JP6356795B2 - メチルセルロースを含む粘膜適用組成物 - Google Patents

メチルセルロースを含む粘膜適用組成物 Download PDF

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Description

本発明は、例えば生理学的活性剤の経粘膜送達のために粘膜に適用する組成物、及び生理学的活性剤を個体に投与する方法に関する。
生理学的活性剤の経粘膜送達用の薬学的組成物のような、粘膜に適用するための組成物は、長い間知られている。点鼻薬及び鼻用噴霧剤は、鼻腔への投与が意図される薬物送達系として知られている。しかし、既知の点鼻薬及び鼻用噴霧剤は、多くの場合、鼻孔から、または鼻腔の後ろから鼻咽頭へのしたたりを介して鼻腔から急速に流出し、生理学的活性剤の不十分な効力をもたらし得る。軟膏剤またはゲル剤のような高粘度送達系は、鼻腔内に長時間保持されるが、軟膏剤またはゲル剤の正確な投与量を計量すること、続いて鼻腔内の所望の位置に送達することは困難である。同様の問題は、薬学的組成物が目の粘膜のような他の粘膜、または頬粘膜のような口腔内の粘膜に適用される場合に経験される。
この問題に対処するため、欧州特許第0023359号は、薬物及び担体を含む、鼻腔の粘膜への適用のための粉末状の薬学的組成物を開示する。組成物の少なくとも90%が、有効粒子直径の20〜250μmを有する粒子からなる。2%水溶液において37℃±0.2℃で決定された粘度の5〜5000mPa・sを有するセルロースの低級アルキルエーテルを含む組成物。セルロースの低級アルキルエーテルは、好ましくは、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。0.1〜6、とりわけ0.4〜4.6のエーテル置換度を有するものが、好ましいと言われている。薬学的組成物は、鼻粘膜の粘膜を吸収し、流体表面として鼻粘膜を覆う。残念ながら、粉末状薬学的組成物を鼻腔に噴霧することは、かなり複雑である。欧州特許第023359号は、カプセルに粉末状組成物を充填すること、針を備えた噴霧器にそれを装着すること、針をカプセルに突き刺して、カプセルの上面及び底面に微小の穴を開けること、その後、ゴム風船を用いて空気を送り、粉末を噴射させることを提案している。更に粉末状組成物は、多くの場合、鼻腔内で異物として感じられ、鼻腔を刺激し、鼻腔の乾燥をもたらし得る。
粘膜に適用される従来技術の組成物の上述された欠陥を考慮すると、本発明の目的は、粘膜に容易に適用することができ、粘膜に長時間保持される組成物を提供することである。
本発明の一態様は、等張化剤、メチルセルロース、及び液体希釈剤を含む粘膜に適用するための組成物であって、
メチルセルロースは、1−4結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有し、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基が、s23/s26が0.36以下であるようにメチル基で置換され、
s23は、アンヒドログルコース単位の2及び3位の2つのヒドロキシ基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
s26は、アンヒドログルコース単位の2及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率である、組成物である。
本発明の別の態様は、上述された組成物を含む容器であり、容器は噴霧により、または滴薬として組成物を放出するように設計されている。
本発明のなお別の態様は、生理学的活性剤を個体に経粘膜投与する方法であって、生理学的活性剤を追加的に含む上述された組成物が個体の粘膜に適用される方法である。
本発明の組成物のゲル化温度がどのように決定されるかを例示する。
驚くべきことに、本発明の組成物は、37℃まで、典型的には35℃まで、より典型的には33℃までのゲル化温度を示すことが見出された。本発明の組成物のゲル化温度は、一般に少なくとも18℃、典型的には少なくとも21℃、より典型的には少なくとも24℃、最も典型的には少なくとも27℃である。
本発明の組成物は、例えば生理学的活性剤の経粘膜送達のために、粘膜への適用に極めて有用である。5℃または20℃での、すなわち組成物が通常貯蔵及び/または適用される温度での低粘度は、組成物の、そのような組成物を含む容器からの、例えば滴薬としての、または噴霧による放出、及びこの組成物の粘膜への投与を促進する。組成物の温度は、粘膜への適用の後に増加する。
本発明の組成物のゲル化温度での熱ゲル化は、送達系の効力を最大化する2つの現象を誘発する。1)熱ゲル化組成物の主要部分の高い粘度は、本発明の組成物の粘膜における保持を促進する。2)本発明の組成物が熱ゲル化すると離漿が生じ、メチルセルロース、等張化剤、及び典型的に存在する生理学的活性剤は、離漿流体で粘膜から洗い流される代わりに、濃縮して、粘膜と最も密接に連結する離漿層になる。
慣用的には、メチルセルロースは、増粘、凍結/解凍安定性、潤滑性、水分保持及び放出、膜形成、改変放出、手触り、稠度、形状保持、乳化、結合、ゲル化、ならびに懸濁特性を提供する、様々な用途に極めて有用であることが見出されている。しかし、メチルセルロースは、通常、付随の実施例に示されているように、ヒトのような哺乳動物の鼻腔内で遭遇する温度で組成物の十分な増粘効果を提供しない。メチルセルロースの1つの並外れた特性は、水中で逆熱ゲル化を示すことが知られていることであり、換言すると、メチルセルロースは、2%の濃度で溶解したとき、50℃を超える温度でゲル化し、20℃以下の温度に冷却されると液体を形成する。約5℃の水に単独で2重量%に溶解するメチルセルロースの大部分の等級は、ヒトの通常の体温より少なくとも約10℃高い温度でゲル化する。
本発明では、特定のメチルセルロースが、経粘膜送達用の組成物にとって必須の構成成分である。メチルセルロースは、1−4結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有する。各アンヒドログルコース単位は、2、3、及び6位にヒドロキシル基を含有する。これらのヒドロキシルの部分または完全置換は、セルロース誘導体を生成する。例えば、苛性溶液と、続くメチル化剤でのセルロース系繊維の処理は、1つ以上のメトキシ基で置換されたセルロースエーテルを生じる。もしさらに他のアルキルで置換されなかったら、このセルロース誘導体は、メチルセルロースとして知られている。
本発明の組成物に使用される特定のメチルセルロースの必須の特徴は、メチル基の部位である。本発明の経粘膜送達のための組成物は、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基が、s23/s26が0.36以下、好適には、0.33以下、さらに好適には、0.30以下、最も好適には0.27以下または0.26以下、及び特に0.24以下または0.22以下であるようにメチル基で置換されるメチルセルロースを含む。典型的に、s23/s26は、0.08以上、0.10以上、0.12以上、0.14以上、または0.16以上である。
s23/s26の比率において、s23は、アンヒドログルコース単位の2及び3位の2つのヒドロキシ基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、s26は、アンヒドログルコース単位の2及び6位の2つのヒドロキシ基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率である。s23を決定するため、「アンヒドログルコース単位の2及び3位の2つのヒドロキシ基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率」という用語は、2及び3位の2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、6位がヒドロキシ基で非置換されることを意味する。s26を決定するため、「アンヒドログルコース単位の2及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率」という用語は、2及び6位の2つのヒドロキシ基がメチル基で置換され、3位がヒドロキシ基で非置換されることを意味する。
以下の式Iは、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基の番号付与を例示している。
Figure 0006356795
本発明の一実施形態において、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基は、メチルセルロースのs23/s26が0.27以下、好適には0.26以下、さらに好適には0.24以下、またはさらには0.22以下であるようにメチル基で置換される。本発明のこの実施形態において、メチルセルロースのs23/s26は、典型的に0.08以上、0.10以上、0.12以上、0.14以上、0.16以上、または0.18以上である。この実施形態のメチルセルロース作製方法は、実施例でさらに詳細に記載される。この実施形態のメチルセルロース作製の一般的な方法は、国際特許出願第2013/059064号11〜12ページ及び同第2013/059065号11〜12ページに記載され、この教示は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の別の実施形態において、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基は、メチルセルロースのs23/s26が0.27超〜0.36まで、好適には0.27超〜0.33まで、及び最も好適には0.27超〜0.30までのようにメチル基で置換される。アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基が、s23/s26が約0.29のようにメチル基で置換されるメチルセルロースは、METHOCEL SGまたはSGA(The Dow Chemical Company)の商標名の下、市販されている。これらは、水中2重量%の濃度で、比較的低温度、38℃〜44℃、でゲル化する。米国特許第6,235,893号は、31〜54℃のゲル化開始温度を示し、それらの大部分が35〜45℃のゲル化温度を示す水中1.5重量%溶液のメチルセルロースの調製を教示し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
好適には、メチルセルロースは、1.55〜2.25、さらに好適には1.65〜2.20、及び最も好適には1.70〜2.10のDS(メチル)を有する。メチルセルロースのメチル置換度、DS(メトキシル)としても呼ばれるDS(メチル)、は、アンヒドログルコース単位毎にメチル基で置換されるOH基の平均数である。
メチルセルロース中のメトキシル%の決定は、米国薬局方(USP 34)に従って実施される。得られる値は、メトキシル%である。続いてこれらは、メチル置換基の置換度(DS)に変換される。塩の残留量が変換の考慮に入っている。
メチルセルロースの粘度は、2重量%水溶液として5℃、10s−1の剪断速度で測定した場合、一般に少なくとも2.4mPa・s、好適には少なくとも3mPa・s、及び最も好適には少なくとも10mPa・sである。メチルセルロースの粘度は、上記に表示するとおり測定した場合、好適には、10,000mPa・sまで、さらに好適には5000mPa・sで、及び最も好適には2000mPa・sまでである。
上述の特定のメチルセルロースは、水溶液が大部分の既知のメチルセルロースよりも低温でゲル化することをもたらすが、これらは、水溶液中で低濃度、例えば、1重量%以下の濃度で、37℃まで、またはわずか32℃までの温度ですら、必ずしも十分に効果的ではない。水溶液のゲル化温度は、メチルセルロースの濃度を高めることにより低下され得るが、必ずしも望ましくない。水溶液中の一定のメチルセルロースの濃度上昇は、通常、5℃または20℃で粘度を上昇させ、水溶液の粘膜への噴霧または滴下をさらに難しくする。驚くべきことに、等張化剤の存在は、上述のメチルセルロースを含む組成物のゲル化温度を低下させることが見出されている。
したがって、本発明の組成物の別の必須成分は、等張化剤である。1つ以上の等張化剤は、体液、例えば鼻腔からの流体または目からの流体の等張性を部分的または完全に達成し、低減した刺激レベルもたらすために、本発明の組成物に含まれ得る。薬学的に許容される等張化剤の例には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、デキストロース、キシリトール、塩化カルシウム、グルコース、グリセリン、マンニトール、及びソルビトールが含まれるが、これらに限定されない。等張化剤は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.1〜10パーセント、より好ましくは0.2〜8.0パーセント、さらにより好ましくは0.3〜6.0パーセント、最も好ましくは0.5〜4.0パーセントの量で含まれる。一実施形態において、等張化剤は、デキストロース及び/またはキシリトールである。別の実施形態において、等張化剤は、塩化ナトリウムである。なお別の実施形態において、等張化剤は、緩衝剤である。適切な緩衝剤には、クエン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、フタル酸、またはリン酸の塩のような有機酸塩が含まれるが、これらに限定されない。リン酸緩衝液が特に有用である。リン酸緩衝液は、典型的には、二塩基性リン酸ナトリウム若しくはカリウム、または一塩基性リン酸ナトリウム若しくはカリウムを含む。加えて、アミノ酸構成成分を緩衝剤として使用することもできる。そのようなアミノ酸構成成分には、グリシン及びヒスチジンが限定されることなく含まれる。緩衝剤は、改善されたpH制御を提供する。一実施形態において、本発明の組成物は、5.0〜8.0、好ましくは6.0〜8.0、より好ましくは6.0〜7.0のpHを有する。特定の実施形態において、本発明の組成物は約6.5のpHを有する。
驚くべきことに、上で更に記載されたメチルセルロースを等張化剤と組み合わせて含む本発明の組成物は、同じ種類及び量のメチルセルロースを等張化剤なしで含有する比較組成物よりも低い温度でゲル化を示すことが見出された。代替的には、低濃度の前述のメチルセルロース及び/または低粘度(水中2重量%の溶液により20℃で測定)を有する前述のメチルセルロースを、等張化剤の存在下で利用することができ、同時に、所望の温度で組成物の熱ゲル化を依然として達成することができる上で更に記載されたメチルセルロースと組み合わせた等張化剤の効果は、実施例においてより詳細に例示されている。
本発明の組成物は、粘膜への適用のため、例えば鼻腔内、頬側、舌下、膣内、眼内、または直腸内適用のために有用である。
本発明の一実施形態において、組成物は、1つ以上の生理学的活性剤、好ましくは1つ以上の薬物、1つ以上の診断剤、もしくは1つ以上の精油、または美容もしくは栄養上の目的に有用である1つ以上の生理学的活性剤を含む。用語「薬物」は、個体、特に哺乳動物、とりわけヒトに投与される場合、有益な予防及び/または治療特性を有する化合物を示す。鼻腔内、頬側、舌下、膣内、眼内、もしくは直腸内送達のような経粘膜送達、または歯肉もしくは唇に位置する粘膜を介する送達に有用である生理学的活性剤は、当該技術分野において知られている。
本発明の組成物は、アレルギー性鼻炎、鼻詰まり、及び炎症の治療、糖尿病、片頭痛、嘔気、禁煙、急性疼痛緩和、夜尿症、骨粗鬆症、ビタミンB12欠乏症の治療、ならびに鼻腔内インフルエンザワクチンの投与に有用な薬物のような1つ以上の生理学的活性剤の鼻腔内送達、または口腔内に位置する粘膜を介する送達に特に有用であるが、生理学的活性剤は、これらの例に限定されない。とりわけ好ましい薬物は、アセトアミノフェン、アゼラスチン塩酸塩、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物、コハク酸スマトリプタン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、プロピオン酸フルチカゾン、トリアムシノロンアセトニド、ブデソニド、クエン酸フェンタニル、酒石酸ブトルファノール、ゾルミトリプタン、酢酸デスモプレシン水和物、サケカルシトニン、酢酸ナファレリン、酢酸ブセレリン、エルカトニン、オキシトシン、インスリン、フロ酸モメタゾン、エストラジオール、メトクロプラミド、キシロメタゾリン塩酸塩、臭化イプラトロピウム水和物、オロパタジン塩酸塩、オキシメタゾリン塩酸塩、デクスパンテノール、ヒドロコルチゾン、ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、マレイン酸メピラミン、フェニレフリン塩酸塩、クロモリンナトリウム、レボカバスチン塩酸塩、ビタミンB12、メタスルホ安息香酸ナトリウムプレドニゾロン、硝酸ナファゾリン、テトラヒドロゾリン塩酸塩、マレイン酸クロルフェニラミン、塩化ベンゼトニウム、フマル酸ケトチフェン、ヒスタミン二塩酸塩、フサファンギン、またはこれらの組み合わせである。精油の例は、メントール、サリチル酸メチル、チモール、ユーカリ油、ショウノウ、アニス、アマダイダイ、またはこれらの組み合わせである。驚くべきことに、本発明の組成物中のある特定の生理学的活性剤の存在が、熱ゲル化が生じる温度を更に低減できることが見出された。
本発明のなお別の実施形態において、本組成物は、薬物、診断剤、精油、または美容もしくは栄養上の目的に有用である生理学的活性剤から選択される生理学的活性剤を含まない。上に記載されたメチルセルロースを等張化剤と組み合わせるが、追加的に生理学的活性剤と組み合わせることなく含む組成物は、例えば、鼻腔をすすぐ、及び/もしくは潤いを与えるため、または人工涙として有用である。
経粘膜送達用の組成物は、液体希釈剤を更に含み、その少なくとも55重量パーセント、100パーセントまでが水である。本発明の組成物は、有機液体希釈剤を追加的に含むことができるが、本発明の組成物は、有機液体希釈剤及び水の総重量に基づいて、少なくとも55、好ましくは少なくとも65、より好ましくは少なくとも75、最も好ましくは少なくとも90、特に少なくとも95重量パーセントの水、及び、45まで、好ましくは35まで、より好ましくは25まで、最も好ましくは10まで、特に僅か5重量パーセントの有機液体希釈剤を含むべきである。一実施形態において、希釈剤は水からなる。水は、典型的には、精製水、例えば米国薬局方精製水、欧州薬局方精製水、または注射用水(WFI)のような高級等級の水である。
用語「有機液体希釈剤」は、本明細書で使用されるとき、25℃及び大気圧で液体である有機溶媒または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。好ましい有機液体溶媒は、酸素、窒素、またはハロゲン(塩素など)のような1個以上のヘテロ原子を有する極性有機溶媒である。より好ましい有機液体希釈剤は、アルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びグリセロールのような多官能アルコール、あるいは、好ましくはエタノール、イソプロパノール、もしくはn−プロパノールのような単官能アルコール、または酢酸エチルのようなアセテートである。より好ましくは、有機液体希釈剤は、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。有機液体希釈剤は、好ましくは、エタノールまたはグリセロールのように薬学的に許容されるものである。
本発明の組成物は、1つ以上の懸濁剤、臭気、風味、もしくは味覚改善剤、防腐剤、薬学的に許容される界面活性剤、着色剤、乳白剤、または酸化防止剤のような1つ以上の任意の補助剤を含むことができる。典型的には、薬学的に許容される任意の補助剤が選択される。
安定性の目的において、本発明の組成物(例えば、鼻腔内組成物)は、1つ以上の防腐剤を含めることによって微生物または真菌の汚染及び増殖から保護され得る。薬学的に許容される抗微生物剤または防腐剤の例には、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、塩化ラウラルコニウム(lauralkonium chloride)、及びミリスチルピコリニウムクロリド(myristyl picolinium chloride))、水銀剤(例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、及びチメロサール)、アルコール剤(例えば、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、及びベンジルアルコール)、抗菌性エステル(例えば、パラヒドロキシ安息香酸のエステル)、エデト酸二ナトリウム(EDTA)のようなキレート剤、ならびにクロルヘキシジン、クロロクレゾール、ソルビン酸及びその塩(ソルビン酸カリウム)、及びポリミキシンのような他の抗微生物剤が含まれ得るが、これらに限定されない。薬理学的に許容される抗真菌または防腐剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、プロピオン酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、及びブチルパラベンが含まれ得るが、これらに限定されない。防腐剤は、含まれる場合、組成物の総重量に基づいて、典型的には0.001〜1%、例えば0.015%〜0.5%の量で存在する。一実施形態において、防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、EDTA、及び/またはソルビン酸カリウムから選択される。更なる実施形態において、防腐剤は、EDTA及び/またはソルビン酸カリウムである。
典型的には、本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、0.1〜20パーセント、好ましくは0.2〜15パーセント、さらにより好ましくは0.5〜10パーセント、最も好ましくは0.5〜8パーセントの上に定義されたメチルセルロース、0.1〜10パーセント、より好ましくは0.2〜8.0パーセント、さらにより好ましくは0.3〜6.0パーセント、最も好ましくは0.5〜4.0パーセントの等張化剤、0〜20パーセント、または0.01〜10パーセント、または0.1〜5パーセントの生理学的活性剤、及び0〜30パーセント、または0.01〜20パーセント、または0.1〜10パーセントの1つ以上の任意の補助剤を含み、残部は液体希釈剤である。液体希釈剤の少なくとも55パーセント、好ましくは少なくとも65パーセント、より好ましくは少なくとも75パーセント、最も好ましくは少なくとも90パーセント、特に少なくとも95パーセント、最大100パーセントの重量が、水である。本組成物は、組成物が5℃で液体であるように、一般に十分な量の液体希釈剤を含む。好ましくは、液体希釈剤の量は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも50パーセント、より好ましくは少なくとも80パーセント、最も好ましくは少なくとも90パーセントである。本発明の組成物は、5℃及び10s−1の剪断速度で測定して、一般に、2.4〜10,000mPa・s、好ましくは3〜5000mPa・s、さらにより好ましくは5〜2000mPa・s、最も好ましくは5〜1500mPa・sの粘度を有する。本発明の組成物は、好ましくは、噴霧可能な溶液もしくは懸濁液の形態、滴薬として適用される溶液もしくは懸濁液、またはシロップの形態である。本組成物は、送達装置としての役割も果たすことができる適切な容器に、例えば、噴霧剤または滴薬を生成し、続いて意図される送達部位に適用するように設計された容器に包装され得る。送達装置は、多用量または単位用量装置であり得る。
本発明の組成物は、好ましくは、容器中の組成物の体積が100ml以下、より好ましくは50ml以下、または25ml以下であるように、容器に包装される。典型的には、容器中の組成物の体積は、少なくとも0.1ml、または少なくとも1ml、または少なくとも2ml、または少なくとも5ml、または少なくとも10mlである。液体組成物の体積は、典型的には意図される用途に応じて決まる。単回用量バイアルは、多くの場合、僅か0.1〜2mlの液体組成物を含む。組成物を一滴ずつ放出するように設計されているスプレーまたはボトルは、通常、より多くの量の液体組成物、例えば5〜50mlまたは10〜25mlを含む。
本発明の組成物は、好ましくは1〜23℃、より好ましくは5〜20℃の温度で貯蔵される。本発明の組成物を個体の粘膜に適用すると、組成物の温度が増加し、組成物の水性希釈剤に懸濁している、好ましくは溶解しているメチルセルロースは、本発明の組成物の温度が粘膜の温度、すなわち、30〜37℃、典型的には30〜35℃の温度に適合するとゲル化する。粘膜の正確な温度は、粘膜の種類、個体、時刻、及び周囲環境の状態に応じて幾らか左右される。ヒトの場合、鼻腔内の粘膜は、典型的には30〜35℃の温度を有し、舌下の口腔粘膜は、典型的には約36.8±0.4℃の温度を有し、直腸粘膜は、典型的には約37℃の温度を有する。
組成物のゲル化は、実施例部分において記載されているように決定され得る。低ゲル化温度に起因して、本発明の組成物は、鼻粘膜への適用に特に有用である。一般に、本発明の組成物は、37℃まで、典型的には35℃まで、より典型的には33℃までのゲル化温度を示す。
本発明の組成物に利用されるメチルセルロースのゲル化挙動を、ある特定の経粘膜送達系の特定の必要性にある程度適応させることができる。例えば、本発明の組成物の所望の粘度増加は、水中2重量%の溶液として20℃で測定して高粘度等級のメチルセルロースが選択された場合、低粘度等級のメチルセルロースが選択された場合よりも低い温度で達成され得る。
本発明の幾つかの実施形態が、ここで、以下の実施例において詳細に記載される。
実施例1〜11及び比較例A−I
特に記述のない限り、全ての部及び百分率は重量による。実施例では以下の試験手順が使用される。
メチルセルロースMC−1〜MC−4の生成
メチルセルロースMC−1〜MC−4を、以下の方法に従って生成した。細かく粉砕した木材セルロースパルプを、ジャケット付き攪拌された反応器に充填した。酸素を除去するため、反応器を脱気し窒素でパージし、次いで再度脱気した。反応は、二段階で実施する。第1の段階において、水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、セルロースの1モルのアンヒドログルコース単位毎に、1.8モルの水酸化ナトリウムの水準に達するまでセルロースに噴霧し、次いで、温度を40℃に調整した。水酸化ナトリウム水溶液及びセルロースの混合物を、約20分間、40℃で攪拌後、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、1.5モルのジメチルエーテル及び2.3モルの塩化メチルを反応器へ添加した。次に、反応器の内容物を、60分で80℃に加熱した。80℃に達しさせた後、第1の段階の反応を、5分間進行させた。次いで、反応を20分で65℃に冷ました。
反応の第2の段階を、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、3.4モル当量の塩化メチルの量の塩化メチルを添加することにより開始した。塩化メチルのための追加時間は、20分だった。次いで、1モルのアンヒドログルコース単位毎に、2.9モルの水酸化ナトリウムの量の水酸化ナトリウムの50重量パーセント水溶液を、45分間にわたって添加した。添加の速度は、毎分1モルのアンヒドログルコース単位毎に、0.064モルの水酸化ナトリウムだった。第2の段階の添加完了後、反応器の内容物を、80℃まで20分で加熱し、次に80℃の温度で120分間維持した。
反応後、反応器を排気し約50℃まで冷ました。反応器の内容物を除去し、湯を含有した槽に移した。次いで、粗メチルセルロースをギ酸で中和し、湯で塩化物不含に洗浄(AgNO凝集試験により評価)し、室温に冷まし、空気掃引乾燥機を用いて55℃で乾燥させ、続いて粉砕した。メチルセルロースは、1.88(30.9重量%メトキシル)のDS(メチル)を有し、0.3276±0.0039のモル分率(26−Me)、0.0642±0.0060のモル分率(23−Me)、0.20±0.02のs23/s26、及び5500mPa・sの定常剪断流粘度η(5℃、10s−1、2重量%MC)を有した。メチルセルロースの特性は、下記に記載のとおり測定した。
生成したメチルセルロースの試料を、メチルセルロースMC−1〜MC−4を得るため、既知の方法により部分的に解重合した。概して、粉砕した試料は、塩化水素ガスで、約85℃の温度で処理する。1kgのメチルセルロース毎に、約1.5gの塩化水素ガスを使用する。反応時間は、所望の粘度に適合される。塩化水素ガスを使用したセルロースエーテルの部分解重合は、一般に、欧州特許第1 141 029号及びそれに引用される先行技術から知られている。部分解重合は、DS(メチル)またはs23/s26に影響を与えない。メチルセルロースMC−1〜MC−4の特性は、下記に記載のとおり測定した。
メチルセルロースMC−5
メチルセルロースは、1.95(約31.9重量%メトキシル)のDS(メチル)及び0.29のs23/s26を有する、Methocel(商標)SGA7Cセルロースエーテルの商標の下、The Dow Chemical Companyから市販されているメチルセルロースを使用した。5℃で以下に記載されるとおり測定されるMC−5の粘度は、下記の表2に列挙されている。
比較メチルセルロース
Methocel(商標)Aメチルセルロースの商標の下、The Dow Chemical Companyから市販され、1.9のDS(メチル)(約31.2重量%メトキシル)及び0.39のs23/s26を有する、標準メチルセルロースの種々の等級を、比較目的のために使用した。これらの市販されているメチルセルロースの粘度は、5℃で以下に記載されるとおり測定し、下記の表2に列挙されている。
比較実施例Cで使用するメチルセルロースを提供するため、市販のMethocel(商標)A4Mメチルセルロースを、メチルセルロースMC−1〜MC−4の生成が上記に包括的に記載されるとおり、HClガスを使用した分子量低下に供した。低下時間及び温度、及びHClの量は、粘度標的の約3mPa・sに調整した。
メチルセルロースs23/s26の決定
メチルセルロースのエーテル置換の測定方法は、一般に知られている。例えば、Bengt Lindberg、Ulf Lindquist、及びOlle Stenbergによる、Ethyl Hydroxyethyl Cellulose in Carbohydrate Research,176(1988)137−144,Elsevier Science Publishers B.V.,Amsterdam,DISTRIBUTION OF SUBSTITUENTS IN O−ETHYL−O−(2−HYDROXYETHYL)CELLULOSEで、原理的に説明される方法を参照のこと。
具体的に、s23/s26の決定は以下のとおり行った。
10〜12mgのメチルセルロースを、4.0mLの乾燥分析等級ジメチルスルホキシド(DMSO)(Merck、Darmstadt、Germany、0.3nm分子ふるいビーズ上に貯蔵)に約90℃で攪拌しながら溶解し、次いで室温に冷ました。溶液を、完全な可溶化/溶解を確実にするため、室温で一晩攪拌した。メチルセルロースの可溶化を含む全面的な完全エチル化(perethylation)は、4mLのねじ蓋バイアルで乾燥窒素雰囲気を使用し、行った。可溶化後、溶解したメチルセルロースを、完全エチル化(perethylation)プロセスを開始するため、22mLねじ蓋バイアルに移した。粉末状の水酸化ナトリウム(すりつぶしたて、分析等級、Merck、Darmstadt、Germany)及びヨウ化エチル(合成のため、銀で安定化、Merck−Schuchardt、Hohenbrunn、Germany)を、メチルセルロース中のアンヒドログルコース単位の水準と比較して30倍モル過剰で導入し、この混合物を、窒素下、暗中で3日間、周囲温度で勢いよく攪拌した。完全エチル化(perethylation)を、最初の試薬添加と比較して3倍量の試薬水酸化ナトリウム及びヨウ化エチルの添加で反復し、室温での攪拌を追加の2日間継続した。任意選択で、反応混合物は、反応の過程で良好な混合を確実にするため、1.5mLまでのDMSOで希釈され得る。次に、5mLの5%チオ硫酸ナトリウム溶液を反応混合物に注ぎ入れ、次いで、この混合物を4mLのジクロロメタンで3回抽出した。混合した抽出物を、3回、2mLの水で洗浄した。この有機相を、無水硫酸ナトリウム(約1g)で乾燥させた。濾過後、窒素の穏やかな気流で溶媒を除去し、試料を必要になるまで4℃で貯蔵した。
約5mgの完全エチル化した(perethylated)試料の加水分解は、窒素下、2mLねじ蓋バイアルの中で1mLの90%ギ酸溶液と共に攪拌しながら100℃で1時間行った。酸を、窒素の気流中35〜40℃で除去し、加水分解を、1mLの2Mトリフルオロ酢酸溶液で3時間、120℃で、不活性窒素雰囲気中で攪拌しながら反復した。完了後、酸を、窒素の気流中周囲温度で、共蒸留のために約1mLのトルエンを使用し、乾燥状態に除去した。
加水分解の残渣を、0.5mLの0.5M重水素化ホウ素ナトリウムを用いて2Nアンモニア水溶液(調製したて)中で3時間、室温で攪拌しながら還元した。過剰試薬を、約200μLの濃縮酢酸の滴下添加により破壊した。得られた溶液を、窒素の気流の中、約35〜40℃で乾燥状態に蒸発させ、続いて、真空で15分間、室温で乾燥させた。粘性の残渣を、0.5mLのメタノール中15%酢酸に溶解し、室温で乾燥状態に蒸発させた。これを5回行い、純粋メタノールを用いて追加で4回反復した。最終蒸発後、試料を真空で一晩、室温で乾燥させた。
還元の残渣を、600μLの無水酢酸及び150μLのピリジンを用いて3時間、90℃でアセチル化した。冷却後、試料バイアルをトルエンで充填し、窒素の気流の中、室温で乾燥状態に蒸発させた。残渣を4mLのジクロロメタンに溶解し、2mLの水に注ぎ入れ、2mLのジクロロメタンで抽出した。抽出は、3回反復した。混合した抽出物を、4mLの水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥させたジクロロメタン抽出物を、続いて、GC分析にかけた。GCシステムの感度により、抽出物のさらなる希釈が必要である場合がある。
気液(GLC)クロマトグラフ分析は、Agilent J&W毛細管カラム(30m、0.25mmID、0.25μmの相層厚)を備え、1.5バールヘリウムキャリアガスで作動する、Agilent 6890N型ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies GmbH、71034 Boeblingen、Germany)で行った。ガスクロマトグラフは、60℃で1分間一定に保ち、20℃/分の速度で200℃まで加熱し、さらに4℃/分の速度で250℃まで加熱し、さらに20℃/分の速度で310℃まで加熱し、それをさらに10分間一定に保つ温度分布でプログラムした。注入温度を280℃に設定し、水素炎イオン化検出器(FID)の温度を300℃に設定した。正確に1μLの各試料を、スプリットレスモードに0.5分の閉弁時間で注入した。データを取得し、LabSystems Atlas作業端末で処理した。
定量的モノマー組成物データを、FID検出でGLCにより測定したピーク面積から得た。モノマーの1モル当たりの反応を、有効炭素数(ECN)概念に沿って算出したが、下記の表に記載するとおり変更した。有効炭素数(ECN)概念は、Ackman(R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,2(1964)173−179及びR.F.Addison,R.G.Ackman,J.Gas Chromatogr.,6(1968)135−138)により説明され、Sweetら(D.P.Sweet,R.H.Shapiro,P.Albersheim,Carbohyd.Res.,40(1975)217−225)により、一部アルキル化したアルジトールアセテートの定量的分析に適用された。
[表]
Figure 0006356795
モノマーの異なる1モル当たりの反応を修正するために、ピーク面積に、2,3,6−Meモノマーと比較した反応として定義される、1モル当たりの反応要素MRFモノマーを乗算した。2,3,6−Meモノマーは、s23/s26の決定で分析されたすべての試料に存在したため、参照として選択した。
MRFモノマー=ECN2,3,6−Me/ECNモノマー
モノマーのモル分率を、以下の式に従って、修正したピーク面積を修正したピーク面積の合計で割ることにより算出した。
(1)s23は、次の条件[アンヒドログルコース単位の2及び3位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、6位は置換されない(=23−Me)]を満たすアンヒドログルコース単位のモル分率の合計であり、
(2)s26は、次の条件[アンヒドログルコース単位の2及び6位の2つのヒドロキシ基は、メチル基で置換され、3位は置換されない(=26−Me)]を満たすアンヒドログルコース単位のモル分率の合計である。
DS(メチル)メチルセルロースの決定
メチルセルロース中のメトキシル%の決定は、米国薬局方(USP34)に従って実施した。得られる値は、メトキシル%であった。続いてこれらを、メチル置換基の置換度(DS)に変換した。塩の残留量を変換の考慮に入れた。
メチルセルロースの2%純粋水溶液の生成
メチルセルロースの2%水溶液を得るため、3gの挽いて、粉砕し、乾燥させたメチルセルロース(メチルセルロースの含水量を考慮し)を、147gの水道水(20〜25℃の温度)に、室温で、三翼(翼=2cm)ブレード攪拌器付きオーバーヘッド実験室攪拌器を用いて750rpmで攪拌しながら添加した。次いで、溶液を約1.5℃に冷ました。1.5℃の温度に達した後、溶液を750rpmsで180分間攪拌した。使用または分析前に、溶液を氷浴内、100rpmで15分間攪拌した。
メチルセルロースの粘度の決定
定常剪断流粘度η(5℃、10s−1、2重量%MC)の2重量%メチルセルロース水溶液は、Anton Paar Physica MCR 501レオメーター及びカップ及び下げ振り取付具(CC−27)で、5℃、10s−1の剪断速度で測定した。
粘膜に適用する水溶液の粘度の決定
粘膜に適用する水溶液の粘度は、カップ及び下げ振り取付具を有するARES RFS3レオメーター(TA−Instruments)を使用し、5℃及び10s−1の剪断温度で測定した。
メチルセルロースを含む水性組成物のゲル化温度の決定
MC、及び任意に緩衝剤のような等張化剤、ならびに/または生理学的活性剤を含む水溶液のレオロジー測定は、カップ及び下げ振り取付具を有するAres RFS3レオメーター(TA−Instrument)を用いて実施した。17ミリリットルの溶液をカップ取付具に移し、隙間を5mmに設定した。試料を、2%の一定歪み、及び1秒毎5ラジアンの一定角振動数により、1分毎1℃の速度、10〜50℃の温度範囲で加熱した。レオロジー測定により得た貯蔵弾性率G′は、溶液の弾性特性を表す。
振動測定から得られた貯蔵弾性率G′の得られたデータを、まず、G′(最小)を0及びG′(最大)を100に対数化及び正規化した。線形回帰曲線を、これらの貯蔵弾性率データ(5データ点の増加)の部分集合に適合させた。最も傾斜が急な回帰曲線を、曲線の変曲点を同定するため、選択した。X軸との交差軸を、変曲点から外挿したゲル化温度として報告した。
図1は、実施例8の組成物のゲル化温度がどのように決定されるかを例示する。本発明の他の組成物及び比較組成物のゲル化温度は、同様の方法で決定することができる。
鼻粘膜への適用のための水溶液の調製
下記の表1に列挙されるとおりの濃度を有する濃縮MC溶液は、良好な分散を達成するため、対応する量の乾燥メチルセルロース粉末を、Yamato LT 400実験室オーバーヘッドミキサーを使用して25℃の初期温度を有する水に添加することにより調製した。MCの混合物及び水を、同じ速度で攪拌しながら、20分以内で2℃に冷ました。MCの混合物及び水が2℃の温度に達した後、混合液をこの温度で追加の1時間攪拌し、次いで5000rpmで作動しているSilverson L4−R高剪断ミキサー(動静翼)を使用し、高剪断に供した。これらの溶液を、冷蔵庫で一晩貯蔵した。
Figure 0006356795
冷蔵庫からの濃縮MC溶液を、水、または等張化剤及び/もしくは冷蔵庫からの活性医薬成分(API)の濃縮水溶液のいずれかと、攪拌機の使用により、均質な溶液が達成されるまで混合した。アセトアミノフェンをAPIとして使用した。この追加の混合の際に、溶液温度は依然として冷たく、7℃を超える温度に達していなかった。濃縮水溶液における等張化剤及び/またはAPIの濃度は、選択された混合比で得られた混合物に所望の濃度を達成するように選択した。得られた混合物中、等張化剤は、脱イオン水中に0.65重量パーセントの塩化ナトリウム及び0.25重量パーセントのリン酸ナトリウムを含むpH6.5のリン酸緩衝溶液(PBS)の塩だった。例えば、実施例6の水溶液は、リン酸緩衝生理的食塩水(0.65%塩化ナトリウム、0.25%リン酸ナトリウム)中に1重量%MC溶液を生成するために、等量の2重量%MC−4を、1.3重量%塩化ナトリウム及び0.5重量%リン酸ナトリウムを含有する溶液と混合することにより調製した。すべての実施例及び比較実施例の水溶液は、完全に可溶性の明澄な溶液であり、特性評価が行われるまで、冷蔵庫で貯蔵した。
水溶液の化学組成、それらのゲル化温度、及びそれらの粘度は、下記の表2に列挙されている。
Figure 0006356795
実施例1と比較実施例Aとの比較は、0.36以下のs23/s26をもつメチルセルロースを等張化剤と組み合わせて含む組成物は、同じメチルセルロースを単独で含む組成物よりも低いゲル化温度を有することを例示する。比較実施例Aの組成物は、ヒト粘膜の通常の温度超でゲル化し、したがって、実施例1の組成物と同じ利点を有さない。比較実施例Bは、活性医薬成分(API)の存在は、必ずしも組成物のゲル化温度を下げるとは限らないことを例示する。
実施例2及び3は、ゲル化温度は、メチルセルロースの濃度を上昇させることによりさらに低下され得ることを例示する。実施例5は、同時に、組成物が例えば口腔粘膜に効果的に適用され得るような十分に低いゲル化温度を依然として達成しつつ、メチルセルロースの濃度を低下させることができることを例示する。
比較実施例C及びDは、(2重量%水溶液として測定した)同様の粘度の標準メチルセルロースは、等張化剤と組み合わせない場合においてさえ、0.36未満のs23/s26をもつメチルセルロースと同じ利点を有さないことを例示する。標準メチルセルロースを等張化剤との組み合わせで含む水溶液は、粘膜の温度でゲル化しない。
実施例6と7との比較の一方、比較実施例Eは、重ねて、0.36以下のs23/s26をもつメチルセルロースを等張化剤と組み合わせて含む組成物は、同じメチルセルロースを単独で含む組成物よりも低いゲル化温度を有することを例示する。メチルセルロースMC−4は、MC−1のものよりも1000倍高い粘度を有する。したがって、特定のs23/s26単独を持つメチルセルロースを含む比較組成物とメチルセルロースを等張化剤と組み合わせて含む本発明の組成物との、論じられたような違いは、広い粘度の範囲にわたり観察することができる。比較実施例Fは、重ねて、同様の粘度の標準メチルセルロースは、等張化剤と組み合わせない場合においてさえも、0.36以下のs23/s26をもつメチルセルロースと同じ利点を有さないことを例示する。
実施例8と比較実施例Gとの比較は、重ねて、0.36以下のs23/s26をもつメチルセルロースを等張化剤と組み合わせて含む組成物は、同じメチルセルロースを単独で含む組成物よりも低いゲル化温度を有することを例示する。比較実施例Hは、重ねて、同様の粘度の標準メチルセルロースは、等張化剤と組み合わない場合においてさえも、0.36以下のs23/s26をもつメチルセルロースと同じ利点を有さないことを例示する。
比較実施例E及びGの組成物は、鼻粘膜へ効果的に適用されるための十分に低いゲル化温度を有する。しかし、MCとゲル化温度を低下させる等張化剤との組み合わせである本発明の所見は、粘膜への適用のために組成物を製剤化する際に、追加の柔軟性をさらに提供する。メチルセルロース濃度の低下またはより低い粘度のメチルセルロースの選択は、ゲル化温度を上昇させることが知られている。本発明は、等張化剤との組み合わせで、メチルセルロース濃度を低下させるまたはより低い粘度のメチルセルロースを選択するための柔軟性を高め、同時に、比較実施例A〜Dと比較して実施例1〜5に例示するとおり、依然として粘膜の温度以下でゲル化する組成物を提供する。
実施例9と比較実施例Iとの比較は、重ねて、本発明の上述の利点を例示する。実施例10及び11は、なお別の粘度のメチルセルロースでの本発明の組成物を例示する。
比較実施例C、D、F、及びHは、広範囲の異なる粘度の標準メチルセルロースを、等張化剤としてPBSと組み合わせて含む水溶液を例示する。比較実施例C、D、F、及びHの組成物は、すべてヒト粘膜の通常の温度超でゲル化し、したがって、本発明の実施例の組成物と同じ利点を有さない。
本開示は以下も包含する。
[1] 等張化剤、メチルセルロース、及び液体希釈剤を含む粘膜に適用するための組成物であって、
前記メチルセルロースは、1−4結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有し、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基が、s23/s26が0.36以下であるようにメチル基で置換され、
s23は、前記アンヒドログルコース単位の2及び3位の2つのヒドロキシ基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
s26は、前記アンヒドログルコース単位の2及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率である、前記組成物。
[2] メチルセルロースを含み、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基が、s23/s26が0.27以下であるようにメチル基で置換される、上記態様1に記載の前記組成物。
[3] 生理学的活性剤を追加的に含む、上記態様1または2に記載の前記組成物。
[4] 前記メチルセルロースが、1.55〜2.25のDS(メチル)を有する、上記態様1〜3のいずれかに記載の前記組成物。
[5] 前記メチルセルロースが、2重量%の水溶液として5℃、10s −1 の剪断速度で測定して3〜5000mPa・sの粘度を有する、上記態様1〜4のいずれかに記載の前記組成物。
[6] 5℃及び10s −1 の剪断速度で測定して2.4〜10,000mPa・sの粘度を有する、上記態様1〜5のいずれかに記載の前記組成物。
[7] 5℃及び10s −1 の剪断速度で測定して5〜2000mPa・sの粘度を有する、上記態様6に記載の前記組成物。
[8] 18〜37℃のゲル化温度を示す、上記態様1〜7のいずれかに記載の前記組成物。
[9] 鼻腔内投与のための、上記態様1〜8のいずれかに記載の前記組成物。
[10] 前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜20パーセントの前記メチルセルロース、0.1〜10パーセントの等張化剤、0〜20パーセントの生理学的活性剤、及び0〜30パーセントの1つ以上の任意の補助剤を含み、残部が前記液体希釈剤である、上記態様1〜9のいずれかに記載の前記組成物。
[11] 前記生理学的活性剤が、1つ以上の薬物、1つ以上の診断剤、1つ以上の精油、または美容もしくは栄養上の目的に有用である1つ以上の生理学的活性剤から選択される、上記態様1〜10のいずれかに記載の前記組成物。
[12] 前記精油が、メントールまたはサリチル酸メチルである、上記態様11に記載の前記組成物。
[13] 上記態様1〜12のいずれかに記載の前記組成物を含む容器であって、噴霧により、または滴薬として前記組成物を放出するように設計されている、容器。
[14] 生理学的活性剤を個体に経粘膜投与する方法であって、上記態様3〜13のいずれかに記載の前記組成物が前記個体の粘膜に適用される、方法。

Claims (8)

  1. 等張化剤、メチルセルロース、及び液体希釈剤を含む粘膜に適用するための組成物であって、
    前記メチルセルロースは、1−4結合により接合されたアンヒドログルコース単位を有し、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基が、s23/s26が0.36以下であるようにメチル基で置換され、
    s23は、前記アンヒドログルコース単位の2及び3位の2つのヒドロキシ基だけがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
    s26は、前記アンヒドログルコース単位の2及び6位の2つのヒドロキシ基のみがメチル基で置換されるアンヒドログルコース単位のモル分率であり、
    前記等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、緩衝剤、キシリトール、グリセリン、マンニトール、またはソルビトールである、前記組成物。
  2. メチルセルロースを含み、アンヒドログルコース単位のヒドロキシ基が、s23/s26が0.27以下であるようにメチル基で置換される、請求項1に記載の前記組成物。
  3. 生理学的活性剤を追加的に含む、請求項1または2に記載の前記組成物。
  4. 前記メチルセルロースが、1.55〜2.25のDS(メチル)を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の前記組成物。
  5. 5℃及び10s−1の剪断速度で測定して5〜2000mPa・sの粘度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の前記組成物。
  6. 18〜37℃のゲル化温度を示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の前記組成物。
  7. 鼻腔内投与のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の前記組成物。
  8. 前記組成物の総重量に基づいて、0.1〜20パーセントの前記メチルセルロース、0.1〜10パーセントの等張化剤、0.01〜10パーセントの生理学的活性剤、及び0〜30パーセントの1つ以上の任意の補助剤を含み、残部が前記液体希釈剤である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の前記組成物。
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