてもよい。具体例として、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、ポリエチレングリコールに複数の(メタ)アクリル基が結合した化合物であることが好ましい一態様である。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の両末端に、(メタ)アクリル基がエステル結合した化合物などが例示される。この場合、多官能(メタ)アクリレート化合物は、ポリエチレングリコールに由来する脂肪族骨格を含有する化合物となる。
多官能(メタ)アクリレート化合物は、脂環式骨格に複数の(メタ)アクリル基が結合した化合物であることが好ましい一態様である。例えば、トリシクロデカン骨格に(メタ)アクリル基を有する置換基が結合した化合物などが例示される。
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例を以下に示す。
多官能(メタ)アクリレート化合物として、ポリエチレングリコールジアクリレートが挙げられる。この化合物は、例えば製品名A−200、A−400、A−600、A−1000などとして新中村化学工業株式会社から市販されている。この化合物は、2官能のアクリレート化合物である。ポリエチレングリコールジアクリレートの構造式を下記に示す。
上記の構造式において、nは正の整数である。好ましくはn=4〜30であり、より好ましくはn=10〜20である。上記の製品においては、A−200ではn=4であり、A−400ではn=9であり、A−600ではn=14であり、A−1000ではn=23である。
多官能(メタ)アクリレート化合物として、ポリエチレングリコールジメタクリレートが挙げられる。この化合物は、2官能のメタクリレート化合物である。ポリエチレングリコールジメタクリレートの構造式を下記に示す。
上記の構造式において、nは正の整数である。好ましくはn=4〜30であり、より好ましくはn=10〜20である。
多官能(メタ)アクリレート化合物として、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートが挙げられる。この化合物は、製品名A−DCPとして新中村化学工業株式会社から市販されている。この化合物は、2官能のアクリレート化合物である。トリシクロデカンジメタノールジアクリレートの構造式を下記に示す。
多官能(メタ)アクリレート化合物として、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートが挙げられる。この化合物は、2官能のメタクリレート化合物である。トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの構造式を下記に示す。
架橋剤としては、芳香環を含まないのであれば、上記以外の他の架橋剤を使用してもよい。例えば、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニル系化合物、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの1価の(メタ)アクリル化合物などが挙げられる。ただし、反射性、成形性を高めるためには、上記の架橋剤が好ましい。
架橋剤は、上記に示す化合物を1種単独で、あるいは2種以上を併用して、使用することができる。ただし、架橋剤全体として、芳香環を含まないようにする。
架橋剤としては、常温にて液体の架橋剤、及び、固体の架橋剤のいずれも使用することができる。液体の架橋剤と固体の架橋剤とを併用してもよい。このとき、架橋剤全体に対して常温にて液体の架橋剤は50質量%以上であってもよいし、50質量%以下であってもよい。ここでは、常温とは20℃のことを意味する。架橋剤として、固体の架橋剤を用いることが好ましい一態様である。それにより、固体の樹脂組成物を容易に得ることができる。架橋剤として、常温で液体の架橋剤を用いることも好ましい一態様である。それにより、成形時の流動性を高めることができる。常温にて液状の架橋剤を使用する場合、不飽和ポリエステルとして、結晶性不飽和ポリエステルを用いることが好ましい。その場合、不飽和ポリエステル樹脂組成物を固体状にしやすくすることができる。
従来、架橋剤としては、スチレンやジアリルフタレートなどの芳香環を有する化合物が主として使用されている。しかしながら、不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、上記のように架橋剤として芳香環を含まないものを用いることによって、熱による変色を高く抑制することができる。
不飽和ポリエステルと架橋剤との混合物は、不飽和ポリエステル樹脂として定義される。不飽和ポリエステル樹脂組成物においては、あらかじめ不飽和ポリエステル樹脂が調製されていてもよいし、不飽和ポリエステル及び架橋剤が、他の成分と同時に混合されていてもよい。
不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量のうち、架橋剤が占める割合は、1〜60質量%であることが好ましい。このとき、不飽和ポリエステルが占める割合は、40〜99質量%が好ましいこととなる。架橋剤の割合をこの範囲にすることにより、硬化性を十分に高めて良好な外観を有する成形体を得ることができるとともに、粉砕加工や押出しペレット加工がしやすくなって取り扱い性を向上することができる。架橋剤の割合は、5〜55質量%であることがより好ましい。このとき、不飽和ポリエステルが占める割合は、45〜95質量%がさらに好ましいこととなる。架橋剤の割合は、10〜50質量%であることがより好ましい。このとき、不飽和ポリエステルが占める割合は、50〜90質量%がさらに好ましいこととなる。
不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全量に対して、5〜50質量%であることが好ましい。それにより、流動性、耐熱性を高めることができる。不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全量に対して、10〜45質量%であることがより好ましい。不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全量に対して、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
白色顔料は、白色を呈する顔料である。白色顔料を含むことにより、光反射性を付与することができる。白色顔料としては、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される1種以上を配合することができる。このうち、特に酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムを好適に用いることができる。
酸化チタンとしては、例えば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルサイト型酸化チタンを挙げることができる。これらの中でも熱安定性に優れたルチル型酸化チタンを好適に用いることができる。また、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムは、特に制限なく用いることができる。
白色顔料の平均粒径は、好ましくは2.0μm以下である。白色顔料の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上である。それにより取扱い性が向上する。白色顔料の平均粒径は、より好ましくは0.03〜1.0μm、さらに好ましくは0.1〜0.7μm、よりさらに好ましくは0.2〜0.5μmの範囲である。なお、平均粒径はレーザー回折散乱法等により測定することができる。
白色顔料の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量を100質量部としたときに、好ましくは100質量部以上である。白色顔料の配合量をこの範囲内とすることにより、耐熱変色性に優れ、白色で高い反射率を有する光反射体を得ることができる。白色顔料の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量を100質量部としたときに、より好ましくは300質量部以下である。それにより、成形性を高めることができる。白色顔料の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量を100質量部としたときに、さらに好ましくは150質量部以上250質量部以下である。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、無機充填剤を含むことが好ましい。それにより、反射性を高めるとともに硬化後の形状安定性を高めることができる。また、無機充填剤を配合すると、熱伝導性を高めることができ、熱による変色や劣化をさらに抑制することができる。
無機充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、マイカなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上が併用して用いられる。
無機充填剤のなかでも特にシリカを好適に用いることができる。シリカとしては、例えば、溶融シリカ粉末、球状シリカ粉末、破砕シリカ粉末、結晶シリカ粉末を挙げることができる。それにより、反射性を高めるとともに、硬化後の形状安定性を高めることができる。特に溶融シリカが好ましい。
また、無機充填剤として、熱伝導性無機充填剤を用いることが好ましい。それにより、成形体の熱伝導性を高めることができ、熱による変色や劣化をさらに抑制することができる。熱伝導性無機充填剤としては、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の熱伝導性フィラーを用いることができる。このように熱伝導性フィラーを配合することによって、光反射体の熱伝導性を向上させることができる。また、熱伝導性無機充填剤としては、金属含有充填剤が好ましく、アルミニウム含有充填剤がより好ましい。アルミニウム含有充填剤としては、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。なお、酸化アルミニウムは、白色顔料としての機能を付与することもできる。
無機充填剤の平均粒径は、好ましくは100μm以下である。平均粒径をこの範囲とすることにより、良好な成形性と、耐熱変色性及び耐湿性に優れた不飽和ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。無機充填剤の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上である。それにより、取扱い性を高めることができる。無機充填剤の平均粒径は、より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下である。無機充填剤の平均粒径は、より好ましくは0.3μm以上である。なお、平均粒径はレーザー回折散乱法等により測定することができる。
無機充填剤の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量を100質量部としたときに、好ましくは40質量部以上である。それにより、硬化後の形状安定性を高めることができる。無機充填剤の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量を100質量部としたときに、好ましくは300質量部以下である。それにより、成形性を高めることができる。無機充填剤の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量を100質量部としたときに、より好ましくは50〜250質量部の範囲である。
また、無機充填剤として熱伝導性無機充填剤を含む場合、無機充填剤全体に対して熱伝導性無機充填剤は30質量%以上含むことが好ましい。それにより、熱伝導性を効果的に高めることができる。
白色顔料と無機充填剤との配合量の合計は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全体量に対して40〜80質量%であることが好ましい。この配合範囲とすることにより、優れた成形性を得ることがより可能になる。また、優れた耐熱変色性と高い反射率を有する光反射体を容易に得ることができる。白色顔料と無機充填剤との配合量の合計は、不飽和ポリエステル樹脂組成物全体量に対して50〜70質量%であることがより好ましい。
白色顔料と無機充填剤との配合量の合計に占める白色顔料の割合は30質量%以上が好ましい。それにより、反射性を高めることができる。白色顔料の割合が少なすぎると、初期反射率、耐熱試験後反射率低くなるおそれがある。白色顔料と無機充填剤の配合量の合計に占める白色顔料の割合は、95質量%以下であってよい。白色顔料の割合が多すぎると、樹脂組成物の製造中や光反射体の成形中に製造機器の磨耗による金属粉が樹脂組成物中に混入し、初期反射率が低下するおそれがある。白色顔料と無機充填剤の配合量の合計に占める白色顔料の割合は、より好ましくは35〜90質量%、さらに好ましくは40〜85質量%の範囲内である。
白色顔料と無機充填剤とを合わせた合計量は、不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量を100質量部としたときに、500質量部以下であることが好ましい。それにより、成形時の流動性を高めることができる。白色顔料と無機充填剤とを合わせた合計量は、不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量を100質量部としたときに、100質量部以上であることが好ましい。それにより、反射性を高めることができる。白色顔料と無機充填剤とを合わせた合計量は、不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量を100質量部としたときに、100〜400質量部の範囲であることがより好ましく、200〜300質量部の範囲であることがさらに好ましい。
なお、白色顔料、無機充填剤は、表面が脂肪酸やカップリング剤等で表面処理されていてもよい。それにより、凝集や吸油等が発生するのを抑制し、充填しやすくすることができる。
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物には、成形時の流動性や、反射率を阻害しない範囲において、他の無機充填剤や有機充填剤などを適宜配合することができる。例えば、酸化物及びその水和物、無機発泡粒子、シリカバルーン等の中空粒子等を挙げることができる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、硬化触媒を含むことが好ましい。硬化触媒を含むことにより、架橋構造を効率よく形成することができ、成形性と成形後の形状安定性とが高まる。硬化触媒は、硬化促進剤であってもよい。硬化触媒は、重合開始剤であってもよい。
重合開始剤としては、通常、不飽和ポリエステル樹脂組成物に用いられる加熱分解型の有機過酸化物を用いることができる。
有機過酸化物としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド等を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、10時間半減期温度が100℃以上の有機過酸化物を用いることが好ましい。具体的にはジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物には、硬化条件を調整するための重合禁止剤を適宜配合することができる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、モノメチルエーテルハイドロキノン、トルハイドロキノン、ジ−t−4−メチルフェノール、モノメチルエーテルハイドロキノン、フェノチアジン、t−ブチルカテコール、パラベンゾキノン、ピロガロール等のキノン類、2,6−ジーt−ブチル−p−クレゾール、2,2−メチレンービスー(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシー5−t−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系化合物を挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、補強材を含むことが好ましい。補強材を含むことにより、硬化収縮を抑制することができるとともに、成形体の強度を高めることができる。また、補強材により寸法安定性を高めることができる。補強材としては、通常、BMC(バルク・モールディング・コンパウンド)、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)等のFRP(ファイバー・レインフォースド・プラスチックス)に用いられる補強材であれば制限なく用いることができる。
補強材としては、例えば、ガラス繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカー、ハイドロタルサイト、等を挙げることができる。これらの中でも、ガラス繊維を好適に用いることができる。
ガラス繊維としては、珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維を挙げることができ、これらを長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)としたものを用いることができる。さらに、これらのガラス繊維に対して表面処理を施したものを用いることもできる。特に、繊維径10〜15μmのEガラス繊維を酢酸ビニル等の収束剤にて収束し、シランカップリング剤にて表面処理した後、3〜6mmにカットされたチョップドストランドを好適に用いることができる。
補強材の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量を100質量部としたときに、10〜200質量部の範囲であることが好ましい。それにより、硬化収縮抑制効果と補強効果とを高く得ることができる。補強材の配合量は、不飽和ポリエステルと架橋剤とを合わせた合計量を100質量部としたときに、より好ましくは20〜100質量部、さらに好ましくは30〜80質量部の範囲である。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、離型剤を含むことが好ましい。離型剤を含むことにより、離型性を高めることができるため製造が容易になる。
離型剤としては、一般に熱硬化性樹脂に用いられる脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、鉱物系等のワックス類を用いることができる。特に、耐熱変色性に優れた脂肪酸系、脂肪酸金属塩系のものを好適に用いることができる。
離型剤としては、具体的にはステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウムを挙げることができる。これらの離型剤は単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
離型剤は、不飽和ポリエステルと架橋剤との合計量を100質量部としたときに、1〜15質量部の範囲で配合することができる。離型剤の配合量がこの範囲であると、良好な離型性と優れた外観をさらに両立させることができ、また、成形体の反射性を高めることができる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物には、着色剤、増粘剤、その他有機系添加剤、無機系添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、粒状、粉末状などの固体物として得ることができる。すなわち、不飽和ポリエステル樹脂組成物は、乾式の不飽和ポリエステル樹脂組成物として構成され得る。ここで乾式とは30℃以下の温度範囲において固体であり、粉砕加工や押出しペレット加工により粒状に加工できることを意味する。不飽和ポリエステル樹脂組成物が固体状になると、保存安定性及びハンドリング性を向上することができる。固体となった不飽和ポリエステル樹脂組成物は、50℃以下の温度で保存形状安定性を有することが好ましい。それにより、取扱い性や作業性をさらに高めることができる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、無溶媒で調製することができる。無溶媒で調製することにより、容易に固体状の樹脂組成物を得ることができる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、各成分を配合して、ミキサー、ブレンダー等を用いて十分均一に混合した後、加熱加圧可能な混練機、押し出し機等にて調製し、粉粒化することにより製造することができる。固体状の原料を用いることにより、粉体混合装置により簡単に混合することができる。混練機として、加圧ニーダー、熱ロール、エクストルーダー等を用いてもよい。粉粒化にあたっては、バルク体を形成した後、粉砕・整粒してもよい。また、適宜、造粒してもよい。不飽和ポリエステル樹脂組成物は、粒状、粉末状、ペレット状などで得られる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、無溶媒で成形を行うことができる。不飽和ポリエステル樹脂組成物は、加熱により軟化して溶融するため、無溶媒であっても、熱により液状となった樹脂組成物を適宜の形状に成形することができる。もちろん、成形性を考慮し、適宜、溶媒を加えてもよい。ただし、成形容易性の観点からは無溶媒が好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、熱硬化性樹脂である。そのため、熱硬化性樹脂を硬化させるための適宜の硬化条件により、硬化物を得ることができる。また、成形型などを使用して加熱成形することにより、硬化物からなる成形体を得ることができる。この成形体が発光素子用光反射体となる。すなわち、光反射体用不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して、発光素子用光反射体が製造される。
発光素子用光反射体を製造するにあたっては、不飽和ポリエステル樹脂組成物を材料として、適宜の熱硬化性樹脂組成物の成形方法を用いることにより製造することができる。固体状の不飽和ポリエステル樹脂組成物では、乾式で成形を行うことができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法等の溶融加熱成形法を好適に用いることができる。これらの中でも射出成形機を用いた射出成形法が特に好適である。射出成形法により成形時間をより短くすることができ、複雑な形状であっても、光反射体を精度よく容易に製造することが可能となる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、溶融時の熱安定性が良好であるため、これらの成形方法に適している。加熱条件は、不飽和ポリエステル樹脂組成物が軟化して流動する条件であってよい。例えば、50〜300℃の範囲にすることができる。上記の不飽和ポリステル樹脂組成物では、流動性が高いため、成形が容易である。加熱温度は、好ましくは100〜200℃の範囲である。
ところで、液状の組成物、すなわち、粘性を有する不飽和ポリエステル樹脂組成物を用いた成形では、成形材料をペレット状などにすることができない。この場合、湿式の条件での成形となる。そのため、ハンドリング性が悪く、射出成形機で成形する場合にはホッパーにプランジャー等の設備を設ける必要があり、製造コストがかかる。一方、固体状の組成物を用いた場合には、保存安定性に優れ、射出成形機のホッパーから投入するのみで成形が可能であるためハンドリング性に優れている。また、製造コストを低く抑えることができる。
成形後に、成形体のフレーム上にバリが発生した場合には、バリを除去することが好ましい。上記の不飽和ポリエステル樹脂組成物であれば、バリの密着性が低いため、容易にバリを除去することができる。発生したバリの除去は、適宜の方法により行うことができる。カッティングや切削などであってもよい。作業性の観点からは、バリの除去はブラスト処理により行うことが好ましい。ブラスト処理としては、バリ取りに用いられるブラスト処理法を用いることができる。これらのものとしては、例えばショットブラスト、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト等を挙げることができる。
成形によって得た光反射体は、熱劣化による変色が抑制される。光反射体は、LED電球等のLED照明器具用のLEDリフレクターとして使用することができる。不飽和ポリエステル樹脂組成物から得られる光反射体は、寿命が長い安価なLEDリフレクターを構成することができる。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、硬化後の可視光領域における光反射率が90%以上であることが好ましい。それにより、光反射性の高い光反射体を得ることができる。ここで、可視光領域とは、波長400〜700nmnの範囲とする。硬化後の可視光領域における光反射率は、好ましくは92%以上であり、より好ましくは93%以上である。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、硬化後に、150℃、1000時間の加熱処理をした後の可視光領域における光反射率が、80%以上であることが好ましい。それにより、反射性を長期に維持することが可能な光反射体を得ることができる。この光反射率は、85%以上がより好ましく、88%以上がさらに好ましく、90%以上がよりさらに好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂組成物は、硬化後の熱伝導率が0.1W/mK以上であることが好ましい。それにより、熱による変色や劣化の少ない光反射体を得ることができる。不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化後の熱伝導率は、好ましくは0.3W/mK以上、より好ましくは0.5W/mK以上、さらに好ましくは0.7W/mK以上である。硬化後の熱伝導率は高い方がよいが反射性との両立のためには10W/mK以下であってもよい。硬化後の熱伝導率はさらに5W/mK以下であってもよい。
不飽和ポリエステル樹脂組成物から得られた光反射体は、初期白色度が95以上になり、150℃100時間後の色差におけるb値が2.5以下になり得る。そのため、白色度が高く高反射率を長期間維持することができる。
色差及び白色度の測定方法を示す。測定にあたっては、不飽和ポリエステル樹脂組成物から得られた成形板を用いる。この成形板を使用し、SMカラーコンピューター(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS Z8730に規定されるハンターの色差式による明度(L値)、赤色度(a値)および黄色度(b値)を求めることができる。そして、以下の式に従って、白色度(ハンター式)を算出することができる。
白色度: W = 100−〔(100−L)2+a2+b2〕1/2
上記の式中、aは赤色度(a値)を表し、bは黄色度(b値)を表し、Lは明度(L値)を表す。
図1に、不飽和ポリエステル樹脂組成物を成形して得た光反射体を用いたLED照明装置の一例を示す。この光反射体はLEDリフレクター1である。光反射体は枠状に形成されており、中央部に凹部2と穴部3とを有している。凹部2は、壁面が傾斜した面となって設けられている。凹部2の壁面が光を反射させる反射面となる。穴部3は、凹部2の底部においてLEDリフレクター1を貫通するように設けられている。この穴部3には、発光素子であるLED5が搭載されたリードフレーム4が嵌め込まれている。リードフレーム4には、LED5に電気を供給するための配線が設けられていてよい。凹部2の発光面側(図の上部)は、透明なカバー6により覆われている。それにより、LED5が保護される。カバー6は凹部2の開口縁部においてLEDリフレクター1に接合されている。LEDリフレクター1は、LED5の発光を効率よく反射するための反射板として機能する。LEDリフレクター1の形状は、図1の形状に限られるものではなく、実装されるLED5の光量や色、指向性特性等を考慮して適宜設計することができる。上記の不飽和ポリエステル樹脂組成物では、成形性が良好なため目的とする形状の成形体を容易に得ることができる。
<不飽和ポリエステル樹脂組成物の製造>
表1に示す各実施例及び各比較例の不飽和ポリエステル樹脂組成物を作製した(実施例1〜11、比較例1〜4)。各配合成分の配合量は、表1に示す通りである。表1では配合量を質量部の単位で示している。作製にあたっては、配合成分の混合物をシグマブレンダーにて均一に混合した後、100℃に加熱した熱ロールにて混練しシート状の混練物を作製し、これを冷却・粉砕・整粒した。これにより、粒状の樹脂組成物を得た。
配合成分としては以下のものを用いた。
<配合成分>
(1)不飽和ポリエステル
結晶性不飽和ポリエステル:日本ユビカ(株)製「T−855」
非晶性不飽和ポリエステル:日本ユピカ(株)製「ユピカ8552」
(2)架橋剤
トリアリルイソシアヌレート:日本化成(株)製「TAIC」
トリアリルシアヌレート:(株)武蔵野化学研修所製「TAC」
脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート:新中村化学工業(株)製「A−600」(ポリエチレングリコールジアクリレート)
脂環式(メタ)アクリレート:新中村化学工業(株)製「A−DCP」(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)
脂肪族ビスマレイミド:大和化成(株)製「BMI−TMH」(1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン)
脂環式ビスマレイミド:合成品、1,3−ジアミノメチルシクロヘキサンと無水マレイン酸との反応によって得られるビスマレイミド
スチレンモノマー:旭化成(株)製
ジアリルフタレートプレポリマー:ダイソー(株)製「DAP K」
(3)硬化触媒
ジクミルパーオキサイド:日油(株)製「パークミルD40」(DCP)、40%マスターバッチ
(4)白色顔料
酸化チタン:タイオキサイドジャパン(株)製「Tioxide RTC−30」(ルチル型酸化チタン、平均粒径0.4μm)
(5)無機充填剤
シリカ:電気化学工業(株)製「FB−820」(溶融シリカ、平均粒径25μm)
酸化アルミニウム:電気化学工業(株)製「DAW−05」(平均粒径0.5μm)
(6)補強材
ガラス繊維:オーエンスコーニングジャパン社製「CS03IE830A」(3mm長)
(7)離型剤
ステアリン酸亜鉛:堺化学工業(株)製「SZ−P」。
<評価>
(1)射出成形性
各実施例及び各比較例の不飽和ポリエステル樹脂組成物を用い、射出成形機(松田製作所製、150トン 熱硬化性射出成形機)により、金型温度160℃・硬化時間60秒の条件で、JISK6911に準拠した成形収縮率測定用テストピースを作製した。得られたテストペースについて、目視にて実成形評価を行った。成形が良好なものを「○」、成形が不良のものを「×」とした。
(2)トランスファー成形性
各実施例及び各比較例の不飽和ポリエステル樹脂組成物を用い、トランスファー成形機(50トン プランジャー式トランスファー成形機)により、JISK6911に準拠した成形収縮率測定用テストピースを作製した。得られたテストピースについて、目視にて実成形評価を行った。成形が良好なものを「○」、成形が不良のものを「×」とした。
(3)初期反射率
上記の射出成形によって厚さ1mm、幅50mm、長さ50mmの板をテストピース(試験板)として作製し、このテストピースの初期反射率を反射率測定器(日本電色製 SD6000)で測定した。
(4)加熱後の反射率
上記の射出成形によって得られたテストピース(試験板)を加熱放置した後、波長:460nmのLEDを取り付けてLED照明装置を作製し、熱履歴後の反射率を反射率測定器(日本電色製 SD6000)で測定した。加熱放置は、170℃、3時間の条件と、150℃、1000時間の条件との二つの条件で行った。前者の条件は封止剤の熱硬化工程を想定したものである。後者の条件は実使用における熱負荷を想定した加速試験の温度条件である。
(5)耐熱変色性
上記の150℃、1000時間処理後のテストピースの反射率において、反射率が、70%未満のものを「×」、70%以上80%未満のものを「△」、80%以上88%未満のものを「○」、88%以上のものを「◎」とした。
(6)保存安定性
各実施例及び各比較例の不飽和ポリエステル樹脂組成物の外観を20℃の条件で180日間観察し、樹脂組成物が初期の状態から変化しているか否かで保存安定性を判定した。変化がないものを「○」とし、変化があるものを「×」とした。
(7)熱伝導率
上記の射出成形によって得られたテストピース(試験板)の熱伝導率を測定した。熱伝導率はQTM法に基づいて測定した。なお、QTM法は非定常法細線加熱法であり、迅速熱伝導率計で測定できる。
<評価結果>
表1に各評価の結果を示す。
実施例1〜11では、射出成形性、トランスファー成形性、保存安定性の結果において全て良好な結果が得られた。そして、初期反射率、加熱放置後の反射率がいずれも高かった。特に、170℃、3時間の処理後においては、初期反射率と処理後反射率との差が、比較例1〜4よりも小さい。また、150℃、1000時間の処理後においては、反射率が比較例1〜4よりも高いレベルを維持している。