JP6359279B2 - フタロシアニン化合物を含有して成るフィルタ - Google Patents
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Description
このような有機材料としては、例えば、フタロシアニン化合物が注目されている。
フタロシアニン化合物は、例えば、カラートナー、インクジェット用インク、改ざん偽造防止用インク、ゴーグルなどのレンズ、光記録媒体、レーザー治療用感光性色素、感熱転写、感熱孔版などの光熱交換剤、感熱式リライタブル記録の光熱交換剤、プラスチック材料のレーザー透過溶着用の光熱交換剤、熱線遮蔽フィルタ用途、光学フィルタ用途、ディスプレイフィルタ用途、近赤外吸収剤など広範囲の用途に使用されている。
例えば、アルキル基を有するフタロシアニン化合物を用いた近赤外線吸収フィルタが提案されている(特許文献1)。
例えば、中心金属に酸化バナジウムを有するアリールオキシ置換のフタロシアニン化合物を熱線遮蔽吸収材として用いることが提案されている(特許文献2)。
例えば、中心金属に銅を有し、置換アミノ基およびアリールオキシ基を有するフタロシアニン化合物を含む近赤外吸収フィルタが提案されている(特許文献3)。
また、例えば、アルキル置換基、およびアリールオキシ置換基を有するフタロシアニン化合物を近赤外吸収材として用いることが提案されている(特許文献4)。
これらのフタロシアニン化合物を近赤外吸収材として用いたフィルタは、一定の熱線遮蔽効果はあるものの、現在では一層の改良が求められている。
現在では、熱線遮蔽効果は勿論であるが、より光学特性、耐候性に優れたフィルタ(例えば、熱線遮蔽フィルタ、光学フィルタ)が求められている。
フタロシアニン骨格のベンゼン環に脂肪族環が縮環した化合物は、すでに製造されており、また該化合物を用いてなる光記録媒体が提案されている(特許文献6)が、該化合物のフィルタへの応用は今まで提案されてはいない。
すなわち、本発明は、
(i)一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を少なくとも1種含有して成るフィルタである。
〔式中、X1〜X4はそれぞれ独立に、―(CR11R12)n―(R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基を表し、nは1〜20の整数を表す)を表し、
R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基を表し、
さらに、R1とR2、R3とR4、R5とR6、およびR7とR8は互いに結合して、置換している炭素原子と共に置換または未置換のベンゼン環を形成していてもよく、
Mは2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表す〕
さらに、
(ii)基体と透明粘着層から成る(i)記載のフィルタに関するものであり、
(iii)基体と機能性透明層から成る(i)記載のフィルタに関するものである。
本発明は、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を少なくとも1種含有して成るフィルタである。
〔式中、X1〜X4はそれぞれ独立に、―(CR11R12)n―(R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基を表し、nは1〜20の整数を表す)を表し、
R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基を表し、
さらに、R1とR2、R3とR4、R5とR6、およびR7とR8は互いに結合して、置換している炭素原子と共に置換または未置換のベンゼン環を形成していてもよく、
Mは2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表す〕
また、係る特性を有するフタロシアニン化合物を含有してなる本発明のフィルタは、優れた光学特性、優れた耐候性を有するものである。
尚、―(CR11R12)n―中、R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基を表し、好ましくは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは炭素数4〜20の置換または未置換のアリール基を表し、
より好ましくは、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜14の直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基を表し、
さらに好ましくは、水素原子、炭素数1〜10の直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは炭素数6〜12の置換または未置換のアリール基を表す。
尚、置換アリール基の置換基としては、好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数4〜20のアリール基を挙げることができる。
尚、アリール基には、これらの置換基が単置換または多置換されていてもよい。
尚、本明細書において、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基などの炭素環式芳香族基、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基などの複素環式芳香族基を表し、好ましくは、炭素環式芳香族基を表す。
また、―(CR11R12)n―中のnが2以上の整数を表す場合、複数のR11、R12はそれぞれ同一の基であっても、また異なる基であってもよい。
また、―(CR11R12)―中のR11、R12がハロゲン原子、アルキル基、またはアリール基を表す場合、その立体配置は、シス体またはトランス体のどちらでもよく、シス体とトランス体の混合物でもよい。
一般式(1)におけるX1〜X4で表される―(CR11R12)n―において、R11、R12がハロゲン原子の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子を挙げることができる。
例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、
n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,4−ジメチルペンチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,5,5−トリメチルヘキシル基、n−ノニル基、2,2−ジメチルヘプチル基、2,6−ジメチル−4−ヘプチル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオクチル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基、n−トリデシル基、1−ヘキシルヘプチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基を挙げることができる。
例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−n−ノニルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ウンデシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−n−ヘキサデシルフェニル基、4−n−オクタデシルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、
2,6−ジエチルフェニル基、
5−インダニル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル基、1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ナフチル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、4−n−ヘプチルオキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−ノニルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ウンデシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−n−ヘキサデシルオキシフェニル基、4−n−オクタデシルオキシフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2−メトキシ−5−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−4−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、2−クロロ−4−メチルフェニル基、3−クロロ−4−メチルフェニル基、2−クロロ−4−メトキシフェニル基、3−メトキシ−4−フルオロフェニル基、3−メトキシ−4−クロロフェニル基、3−フルオロ−4−メトキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、2−フェニルフェニル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−エトキシ−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、7−エトキシ−2−ナフチル基、2−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基などの置換または未置換のアリール基を挙げることができる。
好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、炭素数4〜20の置換または未置換のアリール基、あるいは炭素数4〜20の置換または未置換のアリールオキシ基を表し、より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜14の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1〜14の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、炭素数6〜16の置換または未置換のアリール基、あるいは炭素数6〜16の置換または未置換のアリールオキシ基を表す。
形成されるベンゼン環が置換基を有する場合、その置換基としては、例えば、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基が挙げられ、
好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、炭素数4〜20の置換または未置換のアリール基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基が挙げられる。
また、形成されるベンゼン環に置換していてもよい置換基の具体例としては、例えば、R1〜R8の具体例として例示した直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基を挙げることができる。
Mで表される2価の金属原子としては、例えば、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Pt、Mn、Mg、Ti、Be、Ca、Ba、Cd、Hg、Pb、Snなどを挙げることができる。
Mで表される3価の置換金属原子としては、例えば、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Ga−F、Ga−Cl、Ga−Br、Ga−I、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C6H5、Al−C6H4(CH3)、In−C6H5、In−C6H4(CH3)、Mn(OH)、Mn(OC6H5) 、Mn[OSi(CH3)3]、Fe−Cl、Ru−Clなどを挙げることができる。
Mで表される4価の置換金属原子としては、例えば、CrCl2、SiCl2、SiBr2、SiF2、SiI2、ZrCl2、ZrI2、GeCl2、GeBr2、GeF2、GeI2、SnCl2、SnF2、SnBr2、TiF2、TiCl2、TiBr2、
Si(OH)2、Ge(OH)2、Zr(OH)2、Mn(OH)2、Sn(OH)2、Ti(R10)2、Cr(R10)2、Si(R10)2、Sn(R10)2、Ge(R10)2〔式中、R10は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、あるいはその誘導体を表す〕、
Si(OR20)2、Sn(OR20)2、Ge(OR20)2、Ti(OR20)2、Cr(OR20)2〔式中、R20は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基、あるいはその誘導体を表す〕、
Sn(SR30)2、Ge(SR30)2〔式中、R30は、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、あるいはその誘導体を表す〕などを挙げることができる。
Mで表される酸化金属原子としては、例えば、VO、MnO、TiOなどを挙げることができる。
一般式(1)において、Mは、より好ましくは、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Pd、Mn、Mg、VO、TiOであり、さらに好ましくは、Cu、Ni、VOであり、特に好ましくは、Cu、VOである。
すなわち、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、例えば、一般式(2)〜一般式(5)で表される化合物と、金属あるいは金属塩(例えば、ハロゲン化金属、カルボン酸金属)とを有機溶媒の存在下で、所望により塩基(例えば、モリブデン酸アンモニウム、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、トリアルキルアミン、アンモニア)の存在下で反応させることにより製造することができる〔例えば、特開昭50−85630号公報、特開平1−45474号公報、特開平1−60660号公報に記載の方法に従って製造することができる〕。
〔式中、X1 〜X4、R1〜R8は一般式(1)の場合と同じ意味を表す〕
例えば、一般式(2)で表される化合物は、一般式(2−A)で表される化合物〔例えば、Pest Manag.Sci.,57,625(2001)に記載の方法に従って製造することができる〕を、ジアゾ化した後、CuCNを作用させることにより製造することができる。
〔式中、X1、R1、R2は一般式(1)の場合と同じ意味を表す〕
また、一般式(2)で表される化合物は、一般式(2−B)で表される化合物〔例えば、Chem.Pharm.Bull.,33,3336(1985)に記載の方法に従って製造することができる〕中のニトロ基を水素化して、一般式(2−A)で表される化合物を製造し、その後ジアゾ化した後、CuCNを作用させることにより製造することができる。
〔式中、X1、R1、R2は一般式(1)の場合と同じ意味を表す〕
〔式中、X1、R1、R2は一般式(1)の場合と同じ意味を表す〕
尚、一般式(2)〜一般式(5)で表される化合物と、例えば、金属あるいは金属塩を反応させて、一般式(1)で表される化合物を製造すると、一般には、環化の際に複数の異性体が生成する。
このような複数の異性体から成る混合物の構造の記載に際しても、本明細書においては、便宜上、例えば、一般式(1−A)で表される一つの構造式を記載しているものである。
〔式中、X1 〜X4、R1〜R8およびMは一般式(1)の場合と同じ意味を表す〕
尚、本発明のフィルタにおいては、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、1種を単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。
勿論、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物としては、例えば、一般式(1−A)〜一般式(1−D)で表される化合物から選ばれる1種の化合物、または2種以上の異性体から成る混合物を使用することができる。また、所望により、該混合物から各異性体を分離し、異性体の内の1種の化合物を用いることができ、さらには、任意の割合から成る複数の異性体を併用することができる。尚、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物とは、結晶は勿論であるが、無定型(アモルファス体)をも包含するものである。
本発明のフィルタの好ましい特性を考慮し、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物としては、好ましくは、680〜800nmに吸収極大を有する化合物であり、より好ましくは、700〜760nmに吸収極大を有する化合物である。
例えば、カメラなどの撮像用の光学フィルタ、
例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ、FED(Field Emission Display)、CRT(Cathode Ray Tube)などの各種ディスプレイ用フィルタであり、例えば、家屋の窓、車、飛行機、電車、宇宙船などの輸送機、各種撮像素子、各種ディスプレイに装着して使用される。
尚、液晶ディスプレイにおいては、例えば、透過型、反射型などの各種態様に適用可能である。
本発明のフィルタの構成は、一般には、
(1)基体(A)から成るフィルタ(図1)
(2)基体(A)と透明粘着層(B)から成るフィルタ(図2)
(3)基体(A)と透明粘着層(B)と基体(A)から成るフィルタ(図3)
(4)機能性透明層(C)と基体(A)と機能性透明層(C)から成るフィルタ(図4)
(5)透明粘着層(B)から成るフィルタ(図5)
(6)基体(A)と機能性透明層(C)から成るフィルタ(図6)
(7)基体(A)、透明粘着層(B)と機能性透明層(C)から成るフィルタ(図7)
(8)基体(A)、透明粘着層(B)、機能性透明層(C)と透明導電層(D)から成るフィルタ(図8および図9)を挙げることができる。
本発明のフィルタは基体、透明粘着層、機能性透明層、透明導電層を構成する少なくとも1つの層、あるいは部材に、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を少なくとも1種含有して成るものである。
例えば、上記(2)の構成を有するフィルタにおいては、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、基体または/および透明粘着層に含有されていてもよい。
例えば、上記(3)の構成を有するフィルタにおいては、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、基体または/および透明粘着層に含有されていてもよく、より好ましくは、一般式(1)で表される化合物は、透明粘着層に含有されている。
例えば、上記(4)の構成を有するフィルタにおいては、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、基体または/および機能性透明層に含有されていてもよく、より好ましくは、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、基体に含有されている。
勿論、本発明のフィルタを構成する場合、所望の要求特性を考慮し、その他種々の構成とすることができる。例えば、本発明のフィルタには、所望に応じて、複数の透明粘着層を設けることができる。また、本発明のフィルタには、複数の機能性透明層を設けることもできる。これらの層にも一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物が含有されていてもよい。
基体は、フィルタの支持体として機能し、一般に、可視光域において、透明ガラス、グリーンガラス、透明高分子フィルムが用いられる。透明高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスチレン、ポリアリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素化芳香族ポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重体などのビニル化合物、またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。基体の厚さに関しては制限するものではないが、一般に、厚さが、10μm〜20mmであり、好ましくは、20μm〜10mmである。
本発明においては、基体の表面は、スパッタリング処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線照射、電子線照射などのエッチング処理、あるいは下塗り処理が施されていてもよい。基体の少なくとも一方の主面にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層となるハードコート膜としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、あるいは光硬化型樹脂などが挙げられる。ハードコート層の厚さは、1〜100μm程度である。また、ハードコート層には、一般式(1)で表される化合物が1種以上含有されていてもよい。
本発明において、透明粘着層は、任意の透明な粘着材(接着剤、粘着剤)から成る層である。透明粘着層は、例えば、アクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)など、ポリビニルエーテル、飽和ポリエステル、メラミン樹脂などから形成される。尚、粘着材としては、シート状、または液体状のものが使用できる。
粘着材として、例えば、シート状の感圧型粘着材を使用する場合は、シート状粘着材を貼付け後、または接着剤の塗布後に、ラミネートして貼り合わせる。粘着材として、例えば、液体状の接着剤を使用する場合は、塗布、貼合わせ後に、室温または高温下で処理することにより、あるいは紫外線照射することにより硬化させて貼り合わせる。その塗布方法としては、例えば、スクリーン印刷法、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法などの公知の方法を挙げることができる。透明粘着層の厚さは、特に限定されるものではないが、一般に、0.5〜500μmである。透明粘着層が形成される面、および貼合わされる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理されていることは好ましい。さらに、透明粘着層を介して貼合わせた後、貼合わせ時に部材間に混入した空気を、脱泡、または粘着材に固溶させて、さらには部材間の密着力を向上させる目的で、加圧、加温条件下で処理を施すことは好ましい。
尚、透明粘着層には、可塑剤を含有することもできる。
係る可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコールのエステル化合物、テトラエチレングリコールのエステル化合物、トリプロピレングリコールのエステル化合物などのグリコールエステル化合物、さらには、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物を挙げることができる。
透明粘着層は、一般に、基体の少なくとも一方の面に設けられ、例えば、別の基体などに貼り合わせて用いられる。
本発明のフィルタにおいては、透明粘着層は、一層でもよく、さらに複数層設けることができる。
透明粘着層の少なくとも1つの層に、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を含有させることができる。
本発明のフィルタには、該フィルタに対する設置方法や要求される機能に応じて、可視光線反射防止機能、防眩機能、反射防止防眩機能、近赤外線反射機能、ハードコート機能(耐摩擦機能)、帯電防止機能、防汚機能、ガスバリア機能、紫外線カット機能のいずれか一つ以上の機能を有し、且つ、可視光線を透過する機能性透明層が設けられる。
機能性透明層は、上記の各機能を一つ以上有する機能膜そのもの、あるいは機能膜を塗布法、印刷法、あるいは従来公知の各種成膜法により形成された支持体、さらには各機能を有する支持体を使用することができる。
可視光線反射防止機能を有する機能性透明層は、反射防止膜を形成する支持体の光学特性を考慮し、光学設計により、反射防止膜の構成部材および各構成部材の膜厚を決定することができる。可視光線反射防止機能を有する機能性透明層としては、例えば、可視光域において屈折率が1.6以下のフッ素系透明高分子樹脂、フッ化マグネシウム、シリコン系樹脂、酸化珪素などの薄膜を、例えば、1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、あるいは屈折率の異なる金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物などから成る無機化合物薄膜、あるいはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂などから成る有機化合物薄膜を支持体から見て、高屈折率層、低屈折率層の順に2層以上積層したものがある。
このような近赤外線反射機能を有する膜としては、アルミ蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、または高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜などが挙げられる。
このような近赤外線反射機能を有する機能性透明層を有すると、近赤外線をさらに効果的に遮蔽することができる。
本発明では、近赤外線反射機能を有する層は、支持体の一方の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。
近赤外線反射機能を有する機能性透明層は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜がより好ましい。
高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常1.7〜2.5である材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、または、酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量(例えば、主成分に対し0〜10%)含有させたものなどが挙げられる。
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、より好ましくは、屈折率が、1.2〜1.6である材料が選択される。係る材料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。
また、誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、5〜60層、より好ましくは、6〜50層である。
尚、無機化合物薄膜の成膜法は、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、湿式塗工法などの公知の方法を適用することができる。有機化合物薄膜の成膜法は、例えば、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法などの公知の方法を適用することができる。
防眩機能を有する機能性透明層は、一般に、0.1〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する可視光域に対して透明な層のことである。防眩機能を有する機能性透明層は、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、または光硬化型樹脂に、シリカ、有機ケイ素化合物などの無機化合物粒子、あるいはメラミン、アクリルなどの有機化合物粒子を分散させてインク化したものを、例えば、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、コンマコート法などの方法によって支持体上に塗布、硬化させて形成することができる。係る無機化合物粒子、および有機化合物粒子の平均粒径は、一般に、1〜40μmである。
また、防眩機能を有する機能性透明層は、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、あるいは光硬化型樹脂を支持体上に塗布した後、所望のヘイズまたは表面状態を有する型を押しつけて、表面を凹凸に硬化させることにより形成することができる。防眩機能の指標となるヘイズ値は、一般に、0.5〜20%である。
反射防止防眩機能を有する機能性透明層は、防眩機能を有する膜、あるいは防眩機能を有する支持体上に、反射防止膜を形成することにより調製することができる。反射防止防眩機能を有する機能性透明層の表面の可視光線反射率は、一般に、1.5%以下、好ましくは、1.0%以下であるように調製する。本発明のフィルタに耐擦傷性能を付加する目的で、機能性透明層がハードコート機能(耐摩擦機能)を有していることは好適である。ハードコート機能を有する機能性透明層は、ハードコート機能を有する膜、あるいは支持体上にハードコート膜を形成することによって調製することができる。ハードコート膜としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂などの熱硬化型樹脂、あるいは光硬化型樹脂などが挙げられる。ハードコート膜の厚さは、一般に、1〜100μm程度である。
尚、必要とされるガスバリア機能は、一般に、透湿度で10g/m2・day以下である。ガスバリア機能を有する膜としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウムなど、またはこれらの混合物、またはこれらに他の元素を添加した金属酸化物薄膜、あるいはポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができる。ガスバリア機能を有する膜の厚さは、金属酸化物薄膜の場合、一般に、10〜200nmであり、樹脂の場合、一般に、1〜100μmである。尚、ガスバリア機能を有する膜は、単層構造でもよく、あるいは多層構造であってもよい。また、水分に対してガスバリア機能を有する膜としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンと塩化ビニル、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合物、フッ素系樹脂などの各種樹脂から成る膜を挙げることができる。
ディスプレイ用フィルタが、電磁波シールド体の形態の場合、基体の一方の主面上に透明導電層が形成される。本発明における透明導電層とは、単層または多層薄膜から成る透明導電層である。尚、電磁波シールド体においては、透明導電層と外部との電気的接続が必要あり、例えば、機能性透明層、透明粘着層などは、透明導電層の周縁部を残して、導通部を確保することが必要となる。単層の透明導電層としては、金属メッシュ、導電性格子状パターン膜などの導電性メッシュ、さらには金属薄膜や酸化物半導体薄膜などの透明導電性薄膜がある。多層薄膜から成る透明導電層としては、金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜がある。金属薄膜と高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜は、銀などの金属の持つ導電性、およびその自由電子による近赤外線反射特性、および特定波長領域における金属による反射を高屈折率透明薄膜により防止できることから、導電性、近赤外線カット機能、可視光線透過率に関して好ましい特性を有している。電磁波シールド機能、近赤外線カット機能を有するディスプレイ用フィルタを得るためには、電磁波吸収のための高い導電性と電磁波反射のための反射界面を多く有する金属薄膜と、高屈折率透明薄膜を積層した多層薄膜から成る透明導電層は好ましい。高い可視光線透過率と低い可視光線反射率に加え、プラズマディスプレイに必要な電磁波シールド機能を有するには、透明導電層が、面抵抗が、一般に、0.01〜30Ω/□、より好ましくは、0.1〜15Ω/□、さらに好ましくは、0.1〜5Ω/□である。また、透明導電層自体に、近赤外線カット機能を持たせることもでき、近赤外線波長領域、例えば、800〜1100nmにおける光線透過率極小を、20%以下にすることができる。
一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を、本発明のフィルタに含有させる方法としては、例えば、以下の(ア)〜(エ)の方法がある。
(ア)透明粘着材に添加して、透明粘着層に含有させる方法、
(イ)高分子樹脂に混練して含有させる方法、
(ウ)高分子樹脂または樹脂モノマーを含む有機溶媒に、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を、分散または溶解させ、各種部材、各層上に、例えば、キャスティングする方法、
(エ)バインダー樹脂を含む有機溶媒に、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を加え、塗料として各種部材、各層上にコーティングする方法、がある。
一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物は、耐熱性に優れており、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリブチラールを使用して、200〜350℃で、射出成形、押出成形のような方法でも成形することができる。
本発明のフィルタに含有される一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物の量に関しては、特に制限するものではなく、フィルタの使用する目的に応じて、所望の量を使用することができる。
例えば、上記(ア)の方法においては、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物の含有量は、特に限定するものではないが、一般に、透明粘着材に対して、10ppm〜30質量%、好ましくは、10ppm〜20質量%である。
また、(イ)および(ウ)の方法においては、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物の含有量は、特に限定するものではないが、一般に、高分子樹脂または樹脂モノマーに対して、10ppm〜30質量%、好ましくは、10ppm〜20質量%である。
また、(エ)の方法においては、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物の含有量は、特に限定するものではないが、一般に、バインダー樹脂に対して、10ppm〜30質量%、好ましくは、10ppm〜20質量%である。また、バインダー樹脂濃度は、塗料全体に対して、一般に、1〜50質量%である。
また、本発明のフィルタの形状に関しては、特に制限するものではなく、例えば、平板状やフィルム状、波板状、球面状、ドーム状など様々な形状のものを包含するものである。
係る光吸収化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、可視領域、または近赤外領域に所望の吸収を有する化合物を挙げることができ、
例えば、公知のアントラキノン化合物、メチン化合物、アゾメチン化合物、オキサジン化合物、アゾ化合物、スチリル化合物、クマリン化合物、ポルフィリン化合物、テトラアザポルフィリン化合物、ジベンゾフラノン化合物、ジケトピロロピロール化合物、ローダミン化合物、キサンテン化合物、ピロメテン化合物などの可視領域に吸収を有する化合物、
例えば、公知のフタロシアニン化合物(例えば、金属フタロシアニン錯体)、ナフタロシアニン化合物(例えば、金属ナフタロシアニン錯体)、シアニン化合物、アントラキノン化合物、ジチオール化合物(例えば、ニッケルジチオール錯体)、ジイモニウム化合物、さらに、例えば、酸化タングステン系化合物(例えば、セシウム酸化タングステン)などの金属酸化物などの一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物以外の近赤外領域に吸収を有する化合物を挙げることができる。
これら光吸収化合物の使用量は、該化合物の吸収波長、吸光係数、さらには、所望の光学特性(例えば、色、透過特性、視野、コントラスト)を考慮し任意に設定することができる。
例えば、他の近赤外領域に吸収を有する化合物の使用量は、特に制限するものではないが、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物に対して、好ましくは、80質量%以下であり、より好ましくは、60質量%以下であり、さらに好ましくは、40質量%以下である。
また、本発明のフィルタは、所望に応じて、さらに紫外線吸収剤、酸化防止剤を含んでもよい。
係る紫外線吸収剤としては、特に限定するものではなく、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤を挙げることができる。
酸化防止剤としては、特に限定するものではなく、例えば、フェノール系の酸化防止剤を挙げることができる。
係る熱線遮蔽フィルタは、例えば、建物の窓、車、飛行機、電車などの輸送機の窓(外気側、または内気側)に装着して使用することができる。
本発明のフィルタは、一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を少なくとも1種含有することによって、撮像装置用の光学フィルタ、ディスプレイ用の光学フィルタとして機能する。
係る光学フィルタは、例えば、カメラモジュール、各種センサー、各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ)に装着して使用することができる。
また、本発明の光学用フィルタは、例えば、ディスプレイ画面からの電磁波を遮断する特性を有する電磁波シールド体として機能する。
以下、分光特性は、日立ハイテクノロジー社製の分光光度計(U−4100)を用いて、以下のように測定、評価した。
波長560〜800nmの範囲において、フィルタの垂直方向から測定した透過率が50%となる波長(Xa)、とフィルタの垂直方向に対して、30°の角度から測定した透過率が50%となる波長(Xb)を測定し、XaとXbとの差の絶対値|Xa−Xb|を求めた。
|Xa−Xb|の値が小さい程、吸収波長の入射角依存性が小さく、視野角の広いフィルタであることを示すものである。
尚、実用的には、|Xa−Xb|の値は20nm以下が好ましい。
吸収極大波長(L)における吸収極大の吸光度を1.0に規格化した場合、吸光度が0.3となる波長(M)の差|L−M|を求めた。
|L−M|の値が小さい程、吸収スペクトルは急峻であることを示すものである。
尚、実用的には、|L−M|の値は40nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。
環状オレフィン系樹脂(ゼオノア1020R、日本ゼオン株式会社製)100g、例示化合物番号18の化合物0.1g、およびシクロヘキサンとキシレンの3:7(質量比)混合溶液を加えて、樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。
次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で8時間、80℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。
剥離した塗膜をさらに減圧下、100℃で24時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基体を作製した。
この基体の分光透過率を測定し、吸収極大波長、可視光波長領域における透過率、および|L−M|を求めた。結果を第1表に示す。
続いて、得られた基体の片面に、蒸着温度100℃で、近赤外線を反射する誘電体多層膜〔シリカ層(SiO2:膜厚83〜199nm)とチタニア層(TiO2:膜厚101〜125nm)とが交互に20層積層されてなるもの〕を形成し、さらに基体のもう一方の面に、蒸着温度100℃で近赤外線を反射する誘電体多層膜〔シリカ層(SiO2:膜厚77〜189nm)とチタニア層(TiO2:膜厚84〜118nm)とが交互に26層積層されてなるもの〕を形成し、厚さ0.105mmのフィルタを作製した。
このフィルタの分光透過率を測定し、赤外波長領域における光学特性および|Xa−Xb|を求めた。波長430〜580nmにおける透過率の平均値は90%、波長800〜1000nmにおける透過率の平均値は1%以下であった。結果を第1表に示した。
環状オレフィン系樹脂(APEL6015T、三井化学株式会社製)100g、例示化合物番号12の化合物0.1g、およびシクロヘキサンと塩化メチレンの7:3(質量比)混合溶液を加えることで、樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。
次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、40℃で4時間、60℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基体を作製した。
この基体を用いて、実施例1と同様にして、誘電体多層膜を有する厚さ0.105mmのフィルタを作製し評価した。結果を第1表に示した。
実施例2において、例示化合物番号12の化合物を使用する代わりに、例示化合物番号19の化合物(実施例3)、例示化合物番号26の化合物(実施例4)、例示化合物番号32の化合物(実施例5)、例示化合物番号57の化合物(実施例6)、例示化合物番号68の化合物(実施例7)、例示化合物番号74の化合物(実施例8)を使用した以外は、実施例2に記載の方法により基体を作製し、さらに、誘電体多層膜を有するフィルタを作製し評価した。
結果を第1表に示した。
ポリカーボネート樹脂(ピュアエース、帝人株式会社製)100g、例示化合物番号16の化合物0.05g、例示化合物番号56の化合物0.05g、および塩化メチレンを加えて、樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。
次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。
剥離した塗膜をさらに減圧下、100℃で6時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基体を作製した。
この基体を用いて、実施例1と同様にして、誘電体多層膜を有する厚さ0.105mmのフィルタを作製し評価した。結果を第1表に示した。
実施例9において、例示化合物番号16の化合物および例示化合物番号56の化合物を使用する代わりに、例示化合物番号62の化合物0.06gおよび式(a)で表されるナフタロシアニン化合物0.04g(実施例10)、
例示化合物番号21の化合物0.07gおよび式(b)で表されるシアニン化合物0.03g(実施例11)、
例示化合物番号37の化合物0.05gおよび式(c)で表されるジイモニウム化合物0.05(実施例12)を使用した以外は、実施例9に記載の方法により、誘電体多層膜を有する厚さ0.105mmのフィルタを作製し評価した。結果を第1表に示した。
ポリエーテルスルフォン(スミライトFS−1300、住友ベークライト株式会社製)100g、例示化合物番号20の化合物0.05g、例示化合物番号50の化合物0.05g、およびN−メチル−2−ピロリドンを加えて、樹脂濃度が20質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、60℃で4時間、80℃で4時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜をさらに減圧下120℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦60mm、横60mmの基体を作製した。
この基体を用いて、実施例1と同様にして、厚さ0.105mmのフィルタを作製し評価した。
結果を第1表に示す。
実施例1において、例示化合物番号18の化合物を使用しなかった以外は、実施例1に記載の方法により基体を作製した。さらにこの基体を用いて、実施例1と同様にして、誘電体多層膜を有する厚さ0.105mmのフィルタを作製し評価した。結果を第1表に示した。
実施例1において、例示化合物番号18の化合物を使用する代わりに、式(d)で表されるフタロシアニン化合物を使用した以外は、実施例1に記載の方法により、基体を作製した。
さらにこの基体を用いて、実施例1と同様にして、誘電体多層膜を有する厚さ0.105mmのフィルタを作製し評価した。結果を第1表に示した。
溶融したポリカーボネート樹脂(帝人化成株式会社製、パンライト1285、商品名)100kgに例示化合物番号2の化合物を12g添加し、250〜300℃で、射出成形機を用い、外径75mm、中心厚2mmのレンズに成形した。
このレンズの中心部における710nmの光線透過率値は9.0%、可視光透過率は89%であった。
また、このレンズを着用してレーザーカッターを使用したところ、目に刺激や疲労感を感じず、かつ視野内の物体確認に何らの支障もなかった。
・透明粘着層の作製
トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート40g、紫外線吸収剤として[2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール]1g、酸化防止剤として(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)1gと、例示化合物番号39の化合物0.004gを混合し、さらに、分散剤としてリン酸エステル化合物0.001gを添加した後、水平型のマイクロビーズミルにて混合し、分散液を得た。
この分散液とポリビニルブチラール樹脂100gを、ミキシングロールで充分に混練し、透明粘着組成物を得た。
この透明粘着組成物を、クリアランス板(760μm)を介して、2枚のフッ素樹脂シートの間に挟み込み、150℃で30分間プレス成形し、厚み760μmの透明粘着層を作製し、縦30cm×横30cmの大きさに切断、加工した。
・フィルタ(合わせガラス)の作製
次いで、2枚のグリーンガラス[JIS R3208(1998)に準拠、縦30cm×横30cm×厚み2mm]の間に、得られた透明粘着層を挟み込み、真空ラミネーターにて90℃で30分間保持し、真空プレスし、積層体を得た。積層体において、ガラス板からはみ出た中間膜部分を切り落とし、合わせガラスを作製した。
・フィルタの評価
この合わせガラスを、部屋(縦2m×横2m×高さ2m)の窓ガラスの外気側に、全面貼り合わせ、真夏の午後12時から3時までの間の部屋の温度を測定したところ、最高温度は31℃であった。
尚、このフィルタを、7月〜9月の3カ月間、同様の環境下で使用したが、熱線遮蔽効果に変化はなく、優れた耐候性を有していることが判明した。
実施例15において、例示化合物番号39の化合物を使用しなかった以外は、実施例15に記載の方法により、合わせガラスを作製し、この合わせガラスを、部屋(縦2m×横2m×高さ2m)の窓ガラス全面に貼り合わせ、真夏の午後12時から3時までの間の部屋の温度を測定したところ、最高温度は37℃であった。
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)(厚さ:188μm)を基体とし、その一方の面に、PETフィルムから順に、ITO薄膜(膜厚:40nm)、銀薄膜(膜厚:11nm)、ITO薄膜(膜厚:95nm)、銀薄膜(膜厚:14nm)、ITO薄膜(膜厚:90nm)、銀薄膜(膜厚:12nm)、ITO薄膜(膜厚:40nm)の計7層の透明導電層を形成し、面抵抗2.2Ω/□の透明導電層を有する透明積層体を作製した。
酢酸エチル/トルエン(50:50質量%)溶媒に、例示化合物番号54の化合物、および式(e)で表されるテトラアザポルフィリン化合物を溶解させて希釈液とした。
アクリル系粘着剤(80質量%)と、この希釈液(20質量%)を混合し、コンマコーターにより透明積層体の基体側の面に、乾燥膜厚25μmに塗工し、乾燥させて、粘着面に離型フィルムをラミネートして、離型フィルムと透明積層体の基体に挟み込まれた透明粘着層を形成した。
尚、粘着材の屈折率は1.51、消光係数は0であった。
尚、例示化合物番号54の化合物および式(e)で表されるテトラアザポルフィリン化合物は、乾燥した粘着材の中で、それぞれ1150(質量)ppm、1050(質量)ppm含有するように調製した。
その上に含フッ素有機化合物溶液をマイクログラビアコーターにて塗工し、90℃で乾燥、熱硬化させて、屈折率1.4の反射防止膜(膜厚:100nm)を形成し、ハードコート機能(鉛筆硬度:2H)、ガスバリア機能(透湿度:1.8g/m2・day)、反射防止機能(表面の可視光線反射率:1.0%)、帯電防止機能(面抵抗:7×109 Ω/□)、防汚機能を有する機能性透明層として、反射防止フィルムを作製した。
反射防止フィルムの他方の主面に、アクリル系粘着剤と希釈液〔酢酸エチル/トルエン(50:50質量%)〕を塗工・乾燥させ、厚さ25μmの透明粘着層を形成し、さらに離型フィルムをラミネートした。
ロール状の透明積層体/粘着材/離型フィルムを、970mm×570mmの大きさに裁断し、ガラス製支持板に透明導電層面を上にして固定した。
さらに、ラミネーターを用いて、透明導電層の周縁部20mmが剥き出しになるように導通部を残して、内側だけに反射防止フィルムをラミネートした。
ガラス製支持板から外して、透明粘着層面に離型フィルムを有する電磁波シールド機能を有するディスプレイ用フィルタを作製した。
さらに、ディスプレイ用フィルタの離型フィルムを剥離して、プラズマディスプレイパネル前面(表示部920mm×520mm)に枚葉式ラミネーターを用いて貼合わせた後、60℃、2×105 Paの条件下でオートクレーブ処理した。
ディスプレイ用フィルタの電極部とプラズマディスプレイパネルのアース部を、導電性銅箔粘着テープを用いて接続し、ディスプレイ用フィルタを装着した表示装置を得た。
このディスプレイ用フィルタを装着したプラズマディスプレイは、波長610nmの透過率に対する595nmの透過率は37%であった。
また、ディスプレイ用フィルタを装着したプラズマディスプレイは、周囲照度100lxの条件下における明所コントラスト比が、ディスプレイ用フィルタを形成される前が20であったのに対して、44に向上した。
また、赤外線リモートコントローラーを使用する電子機器として、家庭用VTRを、プラズマディスプレイに0.5mに近付けても、VTRは誤動作しなかった。
尚、ディスプレイ用フィルタを装着しない場合は、VTRをプラズマディスプレイから5m遠ざけても、VTRは誤動作した。
21:基体(A)
22:透明粘着層(B)
31:基体(A)
32:透明粘着層(B)
41:基体(A)
43:機能性透明層(C)
52:透明粘着層(B)
61:基体(A)
63:機能性透明層(C)
71:基体(A)
72:透明粘着層(B)
73:機能性透明層(C)
81:基体(A)
82:透明粘着層(B)
83:機能性透明層(C)
84:透明導電層(D)
91:基体(A)
92:透明粘着層(B)
93:機能性透明層(C)
94:透明導電層(D)
Claims (3)
- 一般式(1)で表されるフタロシアニン化合物を少なくとも1種含有して成るフィルタ。
〔式中、X1〜X4はそれぞれ独立に、―(CR11R12)n―(R11およびR12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、あるいは置換または未置換のアリール基を表し、nは1〜20の整数を表す)を表し、
R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、あるいは置換または未置換のアリールオキシ基を表し、
Mは2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表す。
但し、Mが酸化金属原子の場合、R 1 ,R 3 ,R 5 およびR 7 が水素原子であることはない。〕
- 基体と透明粘着層から成る請求項1記載のフィルタ。
- 基体と機能性透明層から成る請求項1記載のフィルタ。
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