JP2017165693A - 酢酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粗酢酸流を蒸留し、酢酸メチル、水及び/又は無水酢酸の含有量を低減でき、高純度の酢酸を製造する。【解決手段】本発明の方法では、メタノールのカルボニル化反応を連続的に行うための反応器1と;反応混合物を連続的に抜き取り、酢酸を含む揮発相成分(2A)と金属触媒成分を含む低揮発相成分(2B)とに分離するためのフラッシャー2と;揮発相成分(2A)を蒸留し、第1のオーバーヘッド(3A)と、粗酢酸流(3B)と、高沸缶出液体流(3C)とに分離するためのスプリッターカラム3と;粗酢酸流(3B)を蒸留して、酢酸メチル及び水を含む塔頂成分(4A)と、精製した酢酸を含む酢酸流(4B)と、無水酢酸などを含む高沸缶出流(4C)とに分離するための複合蒸留塔4を備えたプロセスにより、酢酸を製造する。このプロセスは、第1のオーバーヘッド(3A)から有用な成分を回収するとともに不純物を除去するための回収・分離プロセスとを備えていてもよい。【選択図】図1

Description

本発明は、メタノールカルボニル化法による酢酸の製造において、酢酸メチル、水及び無水酢酸のうち少なくとも一種の成分の含有量を低減できる高純度酢酸の製造方法に関する。
メタノールカルボニル化法による酢酸の製造では、反応生成物をフラッシュ塔(蒸発塔)で気化して揮発成分と低揮発成分とに分離し、揮発成分から低沸点成分と水分とを除去した後、生成した酢酸流を蒸留により精製している。しかし、酢酸流には不純物が含有されているため、不純物を分離除去するための種々の方法が検討されている。
特開昭52−23016号公報(特許文献1)には、ヨウ化メチル、ヨウ化水素および水を含有する酢酸流を第1の蒸留塔の中間点に導入し、第1の蒸留塔の塔頂からヨウ化メチルの主要割合及び水の一部を除去するとともに、塔底からヨウ化水素を除去し、第1の蒸留塔の中央部からの酢酸流を第2の蒸留塔の上部に導入し、ヨウ化水素に対して過剰のメタノールを第2の蒸留塔の下部に導入して塔内に存在するヨウ化水素をヨウ化メチルに転換して、塔頂から除去することが記載されている。また、過剰のメタノールの添加により塔内の酢酸と反応して酢酸メチル(MA)を生成させ、塔頂から酢酸メチル及び水を除去し、塔底から乾燥した酢酸を得る方法が開示されている。この文献には、ヨウ化メチル及びヨウ化水素を実質上含まない本質的に乾燥した酢酸流を、前記第2の蒸留塔の塔底から取り出すこと、前記第2の蒸留塔の液体水準よりも上の点から蒸気の形で取り出すこと、前記第2の蒸留塔の最低プレートよりも上の点から側流として取り出すことが記載されている。
しかし、この方法でも、第2の蒸留塔の塔底からの酢酸流中にはヨウ化水素が含有されており、このヨウ化水素濃度を200ppb以下にするためには、メタノール導入量を調整する必要がある。そして、ヨウ化水素を除去するためメタノール導入量を増大させると、例えば、20〜50ppm程度の濃度で酢酸メチルが副生し、酢酸流中に混入する。また、乾燥酢酸を得ようとすると、蒸留塔内で無水酢酸が生成する。例えば、前記蒸留塔の塔底から取り出した酢酸流中の水濃度が350ppmである場合、濃度300〜400ppm程度の無水酢酸が混入している。従って、高純度酢酸を得るために、低沸成分である酢酸メチルや水などを分離し、かつ高沸成分である無水酢酸などを除去する必要がある。
特開平6−40999号公報(特許文献2)には、メタノールカルボニル化反応により生成した反応生成物をフラッシュ領域で気化し、蒸気成分を単蒸留領域中に導入し、単蒸留領域の頭部から、水分、酢酸メチル、ヨウ化メチルおよび酢酸からなる軽質流を取出し、フラッシュ領域からの蒸気区分の導入点よりも下方の単蒸留領域から、水分濃度1500ppm未満およびプロピオン酸濃度500ppm未満の酢酸流を取り出し、酢酸を製造する方法が開示されている。この文献にも、蒸留領域の導入点の下方にメタノールを導入し、ヨウ化水素をヨウ化メチルに変換し、軽質流として頭部から除去し、ヨウ化水素の増加を防止することも記載されている。
しかし、この方法においても、メタノールの添加により酢酸メチルが副生するとともに、水分含有量の低下に伴って無水酢酸濃度も増加する。特許文献2には、これらの成分を除去して高純度酢酸を得ることは考慮されていない。
なお、特開平9−299701号公報(特許文献3)には、第1の蒸留部と、この第1の蒸留部から上方に形成された第2の蒸留部と、前記第1の蒸留部から下方に形成された第3の蒸留部とを有し、前記第1の蒸留部が中仕切りにより第1室と第2室とに区画されている単蒸留塔(結合型蒸留塔)が開示され、この単蒸留塔を用いると、低沸成分と高沸成分と目的成分とを分離でき、設備費、熱量も低減できることが記載されている。
特開昭52−23016号公報(特許請求の範囲) 特開平6−40999号公報(特許請求の範囲、段落[0043]) 特開平9−299701号公報(特許請求の範囲、[発明の効果])
従って、本発明の目的は、酢酸メチル、水及び/又は無水酢酸の含有量を低減できる高純度酢酸の製造方法、及び酢酸メチル、水及び/又は無水酢酸の含有量を低減する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、メタノール及び/又は酢酸メチルを添加してヨウ化水素をヨウ化メチルに転換してヨウ化水素を除去する系であっても、不純物の含有量が少ない酢酸を製造できる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、水分含有量の少ない粗酢酸流を蒸留しても無水酢酸の含有量を低減できる酢酸の製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、粗酢酸流の精製エネルギー並びに運転コストを低減できる酢酸の製造方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、蒸留塔の理論段数が小さくても、粗酢酸流を精製できる酢酸の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、複数の蒸留部を有する複合蒸留塔に粗酢酸流を導入し、複合蒸留塔で蒸留した酢酸を取り出すと、所定の水分濃度の酢酸流では、メタノールの添加により酢酸メチル及び水が副生する系、及び水分濃度が低く無水酢酸が生成しやすい系(特に、塔底温度の高い蒸留系)でも、さらには小さな理論段数でも、低沸成分(酢酸メチル、水など)及び高沸成分(無水酢酸など)を効率よく、しかも省エネルギーで分離でき、酢酸メチル、水及び無水酢酸の濃度を大きく低減でき、高純度の酢酸を製造できることを見いだした。
すなわち、本発明の方法は、カルボニル化触媒系と水とを含む反応媒体中、メタノールと一酸化炭素とを連続的にカルボニル化する反応工程と;反応工程から反応混合物を連続的に抜き出して、揮発相成分と非揮発相成分とに分離するフラッシュ工程と;揮発相成分を蒸留して、第1のオーバーヘッド(低沸成分)と、高沸液体流(高沸成分)と、酢酸を含む粗酢酸流とに分離する分離工程と;この分離工程からの前記粗酢酸流を、複数の蒸留部を備えた複合蒸留系で蒸留する精製工程とを含み、このような工程を経て酢酸を製造する。
この方法において、前記複合蒸留系は、粗酢酸流を蒸留し、酢酸を含み、かつ低沸点成分に富む第1の揮発成分と、酢酸を含み、かつ高沸点成分に富む第1の低揮発成分とに分離するための第1の蒸留部と、第1の蒸留部からの第1の揮発成分を蒸留し、低沸点成分に富む第2の揮発成分と、酢酸に富む第2の低揮発成分とに分離するための第2の蒸留部と、第1の蒸留部からの第1の低揮発成分を蒸留し、酢酸に富む第3の低揮発成分と、高沸点成分に富む第3の低揮発成分とに分離するための第3の蒸留部とを備えている。
さらに、前記複合蒸留系は、少なくとも第2の蒸留部と第3の蒸留部とが、連通した状態で縦方向に接続され、かつ第2の蒸留部と第3の蒸留部との接続部に、第2の低揮発成分と第3の揮発成分とを取り出すための取り出し口を備えている。第2の蒸留部は第3の蒸留部の上部に位置し、第2の蒸留部の最下部と第3の蒸留部の最上部とが連通した形態で接続されている。
そして、本発明の方法では、粗酢酸流を第1の蒸留部に供給(第1の蒸留部の導入口から導入)し、第2の蒸留部からの第2の揮発成分を抜き取り、第3の蒸留部からの第3の低揮発成分を抜き取るとともに、第2の蒸留部からの第2の低揮発成分と第3の蒸留部からの第3の揮発成分とを取り出し口から回収し、精製酢酸を製造する。
前記複合蒸留系において、第1の蒸留部乃至第3の蒸留部には、それぞれ、酢酸を含む混合物を導入するための導入口よりも上方に、低沸点成分を濃縮するための濃縮部が形成され、導入口よりも下方に、高沸点成分を濃縮するための回収部が形成される。なお、濃縮部は濃縮域、回収部は回収域と読み替えることができ、回収部(又は回収域)は、濃縮部(又は濃縮域)で濃縮される成分よりも高沸点の高沸点成分を濃縮するための濃縮部(又は濃縮域)ということもできる。
前記複合蒸留系は、(1)第1の蒸留部で形成された第1の蒸留塔と、第2の蒸留部と第3の蒸留部とで形成された第2の蒸留塔とを備えた蒸留系であってもよく;(2)中仕切りを介して、第1の蒸留部の濃縮部と第2の蒸留部の回収部とが隣接するとともに、第1の蒸留部の回収部と第3の蒸留塔の濃縮部とが隣接し;第1の蒸留部の濃縮部の上方に第2の蒸留部の濃縮部が連なり、第1の蒸留部の回収部の下方に第3の蒸留部の回収部が連なった構造を有する単一の蒸留塔を備えた蒸留系であってもよい。
前記複合蒸留系(特に、前記(1)の形態の蒸留系)において、第1の低揮発成分を加熱し、第1の低揮発成分からの蒸気成分を第1の蒸留部に戻し(又は還流し)、残液を第3の蒸留部に導入してもよい。
このような製造方法では、粗酢酸流を第1の蒸留部乃至第3の蒸留部で蒸留できるため、3つの蒸留塔で順次蒸留したのと同様に低沸成分および高沸成分を分離でき、高純度の酢酸を得ることができる。特に、3つの蒸留塔の合計の理論段数よりも小さな理論段数で、低沸成分および高沸成分を分離でき、高純度の酢酸を製造できる。また、メタノール及び/又は酢酸メチルを添加してヨウ化水素をヨウ化メチルに転換するプロセス、水分濃度が低く無水酢酸が生成しやすいプロセス(例えば、水分濃度1500ppm以下の粗酢酸流の蒸留プロセス)であっても、酢酸メチル、水および無水酢酸のうち少なくとも一種の成分の含有量を低減でき、高品位の酢酸を工業的に有利に製造できる。なお、少ない蒸留塔で粗酢酸流を精製できるため、複数の蒸留塔を用いる必要がなく、設置スペース、設置費用などを低減できるだけでなく、蒸留エネルギー(精製エネルギー並びに運転コスト)も低減できるため、工業的に有利である。
本発明の方法において、前記反応工程では、ロジウム触媒、ヨウ化金属及びヨウ化メチルを含む助触媒の存在下、酢酸メチル、酢酸及び水を含む反応媒体中でメタノールと一酸化炭素とを反応させてもよい。前記分離工程は、揮発相成分を蒸留塔で蒸留して第1のオーバーヘッドと酢酸を含む粗酢酸流と高沸液体流とに分離するための少なくとも1つの蒸留工程を含み、この蒸留工程からの少なくとも1つの粗酢酸流を、複合蒸留系で蒸留してもよい。
さらに、第1の蒸留部、第2の蒸留部および第3の蒸留部は、それぞれ、棚段塔又は充填塔を形成してもよく、充填塔では、規則的又は不規則的充填物が充填できる。例えば、第1の蒸留部、第2の蒸留部および第3の蒸留部は、それぞれ、前記2塔式の複合蒸留系(1)では、棚段塔又は充填塔を形成してもよく、前記1塔式の複合蒸留系(2)では、充填塔を形成していてもよい。複合蒸留系(例えば、前記1塔式の複合蒸留系(2))では、第1の蒸留部、第2の蒸留部および第3の蒸留部に配設されたディストリビュータで液体を分配して蒸留してもよい。
さらに、酢酸、無水酢酸5〜2500ppm、酢酸メチル1〜1500ppm、水5〜2500ppmを含む粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留してもよく、水分濃度1500ppm以下の粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留してもよい。
このような方法では、酢酸メチル、水及び無水酢酸のうち少なくとも1つの成分の含有量が低減した酢酸を製造できる。そのため、メタノール及び/又は酢酸メチルを、分離工程の蒸留系及び複合蒸留系のうち少なくとも1つの蒸留系に供給し、ヨウ化水素をヨウ化メチルに転換し、水分濃度1500ppm以下の粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留し、酢酸メチル、水及び無水酢酸の含有量が低減した酢酸を製造してもよい。
なお、プロセス流(精製系を構成し、反応器へリサイクルされるリサイクル液など)からアセトアルデヒドを分離除去してもよい。例えば、揮発相成分を蒸留して第1のオーバーヘッドと酢酸を含む粗酢酸流と高沸液体流とに分離するための少なくとも1つの蒸留工程と;この蒸留工程からの少なくとも1つの粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留する蒸留工程と;前記第1のオーバーヘッドから有用成分を回収するとともに不純物を除去するための回収・分離工程とを含んでいてもよい。この回収・分離工程は、蒸留工程からの第1のオーバーヘッドを蒸留して第2のオーバーヘッド(6A)を生成させるための少なくとも1つのオーバーヘッド蒸留工程と;第2のオーバーヘッド(6A)を水で抽出する工程と;抽出工程で分液した有機相を反応工程へリサイクルする工程と;水相からアセトアルデヒドを除去する工程とを含んでいてもよい。さらに、回収・分離工程は、蒸留工程からの第1のオーバーヘッドを凝縮して分液する工程と;分液した軽質相及び重質相のうち少なくとも一方の相を蒸留して第2のオーバーヘッド(6A)を生成させる工程と;第2のオーバーヘッド(6A)を凝縮して水で抽出する工程と;有機相を反応工程へリサイクルする工程と;水相を蒸留してアセトアルデヒドを除去する工程と;この除去工程からの水相を抽出工程及び/又は反応工程へリサイクルする工程とを含み、前記分液工程は複合蒸留系からの第2の揮発成分(塔頂成分)を凝縮して分液する工程を含み、複合蒸留系からの第3の低揮発成分(高沸缶出流)を反応工程にリサイクルする工程とを含んでいてもよい。
さらに、酢酸流中のヨウ化アルキルを除去してもよい。例えば、少なくとも一部が遷移金属(銀、水銀、及び銅から選択された少なくとも一種の金属など)でイオン交換されたイオン交換樹脂と、分離工程からの粗酢酸流及び複合蒸留系からの酢酸流とを接触させ(又はイオン交換樹脂に酢酸流を通液し)、酢酸中のヨウ化アルキルを除去してもよい。その際、段階的に昇温して、イオン交換樹脂と酢酸流とを段階的に昇温して接触させると、遷移金属(Agなど)の流出ロスを抑制できる。
本発明は、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、及び水を含む混合物を、前記複合蒸留系で蒸留して酢酸を製造する方法;前記混合物を、ペトリューク蒸留塔(あるいは改良型ペトリューク蒸留塔)、あるいは複合蒸留系で蒸留し、酢酸メチル、水及び無水酢酸から選択された少なくとも一種の成分の酢酸中の含有量を低減する方法も包含する。これらの方法でも、前記粗酢酸流を第1の蒸留部の導入口から導入し、前記複合蒸留系で蒸留した酢酸は取り出し口から取り出される。
なお、本明細書中、「複合蒸留系」と「複合蒸留塔」とは同義に用い、「複合蒸留系」「複合蒸留塔」とは、少なくとも1つの塔内に複数の蒸留部を備えた1塔式又は2塔式蒸留系又は蒸留塔を意味する。
本発明では、粗酢酸流を所定の複合蒸留系で蒸留するため、酢酸メチル、水及び/又は無水酢酸の含有量を低減でき、高純度の酢酸を製造できる。また、メタノール及び/又は酢酸メチルを添加してヨウ化水素をヨウ化メチルに転換してヨウ化水素を除去する系に適用しても、不純物の含有量が少ない酢酸を製造できる。さらに、水分含有量が少なく、蒸留により無水酢酸が生成しやすい粗酢酸流であっても、蒸留により無水酢酸の含有量を低減しつつ酢酸を製造できる。さらには、複合蒸留塔を用いることにより、従来の蒸留塔よりも、合計エネルギー(精製エネルギー)の使用量および製造又は運転コストを低減しながら粗酢酸流を精製できる。特に、合計理論段数が小さくても粗酢酸流を精製できる。
図1は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の一例を説明するためのフロー図である。 図2は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の他の例を説明するための部分的なフロー図である。 図3は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)のさらに他の例を説明するための部分的なフロー図である。 図4は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の別の例を説明するためのフロー図である。
以下、必要により添付図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。図1は本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の一例を説明するためのフロー図である。
図1に示すプロセス(又は製造装置)は、メタノールのカルボニル化反応を連続的に行うための反応器(反応系)1と;反応により生成した反応混合物を連続的に抜き取り、酢酸を含む揮発相成分(2A)と金属触媒成分を含む低揮発相成分(2B)とに分離するためのフラッシャー2と;前記フラッシャー2からの揮発相成分(2A)を蒸留し、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルなどを含む第1のオーバーヘッド(3A)と、酢酸を含み、側流としての粗酢酸流(3B)と、プロピオン酸などを含む高沸液体流(缶出流、高沸点成分)(3C)とに分離するためのスプリッターカラム(蒸留塔)3と;前記粗酢酸流(3B)を蒸留して、酢酸メチル及び水を含む塔頂成分(4A)と、精製した酢酸を含む酢酸流(4B)と、無水酢酸などを含む高沸缶出流(高沸点成分)(4C)とに分離するための複合蒸留塔4と;前記第1のオーバーヘッド(3A)から有用な成分を回収するとともに不純物を除去するための回収・分離プロセスとを備えている。
この回収・分離プロセスは、前記第1のオーバーヘッド(3A)を凝縮して凝縮液を一時的にホールド又は貯留するためのデカンタ5と;デカンタ5の凝縮液(又は分液した下相又は上相)を蒸留し、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルに富む第2のオーバーヘッド(6A)と、液体ストリーム(缶出流)(6B)とに分離するための蒸留塔6と;この蒸留塔6で分離された缶出流(6B)を一時的に貯蔵する(又は滞留させる)ためのバッファタンク7と;第2のオーバーヘッド(6A)を水で抽出し、アセトアルデヒドに富む水相(軽質相)とヨウ化メチルに富む有機相(重質相)とに分液するための抽出塔(抽出装置又は抽出器)8とを備えている。抽出塔(抽出装置又は抽出器)8で分液し、かつ有用なヨウ化メチルを主成分として含む有機相(重質相、ラフィネート)の少なくとも一部は反応器1へリサイクルされ若しくは有機相の一部は蒸留塔6へリサイクルされ、アセトアルデヒドを主成分として含む水相(軽質相)はアルデヒド分離塔9で蒸留され、塔頂からアセトアルデヒドに富む留分を分離除去するとともに、塔底から主成分として水を含む水流を前記抽出塔8の抽出液の少なくとも一部として利用している。また、アセトアルデヒド分離塔9の塔底からの水流の一部は反応器1へもリサイクルしてもよい。
[反応工程]
反応工程(カルボニル化反応工程)では、カルボニル化触媒系(特に、ロジウム触媒、ヨウ化リチウム及びヨウ化メチルを含む助触媒)と水(特に、酢酸メチル、酢酸及び水)とを含む反応媒体中、反応器1に、液体成分としてのメタノールと気体反応成分としての一酸化炭素とを、所定の流量で連続的に供給し、反応媒体(又は液相)中でメタノールと一酸化炭素とを連続的にカルボニル化して酢酸を生成させる。前記反応器1には、リサイクルの形態で又は他のルートを経て、カルボニル化触媒系と反応媒体とを含む触媒混合物(触媒液)及び/又は水が供給される。
反応器1内では、反応成分と金属触媒成分(ロジウム触媒及びヨウ化リチウム)などの高沸成分とを含む液相反応系と、一酸化炭素及び反応により生成した水素、メタン、二酸化炭素、ヨウ化水素並びに気化した低沸成分(ヨウ化メチル、生成した酢酸、酢酸メチルなど)などで構成された気相系とが平衡状態を形成しており、メタノールのカルボニル化反応が進行する。
反応器1で生成した反応混合物(反応粗液)中には、酢酸、酢酸よりも沸点の低い低沸成分又は低沸不純物(ヨウ化メチル、酢酸メチル、水、副反応生成物であるアセトアルデヒド、ジメチルエーテル、ヨウ化水素など)、及び酢酸よりも沸点の高い高沸成分又は高沸不純物[金属触媒成分(ロジウム触媒など)、助触媒としてのヨウ化リチウム、プロピオン酸などのC3−12アルカンカルボン酸など]などが含まれている。さらに、アセトアルデヒドに由来して種々の副生成物、例えば、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどのC2−12アルデヒド類も副生するとともに、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化アルキル(ヨウ化C2−12アルキルなど)も生成する。そのため、反応混合物から副生物の主たる成分であるアセトアルデヒドを分離して除去し、有用な成分(例えば、ヨウ化メチルなど)については、プロセス流から回収して有効に利用するのが好ましい。
なお、反応器1からの気相は、コンデンサで冷却して凝縮され、凝縮液は反応器1へ戻されている。
[フラッシュ蒸発工程]
前記反応器1から反応混合物(反応液)の一部を連続的に抜き取りつつ、供給ライン11を通じてフラッシャー(蒸発槽又は触媒分離塔)2に供給し、フラッシュ蒸留する。フラッシャー(フラッシュ蒸留塔)2では、反応混合物を、揮発相成分(低沸点流分又は蒸気成分)(2A)と、低揮発相成分(高沸点流分又は液体成分)(2B)とに分離し、前記低揮発相成分(2B)を塔底から缶出ライン21を通じて反応器1にリサイクルし、フラッシャー2の塔頂部又は上段部から前記揮発相成分(2A)を供給ライン22を通じてスプリッターカラム(又は蒸留塔)3に供給している。低揮発相成分(2B)は、主に、ロジウム触媒及びヨウ化リチウムなどの金属成分(金属触媒成分)を含んでおり、蒸発せずに残存したヨウ化メチル、酢酸メチル、水及び微量の酢酸なども含んでいる。
揮発相成分(2A)は、主に、酢酸、酢酸メチル、ヨウ化メチル、水、副生成物(アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、プロピオン酸などのC3−12アルカンカルボン酸、ヨウ化ヘキシルなどのC2−12ヨウ化アルキルなど)などを含んでおり、ヨウ化水素、メタノール、ジメチルエーテルなども含んでおり、酢酸を回収するための蒸留塔(スプリッターカラム)3に供給される。
[蒸留系による分離工程]
スプリッターカラム(蒸留塔)3では、前記フラッシャー2からの揮発相成分(2A)を、塔頂又は塔の上段部から留出ライン32を通じて留出するオーバーヘッド(塔頂ガス、低沸流分又は低沸成分)(3A)と、サイドカットによりライン34を通じて取り出され、主に酢酸を含む側流(サイドカット流)としての粗酢酸流(3B)と、塔底又は塔の下段部から缶出ライン31を通じて流出する高沸液体流(缶出流又は高沸成分)(3C)とに分離する。この例では、前記第1のオーバーヘッド(3A)はライン32を通じてコンデンサで凝縮して(凝縮液を収容するレシーバタンクを経て)蒸留塔3に還流され、高沸液体流(3C)はライン31を通じて反応器1へリサイクルされている。
高沸液体流(3C)は、少なくとも水及びメタノール(通常、酢酸、水、メタノール、プロピオン酸、飛沫同伴により混入した金属触媒成分、ハロゲン化物塩など)を含む。高沸液体流(3C)は、ライン31を通じて排出してもよいが、この例では、高沸液体流(3C)の一部又は全部は、ライン93を通じて反応器1にリサイクルしている。
第1のオーバーヘッド(3A)は、少なくともヨウ化メチル、酢酸メチル及びアセトアルデヒド(通常、ヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド、水、メタノール、酢酸、ジメチルエーテル、その他の不純物(アルデヒド類又はカルボニル不純物(クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなど)、ヨウ化水素、ヨウ化C2−12アルキル(ヨウ化ヘキシルなど)、C3−12アルカンカルボン酸(プロピオン酸など)など))を含んでいる場合が多い。前記第1のオーバーヘッド(3A)はコンデンサで凝縮して蒸留塔3に還流されるとともに、ヨウ化メチルなどの有用成分を回収するとともに、アセトアルデヒドなどの不純物を除去するため、ライン33を通じて、デカンタ5,蒸留塔6,抽出器8,蒸留塔9などによる分離・回収工程に供される。蒸留塔3への還流は、デカンタ5内の少なくとも一部の液を用いてもよい。
酢酸流(粗酢酸液)(3B)は、酢酸を主成分として含み、通常、さらに、少なくとも高沸成分(無水酢酸など)、及び低沸成分(酢酸メチル、水など)を含んでいる。粗酢酸流中の無水酢酸の含有量は、例えば、5〜2500ppm、好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは100〜700ppm(例えば、200〜500ppm)程度であってもよく、酢酸メチルの含有量は、例えば、1〜1500ppm、好ましくは10〜500ppm、さらに好ましくは15〜100ppm(例えば、20〜50ppm)程度であってもよく、水の含有量は、例えば、5〜2500ppm、好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは100〜700ppm(例えば、200〜500ppm)程度であってもよい。また、粗酢酸流(3B)は、通常、さらに、微量のメタノール、ジメチルエーテル、ヨウ化水素、及び過マンガン酸カリウム試験値を低下させる不純物(アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、ヨウ化メチル、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C1−12アルキル、ギ酸など)、プロピオン酸などのC3−12アルカンカルボン酸、酢酸エチルなどのC3−12カルボン酸エステルなどを含んでいる。そこで、粗酢酸流(3B)は、ライン34を通じて、複合蒸留塔4に供給されて精製され、高純度の製品酢酸を製造している。
なお、代表的な上記成分とその沸点は、例えば、酢酸(118℃)、水(100℃)、メタノール(64.1℃)、酢酸メチル(57.5℃)、ヨウ化メチル(42.5℃)、アセトアルデヒド(21℃)、ジメチルエーテル(−23.6℃)、ヨウ化水素(−35.4℃)、無水酢酸(140℃)、ヨウ化ヘキシル(181℃)、ギ酸(101℃)、プロピオン酸(141℃)、クロトンアルデヒド(104℃)、2−エチルクロトンアルデヒド(136.5℃)である(括弧内に沸点を示す)。そのため、酢酸bよりも低沸点の低沸点成分aは、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、ジメチルエーテル、メタノール、ヨウ化水素などを含み、酢酸bよりも高沸点の高沸点成分cは、無水酢酸、ヨウ化ヘキシル、プロピオン酸、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどを含んでいる。
[粗酢酸流(3B)の精製工程]
複合蒸留塔4としては、種々の蒸留装置、例えば、ペトリューク蒸留塔、垂直分割型蒸留塔、これらの改良型蒸留塔(例えば、改良型ペトリューク蒸留塔など)などが利用できる。図1に示す例では、複合蒸留系としてペトリューク蒸留塔が利用されている。
複合蒸留塔4としてのペトリューク(Petlyuk)蒸留塔は、第1の蒸留部乃至第3の蒸留部A〜Cを備えており、第1の蒸留部Aで形成された第1の蒸留塔と、第2の蒸留部Bが第3の蒸留部Cの上部に位置し、第2の蒸留部Bと第3の蒸留部Cとで形成された第2の蒸留塔とを備えており、2塔式蒸留系である。第2の蒸留塔では、第2の蒸留部Bの最下部と第3の蒸留部Cの最上部とが隣接し、かつ連通した状態で縦方向に接続又は結合し、1つの塔体を形成している。
また、各蒸留部A,B,Cの縦方向の適所(例えば、中央部辺り)には、酢酸を含む混合物を導入するための導入口41a〜41cが形成されている。なお、蒸留に伴って、第1の蒸留部乃至第3の蒸留部A,B,Cには、それぞれ、前記導入口41a〜41cよりも上方に、低沸点成分を濃縮するための濃縮部I,III,Vが形成され、導入口よりも下方に、高沸点成分を濃縮するための回収部II,IV,VIが形成される。
より詳細には、複合蒸留塔4において、第1の蒸留部Aでは、導入口41aから導入された粗酢酸流(3B)は、蒸留により、酢酸を含み、かつ低沸点成分に富む第1の揮発成分と、酢酸を含み、かつ高沸点成分に富む第1の低揮発成分とに分離される。この第1の蒸留部Aでは、粗酢酸流(3B)の導入口41aよりも上方に、低沸点成分を濃縮するための第1の濃縮部I(少なくとも酢酸と低沸点成分とを含む第1の揮発成分を生成させるための第1の濃縮部I)が形成され、粗酢酸流(3B)の導入口41aよりも下方に、高沸点成分を濃縮するための第1の回収部II(少なくとも酢酸と高沸点成分とを含む第1の低揮発成分を生成させるための第1の回収部II)が形成される。
また、第1の揮発成分を第2の蒸留部Bに導入するため、第1の濃縮部Aと第2の蒸留部Bの適所(例えば、縦方向の中央付近)とは、分配ライン42a,42bを介して接続(又は連通)しており、第1の蒸留部Aから第2の蒸留部Bの導入口41bに導入された第1の揮発成分は、第2の蒸留部Bで蒸留され、低沸点成分に富む第2の揮発成分(低沸点成分a)と、酢酸に富む第2の低揮発成分とに分離される。このような第2の蒸留部Bでは、第1の揮発成分の導入口41bよりも上方に、酢酸よりも低沸点の低沸点成分を濃縮するための第2の濃縮部III(低沸点成分を含む第2の揮発成分を生成させるための第2の濃縮部III)が形成され、前記導入口41bよりも下方に、酢酸を濃縮するための第2の回収部IV(酢酸に富む第2の低揮発成分を生成させるための第2の回収部IV)とが形成される。この例では、前記導入口(フィードノズル)41aよりも上方の第1の蒸留部Aの部位(この例では、塔頂部)と第2の蒸留部Bの縦方向の中央部とが分配ライン42a,42bにより連通しており、第1の蒸留部Aで生成した蒸気成分(第1の揮発成分)を、一方の分配ライン42aを介して第2の蒸留部Bに導入し、他方の前記分配ライン42bを介して第2の蒸留部B(この例では、第2の濃縮部III)の流体を第1の蒸留部Aに戻している。すなわち、分配ライン42a,42bを利用して、第2の濃縮部IIIから第1の濃縮部Iに戻る流量(液量)と、第2の濃縮部III内での降下流量(液量)とをコントロールでき、第2の蒸留部Bに導入した第1の揮発成分の量的割合を分配できる。
なお、第2の蒸留部Bに対する前記分配ライン42a,42bの接続部位よりも上方の部位(この例では、第2の蒸留部Bの塔頂部)には、第2の揮発成分(4A)を抜き出すための第1の抜出しライン51が接続されている。第2の蒸留部Bの塔頂部では、第2の揮発成分(4A)を凝縮させて還流させている(この例では、コンデンサで凝縮した凝縮液を塔頂に還流している)。
さらに、第1の低揮発成分(缶出液)を第3の蒸留部Cに導入するため、第1の回収部IIと第3の蒸留部Cの適所(例えば、縦方向の中央付近)とは、接続ライン43a,43bを介して接続(又は連通)している。そのため、第1の蒸留部Aからの第1の低揮発成分は第3の蒸留部Cで蒸留され、酢酸に富む第3の揮発成分と、高沸点成分に富む第3の低揮発成分(高沸点成分c)とに分離される。すなわち、第3の蒸留部Cでは、第1の蒸留部Aからの第1の低揮発成分の導入口41cよりも上方に、酢酸を濃縮するための第3の濃縮部V(酢酸に富む第3の揮発成分を生成させるための第3の濃縮部V)と、酢酸よりも高沸点の高沸点成分を濃縮するための第3の回収部VI(高沸点成分を含む第3の低揮発成分を生成させるための第3の回収部VI)とが形成される。この例では、第1の蒸留部Aのうち前記導入口(フィードノズル)41aよりも下方の部位(この例では、塔底部)と第3の蒸留部Cの縦方向の中央部とが接続ライン43aにより連通しており、第1の蒸留部Aで生成した第1の低揮発成分(缶出液)を、一方の接続ライン43aを介して第3の蒸留部Cに導入し、他方の接続ライン43bを介して、第3の蒸留部Cの流体を第1の蒸留部A(この例では、第1の蒸留部Aの塔底部)に戻している。すなわち、接続ライン43a,43bを利用して、前記第3の回収部VI内の流体の流量(上昇蒸気流量)と、第3の回収部VIから第1の回収部IIに戻る流体の流量(蒸気流量)とをコントロールしている。
なお、第3の蒸留部Cに対する前記接続ライン43aの接続部位よりも下方の部位(この例では、第3の蒸留部Cの塔底部)には、第3の低揮発成分を抜き出すためのライン47aが接続され、このライン47aに設けられたリボイラー48により第3の低揮発成分を加熱し、蒸気成分を循環ライン47bにより第3の蒸留部C(例えば、回収部VIの下部)に戻し(又は還流し)、第3の低揮発成分の残液を第2の抜出しライン50から抜き取っている。
そして、第1の蒸留部Aに供給された粗酢酸流(3B)を、第1の蒸留部A、第2の蒸留部B及び第3の蒸留部Cで蒸留し、第2の蒸留部Bに接続された第1の抜出しライン51を介して、第2の蒸留部Bからの第2の揮発成分[低沸点成分a(酢酸メチル、水など)が濃縮された蒸気]を抜き取り、第3の蒸留部に接続された第2の抜出しライン50を介して、第3の蒸留部Cからの第3の低揮発成分[高沸成分c(無水酢酸など)が濃縮された缶出液]を抜き取っている。さらに、第2の蒸留部Bと第3の蒸留部Cとの接続部に形成された取り出し口(サイドカットノズル)46から第2の低揮発成分と第3の揮発成分とを合流させてサイドカット流(4B)として取り出し、精製酢酸bを回収している。
なお、第2の蒸留部Bには、少なくとも一部(全部又は一部)の第1の揮発成分を導入すればよく、第3の蒸留部には、少なくとも一部(全部又は一部)の第1の低揮発成分(缶出液)を導入すればよい。また、第1の回収部IIと第3の蒸留部Cとは、接続ラインを介して、流体が双方向に移動又は供給可能である必要はない。
このような構造のペトリューク蒸留塔では、第2の蒸留部Bの第2の濃縮部III内での降下流量と第2の濃縮部IIIから第1の蒸留部Aの第1の濃縮部Iに戻る流量との割合、並びに第3の蒸留部Cの第3の回収部VIでの流体の流量と第3の回収部VIから第1の回収部IIへ戻る流体の流量との割合(流量比)をコントロールすることにより、全体として高いエネルギー効率(省エネルギー)で粗酢酸流(3B)を精製できる。また、3つの蒸留部の合計理論段数よりも小さな理論段数であっても、低沸点成分aと酢酸bと高沸点成分cとを精度よく分離でき、高純度の酢酸bを製造できる。
なお、上記ペトリューク蒸留塔では第3の回収部VIでの蒸気量を第3の濃縮部Vと第1の回収部IIとに分配する必要があるものの、蒸気成分を正確に分配することは困難である。そのため、第1の回収部IIからの第1の低揮発成分を加熱し、生成した蒸気成分を第1の蒸留部Aに戻し(又は還流し)、残液を第3の蒸留部Cに導入するのが好ましい。
図2は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の他の例を説明するための部分的なフロー図であり、複合蒸留系として改良型ペトリューク蒸留塔を利用した例を示している。なお、前記図1と同一又は等価な要素又は部材には、同一の符号を付して説明する(以下、同じ)。
この例において、改良複合蒸留系(改良ペトリューク蒸留塔)104では、第1の蒸留部Aからの第1の低揮発成分(第1の回収部IIからの第1の低揮発成分)を第3の蒸留部Cに供給するための接続ライン43aに、前記第1の低揮発成分を加熱するためのリボイラー44が設けられ、このリボイラーにより加熱された第1の低揮発成分からの蒸気成分が、循環ライン45を介して、第1の蒸留部Aの回収部IIの下部に還流され、前記リボイラー44による第1の低揮発成分の残液が缶出液として前記接続ライン43cを介して、第3の蒸留部Cの縦方向の中央部付近に導入されている。すなわち、この例では、ペトリューク蒸留塔での接続ライン(第1の回収部IIと第3の蒸留部Cの中央付近とを接続する接続ライン)43a,43bに代えて、リボイラー44により発生した蒸気を第1の回収部IIの下部に還流する循環ライン45と、リボイラー44による残液を第3の蒸留部Cの中央付近に導入する導入ライン43cとが設けられている。なお、ペトリューク蒸留塔と同様に、第1の蒸留塔は第1の蒸留部Aを形成し、第2の蒸留塔は第2の蒸留部B及び第3の蒸留部Cを形成している。
なお、第1の低揮発成分からの蒸気成分は、循環ライン45を介して、第1の蒸留部Aの適所(例えば、第1の回収部II)に還流してもよく、前記リボイラー44による第1の低揮発成分の残液(缶出液)は、前記接続ライン43cを介して、第3の蒸留部Cの適所(例えば、導入口又は第3の蒸留部Cの縦方向の中央部付近)に導入してもよい。
図1に示す態様では、第3の回収部VIで発生した蒸気を、接続ライン43a,43bで第1の回収部IIと第3の濃縮部Vとに分配しているが、図2に示す態様では、このような分配操作が必要ではなく、分配制御を、接続ライン43aを通過する第1の低揮発成分(缶出液)の流量(W)と、第1の蒸留部Aへの第1の低揮発成分(缶出液)の循環流量[換言すれば、第1の蒸留部Aの導入口(フィードノズル)に供給される混合液の仕込液量(F)]との流量比の制御に置き換えることができ、ペトリューク蒸留塔よりも蒸留塔の制御(蒸留制御性)を向上できる。また、蒸留制御を向上できるため、蒸留塔における蒸気及び液の分配条件と分離特性との関係を利用して、分離効率をさらに向上できる。
そのため、3つの蒸留塔を用いることなく2つの塔体を組み合わせた蒸留塔で粗酢酸流(3B)を精製でき、設備費用、設置容積を低減できるとともに、全体として高いエネルギー効率(省エネルギー)で粗酢酸流を蒸留できる。3つの蒸留部に相当する合計理論段数よりも小さな理論段数であっても、低沸点成分aと酢酸bと高沸点成分cとを精度よく分離でき、低沸点成分a(酢酸メチル、水など)を塔頂成分(4A)として、高沸点成分c(無水酢酸など)を高沸缶出流又は塔底成分(4C)として分離でき、高純度の酢酸bを製造できる。
複合蒸留系では、少なくとも第2の蒸留部Bと第3の蒸留部Cとが縦方向に隣接して、連通した状態で接続されており、前記のように2塔式蒸留塔であってもよいが、1塔式蒸留塔(単一の蒸留塔を備えた蒸留系)、例えば、第1の蒸留部Aも第2の蒸留部B及び第3の蒸留部Cにそれぞれ隣接して連通していてもよい。例えば、前記複合蒸留系は、中仕切りを介して、第1の蒸留部Aの濃縮部Iと第2の蒸留部Bの回収部IVとが隣接するとともに、第1の蒸留部Aの回収部IIと第3の蒸留塔Cの濃縮部Vとが隣接し;第1の蒸留部Aの濃縮部Iの上部に第2の蒸留部Bの濃縮部IIIが連なり、第1の蒸留部Aの回収部IIの下部に第3の蒸留部Cの回収部VIが連なった構造を有していてもよい。このような構造の複合蒸留系としては、垂直分割型蒸留塔が例示できる。
図3は本発明のさらに他の例を部分的に示すフロー図である。
前記複合蒸留塔(垂直分割型蒸留塔)204は、中仕切り49を介して、第1の蒸留部Aの第1の濃縮部Iは第2の蒸留部Bの第2の回収部IVと隣接して縦方向に区画されているとともに、第1の蒸留部Aの第1の回収部IIは第3の蒸留塔Cの第3の濃縮部Vと隣接して縦方向に区画されている。また、第1の蒸留部Aは、前記と同様に、導入口41aを備えており、第2の蒸留部Bの第2の回収部IVと第3の蒸留塔Cの第3の濃縮部Vとは連通して縦方向に接続され、この接続部には取り出し口(サイドカットノズル)46が形成されている。
さらに、第1の蒸留部Aの第1の濃縮部Iの上部には、第2の蒸留部Bの第2の濃縮部IIIが連通して縦方向に連なり、第1の蒸留部Aの第1の回収部IIの下部には、第3の蒸留部Cの第3の回収部VIが連通して縦方向に連なっている。
すなわち、第2の蒸留部Bの濃縮部IIIと第3の蒸留部Cの回収部VIとの間に、第1の濃縮部I及び第1の回収部IIで形成された第1の蒸留部Aと、互いに縦方向に隣接して位置する第2の回収部IVと第3の濃縮部Vとで形成された精製ユニットとが横方向に隣接して介在し;かつ第1の蒸留部と隣接ユニットとの間に中仕切り49が介在する構造を有しており;第2の濃縮部IIIとで形成された第2の蒸留部Bの第2の回収部IVと、第3の蒸留部Cの濃縮部Vとは連通して、前記取り出し口(サイドカットノズル)46に通じている。すなわち、第1の蒸留部Aには導入口41aが形成され、この導入口の上部は酢酸を含む低沸点成分aの濃縮部Iを形成し、導入口の下部は酢酸を含む高沸点成分cの濃縮部(回収部)IIを形成している。また、第2の蒸留部Bの上部は低沸成分aの濃縮部IIIを形成し、第2の蒸留部Bの下部は中間沸点(酢酸)成分の濃縮部(回収部)IVを形成している。さらに、第3の蒸留部Cと第2の蒸留部Bとの間には取り出し口46が形成され、第3の蒸留部Cの上部は中間沸点(酢酸)成分の濃縮部Vを形成し、第3の蒸留部Bの下部は高沸成分Cの濃縮部(回収部)VIを形成している。
この例では、各蒸留部A〜Cは、それぞれ充填塔を形成している。すなわち、第1の蒸留部A、第2の蒸留部Bおよび第3の蒸留部Cの各濃縮部I,III,V及び回収部II,IV,VIには、それぞれ規則的充填物が充填され、充填塔を形成している。なお、蒸留塔の様式を、棚段から規則充填物に変更することにより、蒸留塔の塔頂と塔底間の差圧を低減して塔底温度を低下させことが可能となり、その結果、蒸留塔内での無水酢酸の生成反応を抑制でき、蒸留塔缶出液(粗酢酸)中の無水酢酸濃度を低減できるという効果も得られる。
さらには、各蒸留部A〜Cには、上方からの液体成分(高沸成分)を各蒸留部A〜Cで均等に分配して蒸留するため、ディストリビュータ(図示せず)が配設されている。より具体的には、第1の蒸留部Aの濃縮部Iと回収部IIとの間の空間には、導入口41aからの粗酢酸流(3B)と合流して上方からの液体成分を集めるためのコレクタ(図示せず)と、このコレクタで集められた液体成分を第1の蒸留部A(回収部II)に均等に分配するためのディストリビュータ(図示せず)が配設されている。また、第2の蒸留部Bにおいて、塔頂部での還流成分を集めて濃縮部III(又は濃縮部IIIの上部)に均等に分配するためのディストリビュータ(図示せず)が配設され、濃縮部IIIと回収部IVとの間には、前記と同様に、コレクタ(図示せず)とディストリビュータ(図示せず)が配設されている。さらに、濃縮部Vと回収部VIとの間にも、前記と同様に、コレクタ(図示せず)と、このコレクタで集められた液体成分を第3の蒸留部Cの回収部VIに均等に分配するためのディストリビュータ(図示せず)が配設されている。なお、第1の蒸留部Aの塔頂からは塔頂成分(4A)が流出し、第3の蒸留部Cの塔底からは高沸缶出流(塔底成分)(4c)が流出しており、この塔底成分は、加熱気化させて第3の蒸留部Cの下部に供給してもよい。
このような複合蒸留塔204の導入口41aから、酢酸bと、酢酸よりも低沸点の低沸点成分aと、酢酸bよりも高沸点の高沸点成分cとを含む粗酢酸流(3B)を導入すると、ディストリビュータにより粗酢酸流(3B)を分配して第1の蒸留部Aで蒸留され、酢酸bを含む低沸点成分aと酢酸bを含む高沸点成分cとに分離され、酢酸bを含む低沸点成分aはディストリビュータにより分配されて第2の蒸留部Bで蒸留され、塔頂成分(4A)としての低沸点成分aと、中間沸点成分としての酢酸bとに分離され、精製酢酸bが取り出し口46からサイドカット流(4B)として取り出すことができる。さらに、酢酸bを含む高沸点成分cはディストリビュータにより分配されて第3の蒸留部Cで蒸留され、酢酸bと塔底成分としての高沸点成分cとに分離され、精製酢酸bを取り出し口46からサイドカット流(4B)として取り出すことができる。すなわち、各蒸留部A〜Cの低沸成分の濃縮部と高沸成分の濃縮部(回収部)との間に配設されたディストリビュータで液体を分配しつつ、第1の蒸留部Aの導入口41aから導入された粗酢酸流(3B)を第1の蒸留部A、第2の蒸留部Bおよび第3の蒸留部Cで蒸留でき、前記複合蒸留系で蒸留した酢酸流(4b)を取り出し口46から取り出して酢酸を製造できる。そのため、3つの蒸留塔を用いることなく単一の蒸留塔で粗酢酸流(3B)を精製でき、設備費用、設置容積を低減できるとともに、全体として高いエネルギー効率(省エネルギー)で粗酢酸流を蒸留できる。特に、3つの蒸留部に相当する合計理論段数よりも小さな理論段数であっても、低沸点成分aと酢酸bと高沸点成分cとを精度よく分離でき、低沸点成分a(酢酸メチル、水など)を塔頂成分(4A)として、高沸点成分c(無水酢酸など)を高沸缶出流又は塔底成分(4C)として分離でき、高純度の酢酸bを製造できる。
なお、この例では、無水酢酸などの高沸点成分cは、ライン50を通じて反応器1にリサイクルされ、酢酸メチル、水などの低沸点成分a(塔頂成分)(4A)は、ライン51を通じてコンデンサで凝縮され、凝縮液の一部が還流されるとともに、残りの凝縮液は、後続の回収・分離工程に供されている。
[回収・分離工程]
デカンタ(分液ユニット)
回収・分離工程において、スプリッターカラム(蒸留塔)3からの第1のオーバーヘッド(3A)の凝縮液と、複合蒸留塔4,104,204からの塔頂成分(4A)の凝縮液とは、それぞれ、ライン33及びライン52を通じて、デカンタ5に一時的にホールド又は貯留される。なお、複合蒸留塔4,104,204からの塔頂成分(4A)の凝縮液(ライン52)は、直接、反応系へリサイクルしてもよい(ライン57)。このデカンタ5では、アセトアルデヒド及びヨウ化メチル濃度をさらに濃縮するため、凝縮液は上相と下相とに分液する場合が多い。分液された上相は、水、酢酸及びアセトアルデヒドなどを含む水相(軽質相)で形成され、下相は、ヨウ化メチルなどを含む有機相(重質相)で形成されている。また、アセトアルデヒド及び酢酸メチルは、通常、上相及び下相の双方に分配されている。
この例では、ヨウ化メチルなどを含む下相は、ライン53を通じて反応器1にリサイクルされ、下相の少なくとも一部及び/又は上相の少なくとも一部は、それぞれライン54,55,56を通じて蒸留塔6に供給されている。
第1のオーバーヘッド(3A)の凝縮液(凝縮成分)は、アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸、酢酸メチル、水、メタノール、アルデヒド類(クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒドなど)、ヨウ化C2−12アルキル、C3−12アルカンカルボン酸などを含んでいる場合が多い。凝縮液(凝縮成分)において、アセトアルデヒドの割合は0.05〜50重量%程度、ヨウ化メチルの割合は0.5〜90重量%程度、酢酸メチルの割合は0〜15重量%程度、酢酸の割合は0〜80重量%程度であってもよく、水の割合は0.1〜40重量%程度であってもよい。塔頂成分(4A)の凝縮液は、水、酢酸メチル、酢酸、アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、メタノール、ジメチルエーテルなどを含んでいる場合が多い。
凝縮液の蒸留
上記の例では、デカンタ5の凝縮液(又は分液した下相又は上相)は、ライン56(54,55)を通じて蒸留塔6に供給される。デカンタ5で凝縮液が分液する場合、分液した下相を蒸留塔6で蒸留すると、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドに富む第2のオーバーヘッド(6A)と、ヨウ化メチルに富む液体ストリーム(缶出流)(6B)とに分離でき、上相を蒸留塔6で蒸留すると、アセトアルデヒドに富む第2のオーバーヘッド(6A)と、水及び酢酸に富む液体ストリーム(缶出流)(6B)とに分離できる。第2のオーバーヘッド(6A)は、通常、微量のヨウ化メチル、ヨウ化水素、ジメチルエーテル、一酸化炭素、水素、二酸化炭素などを含んでいる。一酸化炭素、水素、二酸化炭素などの非凝縮性のガス成分の濃度が高い場合、蒸留塔6に仕込液を供給する前に脱気装置(例えば、仕込み液を加熱後、気液分離させて、非凝縮性ガス成分を抜取り、ガス成分の溶解量が少ない液を得る装置)を設置して、仕込液に含まれるこれらのガス成分の少なくとも一部を抜取ってもよい。下相の蒸留による液体ストリーム(6B)は、ヨウ化メチルの他、酢酸メチル、水、酢酸などを含む場合が多く、上相の蒸留による液体ストリーム(6B)は、微量のヨウ化メチル、酢酸メチルを含む場合が多い。
前記第2のオーバーヘッド(6A)はライン62を通じてコンデンサで凝縮して(凝縮液をレシーバータンクに貯留し)蒸留塔6に還流され、液体ストリーム又は底部液体流(缶出流)(6C)は、一時的に貯蔵(又は滞留)して流量変動を緩和するため、ライン61を通じてバッファタンク7に与えられ、このバッファタンク内の底部流(高沸点流分)(6B)は、ライン71を通じて、反応器1やスプリッターカラム3に通じるライン93に供給される。バッファタンク7を介在させることにより、缶出流(6B)を一定又はほぼ一定の流量でライン71に供給できる。前記第2のオーバーヘッド(6A)中には、前述の非凝縮性ガスの他にジメチルエーテルやメタノールなども含まれており、特にジメチルエーテルの濃度が高い場合に蒸留塔6の圧力上昇を招くこともあるため、コンデンサで凝縮した後、凝縮しきれないジメチルエーテル、非凝縮性ガスの少なくとも一部をオフガスとして抜取ってもよい。
抽出
抽出塔(抽出装置又は抽出器)8において、第2のオーバーヘッド(6A)の凝縮液は水で抽出され、アセトアルデヒドに富む水相(軽質相)と、ヨウ化メチルに富む有機相(重質相、ラフィネート)とに分液される。抽出塔8では、図1〜図4に示す例では、第2のオーバーヘッド(6A)の凝縮液が水抽出塔8の下部から供給される水と向流方式で接触し、アセトアルデヒドが水抽出されて、水相流(軽質相、アルデヒド水溶液)と、ヨウ化メチルを含む有機相(重質相、ラフィネート(抽残液))とに分液される。有機相(重質相、ラフィネート)は、水抽出カラム8の底部のライン81から取り出され、ライン82を通じて蒸留塔6に供給されるか、及び/又はライン83を通じてリサイクルライン93に供給されて反応器1にリサイクルされる。有機相の蒸留及び/又はリサイクルにより、有用なヨウ化メチルの回収率をより一層向上できる。また、蒸留塔6の底部流(高沸点流分)(6B)もリサイクルライン93により反応器1にリサイクルできるため、ヨウ化メチルを含む有用成分を有効に利用できる。
脱アルデヒド
抽出塔(抽出装置又は抽出器)8で分液し、かつアセトアルデヒドを主成分として含む水相(軽質相)はライン84を通じてさらにアルデヒド分離塔9で蒸留され、塔頂からアセトアルデヒドに富む留分を分離除去するとともに、塔底から主成分として水を含む水流を前記抽出塔8の抽出液の少なくとも一部として利用している。なお、アルデヒド分離塔9からのオーバーヘッドをコンデンサで凝縮し、凝縮液をレシーバータンクに貯留し、凝縮液をアルデヒド分離塔9に還流している。また、アルデヒド分離塔9の塔底からの水流91の一部はリサイクルライン93を通じて反応器1へもリサイクルしている。なお、水流91の一部はリサイクルライン92を通じて抽出器8にリサイクルしてもよい。
このような酢酸の製造方法では、単一又は2つの蒸留塔を備えた複合蒸留塔4,104,204で粗酢酸流を蒸留することにより、単に設備費用、設置容積を低減でき高いエネルギー効率で高純度の酢酸を製造できるだけでなく、低沸点成分a(酢酸メチル、水など)及び高沸点成分c(無水酢酸など)を分離でき、高純度の酢酸bを製造できる。さらに、回収・分離工程でプロセス流からアセトアルデヒドなどの不純物(過マンガン酸カリウム試験値を低下させる不純物など)を除去できるとともに、ヨウ化メチルなどの有用成分を反応系などに有効にリサイクルできる。特に、回収・分離工程により、粗酢酸流から塔頂成分として分離した低沸点成分a(水、酢酸メチル、ギ酸、ヨウ化メチル、メタノール、ヨウ化水素及びアセトアルデヒドなど、ジメチルエーテルなど)から、有用なヨウ化メチル、メタノール及びジメチルエーテルを分離して反応に有効に利用できるとともに、ギ酸、ヨウ化水素、アセトアルデヒドなどを分離除去できる。また、高沸点成分cに含まれる無水酢酸を上流側の工程(反応工程、フラッシュ工程及び/又はスプリッター工程)にリサイクルし、水との反応により、酢酸に変換でき、酢酸の生成効率を向上できる。
このように、本発明では、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、水を含む混合物(又は粗酢酸流)を、複数の蒸留部を備えた複合蒸留系(特に、合計理論段数の小さな複合蒸留系)で蒸留して、酢酸メチル、水及び無水酢酸の含有量を低減でき、高純度の酢酸を製造するのに有用である。そのため、本発明は、前記混合物(又は粗酢酸流)から酢酸メチル、水及び無水酢酸から選択された少なくとも一種の成分の酢酸中の含有量を低減する方法としても有用である。
以下に、前記各工程を含め、本発明の方法について詳細に説明する。
反応工程
カルボニル化触媒系は、通常、金属触媒と、助触媒と、促進剤とで構成できる。金属触媒は、コバルト触媒、ロジウム触媒、イリジウム触媒などであってもよく、好ましい金属触媒は、ロジウム触媒及びイリジウム触媒(特に、ロジウム触媒)である。金属触媒は、ヨウ化物、カルボン酸塩、無機酸塩、錯体などの形態でも使用できる。金属触媒は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。
金属触媒は液相(反応液)中で可溶な形態(錯体などの形態)で使用するのが好ましい。ロジウム触媒としては、ロジウムヨウ素錯体(例えば、RhI、RhI(CO)、[Rh(CO)など)、ロジウムカルボニル錯体などが好ましい。金属触媒の濃度は、例えば、反応器内の液相全体に対して100〜5000ppm(重量基準、以下同じ)、好ましくは200〜3000ppm、さらに好ましくは300〜2500ppm、特に500〜1500ppm程度である。金属触媒は、アルカリ金属ヨウ化物及び/又は水を添加することにより反応液中で安定化できる。
助触媒としては、例えば、アルカリ金属ヨウ化物(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)が挙げられ、ヨウ化リチウムが好ましい。アルカリ金属ヨウ化物は、低水分下での金属触媒(例えば、ロジウム触媒など)の安定剤として機能するとともに副反応抑制のために有用である。これらの助触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
助触媒の濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜25重量%、好ましくは3〜20重量%程度である。さらに、反応系でのヨウ化物イオンの濃度は、例えば、0.07〜2.5モル/リットル、好ましくは0.25〜1.5モル/リットルであってもよい。
前記促進剤としては、ヨウ化アルキル(例えば、ヨウ化メチルなどのヨウ化C1−4アルキルなど)、特にヨウ化メチルが利用される。ヨウ化アルキルの濃度は、反応器内の液相全体に対して、例えば、1〜20重量%、好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは6〜16重量%(例えば、8〜14重量%)程度である。
好ましいカルボニル化触媒系は、ロジウム触媒、ヨウ化金属(ヨウ化リチウム)及びヨウ化メチルを含む助触媒で構成できる。
反応媒体(又は液相)は、通常、生成した酢酸、酢酸と原料メタノールとの反応により生成した酢酸メチル、及び水を含んでいる。酢酸は溶媒としても機能する。なお、反応媒体は、通常、未反応の原料メタノールも含んでいる。酢酸メチルの含有割合は、反応媒体全体の0.1〜30重量%、好ましくは0.3〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%(例えば、0.5〜6重量%)程度の割合であってもよい。反応媒体中の水濃度は、低濃度であってもよく、液相全体に対して、例えば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%)、さらに好ましくは0.5〜5重量%(例えば、1〜3重量%)程度であり、通常2〜10重量%程度であってもよい。反応系で、アルカリ金属ヨウ化物及び水濃度を特定の濃度に保持すると、フラッシャー(蒸発槽)への供給液中の一酸化炭素の溶解度を低下させ、一酸化炭素のロスを低減できる。
一酸化炭素は、純粋なガス又は不活性ガスによる希釈ガスとして使用してもよい。また、後続の工程から得られる一酸化炭素を含む排ガス成分を反応系にリサイクルしてもよい。反応器中の一酸化炭素分圧は、例えば、2〜30気圧、好ましくは4〜15気圧程度であってもよい。
前記カルボニル化反応では、一酸化炭素と水との反応により、水素が発生する。この水素は触媒活性を高める。そのため、前記反応器1には、必要により水素を供給してもよい。また、後続の工程で排出された気体成分(水素、一酸化炭素などを含む)を、必要により精製して水素を反応系にリサイクルしてもよい。反応系の水素分圧は、絶対圧力で、例えば、0.5〜250kPa、好ましくは5〜150kPa(例えば、10〜100kPa)程度であってもよい。
カルボニル化反応において、反応温度は、例えば、150〜250℃、好ましくは160〜230℃、さらに好ましくは180〜220℃程度であってもよい。また、反応圧力(全反応器圧)は、副生成物の分圧を含めて、例えば、15〜40気圧程度であってもよい。なお、前記反応系は、発熱反応系であり、除熱した凝縮成分のリサイクル、除熱ユニット又は冷却ユニット(ジャケットなど)などにより反応温度をコントロールしてもよい。
なお、反応熱の一部を除熱するため、反応器からのベントガスを、コンデンサや熱変換器などにより冷却し、液体成分と気体成分とに分離し、液体成分及び/又は気体成分を反応器にリサイクルしてもよい。また、反応器の塔頂からベントガスを抜き出してもよく、ベントガスを吸収処理により一酸化炭素を回収して反応器へリサイクルしてもよい。
フラッシュ蒸発工程
フラッシュ蒸発工程では、反応工程から反応混合物を連続的に抜き出して、反応混合物を加熱して若しくは加熱することなく揮発相成分(蒸気成分)と非揮発相成分(液体成分)とに分離してもよい。例えば、断熱フラッシュでは、加熱することなく減圧することにより、恒温フラッシュでは、反応混合物を加熱し減圧することにより、反応混合物から蒸気成分と液体成分とに分離でき、これらのフラッシュ条件を組み合わせてもよい。フラッシュ蒸留は、例えば、反応混合物の温度80〜200℃程度、圧力(絶対圧力)50〜1000kPa、好ましくは100〜500kPa、さらに好ましくは100〜300kPa程度で行うことができる。
単一又は複数の工程で低揮発相成分(2B)から高沸点触媒成分(金属触媒成分)を分離してもよい。また、揮発相成分(2A)の一部は、コンデンサや熱交換器などで除熱および凝縮させて反応器にリサイクルしてもよい。
分離工程
分離工程は、揮発相成分を蒸留して、低沸成分(第1のオーバーヘッド)と、高沸成分(高沸液体流)と、酢酸を含む粗酢酸流とに分離するための少なくとも1つの蒸留工程を含んでいればよい。そのため、単一の蒸留塔又は複数の蒸留塔が利用できる。
例えば、前記の例では、単一のスプリッターカラム(又は蒸留塔)3で粗酢酸流を生成させているが、複数の蒸留塔で低沸成分と高沸成分とを順次に分離して粗酢酸流を生成させてもよい。より具体的には、揮発相成分を第1の蒸留塔で蒸留して塔頂成分として低沸成分(第1のオーバーヘッドを含む)を分離するとともに、塔底又は塔の側部から高沸成分を含む粗酢酸流を抜き取り、この粗酢酸流を第2の蒸留塔で蒸留して、水などの塔頂成分(第1のオーバーヘッドを含む)を分離し、塔底又は塔の側部から粗酢酸流を生成させてもよい。
さらに、生成する粗酢酸流を複数の蒸留塔で順次に蒸留してもよい。例えば、前記スプリッターカラム3からの粗酢酸流をさらに1又は複数のスプリッターカラム(又は蒸留塔)で順次蒸留して、一次及び高次の第1のオーバーヘッドと、サイドカット流としての一次及び高次の粗酢酸流を生成させてもよい。
スプリッターカラムにおいて、揮発相成分(2A)の供給口の位置は、蒸留塔の上部であってもよいが、通常、下部乃至中間部(例えば、下部)である場合が多い。揮発相成分(2A)は、粗酢酸流をサイドカットする側流口に対して、上方から供給してもよいが、通常、側流口に対して下方から供給される。さらに、粗酢酸流(3B)をサイドカットする側流口の位置は、蒸留塔の上部であってもよいが、通常、蒸留塔の中間部又は下部(下部乃至中間部)であるのが好ましい。
スプリッターカラムとしては、慣用の蒸留塔、例えば、棚段塔、充填塔などの精留塔を使用してもよい。なお、通常、金属製の蒸留塔を用いる場合が多い。
スプリッターカラムにおける蒸留温度及び圧力は、適宜選択でき、例えば、蒸留塔の塔内温度(通常、塔頂温度)は、例えば、50〜150℃、好ましくは75〜140℃程度であってもよい。
蒸留塔(棚段塔など)の理論段は、例えば、5〜80段、好ましくは10〜50段、さらに好ましくは20〜30段程度であってもよい。蒸留塔の還流比は、例えば、0.5〜3000、好ましくは0.8〜2000程度であってもよい。
なお、高沸液体流(高沸点成分)(3C)は、蒸留塔3の塔底から除去(缶出)してもよく、金属触媒成分、蒸発せずに残存した酢酸などの有用成分を含んでいるため、反応器やフラッシュ蒸発工程などにリサイクルしてもよく、このリサイクルに先立って、製品酢酸の品質を低下させるプロピオン酸などを除去してもよい。また、高沸液体流(3C)は、バッファー機能を有する貯蔵器を介して反応系などにリサイクルしてもよい。
粗酢酸流中の無水酢酸及び水の含有量は、それぞれ、例えば、5〜2500ppm、好ましくは50〜1000ppm、さらに好ましくは100〜700ppm(例えば、200〜500ppm)程度であってもよく、酢酸メチルの含有量は、例えば、1〜1500ppm、好ましくは10〜500ppm、さらに好ましくは15〜100ppm(例えば、20〜50ppm)程度であってもよい。
なお、粗酢酸流を複合蒸留系4,104,204で蒸留すると、無水酢酸が生成しやすい条件(水分濃度が低い条件、特に、複合蒸留塔の塔底の蒸留温度が高い条件)でも、高沸点成分(無水酢酸、前記アルカンカルボン酸など)を分離除去できる。また、粗酢酸流の水分濃度が低いほど、複合蒸留塔4,104,204での低沸成分の除去効率が向上するようである。すなわち、前記第1乃至第3の蒸留部A〜Cを有する複合蒸留塔4が3つの蒸留塔と等価であると考えられるにも拘わらず、フラッシュ蒸発槽からの揮発相成分を、スプリッタカラム3を経由することなく、直接的に複合蒸留塔に供しても、水含有量を大きく低減できず、高純度の酢酸を製造することが困難である。そのため、粗酢酸流の水分濃度は、1500ppm以下(例えば、10〜1000ppm)、好ましくは50〜750ppm(例えば、100〜500ppm)程度であってもよい。
粗酢酸流の精製工程
(図1及び図2に示す複合蒸留塔)
図1及び図2に示す態様の2塔式複合蒸留塔(ペトリューク蒸留塔又はその改良型蒸留塔など)4,104は、一般的な蒸留塔、リボイラー、コンデンサーなどの既存設備を組み合わせて構築できる。すなわち、既設の一般的な蒸留塔、リボイラー、コンデンサーなどの既存設備の接続配管を改造するだけで、複合蒸留塔を形成できる。そのため、図3に示す1塔式複合蒸留塔204を新設するのに比べて設備コストを大幅に低減できる。しかも、合計エネルギー使用量および製造コストを低減しながら粗酢酸流を精製できる。
2塔式複合蒸留塔は、棚段塔又は充填塔であってもよい。棚段塔においては、第1の蒸留部(I及びII)のトレイ数は、例えば、2〜50個、好ましくは4〜40個、より好ましくは6〜30個程度であってもよく、第2の蒸留部(III及びIV)のトレイ数は、例えば、1〜25個、好ましくは2〜20個、より好ましくは3〜15個程度であってもよく、第3の蒸留部(V及びVI)のトレイ数は、例えば、5〜125個、好ましくは10〜100個、より好ましくは15〜75個程度であってもよい。
各濃縮部及び回収部でのトレイ数は適当に選択でき、第1の濃縮部Iのトレイ数は、例えば、1〜20個、好ましくは2〜16個、より好ましくは3〜12個程度であってもよく、第1の回収部IIのトレイ数は、例えば、1〜30個、好ましくは2〜24個、より好ましくは3〜18個程度であってもよい。
また、第2の濃縮部IIIのトレイ数は、例えば、0〜15個、好ましくは1〜12個、より好ましくは1〜9個程度であってもよく、第2の回収部IVのトレイ数は、例えば、1〜10個、好ましくは1〜8個、より好ましくは2〜6個程度であってもよい。
また、第3の濃縮部Vのトレイ数は、例えば、1〜20個、好ましくは2〜16個、より好ましくは2〜12個程度であってもよい。
なお、第3の回収部VIは必須ではないが、第3の回収部VIを形成する場合、トレイ数は、例えば、4〜105個、好ましくは8〜84個、より好ましくは13〜63個程度であってもよい。
一方、前記複合蒸留塔が充填塔である場合、前記棚段塔に相当する充填高さを有する充填塔(充填物が充填された第1の蒸留部乃至第3の充填蒸留部)を使用できる。充填塔には、一般的な規則的充填物又は不規則的充填物や、分散器を使用でき、これらの充填物や分散器については、性能(処理能力を含む)や圧力損失などを考慮して、工業的に使用されるものから選択できる。
第1の蒸留部が形成する第1の塔体の塔頂温度は、特に制限されず、例えば、40〜180℃、好ましくは50〜170℃、より好ましくは60〜160℃程度であってもよい。前記第1の塔体の塔頂における圧力は、特に制限されず、例えば、3〜550kPaG、好ましくは7〜410kPaG、より好ましくは11〜320kPaG程度であってもよい。前記第1の塔体の塔底温度は、特に制限されず、例えば、50〜240℃、好ましくは60〜230℃、より好ましくは70〜220℃程度であってもよい。
第2の蒸留部と第3の蒸留部とで形成される第2の塔体の塔頂温度は、特に制限されず、例えば、40〜180℃、好ましくは50〜170℃、より好ましくは60〜160℃程度であってもよい。前記第2の塔体の塔頂における圧力も、特に制限されず、例えば、3〜550kPaG、好ましくは7〜410kPaG、より好ましくは11〜320kPaG程度であってもよい。前記第2の塔体の塔底温度は、特に制限されず、例えば、80〜240℃、好ましくは90〜230℃、より好ましくは100〜220℃程度であってもよい。
図1に示す前記複合蒸留塔(ペトリューク蒸留塔)での制御パラメータについて説明する。第1の回収部IIと第3の蒸留部(V及びVI)の中央部とが連通している場合、第2の蒸留部(III及びIV)と第3の蒸留部(V及びVI)とで形成される第2の塔体での還流成分の分配割合(すなわち、第2の濃縮部IIIの流体(液体)を第1の濃縮部Iへ分配する係数)をパラメータpとし、前記第2の塔体の蒸気の分配割合(すなわち、第3の回収部VIの蒸気成分を第1の回収部IIへ分配する係数)をパラメータqとし、以下に、蒸留工程での制御パラメータについて説明する。
すなわち、第2の濃縮部IIIから第1の濃縮部Iに向かう液流量をL、第2の濃縮部III内の降下液流量(コンデンサーからの還流液量と第2の濃縮部IIIの内部還流量との合計)をLIII、第2の濃縮部IIIから第2の回収部IVへ流入する液流量をLIVとしたとき、pは以下の式(1)で表すことができる(LIII=L+LIV)。
p=L/LIII (1)
また、第3の回収部VI内の上昇蒸気流量をVIV、第3の回収部VIから第1の回収部IIに向かう蒸気流量をVII、第3の回収部VIから第3の濃縮部Vへ流入する蒸気流量をVとしたとき、qは以下の式で表すことができる(VIV=VII+V)。
q=VII/VIV (2)
ペトリューク蒸留塔では、このようなパラメータp及びqに基づいて操作条件を制御し、分離能に優れ、高品質の酢酸を得ることができる。
図2に示す複合蒸留塔では、第1の回収部IIと第3の蒸留部(V及びVI)の中央部との間にリボイラー44が設けられ、リボイラー44による第1の低揮発成分からの蒸気が第1の回収部IIに還流され、リボイラー44による残液が第3の蒸留部(V及びVI)に供給される。このような複合蒸留塔での制御パラメータについて、第2の蒸留部(III及びIV)と第3の蒸留部(V及びVI)とで形成される第2の塔体での還流成分の分配割合(すなわち、第2の濃縮部IIIの流体(液体)を第1の濃縮部Iへ分配する係数)は、前記ペトリューク蒸留塔でのパラメータpと同じである。
一方、図1に示すペトリューク蒸留塔の場合とは異なり、第1の蒸留部が形成する第1の塔体の接続ライン43aからの缶出液量Wと、第1の蒸留部の導入口41aからの粗酢酸流(3B)の仕込液量Fとの比をパラメータqとすると、qは以下の式(3)で表すことができる。
=W/F (3)
上記パラメータqの技術的意義について説明すると、ペトリューク蒸留塔では、第1の蒸留部を有する第1の塔体の蒸気は、第2の蒸留部を有する第2の塔体(第3の回収部VI内の上昇蒸気)から賄われている。そのため、第2の塔体の蒸気を第1の塔体へ分配する係数をパラメータqとしている。これに対して、図2に示す態様の複合蒸留塔では、ペトリューク蒸留塔と異なり、蒸気の分配を制御する必要がなくなり、第1の蒸留部での缶出液量と仕込液量との比をパラメータqとして蒸留操作を制御できる。そのため、図2に示す複合蒸留塔では、パラメータpに基づいて、操作条件を制御するとともに、前記蒸気の分配パラメータqに代えて、操作性及び精度の高い流量比に関するパラメータqに基づいて、操作条件を制御することにより、分離能に優れ、高品質の酢酸を得ることができる。
(図3に示す複合蒸留塔)
図3に示す1塔式複合蒸留塔(垂直分割型蒸留塔)による精製工程では、分離工程からの少なくとも1つの粗酢酸流を、複数の蒸留部を備えた複合蒸留系で蒸留すればよい。複合蒸留塔において、3つの蒸留部の割合は特に制限されず、第1の蒸留部の容積に対して、第2及び第3の蒸留部の容積割合は、0.5〜2倍(例えば、0.75〜1.5倍)程度であってもよい。このような複合蒸留塔は、垂直分割型蒸留塔(Divided Wall Column)、例えば、「結合型Petlyukプロセス」、「カラムインカラム」(住重プラントエンジニアリング(株))などとして知られている。
複合蒸留塔では、粗酢酸流を蒸留することにより、低沸成分[酢酸メチル、水、過マンガン酸カリウム試験値を低下させる還元性物質(アルデヒド類、ヨウ化アルキル、ギ酸など)など]と高沸成分[無水酢酸、腐食によって発生した金属、ヨウ化物塩など]とを同時に除去でき、高純度の酢酸を得ることができる。
複合蒸留塔の各蒸留部は、充填塔を形成する必要はなく、棚段塔を形成していてもよい。充填塔での充填物は規則的充填物に限らず、不規則的充填物であってもよく、ラーシヒリングなどであってもよい。
蒸留温度及び圧力は、適当に選択でき、例えば、複合蒸留塔の塔内温度(通常、塔頂温度)は、例えば、50〜150℃、好ましくは75〜140℃程度であってもよい。
複合蒸留塔の各蒸留部の理論段は、例えば、5〜50段(例えば、7〜45段)、好ましくは8〜40段(例えば、10〜30段)程度であってもよい。また、複合蒸留塔の合計の理論段は、例えば、10〜100段(例えば、15〜75段)、好ましくは20〜70段(例えば、25〜50段)程度であってもよい。複合蒸留塔の還流比は、例えば、0.5〜3000、好ましくは0.8〜2000程度であってもよい。
なお、1塔式又は2塔式複合蒸留系からの塔頂成分は除去してもよいが、通常、回収・分離工程に供する場合が多く、反応工程に直接リサイクルしてもよい。また、複合蒸留系からの高沸缶出流も除去してもよいが、反応からアセトアルデヒドの分離に至る適所(例えば、反応工程)にリサイクルしてもよい。
メタノール及び/又は酢酸メチルの添加
前記のように、図1〜図4に示す例では、スプリッターカラム3は、低沸成分の第1のオーバーヘッド(3A)と水を含む高沸成分の液体流とを分離しており、脱低沸脱水蒸留塔として機能し、このスプリッターカラム3内では酢酸メチルと無水酢酸が生成する。また、複数の蒸留塔による揮発相成分(2A)の蒸留において、第1の蒸留塔で低沸成分を分離した後、水を含む高沸成分を分離する第2の蒸留塔は脱水塔として機能し、この脱水塔内でも酢酸メチルと無水酢酸が生成する。前記のように、前述のスプリッターカラム3を第1の蒸留塔と第2の蒸留塔との機能を併せもつ脱低沸脱水塔として使用してもよい。
一方、ヨウ化水素は、反応液中には存在するとともに、蒸留塔(脱低沸脱水塔、脱水塔など)に供給される仕込み液(揮発相成分など)中にも存在する。ヨウ化水素は、酢酸にとって不純物であるだけでなく、蒸留塔などの精製設備を腐食させる物質であり、前記蒸留塔ではヨウ化水素濃度を極力低減させる必要がある。しかし、ヨウ化水素は水との親和性があるため、容易に分離除去できず、塔内に濃縮する。そのため、蒸留塔内にメタノールを導入して、以下の反応により、ヨウ化水素をヨウ化メチルに転換し、塔頂から除去する方法が知られている。
HI+CHOH ⇔ CHI+H
さらに、前記蒸留塔内には、ヨウ化メチルや水が%オーダーで存在しているため、この平衡反応を右方向へ促進するためには、メタノールはヨウ化水素に対して等モル以上の割合で供給する必要がある。一方、過剰のメタノールは、以下の反応により、塔内に存在する酢酸と反応し、酢酸メチルを生成する。
CHCOOH+CHOH ⇔ CHCOOCH+H
生成した酢酸メチル及び水の大部分は、前記蒸留塔の塔頂から分離除去される。しかし、前記蒸留塔の所定位置(例えば、塔底付近)から取り出す酢酸中のヨウ化水素濃度をできるだけ低減するため、メタノールは、仕込み液の導入位置と粗酢酸流の抜き取り位置(塔底付近)の間、若しくは塔底に近い箇所に供給することが多い。そのため、抜き出した酢酸中には酢酸メチル及び水の一部が混入する。
本発明者らは、前記蒸留塔の仕込み液中に存在する無水酢酸の濃度は、通常、10ppm以下であるが、水分濃度の低い乾燥した酢酸を得ようとすればするほど、前記蒸留塔の塔底付近から抜き出す粗酢酸流中に含まれる無水酢酸の濃度が高くなることを見出した。このことは、蒸留塔内で無水酢酸が発生したためと考えられる。また、本発明者らは、抜き出された粗酢酸流中の水濃度と無水酢酸濃度との間に、下記平衡関係のような相関関係があることも確認した。
2CHCOOH ⇔ (CHCO)O+H
さらに、酢酸中の水濃度が一定であっても、蒸留塔の温度(圧力)が高いほど、無水酢酸の濃度が高くなることも判明した。例えば、蒸留塔の塔底温度が140℃の場合、酢酸中の水濃度1150ppmでは、酢酸中の無水酢酸濃度は80ppm程度であった。蒸留塔の塔底温度が160℃の場合、酢酸中の水濃度1370ppmでは、酢酸中の無水酢酸濃度は150ppm程度になり、酢酸中の水濃度が350ppmでは、酢酸中の無水酢酸濃度は350ppm程度に増加した。
なお、棚段塔を充填塔(例えば、規則充填物を充填した充填塔)に変更すると、塔内の圧力損失を低減させて塔底温度を低下させることができる。そのため、無水酢酸の発生を抑制して、酢酸中の無水酢酸濃度を低減できる。
このように蒸留塔内で発生した酢酸メチル、水、無水酢酸は、後続の蒸留塔で分離除去する必要がある。しかし、通常の蒸留の考え方に従うと、低沸成分を分離する蒸留塔と高沸成分を分離する蒸留塔との2本の蒸留塔が必要になり、設備費やエネルギーコストが著しく増加し、好ましくない。
前記のように、ヨウ化水素濃度を低減するためメタノールを添加すると、メタノールとヨウ化水素との反応で、低沸点のヨウ化メチルと水とが生成する。また、酢酸メチルを添加してヨウ化水素と反応させると、有機相に対して混和性の高いヨウ化メチルと、水相に対して混和性が高く、しかもヨウ化メチルとの沸点差の大きな酢酸とが生成する。さらに、水及び酢酸メチルを添加すると、反応系(蒸留系)中の酢酸メチルも含め、酢酸メチルの加水分解によりメタノールと酢酸とを生成でき、生成したメタノールとヨウ化水素との反応により、有用なヨウ化メチルと水が生成できる。そのため、酢酸メチルに加えて水を添加してもよい。本発明では、複合蒸留塔により低沸点成分(ヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、水など)と高沸点成分(無水酢酸など)と酢酸流とを有効に分離できる。そのため、本発明は、前記蒸留プロセスに加えて、メタノール及び/又は酢酸メチル、酢酸メチル及び水を蒸留域(又は蒸留系)に添加してヨウ化水素濃度を低減するためのプロセスにも有用である。
メタノール及び酢酸メチルの添加量は、それぞれ、反応系(蒸留系)中のヨウ化水素1モルに対して、1〜10,000モル程度であってもよく、1.1〜5,000モル、好ましくは1.2〜2,000モル(例えば、1.2〜1,500モル)程度であってもよい。水の添加量は、反応系(蒸留系)中の酢酸メチル1モルに対して、0.5〜20モル(例えば、0.7〜10モル)、好ましくは1〜5モル(例えば、1.1〜3モル)程度であってもよい。
図4は、本発明の酢酸の製造方法(又は製造装置)の他の例を説明するためのフロー図である。
この例では、スプリッターカラム(蒸留塔)3の高さ方向において揮発相成分(2A)の導入部よりも下方には、メタノール供給ライン101が接続され、複合蒸留塔4の高さ方向において粗酢酸流(3B)の導入部よりも下方にもメタノール供給ライン102が接続されている。なお、図4には図示されていないが、第1の蒸留部Aの導入口41a、第1の回収部IIと第3間濃縮部Vとの間、第1の回収部II、第2の回収部VI、第3の回収部VIなどの適所にもメタノール供給ラインを接続し、メタノールを供給してもよい。
ヨウ化水素濃度を低減するため、これらの供給ライン101,102からメタノールを供給すると、ヨウ化水素をヨウ化メチルに転換し、生成したヨウ化メチル、水及び未反応のメタノールを、スプリッターカラム(蒸留塔)3の塔頂から第1のオーバーヘッドとして、また複合蒸留塔4の塔頂成分として分離できる。また、メタノールと酢酸との接触により酢酸メチルも生成する。特に、複合蒸留塔4では3つの蒸留部A〜Cでメタノールとヨウ化水素及び酢酸とを接触でき、高い効率でヨウ化水素及び酢酸メチルを除去できる。
なお、メタノールに代えて酢酸メチルを添加すると、生成したヨウ化メチル及び未反応の酢酸メチルを、スプリッターカラム(蒸留塔)3の塔頂から第1のオーバーヘッドとして、また複合蒸留塔4の塔頂成分として分離でき、生成した酢酸を取り出し口46から酢酸流として回収できる。
また、メタノール及び/又は酢酸メチルは、分離工程の蒸留系(スプリッターカラム3など)及び複合蒸留系のうち少なくとも1つの蒸留系に供給すればよく、スプリッターカラム3及び/又は複合蒸留塔4,104,204に供給してもよい。
なお、2塔式複合蒸留塔4,104においては、第1の蒸留部乃至第3の蒸留部A〜Cの適所、例えば、第1の蒸留部乃至第3の蒸留部A〜Cのいずれかの導入口41a〜41c、第1の蒸留部Aの下部(又は底部)、第3の蒸留部Cの下部(又は底部)、第1の回収部II、第2の回収部IV、第3の回収部VIなどの少なくとも1つの部位に、メタノール及び/又は酢酸メチルを供給してもよい。
このようなメタノール及び/又は酢酸メチルを添加するプロセスでも、水分濃度の低い粗酢酸流(例えば、前記のように、水分濃度1500ppm以下の粗酢酸流)を蒸留すると、無水酢酸の含有量が増加する。そのため、このような粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留し、酢酸メチル、水及び無水酢酸(並びにメタノールを添加する場合には、未反応メタノール)の含有量が低減した酢酸を製造するのに有用である。
なお、ヨウ化水素低減剤(メタノール及び/又は酢酸メチル、酢酸メチル及び水)の添加は、スプリッターカラム(蒸留塔)3及び複合蒸留塔4のうち少なくとも1つに添加してもよい。また、ヨウ化水素低減剤の添加部位は特に制限されず、揮発相成分(2A)及び/又は粗酢酸流(3B)の導入部に対して、同じ高さ位置であってもよく、導入部よりも高い位置であってもよい。
酢酸流からのヨウ化アルキルの除去
さらに、ヨウ化アルキルを除去するため、図4に示すフローには、複合蒸留塔204の取り出し口からの酢酸流(4B1)は、コンデンサにより冷却され、除去ユニット103に供給され、この除去ユニット内のイオン交換樹脂と接触してヨウ化アルキルを除去し、精製酢酸流(4B2)を得ている。
より詳細には、前記イオン交換樹脂(例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体のスルホン化共重合体)の活性部位の少なくとも一部(一部又は全部、例えば、1〜100%の活性部位)は、遷移金属(例えば、銀、水銀、銅などから選択された少なくとも一種の金属)でイオン交換されており、このようなイオン交換樹脂と酢酸流(4B1)との接触により、ヨウ化ヘキシルなどのヨウ化C1−12アルキルを除去している。また、酢酸流(4B1)を除去ユニット103(又はイオン交換樹脂の床)に通液する際に、下流方向にいくにつれた温度を高めて段階的に昇温すると、前記金属(銀など)の流出ロスを防止しつつ、ヨウ化アルキルを除去でき、精製された酢酸流(4B2)を得ることができる。なお、イオン交換樹脂の詳細、担持金属の種類、担持量、段階的昇温の条件などについては、特許第3281258号を参照でき、段階的昇温は、例えば、17〜35℃の第1の温度域から70〜90℃の最終温度域において、温度を5〜15℃程度順次に高めた複数の温度域(例えば、40〜50℃程度の第2の温度域、50〜60℃程度の第3の温度域、60〜90℃程度の第4の温度域など)で加熱することにより行うことができる。
なお、イオン交換樹脂によるヨウ化アルキルの除去は、分離工程(蒸留系)からの粗酢酸流(複合蒸留塔に導入する粗酢酸流)及び/又は複合蒸留塔からの酢酸流について行ってもよい。この場合の複合蒸留塔とは、複合蒸留塔4,104、又は204のいずれでもよい。前述のように、スプリッターカラム3を脱低沸脱水塔として使用する場合、より高純度の酢酸が得られる。
回収・分離工程
回収・分離工程では、少なくとも第1のオーバーヘッド(一次又は高次の第1のオーバーヘッド)から有用成分を回収するとともに不純物を除去する。すなわち、プロセス流(特に、反応器へのリサイクル流)からアセアルデヒドを分離除去(脱アルデヒド処理)し、有用成分を回収・リサイクルするため、一次又は高次の第1のオーバーヘッド(例えば、第1のオーバーヘッドの凝縮液又は凝縮成分)からアセトアルデヒドを分離するとともに、アセトアルデヒドが分離された成分を反応系からアセトアルデヒド分離に至るまでの工程にリサイクルできる。プロセス液からアセトアルデヒドを分離除去することにより、プロピオン酸の副生量を低減でき、酢酸中のプロピオン酸濃度が分離工程(蒸留塔)での仕込み段階で、酢酸の製品規格内となり、プロピオン酸を分離する必要がなくなる。
なお、回収・分離工程において、複合蒸留塔からの塔頂成分は回収・分離工程に供する必要はないが、有用成分を回収し、アセトアルデヒドを分離するため、第1のオーバーヘッドとともに回収・分離工程に供して脱アルデヒド処理してもよい。
回収・分離工程は、第1のオーバーヘッドを蒸留して第2のオーバーヘッド(6A)を生成させるための蒸留工程(特に、蒸留工程からの第1のオーバーヘッドを凝縮して分液する工程と、分液した軽質相及び重質相のうち少なくとも一方の相を蒸留して第2のオーバーヘッド(6A)を生成させる工程)と、第2のオーバーヘッド(6A)を水で抽出する工程(例えば、第2のオーバーヘッド(6A)を凝縮して水で抽出する工程)と、抽出工程で分液した有機相を反応工程へリサイクルする工程と、水相からアセトアルデヒドを除去する工程(例えば、水相を蒸留してアセトアルデヒドを除去する工程)とを含んでいてもよい。また、アセトアルデヒド除去工程からの水相を抽出工程及び/又は反応工程へリサイクルする工程を含んでいてもよい。
デカンタ(分液ユニット)
一次又は高次の第1のオーバーヘッドは、ガス状の形態であってもよいが、通常、凝縮液であり、この凝縮液は均一液であってもよいが、二層に分液可能であるのが好ましい。また、複合蒸留系からの塔頂成分は回収・分離工程に供する必要はなく、必ずしも凝縮して分液する必要はないが、塔頂成分を凝縮して分液して回収・分離工程に供し、有用成分及びアセトアルデヒドを分離してもよい。すなわち、複合蒸留塔からの塔頂成分も冷却して、凝縮液の形態でデカンタに供給してもよい。また、複合蒸留塔からの塔頂成分は、第1のオーバーヘッドとともに回収・分離工程に供してもよい。
なお、凝縮液は、反応器1、スプリッターカラム3、蒸留塔6などに与えてもよい。例えば、アセトアルデヒドに富む上相の少なくとも一部は、スプリッターカラム3、蒸留塔6に戻してもよく、ヨウ化メチルに富む下相の少なくとも一部は、反応器1、スプリッターカラム3、蒸留塔6に戻してもよい。
なお、分液ユニットは、流量変動などを抑制して、酢酸を安定に製造するため、デカンタに続いてバッファタンクを備えていてもよい。デカンタ内で分液した凝縮液(下相及び上相)では、下相はヨウ化メチル、ジメチルエーテル及び酢酸メチルに富み、上相はアセトアルデヒド及び水に富む。そのため、バッファタンク内に貯留した下相又は上相を反応器1から蒸留塔9に至る種々のプロセス流にリサイクルできる。例えば、下相を反応器1へリサイクルすることにより助触媒成分及び反応成分として利用してもよく、上相をスプリッターカラム3、蒸留塔6に供給し、アセトアルデヒドの分離効率を高めてもよい。
第1のオーバーヘッドの蒸留
プロセス流(特に、リサイクル流)からのアセアルデヒドの分離方法は、特に限定されず、抽出、蒸留、これらの組み合わせ、抽出蒸留などの慣用の方法が利用できる。代表的には、少なくとも蒸留によりアセトアルデヒドが分離される。蒸留工程では、スプリッターカラム3からの第1のオーバーヘッド(3A)と、複合蒸留塔4,104,204からの塔頂成分(4A)とは、コンデンサで冷却して凝縮させることなく、又はデカンタ(分液ユニット)5で分液することなく、蒸留塔6で蒸留してもよい。蒸留塔6では、通常、コンデンサで冷却した凝縮液を蒸留する場合が多い。代表的には、第1のオーバーヘッド(3A)及び/又は複合蒸留塔4,104,204からの塔頂成分(4A)の少なくとも一部(一部又は全部)(凝縮液の形態であってもよい)を蒸留塔6で蒸留し、少なくともアセトアルデヒドに富む第2のオーバーヘッド(6A)と、高沸液体流(缶出液又は塔底液)(6B)とに分離される。なお、前記のように、凝縮液が分液する場合、分液した下相を蒸留塔6で蒸留すると、アセトアルデヒドに富む第2のオーバーヘッド(6A)と、ヨウ化メチルに富む高沸液体ストリーム(6B)とに分離できる。また、下相の蒸留では、通常、第2のオーバーヘッド(6A)はヨウ化メチルに加えて微量の水も含んでおり、高沸液体ストリーム(6B)は酢酸メチル、酢酸及び水も含んでいる。上相を蒸留塔6で蒸留すると、アセトアルデヒドに富む第2のオーバーヘッド(6A)と、水及び酢酸に富む高沸液体ストリーム(6B)とに分離できる。また、上相の蒸留では、通常、第2のオーバーヘッド(6A)はヨウ化メチルも含んでおり、高沸液体ストリーム(6B)は酢酸メチル及び酢酸も含んでいる。
ヨウ化メチルを含む分離液(オーバーヘッド又は高沸液体流)は、反応系からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程、例えば、反応器、フラッシュ蒸留塔、スプリッターカラムなどへリサイクルしてもよく、蒸留塔で還流してもよい。ヨウ化メチルを含む分離液は、少なくとも反応器にリサイクルする場合が多い。なお、前記の例において、高沸液体流(6B)は、バッファタンク7を介することなく、反応系へ直接的にリサイクルしてもよい。
なお、前記の例では、凝縮液(凝縮成分)を1つの蒸留塔で蒸留しているが、凝縮液は、例えば、複数の蒸留塔で蒸留してもよい。すなわち、前記蒸留工程はオーバーヘッドを蒸留する少なくとも1つの蒸留工程を含んでいればよく、1又は複数の蒸留工程(例えば、第1の蒸留塔で第1のオーバーヘッドを蒸留して一次の第2のオーバーヘッド(6A)を生成させ、このオーバーヘッドをさらに後続の蒸留塔で蒸留して高次の第2のオーバーヘッド(6A)を生成させる工程など)を含んでいてもよい。
蒸留塔としては、慣用の蒸留塔、例えば、棚段塔、充填塔などが使用できる。蒸留塔において、温度(塔頂温度)及び圧力(塔頂圧力)は、アセトアルデヒド及びヨウ化メチル並びに蒸留塔の種類などに応じて選択できる。例えば、棚段塔の場合、塔頂圧力は、絶対圧力で、10〜1000kPa、好ましくは10〜700kPa、さらに好ましくは100〜500kPa程度である。塔内温度(塔頂温度)は、例えば、10〜80℃、好ましくは20〜70℃、さらに好ましくは40〜60℃程度である。理論段は、例えば、5〜80段、好ましくは8〜60段、さらに好ましくは10〜50段程度であってもよい。還流比は、前記理論段数に応じて、1〜1000、好ましくは10〜800、さらに好ましくは50〜600(例えば、100〜600)程度から選択できる。
抽出
第2のオーバーヘッド(6A)から、アセトアルデヒドとヨウ化メチルとを分離する方法としては、慣用の方法(例えば、抽出、蒸留など)、例えば、(i)第2のオーバーヘッド(6A)を蒸留し、ヨウ化メチルとアセトアルデヒドを分離する方法、(ii)アセトアルデヒドが水と混和し、ヨウ化メチルが水と混和しない性質を利用し、第2のオーバーヘッド(6A)を水で抽出し、ヨウ化メチルとアセトアルデヒドとに分離する水抽出法などが挙げられる。メタアルデヒドなどのアルデヒド縮合物の生成を抑制するという観点からは、水抽出法(ii)が好ましい。
水抽出は単一又は複数の抽出器で行ってもよい。なお、複数コンデンサで冷却し、2段目以降の凝縮液(冷却液)の全量、若しくは分液する場合には、上層又は下層のみを蒸留塔(脱アルデヒド塔)に供給し、蒸留塔(脱アルデヒド塔)からの留出成分(又は留出液)を水抽出してもよい。
抽出器としては、例えば、ミキサーとセトラーの組み合わせ、スタティックミキサーとデカンタの組み合わせ、RDC(rotated disk contactor)、Karr塔、スプレー塔、充填塔、多孔板塔、邪魔板塔、脈動塔などを用いることができる。抽出器(抽出塔)は、水と混合して抽出でき分液可能な単回(シングルステージ)抽出装置であってもよく、このシングルステージ抽出装置をカスケード式に配置してもよい。例えば、複数の抽出器(理論段1の抽出器)を用いて順次に抽出する多段(マルチステージ)抽出装置であってもよい。また、複数の抽出器を1つの装置内に配置したマルチステージ抽出装置であってもよく、例えば、多段(マルチステージ)抽出装置と等価な理論段(多段抽出に対応する理論段)を有する単一の抽出装置であってもよい。また、抽出は回分式、連続式のいずれの方式で行ってもよく、並流抽出、向流抽出のいずれであってもよい。
なお、ヨウ化メチルを含む有機相(重質相、ラフィネート)は系外に排出してもよいが、通常、反応系からアセトアルデヒドの分離に至るまでの工程、例えば、反応器、フラッシュ蒸留塔、スプリッターカラム、複合蒸留塔、及び蒸留塔のうち1又は複数のユニットにリサイクルしてもよい。有機相は少なくとも反応器へリサイクルされる。
一方、アセトアルデヒドを高濃度に含む水相流(軽質相)は排出してもよく、脱アルデヒド塔9に供し、アルデヒド留分と水とに分離し、水は前記水抽出カラム8でのアセトアルデヒドの抽出に利用してもよく、必要であれば、反応器1へ戻してもよい。
多段凝縮と水抽出
なお、必要であれば、少なくともアセトアルデヒドを含むガス相成分、特に少なくともヨウ化メチルおよびアセトアルデヒドを含むガス相成分を複数のコンデンサで多段に冷却し、アセトアルデヒド/ヨウ化メチルの濃縮液を水抽出に供してもよい。ガス相成分としては、揮発相成分(2A)、第1のオーバーヘッド(3A)、塔頂成分(4A)および第2のオーバーヘッド(6A)、特に、少なくとも第1のオーバーヘッド(3A)を使用する場合が多い。
前記のように、ヨウ化メチルは水に対する溶解性が低く、アセトアルデヒドは水に対する溶解性が高く、しかもヨウ化メチルよりも沸点が低い。このことを利用して、複数のコンデンサ(例えば、2〜5、好ましくは2〜3程度のコンデンサ)を直列的に配置し、最初のコンデンサによる凝縮液の温度を、アセトアルデヒドの沸点以上の温度(例えば、30〜110℃、好ましくは30〜80℃(例えば、30〜70℃)程度)とし、前記成分(3A)(4A)及び/又は(6A)を第1のコンデンサに供給して冷却・凝縮すると、第1の凝縮液とアセトアルデヒド濃度の高い第1のガス成分(非凝縮成分)とに分離できる。さらに、最後のコンデンサ(例えば、第2のコンデンサ)による凝縮液の温度をアセトアルデヒドの凝縮温度以下(又は沸点未満の温度)(例えば、−15℃〜50℃、好ましくは−10℃〜35℃(例えば、−5℃〜30℃)、さらに好ましくは0〜20℃程度)とし、第1のガス成分を、第2のコンデンサに供給すると、第1の凝縮液よりも温度の低い第2の凝縮液と第2のガス成分(非凝縮成分)とに分離でき、第2の凝縮液では第1の凝縮液よりもアセトアルデヒド濃度をさらに高く濃縮できる。そのため、アセトアルデヒド濃度が濃縮された凝縮液を水抽出工程に供すると、アセトアルデヒドを有効かつ高い効率で抽出分離できる。
複数のコンデンサからの凝縮液(特に、第2番目以降の液濃縮液)が分液可能であるとき、上相(例えば、水相)ではさらにアセトアルデヒド濃度が濃縮されている。そのため、分液し、かつアセトアルデヒド濃度の高い相(上相)を水抽出すると、一度にガス相成分を凝縮してアセトアルデヒドを除去する方法に比べて、小型の除去装置(例えば、蒸留塔又は水抽出装置など)であってもアセトアルデヒドを効率よく除去できる。
さらに、ベントガス(反応器、フラッシュ蒸発塔、スプリッターカラム、複合蒸留塔、蒸留塔、コンデンサからのベントガス)を、必要により冷却して凝縮して、スクラバーシステム(吸収系)に送り、オフガス中の有価成分(例えば、ヨウ化メチル)を回収して反応系ヘリサイクルしてもよく、オフガス中の不純物(アセトアルデヒドなど)を廃棄してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
比較例
反応圧力2.76MPaG、反応温度185℃、反応液中の水濃度2.5重量%、酢酸メチル濃度3重量%、ヨウ化メチル濃度9重量%、ヨウ化リチウム濃度15重量%、ロジウム触媒濃度900ppmの反応媒体中にメタノールと一酸化炭素とを連続的に供給して酢酸を製造した。なお、反応器で生成した反応混合物を連続的に抜き取り、フラッシュ蒸発槽からの揮発相成分を第1の蒸留塔(脱低沸塔)で蒸留し、低沸成分を塔頂から留出させ、サイドカット流を取り出し、このサイドカット流を第2の蒸留塔(脱水塔)で蒸留して低沸成分(水など)を塔頂から留出させ、塔底から粗酢酸流を取り出した。この粗酢酸流をさらに第3の蒸留塔(内径102mmφ×高さ11m)に供給し、塔頂から低沸成分を留出させるとともに、塔底から酢酸を含む塔底流を取り出し、この塔底流を第4の蒸留塔(内径106mmφ×高さ30m)に供給し、塔底から高沸成分を留出させ、塔頂成分として酢酸を取り出した。なお、第3の蒸留塔では、塔底温度139℃、塔頂温度88℃、圧力78kPaGの条件で蒸留し、第4の蒸留塔では、塔底温度141℃、塔頂温度88℃、圧力78kPaGの条件で蒸留した。第3の蒸留塔への粗酢酸流の仕込量を「100」としたとき、第3の蒸留塔での酢酸の取り出し量を「97.1」、塔頂留出量を「2.9」とし、第4の蒸留塔での酢酸の取り出し量を「97.0」、缶出量を「0.1」とした。
実施例
第3の蒸留塔及び第4の蒸留塔に代えて、図2に示す2塔式複合蒸留塔(改良型ペトリューク蒸留塔)104に対応する実験装置を用いる以外、比較例と同様にして酢酸を製造した。すなわち、反応器からの反応混合物を連続的に抜き取り、フラッシュ蒸発槽からの揮発相成分を第1の蒸留塔(脱低沸塔)で蒸留し、低沸成分を塔頂から留出させ、サイドカット流を第2の蒸留塔(脱水塔)で蒸留し、塔底からの粗酢酸流を、図2に示す2塔式複合蒸留塔104(第1の蒸留部で形成された内径102mmφ×高さ11mの第1の塔体、第2の蒸留部及び第3の蒸留部で形成された内径106mmφ×高さ30mの第2の塔体)で蒸留し、高純度の酢酸を得た。なお、複合蒸留塔の第1の蒸留部(第1の塔体)では、塔底温度139℃、塔頂温度137℃、圧力78kPaGの条件で蒸留し、第2の塔体(第2の蒸留部及び第3の蒸留部)では、塔底温度141℃、塔頂温度88℃、圧力78kPaGの条件で蒸留し、第1の蒸留部への粗酢酸流の仕込量を「100」としたとき、酢酸の取り出し量を「97.0」、塔頂留出量を「2.9」、缶出量を「0.1」とした。
なお、図2に示す2塔式複合蒸留塔104に対応する実験装置では、一般的な棚段式蒸留塔を用いて第1の蒸留部、第2の蒸留部と第3の蒸留部を構築した。第1の蒸留部で第1の塔体を形成し、第2の蒸留部と第3の蒸留部とで第2の塔体を形成した。各濃縮部及び回収部のトレイ数は、第1の濃縮部Iでは8個、第1の回収部IIでは12個、第2の濃縮部IIIでは6個、第2の回収部IVでは4個、第3の濃縮部Vでは8個、第3の回収部VIでは42個である。
図2に示すように、接続ライン43aにリボイラー44を設け、リボイラー44により生成した蒸気成分を循環ライン45により第1の蒸留部Aの回収部IIの下部に戻し、ライン47aにリボイラー48を設け、リボイラー48により生成した蒸気成分を循環ライン47bにより第3の蒸留部Cの回収部VIに戻した。また、第1の抜出しライン51には還流のためのコンデンサーを設けた。
制御パラメータp、qとしては、前記のように、第2の濃縮部IIIから第1の濃縮部Iに向かう液流量をL、第2の濃縮部III内の液流量(第1の濃縮部への還流液量と第2の濃縮部IIIの内部還流量との合計)をLIIIとしたとき、p=L/LIII=0.0012に制御し、第1の蒸留部が形成する第1の塔体の缶出液量をW、仕込液量をFとしたとき、q=W/F=0.749に制御した。
なお、液流量Lはポンプにより一定に制御した。還流比により第2の濃縮部III内の流量を一定に制御したため、第1の濃縮部への還流流量LIIIは一定に制御された。缶出液量Wは、Lと同様にポンプで一定に制御した。仕込液量Fは一定の流量をポンプで仕込み、取り出し口(サイドカットノズル)46からの精製酢酸も一定の流量で抜取った。また、リボイラー44では、液面が一定となるように加熱量を調整し、リボイラー48での温度は、第1の抜出しライン51からの排出流量、第2の抜出しライン50からの缶出液排出流量が一定値となるように調整した。
比較例および実施例の結果を表1に示す。
Figure 2017165693
なお、実施例及び比較例では無水酢酸濃度が200ppm程度となるように蒸留したため、精製酢酸中の無水酢酸の濃度には差異がなかった。また、仕込み粗酢酸流中には、上記の成分以外にクロトンアルデヒドやプロピオン酸などが存在するが、これの成分の濃度が商用の酢酸品質規格を超えない範囲であるため、表1では、残りを主成分である酢酸と表記した。
なお、リボイラー熱量は、比較例での第3の蒸留塔及び第4の蒸留塔のリボイラー熱量の合計を1として、実施例での2塔式複合蒸留塔104のリボイラー熱量を比で表した。省エネルギーの程度も同様である。また、設備費は、比較例における第3の蒸留塔及び第4の蒸留塔の設備費の合計を1として、実施例での2塔式複合蒸留塔104の設備費を比で表した。
表1から明らかなように、比較例と同じ理論段数を有する2塔式複合蒸留塔104で粗酢酸流を精製することにより、酢酸メチル及び水の濃度が低減した精製酢酸を製造できる。また、2塔式複合蒸留塔を使用することにより、蒸留塔の塔径及びサイズ(例えば高さ)を小さくすることができ、設備費を低減できるとともに、使用エネルギーを低減でき、運転コストを低減できる。なお、表1には記載されていないが、蒸留塔の理論段数が小さくても複合蒸留塔で粗酢酸流を精製することにより、酢酸メチル及び水の濃度が低減した精製酢酸を製造できるケースもある。
また、図3に示す1塔式複合蒸留塔204を用いる別の実施形態では、リボイラー熱量は、比較例における第3の蒸留塔及び第4の蒸留塔のリボイラー熱量の合計を1とすると、複合蒸留塔のリボイラー熱量を0.93に低減でき、省エネルギーの程度も同様である。また、比較例での第3の蒸留塔及び第4の蒸留塔の理論段数の合計を1とするとき、1塔式複合蒸留塔では理論段数を0.9〜0.8に低減できる。その結果、設備費は、比較例での第3の蒸留塔及び第4の蒸留塔の設備費の合計を1とすると、1塔式複合蒸留塔4では0.95程度に低減できる。このように、蒸留塔の理論段数が小さくても1塔式複合蒸留塔で粗酢酸流を精製することにより、酢酸メチル及び水の濃度が低減した精製酢酸を製造できる。また、1塔式複合蒸留塔を使用することにより、蒸留塔のサイズ(例えば高さ)を小さくすることができ、設備費を低減できるとともに、使用エネルギーを低減でき、運転コストを低減できる。
また、比較例における第3の蒸留塔と第4の蒸留塔、リボイラー、コンデンサーなどの既存設備がある場合には、接続配管を改造するだけで、2塔式複合蒸留塔(図1又は図2に示す改良型ペトリューク蒸留塔やペトリューク蒸留塔など)を構築できる。そのため、比較例での第3の蒸留塔と第4の蒸留塔を1塔式複合蒸留塔に置き換えて新設する場合に比べて、2塔式複合蒸留塔では、0.1〜0.05倍の設備費で、合計エネルギー使用量および製造コストを低減しながら粗酢酸流を精製できる。
本発明は、酢酸の製造に有効である。
1…反応器(反応系)
(2A)…揮発相成分
(2B)…低揮発相成分
2…フラッシャー
(3A)…第1のオーバーヘッド
(3B)…粗酢酸流
(3C)…高沸液体流
3…スプリッターカラム
(4A)…塔頂成分
(4B)…酢酸流
(4C)…高沸缶出流
4…複合蒸留塔
5…デカンタ
6…蒸留塔
7…バッファタンク
8…抽出塔
9…アセトアルデヒド分離塔

Claims (15)

  1. カルボニル化触媒系と水とを含む反応媒体中、メタノールと一酸化炭素とを連続的にカルボニル化する反応工程と;反応工程から反応混合物を連続的に抜き出して、揮発相成分と非揮発相成分とに分離するフラッシュ工程と;揮発相成分を蒸留して、第1のオーバーヘッドと、高沸液体流と、酢酸を含む粗酢酸流とに分離する分離工程と;この分離工程からの前記粗酢酸流を、複数の蒸留部を備えた複合蒸留系で蒸留する精製工程とを含む酢酸の製造方法であって、
    前記複合蒸留系が、粗酢酸流を蒸留し、酢酸を含み、かつ低沸点成分に富む第1の揮発成分と、酢酸を含み、かつ高沸点成分に富む第1の低揮発成分とに分離するための第1の蒸留部と、
    第1の蒸留部からの第1の揮発成分を蒸留し、低沸点成分に富む第2の揮発成分と、酢酸に富む第2の低揮発成分とに分離するための第2の蒸留部と、
    第1の蒸留部からの第1の低揮発成分を蒸留し、酢酸に富む第3の低揮発成分と、高沸点成分に富む第3の低揮発成分とに分離するための第3の蒸留部とを備え;
    少なくとも第2の蒸留部と第3の蒸留部とが、連通した状態で縦方向に接続され、かつ第2の蒸留部と第3の蒸留部との接続部に、第2の低揮発成分と第3の揮発成分とを取り出すための取り出し口を備えており;
    粗酢酸流を第1の蒸留部に供給し、第2の蒸留部からの第2の揮発成分を抜き取り、第3の蒸留部からの第3の低揮発成分を抜き取るとともに、第2の蒸留部からの第2の低揮発成分と第3の蒸留部からの第3の揮発成分とを取り出し口から回収し、精製酢酸を製造する方法。
  2. 第1の蒸留部乃至第3の蒸留部には、それぞれ、酢酸を含む混合物を導入するための導入口よりも上方に、低沸点成分を濃縮するための濃縮部が形成され、導入口よりも下方に、高沸点成分を濃縮するための回収部が形成され、
    複合蒸留系が、(1)第1の蒸留部で形成された第1の蒸留塔と、第2の蒸留部と第3の蒸留部とで形成された第2の蒸留塔とを備えた蒸留系;又は(2)中仕切りを介して、第1の蒸留部の濃縮部と第2の蒸留部の回収部とが隣接するとともに、第1の蒸留部の回収部と第3の蒸留塔の濃縮部とが隣接し;第1の蒸留部の濃縮部の上方に第2の蒸留部の濃縮部が連なり、第1の蒸留部の回収部の下方に第3の蒸留部の回収部が連なった構造を有する単一の蒸留塔を備えた蒸留系である請求項1記載の製造方法。
  3. 第1の低揮発成分を加熱し、第1の低揮発成分からの蒸気成分を第1の蒸留部に戻還流し、残液を第3の蒸留部に導入する請求項1記載の製造方法。
  4. 分離工程が、揮発相成分を蒸留塔で蒸留して第1のオーバーヘッドと酢酸を含む粗酢酸流と高沸液体流とに分離するための少なくとも1つの蒸留工程を含み、この蒸留工程からの少なくとも1つの粗酢酸流を、複合蒸留系で蒸留する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 第1の蒸留部、第2の蒸留部および第3の蒸留部が、それぞれ、棚段塔又は充填塔を形成している請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  6. ロジウム触媒、ヨウ化金属及びヨウ化メチルを含む助触媒の存在下、酢酸メチル、酢酸及び水を含む反応媒体中でメタノールと一酸化炭素とを反応させ、酢酸、無水酢酸5〜2500ppm、酢酸メチル1〜1500ppm、水5〜2500ppmを含む粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 酢酸メチル、水及び無水酢酸のうち少なくとも1つの成分の含有量が低減した酢酸を製造する請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. プロセス流からアセトアルデヒドを除去する請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 揮発相成分の蒸留により生成した第1のオーバーヘッドから有用成分を回収するとともに不純物を除去するための回収・分離工程とを含み、この回収・分離工程が、蒸留工程からの第1のオーバーヘッドを蒸留して第2のオーバーヘッド(6A)を生成させるための少なくとも1つのオーバーヘッド蒸留工程と;第2のオーバーヘッド(6A)を水で抽出する工程と;抽出工程で分液した有機相を反応工程へリサイクルする工程と;水相からアセトアルデヒドを除去する工程とを含む請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 回収・分離工程が、蒸留工程からの第1のオーバーヘッドを凝縮して分液する工程と;分液した軽質相及び重質相のうち少なくとも一方の相を蒸留して第2のオーバーヘッド(6A)を生成させる工程と;第2のオーバーヘッド(6A)を凝縮して水で抽出する工程と;有機相を反応工程へリサイクルする工程と;水相を蒸留してアセトアルデヒドを除去する工程と;この除去工程からの水相を抽出工程及び/又は反応工程へリサイクルする工程とを含み、前記分液工程は複合蒸留系からの第2の揮発成分を凝縮して分液する工程を含み、複合蒸留系からの第3の低揮発成分を反応工程にリサイクルする工程とを含む請求項9記載の製造方法。
  11. メタノール及び/又は酢酸メチルを、分離工程の蒸留系及び複合蒸留系のうち少なくとも1つの蒸留系に供給し、ヨウ化水素をヨウ化メチルに転換し、水分濃度1500ppm以下の粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留し、酢酸メチル、水及び無水酢酸の含有量が低減した酢酸を製造する請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 少なくとも一部が遷移金属でイオン交換されたイオン交換樹脂と、分離工程からの粗酢酸流及び複合蒸留系からの酢酸流とを接触させ、酢酸中のヨウ化アルキルを除去する請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、及び水を含む混合物を、複数の蒸留部を備えた複合蒸留系で蒸留して酢酸を製造する方法であって、前記複合蒸留系が、粗酢酸流を蒸留し、酢酸を含み、かつ低沸点成分に富む第1の揮発成分と、酢酸を含み、かつ高沸点成分に富む第1の低揮発成分とに分離するための第1の蒸留部と、
    第1の蒸留部からの第1の揮発成分を蒸留し、低沸点成分に富む第2の揮発成分と、酢酸に富む第2の低揮発成分とに分離するための第2の蒸留部と、
    第1の蒸留部からの第1の低揮発成分を蒸留し、酢酸に富む第3の低揮発成分と、高沸点成分に富む第3の低揮発成分とに分離するための第3の蒸留部とを備え;
    少なくとも第2の蒸留部と第3の蒸留部とが、連通した状態で縦方向に接続され、かつ第2の蒸留部と第3の蒸留部との接続部に、第2の低揮発成分と第3の揮発成分とを取り出すための取り出し口を備えており;
    前記粗酢酸流を第1の蒸留部の導入口から導入し、前記複合蒸留系で蒸留した酢酸を取り出し口から取り出して酢酸を製造する方法。
  14. 水分濃度1500ppm以下の粗酢酸流を複合蒸留系で蒸留する請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
  15. 酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、及び水を含む混合物を、複数の蒸留部を備えた複合蒸留系で蒸留し、酢酸メチル、水及び無水酢酸から選択された少なくとも一種の成分の酢酸中の含有量を低減する方法であって、前記複合蒸留系が、粗酢酸流を蒸留し、酢酸を含み、かつ低沸点成分に富む第1の揮発成分と、酢酸を含み、かつ高沸点成分に富む第1の低揮発成分とに分離するための第1の蒸留部と、
    第1の蒸留部からの第1の揮発成分を蒸留し、低沸点成分に富む第2の揮発成分と、酢酸に富む第2の低揮発成分とに分離するための第2の蒸留部と、
    第1の蒸留部からの第1の低揮発成分を蒸留し、酢酸に富む第3の低揮発成分と、高沸点成分に富む第3の低揮発成分とに分離するための第3の蒸留部とを備え;
    少なくとも第2の蒸留部と第3の蒸留部とが、連通した状態で縦方向に接続され、かつ第2の蒸留部と第3の蒸留部との接続部に、第2の低揮発成分と第3の揮発成分とを取り出すための取り出し口を備えており;
    前記粗酢酸流を第1の蒸留部の導入口から導入し、前記複合蒸留系で蒸留した酢酸を取り出し口から取り出し、酢酸中の前記成分の含有量を低減する方法。
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