以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。なお、図1〜図4において、各工程と、各工程での主要な装置又はユニットには共通の符号を付す場合がある。また、特に断りがなければ、分液により生成したアセトアルデヒドを含む水相は、軽質相又は上相と同義に用い、ヨウ化メチルを含む有機相は、重質相、ヨウ化メチル相又は下相と同義に用いる。また、抽出により生成する水相を抽出液(エクストラクト)、有機相をラフィネートと同義に用いる。
また、蒸留塔に関し、「段数」とは、理論段数もしくは実段数を意味し、例えば、理論段1段は、段効率が50%の実段2段と同義である。また、蒸留塔の形態は、棚段(オールダーショウ)塔に限らず、充填塔であってもよく、蒸留塔の種類は特に制限されない。なお、以下の説明において、単に段数と記載するとき、特に断りがない限り、棚段塔での実段数を意味する。また、充填塔において流体の流入/流出位置は、棚段塔の段の高さ位置に対応した位置を意味し、例えば、実段数50段の棚段塔の下から20段目の段は、充填塔において、下から20段/50段に相当する高さ位置(充填塔の充填層の高さ「1」に対して「0.4」の高さ位置)を意味する。
図1に示す例では、金属触媒としてのロジウム触媒、および助触媒[ハロゲン化金属としてのヨウ化リチウム、およびヨウ化メチル]で構成された触媒系、並びに酢酸、酢酸メチル、有限量の水の存在下、メタノールと一酸化炭素とのカルボニル化反応により生成した反応混合物から酢酸を製造する連続プロセス(又は製造装置)が示されている。
このプロセス(又は製造装置)は、メタノールのカルボニル化反応を行うための反応工程(反応系又は反応器)(1)と;生成酢酸を含む反応混合物(反応液)を、揮発相(又は低沸点成分)(2A)と低揮発相(又は高沸点成分)(2B)とに分離するためのフラッシュ蒸発工程(フラッシャー)(2)と;前記揮発相(2A)を、第1のオーバーヘッド(3A)と、サイドカット流としての酢酸流(3B)と、缶出液体流(高沸点成分)(3C)とに分離するための第1の蒸留工程(スプリッターカラム又は蒸留塔)(3)と;第1のオーバーヘッド(3A)を凝縮して凝縮液を二相に分液するための第1の分液工程(4)と;この分液工程(4)で分液した有機相(ヨウ化メチルに富む重質相)を、第2のオーバーヘッド流(5A)と、サイドカット流(5B)と、底部流(5C)とに分離するための第2の蒸留工程(第2の蒸留塔)(5)と;第2のオーバーヘッド流(5A)とサイドカット流(5B)とを二相に分液するための第2の分液工程(分離ユニット6a、ホールドタンク6bおよびデカンタ6c)(6)と;この第2の分液工程(6)で分液した水相(軽質相)を、第3のオーバーヘッド流(7A)と、液体流(7B)とに分離する第3の蒸留工程(第3の蒸留塔)(7)と;第3のオーバーヘッド流(7A)をさらに水抽出蒸留してオーバーヘッド流(8A)と缶出液体流(8B)とに分離する第4の蒸留工程(第4の蒸留塔)(8)とを含んでいる。
なお、これらの工程のうち、本発明は、少なくとも第2の蒸留工程(5)を含んでいればよく、他の工程(例えば、第1の分液工程(4)、第2の分液工程(6)、第3の蒸留工程(7)および第4の蒸留工程(8))は必ずしも必要ではない。本発明は、第1の蒸留工程(3)と、分液工程(4)と、第2の蒸留工程(5)とを含んでいる場合が多く、分液工程(6)を含んでいてもよい。なお、第2の蒸留工程(5)は単一の蒸留工程に限らず、複数の蒸留塔による複数の蒸留工程で形成してもよい。また、酢酸の製造では、通常、反応工程(1)とフラッシュ蒸発工程(フラッシャー)(2)とをさらに含んでいる。
なお、各蒸留工程(3)(5)(7)(8)での蒸留塔(第1の蒸留工程(3)でのスプリッターカラムを含む)としては、棚段塔、充填塔などが利用できる。
以下に、図1に示すプロセスをより詳細に説明する。
反応工程(反応器)(1)
反応工程(反応器)(1)では、カルボニル化触媒系と水とを含む反応媒体中、メタノールと一酸化炭素とを連続的に反応器に供給してメタノールをカルボニル化し、酢酸を生成する。
カルボニル化触媒系は、通常、金属触媒(コバルト触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒など)と、触媒安定化剤又は反応促進剤と、助触媒とを含んでいる。金属触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい金属触媒は、ロジウム触媒およびイリジウム触媒(特に、ロジウム触媒)である。
金属触媒は、金属単体、金属酸化物(複合酸化物を含む)、水酸化物、ヨウ化物、カルボン酸塩(酢酸塩など)、無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など)、錯体などの形態で使用できる。金属触媒は液相(反応液)中で可溶な形態(錯体などの形態)で使用するのが好ましい。ロジウム触媒としては、ロジウムヨウ素錯体(例えば、RhI3、[RhI2(CO)4]−、[Rh(CO)2I2]−など)、ロジウムカルボニル錯体などが好ましい。金属触媒の濃度は、例えば、反応器内の液相全体に対して100〜5000ppm(重量基準、以下同じ)、好ましくは200〜3000ppm、さらに好ましくは300〜2000ppm、特に500〜1500ppm程度である。
触媒安定化剤又は反応促進剤としては、反応液中でヨウ素イオンを発生可能な金属ヨウ化物、例えば、ヨウ化アルカリ金属(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)が挙げられ、中でもヨウ化リチウムが好ましい。これらの触媒安定化剤又は促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
触媒安定化剤又は反応促進剤の濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜25重量%、好ましくは2〜22重量%、さらに好ましくは3〜20重量%程度である。さらに、反応系でのヨウ化物イオンの濃度は、例えば、0.05〜2.5モル/L、好ましくは0.25〜1.5モル/Lであってもよい。
前記助触媒としては、ヨウ化メチルが利用される。ヨウ化メチルの濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは6〜20重量%(例えば、8〜18重量%)程度である。
好ましいカルボニル化触媒系は、ロジウム触媒と、触媒安定化剤としてのヨウ化金属(ヨウ化リチウム)およびヨウ化メチル助触媒とで構成できる。なお、前記反応器には、カルボニル化触媒系を含む触媒混合物(触媒液)および水を供給してもよい。
反応媒体(又は液相)は、通常、生成した酢酸、生成した酢酸と原料メタノールとの反応により生成した酢酸メチル、および水を含んでいる。酢酸は溶媒としても機能する。また、反応媒体(又は液相)は、通常、未反応の原料メタノールも含んでいる。酢酸メチルの含有割合は、反応液全体の0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%(例えば、0.5〜6重量%)程度の割合であってもよい。反応媒体中の水濃度は、低濃度であってもよく、反応液全体に対して、例えば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは0.8〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であり、1〜10重量%(例えば、2〜5重量%)程度であってもよい。
反応器中の一酸化炭素分圧は、例えば、0.2〜3MPa、好ましくは0.4〜1.5MPa程度であってもよい。後続の工程から得られる一酸化炭素を含む排ガス成分を反応系にリサイクルしてもよい。
前記カルボニル化反応では、一酸化炭素と水との反応により、水素が発生する。この水素は触媒活性を高める。そのため、前記反応器には、必要により水素を供給してもよい。また、プロセスから排出された気体成分(水素、一酸化炭素などを含む)を、後続の工程で、必要により精製/分離して反応系にリサイクルすることにより、水素を供給してもよい。反応系の水素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.5〜250kPa(例えば、1〜200kPa)、好ましくは5〜150kPa、さらに好ましくは10〜100kPa(例えば、10〜50kPa)程度であってもよい。
カルボニル化反応温度は、例えば、150〜250℃、好ましくは160〜230℃、さらに好ましくは170〜220℃程度であってもよい。反応圧力(全反応器圧)は、副生成物の分圧を含めて、例えば、1.5〜4MPa程度であってもよい。
反応器内では、反応成分と金属触媒成分とを含む液相反応系と、一酸化炭素および反応により生成した水素、メタン、二酸化炭素、並びに気化した低沸成分(ヨウ化メチル、生成した酢酸、酢酸メチルなど)などで構成された気相系とが平衡状態を形成しており、メタノールのカルボニル化反応が進行する。反応器(1)の塔頂から蒸気成分(ベントガス)を抜き出してもよく、蒸気成分(ベントガス)を吸収処理することにより一酸化炭素及び/又は水素を回収して反応器へリサイクルしてもよい。
反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い低沸成分又は低沸不純物(助触媒としてのヨウ化メチル、酢酸とメタノールとの反応生成物である酢酸メチル、水、副反応生成物であるアセトアルデヒドなど)、および酢酸よりも沸点の高い高沸成分又は高沸不純物[金属触媒成分(ロジウム触媒など)、触媒安定剤としてのヨウ化リチウム、プロピオン酸などのC3−12アルカンカルボン酸など]などが含まれる。さらに、アセトアルデヒドに由来の副生成物(アセトアルデヒドからの誘導体)、例えば、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;これらのアルドール縮合生成物;ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C2−12アルキルなども生成する。また、3−ヒドロキシアルカナール(3−ヒドロキシブタナールなど);蟻酸や、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸などのC3−12アルカンカルボン酸;ブチルアルコール、2−エチルブチルアルコールなどのC3−12アルキルアルコールなど);メタノール又は上記アルキルアルコールと酢酸又は前記カルボン酸とのエステル;メタノール及び/又は前記アルキルアルコールのエーテル類(ジメチルエーテルなどのジアルキルエーテル類):メタンおよび炭素数2以上の炭化水素類(例えば、C2−12アルカン)なども生成する。これらの副生成物は、アセトアルデヒド濃度の2〜3乗に比例して副生する場合が多い。また、メタンおよび炭素数2以上の炭化水素類(例えば、C2−12アルカン)も生成する。また、アセトアルデヒドおよびアセトアルデヒド由来の副生物(例えば、アルデヒド類、ケトン類、アルドール縮合生成物など)は、過マンガン酸還元性物質(PRC類)を形成する。そのため、反応混合物から副生物の主たる成分であるアセトアルデヒドを分離して除去し、有用な成分(例えば、ヨウ化メチルなど)は、プロセス流から回収して有効に利用するのが好ましい。なお、ヨウ化メチルを含め、ヨウ化C2−12アルキルなどもPRC類に属するが、本発明では、ヨウ化メチルはPRC類には含めない。
本発明では、アセトアルデヒドを効率よく分離除去できるため、連続反応であっても、反応器のアセトアルデヒドの濃度を低減でき、アセトアルデヒド濃度の低減又は除去と相まって、アセトアルデヒド由来の副生成物の生成も著しく抑制できる。例えば、反応器におけるPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、プロセス全体を通して、反応器内の液相全体の1000ppm以下(例えば、0又は検出限界〜700ppm)、好ましくは400ppm以下(例えば、5〜300ppm)、さらに好ましくは10〜250ppmであってもよい。
反応系での目的カルボン酸(酢酸)の空時収量は、例えば、5〜50mol/Lh、好ましくは8〜40mol/Lh、さらに好ましくは10〜30mol/Lh程度であってもよい。
なお、前記反応系は、発熱を伴う発熱反応系であり、除熱した凝縮成分のリサイクル、除熱ユニット又は冷却ユニット(ジャケットなど)などにより反応温度をコントロールしてもよい。また、反応熱の一部を除熱するため、反応器からの蒸気成分(ベントガス)を、コンデンサや熱変換器などにより冷却し、液体成分と気体成分とに分離し、液体成分及び/又は気体成分を反応器にリサイクルしてもよい。
フラッシュ蒸発工程(2)
フラッシュ蒸発工程(2)では、前記反応器1から反応混合物の一部を連続的に抜き取りつつ、供給ライン11を通じてフラッシャー(触媒分離塔)(2)に導入又は供給し、反応混合物をフラッシュ蒸発させ、生成酢酸、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、酢酸メチル、水などを含む揮発相(2A)と、ロジウム触媒およびヨウ化リチウムを含む低揮発相(2B)とに分離される。少なくとも一部の揮発相(2A)は、供給ライン22を通じて、第1の蒸留工程(3)の蒸留塔に供給され、低揮発相(2B)は、リサイクルライン21を通じて、反応工程(1)の反応器にリサイクルされる。
なお、一部の揮発相(2A)は、ライン23のコンデンサC1で冷却して凝縮してもよく、凝縮液はホールドタンクHTで貯留し、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。また、コンデンサC1からの冷却物(凝縮液及び/又は非凝縮成分)は、ライン26を通じて分液工程(4)に供給し、デカンタ(4)内で、第1の蒸留工程(スプリッターカラム)(3)からのオーバーヘッド(3A)とともに二相に分液してもよい。
[揮発相の凝縮]
なお、一部の揮発相(2A)は、凝縮することなく、直接的に又は分液工程(4)を介して間接的に第2の蒸留工程(5)に供給してもよく、1又は複数のコンデンサC1で冷却して凝縮させて二相に分液し、分液した水相又は有機相(少なくとも水相)を、直接的又は分液工程(4)を介して間接的に、第2の蒸留工程(5)に供してもよい。例えば、一部の揮発相(2A)は、必要により上記のように凝縮して(さらには必要であれば分液し)、分液工程(4)での凝縮液と合流させて、第2の蒸留工程(5)に供してもよい。
また、必要であれば、低揮発相(2B)から、単一又は複数の工程で触媒成分(金属触媒成分)および触媒安定化剤又は反応促進剤を分離し、反応工程(1)にリサイクルして再利用してもよい。
フラッシュ蒸発は、反応混合物を加熱して減圧する恒温フラッシュ、反応混合物を加熱することなく減圧する断熱フラッシュ、若しくはこれらのフラッシュ条件を組み合わせたフラッシュなどにより、反応混合物から蒸気成分と液体成分とに分離してもよい。フラッシュ蒸留は、例えば、反応混合物の温度80〜200℃程度、圧力(絶対圧力)50〜1000kPa(例えば、100〜1000kPa)、好ましくは100〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPa程度で行うことができる。
フラッシュ蒸発は、例えば、温度100〜250℃(例えば、110〜200℃)、好ましくは120〜180℃(例えば、125〜170℃)、さらに好ましくは130〜160℃程度で行ってもよい。圧力(ゲージ圧力)は、0.01〜1MPa(例えば、0.03〜1MPa)、好ましくは0.05〜0.5MPa、さらに好ましくは0.08〜0.3MPa(例えば、0.1〜0.2MPa)程度であってもよい。また、低揮発相又は触媒液の温度は、例えば、80〜200℃(例えば、90〜180℃)、好ましくは100〜170℃(例えば、120〜160℃)、さらに好ましくは130〜160℃程度であってもよい。
第1の蒸留工程(スプリッターカラム)(3)
第1の蒸留工程(スプリッターカラム)(3)では、前記揮発相(2A)を、塔頂又は塔の上段部から留出ライン32を通じて留出する第1のオーバーヘッド(塔頂ガス、低沸点流分又は低沸点成分)(3A)と、ライン38を通じてサイドカットされ、主に酢酸を含む酢酸流(3B)と、塔底又は塔の下段部から缶出ライン31を通じて流出する缶出液体流(高沸点流分又は高沸点成分)(3C)とに分離している。なお、第1のオーバーヘッド流又はオーバーヘッド(3A)の割合は、揮発相(2A)全体の35〜50重量%程度であってもよい。
第1のオーバーヘッド流(3A)は、混合物(3A)に対応し、少なくとも過マンガン酸還元性物質(PRC類)およびヨウ化メチルを含んでおり、PRC類は、少なくとも副生したアセトアルデヒドを含んでいる。さらに、第1のオーバーヘッド流(3A)は、通常、酢酸メチルを含んでおり、さらに、酢酸、メタノール、水、ジメチルエーテル、アセトアルデヒド由来の副生成物(クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類、ヨウ化C2−12アルキル、C3−12アルカンカルボン酸などのアセトアルデヒドからの誘導体、C2−12アルカン)などを含んでいる場合が多い。
酢酸流又はサイドカット流(3B)は、脱水、又は高沸点成分などを除去するため、さらに蒸留塔(図示せず)などによる精製工程に供給され、精製された高純度酢酸を生成する。液体流(3C)は、通常、少なくとも水および酢酸を含んでおり、さらにメタノール、プロピオン酸などを含んでいる場合が多い。なお、液体流(3C)には、飛沫同伴により金属触媒成分が混入している場合がある。液体流(3C)は、ライン31を通じて排出してもよく、液体流(3C)の一部又は全部は、ライン90を通じて反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。
本発明の方法は、少なくともPRC類およびヨウ化メチルを含む混合物又はオーバーヘッド流に適用でき、第1のオーバーヘッド(3A)はガス状の形態で第2の蒸留工程(5)に供してもよい。好ましい態様では、少ない抽出溶媒および小さな抽出空間でPRC類を有効に抽出するため、少なくともヨウ化メチル、特に少なくともヨウ化メチルおよびPRC類の双方の濃度が高い混合物又はオーバーヘッド流(3A)に有効に適用される。なお、混合物又はオーバーヘッド流(3A)では水濃度が濃縮又は増加していてもよい。そのため、図1に示すように、先行する工程又は単位操作(蒸留工程(3)、分液工程(4)など)により、ヨウ化メチル、特にヨウ化メチルおよびPRC類の双方が濃縮された混合物(3A)を生成させている。この例では、分液工程(4)で凝縮して分液し、分液した有機相及び/又は水相を第2の蒸留工程(5)に供している。
第1の蒸留工程(3)の蒸留塔(スプリッターカラム)の塔内温度は、圧力に依存するが、常圧(1気圧=約0.1MPa)において、塔頂温度は、例えば、20〜100℃(例えば、30〜80℃)、好ましくは40〜70℃(例えば、50〜60℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、40〜120℃(例えば、50〜100℃)、好ましくは60〜90℃(例えば、70〜85℃)程度であってもよく、圧力は、絶対圧力で、例えば、約0.1〜0.5MPa程度、好ましくは0.2〜0.4MPa、さらに好ましくは0.25〜0.35MPaであってもよい。
蒸留塔の理論段は、例えば、2〜100段(例えば、5〜70段)、好ましくは7〜50段(例えば、10〜30段)程度であってもよい。蒸留塔での還流比は、全還流、もしくは、例えば、1〜5000(例えば、10〜4000)、好ましくは100〜3000(例えば、500〜2000)程度であってもよい。
第1の蒸留工程(3)の蒸留塔(スプリッターカラム)の塔内温度は、圧力に依存し、常圧(1気圧=約0.1MPa)において、塔頂温度は、例えば、50〜180℃(例えば、70〜170℃)、好ましくは80〜160℃(例えば、90〜140℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、60〜200℃(例えば、80〜180℃)、好ましくは90〜170℃(例えば、100〜160℃)程度であってもよく、圧力(ゲージ圧)は、例えば、約0.05〜0.5MPa、好ましくは0.08〜0.4MPa、さらに好ましくは0.1〜0.3MPa程度であってもよい。
蒸留塔の理論段は、例えば、2〜100段(例えば、5〜70段)、好ましくは7〜50段(例えば、10〜30段)程度であってもよい。蒸留塔の還流比は、全還流、もしくは、例えば、1〜1000(例えば、5〜500)、好ましくは10〜100(例えば、15〜50)程度であってもよい。 凝縮/分液工程(4)
第1の蒸留工程(スプリッターカラム又は蒸留塔)(3)からの第1のオーバーヘッド(3A)は、留出ライン32のコンデンサC2で冷却・凝縮され、デカンタ(デカンタ装置、貯蔵器)(4)内で、アセトアルデヒドに富む水相と、ヨウ化メチルに富む有機相との二相に分液可能である。凝縮液(水相及び/又は有機相)の一部は、還流ライン42(42a,42b)によりスプリッターカラム(3)に還流される。少なくとも一部の水相は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給され、少なくとも一部の有機相はライン41を通じて反応工程(1)にリサイクルされる。なお、図示する例では、水相の一部を還流ライン42bによりスプリッターカラム(3)に還流するとともに、水相の残りを供給ライン43bを通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給し、有機相の一部を還流ライン42aによりスプリッターカラム(3)に還流し、有機相の他の一部を供給ライン44を通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給し、残部をライン41を通じて反応工程(1)にリサイクルしている。
なお、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔には、サイドカット流(5B)が分液可能である限り、水相(一部又は全部の水相)を供給してもよく、少なくとも一部の有機相(又は全部の有機相)を供給してもよい。水相及び有機相のそれぞれのヨウ化メチル濃度は、例えば、1.5重量%以上(例えば、2〜99重量%、好ましくは3〜95重量%、さらに好ましくは5〜90重量%)であってもよい。好ましい態様では、少なくとも一部の有機相(ヨウ化メチルに富む有機相)を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給する場合が多く、少なくとも一部の水相を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給してもよい。
なお、凝縮液を一時的にホールド又は貯蔵して二相に分液するための分液工程(デカンタ)(4)に加えて、必要であれば、デカンタ(4)の凝縮液(分液した下相又は上相)を一時的に貯蔵する(又は滞留させる)ためのバッファタンクを利用し、プロセス流の流量変動などを抑制してもよい。
なお、凝縮液(並びに水相および有機相)の温度は、例えば、20〜110℃(例えば、25〜90℃)、好ましくは30〜80℃(例えば、35〜70℃)程度であってもよい。
[分液/凝縮するガス相成分]
なお、分液工程(4)では、プロセスから発生するガス(オフガス)、例えば、反応工程(1)、フラッシュ蒸発工程(2)および第1の蒸留工程(3)並びに後続の蒸留工程(5)(7)(8)のうち少なくとも1つの工程(例えば、少なくとも第1の蒸留工程(3))から発生し、かつ少なくともアセトアルデヒドおよびヨウ化メチルを含むガス相成分(オーバーヘッド)を凝縮して二相に分液してもよい。
[複数の凝縮ステップ]
さらに、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、メタノール、水、アセトアルデヒドなどの中で、アセトアルデヒドは、ヨウ化メチルに近い沸点を有するとともに、最も低い沸点を有している。そのため、第1のオーバーヘッド流(3A)を、複数のコンデンサ(冷却温度が順次低下した複数のコンデンサ)で順次に冷却して、温度が順次に低下した凝縮液を生成させると、第1段目のコンデンサで凝縮したプロセス液(凝縮液)よりも、後段のコンデンサによる凝縮液中には、低沸点成分であるアセトアルデヒド濃度が高濃度に存在する。また、このような複数のコンデンサで第1のオーバーヘッド流(3A)を順次に冷却すると、第1のコンデンサでは、第1のオーバーヘッド流(3A)を第1の凝縮液とアセトアルデヒド濃度の高い第1のガス成分(非凝縮成分)とに分離でき、第2のコンデンサでは、第1のガス成分を、アセトアルデヒド濃度の高い第2の凝縮液と第2のガス成分(非凝縮成分)とに分離できる。そのため、アセトアルデヒドが高濃度に濃縮された濃縮液を第2の蒸留工程(5)に供し、アセトアルデヒドを分離してもよい。
なお、コンデンサのガス成分(非凝縮成分)はベントガス又はオフガス(排出ガス)として吸収系に供給し、ヨウ化メチルなどの有用成分をさらに回収してもよい。
[水抽出および分液]
さらには、図1に示すプロセスは、分液工程(4)に加えて、第1のオーバーヘッド流(3A)と水とを接触させて(水抽出して)分液し、ヨウ化メチルに富む有機相と、アセトアルデヒドに富む水相に分液する水抽出工程を有していてもよい。このように抽出工程では、第1のオーバーヘッド流(3A)を直接的に水と接触させてアセトアルデヒドを抽出し、必要により水相と有機相とに分液してもよく、抽出効率を高めるため、分液工程(4)で分液した水相及び/又は有機相と水を接触させてアセトアルデヒドを抽出してもよい。水抽出して分液した水相および有機相の少なくともいずれかの相を第2の蒸留工程(5)に供してもよい。通常、ヨウ化メチルに富む有機相を第2の蒸留工程(5)に供する場合が多い。また、アセトアルデヒドに富む水相は、第2の蒸留工程(5)の抽出溶媒として利用してもよく、塔頂部(最上段を1段として0段)からサイドカット流(5B)(又はサイドカット段)より1段上の間の濃縮域に仕込んでもよい。
オーバーヘッド流又は混合物(3A)は、蒸留により分液可能なサイドカット流(5B)を生成できればよく、混合物(3A)は二相に分液可能であってもよい。また、混合物(3A)が二相に分液可能であるとき、少なくとも一部の有機相、少なくとも一部の水相、若しくは前記有機相と水相との混合物を含むフィード液を蒸留工程(5)に供給できるため、混合物(3A)中のヨウ化メチル、PRC類、水などの濃度は広い範囲から選択できる。
なお、以下に、混合液(3A)とその分液相、第2のオーバーヘッド流(5A)、サイドカット流(5B)とその分液相、オーバーヘッド流(7A)(8A)又はそれらの凝縮液、缶出液体流(7B)(8B)などのプロセス流の組成に関し、代表的な成分(アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸メチル、酢酸、水およびジメチルエーテル)の濃度について記載するが、これらのプロセス流中には、後述するように、不可避的に混入する他の成分(不純物を含む)も含まれている。なお、本明細書において、成分割合について、これらのプロセス流(分液相を含む)の総量は不純物も含め、重量基準で100重量%である。また、「PRC類の濃度」は、各PRC類の濃度であってもよく、PRC類全体の濃度(総量の濃度)であってもよいことを意味し、単に「PRC類の濃度」と記載する。なお、代表的なPRC類は、アセトアルデヒドである。
混合物(3A)(分液しない均一液又は水相と有機相との混合液)のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、10ppm〜10重量%(例えば、100ppm〜5重量%)、好ましくは500ppm〜1重量%(例えば、0.1〜0.5重量%)程度であってもよい。また、本発明では、少量であってもPRC類(アセトアルデヒドなど)を有効に分離できるため、混合物(3A)中のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、100〜5000ppm(例えば、500〜3000ppm)、通常、750〜2500ppm(例えば、1000〜2000ppm)程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、10〜85重量%(例えば、25〜80重量%)、好ましくは40〜75重量%(例えば、50〜70重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0〜30重量%(例えば、0.1〜25重量%)、好ましくは1〜20重量%(例えば、5〜20重量%)程度であってもよく、7〜17重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよい。さらに、混合物(3A)の酢酸濃度は、例えば、0〜12重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.5〜8重量%(例えば、1〜7重量%)程度であってもよく;1〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、1重量%以上(例えば、5〜87重量%)、好ましくは10重量%以上(例えば、15〜85重量%)、さらに好ましくは20重量%以上(例えば、30〜83重量%)であってもよく;5〜50重量%(例えば、10〜40重量%)、好ましくは15〜35重量%(例えば、17〜30重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1ppm〜0.5重量%)、好ましくは5ppm〜0.3重量%(例えば、10〜500ppm)程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、10ppm〜5重量%(例えば、50ppm〜4重量%)、好ましくは0.01〜2.5重量%(例えば、0.03〜1.5重量%)程度であってもよい。
オーバーヘッド流又は混合物(3A)が分液しているとき、有機相(ライン41,42a、44)のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、1ppm〜10重量%(例えば、100ppm〜5重量%)、好ましくは300ppm〜2.1重量%(例えば、500ppm〜0.5重量%)程度であってもよく、100〜5000ppm(例えば、250〜4000ppm)、好ましくは500〜3000ppm(例えば、1000〜2500ppm)程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、10〜95重量%(例えば、30〜93重量%)、好ましくは50〜90重量%(例えば、70〜90重量%)、さらに好ましくは75〜85重量%(例えば、80〜85重量%)程度であってもよく;例えば、10重量%以上(例えば、15〜90重量%)、好ましくは20重量%以上(例えば、25〜90重量%)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、30〜80重量%)、特に40〜70重量%(例えば、50〜65重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜16重量%)、さらに好ましくは10〜18重量%程度であってもよい。さらに、混合物(3A)の有機相の酢酸濃度は、例えば、0〜10重量%(例えば、0.1〜7重量%)、好ましくは0.3〜5重量%(例えば、0.5〜3重量%)程度であってもよく、1〜5重量%(例えば、1.5〜3重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、0〜50重量%(例えば、0.01〜40重量%)、好ましくは0.1〜30重量%(例えば、0.2〜20重量%)、さらに好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよく;0〜5重量%(例えば、0.1〜3重量%)、好ましくは0.3〜2重量%(例えば、0.5〜1.5重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1ppm〜0.5重量%)、好ましくは5ppm〜0.3重量%(例えば、10ppm〜0.1重量%)、さらに好ましくは10〜100ppm(例えば、15〜70ppm)程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、10ppm〜4重量%(例えば、50ppm〜3重量%)、好ましくは0.01〜1重量%(例えば、0.03〜0.5重量%)程度であってもよい。
オーバーヘッド流又は混合物(3A)が分液しているとき、水相(ライン43a,43b)のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、500ppm〜30重量%(例えば、1000ppm〜25重量%)、好ましくは2000ppm〜20重量%(例えば、2500〜15重量%)、さらに好ましくは3000ppm〜5重量%(例えば、3000ppm〜5重量%)程度であってもよく、ヨウ化メチル濃度は、例えば、0.1〜30重量%(例えば、1〜25重量%)、好ましくは3〜20重量%(例えば、5〜15重量%)程度であってもよく;1.5重量%以上(例えば、2〜50重量%程度)、好ましくは2重量%以上(例えば、3〜40重量%程度)、さらに好ましくは4重量%以上(例えば、5〜30重量%程度)であってもよく;0.1〜10重量%(例えば、0.5〜7重量%)、さらに好ましくは1〜5重量%(例えば、1.5〜3.5重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜15重量%)程度であってもよく、5〜10重量%程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、5〜60重量%(例えば、10〜50重量%)、好ましくは20〜40重量%(例えば、25〜35重量%)程度であってもよく、15〜35重量%(例えば、20〜30重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、10〜90重量%(例えば、25〜80重量%)、好ましくは30〜75重量%(例えば、40〜70重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜0.3重量%(例えば、1ppm〜0.2重量%)、好ましくは5ppm〜0.1重量%(例えば、10〜500ppm)程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、100ppm〜7重量%(例えば、500ppm〜5重量%)、好ましくは0.1〜3重量%(例えば、0.3〜2重量%)程度であってもよい。
酢酸流又はサイドカット流(3B)のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0〜1000ppm)、好ましくは0〜500ppm(例えば、1〜100ppm)、さらに好ましくは0〜50ppm程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜7重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜8重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜1000ppm(例えば、0〜100ppm)、好ましくは0〜50ppm(例えば、0〜10ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、0〜0.5重量%)、好ましくは0〜5000ppm(例えば、0〜1000ppm)、さらに好ましくは0〜100ppm程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。酢酸流又はサイドカット流(3B)において、これらの成分および不可避的な混入成分(不純物又は副生物を含む)の残余を酢酸が占めており、酢酸の濃度は、例えば、87〜99重量%(例えば、88〜98重量%)、好ましくは90〜97重量%(例えば、90〜95重量%)程度であってもよい。
缶出液体流(高沸点流分又は高沸点成分)(3C)(ライン31)のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0〜1000ppm)、好ましくは0〜500ppm(例えば、1〜100ppm)、さらに好ましくは0〜50ppm程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、0〜15重量%(例えば、0.01〜10重量%)、好ましくは0.1〜8重量%(例えば、0.2〜5重量%)、さらに好ましくは0.5〜3重量%程度であってもよい。酢酸メチル濃度および水の濃度は、それぞれ、例えば、0〜15重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.3〜8重量%(例えば、0.5〜5重量%)、さらに好ましくは0.7〜3重量%(例えば、1〜2重量%)程度であってもよい。酢酸の濃度は、例えば、60〜99重量%(例えば、70〜99重量%)、好ましくは80〜98重量%(例えば、85〜98重量%)、さらに好ましくは90〜98重量%程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜1000ppm(例えば、0〜100ppm)、好ましくは0〜50ppm(例えば、0〜10ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、0〜0.5重量%)、好ましくは0〜5000ppm(例えば、0〜1000ppm)、さらに好ましくは0〜100ppm程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。
第2の蒸留工程(蒸留塔)(5)
第2の蒸留工程(蒸留塔)(5)では、供給ライン43b,44を通じて供給される第1のオーバーヘッド流(3A)(図示する例では、分液工程(4)からの凝縮液)の蒸留に伴って、蒸留塔の上部に形成される濃縮域(PRC類(特に、アセトアルデヒド)およびヨウ化メチルの高濃度域)に、ヨウ化メチルよりもPRC類(特に、アセトアルデヒド)を優位に抽出可能な抽出溶媒を添加して少なくともPRC類(特に、アセトアルデヒド)を抽出し、前記濃縮域から降下する抽出混合液(液化成分、降下液)を蒸留塔からサイドカット流(5B)として抜き取っている。この抽出混合液は、蒸留塔(5)への第1のオーバーヘッド流又は混合物(3A)のPRC類(特に、アセトアルデヒド)の濃度に比べて、著しく高いPRC類(特に、アセトアルデヒド)濃度を有しており、抽出混合液をサイドカット流(5B)として抜き取ることにより、PRC類を有効に分離又は除去できる。
第2の蒸留工程(5)に対する混合物又はオーバーヘッド流(3A)(図示する例では、分液工程(4)からの有機相及び/又は水相)の仕込み位置(供給部又は供給段)は、蒸留塔の全段数を「100」段とし、ボトムを「0」段としたとき、蒸留塔の下から1〜70段程度の範囲から選択でき、例えば、蒸留塔の下から1〜50段(例えば、3〜45段)、好ましくは4〜40段(例えば、5〜35段)程度であってもよい。換言すれば、蒸留塔の蒸留部の高さ「1」に対して、例えば、下から0.01/1〜0.7/1(例えば、0.01/1〜0.5/1)、好ましくは0.03/1〜0.45/1(例えば、0.04/1〜0.4/1)、さらに好ましくは0.05/1〜0.35/1程度の高さ位置に混合物又はオーバーヘッド流(3A)を仕込んでもよい。例えば、全実段数が43段の棚段蒸留塔の場合、混合物(3A)の仕込段は、全段数43段の下から1〜20段、好ましくは2〜15段、さらに好ましくは4〜10段程度であってもよい。また、例えば、全実段数が10段の棚段蒸留塔の場合、混合物(3A)の仕込段は、全段数10段の下から1〜7段、好ましくは1〜5段、さらに好ましくは1〜3段程度であってもよい。
蒸留工程(5)の蒸留塔は、第1のオーバーヘッド流(3A)(図示する例では、分液工程(4)からの凝縮液)の気化又は蒸発成分の濃縮域への上昇を許容し、この濃縮域から降下する抽出混合液(又は降下液)を受け可能の全量をホールド可能なユニット、例えば、受け部(チムニートレイなど)(51)を備えている。なお、ラフィネート(ヨウ化メチル液)と抽出液とを合わせた降下液を受け可能な受けユニットでは、抽出混合液が分液可能であってもよい。
前記受け部は、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給口よりも上方であり、かつ抽出溶媒の添加部よりも下方に配設されている。受け部(チムニートレイなど)は、慣用の構造を有しており、例えば、濃縮域から降下する抽出混合液(液化成分、降下液)を受容可能なトレイ部と、トレイ部の複数の開口部からそれぞれ塔頂部の方向に向かって突出し、第1のオーバーヘッド流(3A)の気化又は蒸発成分が濃縮域へ上昇可能な中空筒状のチムニー部(煙突部)とを備えており、チムニー部(煙突部)の上部開口部には、気化又は蒸発成分が上昇又は通過可能なカバー部(傘部又は蓋部)が取り付けられている。また、受け部(チムニートレイなど)は、トレイ部の液体を抜き取るための抜き取り口又は抜き取りラインを備えていてもよい。なお、受け部(チムニートレイ)の構造は、上記に限らず、チムニー部(煙突部)、必要であればカバー部に気化又は蒸発成分が通過可能な細孔を形成してもよく、トレイ部の構造もロート型、湾曲型などであってもよい。なお、受け部(チムニートレイ)の開口比(トレイ部の平面全体に対する開口部の割合)は、5〜90%、例えば10〜50%(例えば、15〜40%)、好ましくは15〜35%程度であってもよい。
このようなユニット又は受け部(チムニートレイ)を備えた蒸留塔(5)において、抽出溶媒は、受け部の上方に形成された濃縮域に添加すればよい。濃縮域は、供給口と塔頂部との間の空間に形成され、アセトアルデヒドおよびヨウ化メチルの沸点が低いため、塔頂部側の上部空間、特に塔頂部に近い空間に形成できる。そのため、受け部(チムニートレイなど)は、蒸留塔(5)の上部に配設できる。なお、濃縮域からサイドカット流(5B)をサイドカットすると、PRC類を効率的に抽出できるため、受け部の位置(サイドカット流(5B)の流出口の位置)は、混合物(3A)の供給口よりも上方である場合が多いものの、受け部の位置(サイドカット流(5B)の流出口の位置)は、特に制限されず、第1のオーバーヘッド流又は混合液(3A)の供給口(又は仕込段)と同じ又は供給口よりも下方の回収域であってもよい。すなわち、受け部の位置は、第1のオーバーヘッド流又は混合物(3A)の供給口と同じ又は混合物(3A)の供給口よりも上方又は下方であってもよい。なお、第1のオーバーヘッド流又は混合物(3A)の供給口よりも下方に受け部を設ける場合、受け部は缶出流(ボトム流)よりも上方に位置する。
受け部(チムニートレイなど)の高さ位置は、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも高ければよく、蒸留塔の段数にもよるが、受け部(チムニートレイなど)の高さ位置は、塔頂側の最上段(塔頂から1段目の段)と、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも少なくとも1つ上の段との間、もしくは塔頂に位置し、蒸留塔の全段数を100段としたとき、蒸留塔の上から2〜70段程度の範囲から選択でき、例えば、蒸留塔の上から2〜60段(例えば、2〜45段)、好ましくは2〜30段(例えば、2〜25段)、さらに好ましくは2〜10段(例えば、2〜7段)程度であってもよい。換言すれば、蒸留塔の蒸留部の高さ「1」に対して、受け部は、例えば、上から0.02/1〜0.7/1(例えば、0.02/1〜0.6/1)、好ましくは0.02/1〜0.45/1(例えば、0.02/1〜0.3/1)、さらに好ましくは0.02/1〜0.25/1(例えば、0.02/1〜0.1/1)程度の高さ位置に形成してもよい。例えば、全実段数が43段の棚段蒸留塔の場合、塔頂側の最上段(塔頂から1段目の段)もしくは塔頂と、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも少なくとも1つ上の段(例えば、供給段よりも少なくとも5つ上の段)との間の段を受け部(チムニートレイなど)で形成してもよく、塔頂の最上段と、最上段から25だけ下の段(25段目)(好ましくは最上段から10段目、さらに好ましくは最上段から5段目、特に最上段から3段目)との間の段を受け部(チムニートレイなど)で形成してもよい。より具体的には、サイドカット流(5B)のサイドカット段(受け部)は、蒸留塔の最上段(一段目)、最上段から2段目又は3段目(特に、最上段、又は最上段から2段目)に位置していてもよい。
全実段数が10段の棚段蒸留塔の場合、塔頂側の最上段(塔頂から1段目の段)もしくは塔頂と、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも少なくとも1つ上の段(例えば、供給段よりも少なくとも5つ上の段)との間の段を受け部(チムニートレイなど)で形成してもよく、塔頂の最上段と、最上段から10だけ下の段(10段目)(好ましくは最上段から5段目、さらに好ましくは最上段から2段目、特に最上段から1段目)との間の段を受け部(チムニートレイなど)で形成してもよい。より具体的には、サイドカット流(5B)のサイドカット段(受け部)は、蒸留塔の最上段(一段目)、最上段から2段目又は3段目(特に、最上段、又は最上段から2段目)に位置していてもよい。
抽出溶媒は、通常、蒸留塔(5)の上部(例えば、塔頂側の最上段、もしくは塔頂から、第1のオーバーヘッド流(3A)の供給部又は供給段よりも少なくとも1つ上の段に至る間)に添加できる。抽出溶媒の仕込み段は、蒸留塔の全段数を100段としたとき、蒸留塔(5)の塔頂に近い方の段、例えば、蒸留塔の上から0〜50段(例えば、1〜25段)、好ましくは1〜20段(例えば、1〜15段)、さらに好ましくは1〜10段程度であってもよい。換言すれば、蒸留塔の蒸留部の高さ「1」に対して、抽出溶媒は、例えば、上から0/1(塔頂)〜0.5/1(例えば、0.01/1〜0.25/1)、好ましくは0.01/1〜0.2/1(例えば、0.01/1〜0.15/1)、さらに好ましくは0.01/1〜0.1/1程度の高さ位置に仕込んでもよい。例えば、全実段数が43段の棚段蒸留塔の場合、抽出溶媒は、蒸留塔(5)の塔頂に近い段(例えば、0〜20段、好ましくは最上段乃至10段、さらに好ましくは最上段乃至5段、特に最上段乃至3段の段)から添加してもよく、全実段数が10段の棚段蒸留塔の場合、抽出溶媒は、蒸留塔(5)の塔頂に近い段(例えば、0〜7段、好ましくは最上段乃至5段、さらに好ましくは最上段乃至3段、特に最上段乃至2段の段)から添加してもよく、上昇する気化又は蒸気成分に対して向流方向に添加して抽出効率を高めるため、通常、蒸留塔(5)の最上段から添加してもよい。また、抽出溶媒は、抽出効率を高めるため、液滴状の形態で添加でき、特に噴霧又は散布して添加される。抽出溶媒の温度は、例えば、0〜60℃、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃程度であってもよく、常温(例えば、15〜25℃程度)であってもよい。抽出溶媒は、加温もしくは加熱(例えば、30〜150℃、好ましくは50〜110℃程度に加熱)して、若しくは蒸気(スーパーヒートされた蒸気を含む)の形態で添加してもよい。
抽出溶媒は、ヨウ化メチルに比べてPRC類(特に、アセトアルデヒド)を優位に抽出可能であればよく、ヨウ化メチルに対して分液可能な抽出溶媒であるのが好ましい。すなわち、抽出混合液(5B)を上相と下相とに分液可能な抽出溶媒であるのが好ましい。特に、抽出溶媒は、少なくとも水を含む水性抽出溶媒、例えば、水、水と水溶性有機溶媒(メタノールなどのアルコール類(モノオール類)、エチレングリコールなどのグリコール類、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトン、エステル類、エーテル類など)との混合溶媒、中でも、水であるのが好ましい。抽出溶媒として水を供給すると、抽出混合液(又は液滴状態の抽出混合液)では分液状態を保ち、二相に分液するのに有利である。
また、抽出溶媒は、水と、PRC類、ヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、ジメチルエーテルおよびプロセス中に存在する成分(前記不純物を含む全ての成分)から選択された少なくとも1種とを含んでいてもよく、このような抽出溶媒は、プロセス内で生成する水性溶媒(例えば、第1のオーバーヘッド流(3A)の分液工程(4)で生成する水相43a、第2の分液工程(6)で生成する抽出液62,67,69などのプロセス水(アセトアルデヒド含有プロセス水など)、その他のアセトアルデヒド含有プロセス水(例えば、PRC類を水で抽出して分液した水相など)であってもよい。さらに、プロセスからのオフガス(例えば、反応器(1)、フラッシュ蒸発槽(2)、第1の蒸留塔(3)、第2の蒸留塔(5)又は分離ユニット6a、第3の蒸留塔(7)、第4の蒸留塔(8)などからのオフガスなど、プロセスの種々の単位操作からのオフガス)を水で吸収処理し、生成した水溶液(例えば、アセトアルデヒド、ヨウ化メチルを含有する水溶液)を抽出溶媒として使用してもよい。
本発明では、蒸留塔全体ではなく、抽出溶媒の添加部と受け部(サイドカット部)との間を抽出空間(抽出域)として利用でき、前記濃縮部の気化又は蒸発成分(特に、少なくともアセトアルデヒドおよびヨウ化メチル)を抽出溶媒で抽出できる。そのため、抽出混合液(5B)を底部流(5C)として抜き取る方法に比べて、抽出溶媒の使用量が少なくても、PRC類(特に、アセトアルデヒド)を効率よく抽出できる。例えば、抽出溶媒の流量と第1のオーバーヘッド流(3A)の流量(液体流換算)との重量割合は、前者/後者=0.0001/100〜100/100(例えば、0.001/100〜50/100)程度の範囲から選択してもよく、通常、0.0001/100〜20/100(例えば、0.001/100〜10/100)、好ましくは0.01/100〜8/100、さらに好ましくは0.1/100〜5/100程度であってもよい。そのため、蒸留塔の抽出混合液又は降下液(又はサイドカット流(5B))は、抽出溶媒の含有量の少ない液体流(又はサイドカット流(5B))を形成でき、分液性の液体流は、水相(少量の水相又は抽出液)と有機相(多くの有機相又はラフィネート)とを形成できる。
なお、従来の脱アセトアルデヒド(AD)蒸留と水抽出との組合せでは、PRC類が濃縮された有機相(又はヨウ化メチル相)の量に対して、ほぼ同量の抽出水で抽出処理している。これに対して、本発明では、有機相中のPRC濃度が同じ濃度であれば、PRC類が濃縮された有機相(又はヨウ化メチル相)の量に対して、数十分の1から数百分の1程度の量の抽出水で抽出処理するため、従来の水抽出蒸留に比べて本発明の方が、はるかに水相中に抽出できるPRC濃度を増加できる。換言すれば、有機相中のPRC類の濃度が低くても、効率よくPRC類を水に抽出できるため、分離領域(実段数や理論段数)を従来技術よりも低減でき、低コストで脱ADが可能である。一方、有機相の量の多少に拘わらず、有機相中のヨウ化メチル濃度は高く(ほぼ同等に高く)、水相中のアセトアルデヒドAD濃度が同じ条件では、水相に溶解したヨウ化メチルMeI濃度は、抽出後の水相と有機相との量比に拘わらず、殆ど変わらず少ない。そのため、本発明では、抽出する有機相の量に対して、極めて少量の抽出溶媒を用いて、従来の脱AD蒸留と水抽出との組合せよりも、アセトアルデヒドADに対するヨウ化メチルMeIの割合(MeI/AD比)を小さくでき、MeIの系外へのロスを抑制できる条件で、かつ小さな蒸留領域で低コストで、PRC類を有効に除去可能である。
なお、特許文献2の実施例(TABLE 2)には、第2の蒸留塔での水抽出蒸留において、塔頂から水を仕込み、缶出から水性流を抜き取り、第2の蒸留塔へのフィード液中のアセトアルデヒド濃度31重量%が、缶出流でアセトアルデヒド濃度22.4重量%に低減することが記載されている。しかし、特許文献2に記載の水抽出蒸留では、本発明の第2の蒸留工程(5)に比べて、抽出溶媒の仕込量が百倍以上も必要となる。なお、本発明では、オーバーヘッド流又は混合物(3A)のヨウ化メチルを蒸留塔(5)のサイドから抜き取るのに対し、特許文献2ではヨウ化メチルを主に塔頂から抜き取ることとなり、ヨウ化メチルの分離形態が全く異なる。なお、本発明では、蒸留塔(5)からのサイドカット流を抜き取り、蒸留塔(5)に戻すことにより、ヨウ化メチル濃度の高い缶出流を得ることができる。仮に特許文献2に記載の方法に従って、本発明での抽出溶剤(例えば、水)の量よりも百倍以上も多い抽出溶剤(例えば、仕込み量と同等若しくはそれ以上の抽出溶剤)を蒸留塔の塔頂から仕込むと、特許文献2の缶出量/仕込み量の比率は、本発明でのサイドカットの水相量/仕込み量の比率の100倍以上となる。そのため、この缶出水性流を直接系外に排出するか、又はさらに蒸留してアセトアルデヒドおよびヨウ化メチルを水から分離すると、缶出流(水性流)中に溶存したヨウ化メチルの影響で、本発明と比較して少なくとも5〜10倍以上の量のヨウ化メチルを系外に排出することになる。また、本発明と異なり、仕込んだヨウ化メチルのほとんどは、塔頂から抜き取るために、多量のエネルギーが必要となり、経済的でない。
さらに、抽出混合液を、底部流又は缶出流(5C)としてではなく、受け部(チムニートレイなど)の抜き取り口からサイドカット流(5B)として抜き取るため、蒸留塔の段数を大きく低減しても、PRC類(特に、アセトアルデヒド)をヨウ化メチルから分離できる。例えば、従来の方法での蒸留塔の全段数を100段としたとき、本発明では、5〜80段(例えば、10〜80段)、好ましくは7〜70段(例えば、12〜60段)、さらに好ましくは8〜50段(例えば、15〜50段)、特に10〜40段(例えば、20〜40段)程度にまで低減でき、8〜20段(例えば、10〜15段)程度であっても、PRC類をヨウ化メチルから有効に分離できる。換言すれば、通常の蒸留塔の分離空間(蒸留空間)を「100」としたとき、例えば、5〜80(例えば、10〜80)、好ましくは7〜50(例えば、8〜30)、さらに好ましくは10〜30(例えば、10〜20)程度の分離空間の蒸留塔を利用しても、PRC類をヨウ化メチルから有効に分離できる。
さらに、蒸留塔(5)での抽出蒸留に後続して、さらに膜分離などによりさらにPRC類を分離する場合、蒸留塔(5)を特許文献2の蒸留塔の全段数と同じ100段としたとき、本発明では、5〜20段程度に低減することも可能である。例えば、蒸留塔(5)での抽出蒸留において、通常よりはヨウ化メチル/PRC類比の高い水相を取り出して、後工程でさらに膜分離などによりPRC類を分離する場合には、前記のように、蒸留塔(5)の蒸留段数を更に大きく低減できる。
なお、蒸留塔からは少なくとも一部の抽出混合液(5B)を抜き取ればよく、通常、トレイ部に貯留する抽出混合液を連続的に抜き取ることができる。すなわち、濃縮域から降下する液化成分の降下液量(降下液量の全量)に応じた量の抽出混合液を蒸留塔から抜き取ることができる。
このような方法では、第1のオーバーヘッド流(3A)がPRC類(アセトアルデヒドなど)およびヨウ化メチルに対して親和性の高い酢酸メチル、酢酸などの両親媒性成分を含んでいても、第1のオーバーヘッド流(3A)中のPRC類(アセトアルデヒドなど)を、サイドカット流又は抽出混合液(5B)に有効に抽出して、PRC類(アセトアルデヒドなど)を分離し除去できる。例えば、サイドカット流(5B)中のアセトアルデヒド濃度は、第1のオーバーヘッド流(3A)および底部流(5C)中のアセトアルデヒド濃度よりも大きい。例えば、サイドカット流(5B)(サイドカット流(5B)の水相)中のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、第1のオーバーヘッド流(ガス流又はその凝縮液流)(3A)に比べて、10〜1000倍(例えば、20〜800倍)、好ましくは30〜500倍(例えば、50〜200倍)、さらに好ましくは50〜170倍(例えば、60〜150倍)も高い。
さらに、サイドカット流(5B)中のヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの割合が、第1のオーバーヘッド流(3A)および底部流(5C)中のヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの割合よりも大きい。
なお、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔の塔内温度は、圧力に依存するが、常圧において、塔頂温度は、例えば、15〜120℃(例えば、18〜100℃)、好ましくは20〜90℃(例えば、20〜80℃)、さらに好ましくは20〜70℃(例えば、25〜70℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、35〜150℃(好ましくは40〜120℃)程度であってもよく、塔頂圧力は、絶対圧力で、例えば、約0.1〜0.5MPa程度であってもよい。第2の蒸留工程(5)での他の蒸留条件(蒸留塔の理論段、環流比など)は、前記第1の蒸留工程(3)での条件と同様であってもよい。
第2のオーバーヘッド流(5A)(水相と有機相に分液している場合はその混合液;ライン53の混合液,ライン61とライン62とを合わせた混合液)のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、例えば、1〜75重量%(例えば、10〜70重量%)、好ましくは20〜65重量%(例えば、25〜60重量%)、さらに好ましくは30〜55重量%(例えば、35〜50重量%)程度であってもよく;50〜95重量%(例えば、75〜90重量%)、好ましくは80〜90重量%程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、1〜85重量%(例えば、10〜80重量%)、好ましくは20〜80重量%(例えば、30〜75重量%)、さらに好ましくは40〜75重量%(例えば、50〜70重量%)程度であってもよく;5〜30重量%(例えば、7〜25重量%)、好ましくは10〜20重量%程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0〜10重量%(例えば、0.01〜7重量%)、好ましくは0.02〜5重量%(例えば、0.03〜2重量%)、さらに好ましくは0.05〜1重量%(例えば、0.1〜0.5重量%)程度であってもよく、0.2〜1重量%(例えば、0.3〜0.7重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、1ppm〜3重量%)、好ましくは0〜2重量%(例えば、10ppm〜1重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。さらに、水の濃度は、例えば、0〜30重量%(例えば、0.02〜10重量%)、好ましくは0.05〜5重量%(例えば、0.07〜1重量%)、好ましくは0.1〜0.5重量%程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜2.5重量%(例えば、10ppm〜2重量%)、好ましくは100ppm〜1.5重量%(例えば、0.1〜1重量%)程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜0.5重量%、好ましくは0〜0.3重量%、さらに好ましくは0〜2500ppm(例えば、0〜1000ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。なお、第2の蒸留塔5の蒸留段数を低減(例えば、実段数100段を15%以下の段数(10〜15段程度)に低減)すると、第2のオーバーヘッド流(5A)中のPRC類(代表的には、アセトアルデヒド)の濃度が増加し、ヨウ化メチル濃度が低下する傾向を示してもよい。
なお、第2のオーバーヘッド流(5A)(コンデンサC3の直前のライン53)(水相と有機相に分液している場合はその混合液)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、18〜90℃)、好ましくは20〜80℃(例えば、20〜70℃)程度であってもよい。
なお、コンデンサC3からのオフガスは、ジメチルエーテル、PRC類(特にアセトアルデヒド)およびヨウ化メチルに富んでいる。コンデンサC3からのオフガス中のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、例えば、1〜75重量%(例えば、10〜70重量%)、好ましくは20〜65重量%(例えば、30〜60重量%)程度であってもよく、35〜65重量%程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、1〜55重量%(例えば、5〜50重量%)、好ましくは7〜45重量%(例えば、10〜40重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.5〜15重量%)、好ましくは1〜12重量%(例えば、2〜10重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.0001〜3重量%)、好ましくは0〜2.5重量%(0.001〜2重量%)、好ましくは0.01〜1重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。水の濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.01〜2.5重量%)、好ましくは0〜2重量%(例えば、0.1〜1.5重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0.1〜90重量%(例えば、1〜80重量%)、好ましくは3〜80重量%(例えば、5〜70重量%)、さらに好ましくは10〜60重量%(例えば、20〜50重量%)程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.01〜3重量%)、好ましくは0〜2.5重量%(例えば、0.1〜2重量%)程度であってもよい。
サイドカット流(5B)(水相と有機相に分液している場合はその混合液;ライン63の混合液,ライン61とライン62とを合わせた混合液)中のPRC類(アセトアルデヒドなど)の濃度は、例えば、0.1〜90重量%(例えば、0.2〜70重量%)、好ましくは0.3〜60重量%(例えば、0.4〜50重量%)、さらに好ましくは0.5〜40重量%(例えば、1〜20重量%)、特に2〜10重量%(例えば、3〜7重量%)程度であってもよく;0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%程度であってもよく;3〜10重量%(例えば、5〜8重量%)程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、1〜99重量%(例えば、5〜97重量%)、好ましくは10〜95重量%(例えば、20〜95重量%)、さらに好ましくは30〜95重量%程度であってもよく;50〜99重量%(例えば、65〜98重量%)、好ましくは75〜98重量%(例えば、85〜97重量%)、さらに好ましくは90〜97重量%程度であってもよく;75〜95重量%(例えば、80〜93重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.5〜10重量%)、好ましくは0.7〜7重量%(例えば、0.7〜5重量%)程度であってもよく、0.5〜5重量%(例えば、0.5〜3重量%)程度であってもよく、1〜5重量%(例えば、2.5〜5重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.01〜3重量%)、好ましくは0.1〜2重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。水の濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.3〜10重量%)、好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは0.8〜3重量%(例えば、1〜2重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜3重量%(例えば、0.0001〜2重量%)、好ましくは0.001〜1.7重量%(例えば、0.01〜1.5重量%)程度であってもよく、0.005〜1重量%(例えば、0.01〜0.5重量%)又は0.1〜1重量%程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜3重量%(例えば、0.001〜2重量%)、好ましくは0.01〜1.5重量%(例えば、0.05〜1重量%)程度であってもよい。なお、第2の蒸留塔5の蒸留段数を低減(例えば、実段数100段を15%以下の段数(10〜15段程度)に低減)すると、サイドカット流(5B)(水相と有機相に分液している場合はその混合液;ライン63の混合液,ライン61とライン62とを合わせた混合液)中のPRC類(代表的には、アセトアルデヒド)の濃度及び酢酸メチル濃度が若干増加する傾向を示してもよい。
サイドカット流(5B)が分液している場合、有機相(ライン64,68)のPRC類の濃度は、例えば、0.1〜90重量%(例えば、0.2〜70重量%)、好ましくは0.3〜60重量%(例えば、0.4〜50重量%)であってもよく、0.1〜20重量%(例えば、0.5〜20重量%)、好ましくは1〜10重量%(例えば、2〜5重量%)程度であってもよく、3〜10重量%(例えば、5〜8.5重量%)程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、50〜99重量%(例えば、60〜98重量%)、好ましくは70〜97重量%(例えば、80〜95重量%)程度であってもよく、85〜98重量%(例えば、90〜97重量%)程度であってもよく、85〜93重量%程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%(例えば、0.5〜10重量%)、好ましくは0.7〜7重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよく、2〜4.54重量%(例えば、3〜4重量%)程度であってもよく、0.3〜7重量%(例えば、0.5〜5重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.001〜3重量%)、好ましくは0.01〜2重量%、0.1〜0.5重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。水濃度は、0〜5重量%(例えば、0.01〜3重量%)、好ましくは0.05〜1重量%(例えば、0.1〜0.3重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜2.5重量%(例えば、0〜5000ppm)、好ましくは1ppm〜2重量%(例えば、1〜3000ppm)、さらに好ましくは10ppm〜1.5重量%(例えば、10〜2500ppm)、さらに好ましくは100ppm〜1重量%(例えば、100〜2000ppm)程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜3重量%(例えば、0.001〜2重量%)、好ましくは0〜1.5重量%(例えば、0.05〜0.5重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。なお、第2の蒸留塔5の蒸留段数を低減(例えば、実段数100段を15%以下の段数(10〜15段程度)に低減)すると、サイドカット流(5B)が分液した有機相(ライン64,68)中のPRC類(代表的には、アセトアルデヒド)の濃度及び酢酸メチル濃度が若干増加する傾向を示してもよい。
サイドカット流(5B)が分液している場合、水相(ライン66、69)のPRC類の濃度は、1〜50重量%(例えば、5〜40重量%)、好ましくは10〜30重量%(例えば、15〜25重量%)程度であってもよく、ヨウ化メチル濃度は、例えば、0.01〜10重量%(例えば、0.1〜5重量%)、好ましくは0.5〜4重量%(例えば、0.8〜3重量%)程度であってもよく、1〜2重量%程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜10重量%(例えば、0.2〜5重量%)、好ましくは0.3〜2重量%(例えば、0.5〜1重量%)程度であってもよく、0.1〜1.5重量%程度であってもよく、0.5〜3重量%(例えば、1〜2重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.001〜3重量%)、好ましくは0.01〜2重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜1.5重量%(例えば、1ppm〜1.2重量%)、好ましくは0.001〜1重量%(例えば、0.01〜1重量%)程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0.1〜10重量%(例えば、0.5〜8重量%)、好ましくは1〜6重量%(例えば、1.5〜5重量%)程度であってもよい。水相において、通常、これらの成分および不可避的な混入成分(不純物又は副生物を含む)の残余を水が占めており、水濃度は、例えば、50〜95重量%(例えば、60〜93重量%)、好ましくは70〜90重量%(例えば、75〜85重量%)程度であってもよく、65〜85重量%(例えば、70〜85重量%)程度であってもよい。なお、第2の蒸留塔5の蒸留段数を低減(例えば、実段数100段を15%以下の段数(10〜15段程度)に低減)すると、サイドカット流(5B)が分液した水相(ライン66、69)中の酢酸メチル濃度が若干増加する傾向を示してもよい。
なお、抽出混合液又はサイドカット流(5B)(ライン63)中のPRC類(例えば、分液した水相(水抽出液)(ライン66、69)中のアセトアルデヒドの濃度)の濃度は、アセトアルデヒドに対するヨウ化メチルの割合(MeI/AD比)、換言すればアセトアルデヒドとともに系外に排出されるヨウ化メチルの排出量に大きく影響し、アセトアルデヒド濃度が低すぎても又は高すぎてもヨウ化メチルの系外への排出量が増加する。ヨウ化メチルの排出量を低減する(MeI/AD比を小さくする)には、抽出混合液又はサイドカット流(5B)(ライン63)中のPRC濃度(例えば、水相(水抽出液)のアセトアルデヒド濃度)は、0.1〜45重量%(例えば、0.5〜30重量%)、好ましくは1〜25重量%(例えば、1.5〜15重量%)、さらに好ましくは2〜10重量%程度であってもよく、抽出混合液又はサイドカット流(5B)(ライン63)中のPRC濃度(特に、水相(水抽出液)(ライン66、69)中のアセトアルデヒドの濃度)は、5〜45重量%、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜35重量%(例えば、20〜30重量%)程度であるのが有効であり、10〜25重量%(例えば、12〜25重量%)程度も有効である。
サイドカット流(5B)が分液した水相(ライン66,69)にはPRC類(アセトアルデヒドなど)が濃縮されており、ヨウ化メチル濃度に対して高いPRC類(アセトアルデヒドなど)濃度を有している。水相でのアセトアルデヒドADとヨウ化メチルMeIとの比率(AD/MeI比)は、例えば、3/1〜50/1(例えば、4/1〜40/1)、好ましくは5/1〜30/1(例えば、7/1〜20/1)程度であってもよく、8/1〜15/1(例えば、10/1〜15/1)程度であってもよい。
なお、サイドカット流(5B)(ライン63)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、20〜90℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよい。
底部流(5C)(ライン52)は、通常、主たる成分としてヨウ化メチルを含み、ヨウ化メチルに富んでいる。蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)が分液しない均一液又は水相と有機相の混合液であるとき、底部流(5C)(ライン52)のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1〜5000ppm)、好ましくは0〜2500ppm(例えば、10〜1000ppm)、さらに好ましくは50〜500ppm程度であってもよく、30〜2500ppm(例えば、100〜2000ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界値以下の濃度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、10〜85重量%(例えば、25〜80重量%)、好ましくは40〜75重量%(例えば、50〜70重量%)程度であってもよく;50〜99重量%(例えば、60〜95重量%)、好ましくは70〜90重量%(例えば、75〜88重量%)程度であってもよく、1〜75重量%(例えば、5〜65重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0〜30重量%(例えば、0.1〜25重量%)、好ましくは1〜20重量%(例えば、5〜20重量%)程度であってもよく、7〜17重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよく;0〜40重量%(例えば、1〜30重量%)、好ましくは3〜25重量%(例えば、5〜20重量%)程度であってもよく、7〜18重量%(例えば、10〜17重量%)程度であってもよく、5〜15重量%程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、0〜12重量%(例えば、0.1〜10重量%)、好ましくは0.5〜8重量%(例えば、1〜7重量%)程度であってもよく;1〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であってもよく、5〜30重量%(例えば、7〜25重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、1重量%以上(例えば、5〜89重量%)、好ましくは10重量%以上(例えば、15〜87重量%)、さらに好ましくは20重量%以上(例えば、30〜85重量%)であってもよく;5〜52重量%(例えば、10〜42重量%)、好ましくは15〜37重量%(例えば、17〜32重量%)程度であってもよく;0〜10重量%(例えば、0.001〜5重量%)、好ましくは0.01〜3重量%(例えば、0.1〜2重量%)、さらに好ましくは0.2〜1重量%以上(例えば、0.3〜0.8重量%)であってもよく、5〜65重量%(例えば、15〜60重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、1〜1500ppm)、好ましくは10〜1000ppm(例えば、50〜500ppm)程度であってもよく;0.01〜1000ppm、好ましくは0.1〜500ppm(例えば、1〜100ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜2重量%(例えば、0.0001〜1重量%)、好ましくは0.001〜0.5重量%(例えば、0.01〜0.3重量%)程度であってもよく、0.1〜1.5重量%(例えば、0.2〜1重量%)程度であってもよい。なお、第2の蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)中の水分濃度(又は有機相44に対する水相43bの割合)が大きくなると、底部流(5C)(ライン52)中のヨウ化メチル濃度、酢酸メチル濃度が低下し、水分含量が増加し、メチノール濃度が若干増加する傾向を示してもよい。
蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)が水相と有機相の混合液のとき、底部流(5C)(ライン52)のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1〜5000ppm)、好ましくは0〜2500ppm(例えば、10〜1000ppm)、さらに好ましくは50〜500ppm程度であってもよく;50〜5000ppm(例えば、100〜3000ppm)、好ましくは150〜2000ppm(例えば、170〜1500ppm)程度であってもよく;実質的に検出限界値以下の濃度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、1〜80重量%(例えば、3〜70重量%)、好ましくは5〜60重量%(例えば、7〜50重量%)程度、さらに好ましくは10〜40重量%程度であってもよく、7〜60重量%(例えば、10〜55重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0〜40重量%(例えば、1〜30重量%)、好ましくは3〜25重量%(例えば、5〜20重量%)程度であってもよく、7〜18重量%(例えば、8〜17重量%)程度であってもよく、5〜15重量%(例えば、7〜13重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、0〜40重量%(例えば、1〜30重量%)、好ましくは2〜25重量%(例えば、3〜23重量%)程度であってもよく、5〜30重量%(例えば、8〜25重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、1〜95重量%(例えば、2〜90重量%)、好ましくは5〜85重量%(例えば、7〜80重量%)、さらに好ましくは10〜75重量%(例えば、20〜70重量%)、さらに好ましくは30〜65重量%程度であってもよく、20〜60重量%程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0.01〜1000ppm)、好ましくは0.1〜500ppm(例えば、1〜100ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜2重量%(例えば、0.0001〜1重量%)、好ましくは0.001〜0.5重量%(例えば、0.01〜0.3重量%)程度であってもよく、0.1〜2重量%(例えば、0.2〜1.5重量%)、好ましくは0.3〜1重量%程度であてもよい。
蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)が分液した有機相であるとき、底部流(5C)のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1〜5000ppm)、好ましくは0〜2500ppm(例えば、10〜1000ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界値以下の濃度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、10〜95重量%(例えば、30〜93重量%)、好ましくは50〜90重量%(例えば、70〜90重量%)程度であってもよく;例えば、10重量%以上(例えば、15〜90重量%)、好ましくは20重量%以上(例えば、25〜90重量%)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、30〜80重量%)、特に40〜70重量%(例えば、50〜65重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜16重量%)程度であってもよい。さらに、酢酸濃度は、例えば、0〜10重量%(例えば、0.1〜7重量%)、好ましくは0.3〜5重量%(例えば、0.5〜3重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、0〜52量%(例えば、0.01〜42重量%)、好ましくは0.1〜32重量%(例えば、0.2〜22重量%)、さらに好ましくは0.5〜11重量%(例えば、1〜6重量%)程度であってもよく;0〜6重量%(例えば、0.1〜4重量%)、好ましくは0.3〜3重量%(例えば、0.5〜2重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、1〜1500ppm)、好ましくは10〜1000ppm(例えば、50〜500ppm)程度であってもよく、5〜500ppm(例えば、10〜100ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、0.001〜0.8重量%)、好ましくは0.005〜0.5重量%(例えば、0.01〜0.5重量%)程度であってもよい。
蒸留塔5に供給する第1のオーバーヘッド流(3A)が分液した水相であるとき、底部流(5C)のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、0〜1重量%(例えば、1〜5000ppm)、好ましくは0〜2500ppm(例えば、10〜1000ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界値以下の濃度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、0.1〜30重量%(例えば、0.5〜25重量%)、好ましくは1〜20重量%(例えば、3〜15重量%)程度であってもよく;1.5重量%以上(例えば、2〜50重量%)、好ましくは2重量%以上(例えば、3〜40重量%)、さらに好ましくは4重量%以上(例えば、5〜30重量%)であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、1〜30重量%(例えば、3〜25重量%)、好ましくは5〜20重量%(例えば、7〜15重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、5〜60重量%(例えば、10〜50重量%)、好ましくは20〜40重量%(例えば、25〜35重量%)程度であってもよい。水の濃度は、例えば、10〜92重量%(例えば、25〜82重量%)、好ましくは30〜77重量%(例えば、40〜72重量%)程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜2000ppm(例えば、0.1〜1500ppm)、好ましくは1〜1000ppm(例えば、5〜500ppm)程度であってもよく、1〜500ppm(例えば、5〜100ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.001〜3重量%)、好ましくは0.1〜2.5重量%(例えば、0.5〜2重量%)程度であってもよい。
なお、底部流(5C)の温度は、常圧において、例えば、30〜160℃(例えば、35〜120℃)、好ましくは40〜100℃(例えば、40〜80℃)程度であってもよい。
なお、底部流(5C)のPRC類(アセトアルデヒドなど)濃度は、第1のオーバーヘッド流(3A)よりも大きく低減しており、例えば、1ppm〜0.3重量%(例えば、1〜800ppm)、好ましくは10ppm〜0.2重量%(例えば、20〜1000ppm)、さらに好ましくは30〜500ppm程度であってもよく、PRC類の濃度は、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。そのため、底部流(5C)は、ライン52を通じて、反応系にリサイクルしてもよい。必要であれば、ライン52を通じて、さらに蒸留と、必要によりその後の水抽出などに供し、PRC類(アセトアルデヒドなど)をさらに分離して除去してもよい。
本発明では、第2の蒸留工程(5)で、第1のオーバーヘッド流(3A)を蒸留し、第2のオーバーヘッド流(5A)と、サイドカット流(5B)と、底部流又は缶出流(5C)とに分離すればよく、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔は、脱アルデヒド塔として機能させることができる。そのため、第1のオーバーヘッド流(3A)は少なくともPRC類(アセトアルデヒドなど)およびヨウ化メチルを含んでいればよく、前記混合物に対応する組成を有している。第1のオーバーヘッド流又は混合物(3A)は、さらに酢酸メチルを含んでいてもよく、前記のように、さらには、酢酸、メタノール、水およびジメチルエーテル、アセトアルデヒドからの誘導体(アルデヒド類、ケトン類、ヨウ化アルキル、高沸点アルカンカルボン酸、アルカン類など)、ジアルキルエーテル類などから選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。
第2の蒸留工程(5)の蒸留塔は少なくとも1つの受け部(チムニートレイなど)を備えていればよく、複数の受け部(チムニートレイ)を備えていてもよい。なお、複数の受け部(チムニートレイ)を有する蒸留塔では、最上部のチムニートレイよりも上方に形成された濃縮域に、抽出溶媒を添加すればよい。
分液工程(6)
図1に示す例では、第2のオーバーヘッド流(5A)を、流出ライン53のコンデンサC3で冷却して凝縮し、分離ユニット(デカンタ)6a内で分液した有機相(下相、ラフィネート)を還流ライン61を通じて、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔(例えば、塔頂部)に還流又はリサイクルし、デカンタ6a内で分液した水相(上相、抽出液)をライン62を通じて、ホールドタンク6bに供給している。また、サイドカット流としての抽出混合液(5B)もライン63を通じて、ホールドタンク6bに供給しており、ホールドタンク6b内で二相に分液している。なお、ホールドタンク6bは、バッファータンク、デカンターとしても機能している。
ホールドタンク6b内で分液した有機相(ラフィネート)は、ライン64およびリサイクルライン65を通じて、サイドカット流(5B)の抜き出し部よりも下部から第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされる。サイドカット流および抽出混合液(5B)の温度が比較的高いため、ホールドタンク6b内の水相(抽出液)の一部は、ライン66の冷却ユニット(クーラー)C4で冷却され、デカンタ6c内でさらに二相に分液されるとともに、ホールドタンク6b内の水相(抽出液)の他の部分は、ライン67を通じて、サイドカット流(5B)の抜き出し部よりも下部から第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされる。なお、ライン66の水相(抽出液)の一部は、点線で示されるように、抽出溶媒として再利用してもよい。
デカンタ6cでは、少量のヨウ化メチルを二相分液により分離でき、分液した有機相(ヨウ化メチルに富む重質相又は下相)は、ライン68を通じて第2の蒸留工程(5)の蒸留塔にリサイクルされ、水相(アセトアルデヒドに富む軽質相又は上相)はライン69を通じて、第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)に供給され、さらにPRC類とヨウ化メチルとが分離される。
なお、コンデンサC3で冷却された凝縮液(水相、有機相若しくは混合液)、および冷却ユニットC4で冷却した液体流(並びに分液した水相および有機相)の温度は、それぞれ、例えば、0〜60℃(例えば、1〜50℃)、好ましくは3〜30℃(例えば、3〜20℃)、さらに好ましくは5〜15℃程度であってもよい。
なお、少なくとも抽出混合液(5B)を二相分液する場合が多いものの、抽出混合液(5B)およびオーバーヘッド流(5A)をそれぞれ独立して又は合わせて二相分液してもよい。すなわち、前記のように、抽出混合液(5B)およびオーバーヘッド流(5A)をそれぞれ分液してもよく、オーバーヘッド流(5A)をデカンタ6a内で分液させることなく、抽出混合液(5B)と合わせて分液してもよい。
また、分液した抽出液(水相)及び/又はラフィネート(有機相)は、種々の形態(ルート)で第2の蒸留工程(5)にリサイクルしてもよく、この例では、上記のように、ホールドタンク6b内で分液した水相の一部と、有機相(ホールドタンク6b内で分液した有機相、およびデカンタ6cで分液した有機相)とを、それぞれライン67およびライン64,68を経て合流させて、第2の蒸留工程(5)にリサイクルしている。
第2の蒸留工程(5)には、ラフィネート(有機相)の一部をリサイクルしてもよいが、通常、少なくとも一部のラフィネート(有機相)、例えば、ラフィネート(有機相)の全部をリサイクルする場合が多い。
第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)には、第2の分液工程(6)で分液した抽出液(水相)を供給すればよく、通常、少なくとも一部の抽出液(水相)又は抽出液(水相)の全部を供給する場合が多い。なお、必要により、ラフィネート(有機相)の一部を第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)に供給してもよい。
なお、少なくとも抽出液(水相)を、サイドカット流(5B)の抜き出し口よりも下の蒸留塔(5)の段にリサイクルすると、仕込み段よりも上方の蒸留塔(5)内では、アセトアルデヒド濃度と水濃度とが増加し、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などの複数の成分の組み合わせによる共沸組成を回避できるとともに、水濃度の増加に伴って酢酸濃度も低減できる場合がある。そのため、蒸留塔(5)の仕込段よりも上方の塔内の空間での酢酸メチル濃度を減少できる。また、仕込み段よりも上方の蒸留塔(5)内に酢酸が存在すると、酢酸がヨウ化メチルや酢酸メチルに変換され、酢酸濃度を減少できる場合がある。例えば、供給ライン43b,44から水相と有機相との蒸留塔(5)への供給;ライン64,68からの有機相とライン67からの水相との蒸留塔(5)へのリサイクル;及び/又は供給ライン43bからの水相の蒸留塔(5)への供給などにより、蒸留塔(5)の仕込段(リサイクル段)よりも上方の空間で酢酸メチルや酢酸濃度を低減できる場合がある。また、第2の蒸留工程(5)へリサイクル成分(水相、有機相などを含む)をリサイクルすると、サイドカット流(5B)の抜き出し口の位置とは関係なく、リサイクル成分の濃度が蒸留塔内で上昇し、酢酸メチルなどの両親媒性化合物の濃度上昇を抑制できる。そのため、水相、例えば、サイドカット流(5B)、タンク6bの水相、さらにはライン67からの水相中の酢酸メチルや酢酸濃度を減少でき、水相へのヨウ化メチルの溶解量を低減できる。なお、水相のリサイクル量は、プロセスの安定性を考慮して適切に選択でき、多すぎると、第2の蒸留塔(5)の底部缶出流(5C)(ライン52)から、多量の水が流出し、反応系、プロセス中の水濃度の増加につながるので好ましくない。また、後述する両親媒性成分である酢酸(混和性溶媒)の添加と蒸留並びにリサイクルに伴って、サイドカット流(5B)に酢酸が多量に混入すると、酢酸メチルと同様に水相中へのヨウ化メチル溶解量が増加し、ヨウ化メチルのロスにつながる。
なお、第2のオーバーヘッド流(5A)は、冷却・凝縮して分離ユニット6a内で分液する必要はなく、第2のオーバーヘッド流(5A)は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔で全還流させてもよい。
本発明において、抽出混合液(5B)は、前記分液工程(6)に供することなく(凝縮及び/又は分液することなく)、第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)に供給してもよい。
抽出混合液(5B)は、通常、上相(水相)と下相(有機相)とに分液可能である場合が多い。そのため、蒸留工程(5)の蒸留塔内で抽出混合液が分液可能であれば、トレイ内(又は系内のデカンタ)で抽出混合液(5B)を滞留させて二相分液してもよく、塔内で分液した水相を選択的にサイドカットにより抜き取ってもよい。好ましい態様では、蒸留工程(5)の蒸留塔から降下液又は抽出混合液(5B)の全量をサイドカットで抜き取り、必要により冷却し、系外のデカンタ内で抽出混合液(5B)を二相分液してもよい。さらに、抽出混合液(5B)およびオーバーヘッド流(5A)をそれぞれ独立して又は両者を合わせて二相分液してもよい。
蒸留塔内の抽出蒸留領域および系外のデカンタ内の全滞留時間は、前記抽出混合液が二相分液可能な時間であればよく、例えば、10秒以上(例えば、30秒〜120分)、好ましくは1〜100分(例えば、5〜60分)程度であってもよく、10〜120分(例えば、15〜60分)程度であってもよい。
なお、分液工程(6)では、第2のオーバーヘッド流(5A)およびサイドカット流又は抽出混合液(5B)のうち少なくともサイドカット流又は抽出混合液(5B)を、二相に分液し、さらにPRC類とヨウ化メチルとを分離してもよい。
分液工程(6)は、複数の分離ユニット6a、ホールドタンク6bおよびデカンタ6cを用いることなく、1又は2つの分液工程(又はホールドタンク及び/又はデカンタ)で構成してもよい。少なくとも一部の水相(アセトアルデヒドが濃縮された水相)はプロセス外に分離・除去してもよく、前記蒸留工程(5)の抽出溶媒として利用してもよく、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。また、少なくとも一部の有機相(ヨウ化メチルを含む有機相)は、直接的に又は間接的に蒸留工程(5)にリサイクルしてもよい。例えば、ヨウ化メチルに富む有機相は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔内の適所にリサイクルすることができ、サイドカット流(5B)の抜き取り口よりも上方にリサイクルしてもよく、好ましくはサイドカット流(5B)の抜き取り口よりも下方にリサイクルし、第2の蒸留工程(5)内で濃縮域を形成してもよい。
なお、前記のように、PRC類を効率的に抽出するため、濃縮域からサイドカット流(5B)をサイドカットする場合が多く、このような場合、抽出混合液(有機相など)は、蒸留塔(5)の濃縮域にリサイクルしてもよく、第1のオーバーヘッド流又は混合液(3A)の供給口(又は仕込段)と同じ段又は供給口よりも下の段にリサイクルしてもよい。
[混和性溶媒]
なお、酢酸メチルが共存していてもヨウ化メチルとPRC類(アセトアルデヒドなど)とを効率よく分離するため、第2の蒸留工程(5)へのリサイクル流(有機相及び/又は水相)には、有機相と混和可能な混和性溶媒を供給してもよい。この混和性溶媒は、酢酸メチルなどの両親媒性化合物およびPRC類のうち一方に対して親和性の高い溶媒;酢酸メチルなどの両親媒性化合物と他の成分(特に、水、アセトアルデヒドなどのPRC類)との共沸組成の形成を回避可能な溶媒;酢酸メチルなどの両親媒性化合物の揮発性(蒸気圧)を低下させる溶媒などであってもよい。前記混和性溶媒は、通常、酢酸メチルの共存下でのPRC類とヨウ化メチルとの共沸組成(又はガス組成)を変化させるか、若しくは共沸組成の形成を防止し、蒸留塔の高さ方向において酢酸メチルの濃度分布を生じさせるか;及び/又は酢酸メチルの揮発性(蒸気圧)を低下させる。そのため、混和性溶媒の添加により、水相中の酢酸メチル濃度を低減でき、水相へのヨウ化メチルの混入を抑制できる。
このような混和性溶媒は、系内の混和性溶媒(例えば、酢酸製造プロセスに存在する溶媒又はプロセス内で生成する溶媒、若しくはプロセス流(例えば、水性の抽出液67などの水性溶媒))であってもよく、系外の混和性溶媒(例えば、水、酢酸などから選択された少なくとも一種)であってもよい。なお、混和性溶媒は、ヨウ化メチルおよびPRC類(例えば、アセトアルデヒド)よりも沸点が高くてもよい。プロセス流は、酢酸メチルの揮発性(蒸気圧)を低下可能なプロセス流(粗酢酸流、オーバーヘッド流、缶出流、リサイクル流など)であってもよい。また、混和性溶媒は両親媒性溶媒であってもよい。混和性溶媒は、通常、水、酢酸、ヨウ化メチルおよびメタノールから選択された少なくとも一種を含んでいる。なお、外部から混和性溶媒を供給する場合、水などであってもよいが、通常、有機性の混和性溶媒、例えば、酢酸を含む混和性溶媒(酢酸、粗酢酸など)を利用する場合が多い。好ましい混和性溶媒は、第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)から分離された水相(例えば、前記第2の分液工程(6)で生成した水相など)であってもよく、酢酸を含むプロセス流(例えば、粗酢酸流)などであってもよい。
図1に示す例では、供給ライン70を通じて混和性溶媒もしくはライン67を通じて水相(抽出液)を供給し、混和性溶媒の存在下、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔で蒸留し、酢酸メチルなどの両親媒性化合物の共存下でヨウ化メチルとPRC類(アセトアルデヒドなど)とを分離している。
なお、混和性溶媒は、供給ライン70を通じて第2の蒸留工程(5)に直接的に供給してもよく、リサイクルライン65などを通じて間接的に第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に供給してもよい。混和性溶媒は、通常、受け部(チムニートレイなど)よりも下部に供給し、この下部供給口から第1のオーバーヘッド流(3A)(図示する例では、分液工程(4)からの凝縮液)の仕込段までの間(空間)で、酢酸メチルが濃縮するのを抑制する場合が多いものの、受け部(チムニートレイなど)の上部又は上方(例えば、濃縮域又は抽出域)に供給してもよい。なお、前記空間での酢酸メチルの濃縮抑制は、前記のように、共沸組成の回避、酢酸メチルの揮発性(蒸気圧)の低下などを利用して行うことができる。
なお、蒸留塔の全段数を100段としたとき、酢酸などの混和性溶媒を、リサイクルライン65よりも下の段(例えば、リサイクルライン65からのリサイクル段よりも10〜30段目の下の段)に供給すると、ライン63の抽出混合液(5B)に混和性溶媒(酢酸など)が流出するのを有効に抑制できる。そのため、分液工程(6)で分液した水相へのヨウ化メチルの溶解量を低減できる。なお、蒸留塔の全段数を100段としたとき、酢酸などの混和性溶媒は、サイドカット流(5B)のサイドカット段(受け部)よりも下の段であって、最上段から10〜50段目(例えば、20〜40段目)に供給してもよい。例えば、蒸留塔の蒸留部の高さを「1」としたとき、混和性溶媒は、例えば、上から0.1/1〜0.5/1(例えば、0.15/1〜0.45/1)、好ましくは0.2/1〜0.4/1(例えば、0.25/1〜0.3/1)程度の高さ位置に供給してもよい。例えば、全実段数が43段の棚段蒸留塔の場合、混和性溶媒は、塔頂の最上段と、最上段から40だけ下の段(40段目)(好ましくは最上段から35段目、さらに好ましくは最上段から25段目、特に最上段から15段目)との間の段に供給してもよい。また、全実段数が10段の棚段蒸留塔の場合、混和性溶媒は、塔頂の最上段と、最上段から10だけ下の段(10段目)(好ましくは最上段から7段目、さらに好ましくは最上段から5段目、特に最上段から3段目)との間の段にに供給してもよい。
混和性溶媒の温度は、前記抽出溶媒と同様の温度であってもよく、混和性溶媒は、抽出溶媒と同様の温度に、加温又は加熱して、若しくは蒸気の形態で添加してもよい。
混和性溶媒の添加量は、第2の蒸留工程(5)での濃縮域からの降下液量(トレイ部への降下液量)に対して30重量%以下、例えば、0.01〜20重量%(例えば、0.1〜15重量%)、好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。なお、抽出混合液(5B)の第2の蒸留工程(5)へのリサイクル量(例えば、二相に分液した抽出混合液(5B)の水相のリサイクル量)及び/又は混和性溶媒の添加量の合計量は、上記と同様に、第2の蒸留工程(5)での濃縮域からの降下液量に対して30重量%以下(例えば、0.01〜20重量%(例えば、0.1〜15重量%)、好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度)であってもよい。
分液工程(6)などからの有機相とともに混和性溶媒(酢酸など)を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔で蒸留する場合(例えば、前記ホールドタンク6b内で分液した有機相と、ライン70からの混和性溶媒(酢酸など)とを蒸留する場合、若しくはサイドカット流(5B)の抜き出し部よりも下部の蒸留段から混和性溶媒(酢酸など)を供給して蒸留する場合)、第2の蒸留塔(5)内では、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水などの複数の成分の組み合わせによる共沸組成を回避できるか、単に酢酸メチルの蒸気圧を低下できる場合がある。このような場合、ライン69を通じて、第3の蒸留工程(7)に供給される処理液(凝縮液、上相及び/又は下相、特にアセトアルデヒドを含有する上相)中の酢酸メチル濃度を低減できるため、水相中に溶解したヨウ化メチル濃度も低減できる。
なお、酢酸の製造プロセス内では、系外から水を仕込むことなく、系内の水をバランスよく利用するのが好ましいものの、蒸留塔(5)へ水相(例えば、ライン67などの水相)をリサイクルすると、蒸留塔(5)の缶出流(5C)(ライン52)の水濃度が若干増加し、系内の水バランスが変化する。これに対して、酢酸などの有機性混和性溶媒を用いると、系内で水バランスを維持しながら、蒸留塔内での酢酸メチル濃度を低減でき、ヨウ化メチルの排出量を低減できる。例えば、蒸留塔(5)への水相(例えば、ライン67などの系内の水相)のリサイクルと、蒸留塔(5)への混和性溶媒(酢酸など)の添加とを併用し、蒸留塔(5)の缶出流(5C)(ライン52)を反応系へリサイクルすると、反応系での水の蓄積を抑制しつつ、蒸留塔内での酢酸メチル濃度を極限まで低減でき、系外へ排出されるヨウ化メチルの排出量を低減できる。
なお、このような混和性溶媒(酢酸など)の添加は、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔内でアルドール縮合を誘発し、塔頂部で濃縮すべきアセトアルデヒドが高沸点物質となり、アセトアルデヒドの分離能が低下することが懸念される。しかし、ヨウ化メチル濃度が高く、水濃度が低い系では、酢酸は極めて弱い酸性しか示さないため、酸性条件下によるアルドール縮合は最低限に抑制でき、アセトアルデヒドの濃縮には殆ど影響を及ぼさない。
このように、プロセス内で生成する水性溶媒(例えば、水性の抽出液67など)及び/又は混和性溶媒を第2の蒸留工程(5)の蒸留塔に導入することにより、ヨウ化メチル、水、酢酸メチルおよびアセトアルデヒドから選択された2成分若しくは3成分が共沸組成を形成するのを抑制するか、又は単に酢酸メチルの蒸気圧を低下することができ、分液した水相中に含まれるヨウ化メチル濃度を大きく低下できる。
なお、混和性溶媒としての酢酸の使用量が多すぎると、サイドカット流(5B)および抽出液67中の酢酸濃度が増加して、水相中のヨウ化メチル濃度が上昇する可能性がある。しかし、酢酸を適正な供給量で供給すれば、このような事態を回避できる。
なお、必要であれば、分液工程(6)で生成した液体(凝縮液、分液した水相及び/又は有機相)は、バッファタンクに一時的に貯蔵又は滞留させ、プロセス流の流量変動などを抑制してもよい。
蒸留工程(7)
前記分液工程(6)からの水相(アセトアルデヒドに富む軽質相又は上相)は、第3の蒸留工程(蒸留塔)(7)で、過マンガン酸還元性物質(特に、アセトアルデヒド)およびヨウ化メチルに富む第3のオーバーヘッド流(低沸流)(7A)と、抽出溶媒に富む液体流(高沸流、下部流又は缶出流)(7B)とに分離される。第3のオーバーヘッド流(低沸流)(7A)はコンデンサC5で冷却および凝縮され、凝縮液の一部は、還流ライン73を通じて、第3の蒸留工程の蒸留塔(7)に還流され、凝縮液の他の一部は、供給ライン74を通じて、第4の蒸留工程(8)に供給される。
なお、第3の蒸留工程(7)の蒸留塔の塔内温度は、圧力に依存するが、常圧において、塔頂温度は、例えば、10〜90℃(例えば、15〜80℃)、好ましくは20〜70℃(例えば、20〜60℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、70〜170℃(例えば、80〜160℃)、好ましくは90〜150℃(例えば、95〜140℃)程度であってもよく、塔頂圧力は、絶対圧力で、例えば、約0.1〜0.5MPa、好ましくは0.2〜0.4MPa、さらに好ましくは0.25〜0.35MPa程度であってもよい。
蒸留塔の理論段は、例えば、1〜50段(例えば、2〜40段)、好ましくは3〜30段(例えば、5〜10段)程度であってもよい。蒸留塔での還流比は、例えば、1〜1000(例えば、2〜500)、好ましくは3〜100(例えば、4〜50)、さらに好ましくは5〜30程度であってもよい。
オーバーヘッド流(7A)又はその凝縮液(ライン72,73,74)は、アセトアルデヒドに富んでおり、ヨウ化メチル濃度が低減している。また、酢酸メチルも含有する。オーバーヘッド流(7A)の凝縮液のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、50〜99.9重量%(例えば、60〜99重量%)、好ましくは70〜98重量%(例えば、75〜97重量%)、さらに好ましくは80〜95重量%(例えば、85〜95重量%)程度であってもよく、ヨウ化メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%(例えば、1〜7重量%)程度であってもよく、2〜10重量%(例えば、3〜10重量%)程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%(例えば、0.7〜12重量%)、さらに好ましくは1〜10重量%(例えば、1〜5重量%)程度であってもよい。さらに、オーバーヘッド流(7A)の凝縮液の酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、さらに好ましくは0〜1重量%程度であってもよく、オーバーヘッド流(7A)の凝縮液は実質的に酢酸を含んでいない(検出限界以下の酢酸濃度である)場合がある。水の濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0〜3重量%)、好ましくは0〜1重量%(例えば、0〜0.1重量%)程度であってもよく、検出限界以下の酢酸濃度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、1ppm〜5重量%(例えば、0.001〜3重量%)、好ましくは0.01〜2.5重量%(例えば、0.1〜2重量%)、0.5〜1.5重量%程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0.1〜40重量%(例えば、1〜30重量%)、好ましくは2〜25重量%(例えば、5〜20重量%)、さらに好ましくは7〜18重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよい。
なお、オーバーヘッド流(7A)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、20〜90℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよく、20〜55℃程度であってもよい。コンデンサC5で冷却されたオーバーヘッド流(7A)の凝縮液(ライン73、74)の温度は、例えば、0〜60℃(例えば、5〜45℃)、好ましくは7〜30℃(例えば、10〜30℃)程度であってもよい。
一方、缶出液体流(7B)(ライン71)は、通常、主たる成分として抽出溶媒を含んでおり、抽出溶媒のみならず、少量のアセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸および酢酸メチル、メタノール、ジメチルエーテルDME、系内に存在する不純物を含んでいてもよい。液体流(7B)中のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度(重量基準)は、例えば、0.1重量%以下(例えば、1ppb〜0.1重量%)、好ましくは500ppm以下(例えば、10ppb〜300ppm)、さらに好ましくは100ppm以下(例えば、0.1ppm〜100ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、1重量%以下(例えば、1ppm〜0.8重量%)、好ましくは0.5重量%以下(例えば、10ppm〜0.1重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。また、酢酸メチル濃度は、1ppm〜4重量%(例えば、5ppm〜2重量%)、好ましくは0.001〜1重量%(例えば、0.005〜0.7重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、10重量%以下(例えば、1ppm〜10重量%)、好ましくは7重量%以下(例えば、0.001〜5重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜1000ppm(例えば、0〜100ppm)、好ましくは0〜50ppm(例えば、0〜10ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、1ppm〜3重量%)、好ましくは10ppm〜2重量%(例えば、50ppm〜1重量%)、さらに好ましくは100ppm〜0.5重量%(例えば、200〜2000ppm)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。缶出液体流(7B)において、通常、これらの成分および不可避的な混入成分(不純物又は副生物を含む)の残余を水が占めており、水の濃度は、例えば、90〜99.99重量%(例えば、93〜99.98重量%)、好ましくは95〜99.95重量%(例えば、97〜99.9重量%)程度であってもよい。このような缶出液体流(7B)は、第2の蒸留工程(5)の抽出溶媒として再利用するため、缶出ライン71を通じて、第2の蒸留工程(5)にリサイクルしている。
缶出液体流(7B)の温度は、常圧において、例えば、70〜160℃(例えば、80〜120℃)、好ましくは85〜110℃(例えば、90〜110℃)程度であってもよく、95〜105℃程度であってもよい。
なお、缶出液体流(7B)に酢酸および酢酸メチルが優位に移行するためか、酢酸ACに対するヨウ化メチルMeIの割合(MeI/AC比)および酢酸メチルMAに対するヨウ化メチルMeIの割合(MeI/MA比)は、ライン69の供給液よりも第3のオーバーヘッド流(7A)で大きくなるようである。
なお、図1に示すプロセスでは、分液工程(6)で分液した水相を蒸留しているが、前記のように分液工程(6)を経ることなく、サイドカット流(5B)を第3の蒸留工程(7)で蒸留してもよい。また、液体流(7B)は系外に除去又は排出してもよい。
蒸留工程(8)
前記のように、オーバーヘッド流(7A)には、濃度が低減しているものの未だヨウ化メチルが混入している。そのため、前記オーバーヘッド流(7A)を第4の蒸留工程(8)でさらに蒸留し、ヨウ化メチル濃度を低減してもよい。すなわち、蒸留工程(7)からのオーバーヘッド流(7A)はさらに蒸留工程(8)で蒸留し、オーバーヘッド流(8A)と缶出液体流(8B)とに分離できる。この蒸留工程(8)では、オーバーヘッド流(7A)にアセトアルデヒドが濃縮されているため、水抽出蒸留するのが好ましい。すなわち、第4の蒸留工程(8)の蒸留塔(分離塔)の頂部には、供給ライン82から水を供給して水抽出蒸留し、オーバーヘッド流(8A)を、直接的に又は間接的に反応工程(1)にリサイクルするとともに、アセトアルデヒドを含む缶出液体流(8B)を、ライン81を経て抜き取っている。図1に示す例では、オーバーヘッド流(8A)をライン83のコンデンサC6で冷却および凝縮し、還流ライン84を通じて凝縮液の一部を蒸留塔(分離塔)(8)に還流するとともに、ライン85を通じて凝縮液を抜き取り、反応工程(1)にリサイクルしている。
このような水抽出蒸留では、アセトアルデヒドに対するヨウ化メチルの割合が、液体流(8B)よりもオーバーヘッド流(8A)又はその凝縮液で大きくなり、ヨウ化メチル濃度の高い凝縮液を生成できる。このような濃縮液は、ライン85を経て、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。
水抽出蒸留において、水の温度は、前記抽出溶媒と同様の温度であってもよく、水は、抽出溶媒と同様の温度に、加温又は加熱して、若しくは蒸気の形態で添加してもよい。
缶出液体流又は底部水性流(8B)は、抽出溶媒(特に、水)およびアセトアルデヒドに富んでいる。そのため、この缶出液体流(8B)は、系外に排出してもよく、さらに蒸留によりPRC類と水とを分離した後、PRC類を系外に排出し、水を蒸留工程(5)の抽出溶媒として再利用してもよく、反応工程(反応器)(1)にリサイクルしてもよい。
なお、第4の蒸留工程(8)の蒸留塔の塔内温度は、圧力に依存するが、常圧において、塔頂温度は、例えば、10〜90℃(例えば、15〜80℃)、好ましくは20〜70℃(例えば、20〜65℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、15〜110℃(例えば、20〜100℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよく、塔頂圧力は、絶対圧力で、例えば、0.1〜0.5MPa、好ましくは0.2〜0.4MPa、さらに好ましくは0.25〜0.35MPa程度であってもよい。
蒸留塔の理論段は、例えば、1〜50段(例えば、2〜40段)、好ましくは3〜30段(例えば、5〜10段)程度であってもよい。蒸留塔での還流比は、例えば、1〜1000(例えば、3〜500)、好ましくは5〜100(例えば、10〜70)、さらに好ましくは15〜50(例えば、15〜30)程度であってもよい。
抽剤(水)と第3のオーバーヘッド流(低沸流)の凝縮液74(液体流換算)との流量の重量割合は、前者/後者=0.1/100〜1000/100(例えば、10/100〜500/100)程度の範囲から選択してもよく、通常、25/100〜250/100(例えば、50/100〜200/100)、好ましくは70/100〜150/100(例えば、75/100〜125/100)程度であってもよい。
水抽出蒸留において、抽剤(水)の温度は、例えば、0〜60℃、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜40℃程度であってもよく、常温(例えば、15〜25℃程度)であってもよい。抽剤(水)は、加温又は加熱して、若しくは蒸気の形態で添加してもよい。
なお、水抽出蒸留塔の塔内温度は、圧力に依存し、常圧において、塔頂温度は、例えば、10〜90℃(例えば、15〜80℃)、好ましくは20〜70℃(例えば、20〜65℃)程度であってもよく、塔底温度は、例えば、15〜110℃(例えば、20〜100℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよく、塔頂圧力(絶対圧力)は、例えば、約0.1〜0.5MPa、好ましくは0.2〜0.4MPa、さらに好ましくは0.25〜0.35MPa程度であってもよい。塔頂圧力のゲージ圧は、約0.0〜0.5MPa、好ましくは0.1〜0.4MPa、さらに好ましくは0.15〜0.35MPa程度であってもよい。
蒸留塔の理論段は、例えば、0.5〜30段(例えば、1〜20段)、好ましくは2〜10段(例えば、3〜5段)程度であってもよい。蒸留塔での還流比は、例えば、0.01〜500(例えば、0.1〜100)、好ましくは0.5〜50(例えば、1〜30)、さらに好ましくは2〜20(例えば、3〜10)程度であってもよい。 オーバーヘッド流(8A)又はその凝縮液(ライン83,84,85)は、アセトアルデヒドおよびヨウ化メチルに富んでいる。オーバーヘッド流(8A)の凝縮液のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度は、例えば、1〜70重量%(例えば、10〜65重量%)、好ましくは30〜60重量%(例えば、35〜55重量%)程度であってもよく;5〜20重量%(例えば、10〜15重量%)程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、20〜80重量%(例えば、30〜75重量%)、好ましくは40〜65重量%(例えば、45〜60重量%)程度であってもよく;50〜90重量%(例えば、60〜85重量%)、好ましくは70〜80重量%程度であってもよい。酢酸メチル濃度は、例えば、0.01〜20重量%(例えば、0.1〜15重量%)、好ましくは1〜10重量%(例えば、2〜8重量%)程度であってもよく;3〜20重量%(例えば、5〜15重量%)程度であってもよい。さらに、オーバーヘッド流(8A)の凝縮液の酢酸濃度は、例えば、0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、さらに好ましくは0〜1重量%程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。水の濃度は、例えば、0〜10重量%(例えば、0.01〜8重量%)、好ましくは0.1〜5重量%(例えば、0.3〜3重量%)程度であってもよい。
なお、オーバーヘッド流(8A)の凝縮液のジメチルエーテルの濃度は、10ppm〜80重量%程度の広い範囲から選択でき、例えば、100ppm〜60重量%(例えば、0.5〜50重量%)、好ましくは1〜40重量%(例えば、5〜30重量%)程度であってもよい。なお、オーバーヘッド流(8A)のジメチルエーテルの濃度は、プロセス条件によって変化し、場合によっては高くなることがある。メタノール濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0〜3重量%)、好ましくは0〜1重量%(例えば、0〜0.5重量%)、さらに好ましくは0.001〜0.3重量%(例えば、0.01〜0.1重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。
オーバーヘッド流(8A)(還流ライン83)の温度は、常圧において、例えば、10〜90℃(例えば、15〜80℃)、好ましくは20〜70℃(例えば、20〜65℃)程度であってもよい。また、コンデンサC6で冷却されたオーバーヘッド流(8A)の凝縮液(ライン84,85)の温度は、例えば、0〜45℃(例えば、3〜35℃)、好ましくは5〜30℃(例えば、7〜25℃)程度であってもよい。
缶出液体流又は底部水性流(8B)(ライン81)は、通常、主たる成分として水を含んでおり、アセトアルデヒドも含んでいてもよい。液体流(8B)中のPRC類(代表的にはアセトアルデヒド)濃度(重量基準)は、例えば、1〜50重量%(例えば、5〜45重量%)、好ましくは10〜40重量%(例えば、20〜40重量%)程度であってもよく、2〜15重量%(例えば、5〜10重量%)程度であってもよい。ヨウ化メチル濃度は、例えば、1重量%以下(例えば、1ppm〜0.8重量%)、好ましくは0.5重量%以下(例えば、0.001〜0.2重量%)、さらに好ましくは0.005〜0.15重量%程度であってもよい。また、酢酸メチル濃度は、例えば、1ppm〜5重量%(例えば、50ppm〜2重量%)、好ましくは0.01〜1.5重量%(例えば、0.05〜1重量%)程度であってもよい。酢酸濃度は、例えば、5重量%以下(例えば、1ppm〜3重量%)、好ましくは1重量%以下(例えば、50ppm〜0.5重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度(0重量%)であってもよい。水の濃度は、例えば、40〜90重量%(例えば、50〜85重量%)、好ましくは55〜80重量%(例えば、60〜80重量%)程度であってもよく;80〜98重量%(例えば、85〜97重量%)、好ましくは90〜95重量%程度であってもよい。ジメチルエーテルの濃度は、例えば、0〜2重量%(例えば、0.0001〜1.5重量%)、好ましくは0.001〜1重量%(例えば、0.01〜0.5重量%)、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%程度であってもよい。メタノール濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0〜3重量%)、好ましくは0〜1重量%(例えば、0〜0.5重量%)、さらに好ましくは0.001〜0.3重量%(例えば、0.01〜0.1重量%)程度であってもよく、実質的に検出限界以下の濃度であってもよい。
缶出液体流又は底部水性流(8B)の温度は、常圧において、例えば、15〜110℃(例えば、20〜100℃)、好ましくは25〜80℃(例えば、30〜70℃)程度であってもよい。
また、混和性溶媒としての酢酸の使用の如何に関わらず、第2のオーバーヘッド流(5A)及び/又はサイドカット流(5B)、並びに後続するプロセス流、例えば、分液工程(6)からの凝縮液(水相及び/又は有機相、特に水相)には、アセトアルデヒドおよびヨウ化メチルに加えて、酢酸、酢酸メチルが含まれている場合が多い。このような成分を含むプロセス流を、前記第3の蒸留工程(7)で蒸留すると、缶出液体流(7B)の抽出溶媒(特に、水)に酢酸や酢酸メチルを分配させ、アセトアルデヒドおよびヨウ化メチルを酢酸と分離できる。すなわち、蒸留塔(7)で酢酸と酢酸メチルを効率よく分離できる。そのため、前記第3の蒸留工程(7)を経た後、第4の蒸留工程(8)で水抽出蒸留すると、水とアセトアルデヒドとの親和性によって、缶出液体流(8B)にヨウ化メチルが混入するのを防止しつつ、ヨウ化メチルMeIに対するアセトアルデヒドADの比率(AD/MeI比)が非常に高い缶出液体流又は水溶液(8B)が得られる。すなわち、第2の蒸留工程(5)に加えて、第3の蒸留工程(7)で酢酸および酢酸メチルを除去した後、さらに第4の蒸留工程(8)で水抽出蒸留することにより、従来のプロセスと比較して、省エネルギー、設備コストの低減に加え、ヨウ化メチルの系外への排出ロスも低減できる。缶出液体流又は水溶液(8B)のAD/MeI比率は、例えば、20/1〜2000/1(例えば、50/1〜1500/1)、好ましくは100/1〜1000/1(例えば、150/1〜750/1)、さらに好ましくは200/1〜500/1(例えば、250/1〜450/1)程度であってもよい。
なお、前記のように、前記プロセス流(混合物(3A)又はその分液相、サイドカット流(5B)又はその分液相などのプロセス流)には、通常、不可避的に他の成分(不純物を含む)も含まれている。プロセス流中のメタノールの濃度は、例えば、0〜5重量%(例えば、0.0001〜3重量%)、好ましくは0.001〜1重量%(例えば、0.01〜0.5重量%)、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%程度であってもよい。また、ヨウ化水素濃度は、0〜5000ppm(例えば、1〜1000ppm)、好ましくは5〜500ppm(例えば、10〜300ppm)程度であってもよい。さらに、蟻酸や、プロピオン酸などのC3−8アルカンカルボン酸の濃度は、例えば、0〜500ppm(例えば、1〜300ppm)、好ましくは0〜100ppm(例えば、5〜50ppm)程度であってもよい。アセトアルデヒドから誘導されるアルデヒド類(クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなど)の濃度は、それぞれ、例えば、0〜500ppm(例えば、1〜300ppm)、好ましくは0〜100ppm(例えば、5〜50ppm)程度であってもよい。ヨウ化アルキル(ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C2−12アルキル)の濃度は、例えば、0〜100ppm(例えば、1ppb〜50ppm)、好ましくは0〜10ppm(例えば、10ppb〜5ppm)程度であってもよい。
なお、分液工程(6)からの凝縮液(水相及び/又は有機相、例えば、水相)は、前記第3の蒸留工程(7)を経ることなく、第4の蒸留工程(8)で水抽出蒸留してもよい。
また、酢酸や酢酸メチルを缶出液体流(7B)として分離することにより、第3の蒸留工程(7)からの第3のオーバーヘッド流(7A)では、水へのヨウ化メチルの分配能又は溶解能が低減している。そのため、第3のオーバーヘッド流(7A)は、第4の蒸留工程(8)に代えて、必要であれば、ミキサー/セトラーなどで形成された1又は複数の水抽出ユニットでアセトアルデヒドを水に抽出してもよく、抽出塔を用いてもよい。
さらに、抽出混合液(5B)およびオーバーヘッド流(5A)を二相に分液した水相にもヨウ化メチルが混入している。そのため、抽出混合液(5B)及び/又はオーバーヘッド流(5A)から分液した水相の少なくとも一部を抽出工程(8)で水抽出してもよい。なお、抽出混合液(5B)およびオーバーヘッド流(5A)のうち少なくとも抽出混合液(5B)を二相に分液し、分液した水相の少なくとも一部を抽出工程(8)に供する場合が多く、上記分液した水相及び/又は蒸留工程(7)からのオーバーヘッド流(7A)を抽出工程(8)で水抽出してもよい。
なお、本発明では、前記のように、種々のプロセスユニット及び/又はプロセスフローの変更が可能であり、例えば、前記第2の分液工程(6)において、分離ユニット6aは必ずしも必要ではなく、例えば、図2に示すように、第2の蒸留工程(5)に付随する分離ユニット6aに代えて還流ユニット106を用い、蒸留工程(5)からのオーバーヘッド流(5A)をコンデンサC3で冷却して凝縮し、蒸留塔(5)に全還流してもよい。また、オーバーヘッド流(5A)の全還流において、前記還流ユニット106は必ずしも必要ではない。また、第2の分液工程(6)は、複数の分液ユニット6b,6cは必ずしも必要ではなく、単一の分液ユニット(タンク、デカンタ、ホールドタンク、バッファータンクなど)で形成してもよい。
また、サイドカット流(5B)又は第2の分液工程(6)からの流体(水相など)を第4の蒸留工程(8)で蒸留してもよく、前記第3の蒸留工程(7)及び/又は第4の蒸留工程(8)は、必ずしも必要ではない。さらに、第4の蒸留工程(8)に代えて、抽出ユニット(抽出塔、抽出器など)を用いてもよく、プロセス内で生成する水性溶媒は、前記第2の蒸留工程(5)での抽出溶媒として利用してもよい。
なお、第1のオーバーヘッド流(3A)(その凝縮物、並びに分液した水相及び/又は有機相を含む)は、本発明において、PRC類(アセトアルデヒドなど)を分離して除去する混合物(又は混合液)に対応しているが、本発明の混合物は、少なくともPRC類(アセトアルデヒドなど)およびヨウ化メチルを含む限り、前記第1のオーバーヘッド流(3A)又はその凝縮物に限らず、反応工程(反応系又は反応器)(1)、フラッシュ蒸発工程(フラッシャー)(2)、第1の蒸留工程(3)から生成する混合物、第2の蒸留工程(5)に後続する工程(例えば、前記第2の分液工程(6)、第3の蒸留工程(第3の蒸留塔)(7)、第4の蒸留工程(第4の蒸留塔)(8)など)から生成する混合物であってもよい。このような混合物であっても(特に、酢酸メチルが共存する混合物であっても)、本発明では、PRC類(アセトアルデヒドなど)をヨウ化メチルから有効に分離できる。
なお、本発明の方法は、少なくともPRC類およびヨウ化メチルを含む混合物又はオーバーヘッド流、特に抽出溶媒とともに蒸留して生成するサイドカット流が分液可能な混合物又はオーバーヘッド流に適用でき、第2の蒸留塔(5)に限らず、第1の蒸留塔(3)に後続する1又は複数の蒸留塔に適用でき、濃縮域での抽出蒸留を利用して、PRC類を選択的に分離できる。特に、少ない抽出溶媒および小さな抽出空間でPRC類を有効に抽出するため、本発明の方法は、前記のように、ヨウ化メチルが濃縮された混合物又はオーバーヘッド流に有効に適用される。混合物又はオーバーヘッド流は、先行する単位操作で生成する混合流(例えば、第1の蒸留塔(3)へのフィード流)に比べて、過マンガン酸還元性物質(PRC類)およびヨウ化メチルのうち少なくともヨウ化メチルが濃縮されており、PRC類も濃縮され、水濃度が低減していてもよい。なお、前記単位操作としては、フラッシュ工程、蒸留工程(水抽出蒸留工程を含む)、抽出工程、凝縮分液工程、吸収工程、膜分離工程などの1又は複数の種々の単位操作が例示できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下に、図3に示す実施例のプロセスフローに従って、直径40mmφオールダーショウ蒸留を用いた実験結果を示す。なお、図3に示す実施例のプロセスでは、第2の蒸留工程(5)、分液工程(6)、第3の蒸留工程(7)および第4の蒸留工程(8)を有する図1に示すプロセスにおいて、第2の蒸留工程(5)に付随する分離ユニット6aに代えて還流ユニット106を用い、デカンタ6aおよびホールドタンク6bを設置することなくデカンタ6cを設置し、抽出混合液(5B)のライン63を冷却ユニット(クーラー)C4に接続した。そのため、図1に示すライン64およびライン67を利用することなく、ライン68を通じてデカンタ6cの有機相を蒸留工程(5)にリサイクルするとともに、ライン69から分岐したライン69aを通じて、タンク6cからの所定流量の水相(図1のライン67の流量に相当する流量の水相)を蒸留工程(5)にリサイクルした。また、混和性溶媒としての酢酸は、供給ライン70を通じて、リサイクルライン65と供給ライン44との中間の高さ位置に直接的に供給した。
また、比較例1では、図4に示すように、第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)206、抽出塔207および蒸留塔208を有するプロセスを利用した。
比較例1及び実施例1〜8では、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔には、図1に示す供給ライン44を通じてデカンタ(4)内の有機相(MeIリッチフィード液)を供給した。また、実施例9および10では、第2の蒸留工程(5)の蒸留塔には、図1に示す供給ライン43bを通じてデカンタ(4)内の水相(水リッチフィード液)も供給した。なお、供給ライン43bの水相は、供給ライン44の有機相と合流させて蒸留塔の同じ段に供給した。
なお、以下の比較例および実施例の数値は、測定値の最終桁を四捨五入して記載し、比較例および実施例の説明では、濃度は基本的には小数点1桁、流量は測定値を四捨五入して記載した。表では、各成分の濃度を、基本的には小数点一桁又は2桁で記載し、含有量の少ない成分では濃度を小数点3桁又は4桁で記載した。また、表中に記載の各成分の濃度を加算すると、厳密には100重量%とならない場合があるが、最大濃度の成分の量をバランス量として利用し、総量100重量%と表記した。なお、最大濃度の成分の量をバランス量「BL」として表記するとともに、バランス量には微量の不純物及びその他の成分も含んでいる。
比較例1
実段数100段の第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔;塔頂温度22℃、塔底温度48℃、塔頂圧力:常圧+10mmH2O(約100Pa))206に、フィード液(ライン44、温度20℃)を1295g/hで、下から32段目に仕込み、蒸留により生成したオーバーヘッド262(温度22℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、凝縮液を987g/hで還流(還流ライン263)するとともに、6.0g/hでライン264から留出させた。なお、フィード液としては、アセトアルデヒド(AD)濃度1960ppm、酢酸メチル(MA)濃度14.9重量%、水濃度0.7重量%、酢酸(AC)濃度1.9重量%のヨウ化メチル(MeI)溶液を用いた。オーバーヘッドの凝縮液(ライン264)中のAD濃度は41.4重量%であった(MeI溶液)。このMeI溶液を、ライン264を通じて、理論段1段の抽出塔207(塔頂温度15℃、塔底温度15℃、絶対圧約0.1MPa(常圧))の塔頂に仕込み、ライン271から水(温度15℃)を6.0g/hで抽出塔207の缶出から仕込み、塔頂(ライン275)からAD濃度26.4重量%の水抽出液(温度15℃)を流量8.5g/hで抜き取った。供給ライン275を通じてAD含有水抽出液を蒸留塔(AD分離塔)208(塔頂温度21℃、塔底温度102℃、塔頂圧力:常圧+10mmH2O)に仕込み、蒸留により、温度21℃のオーバーヘッド282を生成させるとともに、コンデンサC6で冷却した凝縮液(温度7℃)を25.3g/hで還流し(還流ライン283)、AD濃度88.8重量%、MeI濃度10.8重量%の留出液(温度7℃)を流量2.53g/hで留出ライン284から留出させ、ライン281から缶出流(温度102℃)を流出させた。このようなプロセスにより、AD 2.25g/h、MeI 0.27g/hの流量でプロセス中から除去した。第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)206のリボイラー熱量は100.2kcal/h、AD分離塔208のリボイラー熱量は4.3kcal/hであった。
図4の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。
表中、ADはアセトアルデヒド、MeIはヨウ化メチル、MAは酢酸メチル、ACは酢酸を示す(以下、同じ)。
実施例1
実段数43段の第2の蒸留塔5(塔頂温度23℃、塔底温度47℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))に、フィード液(ライン44、温度20℃)を1295g/hで下から7段目に仕込み、塔頂43段目に水(温度20℃)を12.5g/hで仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度23℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、還流量576g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1960ppm、MA濃度14.8重量%、水濃度0.7重量%、AC濃度1.8重量%のヨウ化メチル溶液を用いた。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度36℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で15℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相(MeI相)とに2相分離させた。ライン52の缶出流(温度47℃)を1285g/hで抜き取った。タンク6cからAD濃度15.8重量%の水相(温度15℃)の全量を、第2の蒸留塔5にリサイクルすることなく、ライン69から、15.6g/hで系外に抜き取り、ADを除去した。一方、タンク6cからMeI相(ライン68、温度15℃)の全量808.9g/hを、第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)5のチムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。このようなプロセスにより、水相(ライン69)においてADを流量2.47g/hで、MeIを流量0.22g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は56.1kcal/hであった。なお、第2の蒸留塔5の缶出(ライン52)からの抜取り量は1285g/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。
実施例2
実段数43段の第2の蒸留塔5(塔頂温度22℃、塔底温度47℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から7段目に、フィード液(ライン44、温度20℃)を1302g/hで仕込み、塔頂43段目に水(温度20℃)を12.5g/h仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度22℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、還流量937g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1940ppm、MA濃度14.8重量%、水濃度0.7重量%、AC濃度2.1重量%のヨウ化メチル溶液を用いた。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度34℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で15℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。ライン52の缶出流(温度47℃)を1294g/hで抜き取った。タンク6cからAD濃度20.5重量%の水相の一部を、ライン69から、第2の蒸留塔5にリサイクルすることなく、11.9g/hで系外に抜き取ってADを除去し;タンク6cから水相(ライン69a、温度15℃)を流量7.4g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度15℃)の全量1345g/hと合わせて(ライン65)、チムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。
このようなプロセスにより、水相(ライン69)においてADを流量2.44g/h、MeIを流量0.18g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は89.7kcal/hであった。なお、第2の蒸留塔5の缶出(ライン52)からの抜取り量は1294g/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。
実施例3
実段数43段の第2の蒸留塔5(塔頂温度22℃、塔底温度47℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))に、フィード液(ライン44、温度20℃)を1279g/hで下から7段目に仕込み、塔頂43段目に水(温度20℃)を12.6g/hで仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度22℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、還流量688g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1960ppm、MA濃度14.8重量%、水濃度0.7重量%、AC濃度1.8重量%を含むヨウ化メチル溶液を用いた。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度34℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で15℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相(MeI相)とに2相分離させた。ライン52の缶出流(温度47℃)を1299g/hで抜き取った。タンク6cからAD濃度16.0重量%の水相(温度15℃)の全量を、ライン69から、第2の蒸留塔5にリサイクルすることなく、15.3g/hで系外に抜き取り、ADを除去した。一方、タンク6cからMeI相(ライン68、温度15℃)の全量を、1013g/hで、第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)5のチムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。
さらに、ライン70を通じて、酢酸(温度20℃)を流量30.0g/hで第2の蒸留塔5の塔頂から21段下(リサイクル段より17段下)に仕込んだ。
このようなプロセスにより、水相(ライン69)においてADを流量2.45g/h、MeIを流量0.18g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は66.1kcal/hであった。なお、第2の蒸留塔5の缶出からの抜取り量は1299g/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。
実施例4
実段数43段の第2の蒸留塔5(塔頂温度22℃、塔底温度47℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から7段目に、フィード液(ライン44、温度20℃)を1290g/hで仕込み、塔頂43段目に水(温度20℃)を12.5g/h仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度22℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、還流量899g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1940ppm、MA濃度14.8重量%、水濃度0.70重量%、AC濃度2.1重量%のヨウ化メチル溶液を用いた。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度34℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で15℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。タンク6cからAD濃度20.3重量%の水相(温度15℃)の一部を、ライン69から、第2の蒸留塔5にリサイクルすることなく、11.9g/h抜き取り、ADを除去した。さらに、タンク6cから水相(ライン69a)を流量7.4g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度15℃)の全量1305g/hと合わせて(ライン65)、チムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。なお、第2の蒸留塔5の缶出流(ライン52、温度47℃)からの抜取り量は1312g/hであった。
さらに、ライン70を通じて、酢酸(温度20℃)を流量30.0g/hで第2の蒸留塔5の塔頂から21段下(リサイクル段より17段下)に仕込んだ。
次に、デカンタ6cの水相(ライン69)を実段数6段の第3の蒸留塔(AD除去塔;塔頂温度21℃、塔底温度99℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))7に仕込み、ライン72のオーバーヘッド(温度21℃)をコンデンサC5で7℃に冷却し、蒸留によって還流量12.5g/hで還流し、AD濃度92.4重量%の留出液(凝縮液)をライン74から流量2.62g/hで取り出し、ライン71を通じて缶出から酢酸メチル濃度0.1重量%の水溶液(温度99℃)を排出し、脱酢酸メチルを行った。脱酢酸メチル後の留出液を、ライン74を通じて、実段数6段の第4の蒸留塔(水抽出蒸留塔;塔頂温度28℃、塔底温度35℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))8の下から1段目に仕込み、水(温度20℃)を5.2g/hで塔頂から仕込み、ライン83のオーバーヘッド(温度28℃)をコンデンサC6で7℃に冷却し、還流量6.0g/hで水抽出蒸留し、塔頂から、AD濃度42.9重量%、MeI濃度51.7重量%の溶液(ライン85)を0.3g/hで抜き取り、缶出(ライン81)から、AD濃度30.3重量%、MeI濃度0.073重量%の水溶液(温度35℃)を7.6g/hで抜き取った。
このようなプロセスにより、水相(ライン69)においてADを流量2.42g/h、MeIを流量0.16g/hでプロセス中から除去した。また、缶出(ライン81)においてADを流量2.29g/h、MeIを流量0.0055g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は86.4kcal/h、第3の蒸留塔(AD除去塔)7のリボイラー熱量は3.0kcal/h、水抽出蒸留塔8のリボイラー熱量は0.7kcal/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。
実施例5
実段数43段の第2の蒸留塔5(塔頂温度22℃、塔底温度47℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から7段目に、フィード液(ライン44、温度20℃)を1290g/hで仕込み、塔頂43段目に水(温度20℃)を12.5g/h仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度22℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、還流量899g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1940ppm、MA濃度14.8重量%、水濃度0.7重量%、AC濃度2.1重量%のヨウ化メチル溶液を用いた。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度34℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で15℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。タンク6cからAD濃度20.3重量%の水相(温度15℃)の一部をライン69から、11.9g/hで抜き取り、後述の第4の蒸留塔(水抽出蒸留塔)8に仕込んだ。さらに、タンク6cから水相(ライン69a)を流量7.4g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度15℃)の全量1305g/hと合わせて、チムニートレイの1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。なお、第2の蒸留塔5の缶出流(ライン52、温度47℃)からの抜取り量は1312g/hであった。
さらに、ライン70を通じて、酢酸(温度20℃)を流量30.0g/hで第2の蒸留塔5の塔頂から21段下(リサイクル段より17段下)に仕込んだ。
次に、デカンタ6cから11.9g/hで抜き取った前記水相(ライン69)を、第3の蒸留塔(AD除去塔)7には仕込まず、直接、実段数6段の第4の蒸留塔(水抽出蒸留塔;塔頂温度32℃、塔底温度70℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))8の下から1段目に仕込み、水(温度20℃)を23.9g/hで塔頂から仕込み、ライン83のオーバーヘッド(温度32℃)をコンデンサC6で15℃に冷却し、還流量1.8g/hで水抽出蒸留し、塔頂からAD濃度12.5重量%、MeI濃度76.4重量%の溶液を0.20g/hで抜き取り、缶出(ライン81)から、AD濃度6.7重量%、MeI濃度0.022重量%の水溶液(温度70℃)を35.6g/hで抜き取った。
このようなプロセスにより、缶出(ライン81)においてADを流量2.40g/h、MeIを流量0.0078g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は86.4kcal/h、水抽出蒸留塔8は2.1kcal/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。なお、ライン44,52,53/61,63,69a,69,68の組成の結果は、実施例4と同様であるため、表から割愛する。また、ライン69の組成は蒸留塔7を回避した蒸留塔8の仕込ライン74の組成と同じである。
表7および表8に、フィード液の蒸留操作と、PRC類とヨウ化メチルとの分離効率、およびエネルギー効率の結果を示す。
なお、脱AD量およびMeIロス量は、比較例1では図4の水抽出蒸留塔207からの水抽出液275中のAD量およびMeI量を示し、実施例では第2の蒸留塔(5)からの分液した水相69中のAD量およびMeI量を示す。また、ヨウ化メチル/アセトアルデヒド比(MeI/AD比)は、比較例1では上記水抽出液275中のAD量およびMeI量に基づき算出し、実施例1〜4では上記水相69中のAD量およびMeI量に基づき算出した。
なお、脱AD量およびMeIロス量は、比較例1では図4の水抽出蒸留塔207からの水抽出液275をさらに蒸留塔208で蒸留して生成した留出液284中のAD量およびMeI量を示し、実施例4、5では第4の蒸留塔(8)の缶出液81中のAD量およびMeI量を示す。また、ヨウ化メチル/アセトアルデヒド比(MeI/AD比)は、比較例1では、留出液284中のAD量およびMeI量に基づき算出し、実施例4、5では缶出液81中のAD量およびMeI量に基づき算出した。
表7の比較例1と実施例1〜3との対比から、本発明の第2の蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)(5)での水抽出蒸留により、蒸留塔の必要段数を100段から43段に低減でき、かつ蒸気負荷も低減できることが分かる。また、実施例1と実施例2との比較および実施例1と実施例3との比較より、サイドカット流の水相を系外に抜き取るだけでなく、蒸留塔内にリサイクルするか、新たに酢酸を第2の蒸留塔内に仕込むことにより、第2の蒸留塔(5)内の酢酸メチル濃度を低下でき、ヨウ化メチルの系外への流出量を減少できる。さらに、実施例2および3と実施例4との比較より、第2の蒸留塔(5)内への水相のリサイクル、酢酸の仕込み単独よりも、水相のリサイクルと酢酸の仕込みとを組み合わせると、ヨウ化メチルのロス量を更に低減できる。
さらに、表8から明らかなように、第4の蒸留塔(8)で水抽出蒸留すると、ヨウ化メチルのロス量を低減できる。実施例4と実施例5との対比より、第3の蒸留塔(AD除去塔)(7)で予め酢酸メチルを除去しておくと、後続の第4の蒸留塔(8)での水抽出蒸留でのヨウ化メチルのロス量をさらに低減できる。
実施例6
実段数30段の第2の蒸留塔5(塔頂温度21.2℃、塔底温度49.1℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から7段目に、フィード液(ライン44、温度21℃)を1282g/hで仕込み、塔頂30段目に水(温度20℃)を6.7g/hで仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度21.2℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、還流量295g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1840ppm、MeI濃度82.6重量%、MeOH濃度0.07重量%、MA濃度13.9重量%、水濃度0.69重量%、AC濃度2.5重量%のヨウ化メチル溶液を仕込んだ。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度37.6℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で6.8℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。タンク6cからAD濃度22.2重量%の水相(温度6.8℃)の一部を9.4g/hでライン69から抜き取った。さらに、タンク6cから水相(ライン69a)を流量9.3g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度7℃)の全量968g/hと合わせてチムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。なお、第2の蒸留塔5の缶出流(ライン52、温度49.1℃)からの抜取り量は1279g/hであった。
このようなプロセスにより、第2の蒸留塔5の水相抜取り(ライン69)においてADを流量2.09g/h、MeIを流量0.167g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は47.7kcal/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。なお、ライン69の水相を第3の蒸留塔7に供給せずに、第4の蒸留塔8に仕込んだ。そのため、ライン69の水相の組成は、蒸留塔8の仕込ライン74の供給液の組成と同じである。
表中、DMEはジメチルエーテル、MeOHはメタノールを示す(以下、同じ)。
実施例7
実段数15段の第2の蒸留塔5(塔頂温度21.0℃、塔底温度45.1℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から7段目に、フィード液(ライン44、温度21℃)を1295g/hで仕込み、塔頂15段目に水(温度21℃)を4.2g/h仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度21.0℃)をコンデンサC3で5.8℃に冷却し、還流量298g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1710ppm、MeI濃度83.1重量%、MeOH濃度0.08重量%、MA濃度14.0重量%、水濃度0.61重量%、AC濃度2.0重量%のヨウ化メチル溶液を下から仕込んだ。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度36.7℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で5.8℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。タンク6cからAD濃度18.3重量%の水相(温度7℃)の一部を10.1g/hでライン69から抜き取った。さらに、タンク6cから水相(ライン69a)を流量3.0g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度5.8℃)全量971g/hと合わせてチムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。なお、第2の蒸留塔5の缶出流(ライン52、温度45.1℃)からの抜取り量は1289g/hであった。
このようなプロセスにより、第2の蒸留塔5の水相抜取り(ライン69)においてADを流量1.85g/h、MeIを流量0.17g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は42.7kcal/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。なお、ライン69の水相を第3の蒸留塔7に供給せずに、第4の蒸留塔8に仕込んだ。そのため、ライン69の水相の組成は、蒸留塔8の仕込ライン74の供給液の組成と同じである。
実施例8
実段数10段の第2の蒸留塔5(塔頂温度21.1℃、塔底温度45.2℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から3段目に、フィード液(ライン44、温度21℃)を1303g/hで仕込み、塔頂10段目に水(温度21℃)を6.3g/h仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度21.1℃)をコンデンサC3で5.8℃に冷却し、還流量300g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、フィード液として、AD濃度1790ppm、MeI濃度83.2重量%、MeOH濃度0.09重量%、MA濃度13.9重量%、水濃度0.66重量%、AC濃度1.95重量%のヨウ化メチル溶液を下から3段目に仕込んだ。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度36.7℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で5.8℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。タンク6cからAD濃度21.0重量%の水相(温度5.8℃)の一部を8.8g/hでライン69から抜き取った。さらに、タンク6cから水相(ライン69a)を流量9.5g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度5.8℃)の全量971g/hと合わせてチムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。なお、第2の蒸留塔5の缶出流(ライン52、温度45.2℃)からの抜取り量は1300g/hであった。
このようなプロセスにより、第2の蒸留塔5の水相抜取り(ライン69)においてADを流量1.84g/h、MeIを流量0.145g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は44.1kcal/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。なお、ライン69の水相を第3の蒸留塔7に供給せずに、第4の蒸留塔8に仕込んだ。そのため、ライン69の水相の組成は、蒸留塔8の仕込ライン74の供給液の組成と同じである。
実施例9
実段数13段の第2の蒸留塔5(塔頂温度21.4℃、塔底温度47.4℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から7段目に、水リッチのフィード液(ライン43b、温度21℃)を360g/hで仕込み、MeIリッチのフィード液(ライン44、温度21℃)を639g/hで仕込み、塔頂13段目に水(温度21℃)を3.8g/h仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度21.4℃)をコンデンサC3で7℃に冷却し、還流量250g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、水リッチフィード液として、AD濃度3840ppm、MeI濃度2.6重量%、MeOH濃度0.99重量%、MA濃度8.3重量%、水濃度63.7重量%、AC濃度24.0重量%、MeIリッチフィード液として、AD濃度1860ppm、MeI濃度82.0重量%、MeOH濃度0.084重量%、MA濃度13.6重量%、水濃度0.85重量%、AC濃度3.3重量%のヨウ化メチル溶液を仕込んだ。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度37.2℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で7.1℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。タンク6cからAD濃度23.7重量%の水相(温度7.1℃)の一部をライン69から、8.7g/hで抜き取った。さらに、タンク6cから水相(ライン69a)を流量3.9g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度7.1℃)の全量746g/hと合わせてチムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。なお、第2の蒸留塔5の缶出流(ライン52、温度47.4℃)からの抜取り量は水相とMeI相との分液相であり、合計で994g/hであった。
このようなプロセスにより、第2の蒸留塔5の水相抜取り(ライン69)においてADを流量2.06g/h、MeIを流量0.156g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は43.5kcal/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。なお、ライン69の水相を第3の蒸留塔7に供給せずに、第4の蒸留塔8に仕込んだ。そのため、ライン69の水相の組成は、蒸留塔8の仕込ライン74の供給液の組成と同じである。
実施例10
実段数13段の第2の蒸留塔5(塔頂温度21.4℃、塔底温度47.9℃、塔頂圧力:常圧+水柱10mmH2O(約100Pa))の下から7段目に、水リッチフィード液(ライン43b、温度21℃)を932g/hで仕込み、MeIリッチフィード液(ライン44、温度21℃)を105g/hで仕込み、塔頂13段目に水(温度20℃)を6.5g/h仕込み、ライン53のオーバーヘッド(温度21.4℃)をコンデンサC3で6.9℃に冷却し、還流量259g/hで還流し、塔内で水抽出蒸留した。なお、水リッチフィード液として、AD濃度3840ppm、MeI濃度2.4重量%、MeOH濃度0.99重量%、MA濃度8.3重量%、水濃度63.2重量%、AC濃度24.5重量%、MeIリッチフィード液として、AD濃度1860ppm、MeI濃度81.9重量%、MeOH濃度0.10重量%、MA濃度13.7重量%、水濃度0.85重量%、AC濃度3.3重量%のヨウ化メチル溶液を仕込んだ。また、塔頂より3段下にチムニートレイを設け、降下液の全量をサイドカット流63(温度37.1℃)として抜き取り、冷却ユニットC4で6.9℃まで冷却後、ホールドタンク6cに導入し、水相と有機相とに2相分離させた。タンク6cからAD濃度22.0重量%の水相(温度6.9℃)の一部を10.4g/hでライン69から抜き取った。さらに、タンク6cから水相(ライン69a)を流量6.2g/hで抜き取って、タンク6cから抜き取ったMeI相(ライン68、温度6.9℃)の全量746g/hと合わせて、チムニートレイ段の1段下(塔頂から4段下)の段にリサイクルした。なお、第2の蒸留塔5の缶出流(ライン52、温度47.9℃)からの抜取り量は水相とMeI相との分液相であり、合計で1033g/hであった。
このようなプロセスにより、第2の蒸留塔5の水相抜取り(ライン69)においてADを流量2.28g/h、MeIを流量0.183g/hでプロセス中から除去した。第2の蒸留塔5のリボイラー熱量は39.2kcal/hであった。
図3の各ラインでの各成分の分析結果を下表に示す。なお、ライン69の水相を第3の蒸留塔7に供給せずに、第4の蒸留塔8に仕込んだ。そのため、ライン69の水相の組成は、蒸留塔8の仕込ライン74の供給液の組成と同じである。
実施例1〜10で得られた結果を表14に示す。なお、表14には、蒸留段数、PRC類とヨウ化メチルとの分離効率、およびエネルギー効率の結果も示している。
実施例11
さらに、第2の蒸留塔5の段数(10段〜43段)、第2の蒸留塔5への水リッチフィード液(ライン43b)のフィード量(0〜1000g/h)、MeIリッチフィード液(ライン44)のフィード量(0〜1000g/h)、水リッチフィード液とMeIリッチフィード液との割合(前者/後者(重量比)=5/95〜100/0)、塔頂からの水のフィード量(0〜8g/h)、ライン69aの水相のリサイクル量0〜8g/h)を変えて、前記実施例と同様にして水抽出し、水抽出液(ライン69)のAD濃度とヨウ化メチル/アセトアルデヒド比(MeI/AD比)との相関関係を調べた。結果を図5に示す。なお、図5の曲線は、ソフトウェア「エクセル」に基づいて作成した多項式近似曲線である。
表14及び図5から、水抽出液中のAD濃度には最適値があり、AD濃度が低すぎても高すぎてもMeIの系外排出量が増加する事実を見いだした。
なお、脱AD量およびMeIロス量は、比較例1では図4の水抽出蒸留塔207からの水抽出液275中のAD量およびMeI量を示し、実施例では第2の蒸留塔5からの分液した水相69中のAD量およびMeI量を示す。また、ヨウ化メチル/アセトアルデヒド比(MeI/AD比)は、比較例1では上記水抽出液275中のAD量およびMeI量に基づき算出し、実施例1〜10では上記水相69中のAD量およびMeI量に基づき算出した。
[考察]
比較例1と実施例1〜8との対比より、MeIリッチのフィード液(ライン44)を仕込んだ例において、比較例は100段でのAD濃縮に引き続いてADを水抽出分離しているのに対し、実施例の水抽出蒸留条件では、わずかな段数で効率よくAD分離が可能である。中でも実施例8では、わずか10段でも十分な脱ADが可能であり、単位脱AD当りの必要蒸気量は、比較例1の44.5kcal/g−ADに対して、わずか24kcal/g−ADであり、蒸気の消費量を大きく低減できる。
さらに、比較例1と実施例10との対比から、単位脱AD当りの必要蒸気量は、比較例1では44.5kcal/g−ADであるのに対して、主に水リッチフィード液(ライン43b)を仕込んだ実施例10ではわずかに17.2kcal/g−ADであり、従来技術の39%のエネルギーで、脱ADが可能である。その理由は、水相リッチ液の方がヨウ化メチルリッチ液に比べAD濃度が高く、効率的にAD除去できるためである。また、比較例1に対し、実施例の全ての条件で、MeI/AD比が低く抑えられ、MeIの系外排出量も抑制できる。
なお、水リッチフィード液(ライン43b)とMeIリッチフィード液(ライン44)とを第2の蒸留塔5に仕込むと、水リッチフィード液の割合が大きくなるにつれて(実施例9:水リッチフィード液(水相)とMeIリッチのフィード液(MeI相)との重量割合=36/64;実施例10:水相とMeI相との重量割合=90/10)、少ない段数であってもADを少ないエネルギーで有効に分離できる。このことは、蒸留塔5の塔底から塔頂に至る全域にヨウ化メチルが存在するためADの分離効率が向上するとともに、水リッチフィード液中のAD濃度がMeIリッチフィード液のAD濃度より高いためと思われる。